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2023年10月の記事

2023年10月31日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・267

グローバル・レベルで見ると、ジャズ・ギタリストについては、新しい世代の「跡を継ぐもの」として、それぞれの時代でメジャー・デビューする新進気鋭のギタリストが現れ出てくる。が、我が国では、それぞれの時代でメジャー・デビューしてくる新進気鋭のジャズ・ギタリストの数は少ない。

日本のジャズ・ギタリストは、と問われたら、まず頭に浮かぶのが、渡辺香津美、増尾好秋、川崎燎、井上銘、小沼ようすけ、くらい。圧倒的に数が少ない。現在、第一線で活躍しているメジャーな存在は、井上銘、小沼ようすけ、辺りかな。

しかし、地方やライブハウスをメインに活動している「マイナーな存在」に目を向けると、我が国の中でも意外と多くのジャズ・ギタリストが存在する。ネットのアルバムのニュー・リリースの情報を見ていると、時々、単発でリーダー作をリリースしたりするので、その存在をキャッチでき、そのリーダー作を拝聴できたりする。良い時代になったものだ。

竹田一彦『St. Louis Blues』(写真左)。2022年6月2日、京都「BF Garden Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、竹田 一彦 Kazuhiko Takeda (g), 神田 芳郎 Yoshirou Kanda (b)。実に渋い内容のギターとベースのデュオ演奏。

竹田一彦は、1936年奈良県天理市生まれ。関西地方をメインに、1950年代後半から現在まで、65年に渡り活躍を続けてきた関西ジャズ界の重鎮ジャズマン、ベテラン・ギタリスト。今年で87歳。今回、新リリースの『St. Louis Blues』は、昨年の録音なので、86歳でのパフォーマンスになる。今回は、たまたま、この新リーダー作をアップル・ミュージックで見かけて、即日、拝聴した。
 

St-louis-blues

 
一言で言うと「凄くクールで渋い」ジャズ・ギターが堪能できる優秀盤。コクのある味わい深いトーン、切れ味よく微妙にノイジーでジャズっぽいフレーズ。テクニックは確か、アドリブ展開は流麗かつアーシー&ブルージー。極上の本格派、メインストリーム志向のジャズ・ギター。冒頭のタイトル曲「St. Louis Blues」を聴くだけで、この竹田と神田のデュオ演奏の世界に引き込まれる。

ソリッドで鋼性の高い、弾力あふれる重低音のアコースティック・ベースがイントロを担う。そこに、適度なテンションを張った、切れ味よく、芯の入った、アーシーでブルージーな竹田のギターが絡んでくる。凄くクールで渋いフレーズの連発。

ギターとベースのデュオなので、演奏の基本は「静謐の中のダイアローグ」。時にユニゾン&ハーモニー、時にウォーキング・ベースをバックにギターのソロ、時にギターのリズムをバックにベースのソロ。職人芸よろしく、高いテクニックに裏打ちされた充実のフレーズ展開。

シンプルでリリカルでアーシーでブルージー、こんな魅力的なジャズ・ギターがあるんや、と感心を通り越して「感動」した。小粋なスタンダード曲をメインに、竹田のアーシーでブルージーなギターが、唄うがごとく、囁くがごとく、語るがごとく、弾き進んでいく。そこにピッタリ寄り添い、フレーズの「底」を押さえ支える神田のベース。

これはこれは、素晴らしい内容のギター&ベースのデュオである。今は晩秋、晩秋の夜に一人耳を傾けるジャズ盤に最適な一枚。良いアルバムに出会えた。心がほっこり暖かくなる。
 
 

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2023年10月30日 (月曜日)

『Miles Davis Vol.2』の聴き直し

マイルスの全く仕事が入らなくなった麻薬禍真っ只中の1952年、実は、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、麻薬禍のマイルスに、本格的なリーダー作を録音する機会を提供し、彼の生活を助け、彼を支援した。

そして、ライオンがマイルスに提供した録音機会は、全部で1952年3月9日、1953年4月20日、1954年3月6日、の3セッション。1952年は麻薬禍真っ只中、1953年は麻薬禍を克服して間もない頃、1954年はほぼ完全に復調した頃。

この3セッションの音源、10-inch LPバージョン、12-inch LPバージョン、2001年リイシューCDバージョンと3通りの音源収録のパターンがあって注意が必要。ざっと、以下の様な3通りの内容になっている。

10-inch LPが一番判りやすくて、1952年の録音は『Young Man With A Horn』で、1953年の録音は『Miles Davis Vol. 2』、1954年の録音は『Miles Davis Vol. 3』と3枚のアルバムに、ちゃんと分けて収録されている。

が、12-inch LPについては、『Miles Davis Volume 1』には、1952年と1953年の録音が、但し、LPの収録時間の関係上、A面とB面1曲が、1952年録音の曲と1953年録音の曲がテレコで入っている。『Miles Davis Volume 2』には、1954年の録音がメインではあるが、1952年、1953年、1954年の録音が混在。

2001年にリイシューされたCDはスッキリしている。『Miles Davis Volume 1』は、1952年と1954年の録音が、『Miles Davis Volume 2』には1953年の録音が収められていて、『Miles Davis Volume 1』は、9曲目の「Woody 'n' You」と、10曲目「Take Off」では、明らかに演奏の雰囲気が変わるので、1952年と1954年の録音の境目はよく判る。

そこで、今回は『Miles Davis Volume 2』(写真左)の2001年リイシューCDバージョンで、1953年4月20日のセッションを聴く。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jimmy Heath (ts), Gil Coggins (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。マイルスのトランペット、ジェイジェイのトロンボーン、ジミー・ヒースのテナーの3管フロントのセクテット編成。
 

Miles-davis-vol2

 
1953年4月20日のセッションは、マイルスは麻薬禍を克服して間もない頃。明らかに麻薬禍を克服しているのがよく判る、ハードバップのプロトタイプの様な、当時として「新しい」響きと内容が素晴らしい。ブルーノートでの録音ということもあるだろう。

ブルーノートはリハーサルにもギャラを払って、ジャズマンにしっかりリハを積ませて演奏のレベルを引き上げ、本番でレベルの高い、内容のある演奏をさせて録音する、ということを常にやっていた。この盤でもそうだったんだろう。

特に、マイルス=ジェイジェイ=ヒースの3管フロントのユニゾン&ハーモニーが「キマッて」いる。バンド全体のアンサンブルも整然としていて緩みが無い。それぞれのアドリブ展開は創造性に富む。この盤の演奏が「マイルスによるハードバップの萌芽」と評価される所以である。

この1953年4月20日録音は、溌剌とした度合いが高く、フレーズも明るめで健康的。総じて、流麗で張りのある力強い演奏で統一されている。演奏の展開は全く「ビ・バップ」では無い。演奏をしっかり聴かせる、クールでモダンなアレンジが施され、一人一人のアドリブ展開の長さも、そのジャズマンの力量と歌心を推しはかるに十分。いわゆる「ハードバップ」な展開である。

メンバーそれぞれが、この演奏のアレンジとスタイルが「新しいもの」と感じているみたいで、実に神妙にテクニックよろしく、しっかりと楽器を演奏している様が伝わってくる。とりわけ、マイルスのトランペットは素晴らしい。クールでリリカルで訴求力ある展開は、当時のジャズ・シーンの中で、最高レベルのトランペットである。

マイルスはライオンの恩義に報いるかの様に、麻薬禍と戦いながら、素晴らしい録音をブルーノートに残した。時代はビ・バップの流行が下火になり、ハードバップの萌芽を感じられる録音がちらほら出だした頃。マイルスは、ブルーノートの録音に、いち早く、ポスト「ビ・バップ」な、後のハードバップの先駆けとなる音を残した。そして、麻薬禍を克服する。
 
 

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2023年10月29日 (日曜日)

久々のマンジョーネ『虹への旅』

「哀しみのベラヴィア」や「サンチェスの子供たち」、そして「フィルソー・グッド」など、フュージョン・ジャズにおけるヒット曲を持つチャック・マンジョーネ。1970年代後半から1980年代前半、フュージョン・ジャズのブームをリアルタイムで体験したフュージョン者の方々であれば知らない人はいないはず。

トランペット&フリューゲルホーンの両刀使いではあるが、印象的なのはフリューゲルホーンの方だろう。柔らかだが芯があって伸びが良く、ミッドテンポに乗って、中低音域から高低音域の真ん中レベルの音程で、朗々とゆたっりとフレーズを吹き上げていく様は、マンジョーネ独特なもの。

Chuck Mangione『Journey To A Rainbow』(写真)。1983年の作品。邦題『虹への旅』。ちなみにパーソネルは、Chuck Mangione (flh, el-p, syn), Chris Vadala (fl, sax), Peter Harris (g), Gordon Johnson (el-b), Everett Silver (ds)。マンジョーネ以外、知らない名前ばかり。スタジオ・ミュージシャンで固めたのか、の5人編成。 
 
この盤を聴いてつくづく思うのは、マンジョーネのフリューゲルホーンの音が、すごく聴き心地が良くて印象的だなあ、ってこと。まず、マンジョーネのフリューゲルホーンは「音が魅力的」。

朗々とゆったりと鳴って、音のエッジが丸くて暖かい。音がス〜っと伸びていく。そして何より音に翳りがなく明るい。それじゃあ、イージーリスニングでしょ、と思われるのだが、それがそうではなくて、どこかジャジーな響きがして、決して、イージーリスニングでは無いのだから不思議。
 

Chuck-mangionejourney-to-a-rainbow

 
この人のフリューゲルホーンは、高速な吹き回しやハイノートは無く(元々、フリューゲルホーンは苦手)、テクニック的にアピールするところはほぼ無い。演奏曲もミッドテンポの曲が多く、マンジョーネのフリューゲルホーンは、中低音域から高低音域の真ん中レベルの音程をキープして、ゆったり朗々と吹き上げていく。

おそらく、演奏する曲自体が、そんなマンジョーネのフリューテルホーンの特性を活かした楽曲でありアレンジなんだろう。マンジョーネのフュージョン盤が、どの盤もすごく聴き心地が良くて印象的なのは、マンジョーネのフリューゲルホーンの個性とそれを活かす楽曲とアレンジがバッチリ合っているからなんだろう。決して「無理をしていない」のだ。加えて、アレンジに様々な工夫が凝らされていて、アルバムを通して飽きることが無い。

この『Journey To A Rainbow』も同様の内容の、マンジョーネ節満載の好盤である。まず冒頭のタイトル曲が良い感じ。親しみやすく美しいフレーズ、いわゆる「マンジョーネ節」が良い。そして、興味深いのは、4曲目「Buttercorn Lady」。かつて、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍中の1966年にチャックが作曲した楽曲。

そう、マンジョーネって、元は純ジャズの出身。将来有望な若手ジャズマンの登竜門的存在であった、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍していたのだから、基本的には、素性はまともなトランペット&フリューゲルホーン奏者である。

決して、ゲテモノでもなければ、ラッキーな「一発屋」でもない。マンジョーネは、素性確かなフュージョン・フリューゲルホーンのスタイリストである。これだけ朗々と印象的なフレーズを吹き上げるフリューゲルホーンは、彼をおいて他にない。だからこそ、今の時代にも、マンジョーネのリーダー作は好盤として聴き親しむことが出来るのだ。
 
 

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2023年10月28日 (土曜日)

『Miles Davis Vol.1』の聴き直し

「マイルスの『Blue Haze』再考」で、1951年あたりから重度の麻薬中毒に陥り、1952年には仕事が全く入らなくなった。マイルスはセントルイスの父親の家に戻り、そこで麻薬依存症の治療に専念した、と書いたが、マイルスの全く仕事が入らなくなった麻薬禍真っ只中の1952年、実は、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが録音の機会を作っている。

その録音機会は、1952年3月9日、1953年4月20日、1954年3月6日、の3セッションに分かれている。1952年は麻薬禍真っ只中、1953年は麻薬禍を克服して間もない頃、1954年はほぼ完全に復調した頃。このブルーノートとプレスティッジとの違いは、麻薬禍真っ只中のマイルスに録音の機会を与えているところ。プレスティッジは、麻薬禍真っ只中の1952年のマイルスには見向きもしていない。

10-inch LPが一番判りやすくて、1952年の録音は『Young Man With A Horn』で、1953年の録音は『Miles Davis Vol. 2』、1954年の録音は『Miles Davis Vol. 3』と3枚のアルバムに、ちゃんと分けて収録されている。

が、12-inch LPについては、『Miles Davis Volume 1』には、1952年と1953年の録音が、但し、LPの収録時間の関係上、A面とB面1曲が、1952年録音の曲と1953年録音の曲がテレコで入っている。

ちなみに『Miles Davis Volume 2』には、1954年の録音がメインではあるのだが、惜しいかな、1952年、1953年、1954年の録音が混在している。これは、プレスティッジと似たり寄ったり。しかし、演奏内容は「レベチ」である(当然、ブルーノートの方が内容が濃い)。

2001年にリイシューされたCDはスッキリしている。『Miles Davis Volume 1』は、1952年(#1〜#9)と1954年(#10〜#15)の録音が、しっかりと時系列に並べられている。9曲目の「Woody 'n' You」と、10曲目「Take Off」では、明らかに演奏の雰囲気が異なるので、その違いはすぐに判ると思う。

現時点では、この2001年リイシューのCDで鑑賞するのが、「当時のマイルスが麻薬禍を克服して、回復のリハビリテーションの様なセッションを重ねて、グイグイと麻薬禍前のマイルスに戻っていく過程」が一番よく判るだろう。ここでは、『Miles Davis Volume 1』について、2001年リイシューのCDをベースに評論をまとめてみる。
 

Milesdavisvolume1_2

 
『Miles Davis Volume 1』(写真左)。1952年5月9日, 1954年3月6日の録音。ブルーノートの1501番。ちなみにパーソネルは、1952年5月9日:Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jackie McLean (as), Gil Coggins (p), Oscar Pettiford (b), Kenny Clarke (ds)。セクステット編成である。1954年3月6日:Miles Davis (tp), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。こちらは、マイルスのトランペット1管のワンホーン・カルテット。

まずは、1952年5月9日の録音。録音当時、マイルスは重度の麻薬禍に陥っており、録音も激減していたのだが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは、マイルスの才能を高く評価していて、重度の麻薬禍の状態にあったマイルスに録音の機会を与えている。マイルス自体、麻薬禍から何とか立ち直りたいと努力していた時期でもある、ライオンはそんなマイルスに救いの手を差し伸べた訳である。

マイルスはそんなライオンの恩義に報いるかの様に、麻薬禍の真っ只中にありながら、素晴らしい録音をブルーノートに残している。時代はビ・バップの流行が下火になり、ハードバップの萌芽を感じられる録音がちらほら出だした頃。マイルスは、ブルーノートの録音に、いち早く、ポスト「ビ・バップ」な、後のハードバップの先駆けとなる音を残している。

まだ編成楽器によるインタープレイは無いにしろ、演奏を「聴くこと」を意識したアーティスティックなアレンジ、聴き手に訴求する為のアドリブ展開におけるロング・プレイ、ビ・バップの熱気溢れる演奏志向からクールでヒップな演奏志向への変化は、既にこの1952年5月9日の録音で、マイルスは「ものにしている」。ちょっと「くすんだ様な」大人しい演奏でクール度が高い。

1954年3月6日の録音。記録では1953年にマイルスは麻薬禍を克服した、とされているので、この時期は既に復調していた頃。演奏の編成は、マイルスのトランペット1管のワンホーン・カルテットだが、溌剌とした度合いが高く、フレーズも明るめで健康的。流麗で張りのある力強い演奏で統一されている。完全復調したマイルスを感じ取ることが出来る。

1952年の録音などは、麻薬禍真っ只中のマイルスなので、イマイチなのでは、と聴く前は危惧していたが、とんでもない。麻薬禍にありながら、さすがはマイルス。ブルーノートの下での、総帥プロデューサー、ライオンの下での録音なのも好要素だった。そして、1954年の録音は申し分ない。素晴らしい演奏、ハードバップの魅力満載、とりわけ、マイルスのトランペットが素晴らしい。

マイルスは、ライオンの恩義に報いるように、ブルーノートに「ハードバップの萌芽」を感じさせ、トランペッターとして最高レベルのブロウを残した。決して、やっつけの録音では無い、しっかりリハーサルされ、しっかり集中して演奏された素晴らしい録音の数々。やはり、当時から「マイルスは只者では無かった」のだ。
 
 

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2023年10月27日 (金曜日)

マイルスの『Blue Haze』再考

ジャズの帝王、マイルス・デイヴィスも麻薬禍で苦しんだ時期がある。1951年あたりから重度の麻薬中毒に陥り、1952年には仕事が全く入らなくなった。マイルスはセントルイスの父親の家に戻り、そこで麻薬依存症の治療に専念した。そして、麻薬中毒を克服し、1954年に完全カムバックを果たす。

麻薬禍を克服し完全カムバックを果たすまで、麻薬中毒者として敬遠されていたマイルスに十分な録音環境を提供し、カムバック後のリーダー作のリリースに全面協力したのが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンである。

プレスティッジの ボブ・ワインストックもマイルスのリーダーとしての録音に手を貸したが、それは麻薬禍に陥る前と全く変わらない、プレスティッジ独特の「やっつけ」な環境だった。

Miles Davis『Blue Haze』(写真左)。1953年から翌年にかけて残された3つのセッションを収録。麻薬禍を克服し完全カムバックを果たすまでの、プレスティッジの「やっつけ」な環境での録音である。プレスティッジらしく、3つのセッションの寄せ集めなので、パーソネルもそれぞれのセッションで異なる。

1954年4月3日の録音、Track #1「I'll Remember April」。パーソネルは、Miles Davis (tp), David Schildkraut (as), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。いかにも、プレスティッジらしい「やっつけ」なパーソネルである。アルト・サックス奏者は知らない名前。

麻薬禍を克服して、このアルバムの中で、一番、時間が経過した時期での録音。クールでリリカルな、独特な響きを持ったマイルスのトランペットが戻ってきている。演奏全体はハードバップとして及第点。やはり、マイルスのトランペットが素晴らしい。

1954年3月15日の録音。Track #2「Four」, Track#3「Old Devil Moon」、Track#5「Blue Haze」。パーソネルは、Miles Davis (tp), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。麻薬禍を克服してまだ時間が経っていない時期にマイルスのトランペットのワンホーンは酷である。 ボブ・ワインストックは思いやりに欠けるプロデューサーだったとみえる。
 

Blue_haze_1

 
トランペットの音には張りがあって「暗い翳り」はもう感じる事は無い。しかし、テクニック的には、 まだまだカムバックの途上で、後に高速展開でビシッとライブで決める「Four」など、かなり低速の安全運転。「Old Devil Moon」もテクニックはまだまだ。マイルスの個性的なトランペットの音だけで、とりあえず聴かせる感じ。これら回復途上の演奏をアルバム化するとは、ボブ・ワインストックは思いやりに欠けるプロデューサーだったとみえる。

1953年5月19日の録音。Track #4「Smooch」, Track #6「When Lights are Low」, Track #7「Tune Up」and Track #8「Miles Ahead」。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Lewis (p), Charles Mingus (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。これも、プレスティッジらしい「やっつけ」なパーソネルである。マイルスにローチのドラムが合うとは思えない。ミンガスに至ってはピアノを弾いている。暇にしているジャズマンに声をかけた風なパーソネル。

麻薬禍を克服して間もない時期の録音なので、どの曲の演奏にも、まだ「暗い翳り」を引きずり、テクニックが元に戻っていない「中途半端さ」が漂う。ペットの音は、トランペットの音自体は、しっかりと「マイルスの個性」を回復しているので、確かに麻薬禍は克服したと想像できる。が、まだまだ鍛錬が必要な回復途上の演奏である。これら回復のリハビリ初期の頃の演奏をアルバム化するとは、ボブ・ワインストックは思いやりに欠けるプロデューサーだったとみえる。

以上の様に、麻薬禍を克服して、回復のリハビリテーションの様なセッションを重ねて、グイグイと麻薬禍前のマイルスに戻っていく過程を、セッションの音によって感じることができる。が、プレスティッジって、この3つのセッションの録音を時系列に並べるのではなくて、雰囲気だけで適当に並べているので、これが実に困る。

好調のマイルスで始まったと思ったら、回復途上の安全運転風の演奏の雰囲気をありありと感じるマイルスが出てきて、それが続くと思ったら、どう聴いてもまだ麻薬禍を克服して間もない、回復のリハビリ初期の頃の演奏でしょうこれは、と判るくらいのマイルスが出てくる。

これ、当時のマイルスの置かれた状況と、収録された演奏が回復のリハビリテーションの様な3つのセッションからの寄せ集めで、それも時系列に並んでいるのではなくて、雰囲気だけで並べられている、ということが事前に理解していないと、このマイルスのパフォーマンスの内容のレベルが、曲ごとに上下に触れるこのリーダー作は「訳が判らなく」なるだろう。

この盤、再生ソフトなどでプレイリストを組んで、録音時期ごとに時系列に並べ直してプレイバックすると、当時のマイルスが、麻薬禍を克服して、回復のリハビリテーションの様なセッションを重ねて、グイグイと麻薬禍前のマイルスに戻っていく過程よく判る。全く、プレスティッジって、ボブ・ワインストックって、ジャズマンに対する思いやりに欠けるなあ、と改めて感じる、マイルスの『Blue Haze』である。
 
 

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2023年10月26日 (木曜日)

ロイド「Trio of Trios」の第三弾

サックス奏者のチャールズ・ロイド(Charles Lloyd)は、機を見て敏なる、というか、意外と変わり身の早いテナーマンである。

1960年代後半の「判り易いコルトレーン」、ECM時代の「欧州ジャズへの接近」、そして、現在の「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」と、それぞれの時代の「流行」をよく読んで、音の志向を変えている。まあ、それぞれの音の志向が、水準以上のパフォーマンスを持って表現されるのだから、テナーマンとしての実力は一流である。

そんな、チャールズ・ロイドが、80歳になった2018年から、3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」を展開する。

「トリオ・オブ・トリオズ」の第一弾は『Trios: Chapel』(左をクリック)。2018年12月4日、テキサス州サンアントニオのコーツ・チャペルでのライヴ録音。良い意味であざとくもあるが、この10年間辺りの流行である「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を志向した、現代のモダン・ジャズである。

「トリオ・オブ・トリオズ」の第二弾は『Trios: Ocean』(左をクリック)。2020年9月9日、ロイドの故郷であるカリフォルニア州サンタ・バーバラの150年の歴史を持つロベロ・シアターでの録音。自由度の高いモーダルなインタープレイがメインだが、ブルース曲を中心に純ジャズな雰囲気を強く感じつつ、曲によっては、ECM的な「ニュー・ジャズ」なサウンド志向も見え隠れする、ユニークな「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を表現していた。

Charles Lloyd『Trios: Sacred Thread』(写真左)。2022年11月のリリース。Healdsburg Jazz Festival でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, alto-fl, tarogato, maracas), Zakir Hussain (tabla, perc, vo), Julian Lage (g)。異なるトリオ編成の3枚のアルバムを包含する「トリオ・オブ・トリオ」プロジェクトの3枚目になる。
 

Charles-lloydtrios-sacred-thread

 
この「トリオ・オブ・トリオ」プロジェクトの3枚目には、ギタリストのジュリアン・ラージとパーカッショニストのザキール・フセインが参加している。フセインは魅惑的かつエスニックなボーカルも担当している。このトリオ編成、ベーシストがいない。サックス・ギター・パーカッションの変則トリオである。

この盤の音世界は、一言で言うと「エキゾチックな静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」。エスニックな音の響き、ワールド・ミュージック的なリズム&ビート、そこにロイドの「判りやすいスピリチュアルなコルトレーン」を彷彿とさせるサックスが飛翔する。この盤では、アルト・フルートも吹いていて、このロイドのアルト・フルートの音色が、これまた、エキゾチックな雰囲気をしっかりと醸し出している。

エキゾチックで民族音楽的な要素が印象的な音世界ではあるが、その要素を全面に押し出す訳ではない。クールに漂うが如く、その雰囲気を醸し出して、あくまで、ロイドの「静的でスピリチュアルなサックス」の引き立て役に徹している。これが良い。この演奏をしっかりと「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」として成立させ、決して、ワールド・ミュージック志向の融合ジャズにはしていない。

フセインのエスニックで正統派なボーカルが、そんなエキゾチックな雰囲気を増幅させる。更に、ラージのギターがそんなエキゾチックな雰囲気の音にしっかり適応し、フロントのロイドのサックスにしっかり寄り添っている。

「トリオ・オブ・トリオ」プロジェクトの3枚目は「エキゾチックな静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」。「トリオ・オブ・トリオズ」は、3作とも、現代の静的でクールなスピリチュアル・ジャズの優秀作。どのアルバムを取っても、現代の静的でクールなスピリチュアル・ジャズの優れた成果を体感することが出来る。
 
 

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2023年10月25日 (水曜日)

「たをやめオルケスタ」の最新盤

ビッグバンドには、そのバンド毎に「志向」がある。とにかく、アーティステックにストイックにビッグバンドの「芸術性を追求するバンド」。エリントンやベイシーなどのレジェンドなビッグバンドの音を「研究〜現代で再現しようとするバンド」。元々はダンス・ミュージックなのだからと、多人数のアンサンブルやユニゾン&ハーモニーを楽しみ、ソロ演奏を楽しむ「エンタテイメント性を追求するバンド」などなど。

ビッグバンドの音は追求すればするだけ面白いのだが、多人数がゆえ、バンド全体の運営が厳しい。世界的に見ても、テンポラリーにビッグバンドを編成し、演奏することはままあっても、恒常的にバンド活動を維持し、コンスタントにアルバムをリリースしているビッグバンドは数少ない。我が国においては、宮間利之ニューハード、東京キューバンボーイズ、ちょっとジャズから外れるが、東京スカパラダイスオーケストラ。メジャーなところでこれくらいしか、名前が浮かばない。

たをやめオルケスタ『祝宴フィフティーン』(写真左)。2023年9月のリリース。 活動15周年を迎える女性16名のビッグバンドの最新フル・アルバム。2021年にリリースされた二枚の7inchに納められた楽曲を含む計11曲を収録。

「たをやめオルケスタ」とは、女性のみで構成されるトロピカル楽団として、岡村トモ子 (as, fl) を中心として2008年に結成。「たおやめ」は「手弱女」と書くのだが、どうして、迫力のあるブロウ、力感溢れるアンサンブル、ドライブ感豊かなユニゾン&ハーモニー、手に汗握るインタープレイと、その音だけ聴けば、女性のみで構成されるビッグバンドとは思えない。
 

Photo_20231025221001

 
収録された楽曲を見渡すと「Take the A train」「Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)」「A Night in Tunisia(チュニジアの夜)」などの有名ジャズ・スタンダード曲や、ラテン・ジャズやカリプソ、アフター・ビートルズ、アメリカン・ポップス、はたまたヒップホップなどの楽曲をカヴァーしていて楽しい。そして、このバラエティーに富んだ楽曲を、工夫とアイデアに富んだアレンジで、とっても楽しいビッグバンド曲に変身させている。

じっくり聴いてみて、とにかく演奏テクニックが確か。とにかく上手い。揺らぎもなければ、ふらつきもない。一糸乱れぬユニゾン&ハーモニー、ズレのないバッチリ合ったアンサンブル。音の迫力、音の厚み、音の輝き、どれをとってもビッグバンドとして一級品。ソロイストのパフォーマンスも及第点(ちょっと安全運転風。ライヴだと違うのかな)。

そして、このビッグバンドの一番は「聴いていて楽しい」こと。適度なスイング感、アクセント確かダンサフルなオフビート、そして、流麗で明るいフレーズ。そんなビッグバンドが、デューク・エリントンの「Take the A train」や、ジョージ・ハリソンの「I've Got My Mind Set On You」、カーペンターズの「Close to You」なんかをブイブイやるのだ。聴いていて楽しいことこの上ない。たをやめオルケスタって「エンタテイメント性を追求するバンド」の優れものである。

たをやめオルケスタ。バンド名だけは知っていたが、こんなに素晴らしいビッグバンドだとは知らなかった。スミマセン(笑)。結成以来15年というが、その間、たをやめオルケスタの音源に全く出会えなかったのだから、こういうこともあるもんだなあ、と(笑)。今回、やっと、たをやめオルケスタの音源に出会えた。聴いて思う。良いビッグバンドに出会えたと....。
 
 

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2023年10月24日 (火曜日)

ゴーゴー・ペンギンの進化の途中

「踊れるジャズ」として、従来のピアノ・トリオの特徴であった「三者三様の自由度のあるインタープレイ」は排除。クラシック的な印象的なピアノにアグレッシブなベースとドラム。

演奏の中に感じ取れる「音的要素」は、クラシック、エレクトロニカ、ロック、ジャズと幅広。マイルスの開拓した「エレ・ジャズ」に、エレクトロニカを融合し、ファンクネスを引いた様な音。疾走感、爽快感は抜群。聴いていて「スカッ」とする。

英国マンチェスター出身のアコースティック・エレクトロニカ・トリオである「GoGo Penguin(ゴーゴー・ペンギン)」の音世界。オリジナル・メンバーは、ピアノのクリス・アイリングワースとドラムスのロブ・ターナー。2013年初旬にベーシスト、ニック・ブラッカが加わる。そして、ドラムがジョン・スコットに交代。所属レーベルも移籍し、心機一転、久々にフル・アルバムをリリースした。

GoGo Penguin『Everything Is Going To Be Ok』(写真左)。2022年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Chris Illingworth (p), Nick Blackas (b) Jon Scott (ds)。アコースティック・ピアノにベース、ドラムの伝統的なピアノ・トリオ編成と思いきや、音の志向としては「エレクトリック・ジャズ」。英国出身のバンドゆえ、音の響きは「欧州的」。
 

Gogo-penguineverything-is-going-to-be-ok

 
いかにも欧州的な、いかにも英国的な、洗練されたエレ・ジャズである。欧州的な響きとしては、どこか北欧ジャズの響きを宿していて、クラシック的な響きのする、印象的にエコーのかかったアコピとシンセ。ファンクネスは皆無。軽くエコーのかかった粘りのあるビート。どこか黄昏時の黄金色の輝きを見るような寂寞感漂うフレーズ。ゴーゴー・ペンギンの音はどこまでも「欧州的」であり「英国的」。

これまでのゴーゴー・ペンギンのアルバムよりも、ジャケットのイメージ通り、スカッと抜けた爽快感がより強くなり、音の質感がどこか「明るく抜けている」質感がメインになっている。温かみと明るさが増して、躍動感と疾走感が全面に押し出されている。

初期の頃のゴーゴー・ペンギンの音世界は着実に、ポジティヴな方向に変化している。そして、テクニック最優先の演奏構成から、バンド全体のグルーヴとビートを重視する演奏構成に変化しており、その分、シンプル感がアルバム全体を覆う。

スインギーな純ジャズ・トリオとは全く異なる、現代の「ダンス・ミュージック」的な、新しいイメージの「ピアノ・トリオ」。しんせを追加して正解。シンセのようなディストーションのかかったニックのベースと相まって、エレ・ジャズ感は増幅している。そこに「人力」の切れ味の良い、ウォームなビートを供給するスコットのドラムが絡む。

他のピアノ・トリオには無い響き。フュージョンでもなく、スムースでも無い。少なくとも、現代の踊れるエレ・ジャズ。この盤は、そんな「現代の踊れるエレ・ジャズ」の進化の途中を捉えた、ドキュメンタリーの様なアルバムである。次作がとても楽しみだ。
 
 

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2023年10月23日 (月曜日)

キャリントンの幻の初リーダー作

ジャズの世界では1940年代から、女性の活躍がある。ボーカリストから始まって、ピアニスト、ベーシスト、ドラマー、そして、サックス奏者、トランペット奏者、などなど、知る限りでは、ジャズの楽器のほぼ全てにおいて、女性ミュージシャンが存在している。これは素晴らしいことで、才能さえ伴えば性別は関係ない、は、ジャズにおいては、もはや「常識」である。

Terri Lyne Carrington(テリ・リン・キャリントン)。1965年8月4日生まれ。米国マサチューセッツ州出身。ジャズドラマー。ジャズにおける第一線級の女性ジャズ・ドラマー。バークリー音楽大学の教授も務める才媛。僕は彼女の名前とドラミングを、Wayne Shorter『Joy Ryder』で知った。スインギーではない、テクニカルなスクエアなノリの、圧倒的なグルーヴ感と硬軟自在、緩急自在な「攻めるドラミング」が個性。

Terri Lyne Carrington『TLC & Friends』(写真左)。1981年10月19日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Terri Lyne Carrington (ds, arr), George Coleman (ts), Kenny Barron (p), Buster Williams (b)。

パーソネルを見て、思わずビックリ。今の目で見ると「大御所」ばかりではないか。録音当時、ピアノのバロンは38歳、テナーのコールマンは46歳。ベースのバスター・ウィリアムスは39歳。リーダーのキャリントンが16歳だから、まさに「親子」ほど年齢差のある、キャリントンの早熟さが際立つパーソネルである。

さて、この盤は、キャリントンが1981年16歳の時に自主制作した未発表デビュー・アルバムになる。今回、キャンディッドより初のオフィシャル・リリースがなされた。いわゆる「幻の初リーダー作」である。
 

Terri-lyne-carringtontlc-friends

 
この16歳当時のキャリントンの初リーダー作を聴いて、キャリントンのドラミングの個性をしっかり把握することができた。弱冠16歳の初リーダー作である。飾り気のない、真っ正直な才能の開花が感じられる。とにかく、実に楽しそうにハイレベルなドラムを叩いている。この錚々たる共演者を前にして、である。

父ソニーがプロデュースを務め、サックスのジョージ・コールマン、ピアノのケニー・バロン、ベースのバスター・ウィリアムスらの「強者」達と堂々としたインタープレイを繰り広げる。このドラミングで16歳のものかいな、と半ば呆れた(笑)。

どこかでこの様なシチュエーションがあったなあ、と思ったら、18歳で鮮烈なデビューを飾った、トニー・ウィリアムスのデビュー当時のドラミングだ。しかし、このキャリントンのドラミングはトニーより2歳若い。これは凄いなあ、と思わす聴いていてウキウキする。

コール・ポーターの「What Is This Thing Called Love?」から始まり、キャリントン自作の「La Bonita」、マイルスの「Seven Steps To Heaven」、ロリンズの「St. Thomas」「Sonny Moon For Two」、そして、ビリー・ジョエルの名曲「Just The Way You Are」がカヴァーされている。スタンダード曲から、ミュージシャンズ・チューン、そして、ロック・ポップスまで、なんとケレン味のない、楽しい選曲だろう。

キャリントンは、これらの聴いて楽しい楽曲の中で、実に楽しそうにドラムを叩いている。そして、共演の「父親の様な」強者ジャズマン達が、つられて、いつになく楽しそうに朗らかに演奏しまくっているのが、実に微笑ましい。

これだけ楽しそうで朗らかで明るい純ジャズな展開なので、パーソネルを確認するまでは、キャリントンと同世代か兄姉レベルの年齢のメンバーで和気藹々とやっているのかと思った(笑)。そして、パーソネルを見てびっくり。強面、強者の「おとーさん」ジャズマンばかりはないか(笑)。
 
 

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2023年10月22日 (日曜日)

マクレイヴンの最先端ジャズ

マカヤ・マクレイヴン(Makaya McCraven)は、1983年10月19日、仏パリ生まれのジャズドラマー(マルチ奏者)&プロデューサー。今年で40歳になる中堅に差し掛かる年齢。このマクレイヴン、現代ジャズ屈指のビート・サイエンティストと評価の高いドラマー。現代ジャズの最先端の音の一つを聴かせてくれる、現代ジャズの重要人物の一人になる。

Makaya McCraven『In These Times』(写真左)。2023年6月のリリース。他の作品と並行して、7年間の制作期間を経てリリースされた、現代ジャズ屈指のビート・サイエンティストが辿り着いた最高点であろう秀作。ちなみにパーソネルは、

Makaya McCraven (ds, sampler, perc, tambourine, baby sitar, synths, kalimba, handclaps, vibraphone, wurlitzer, organ), Junius Paul (b), Jeff Parker (g), Brandee Younger (harp), Lia Kohl (cello), Macie Stewart,Zara Zaharieva (vln), Marta Sofia Honer (viola), Greg Ward (as), Irvin Pierce (ts), Marquis Hill (tp, flh), Greg Spero (p), Rob Clearfield (p), Joel Ross -(vib, marimba), Matt Gold (g, per, baby sitar), De'Sean Jones (fl)。

オーケストラやラージ・アンサンブルのアレンジ、オーガニックなビート・ミュージックが織り込まれたマクレイヴン独特の音世界。サンプリング、リミックスも素晴らしい。5つのスタジオと4つのライブ演奏スペースで録音され、マクレイヴンが自宅でポスト・プロダクション作業を徹底的に行っているという。オーガニックで中毒性のあるビート感が独特で、現代ジャズの最高のエレ・ジャズともThe Jazz Files: Makaya McCraven評価できる内容。確かに「中毒性」が溢れている。
 

Makaya-mccravenin-these-times

 
重層的で肉厚な生楽器のアンサンブルとオーガニックなビートの掛け合わせは、音響的にも心地よい響き。これだけでも聴いていて気持ちが良い。ポスト・プロダクションを緻密に行なっているからといって、ジャズの即興性が損なわれている訳ではない。ましてや、「作られたジャズ」だからといって、聴く価値がない、と判断するのも違うだろう。ポスト・プロダクション前の演奏自体が、完璧にジャズしているし、即興性、創造性ともに高いレベルにある。

マイルスが開拓したエレ・ジャズ。ライヴ演奏をメインに、エレクトリック楽器の特性を活かして、即興性、創造性を最大限に広げた。そして、21世紀に入っての今、このマクレイヴンのエレ・ジャズは、ファンクネスを超えて、ワールドワイドなビートをメインに、独特の「クールな」、とびきり「カッコ良い」エレ・ジャズ。

タイトル曲の「In These Times」は、観客の拍手や歓声が、フェードアウト〜フェードインするように、変拍子のハンドクラップに変わるという「小粋」な始まり方。シンセの使い方はユーロビートの様でもあり、プログレッシヴ・ロックの様でもあり。そこに、生楽器のサックスやトランペット、フルートが入ってきて、ハープの音がアクセントを添える。マリンバもワールド・ミュージック的な躍動感を醸し出し、エレギの音が不思議な浮遊感を醸し出す。ワード(語り)の使い方もミステリアスで絶妙。

今年に入っての、意外と「とんでもない」内容のマクレイヴンの新盤。これまでのジャズが追求してきた「融合」の部分がこの盤の中で結実し、ビートの重要性を再認識させ、ジャズにおける即興性を再定義する。これも立派なジャス。これが現代の最先端のジャズの音の「一つ」である。マクレイヴンの次作は要注目である。
 
 

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2023年10月21日 (土曜日)

1970年代のファラオの名盤です

Pharoah Sanders(ファラオ・サンダース)。ファラオはコルトレーンの晩年に行動を共にし、コルトレーンの死後、後継者として一番名乗りを挙げたサックス奏者。力強いブロウ、スピリチュアルな演奏、長いフレーズと極端に短いフレーズを組み合わせたグニャグニャ・ラインが特徴。このグニャグニャ・ラインが「はまると癖になる」。

サンダースは「スピリチュアル ジャズ」初期の代表的存在。サンダースはコルトレーンの弟子、あるいはアルバート・アイラーが言ったように「トレーンは父であり、ファラオは息子」な存在。後年では、バラード集を出したりで、メンストリームなモード・ジャズにもその才覚を発揮した。つまりは、サックス奏者として素性がすごく良いのだ。

Pharoah Sanders『pharoah』(写真左)。1976年8, 9月の録音。ちなみにパーソネルは、Pharoah Sanders (ts, perc, vo), Bedria Sanders (harmonium/ track 1), Clifton "Jiggs" Chase (org/ tracks 2 & 3), Tisziji Munoz (g), Steve Neil (b), Greg Bandy (ds/ tracks 2 & 3), Lawrence Killian (perc)。1976年、フュージョン・ジャズ全盛期の中でのスピリチュアル・ジャズの名盤である。
 

Pharoah-sanderspharoah

 
1970年代のスピリチュアル・ジャズの音がする。浮遊感溢れるサイケデリックなエレギ、重量感&躍動感溢れるベース、そこにストレートで伸びのあるファラオのサックスが印象的なフレーズを吹き切る。後半にはハーモニウムまで参加する恍惚感溢れる、冒頭の「Harvest Time」は、スピリチュアル・ジャズの名演・名曲である。

基本は自由度の高いモード・ジャズ。この部分は正統派のメインストリーム志向の純ジャズの面持ちで、これだけでも聴き応え十分。この部分だけでも純ジャズ、スピリチュアル・ジャズとして名演の類なのだが、それぞれの曲の途中、完全フリーにブレイクダウンする。叫びとも咆哮とも言える豪快なフリーなブロウ。時代として、このフリーなブロウも聴き手に訴求する上で必要不可欠だったんだろう。まあ、今の耳で聴けば、このフリーなブロウの部分は必須では無いと感じるんだが...。

今回、このファラオの、スピリチュアル・ジャズの歴史に残る名盤『Pharoah』がリマスターが施され、CD・アナログそれぞれ2枚組限定ボックスセットにて初の正規リイシューがなされている。1枚目には、オリジナルの『Pharoah』本編。2枚目「Harvest Time」の未発表ライヴ音源2曲を収録している。スピリチュアル・ジャズ者の方々には必須のアイテム。通常のジャズ者にも十分訴求する、1970年代ファラオの名盤だと思います。
 
 

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2023年10月20日 (金曜日)

コロナ禍明けのポッターの快作

最近、活躍している若手、もしくは中堅ジャズマンについて、聴いたことの無いジャズマンのリーダー作については、PCにストックしている。どこかでまとめて聴こう、と思っているのだが、これがまた、なかなかその機会が無い。ストックはどんどん溜まるばかりで、この秋から、計画的に聴き進めることを決意した。

クリス・ポッター(Chris Potter)。米国シカゴ出身、1971年1月1日生まれ。今年で52歳になる、ジャズ・サックス奏者の中堅。1993年に初リーダー作『Presenting Chris Potter』 (Criss Cross) をリリースして以降、ほぼ1.5年に一枚のペースで堅実にリーダー作をリリースしている。

逆にサイドマンとしての実績は多彩。僕は「クリス・ポッター」の名前を、スティーリー・ダンのアルバム『トゥー・アゲインスト・ネイチャー』のレコーディング・メンバーとして知った。クリス・ポッターは、純ジャズのみならず、フュージョン、ファンク的なアプローチにも長けている。

Chris Potter『Sunrise Reprise』(写真左)。2020年9月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Chris Potter (sax, cl, fl, sampler/key), James Francies (p, key), Eric Harland (ds)。クリス・ポッターにとって、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる隔離期間後にレコーディングした最初のアルバムになる。
 

Chris-pottersunrise-reprise

 
クリス・ポッターのリーダー作の「まとめ聴き」の一発目にこの盤を選んだのに理由は無い。サックス奏者がトリオでやる時、ピアノレスのトリオというのは良くあるケースなのだが、この盤は、ベースレスの「サックス、キーボード、ドラム」のトリオ編成。この編成のサックス奏者のリーダー作は僕は見たことが無い。それがこの盤を選んだ理由。恐らく、このユニークな編成の演奏を聴けば、ポッターの個性が判るかな、と思った。

シンセのコズミック的なサウンドをバックに、ポッターの印象的な力感溢れるブリリアントなサックスが飛翔する。抒情的な演奏がベースだが、丁々発止としたインタープレイが心地よいテンションを提供する。アップテンポで複雑難解なフレーズも、さもシンプルで判りやすいフレーズの如く、何事もないように吹き切るポッター。凄みすら感じる。

キーボードのジェームズ・フランシーズとドラムのエリック・ハーランドがまた良い。キーボードとドラムの濃密で多彩なバックングが全編に渡って素晴らしい。ポッターとインタープレイをやり合うことはあっても、決してポッターの前には立たない。常にポッターのサックスを引き立てるバッキング。素晴らしいテクニックと感覚である。

全編に渡って、現代のメインストリームな純ジャズ志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズが悠然と展開される。抒情的な演奏が悠然と展開されるのだが、キーボードとドラムのバッキングが尖っていて、適度なテンションのもと、ポッターのサックスやフルートも結構、尖っていて、スリリングとは言えないまでも、濃密濃厚な切れ味の良いパフォーマンスが心地よい。

良い内容の盤をクリス・ポッターのアルバム聴きの第一弾に選んだと思う。コロナ禍明けのクリス・ポッターの快作である。
 
 

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2023年10月19日 (木曜日)

新しいビッグバンド・サウンド

ジャズのビッグバンドについては、コロナ禍にも関わらず、有名ビッグバンドについては、その組織を堅調に維持し、録音も順調にこなし、内容充実の好盤をリリースし続けている。これは素晴らしいことで、コロナ禍ゆえ、バンドのメンバー全員が集まってリハーサルをこなすことなど、なかなか出来なかったと思うのだが、その高度なテクニックとアンサンブルを維持する努力は並々ならぬものがあったのだろう。本当に頭の下がる思いである。

挾間美帆 feat. Danish Radio Big Band『Imaginary Visions』(写真左)。2021年3月の録音。挾間美帆の作曲&指揮、デンマーク・ラジオ・ビッグバンドの演奏。デンマークは2020年12月から2021年の2月までロックダウンで、そのロックダウンが解けたあとの録音とのこと。挾間美帆が作曲したオリジナル作品をビッグバンドで演奏するというのは初めて、とのこと。

2019年に彼女がデンマーク・ラジオ・ビッグバンドの首席指揮者に就任して以来、満を持してのオリジナル作品。これまで彼女の作品は、彼女自身が主宰するM_unitでの活動&レコーディングがメインだったので、本格的な正統派ビッグ・バンドでの初の録音になる。これは注目盤である。
 

Feat-danish-radio-big-bandimaginary-visi

 
まず、アレンジが個性的。伝統的なビッグバンドの正統派なアレンジなんだが、今までの正統派ビッグバンドのアレンジと響きと音の重ね方が違う。音の重なり方は重厚なのだが、どこが明るい感じのオープンな音の重ね方で、響きが軽快。重厚で複雑なビッグ・バンドのパフォーマンスでありながら、フレージングは軽やかで躍動感がある。今までに聴いたことがない、ビッグバンドのアレンジについつい引き込まれる。

かつ、ギル・エヴァンスのアレンジの如く、アドリブ・ソロをとる楽器のみならず、一つ一つの楽器の力量と個性を活かし、その集合体として相乗効果溢れるアンサンブルが素晴らしい。特に楽器一つ一つの音が分離して聴こえる様で、それがバラバラにならず、一体となって、バンドの音となり個性となる。狭間美帆の書く楽曲が良いのだろうし、そのアレンジも十分に考え抜かれたものなんだろう。このビッグバンドのアンサンブルも個性的。

狭間美帆ならではのビッグバンド・サウンドがこの盤にある。21世紀の新しい響きと新しい響きのアンサンブルを個性とした、新しいビッグバンド・サウンドの出現である。あまり、話題に上がっていない様だが、この狭間美帆の初のビッグバンド・サウンドは要チェックだろう。とりわけ、ビッグバンド者の方々には是非一聴を、と思う。
 
 

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2023年10月18日 (水曜日)

小沼ようすけのソロ・ギター盤

マイルスの聴き直しをちょっと離れて、最近のジャズの新盤のストックが溜まったので、順に聴き進めている。ここ1年、グロ=バルなジャズにおいても、和ジャズにおいても、内容の優れたアルバムが多いので、世界的にジャズのレベルはさらに上がったなあ、と感じるし、聴いていてとても楽しい。

現代ジャズ・ギターの名手の一人、カート・ローゼンウィンケルのギター・ソロ盤を聴いていて、我が国の現代ジャズ・ギターというのは、どういう状況になっているのだろうと思った。そういえば、ホーン楽器やピアノについては、我が国では古くから、優秀なミュージシャンが多く出ているが、ギターは? と問われれば、すぐに名前が出てこないのが正直なところ。

小沼ようすけ『Your Smile』(写真左)。2023年9月のリリース。名実ともに日本を代表するジャズ・ギタリスト小沼ようすけによる初のソロ・ギター・アルバム。仰向けに寝転びながらギターを弾く猫のイラストのジャケットが可愛い。アルバム『Jam Ka』(2010年)以降からコロナ禍までに書き溜めた曲から厳選されて録音されている、とのこと。

21世紀に入って、我が国のジャズ・ギター・シーンについては、確かに、小沼ようすけが第一人者だろう。純ジャズからワールドミュージックまで、幅広く音楽志向を広げて、様々な楽曲を展開してきたので、このソロ・アルバムもバラエティーに富んだ音楽志向のソロ演奏かと思いきや、徹頭徹尾、メインストリームな純ジャズ志向のソロ・パフォーマンスで埋め尽くされているのには、小沼の矜持を強く感じて、頼もしく感じた。
 

Your-smile

 
ウォームでエッジが丸い、やや太めの音色が個性的。テクニックは抜群。和ジャズらしく、ファンクネスはとても希薄、それでいて、しっかりオフビートしていて、ブルージーでジャジーな音色は、ガッツリ「ジャズしている」。小沼のオリジナル曲で占められているが、どの曲も流麗で温和で聴き心地が良いので「独りよがり感」は全くない。逆に、オリジナル曲がゆえ、小沼のギターの個性が強く感じられて良い。

テンポ的には、ミッド・テンポがメインなので、曲を聴き進めるうちに「飽きるかなあ」とちょっと危惧していたが、どうして、小沼のギターは、ところどころにアレンジや弾き方の面で、様々な工夫を施していて(これは相当高度なテクニックが無いとできない)、へ〜っ、ほ〜っと感心したり、聴き耳を立てているうちに、あっという間にラスト曲になってしまう。演奏の展開のバリエーションの豊かさと表現方法の引き出しの多さには感心することしきり、である。

2001年にデビュー・アルバム『nu jazz』をリリースして以降、ジャズ・ギターの優れた内容のリーダー作を順調にリリースしているが、まだ、我が国で人気がイマイチなのが残念。僕は、小沼ようすけのリーダー作はリリースされる度に聴いているのだが、ネット上を見てみても、小沼の人気はまだまだ。

しかし、小沼のジャズ・ギターは素性が良い。個性も独特の個性を持っていて、まだまだ伸びしろはある。人気の伸びしろもまだまだある。このソロ盤辺りから、そろそろブレイクして欲しいなあ。
 
 

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2023年10月17日 (火曜日)

マイルス『And Horns』再評価

このアルバムも、マイルスの『Birth of the Cool(クールの誕生)』に端を発した「クールというコンセプトのもと、ジャズにおけるアレンジの力を追求する」という明確なマイルスの音志向を踏まえないと、評価がガラッと変わるアルバムである。

『Miles Davis And Horns』(写真左)。1951年1月と1953年2月の録音。ちなみにパーソネルは、1951年1月の録音は、Miles Davis (tp) Bennie Green (tb) Sonny Rollins (ts -1,2,4) John Lewis (p) Percy Heath (b) Roy Haynes (ds)。1953年2月の録音は、Miles Davis (tp) Sonny Truitt (tb -3) Al Cohn, Zoot Sims (ts) John Lewis (p) Leonard Gaskin (b) Kenny Clarke (ds)。

メンバーは、ほぼ東海岸ジャズからチョイスしている。この盤は「クール」というコンセプトのもと、ジャズにおける「アレンジの力」を追求したリーダー作だが、1951年1月と1953年2月に収録セッションが分かれているところが「ミソ」。

1951年といえば、マイルスは筋金入りの「ジャンキー」だった頃。1953年2月は、マイルスが麻薬禍から脱した頃。1951年と1953年では演奏の質と雰囲気が異なる。パーソネルは、1951年の方が充実している。逆に、1953年のパーソネルは、麻薬禍に身を落としたマイルスの復帰セッションなので、おそらく信用が無かったのだろう、かなりやっつけのメンバーである。
 

Miles_davis_and_horns_2

 
1951年の録音は、基本的には、1949年録音の『Birth Of The Cool』のアレンジ&アンサンブルのイメージが根底にあるんだと思う。それでも、東海岸ジャズメン独特のアバウトさ、ラフさが災いして、西海岸ジャズに対抗できるだけの整然としたアンサンブルになっていないところはご愛嬌。マイルスも筋金入りの「ジャンキー」だった頃なので、どこか冴えないトランペットである。LPで言うと、B面の2曲目からラストの5曲目まで。曲目は「Morpheus」「Down」「Blue Room」「Whispering」。

それに比べて、1953年の録音は、「クール」というコンセプトのもと、ジャズにおける「アレンジの力」を発揮したなかなかの演奏になっている。マイルスの「クール・ジャズ」の一旦の完成形といっても良いだろう。特に、フロント楽器の相棒にソニー・ロリンズが参加しており、このロリンズの参加が、1953年の演奏をグッと締めている。LPで言うと、A面とB面の一曲目、曲目は「Tasty Pudding」「Floppy」「Willie the Wailer」「For Adults Only」。クール・ジャズを吹き進めるマイルスとロリンズの対比が良い。

1951年のセッションの内容がイマイチなのと、1953年のセッションの内容がマイルスの「クール・ジャズ」の一旦の完成形でアンサンブル重視の演奏なので、東海岸ジャズを全くイメージ出来ないところが、この盤はマイルスらしくない、と評判が芳しくない理由だろう。

しかし、1953年の録音は、マイルスの「クール・ジャズ」の一旦の完成形として評価できる。このマイルスの「クール・ジャズ」、いわゆるマイルスの考える「アレンジの力」は、マイルスのハードバップの中のスロー・テンポの曲、特にバラード演奏などに活用されていく。
 
 

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2023年10月16日 (月曜日)

マイルス『Conception』再評価

マイルス・ミュージックの始まりを理解するには、『Birth of the Cool(クールの誕生)』と『Dig』をしっかりと押さえておく必要がある。

『Birth of the Cool(クールの誕生)』は、ビ・バップの熱いアドリブ合戦に対比した「クール」というコンセプトのもと、ジャズにおける「アレンジの力」を示したリーダー作だった。また、『Dig』は、ビ・バップの自由さとリズム&ブルースが持つ大衆性の両方が共存する「ハード・バップの萌芽」を記録したものとされる。

つまり、マイルス・ミュージックの始まりは、ポスト・ビ・バップ、つまり、ビ・バップの次の演奏トレンドを追求したもので、そのベクトルは、一つは「クールというコンセプトのもと、ジャズにおけるアレンジの力」を追求するもの、もう一つは「ビ・バップの自由さとリズム&ブルースが持つ大衆性の両方が共存する」、のちのハードバップを創生するもの。この二つのベクトル、二つの志向で、マイルスは「ポスト・ビ・バップ」を追求していった。

Miles Davis & Lee Konitz『Conception』(写真左)。この盤は、マイルスの「クールというコンセプトのもと、ジャズにおけるアレンジの力」に焦点を当てて、それに類するセッションの録音曲をギャザリングしたもの。つまり、『Birth of the Cool(クールの誕生)』の延長線上にあるコンセプトに基づいて編集されたアルバムになる。

ちなみに録音日と収録曲については、1949年6月21日は「Prezervation」(オリジナルは78rpm single)、1950年1月6日は「Intoit」(オリジナルは78rpm single)、1950年3月15日は「I May Be Wrong」「So What」(オリジナルは10"LP)、1951年3月8日は「Odjenar」「Hibeck」「Yesterdays」「Ezz-Thetic」、1951年3月13日は「Indian Summer」「Duet for Saxophone and Guitar」(オリジナルは10"LP)。そして、1951年10月5日の「Conception」「My Old Flame」は、他のアルバムに先に収録されていたものの再収録。
 

Miles_konitz_conception_1

 
マイルスが、ビ・バップから離れて「ポスト・ビ・バップ」を追求し始めた1949年から1951年の間に、78rpm single、10"LPでリリースされた「クール」志向の演奏を12”LPに集めている。パーソネルは曲ごとに異なっているので、ここでは割愛するが、リー・コニッツ、スタン・ゲッツ、ジェリー・マリガン、ズート・シムズなど、米国西海岸ジャズ、もしくはクール・ジャズ志向のジャズマンがメイン。そこにマイルスがクールなトランペットで参入している。

そういう前提で聴くと、以前感じていた「違和感」は全く無い。東海岸ジャズではまだ存在しなかった、「クール」というコンセプトのもと、ジャズにおける「アレンジの力」を示したジャズ演奏がコンセプト。そこに中心人物の一人として、東海岸ジャズにおけるビ・バップの主要ジャズマンの一人であるマイルスがいる。これが「肝」なのだ。『Birth of the Cool(クールの誕生)』は、マイルスの一時の思いつきの産物では無かったことが、この盤の存在で良く判る。

以前、「この盤ほど、プレスティッジ・レーベルらしい盤は無いのではないか。やっつけの一発勝負の録音、フィーリングだけの録音時期の整合性を無視した「寄せ集めなアルバム編集」。この盤はそういう意味では凄い内容である」と書いたが、それは間違った評価である。この盤は78rpm single、10"LPでリリースされ散在していた『Birth of the Cool(クールの誕生)』の延長線上にある演奏を12”LPに集めた「優れもの」である。

この盤はマイルスをメインとした、「クール」というコンセプトのもと、ジャズにおける「アレンジの力」を示した演奏を集めた編集盤。プレスティッジ・レーベルお得意のフィーリングだけの録音時期の整合性を無視した「寄せ集めなアルバム編集」ではない。以前の間違った評価は取り下げる。この盤は、プレスティッジの総帥プロデューサー、 ボブ・ワインストックの「良い仕事」である。
 
 

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2023年10月15日 (日曜日)

マイルスの『Dig』 再び

Miles Davis『Birth of the Cool』。邦題『クールの誕生』。1949年〜1950年録音。ギル・エヴァンスやジェリー・マリガンら、有能なアレンジャーの「アレンジ」の下、バリトン・サックスやフレンチ・ホルン、チューバを含む9重奏団の演奏を録音した。ビ・バップの熱いアドリブ合戦に対比して、「クール」と称された本作。このアルバムの根底に流れているコンセプトが「クール」。ジャズにおける「アレンジの力」を示した最初の作品だと僕は思う。

ビ・バップの演奏の弱点である、聴き応えのある展開〜アレンジ、アドリブにおけるバリエーション溢れるインスピレーションの部分を強化して、ビ・バップの次なる演奏トレンドである「クール」。聞き手側の立場に立った、ビ・バップの弱点を克服する演奏トレンドのコンセプトが「クール」であった。

Miles Davis『Dig』(写真左)。1951年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Jackie McLean (as), Sonny Rollins (ts), Walter Bishop, Jr. (p), Tommy Potter (b), Art Blakey (ds)。まだ、マイルスがメンバー固定の自前のバンドを持つ前の頃の録音。

このアルバムに記録されたセッションは「ハード・バップの萌芽」を記録したものとされる。1951年と言えば、まだジャズの演奏のトレンドは「ビ・バップ」。ビ・バップは、最初に決まったテーマ部分を演奏した後、コード進行に沿った形でありながらも、自由な即興演奏(アドリブ)を順番に行う形式が主となる。テクニック優先のアドリブ芸を競うことが最優先とされた。

しかし、これでは演奏のメロディーや旋律の展開を楽しめない。いわゆる鑑賞音楽としてアーティステックな切り口を有しつつ、ポップス音楽として、多くの人々にも聴いてもらいたい。そういう欲求を踏まえて、ビ・バップの後を継ぐトレンドとして、ハード・バップが考案された(考案された、といっても、リハーサル的なセッションや録音を重ねた結果のことだとは思う)。
 

Miles_davis_dig_2

 
つまりは、ハード・バップにはビ・バップの自由さと、リズム&ブルースが持つ大衆性の両方が共存しているという訳。そして、そこに、前リーダー作『Birth of the Cool』、邦題『クールの誕生』で実験した、ジャズにおける「アレンジの力」を活かし、演奏曲のメロディーや旋律の展開を楽しみ、ロング・レンジのアドリブ展開で、奏者のテクニックと歌心を楽しむ、という「ハード・バップ」が成立していった、と僕は解釈している。

確かにそういう情報を基に、このマイルスの『Dig』を聴くと、なるほどなあ、と思う。1951年言えば、まだジャズのトレンドは「ビ・バップ」。そんな時代背景の中、この『Dig』の演奏は、確かにビ・バップでは無い。ビ・バップよりロングプレイなアドリブ展開の中に、旋律がもたらす雰囲気・味わいをしっかり織り込もうとしていることが良く判る。

ビ・バップよりも音数を少なくして、旋律がもたらす雰囲気・味わいを感じ取れる様にしつつ、テクニックは高度なものを要求するフレーズを紡ぎ出す。いきおいアドリブ部の演奏の長さは長くなる。そのロングプレイの中で、芸術性溢れるフレーズを展開為なければならない。テクニックと音楽の知識をしっかり持ったジャズメンでないと太刀打ち出来ない。

この『Dig』の演奏では、そんなハードバップのコンセプトを一生懸命に「実験」しているジャズメン達の様子がしっかりと記録されている様に感じる。なるほど、このアルバムに記録されたセッションが「ハードバップの萌芽」を記録したものとされる所以である。

さすがは「ジャズの革新性」を重んじるマイルス。既に1951年にして、ハードバップなコンセプトにチャレンジしている。もう一つのハードバップの萌芽の記録とされる、ブルーノートの名盤『A Night at Birdland』のライブ録音が1954年だから、如何にマイルスが先進性に優れていたか、が良く判る。僕はそういうマイルスが大好きだ。
 
 

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2023年10月14日 (土曜日)

マイルスの『クールの誕生』再び

マイルスのアルバムの記事を整理している。当ブログにおけるマイルスの記事は、かなり昔、このブログを始めて数年の頃、つまり、今を去ること、10年以上前に書かれたものが多い。読み返してみると、聴きが甘いなあ、と思うところがあるし、今とは評価の切り口が全く古いところもある。ということで、改訂を含めて、録音時期順にマイルスに関する記事をリメイクすることにした。

さて、マイルスのリーダー作は『クールの誕生』 Birth of the Cool(1949年〜1950年録音)に端を発する。

時はビ・バップ時代。ビ・バップ時代のマイルスは、主に、チャーリー・パーカーの陰で、サイドマンとして活躍していた。ビ・バップは、1948〜1950年。当時のジャズ界は「ビ・バップ」の全盛期。

演奏のテクニック、スピード、展開、インスピレーションを競う「ビ・バップ」。その頃、ビ・バップは、その演奏がテクニックとスピード優先、演奏者同士の競い合いに終始し、その最先端の演奏は、単純に、音楽として鑑賞に堪えるものではなくなっていた。そのテクニックを愛でる「アクロバティック」なマニア向けの「ジャズ」になりつつあった。

マイルスについては「演奏のテクニック、スピード」という点で、人後に落ちていたのは否めない。しかし、ビ・バップについては、いち早く、その「限界」を感じ取っていたのではないかと思われる。

そこでマイルスはどう考えたか。「これでは大衆音楽としてのジャズは駄目になる」と思った。「人のやってないことをやらないと生き残れない」と考えた。ひいては、ビ・バップの演奏では「女は口説けない」と考えた。

Miles Davis『Birth of the Cool』(写真)。1949年〜1950年録音。ちなみにパーソネルは、九重奏団が基本だが、録音毎に大きく変わるので、詳細は割愛する。中心人物は、Miles Davis (tp), Gerry Mulligan (bs) の二人。メンバーは、当時の米国西海岸ジャズのジャズマンを中心に選出されている。東海岸はマイルス以外、見当たらない。このパーソネルの偏りもこの盤の面白いところ。
 

Birth-of-the-cool

 
そこで、ビ・バップの演奏の弱点である、聴き応えのある展開〜アレンジ、アドリブにおけるバリエーション溢れるインスピレーションの部分を強化して、ビ・バップの次なる演奏トレンドを思索し始める。聞き手側の立場に立った、ビ・バップの弱点を克服する演奏トレンドのコンセプトを据える。「クール」である。

このアルバムの根底に流れているコンセプト。ギル・エヴァンスやジェリー・マリガンら、有能なアレンジャーの「アレンジ」の下、バリトン・サックスやフレンチ・ホルン、チューバを含む9重奏団の演奏を録音した。ビ・バップの熱いアドリブ合戦に対比して、「クール」と称された本作。ジャズにおける「アレンジの力」を示した最初の作品だと僕は思う。

この『クールの誕生』では、構成やアレンジを重視する関係上、プレーヤー個々の自発性が犠牲にされている、というが、聴き直してみるとそうでもない。優れたアレンジの演奏の下で、少なくとも、マイルスとマリガンのアドリブは全面に押し出されていて、バックの演奏のアレンジが優秀がゆえ、マイルスもマリガンもいマージネーション溢れる、優れたアドリブを展開している。十分に「ジャズ」しているのが判る。

しっかりアレンジされ、演奏の進行も事前準備されているのだが、じっくり聴くと、この「クール」のコンセプトを通過して、ビ・バップはハード・バップに移行したんだ、と納得できる。1954年2月21日、バードランドでの歴史的な夜に、突如として、ハード・バップが世に出た訳ではない。

マイルス、コニッツそしてマリガンは熱い演奏を繰り広げているし、しっかりアレンジされている関係上、楽器のハーモニーが素晴らしく、なかなかのジャズ・オーケストラのサウンドです。ジャズにおける「アレンジの力」。振り返って、聴き返してみると、結構、興味深く、楽しく聴けたりして、これはこれで「あり」だと僕は思っています。少なくとも、ジャズとして否定するもの、低く評価するものでは無いでしょう。

 
 

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2023年10月13日 (金曜日)

『Ahmad Jamal Plays』を聴く

2023年4月16日、アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が天に召された。まだ半年しか経っていない。もともと長生きで92歳での逝去だった。ジャマルについては、『At the Pershing: But Not for Me』を聴いて、ジャマルを知ってから45年。ずっとジャマルのリーダー作をリアルタイムで聴いてきたから、いまだに逝去したのが実感できない。

『Ahmad Jamal Plays』(写真左)。最初は弱小レーベルParrotからのリリース。Parrotが潰れて、Argoレーベルから再発された時は、タイトルは『Chamber Music of the New Jazz』。現在では、このArgoレーベルの『Chamber Music of the New Jazz』の方が通りが良い。

1955年5月23日、シカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Ray Crawford (g), Israel Crosby (b)。ピアノ、ドラム、ギターの「オールド・スタイル」のピアノ・トリオである。シカゴ出身のジャマル初期の盟友、ドラムのクロスビーと、ピッツバーグ出身のギターのクロウフォードが、ジャマルの脇を固める。
 

Ahmad-jamal-plays

 
実に良い雰囲気のラウンジ・ピアノが展開される。ピアノ、ベース、ギターの「オールド・スタイル」のピアノ・トリオが、ばっちりハマっている。ジャマルのピアノは、「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴。これが1950年代ジャマルの演奏スタイル。この「オールド・スタイル」のトリオ演奏が、ジャマルの「1950年代の個性」を増幅する。

こうやって聴いていると、ジャマルって、いつの時代も、ラウンジやライヴハウスで聴かせる「ラウンジ・ピアノ」が基本で、その音志向については、それぞれの時代のトレンドや流行に則って、ジャマル独自のスタイルを作り出しているのではないか、と思い始めている。聴き手の要求に応じて、ラウンジやライヴハウスで聴かせるジャズ・ピアノ。それがジャマルのスタイルなんだろう。

マイルスが欲しがったというジャマルのピアノ。それだけで、ジャズ・ピアノの偉大なスタイリスト、として語られることが多かったジャマル。その証拠として『At the Pershing: But Not for Me』ばかりがもてはやされるが、それは違うだろう。ジャマルは、その時代ごとに聴き手の要求に応じて、ラウンジやライヴハウスで聴かせるジャズ・ピアノが身上。時代ごとにスタイルは変わるが、ジャマルは、ジャズの歴史上、最も偉大な「ラウンジ・ピアニスト」だと思う。
 
 

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2023年10月 9日 (月曜日)

エンリコのローマでのライヴ盤

ここ2〜3年ほどだろうか、イタリアン・ジャズの至宝ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(以降、エンリコと略)のリーダー作を数多く目にする。新盤もあるし、以前のお蔵入り音源のリリースもあるし、以前リリースされたアルバムのリイシューもある。とにかく、エンリコの人気は尋常ではない。欧州ジャズにおけるピアニストの第一人者であることは事実だし、とても欧州のモダン・ジャズらしい響きは、確かにジャズ者万人向けのピアニストではある。

Enrico Pieranunzi, Joey Baron & Marc Johnson『Current Conditions - Live in Rome at Radiotre』(写真左)。2001年11月、ローマでのライヴ演奏。マーク・ジョンソンのベース、ジョーイ・バロンのドラム、という「プレイ・モリコーネ・シリーズ」のトリオによるライヴ演奏。2007年にリリースされている。今回、僕はこのライヴ盤は初めて聴いた。

「プレイ・モリコーネ・シリーズ」のトリオとは言っても、こライヴ盤では、モリコーネの楽曲は全く無い。トリオのメンバーそれぞれのオリジナル曲を持ち寄っての、21世紀の、欧州ジャズの「ネオ・ハードバップ」もしくは「ネオ・モード」な演奏がてんこ盛り。特に、マーク・ジョンソンのベース、ジョーイ・バロンのドラムという、現代における、最高レベルのベテラン・リズム隊に恵まれて、エンリコは自由奔放、変幻自在、硬軟自在に、モーダルなフレーズを弾きまくっている。
 

Enrico-pieranunzi-joey-baron-marc-johnso

 
このライヴ盤の魅力は、エンリコの欧州ジャズ的な、耽美的でリリカルでバップなピアノなんだが、その魅力をさらに押し上げているのが、マーク・ジョンソンのベース、ジョーイ・バロンのドラムの存在。このリズム隊の存在がエンリコのピアノの魅力を明らかに増幅している。このリズム隊、相当、強力にエンリコをバッキングし鼓舞しているのが、ありありと伝わってくる。

マーク・ジョンソンは、ビル・エヴァンスの最後のトリオのベース担当であったくらいで、エンリコの耽美的でリリカルでバップなピアノをよく理解し、よくサポートする様が実に頼もしい。そして、ジョーイ・バロンのドラムは、ピアノとベースのインタープレイの「底」をしっかり支え、自らもインタープレイの中に参加する。実は、ジョーイ・バロンのドラミングについては、こんなに素敵に、ネオ・ハードバップな、自由度と柔軟度の高いドラミングをするドラマーとは思わなかった。

音楽のサブスク・サイトを徘徊していて偶然見つけたライヴ盤であったが、これは「当たり」。ジャケはあまりに単純で、最初は、とるに足らない「イージーリスニング・ジャズ」と思って流したが、ジャケをよくよく見ると、エンリコ、ジョンソン、バロンの名前が見えるではないか。戻って、ストリームできいてみて、あらビックリである(笑)。しかし、エンリコのリーダー作にはハズレが無いなあ。感心することしきり、である。
 
 

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2023年10月 8日 (日曜日)

レジェンド・アルパートの新盤。

1970年代は「クロスオーバーからフュージョン」の時代。この「クロスオーバーからフュージョン」に台頭を現したジャズマンも多くいた。そして、21世紀に入って、そんな1970年代に台頭を現し、21世紀に入っても第一線で活躍を続けている「猛者」もいる。もう若くても70歳代だとは思うのだが、最近のジャズマンは息が長い。

例えば、ハーブ・アルパートと言えば、ポップス系ジャズのトランペッター&コンポーザー。また、A&Mレコードの創始者の一人。なお、A&Mの「A」はアルパート(Alpert)を指す。ちなみに、ニッポン放送の『オールナイトニッポン』のテーマソングである「ビター・スウィート・サンバ」は、ハーブ・アルパートの作。そんなハーブ・アルパートは、現在88歳。米寿である。

Herb Alpert『Wish Upon A Star』(写真左)。2023年9月のリリース。ハーブ・アルパートの通算49作目となる新録音アルバム。2011年以降、第一線に復帰し、「生けるレジェンド」として活躍するアルバートの元気溌剌としたトランペットが聴ける好盤である。アルパート、まだまだ現役である。

このアルバムでは、ジェリー・リードの「East Bound And Down」、エルヴィス・プレスリーの「(Marie's The Name) His Latest Flame」、ビートルズの「And I Love Her」、キャット・スティーヴンスの「Father And Son」、カーペンターズの「We've Only Just Begun」、ジャズ・スタンダード曲「When You Wish Upon A Star」など、我々が長年なれ親しんできた名曲のカヴァーがメイン。
 

Herb-alpertwish-upon-a-star

 
かといって、イージーリスニング志向と問われれば、答えは「No」で、アレンジが優秀がゆえ、聴き味の良い、上質のフュージョン・ジャズに仕上がっているのは立派。

この盤でのアルパートは、今年88歳とは思えない、溌剌としたトランペットを聴かせてくれる。往年の正確無比でハイテクニック、ハイノートも何その、バリバリ流麗で歌心溢れるブロウは、歳をとることによる影響はあるにせよ、概ね健在である。これには驚くばかり。

アルパートのトランペットは、透明感のある、明るくて、ちょっと哀愁感漂う音色。そして、ブリリアントで心地良い吹きっぷりが身上なのだが、この盤でもそんなアルパートの個性はしっかり感じることが出来る。1970年代のフュージョン・ジャズのアルパートを聴き親しんだ僕からすると懐かしい限り。

演奏の基本がしっかりしているのとアレンジが秀逸で、名曲のカヴァーがメインとはいえ、易きに流れていないところにアルパートの一流ジャズマンとしての矜持を感じる。ながら聴きに最適の「フュージョン・トランペット」の佳作です。とにかく、アルバートのトランペットの響きが懐かしくて良い。
 
 

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2023年10月 7日 (土曜日)

ローゼンウィンケルのライヴ盤

ジャズという音楽は「即興演奏」を旨とする音楽なので、じっくり腰を据えて制作されるスタジオ録音も良いが、やはり、ライヴ録音が聴きたくなる。

ジャズの場合、ライヴハウスやコンサート、ジャズ・フェスなどに足を運べば良いのだろうが、お気に入りの、推しのジャズメンについては、そうそう都合良く我が国に来日してくれる訳もなく、やはり、ライヴ盤のリリースに期待することになる。

Kurt Rosenwinkel『Undercover: Live at the Village Vanguard』(写真左)。2022年、NY, Village Vanguardでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Kurt Rosenwinkel (g), Aaron Parks (p, syn), Eric Revis (b), Greg Hutchinson (ds)。中堅の人気ジャズ・ギタリスト、カート・ローゼンウィンケルの、 NYの老舗ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ盤になる。

ローゼンウィンケルについては、僕のお気に入りのジャズ・ギタリストゆえ、デビュー作から追いかけてきた訳だが、スタジオ録音だけでなく、やはりライヴ・パフォーマンスが聴きたい。まさか、NYにまで足を運ぶ訳にもいかず鬱々していたら、今回、このビレバガでのライヴ盤がリリースされた。いやはやめでたい事である。

ローゼンウィンケルの、伸びの良いクールで単音と複雑なコード進行を織り交ぜて弾くアーバンでスムースなエレギの個性は、そのまま、ライヴで再現されている。
 

Kurt-rosenwinkelundercover-live-at-the-v  

 
逆にライヴがゆえ、スタジオ録音よりも、ローゼンウィンケルの弾き回しがホット。どこかアーバンな響き、どこか黄昏色の黄色く輝く様な音の響き。アーバンとはいえ大都会では無い、地方都市サイズの、少しフォーキーなアーバン感が心地良い。

このライヴ演奏は、ギターとキーボード、そしてベースとドラムのカルテット編成。ギターとキーボードがフロントのカルテット編成と言えば、パット・メセニー・グループ(PMG)を彷彿とさせるのだが、出て来る音世界は異なる。ローゼンウィンケルのギターもそうなんだが、パークスのキーボードはローゼンウィンケルの音志向を踏襲してはいるが、インタープレイ的にはローゼンウィンケルに相対し対峙している。

PMGのキーボードを担当していたライル・メイズは、メセニーの音志向を踏襲しつつ、メセニーのギターを引き立てる役割を担っているが、メセニーに対するインタープレイ的なアプローチはほぼ無い。このローゼンウィンケルのバンドにおいては、パークスはローゼンウィンケルと対等の表現者である。それが証拠に、パークスの特にシンセのアドリブ・ソロは圧巻。ローゼンウィンケルの音志向を外さず、その枠の中で、パークスの個性満載のキーボード・ソロを聴かせてくれる。

レヴィスのベースとハッチンソンのドラムが目立たないのが玉に瑕ではあるが、録音も良く、近年のローゼンウィンケルのライヴ盤として十分に楽しめる内容。これだけ密度の高いライヴ演奏を繰り広げているのだから、ローゼンウィンケルもパークスも全く隅に置けない。素直なライヴ・パーフォマンスばかりで、ローゼンウィンケルの正直なところがじっくり聴ける。良好盤です。
 
 

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2023年10月 6日 (金曜日)

ローゼンウィンケルのギターソロ

Kurt Rosenwinkel(カート・ローゼンウィンケル)。1970年、米国フィラデルフィア生まれのジャズ・ギタリスト。今年で53歳になる中堅。初リーダー・アルバム『East Coast Love Affair』(1996年)から、ほぼ1枚/年のペースで、堅実にリーダー作をリリースしている。

2016年には、独立した音楽レーベル Heartcore Records を設立し、この独自レーベルを基点に活動している。不思議とコロナ禍が始まった2020年辺りから、活動が活発になっているみたいで、新盤のレビューを見ていると、ローゼンウィンケルの名前をちょくちょく見かけるようになった。

Kurt Rosenwinkel『Berlin Baritone』(写真左)。2022年、ベルリンの「Heartcore Records Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Kurt Rosenwinkel (g) のみ。カート・ローゼンウィンケルの初のギター・ソロ盤になる。このソロ盤は「バリトン・ギター」というアコギを使用している。この「バリトン・ギター」を採用した効果が全編に渡って漲っている。

テンポはミッドテンポ中心のゆったりとしたテンポ。そんな余裕のあるテンポで、ローゼンウィンケルは、クールで印象的で、ちょっとワームな「バリトン・ギター」を弾き進めていく。この「バリトン・ギター」の音が実に印象的。思わず聴き耳を立て、しばらくジックリと聴き込んでしまう。

普通のギターとの違いは、ベースラインの低音。ベース・ギターの様に、ソリッドでタイトな低音が鳴り響く。このバリトン・ギター独特の低音が、ソロ・パフォーマンスにおけるベースラインを明確にしてくれる。これは、普通のアコギではなかなか出ない低音で、ここにもバリトン・ギター採用の効果が出ている。
 

Kurt-rosenwinkelberlin-baritone

 
そして、中音域の音が豊か。曲のメインフレーズや、アドリブ展開の弾き回しなどが、クッキリと浮き出てくる。そして、ストロークを奏でる時の音の分厚さ。とにかく、中音域から低音域の音の響きが豊かで厚みがある。まるで、ソロ・ギターの為にあるような「バリトン・ギター」である。ローゼンウィンケルの個性的な和音や繊細なタッチが明確に伝わってくる。

ローゼンウィンケルのギター・テクニックが冴え渡る。一本弾きのアドリブ・フレーズは耽美的で流麗。即興演奏のフレーズは、マンネリズムなど何処吹く風、新鮮な新しいフレーズがどんどん湧いて出てくる。どこかアーバンな響き、どこか黄昏色の黄色く輝く様な音の響き。アーバンとはいえ大都会では無い、地方都市サイズの、少しフォーキーなアーバン感。

クラシックの佳曲などを選んでいることもあって、20世紀のファンキーでブルージーな米国ジャズの音とは異なる、端正でアーティスティックな、どこか欧州ジャズ的な音。ローゼンウィンケルは米国出身のギタリストなのだが、出てくる音はどこか「欧州ジャズ的」。ここにも、ジャズのボーダーレス化を感じる。

ちなみに、バリトン・ギターは、ローゼンウィンケルが、2019年の 「NAMM Show」(世界最大規模の楽器見本市)で出会い、夢中になったらしい。また、このソロ・ギター盤であるが、バリトン・ギターの細やかな余韻まで、しっかりと捉えた録音がとても良い。
 
 

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2023年10月 5日 (木曜日)

典型的な欧州ジャズ・テイスト

Enrico Pieranunzi(エンリコ・ピエラヌンツィ、以降「エンリコ」と略)。1949年生まれのイタリアのジャズ・ピアニスト。今年74歳。イタリアン・ジャズの至宝。現在の欧州ジャズ・シーンにおける、モダンでコンテンポラリーなエバンス派の代表格。耽美的にテクニカルに良く鳴る右手と、絶妙な間を持って右手の旋律を支える左手のブロックコードが繰り出すが個性。

1975年の初リーダー作以来、クラシック音楽の響きとマナーを踏襲した、典型的な欧州ジャズ・テイストのピアノが特徴。テクニックは優秀、耽美的なフレーズから、バップなフレーズまで、その表現力は幅広く、奥が深い。

ここ2〜3年ほどだろうか、エンリコのリーダー作を数多く目にする。もともと多作のエンリコだが、特に最近は目立つ。こんなにリーダー作がリリースされるというのは、それだけ需要があるということなのだろう。確かに、エンリコのピアノ、今では欧州ジャズ・ピアノの重鎮的位置づけだし、欧州ジャズ・ピアノのジャンルを代表する、レジェンド級のピアニストである。

Enrico Pieranunzi & Jasper Somsen『Voyage in Time』(写真左)。2022年、オランダChallengeレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Jasper Somsen (b)。最近のトリオ作で、抜群の相性の良さを聴かせてくれていた、ピアノのエンリコ・ピエラヌンツィと、ベースのイェスパー・サムセンのデュオ盤である。
 

Enrico-pieranunzi-jasper-somsenvoyage-in

 
耽美的でリリカル、タッチは明確で弾き回しは流麗、そんな欧州ジャズならでは響きとフレーズが芳しいエンリコのピアノ。確かな技巧とピッチ、硬質でソリッドな弦の響き、歌心豊かなアドリブ・フレーズが芳しいサムセンのベース。この二人のデュオ演奏、インタープレイの展開は素晴らしいの一言。響きとフレーズは、明確に「欧州ジャズ」。

タイトルを見れば、「パヴァーヌ」「メヌエット」「サラバンド」など古典クラシック音楽を連想させる。それもそのはず。収録された楽曲は、バロック時代の典型的な舞踊組曲にインスパイアされた楽曲とのこと。

そのフレーズ、その音の重なり、そのフレーズの個性、確かに、バロック音楽であり、そんなバロック音楽のエッセンスを、モダン・ジャズに取り込んだ、いかにも「欧州ジャズ」らしい音世界が実に印象的。

この「バロック音楽のエッセンスを取り込んだジャズ」の中で、確かな技巧とピッチ、硬質でソリッドな弦の響き、歌心豊かなアドリブ・フレーズが芳しいサムセンのベースが重要な役割を担っている。サムセンの正確なベースラインが、バロック・ライクなフレーズを弾き進めていく。これが実に良い。そこに、エンリコの耽美的でリリカル、タッチが明確で技巧確かなピアノが寄り添う。

欧州ジャズって良いなあ、と改めて感じさせてくれる、素晴らしいデュオ演奏。イタリアのピアニストとオランダのベーシストが邂逅したデュオ演奏は、欧州ジャズを色濃く感じさせてくれる。近年のピアノ&ベースのデュオ演奏の傑作の1枚だろう。
 
 

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2023年10月 4日 (水曜日)

欧州ジャズ仕様のチックのソロ

チック・コリアにおいて、1971年、ECMレーベルへの移籍は、それまでの彼の個性と音楽性のまとめと、今後の音楽性の志向を定める良い機会になったと感じている。特に「Piano Improvisations」ソロ・ピアノ盤の2枚には、それまでの彼の個性と音楽性のまとめを捉えていて、僕にとっては、チックの個性を確認する時、必ず立ち戻る「重要盤」となっている。

Chick Corea『Piano Improvisations Vol.2』(写真左)。1971年4月21, 22日の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p) のみ。昨日ご紹介した『Piano Improvisations Vol.1』と同一日の録音。内容のレベルとしては、この「Vol.1」と同一なものになる。

が、この盤は、ECMレーベルの音志向を前提とした「チック独特の自由度の限りなく高いモーダルな演奏」と「チック独特のフリーな演奏」が詰まっている。今の耳で聴くと、ECM仕様のチックのモーダル&フリーなピアノ・ソロが展開されていると感じている。つまり、ECM仕様=欧州ジャズを前提とした「チックのモーダル&フリーなピアノ・ソロ」が、この盤の特徴になる。

そもそも、ピアノ・ソロ盤について、米国ジャズでは「モーダル&フリーなピアノ・ソロ」が見当たらない。モーダル&フリーなテナーはあるにはある。でも米国ジャズにおけるモーダル&フリーなテナーは、ベースやドラムなどの打楽器が必ず付いている。

恐らく、激情に則って、感情の赴くままテナーを吹くと、感情が先行してリズム&ビートを見失う可能性が高く、その防止措置として、打楽器がメインのリズム隊を入れているのだろう。

キースにしろ、セシル・テイラーにしろ、基本は欧州ジャズにあって、つまりは現代音楽、若しくは現代クラシックの影響下で、モーダル&フリーなインプロを展開するのが基本だからだろう。
 

Chick-coreapiano-improvisations-vol2

 
ピアノは打楽器と旋律楽器の両方を担える「一台でオーケストラ」が出来る楽器なので、現代音楽、若しくは現代クラシックの展開を、ジャズにおけるモーダル&フリーなインプロの応用することが可能なんだろうなあ、と思っている。

そんなECM仕様=欧州ジャズを前提とした「チックのモーダル&フリーなピアノ・ソロ」が全編に渡って展開されているのが、この『Piano Improvisations Vol.2』と解釈している。

しかし、興味深いのは、モンクの「Trinkle, Tinkle」と、ショーターの「Masqualero」という、米国ジャズにおける「ミュージシャンズ・チューン」を演奏していること。まあ、ECMの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーが了解したもんだ、と思うのだが、この2曲のソロ・パフォーマンスがとても興味深い。

この2曲だけは「チック独特のモーダル&フリーな演奏」を展開している。ECM仕様のそれでは無い。他の自作曲のインプロと明らかに雰囲気が違う。この2曲のパフォーマンスに、音楽家としてのチックの矜持を強く感じる。

後にセルフ・プロデュースをガンガンやっていくチックである。プロデュース能力もかなり高いレベルだったのだろう。この2曲は、アイヒャーの影響下には無いと感じる。明らかにチック単独の「チック独特のモーダル&フリーな演奏」である。

欧州ジャズを前提とした「モーダル&フリーなピアノ・ソロ」については、チックの今後のキャリアにおいて、避けては通れない、絶対に経験しておかなければならないものだったのだろう。

その欧州ジャズを前提とした「モーダル&フリーなピアノ・ソロ」を経験するには、ECMの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの薫陶を受けることが最適であり、近道だったのではないか、と想像している。

チックのソロ・ピアノ盤については、意外とその数は少ない。チックの個性と音楽性のショーケースとしての『Piano Improvisations Vol.1』と『Piano Improvisations Vol.2』。この2枚は、チックのピアノ、チックの音楽を理解する上で、必聴のアルバムである。この2枚のソロ・ピアノ盤を聴けば、チックの音楽性の幅の広さと奥深さを十分に感じることが出来る。
 
 

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2023年10月 3日 (火曜日)

チックの個性が出揃ったソロ盤

チック・コリアの逝去の伴い、2022年5月、今一度、チック・コリアのリーダー作を「今の耳」で聴き直す作業に入った訳だが、今年に入って、いろいろ、私生活で面倒なことが相次ぎ、8ヶ月間、開店休業状態だった。が、やっと整理できて、今日、再開である。

チック・コリアはデビュー当時、新主流派の一歩先を行く、ばりばりのメンストリーム系の純ジャズの担い手で、モードからフリーまで、硬派な純ジャズをガンガンやっていた。そして、マイルスにスカウトされ、エレ・マイルスのバンドでキーボードを担当。チック独特のモードから現代音楽っぽいフリーなマナーで、ローズをバリバリに弾きまくっていた。当然、マイルスからの影響は大きく、1969年5月録音の『Sundance』まで、マイルスの影響は大であった。

が、チックは、その「エレ・マイルスからの音楽的影響」からの脱却を図る。チック自身のオリジナリティーを表現する為、欧州のECMレーベルと契約する。ECMレーベルの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの下、米国ジャズの影響下から脱して、欧州ジャズにおける「チック独特のモードから現代音楽っぽいフリー」を追求する。

Chick Corea『Piano Improvisations, Vol.1』(写真左)。1971年4月21, 22日の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p) のみ。チック・コリアの初ソロ・ピアノ盤。ソロ・ピアノは、その演奏するピアニストの個性が露わになる、というが、このチックのソロ盤は「その通り」の、ソロ・ピアノの名盤である。
 

Chick-coreapiano-improvisations-vol

 
チック;コリアの音楽性の1つに「ファンタジーとロマンティシズム」があるが、これは、恐らく、クラシック音楽からの影響、特に、欧州ジャズのジャズ・ピアノ(特に北欧ジャズなど)に触発されて表出した個性だと思われる。その表出が、このソロ盤のA面にある。冒頭の「Noon Song」など、チックの「ファンタジーとロマンティシズム」が蔓延している。これは、当時のジャズとして、新しい表現だった。メロディアスで流麗、キャッチャーなフレーズ。チックの面目躍如である。

そして、欧州ジャズの影響下での「チック独特のキャッチャーでモーダルな演奏」は、A面の2曲目以降、「Song for Sally」から「Sometime Ago」に満載。この欧州ジャズの影響下での「チック独特のキャッチャーでモーダルな演奏」が、チックの、この盤以降の「チック独特のキャッチャーでモーダルな演奏」の基本となっていく。後のアルバムに現れる個性的なフレーズの断片が、このA面に散りばめている。

B面は「チック独特のフリーな演奏」がてんこ盛り。この欧州ジャズの影響下でのチックのフリーなピアノ演奏は圧巻。フレーズの基本は「現代音楽」と「現代クラシック」。そこにハイテクニックで硬質なタッチのチックが、様々なバリエーションの、チック独特のフレーズが湯水の如く湧いて来る。イマージネーションの幅広さと奥深さ。チックの才能の凄さを再認識する。

ECMレーベルに移籍して、まずは『A.R.C.』で、「限りなく自由度の高いモーダルな演奏からフリー」をぶっ放したチックであるが、このソロ・ピアノ盤で「ファンタジーとロマンティシズム」、そして「チック独特のキャッチャーでモーダルな演奏」が露わになった。この『Piano Improvisations, Vol.1』で、チックの個性が出揃った。ECMレーベルに移籍して正解だったことになる。
 
 

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2023年10月 2日 (月曜日)

最初期のアーマッド・ジャマル

Ahmad Jamal(アーマッド・ジャマル)。1950年代のジャマルは「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴。この特徴を最大限活かした「1950年代ジャマル」の傑作が、1958年1月16日のライヴ録音『But Not For Me』。

Ahmad Jamal『The Piano Scene of Ahmad Jamal』(写真左)。1951年10月, 1952年5月はシカゴでの、1955年10月はNYでの録音。1959年、Epicレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Ray Crawford (g), Eddie Calhoun, Israel Crosby (b)。アーマッド・ジャマルの初リーダー作になる。発売は録音年の8年後のリリースにはなったが....。

この1951年〜1955年までのセッションの寄せ集めだけれど、1950年代のジャマルは1951年の録音時点で完成していることが良く判る。そして、内容的には「ビ・バップ」の域を出ていない。目立つのはジャマルのピアノ、しかし、ジャマルはテクニックを最大限にひけらかしたり、高速フレーズを弾きまくったりはしない。「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選した、落ち着いた弾き回し。
 

Ahmad-jamalthe-piano-scene-of-ahmad-jama

 
ラウンジ・ピアノの職人、アーマッド・ジャマルの真骨頂。ハードバップな熱気は無い。何処までもクールに弾き回されるピアノ。ややもすれば「イージーリスニング・ジャズ志向」になりがちなんだが、ジャマルはそうはならない。「間」の取り方が絶妙で、フレーズがどこまでもジャジー&ブルージーなところが理由だろう。

シカゴ生まれのベーシスト、イスラエル・クロスビーはジャマルの初期のキャリアでは欠かせないベーシスト。このクロスビーの堅実でソリッドなベースが、演奏のベースラインをしっかり押さえているからこそ、ジャマルは厳選した音数と絶妙の間で、印象的なフレーズを弾き続けることが出来る。

ギターのレイ・クロフォードが参加してのトリオ演奏は小粋で味がある。ラウンジ・ピアノの面目躍如的な演奏がギッシリ。スピーカーに対峙して聴き込むも良し、何かしながらの「ながら聴き」も良し。実に趣味の良いラウンジ・ピアノ。演奏全体の展開は「クール&ブラック・ビューティー」。マイルスが一時期ぞっこんだったのも理解出来る。
 
 

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2023年10月 1日 (日曜日)

ガーランドとホーキンスの佳作 『Blue World』

伴奏上手のレッド・ガーランドのピアノ。フロント管の担い手が代わったら代わったで、サポートのやり方を微妙に変えて、その時そのロキのフロント管に合ったバッキングをする。しかも、ガーランドの個性を損なわず、にである。いかにガーランドがプロフェッショナルで、優れたテクニックを持っているかが良く判る。

Coleman Hawkins & The Red Garland Trio『Swingville, Vol.1・Blue World』(写真左)。1959年8月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Coleman Hawkins (ts), Red Garland (p), Doug Watkins (b), Charles "Specs" Wright (ds)。プレスティッジ・レーベルの傍系レーベル「Swingville」からのリリース。

Swingvilleレーベルの特徴は、スイング・ジャズの名手達がハードバップのスタイルで演奏すること。スイング・ジャズの演奏形態、演奏マナーをベースにしつつ、ハードバップに準じて、「聴かせる」演奏のアレンジをしっかり施し、ロングレンジのアドリブ・ソロで、演奏者の個性をしっかりと表現する。これが意外と聴き応えがある。

このコールマン・ホーキンス(写真右)のテナー・サックスがフロント1管のワン・ホーン・カルテット編成。コールマン・ホーキンスだけがスイング時代から第一線で活躍してきたジャズマンで、バックを司るガーランド・トリオはハードバップ時代の手練のメンバー。どんな内容に仕上がっているだろう、と興味津々。
 

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ホーキンスはオールド・スタイルのスイング風のテナー・サックスなんだが、ガーランド・トリオをバックにして、演奏スタイルはハードバップ。テクニックに優れ、ダンディズム溢れる、骨太で悠然とした、低音が魅力のホーキンスのテナーは演奏スタイルやトレンドを選ばない。

しかし、ホーキンスのテナー・サックスよりも優れたパフォーマンスを発揮しているのは、ガーランドのピアノ。ガーランドの伴奏は機微に溢れ、小粋に、絶妙にホーキンスのテナーを支え、鼓舞する。しかも、ガーランドの個性はちゃんと前面に押し出されていて、ホーキンスのテナーより、ガーランドのピアノの方が目立っている。

ガーランドのピアノが目立つということは、ガーランドのハードバップ志向がしっかり出ているということ。そんなハードバップ志向バリバリのリズム・セクションをバックに、ホーキンスがオールド・スタイルのテナーを吹きまくる。

違和感は全くない、どころか、ホーキンスのテナーはハードバップ志向でも全然いける。逆に、ホーキンスのテナーを改めて見直した。スイングとハードバップの邂逅というよりは、ホーキンスのテナーの柔軟性とテクニックの優秀性。それをしっかりと理解し支える、ガーランドの伴奏テクニックの優秀性。その2つの優秀性の「化学反応」を聴くことが出来る、ガーランドとホーキンスの佳作である。
 
 

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