ジャズ喫茶で流したい・267
グローバル・レベルで見ると、ジャズ・ギタリストについては、新しい世代の「跡を継ぐもの」として、それぞれの時代でメジャー・デビューする新進気鋭のギタリストが現れ出てくる。が、我が国では、それぞれの時代でメジャー・デビューしてくる新進気鋭のジャズ・ギタリストの数は少ない。
日本のジャズ・ギタリストは、と問われたら、まず頭に浮かぶのが、渡辺香津美、増尾好秋、川崎燎、井上銘、小沼ようすけ、くらい。圧倒的に数が少ない。現在、第一線で活躍しているメジャーな存在は、井上銘、小沼ようすけ、辺りかな。
しかし、地方やライブハウスをメインに活動している「マイナーな存在」に目を向けると、我が国の中でも意外と多くのジャズ・ギタリストが存在する。ネットのアルバムのニュー・リリースの情報を見ていると、時々、単発でリーダー作をリリースしたりするので、その存在をキャッチでき、そのリーダー作を拝聴できたりする。良い時代になったものだ。
竹田一彦『St. Louis Blues』(写真左)。2022年6月2日、京都「BF Garden Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、竹田 一彦 Kazuhiko Takeda (g), 神田 芳郎 Yoshirou Kanda (b)。実に渋い内容のギターとベースのデュオ演奏。
竹田一彦は、1936年奈良県天理市生まれ。関西地方をメインに、1950年代後半から現在まで、65年に渡り活躍を続けてきた関西ジャズ界の重鎮ジャズマン、ベテラン・ギタリスト。今年で87歳。今回、新リリースの『St. Louis Blues』は、昨年の録音なので、86歳でのパフォーマンスになる。今回は、たまたま、この新リーダー作をアップル・ミュージックで見かけて、即日、拝聴した。
一言で言うと「凄くクールで渋い」ジャズ・ギターが堪能できる優秀盤。コクのある味わい深いトーン、切れ味よく微妙にノイジーでジャズっぽいフレーズ。テクニックは確か、アドリブ展開は流麗かつアーシー&ブルージー。極上の本格派、メインストリーム志向のジャズ・ギター。冒頭のタイトル曲「St. Louis Blues」を聴くだけで、この竹田と神田のデュオ演奏の世界に引き込まれる。
ソリッドで鋼性の高い、弾力あふれる重低音のアコースティック・ベースがイントロを担う。そこに、適度なテンションを張った、切れ味よく、芯の入った、アーシーでブルージーな竹田のギターが絡んでくる。凄くクールで渋いフレーズの連発。
ギターとベースのデュオなので、演奏の基本は「静謐の中のダイアローグ」。時にユニゾン&ハーモニー、時にウォーキング・ベースをバックにギターのソロ、時にギターのリズムをバックにベースのソロ。職人芸よろしく、高いテクニックに裏打ちされた充実のフレーズ展開。
シンプルでリリカルでアーシーでブルージー、こんな魅力的なジャズ・ギターがあるんや、と感心を通り越して「感動」した。小粋なスタンダード曲をメインに、竹田のアーシーでブルージーなギターが、唄うがごとく、囁くがごとく、語るがごとく、弾き進んでいく。そこにピッタリ寄り添い、フレーズの「底」を押さえ支える神田のベース。
これはこれは、素晴らしい内容のギター&ベースのデュオである。今は晩秋、晩秋の夜に一人耳を傾けるジャズ盤に最適な一枚。良いアルバムに出会えた。心がほっこり暖かくなる。
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