« 硬派で純ジャズなマクブライド | トップページ | ショーターの異質なエレ・ジャズ »

2023年9月 2日 (土曜日)

ショーター独自のエレ・ジャズ

ウェザー・リポート(Weather Report・WRと略)が解散したのが1986年。実にあっけない幕切れだった。

『Weather Report(1981)』のリリース後、ベースのジャコ・パストリアス、ドラマーのピーター・アースキンが抜けて、新生WRは明らかにザヴィヌル志向の音作り。アルバムを重ねる毎に、この「ザヴィヌル志向」は強くなり、ラストの『This Is This!』では、双頭リーダーの相棒、ショーターは名前を連ねているだけになっていた。

このWRのラスト『This Is This!』の音作りを聞けば、ザヴィヌルのサウンド志向は良く判る。ファンク・グルーヴを湛えたワールド・ミュージック志向なジャズロック。エスニック、アフリカンな響きが特徴。ザヴィヌルはWR解散後、ウェザー・アップデート、ザヴィヌル・シンジケートと次々にバンドを結成し、後期WRの影を追い続けた。

Wayne Shorter『Atlantis』(写真左)。1985年の録音・リリース。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ss, ts), Joseph Vitarelli (key), Michael Hoenig (syn), Yaron Gershovsky, Michiko Hill (ac-p), Larry Klein (el-b), Ralph Humphrey (ds), Alex Acuña (ds, perc), Lenny Castro (perc), Jim Walker (fl)。

このアルバムには有名ジャズマンはいない。ショーターのソロアルバムには、必ずと言って良いほどその名を連ねていた、盟友のハンコックすら無関係である。これには驚いた。セッションへの参加ジャズマンは沢山いるが、演奏全体の印象は「ショーターのワン・ホーン・アルバム」。全面的にショーターの作曲と、ショーターのサックスの音を聴くアルバムである。
 

Wayne-shorteratlantis

 
それほど、この盤は「ショーターで一杯」。それまでのショーターの「ニュー・ジャズ」における個性である、ブラジリアン、プログレ、コズミック、そして黒魔術。そんなショーターの嗜好が理路整然と反映されたショーターのソロ・アルバムである。

WRの双頭リーダーの片割れ、ウェイン・ショーターはどんなサウンドを追求するのか。この答えがこのショーターのリーダー作にある。実はこのアルバム、WRのラストの『This Is This!』の前にリリースされている。WRもショーターも同じレコード会社Columbia。どうして、こういう順番のリリースになったのか、当時は戸惑ったものだ。

それもそのはず、この『Atlantis』の音志向の基本はWR。それも、後期WRから「ザヴィヌル志向」を消して、当時のジャズ最先端、マイルスなどが追求していた、コンテンポラリーでメインストリームなエレ・ジャズの音志向を反映している。その音志向の中で、ショーター独自のモーダルなフレーズ、展開が散りばめられていて、これが実は「真の後期WRの音」じゃなかったのか、と強く感じるくらい、インパクトある音世界だった。

ショーターは自伝に「海(航海)を大きなテーマに全体を統べたハンコックの『処女航海』のように、コンセプチュアルなアルバムでもある」とショーターは自伝に書いているが、全体を聴き通してみて、ふ〜んそうなんか、と思うくらい。それでも、それぞれの演奏が実に充実していて、何回聴いても、聴く度に新しい発見があって、なかなか「飽きない」。

ショーターのリーダー作の中でも、エレ・ジャズの歴史の中でも地味な存在なアルバムだが、どうして、これ「エレ・ジャズの名盤」の1枚かと。とにかく聴いていて楽しいし心地良い。良いエレ・ジャズです。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« 硬派で純ジャズなマクブライド | トップページ | ショーターの異質なエレ・ジャズ »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 硬派で純ジャズなマクブライド | トップページ | ショーターの異質なエレ・ジャズ »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー