ムーディーと言うよりはクール 『Bass-Ment Blues』
私生活でいろいろと悩ましい出来事が続くと、心が疲れてくる。そういう時に、硬派で最先端を行くアーティスティックなジャズはいけない。心からリラックスして聴くことの出来る、小粋で味のあるモダン・ジャズが良い。それも「管無し」が良い。管は疲れた心に刺さってくる。こういう時は「ピアノ・トリオ」である。
Red Garland Trio『Moodsville Volume 6 ・Bass-Ment Blues』(写真左)。1958年11月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。ガーランド「鉄壁のトリオ」である。「Moodsville」は、1950年代の終盤にプレスティッジが始めた、恋愛中にカップルに向けてムーディーな音楽を提供しようと作ったシリーズ。そのシリーズの6枚目のアルバムになる。
レッド・ガーランド・トリオの音は「金太郎飴」。ガーランドの「ブロック・コード+右手のシングル・トーン」のシンプル・ピアノに、骨太で安定感抜群のチェンバースのベース、多彩で安心感抜群のテイラーのドラム、絵に描いた様な、ジャズのピアノ・トリオの「標準」の様なパフォーマンス。どんなスタンダード曲でも、オリジナル曲でも、このトリオの演奏トーンは変わらない。それでも、ガーランドのピアノについては、不思議と「マンネリ感」が希薄。またか、と思わせない様に、弾き方やニュアンスに色々と工夫を凝らしているように感じる。
1950年代の終盤にプレスティッジが始めた、恋愛中にカップルに向けての1枚、このガーランド・トリオの演奏は実に小粋で味がある。ミッドテンポからスローテンポ、ブルースからバラード、ムーディーな曲を、ガーランドの「ブロック・コード+右手のシングル・トーン」のシンプル・ピアノが弾き進めている。寛ぎ度合いマックス、伸び伸びリラックスしたパフォーマンスがとても良い雰囲気を醸し出す。
バックのポルチェンのベース、テイラーのドラムも、切れ味良く、小粋に洒脱にガーランドのピアノを支え、鼓舞する。この職人芸的リズム・セクションのリズム&ビートが、この「恋愛中にカップルに向けてムーディーなピアノ・トリオ演奏」を、イージーリスニング志向では無く、優れたハードバップ志向のモダン・ジャズに昇華させている。
ムーディーではあるが、内容の濃いハードバップなピアノ・トリオ。決して、イージーリスニング志向になっていないところが立派。切れ味の良いガーランドのシンプル・ピアノは、ムーディーと言うよりは「クール」。温かみのある「クール」なトリオ演奏は、ガーランド「鉄壁のトリオ」の真骨頂。「Moodsville」からのリリースとは言え、内容は「硬派」。素敵なピアノ・トリオ盤です。
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