« 1990年代の唯一のリーダー作 『High Life』 | トップページ | ガーランドとロックジョウの佳作 『The Blue Room』 »

2023年9月29日 (金曜日)

ムーディーと言うよりはクール 『Bass-Ment Blues』

私生活でいろいろと悩ましい出来事が続くと、心が疲れてくる。そういう時に、硬派で最先端を行くアーティスティックなジャズはいけない。心からリラックスして聴くことの出来る、小粋で味のあるモダン・ジャズが良い。それも「管無し」が良い。管は疲れた心に刺さってくる。こういう時は「ピアノ・トリオ」である。

Red Garland Trio『Moodsville Volume 6 ・Bass-Ment Blues』(写真左)。1958年11月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。ガーランド「鉄壁のトリオ」である。「Moodsville」は、1950年代の終盤にプレスティッジが始めた、恋愛中にカップルに向けてムーディーな音楽を提供しようと作ったシリーズ。そのシリーズの6枚目のアルバムになる。

レッド・ガーランド・トリオの音は「金太郎飴」。ガーランドの「ブロック・コード+右手のシングル・トーン」のシンプル・ピアノに、骨太で安定感抜群のチェンバースのベース、多彩で安心感抜群のテイラーのドラム、絵に描いた様な、ジャズのピアノ・トリオの「標準」の様なパフォーマンス。どんなスタンダード曲でも、オリジナル曲でも、このトリオの演奏トーンは変わらない。それでも、ガーランドのピアノについては、不思議と「マンネリ感」が希薄。またか、と思わせない様に、弾き方やニュアンスに色々と工夫を凝らしているように感じる。
 

Red-garland-triomoodsville-volume-6-bass

 
1950年代の終盤にプレスティッジが始めた、恋愛中にカップルに向けての1枚、このガーランド・トリオの演奏は実に小粋で味がある。ミッドテンポからスローテンポ、ブルースからバラード、ムーディーな曲を、ガーランドの「ブロック・コード+右手のシングル・トーン」のシンプル・ピアノが弾き進めている。寛ぎ度合いマックス、伸び伸びリラックスしたパフォーマンスがとても良い雰囲気を醸し出す。
 
バックのポルチェンのベース、テイラーのドラムも、切れ味良く、小粋に洒脱にガーランドのピアノを支え、鼓舞する。この職人芸的リズム・セクションのリズム&ビートが、この「恋愛中にカップルに向けてムーディーなピアノ・トリオ演奏」を、イージーリスニング志向では無く、優れたハードバップ志向のモダン・ジャズに昇華させている。

ムーディーではあるが、内容の濃いハードバップなピアノ・トリオ。決して、イージーリスニング志向になっていないところが立派。切れ味の良いガーランドのシンプル・ピアノは、ムーディーと言うよりは「クール」。温かみのある「クール」なトリオ演奏は、ガーランド「鉄壁のトリオ」の真骨頂。「Moodsville」からのリリースとは言え、内容は「硬派」。素敵なピアノ・トリオ盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« 1990年代の唯一のリーダー作 『High Life』 | トップページ | ガーランドとロックジョウの佳作 『The Blue Room』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 1990年代の唯一のリーダー作 『High Life』 | トップページ | ガーランドとロックジョウの佳作 『The Blue Room』 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー