硬派でバップなキャノンボール
エマーシー・レコード時代は「大衆受けする売れるジャズ」を余儀なくされたキャノンボール・アダレイ。ビッグバンドや弦オケをバックにした、ゴージャズな「イージーリスニング志向のジャズ」盤を幾枚かリリースする。小コンボのリーダー作も3枚ほどあるが、当時、成熟しつつあるハードバップな雰囲気では無く、どこか聴き易い柔和なトーンで滑らかな吹奏に終始している。
Cannonball Adderley『Portrait of Cannonball』(写真左)。1958年7月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Blue Mitchell (tp), Bill Evans (p), Sam Jones (b), Philly Joe Jones (ds)。キャノンボールのアルト・サックスと、ミッチェルのトランペットがフロント2管のクインテット編成。
この盤から、やっとエマーシーを離れ、リヴァーサイド・レーベルに移籍したキャノンボール。水を得た魚のように、伸び伸びとエネルギッシュに、ブリリアントな響きを振り撒きながら、お得意のファンキーなアルト・サックスを吹きまくっている。フロントの相棒、ミッチェルのトランペットとの相性も良く、エマーシー時代とはちょっと違う、エネルギッシュで切れ味良く、ファンキーな吹奏を繰り広げている。
リズム・セクションがとても良好。当時、リヴァーサイドの専属ピアニストだったビル・エヴァンス、ソリッドで躍動感溢れる重音ベースのサム・ジョーンズ、ミスター・ハードバップ・ドラマーのフィリージョーのトリオが実にストレート・アヘッドでバップなリズム&ビートを叩き出す。とても切れ味の良い、ストイックで硬派なバップ・ビート。このリズム隊が、この盤を上質のハードバップ盤に仕立て上げている。
キャノンボールのアルト・サックスとミッチェルのトランペットは、双方の個性通り、ファンキーな吹奏なんだが、前述の様な「ストレート・アヘッドでバップなリズム&ビート」を叩き出すリズム隊に合わせて、ファンキー度合い控えめ。ストレート・アヘッドな純ジャズ志向の、切れ味良いバップな吹奏を繰り広げるキャノンボール&ミッチェルは意外と珍しい。
リヴァーサイドに移籍して、いきなり、どっぷりファンキー・ジャズなアルバムにしなかったところに、リヴァーサイドの総帥プロデューサー、オリン・キープニュースの深慮遠謀を感じる。キャノンボールは決して「コマーシャルなジャズマン」では無い、第一線級の優れたハードバッパーなのだ、と主張するように、ストイックで硬派でバップなキャノンボールがこの盤の中で躍動している。
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