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2023年8月の記事

2023年8月31日 (木曜日)

マンスの真の個性が満載な盤

ジュニア・マンスのピアノの真の個性とは何か、を追求している。初リーダー作『Junior』を聴き込み、そしてリーダー作2作目『The Soulful Piano of Junior Mance』を聴き込む。

『Junior』は大衆受けする売れる内容。イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易い、典型的なピアノ・トリオ演奏。『The Soulful Piano of Junior Mance』は、すっきり爽やか、端正で明確な「ファンキー・ジャズ」。端正で明確なタッチ、コッテコテなファンクネスは無くて、スッキリ爽やかなグルーヴ感。さて、どちらがマンスのピアノの本質か。

Junior Mance『Big Chief!』(写真左)。1961年8月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Jimmy Rowser (b), Paul Gussman (ds)。マンスの3枚目のリーダー作。お得意のトリオ作。

アタックの強い切れ味の良いタッチ。右手は多弁。しかし、五月蠅くは無い。「饒舌」一歩手前。ほど良い「多弁さ」。流麗で端正、破綻が無い。ファンクネスは軽め、爽やかでライトなブルージー感が個性。そんなマンスのピアノが溢れんばかりの3枚目のリーダー作である。

冒頭のタイトル曲「Big Chief!」はゴスペル風のブルースだが、決して、ファンクネス&ソウルはコッテコテでは無い。ピアノとベースのコール&レンポンスも印象的だが、決して、コッテコテのファンキー・ジャズにはならない。スッキリ爽やか、軽やかで端正なファンクネス&ソウル。
 

Junior-mancebig-chief

 
多弁な展開は意外と耳に付かない。タッチが明確なんだが硬質では無い。音のエッジが少しラウンドしている様な明確なタッチ。特に速いフレーズを弾き回す時、この個性が良い方向に作用している。この多弁な展開の弾き回しの個性はマンスならでは、だと思う。

逆にミッドテンポの曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。ミッドテンポの曲は、多弁なフレーズがちょうどフィットしていて、多弁なフレーズのエッジがほど良くラウンドしているので、多弁が多弁と感じ無い。

バラード曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。バラード演奏もバラードとしては少し多弁かもしれないが、ファンクネス&ソウルが爽やかな分、耳には爽やかさが残って、多弁でもフレーズが「もたれない」。

3枚目のリーダー作『Big Chief!』を聴き込んで、マンスの初リーダー作で代表作とされる『Junior』(Verve)は、マンスの本質を抑えて、イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易いピアノ・トリオとしてまとめた異色作だったことが良く判る。『Big Chief!』にはマンスの真の個性が満載。マンスの真の個性を感じるには、まずは『Big Chief!』。
 
 

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2023年8月29日 (火曜日)

ジュニア・マンスの「良き個性」

ジュニア・マンス(Junior Mance)。1928年生まれ。2021年1月、92歳で逝去。活動期間は1959年の初リーダー作から、2015年の遺作まで、50年以上のキャリアを誇る。ファンキーでソウルフル、端正で明確なタッチのピアノが身上。ドライブ感溢れるグルーヴィーな、爽快感溢れる弾きっぷりは、僕のお気に入りのピアニストの1人でる。

『The Soulful Piano of Junior Mance』(写真左)。1960年10月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Ben Tucker (b), Bobby Thomas (ds)。リヴァーサイド・レーベルの傍系「Jazzland」からのリリース。ジュニア・マンスの2枚目のリーダー作である。

いきなり、大手ジャズ・レーベルのヴァーヴからリーダー作『Junior』をリリースしたマンス。大手レーベルのヴァーヴである。大衆受けする売れる内容のピアノ・トリオ演奏をプロデュースする。イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易い、典型的なピアノ・トリオ演奏でまとめた。ピアノ・トリオ盤としては聴き易い、モダン・ジャズらしい内容だったが、マンスのピアノの個性を前面に押し出したものでは無かった。
 

The-soulful-piano-of-junior-mance

 
2枚目のリーダー作である当盤は、名プロデューサー、オリン・キープニュースのいるリヴァーサイドからのリリース。アルバム全体の内容は明確に「ファンキー・ジャズ」。それも、すっきり爽やか、端正で明確な「ファンキー・ジャズ」。リヴァーサイドに移って良かったなあ、という内容。端正で明確なタッチ、コッテコテなファンクネスは無くて、スッキリ爽やかなグルーヴ感。これが、マンスのピアノの個性なんだろう。

汗の飛び散る様なメリハリの効いたファンキー・ジャズでは無い。どこか気怠い雰囲気を漂わせた、落ち着いた端正で明確なファンキー・ジャズ。いわゆる「ブルージー」なのだ。その「ブルージー」な感覚を、この盤のタイトルは「ソウルフル」と形容しているみたい。ハードバップな弾き回しを踏襲しているので、基本的に右手は「多弁」。それでも、五月蠅くは無い。どこか端正で落ち着いているので、多弁が耳につくことは無い。どちらかといえば「心地良い」。

実に趣味の良いファンキー・ジャズなピアノである。小気味良いスイング感も特筆すべき個性だろう。メリハリ効いた、大向こうを張ったコッテコテなファンキー・ジャズなピアノも良いが、マンスの様な、落ち着いた端正で明確なファンキー・ジャズなピアノも良い。デューク・エリントンの言う「良い音楽」について、1つの個性、1つのスタイルに絞る必要はないだろう。良いものは良い、悪いものは悪い。僕はこのマンスのピアノが好きだ。
 
 

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2023年8月28日 (月曜日)

The 3 Soundsのお蔵入り優秀盤

スリー・サウンズ(The 3 Sounds)は、ブルーノート・レーベル唯一のお抱えピアノ・トリオ。メンバーもブルーノートが選んで、ブルーノートがデビューさせている。スリー・サウンズのアルバムはその活動期間中のリリースとして30枚を超えるが、途中、ヴァーヴやマーキュリー・レコードやその傍系のライムライトからもアルバムを7〜8枚ほどリリースしたが、ブルーノートからのリリースが主。

ただし、スリー・サウンズの音作りは、リーダーのピアノのジーン・ハリスに委ねられていて、軽妙でハイ・テックニックなトリオ演奏をベースに、聴いて楽しいシンプルで判り易い音作り、ドライブ感溢れる、硬派で端正でファンキーなサウンドは、このジーン・ハリスによって育まれたもの。

The 3 Sounds『Out Of This World』(写真左)。1962年2月4日、3月7ー8日の録音。ブルーノートの4197番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ちなみにこの盤はブルーノートお得意の「何故かお蔵入り」盤。録音当時はリリース見送り、4年後の1966年になってようやく陽の目を見ている。
 

The-3-soundsout-of-this-world  

 
1962年の『Hey There』の後、何故かお蔵入りが続いた音源の中のひとつで、契約上の何かがあったかで、4年間、倉庫に眠っていた音源。聴けば判るが、聴いて楽しい、シンプルで判り易い、ドライブ感溢れ、硬派で端正でファンキーなスリー・サウンドの個性がこの盤に充満している。この音源の前後のセッションの演奏内容と比べて遜色が無いどころか、切れ味とアーティステックな雰囲気という点では、この周りのスリー・サウンドの中で、一二を争うほどの優れた内容である。

カクテル・ピアノ、ラウンジ・ピアノの類の演奏だが、決して、イージーリスニング志向では無い。かなり硬派でダイナミズム溢れるアーバンなアレンジが施されていて、決して「ながら聴き」に向いたトリオ演奏ではない。基本はファンキー・ジャズだが、アレンジがストイックでハイテクニック前提でアーティステック。意外と尖った内容に思わず耳を奪われる。

何があったか知らぬが、この盤の音源は「何故かお蔵入り」盤として扱われる様な無い様ではない。スリー・サウンズの成熟した完成形の様な音作りと展開が素晴らしい。アレンジが優秀で、ジャズ・スタンダード曲も新しい響きを宿していて新鮮に感じる。シンプキンスとダウディのリズム隊も堅実な素晴らしいリズム&ビートを供給していて立派。スリー・サウンズの優秀盤として、もう少し再評価されても良い盤かと思う。
 
 

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2023年8月27日 (日曜日)

ハバードのブルーノート最終作

ハイテクニックな伝説のトランペッターのフレディ・ハバード。22歳の若さで初リーダー作『Open Sesame』をリリースして以来、ブルーノート・レーベルには、鍛えられ、教えられ、一流のトランペッターに成長させてもらったのでは、と思っている。特に、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンには本当に世話になっただろう。

ハバードはテクニックが抜群に優れているがゆえ、どんなジャズでも、どんなスタイルでも吹き切ってしまう。いわゆる「器用貧乏」なところがあって、何でも出来るよ〜、というアプローチが見え隠れするところを、ライオンがグッと手綱を引いて、時にファンキー・ジャズ、時に、モード・ジャズの名盤をハバードに残させた。

また、ハバードには「目立ちたがり屋」なところがあって、先輩ジャズマンとのセッションでは前へ前へ出て、自分の凄さをアピールしようと頑張りすぎるところがある。逆に、仲の良い同輩や後輩ジャズマンとのセッションでは、一歩引いて、同輩・後輩を前に出させて、ハイテクニックなトラペットでしっかりサポートする「男気」ある振る舞いをするところもある。

ライオンは、こういったハバードの長所・短所をしっかり把握して、時にはセッションのメンバーの人選に工夫を凝らしたり、ハバードをしっかりコントロール出来る、リーダー肌の先輩ジャズマンを充てたり、ハバードのテクニックが映える選曲をしたり、とにかく、ハバードが持っている才能を良い方向に発揮出来るよう、様々なプロデュースをしていたように思う。

Freddie Hubbard『Blue Spirits』(写真左)。ブルーノートの4196番。フレディ・ハバードのブルーノートでの最終作である。ブルーノートとしては珍しく、3つのセッションから成る。
 

Freddie-hubbardblue-spirits

 
1965年2月19日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as, fl), Joe Henderson (ts), Harold Mabern (p), Larry Ridley (b), Clifford Jarvis (ds), Big Black (congas), Kiane Zawadi (euphonium)。

1965年2月26日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Hank Mobley (ts), James Spaulding (as, fl), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Pete LaRoca (ds), Kiane Zawadi (euphonium)。

1966年3月5日のセッションは、Freddie Hubbard (tp), Joe Henderson (ts), Hosea Taylor (as, bassoon), Herbie Hancock (p, harpsichord), Reggie Workman (b), Elvin Jones (ds)。

パーソネルに一貫性が無いが、やっているジャズは「ジャズ・ロック志向」。ベッタベタなウケ狙いのジャズ・ロックでは無く、そこはブルーノート、「Corny(陳腐な)」なジャズロックは回避して、ファンキー志向のジャズロック、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロックを「格調高く」やっているのはさすが。

ただ、肝腎のハバードが、どの志向の、どのテイストのジャズロックで行くか、迷っている風でもあり、メンバーを取っ替え引っ替え、演奏の志向、スタイルも取っ替え引っ替え、大凡3種類やっている。ただ、一貫しているのは「メインストリームな純ジャズ志向のジャズロック」はしっかり根っこにあるので、アルバム全体の統一感はしっかり維持されている。さすが、ブルーノートである。

内容的にもチャレンジブルで、大衆受けをする俗っぽい8ビートのジャズロックは横に置いておいて、ファンクネスは全ての演奏の統一の味付けに使いつつ、モダンで硬派な8ビートの下、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロック、ハードバップなジャズロックを志向している。

ジャズロックに手を染め始めた頃のハバードが記録されている、聴いていて意外と面白いハバード盤。ハバードはこの盤を最後にブルーノートからアトランティックに移籍する。メインストリーム志向のブルーノートのハバードは過去のものとなり、途方も無くハイテクニックな持ち主がゆえ、イケイケではっちゃけた、何でもござれのハイテクニックなトランペッターとして弾けていく。
 
 

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2023年8月26日 (土曜日)

もう1つのコンガ入りガーランド

プレスティッジ・レーベルって、アルバムの編集方針も理解出来ないところが多々あるのだが、録音方針も良く判らないところがある。例えば、このレッド・ガーランド・トリオにバレットのコンガの入ったセッションは3つある。 

1つは 1958年4月11日の『Manteca』セッションの全6曲。全てコンガ入りで全曲タイムリーにアルバム化。2つ目は 1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッション。全12曲あったがコンガ入りは7曲。しかし、録音当時は全てアルバム化されず、1963年に何と、コンガ抜きのトリオのみの4曲だけがアルバム化。コンガ入り7曲は全てお蔵入り。

3つ目は 1958年8月22日の『Rojo』セッション。全6曲中、コンガ入りは4曲。しかし、これらも録音当時は全てアルバム化されず。こちらは1961年にアルバム化されている。今日はこの『Rojo』 を取り上げる。

Red Garland『Rojo』(写真左)。1958年8月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), George Joyner (b), Charlie Persip (ds), Ray Barretto (congas)。録音当時は「何故かお蔵入り」盤。リリースは1961年の初夏の頃。3年弱、倉庫に眠っていた音源になる。

バレットのコンガ入りは4曲。トリオのみの演奏は2曲。しかし、アルバムをずっと通して聴いていると、曲が進むにつれ、コンガの有無が判らなくなる。コンガがハードバップなトリオ演奏にしっかり溶け込んで、ラテンな雰囲気が薄れている。

それでも、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートが、トリオ演奏に良い雰囲気を加味している。トリオのみの演奏よりも、リズム&ビートがクッキリ浮き出て、メリハリの効いた演奏に仕上がっている。
 

Red-garlandrojo

 
コンガ入りのトリオ演奏の最初は1958年4月11日の『Manteca』セッション。この時のコンガの役割は、ガーランド・トリオの演奏にラテン・ジャズの風味を加味すること。そして、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすること。これがピッタリ当たって、『Manteca』は充実した内容の盤に仕上がった。

この『Rojo』では、ラテン・ジャズの風味を加味することよりも、コンガの音をハードバップなジャズ演奏に適応させて、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすることに主眼が置かれている様な感じがする。そういう点で、この『Rojo』セッションは充実した内容だと思うのだが、録音当時はお蔵入り音源。1961年にアルバム化されただけ、良かったと思うくらいの内容の充実度だと僕は思う。

それを思うと、1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッションのコンガ入りは7曲はアルバム化されず、1977年に未発表音源集『Rediscovered Masters』の中でリリースされただけ。今ではストリーミングで聴くことは出来るが、正式なアルバム化はされなかったのは残念である。

しかし、プレスティッジ・レーベルって、どうして、1958年だけ、コンガ入りのガーランド・トリオのセッションを4月、6月、8月の短期間に3セッションも持ったのか。タイムリーにアルバム化したのは4月のセッションのみ。しかも、6月のセッションのコンガ入り7曲は未発表音源集でリリースされただけ。どうも、この辺りのプレスティッジの録音方針が理解出来ないなあ。

ガーランド・トリオのコンガ入り企画盤は、ガーランド・トリオの演奏の「金太郎飴」感を緩和させる効果があって、良い内容だと思っている。『Manteca』と『Rojo』の2枚が正式盤としてリリースされたことは幸運だった。いつもとは違う、コンガでビートが強化されたガーランド・トリオの演奏が新鮮に響く。
 
 

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2023年8月25日 (金曜日)

『Manteca』は名盤だと思う

ブロックコードと流麗なシングル・トーンが得意技のレッド・ガーランド。ガーランドは、何故か、何の脈略も無しに、別々のセッションから直感頼りで演奏曲をセレクトして、1枚のアルバムに仕立て上げるプレスティッジ・レーベルから多くのリーダー作をリリースしている。プレスティッジのハウス・ピアニストとしても良い位である。

しかし、ガーランドの場合、セッションの寄せ集めアルバムがお得意のプレスティッジのリーダー作の中で、プレスティッジには珍しい、同一セッションの中から編集されたリーダー作はいずれも「優秀盤」である。これ、ガーランドならではの「傾向」だと思うのだが、この「傾向」を指摘するジャズ者の方には今まで出会ったことが無い。そういう「傾向」が明らかにあると思うんだがなあ。

Red Garland『Manteca』(写真左)。1958年4月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds), Ray Barretto (congas)。1958年4月11日のセッション、全6曲を全てチョイスした盤。ガーランドの「定番トリオ」にレイ・バレットのコンガを入れたカルテット編成の「企画盤」。

同一セッションの中から編集されたリーダー作であり、企画盤である。ガーランドは「企画盤」に強い。この盤は、バレットのコンガ入りで、ラテン色強めのアルバム。コンガの心地良い低音弾けるビートがラテン・ジャズの雰囲気を掻き立てて、ガーランドのブロックコードが、ラテン・ビートに乗って、切れ味良く弾むようにビートを刻む。テクニックに優れるガーランド、ラテン・ビートも「お手のもの」である。
 

Red-garlandmanteca

 
冒頭のディジー・ガレスピー作の「Manteca」が良い。このアフロ・ジャズの名曲に、バレットのコンガとガーランドのラテン・ビートなブロックコードが絡まって、爽やかで乾いた聴き心地の良いラテン・ジャズの雰囲気を添加している。ネチっこく俗っぽいラテン・ジャズに陥らないところが、ガーランド・トリオの真骨頂。

そして、このチェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番トリオ」が真価を発揮するのが、ラストのコンガ抜きのトリオ演奏「Portrait of Jenny」。CDリイシュー時のボートラになるが、これが絶品。お得意のスロー・テンポのバラードだが、柔和な雰囲気、心地良いスイング感、玉を転がすようなタッチ、流れる様なフレージング、そして、味のある品の良いリズム&ビート。ガーランドの「定番トリオ」の名演のひとつである。

この『Manteca』というアルバム、コンガ入りの企画盤のイメージがつきまとって、しばらくの間、敬遠していたのだが、聴いてみて「あらビックリ」。コンガがビートの良いアクセントになっていて、ガーランド・トリオとして新しい響きを湛えているところが「高評価」。ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』に匹敵する名盤だと思うのだが如何だろう。

でもなあ、我が国のベテランのジャズ者の方々は「コンガ嫌い」だし、このシンプル過ぎるジャケだとちょっと無理かなあ。でも、演奏内容は絶対、ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』と比肩する出来だと思います。コンガとシンプルなジャケに怯まず「聴くべし」です。
 
 

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2023年8月24日 (木曜日)

モード充実のメッセンジャーズ

一流ジャズマンの「登竜門的ジャズ・バンド」、一流ジャズマンに向けて鍛錬する「ジャズ道場」。そんな位置付けのバンド、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ。1954年に結成、ホレス・シルヴァーから名前を引き継いで、アート・ブレイキーの単独リーダーで、1990年10月にブレイキーが亡くなるまで、36年の長きに渡って、モダン・ジャズの第一線で活躍した。

リーダーのブレイキーは若手の将来有望なジャズマンのスカウトに長けていて、このジャズ・メッセンジャーズ、歴代のバンド・メンバーの中で、一流になっていったジャズマンは数知れず。ウェイン・ショーター、リー・モーガン、ウィントン・マルサリス、フレディ・ハバード、テレンス・ブランチャード、ゲイリー・バーツ、ボビー・ワトソン、ビル・ピアース、ボビー・ティモンズ、シダー・ウォルトン、異色なところで、キース・ジャレット(!)などなど....。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Indestructible』(写真左)。1964年4月24日と5月15日の録音。ブルーノートの4193番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b)。モーガンのトランペットとフラーのトロンボーン、ショーターのテナーが3管フロントのセクステット編成。
 

Art-blakey-the-jazz-messengersindestruct

 
ウェイン・ショーターが音楽監督の時代、この3管フロント+ウォルトンのピアノのブレイキーのリズム隊の編成が、歴代のジャズ・メッセンジャーズの中で、一番、内容充実の時代では無かったかと思う。ジャズ・メッセンジャーズ流のモード・ジャズを完全に自分達のものとし、その音志向に則った作曲もアレンジも素晴らしい。

当然、演奏もハイレベルで、特にこの3管フロントのユニゾン&ハーモニー、そして、アドリブ展開、リズム隊の繰り出す変幻自在でモーダルなリズム&ビート、バンド全体で繰り広げられるテンション高いインタープレイ。とにかく緩んだところが全く無い、淀んだところが全く無い、切れ味抜群、疾走感溢れるジャズ・メッセンジャーズ流のモード・ジャズが見事。もはや、この演奏は「アート」ですらある。

こんな充実した内容の音源だが、リリースは1966年。録音から2年の「お蔵入り」。ブルーノートお得意の「理由の判らないお蔵入り」音源なのだが日の目をみて良かった。当時としては、手垢の付いたジャズ・メッセンジャーズ流のモード・ジャズで、ちょっとマンネリと捉えられたのかもしれない。しかし、今の耳で振り返ると、とても内容充実のオリジナリティー溢れるモード・ジャズで、訴求力抜群。モード・ジャズの優秀盤の1枚です。
 
 

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2023年8月23日 (水曜日)

ブロック・コードの凄さを愛でる

プレスティッジ・レーベルは、何の脈略も無しに、別々のセッションから直感頼りで演奏曲をセレクトして、1枚のアルバムに仕立て上げる、という、とんでもないアルバム編集方針を持ったジャズ・レーベル。セッションの寄せ集めアルバムはかなりの数に上る。

アルバムを聴き進めて行くと、突如、演奏編成が変わったり、演奏の雰囲気が変わったりするので、セッションの寄せ集めと直ぐに分かるものも多い。ジャズマンの演奏能力やジャズマンの演奏志向は刻々の変化するので、出来れば同一セッションの中で演奏曲をセレクトして欲しい。

Red Garland『It's a Blue World』(写真左)。1958年2月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。いわゆる「1950年代ガーランドの黄金のトリオ」の演奏。しかし、この1958年2月7日のセッションは当時、お蔵入りになって、正式リリースされたのは1970年になってから。

当時、お蔵入りになった音源だが、この盤は1958年2月7日のセッションの音源だけで編集されていて、アルバム全体の雰囲気は統一感があって聴いていてシックリくる。
 

Red-garlandits-a-blue-world

 
1958年2月7日のトリオでの録音は全6曲。1曲は失敗演奏だったので、この盤は1958年2月7日のセッションで正式に録音された音源の全て、全5曲をアルバム化している。

タイトル通り、収録された演奏は「ブルーな雰囲気を湛えたスタンダード曲」で占められ、3曲目の「Carzy Rhythm」(アルバム『Dig It』に収録されていた曲と同一)を除いて、全曲スローバラードで統一されている。実に滋味溢れる、落ち着いた雰囲気のトリオ演奏。

特に、ガーランドのブロック・コードを聴くには最適な盤で、高速ブロック・コードの「Crazy Rhythm」にまず「仰け反る」。1曲目「This Can't Be Love」、5曲目の「It's A Blue World」でのシングル・トーンとブロック・コードの弾き回しは見事。2曲目「Since I Fell For You」、4曲目「Teach Me Tonight」のどっぷりブルージーなブロック・コードが印象的。収録されたどの曲もブロック・コードの妙がしっかり聴ける。

ガーランドの場合、同一セッションの中から編集されたリーダー作はいずれも「優秀盤」。そして、この『It's a Blue World』はガーランドのブロック・コードを愛でるのに最適な盤。この盤を聴けば、ガーランドのブロック・コードの凄さが追体験できる。ブロック・コードのバイブル的優秀盤である。
 
 

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2023年8月22日 (火曜日)

レッド・ガーランドは伴奏上手

レッド・ガーランドは伴奏上手。マイルスが自らのバンドに引き入れる為、白羽の矢を立てたくらいの伴奏の腕の持ち主である。様々なフレーズのバリエーションは豊か、リズム&ビートへの適応力は人一倍優れていて、右手のシングルトーンは、フロント楽器とぶつかることは無く、フロント楽器を邪魔することは皆無。

Red Garland『High Pressure』(写真左)。1957年11月15日(「Undecided」「What Is There to Say?」)、12月13日(「Soft Winds」「Solitude」「Two Bass Hit」)の2セッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts), Donald Byrd (tp), George Joyner (b), Art Taylor (ds)。

ちなみに11月15日のセッションは10曲。このアルバムにチョイスされたのは「Undecided」「What Is There to Say?」の2曲のみ。他の8曲は他の2枚のアルバムに収録。12月13日のセッションは全5曲。このアルバムにチョイスされたのは「Soft Winds」「Solitude」「Two Bass Hit」の3曲。残りの2曲は別のアルバムに収録。

プレスティッジって、どうして同一日セッションの演奏を1つに集めてアルバム化しなかったのか、理解に苦しむ。複数枚のアルバムを聴かないと、そのセッションの全貌が捉えられないのは、ジャズ盤鑑賞上、面倒くさい。
 

Red-garlandhigh-pressure

 
閑話休題。この『High Pressure』は、フロント2管のクインテット編成。フロント2管は、コルトレーンのテナーとバードのトランペットが務めている。といって、この盤はガーランドのリーダー作。よって、ガーランドのフロント2管に対する「伴奏上手」な面を愛でるのが筋。決して、コルトレーンやバードのパフォーマンスを追いかける類のものでは無い。

ガーランドはフロント管の個性によって、弾き方・アプローチを微妙に変える。コルトレーンは音が太くてストレートでテクニカル。ガーランドはブロックコード優先で、フレーズの全てをコルトレーンに任せて、リズム&ビートの供給のみに集中する。バードのトランペットは明確でリリカル。ガーランドは、右手のシングルトーン、左手のブロックコードの小粋に駆使して、バードのトランペットにしっかりと寄り添っている。

コルトレーン、バードも好調だが、このフロント2管の好調を引き出しているのは、ガーランドの伴奏だろう。ガーランドの伴奏を聴いていると、フロント管が気持ち良く心地良くアドリブ・ソロを展開する理由が良く判る。ガーランドの伴奏は、フロント管の実力を引き出す能力に長けているようで、ガーランドが伴奏に座るとき、コルトレーンのアドリブ・ソロは更に輝きを増すようだ。ドナルド・バードも同様。

この盤を聴くと、ガーランドって「伴奏上手」やなあ、とほとほと感心する。
 
 

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2023年8月20日 (日曜日)

硬派でバップなキャノンボール

エマーシー・レコード時代は「大衆受けする売れるジャズ」を余儀なくされたキャノンボール・アダレイ。ビッグバンドや弦オケをバックにした、ゴージャズな「イージーリスニング志向のジャズ」盤を幾枚かリリースする。小コンボのリーダー作も3枚ほどあるが、当時、成熟しつつあるハードバップな雰囲気では無く、どこか聴き易い柔和なトーンで滑らかな吹奏に終始している。

Cannonball Adderley『Portrait of Cannonball』(写真左)。1958年7月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Blue Mitchell (tp), Bill Evans (p), Sam Jones (b), Philly Joe Jones (ds)。キャノンボールのアルト・サックスと、ミッチェルのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

この盤から、やっとエマーシーを離れ、リヴァーサイド・レーベルに移籍したキャノンボール。水を得た魚のように、伸び伸びとエネルギッシュに、ブリリアントな響きを振り撒きながら、お得意のファンキーなアルト・サックスを吹きまくっている。フロントの相棒、ミッチェルのトランペットとの相性も良く、エマーシー時代とはちょっと違う、エネルギッシュで切れ味良く、ファンキーな吹奏を繰り広げている。
 

Cannonball-adderleyportrait-of-cannonbal

 
リズム・セクションがとても良好。当時、リヴァーサイドの専属ピアニストだったビル・エヴァンス、ソリッドで躍動感溢れる重音ベースのサム・ジョーンズ、ミスター・ハードバップ・ドラマーのフィリージョーのトリオが実にストレート・アヘッドでバップなリズム&ビートを叩き出す。とても切れ味の良い、ストイックで硬派なバップ・ビート。このリズム隊が、この盤を上質のハードバップ盤に仕立て上げている。

キャノンボールのアルト・サックスとミッチェルのトランペットは、双方の個性通り、ファンキーな吹奏なんだが、前述の様な「ストレート・アヘッドでバップなリズム&ビート」を叩き出すリズム隊に合わせて、ファンキー度合い控えめ。ストレート・アヘッドな純ジャズ志向の、切れ味良いバップな吹奏を繰り広げるキャノンボール&ミッチェルは意外と珍しい。

リヴァーサイドに移籍して、いきなり、どっぷりファンキー・ジャズなアルバムにしなかったところに、リヴァーサイドの総帥プロデューサー、オリン・キープニュースの深慮遠謀を感じる。キャノンボールは決して「コマーシャルなジャズマン」では無い、第一線級の優れたハードバッパーなのだ、と主張するように、ストイックで硬派でバップなキャノンボールがこの盤の中で躍動している。
 
 

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2023年8月19日 (土曜日)

全曲「春」にちなんだ企画盤

1958年7月録音の『Portrait of Cannonball』で、やっと、メインストリームな純ジャズをメインとする「リヴァーサイド・レーベル」に移籍したキャノンボール。このリヴァーサイドで、当時のモダン・ジャズの最前線、小コンボでの演奏を実現した。さすが希有なインプロヴァイザー、キャノンボール・アダレイ、小コンボでのソロ・パフォーマンスは素晴らしい。 

Kenny Dorham & Cannonball Adderley『Blue Spring』(写真)。1959年1月20日 (#5-6) , 2月18日 (#1-4) の2セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Cannonball Adderley (as), David Amram (French horn), Cecil Payne (bs), Cedar Walton (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds, tracks 1-4), Philly Joe Jones (ds, tracks 5-6)。

基本の編成は、ドーハムのトランペットとキャンボールのアルト・サックスのフロント2管、ウォルトンのピアノ、チェンバースのベース、そして、コブとフィリージョーの2人が別々に担当するドラムのクインテット編成。アレンジの彩りにフレンチ・ホルンやバリトン・サックスが入っている。

この盤、タイトルからも判る様に、全曲「春」にちなんだ曲ばかりを集めた企画盤。こういうコンセプトがハッキリしたセッションにドーハムは強い。迷いがなくなるのだろう。
 
Kenny-dorham-cannonball-adderleyblue-spr  
 
かつ、この盤はミドル・テンポの曲がメイン。ミドル・テンポの曲にドーハムは強い。速いテンポの曲では、時々フレーズがふらつく、拠れるの悪い癖が出るが、ミッド・テンポでは全くそんなことは無く、堂々と柔らかくてブリリアントなフレーズを吹き上げていく。

ただ、ドーハムのトランペットは、モノトーンっぽくて、すんだようなフレーズが主なので、どこかメリハリと抑揚に欠ける嫌いがあるのだが、この盤ではそんな「気になる」ところを、キャノンボールの明るくメリハリの効いた切れ味の良いアルト・サックスをフロント管のパートナーに充てることで、良い意味でクリアしている。

確かに、ドーハムのトランペットとキャノンボールのアルト・サックスとのコントラストが実に良い雰囲気を出している。リヴァーサイドの総帥プロデューサーのオリン・キープニュースの手腕が映えに映えた内容になっているのだから見事という他ない。

良い雰囲気のハードバップ盤です。バリバリと丁々発止としたバップなパフォーマンスは無いんですが、アレンジも良好、コンセプトもしっかりしていて、聴かせるハードバップな内容に仕上がっています。歌心溢れるドーハムとキャノンボール。良い内容の良いハードバップ盤だと思います。
 
 

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2023年8月18日 (金曜日)

曲解続きのキャノンボールの個性

ファンキー・アルト・サックスの名手、キャノンボール・アダレイのリーダー作を振り返ってみると、デビュー当時は意外と恵まれなかったんやなあ、とつくづく思う。

初デビュー作は「サボイ・レーベル」からのリリースだったので、これは他のジャズマンとあまり変わらない。しかし、リーダー作2作目にして、いきなり大手レーベルである「エマーシー・レコード」と契約し、メジャー・デビューである。なんてラッキー・ボーイなんだ、と思われるかもしれないが、エマーシーから押し付けられたのは「ビッグバンドをバックにしたイージーリスニング志向のジャズ」。

次に押し付けられたのは「ストリングスをバックにしたイージーリスニング志向のジャズ」。とにかく「大衆受けする売れるジャズ」を余儀なくされた訳で、いわゆる「コマーシャルなジャズマン」の部類に位置づけられた。リヴァーサイド・レーベルに移籍して、ファンキー・ジャズ志向のアルバムを出したらこれが大ヒット。「コマーシャルなジャズマン」な印象に拍車がかかる。

Cannonball Adderley『Jump for Joy』(写真左)。1958年8月20 & 21日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Emmett Berry (tp), Leo Kruczek, Gene Orloff (vin), Dave Schwartz (viola), George Ricci (cello), Bill Evans (p), Barry Galbraith (g), Milt Hinton (b), Jimmy Cobb (ds), Richard Hayman, Bill Russo (arr)。再び「弦オケ」をバックにしたジャズに立ち返っている。

この盤は、キャノンボールにとって、大手レーベル、エマーシーからの最終作になるのだが、エマーシーは最後まで、キャノンボールの資質と個性を読み違えた。最後まで「イージーリスニング志向の大衆受けする売れるジャズ」にキャノンボールをアダプトした。

確かにキャノンボールのアルト・サックスは、切れ味良く、音が大きく、フレーズが明確。楽曲の持つフレーズがクッキリ浮かび上がる様なアルト・サックスを吹く。
 

Cannonball-adderleyjump-for-joy

 
しかし、それはスモール・コンボでのアドリブ展開の時に最大限に活きる個性で、「イージーリスニング志向の大衆受けする売れるジャズ」で最大限に活きる個性では無い。

実際、キャノンボールは、火の噴くような激しい吹奏を封じて、甘いトーンで滑らかな吹奏に終始している。これは、ちょっとテクニックのあるアルト奏者だったら誰でも勤まるだろう。つまりは、エマーシーは、キャノンボールの資質と個性を見抜けなかった訳である。

ただ、この『Jump for Joy』では「弦オケ」のアレンジが甘くない。ホーンやストリングスのフレーズは意外とスリリングで、底が抜けた様な明るさは無い。意外と硬派でシビアなアレンジが施されていて、意外と聴き応えがある。アレンジはリチャード・ハーマンとビル・ロッソ。この盤では意外と「良い仕事」をしている。

バックのリズム隊についても、ピアノにビル・エヴァンス、ベースにミルト・ヒントン、ドラムにジミー・コブといった一流どころを投入していて、リズム&ビートはハードバップしていて、意外としっかりしている。だからこそ「弦オケ」が邪魔なんだよな〜。このリズム隊をバックに、キャノンボールがワンホーンで吹きまくった方が、ジャズ・ファンへの訴求度は高かった様に思うのだが、いかがだろう。

しかし、このエマーシー時代の「ストリングスをバックにしたイージーリスニング志向のジャズ」=「大衆受けする売れるジャズ」をメインにリーダー作を出し続けたという事実は、キャノンボールはコマーシャルなジャズマン、という「誤解」を、ジャズ・ファンに持たせてしまった。キャノンボールは決して「コマーシャルなジャズマン」では無い。硬派な正統派ハードバッパーだと思うのだが、どうにもいけない。

でも、この『Jump for Joy』については、キャノンボールは、バックが「弦オケ」だろうがお構いなし。ポジティヴで切れ味良く、音が大きくてフレーズが明確、テクニック優秀、歌心満載なアルト・サックスを吹きまくっていて、キャノンボールのアルト・サックスだけ取れば、この盤、全く問題無く聴ける。キャノンボールにだけ着目すれば、なかなかの「佳作」である。
 
 

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2023年8月17日 (木曜日)

力強くも優しいオルガン・ジャズ

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。もともと、マイルスの紹介で、オルガンの神様「ジミー・スミス」をデビューさせ、ドル箱人気オルガニストに育て上げた実績があるブルーノートである。オルガン・ジャズには他のどのレーベルよりも造詣が深い。ニッチなジャズ・オルガンではあるが、ブルーノートのカタログには、多くのオルガニストのリーダー作が散見される。

オルガンジャズの神様、ジミー・スミス。デビュー当時は「思いっきり尖ったアグレッシブな、実に攻撃的な」オルガン。半ば辺りで、圧倒的テクニックはそのままに、力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」ジャズ路線に舵を切る。そして、1962年、大手レーベルのヴァーヴ・レコードへ移籍する。

Jimmy Smith『Softly As A Summer Breeze』(写真左)。1958年2月26日の録音。ブルーノートの4200番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Kenny Burrell (g, tracks 1–4), Eddie McFadden (g, tracks 5-6), Philly Joe Jones (ds, tracks 1–4), Donald Bailey (ds, tracks 5-6)。基本は、スミスのオルガンに、ギター、ドラムというオルガン・トリオ編成。

オリジナル盤は全6曲。1998年のCDリイシュー時に、1958年10月14日録音の4曲が追加されているが、オルガン・ジャズでありながら、何故か男性ボーカルが入っている、ちょっと違和感のある音源なので、ここでは割愛させていただく。以下、この盤の感想については、オリジナルの6曲で語りたいと思う。
 

Jimmy-smithsoftly-as-a-summer-breeze

 
この盤はブルーノート・レーベルお得意の「理由が良く判らないが、何故かお蔵入り」な盤の1枚。リリースは1965年だが、この盤に収録された音源は、ジミー・スミスのブルーノートに対する「感謝の置き土産」音源では無い。1958年の録音で、『The Sermon』と『Home Cookin'』の間に入る録音になる。ブルージーでアーバンな雰囲気のもと、聴かせるオルガン・ジャズに落ち着いた頃の音源である。

雰囲気的には『Home Cookin'』の流れ。気負いの無い、リラックスしたジミー・スミスのオルガンがとてもジャジー。ファンクネスもコッテリ効いていて、まさに「大人のジャズ」。ミッドナイトでアーバンな雰囲気を増幅するのは、ケニー・バレルとエディ・マクファデンのギター。落ち着いたスミスのオルガンとアーバンなバレルとマクファデンのギターが絡んで、ブルージーな雰囲気が蔓延する。

ドラムがフィリー・ジョーなのが珍しい。フィリー・ジョーのひかえめハードボイルドなバップ・ドラム。ジミー・スミスと言えば、ドラムは「ドナルド・ベイリー」なので、このフィリージョーのドラムは異色。ベイリーとは明らかに違う。それでも、さすがは名手フィリージョー、ブラシによるシンバル・ワークなど、ドラムの達人らしい技を披露しつつ、フロントのスミスのオルガンを引き立てる。

当時、1958年に録音されて8年間眠っていて、1965年になって発表された未発表音源。フィリー・ジョーとの共演が4曲しか無かったので、やむなくお蔵入りになったのかもしれない。力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」内容が素敵なオルガン・ジャズ盤です。
 
 

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2023年8月16日 (水曜日)

軽快で聴き易いオルガン・ジャズ

4100番台はもう15年程前に「聴く」ことについて、つまりアルバムの蒐集についてはコンプリートしているのだが、当ブログでの「感想記事」についてはコンプリートしていない。現在、せっせと「記事」の落ち穂拾いをしているのだが、ブルーノートの4100番台の「記事」の落ち穂拾いも「あと8枚」。あと8枚で、当ブログの「記事化」のコンプリートである。

Big John Patton『Oh Baby!』(写真左)。1965年3月8日の録音。ブルーノートの4192番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Blue Mitchell (tp), Harold Vick (ts), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。オルガンのジョン・パットンがリーダー、ミッチェルのトランペット、ヴィックのテナーがフロント2管、グリーンのギター、そして、ディクソンのドラム。パットンがオルガンでベースの役割も兼ねるので、ベースレスのクインテット編成。

ビッグ・ジョン・パットンの4枚目のリーダー作になる。ジョン・パットンはデビュー盤以来、1960年代はブルーノートのハウス・オルガニストの位置づけ。リーダー作は全てブルーノートから、サイドマンとしては、アルト・サックスのルー・ドナルドソン、ギターのグラント・グリーンに絞って参加している。
 

Big-john-pattonoh-baby

 
ジョン・パットンのオルガンは、従来のファンクネスだだ漏れのネチっこいオルガンでは無く、軽快でテクニカル。この盤では、パットン・グリーン・ディクソンのオルガン・リズム隊が、軽快なファンクネスとソウルフルが疾走するかの如く、
ライトで乾いたグルーヴ感を醸し出していて、このジャズの多様化の時代、聴き易いソウルフルなオルガン・ジャズのお手本の様な内容。いわゆる「ながら」の如く、気楽に聴かせるオルガン・ジャズなのだ。

そこに、演奏の旋律をハッキリくっきりする様、ブルージー&ファンキーなトランペットのミッチェルと、ジャズとR&Bを股にかけるソウルフルなテナーのヴィックが効果的に吹きまくる。アドリブ展開もこのフロント2管が良いアクセントとなって、全編通して、オルガン・ジャズとしてマンネリに陥ることは無い。あっという間に聴き切ってしまう。

グリーンのギターのバッキングは絶妙。ディクソンのドラミングは軽快でファンキー。ちなみに、パットンのオルガンに派手な仰々しさが無いのは、レスリー・スピーカーを使用していないからだろう。このライトで乾いたグルーヴ感満載のオルガンがパットンの身上。オルガン特有の「コッテコテ」な雰囲気は皆無。ジャズロック志向でまとめられた好盤です。
 
 

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2023年8月15日 (火曜日)

フレディ・ローチの「教会音楽」

ブルーノートの4100番台は、ハードバップが成熟した後の「ジャズの多様化の時代」を反映したラインナップが素晴らしい訳だが、4100番台の終わり頃には、「正」の多様化であるファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなどがあれば、多様化の度が過ぎて、モダン・ジャズの範疇を飛び出た不思議な内容のアルバムも出現している。

Freddie Roach『All That's Good』(写真左)。1964年10月16日の録音。ブルーノートの4190番。ちなみにパーソネルは、Freddie Roach (org), Conrad Lester (ts), Calvin Newborn (g), Clarence Johnston (ds), Marvin Robinson, Phyllis Smith, Willie Tate (vo)。

フレディ・ローチのオルガンは端正で堅実。「ハモンド・オルガン」らしい、くすんだ伸びのある音は、とてもファンキー。ブルノートで初リーダー作『Down to Earth』を録音して以降、『Mo' Greens Please』『Good Move!』と、その端正で堅実でファンキーなオルガンで、変な癖が無く、端正で堅実でファンキーで「聴き易いオルガン・ジャズ」盤のリリースを重ねてきた。

が、4枚目のリーダー作『Brown Sugar』から、その演奏の志向が大きく変化した。モーダルなソウル・ジャズを志向し始めた。モーダルでクールな雰囲気漂う、乾いたファンクネスを湛えた、ご機嫌でユニークなソウル・ジャズが展開し始めた。

そして、ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』に参加。ここで、バードの「ホーリーでゴスペルチックな教会音楽志向のソウル・ジャズ」の感化された様で、この『All That's Good』は、そのバードの教会音楽志向のソウル・ジャズの流れを踏襲している様に感じる。
 

Freddie-roach_all-thats-good

 
この盤は、ジャケに写る様な女声コーラス隊が加わった、怪しげなゴスペル調の楽曲が目立つコンセプチュアルな内容のアルバム。この女性コーラス隊のゴズペル調のコーラスが正統なゴスペル風な歌声では無く、バンシー(banshee)=家族に死人が出ることを泣いて予告する女の精霊の様な、軽妙で浮遊する様な歌声なところが、少し不気味でもあり、そこはかとなく「違和感」を感じるところ。これは、バードの『I'm Tryin' To Get Home』に酷似している。

この女性ボーカルの歌声が気に入るか否かで、この盤の評価は変わるだろう。ジャジーではあるが、この盤の内容はモダン・ジャズの範疇をはみ出して、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」な内容である。

ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』は、ビッグバンドのアレンジで、辛うじてモダン・ジャズの範疇に軸足を留めたが、このローチの『All That's Good』は、バックの演奏メンバーの顔ぶれも含めて、明らかにモダン・ジャズの範疇を飛び出している。この盤をジャズ盤としてリリースしたのは、ブルーノート・レーベルならではの仕業だろう。他のレーベルではちょっと難しかったのではないか、と思ってしまう。

ちなみにジャケに写る女性6人は、「Grandassa Models」と呼ばれる、1960年代から1970年台にかけて、NYのハーレムで開催されたアフリカ系アメリカ人女性の美を競うコンテストに参加した面々の中から選抜された6人らしい。

もしかしたら、このアルバム、そんなアフリカ系アメリカ人女性モデルの人気とタイアップした「教会音楽志向のソウル・ジャズ」だったのかもしれない。それならば合点がいく。いわゆる「一過性の流行音楽」。確かにこの後、このゴスペルチックな女性ボーカルを活かしたソウル・ジャズのフォロワーは現れ出でてはいない。
 
 

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2023年8月13日 (日曜日)

ジョーヘンの完全モーダルな盤

ジョー・ヘンダーソン(以降、ジョーヘン)のテナーは、コルトレーンでもなければ、ロリンズでも無い。ストレートな吹奏はコルトレーンの影は引き摺っているものの、ジョーヘンのテナーの響きとフレーズは唯一無二。ジョーヘン独特のテナーである。

ブルーノート・レーベルに初リーダー作『Page One』を録音して以降、『Our Thing』『In 'n Out』とブルーノートに立て続けにリーダー作を録音した。が、モーダルなジョーヘンを聴くことは出来るが、唯一無二のジョーヘンならではのモード・テナーにはなりきっていなくて、「ちょっと捻れた」独特のモーダルなテナーは中途半端。恐らく、フロント管のパートナー、ジョーヘンの育ての親を自認していたケニー・ドーハムへの遠慮というか、ドーハムに合わせたところが中途半端なモード・テナーになった理由だろう。

Joe Henderson『Inner Urge』(写真左)。1964年11月30日の録音。ブルーノートの4189番。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Elvin Jones (ds)。4枚目のリーダー作にして、フロント管がジョーヘンのテナー1管の「ワンホーン・カルテット」。しかも、バックのリズム隊はバリバリ、モードに精通した強者のトリオ。

それまで、フロント管のパートナーだったケニー・ドーハムと分かれて、ジョーヘンのテナー1本でのカルテット演奏。しかも、バックを固めるのが、タイナー・クランショウ・エルヴィンの「鉄壁のモーダル・リズム・セクション」。
 

Joe-hendersoninner-urge

 
ジョーヘンは、このリーダー作第4弾にして、ジョーヘンの完全モーダルな、ちょっと捻れた「ウネウネ」テナーが、思う存分、自由自在に疾走する。タイナー・クランショウ・エルヴィンの「鉄壁のモーダル・リズム・セクション」との相性もバッチリ。演奏の精度と密度は相当に高く、ブルーノートのアルバムの中でもその内容の充実度は上位に位置する。

ジョーヘンのモーダルなテナーは、ウネウネの振れ幅が穏やかで、ハードバップなリズム&ビートに良く「乗る」。例えば、ウェイン・ショーターのモーダルなテナーの「ウネウネ度合い」は振れ幅が大きくて、慣れていないとちょっと聴くに辛いところがある。

が、ジョーヘンは違う。ジョーヘンのモーダルなテナーのフレーズは、ハードバップのマナーに則った、従来のモダン・ジャズの枠内に収まったモーダルな展開で、聴いていて取っ付き易く聴き易い。

このブルーノートでのリーダー作第4弾は、ジョーヘンのモーダルなテナーを的確に捉えている。ジョーヘンも自由に、吹きたい様に吹きまくっている様が良く判る。ハードバップの延長線上にあるジョーヘンのモーダルな展開は、難解と思われているモード・ジャズを、とても聴き易いものにしている。これが、ジョーヘンのモード・ジャズの、他のジャズマンに無い個性だろう。この盤は、ジョーヘンのモーダルなテナーを理解するのに最適な盤。ジャケも小粋で良い。
 
 

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2023年8月12日 (土曜日)

教会音楽志向のソウル・ジャズ

ブルーノートの4100番台は、ジャズの多様化の時代を反映した、当時のジャズのトレンド、ジャズの奏法のほぼ全てに対応した多様なラインアップが素晴らしかった訳だが、4100番台も終わりの頃になると、ジャズの多様化の度が過ぎて、従来のモダン・ジャズの範疇を逸脱した、不思議な内容のジャズも出現してきた。

Donald Byrd『I'm Tryin' To Get Home』(写真左)。1964年12月の録音。ブルーノートの4188番。ドナルド・バードのビッグバンド編成でパフォーマンスした、こってこての「ソウル・ジャズ」。ジャジーなリズム&ビートが無ければ、ビッグバンド編成で奏でる、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」である。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp, flh), Stanley Turrentine (ts), Herbie Hancock (p), Freddie Roach (org), Grant Green (g), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds) のセプテットに、Joe Ferrante, Jimmy Owens, Ernie Royal, Clark Terry, Snooky Young (tp), Jimmy Cleveland, Henry Coker, J.J. Johnson, Benny Powell (tb), Jim Buffington, Bob Northern (french horn), Don Butterfield (tuba) の管セクションが付いたビッグバンド編成。
 

Donald-byrdim-tryin-to-get-home

 
冒頭の「Brother Isaac」でぶっ飛ぶ。男女コーラスの軽妙な(奇妙な?)スキャットと、ソウルフルな響きが怪しいビッグバンドが高揚しながらスイングする、摩訶不思議なソウル・ジャズ。というか、ゴスペル・コーラスを彷彿とさせる、ジャジーな教会音楽風で、さすがに、この演奏をコンテンポラリーな純ジャズとして聴くには無理がある。僕は、ジャズと教会音楽との融合がメインの、過度にソウルフルなジャズ・ファンクとして捉えている。

しかし、演奏の中核となるのは、リーダーのバード以下のセプテットの面々で、それぞれのソロ演奏は、当時のジャズの最新の演奏志向や奏法を捉えて、意外と尖った演奏をしている。2曲目「Noah」では、バードはファンキーなモーダル・フレーズでソロを展開し、ハンコックはモーダルなハーモニーでバッキングする。ソウル・ジャズな雰囲気の演奏の中で、モーダルな響きが飛び交う様はシュールですらある。この辺りはジャズと教会音楽との融合の中での「実験ジャズ」的な響きである。

サブタイトルが「Brass With Voices」。その通り、ブラスの響きとスキャット&コーラスを効果的にアレンジに反映した、教会音楽志向のソウル・ジャズがこの盤の中に充満している。内容的にあまりに尖っていて一般受けはしないだろう。しかし、内容的には実にアーティステックなチャレンジであり、こういった一般受けしそうもない尖った内容の「融合」ジャズをしっかりとアルバム化してリリースする、当時のブルーノートは、単純に凄いと思う。
 
 

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2023年8月11日 (金曜日)

スコットのドラミングは新しい。

最近、ドラマーのリーダー作を追いかける中で、現在のジャズ・ドラマーの優秀どころのリーダー作を聴いている。21世紀に入った辺りから、現代のジャズ・シーンに繋がる、次世代のドラマーが幾人か出てきている。ブライアン・ブレイドもそんな中の1人だし、最近ではテリー・リン・キャリントン、ジョナサン・ブレイク、マーク・ジュリアナなど、優れた中堅ドラマーがどんどん頭角を現している。

Kendrick Scott『Corridors』(写真左)。2023年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Kendrick Scott (ds, vo), Walter Smith III (ts), Reuben Rogers (b)。

最近のドラマーがリーダーのアルバムの流行なんだろうか、ウォルター・スミスⅢのテナーがフロント1管、ピアノレスのワンホーン・トリオの編成。フロント管のアドリブの自由度とリーダーのドラマーのパフォーマンスの自由度が最大限に広がる編成である。

ケンドリック・スコットも、最近、頭角を現した現代ジャズ・ドラマーの優秀どころの1人。米国ヒューストン出身、現在43歳のバリバリ中堅のジャズ・ドラマー。テレンス・ブランチャードのクインテットでの活躍、それから、我が国の山中千尋『Abyss』『Forever Begins』への参加が印象的。リーダーとしての音作り、サイドマンとしての参加傾向から、現代の「ネオ・ハードバップ」「ネオ・フォービート」志向のドラマーであることが窺える。
 

Kendrick-scottcorridors

 
この『Corridors』を聴くと、スコットのドラミングが実に格好良い。冒頭の「What Day Is It?」では、音数多く炸裂する様なドラミングは見事。高速4ビートの疾走感が堪らない。ドラミングの切れ味が抜群なのだろう、音数が多いにも関わらず、煩くない。逆にキレッキレのビートが耳に心地良い位だ。加えて、スコットのドラミングは重心が低くて、ビートが分厚い。ズンズンと響く重低音がこれまた心地良い。

演奏全体は、オーソドックスな「ネオ・ハードバップ」「ネオ・モード」なんだが、スコットのドラミングが新鮮に響くので、レトロな雰囲気や温故知新な感じは全く無い。どこまでも現代的な、新しいモード・ジャズの響きがとても良い。これだけ自由度の高い、切れ味良く重心の低いドラミングがバックにいるのだ、フロント1管のウォルター・スミス三世は、そんな分厚いビートに乗って、伸び伸び、大らかに豪快に疾走感溢れるテナーを吹き上げる。

印象的で小粋なラインを刻みつつ、ウネウネと波の様に弾性に富んだルーベン・ロジャーズのベースは、このバンド演奏、ネオ・モードの展開の良き「道標」となって、演奏全体の底を支え、リズム&ビートをキッチリと押さえている。これまた見事。

スコットのドラミングは「新しい」。従来のハードバップ、モード・ジャズには無い、新しいドラミングの響きは、オーソドックスな「コンテンポラリーな純ジャズ」に新しい息吹を与えてるかのようだ。今から次作が楽しみ。
 
 

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2023年8月10日 (木曜日)

ジェフ・テイン・ワッツの新作盤

以前の記事で、ブライアン・ブレイドがドラムを担当するアルバムに「駄盤」は無いと言ったが、現代のジャズ・シーンには、ブレイドに比肩する「優れもの」ドラマーが幾人かいる。まずは、1990年代から、聴き込んだアルバムに良く見るドラマーの名前。Jeff "Tain" Watts(ジェフ・テイン・ワッツ)である。1990年代に頭角を現した、優れたドラマーの1人。

ジェフ・テイン・ワッツに初めて出会ったのは、確か、ブランフォード・マルサリスのリーダー作だったかと思う。ブランフォードはリーダー作ではドラムはほぼ「ジェフ・テイン・ワッツ」。よほど相性が良いのだろう。サックスとの相性が良いのかと思っていたら、ピアニストのデヴィッド・キコスキーのサイドマンでのドラミングも見事なので、楽器は厭わない、アドリブ展開の自由度が広がるドラミングが良いのだろう。

Watts, Turner, Le Fleming『Misterioso』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Jeff "Tain" Watts (ds), Mark Turner (ts), Orlando Le Fleming (b)。ピアノレスのテナー1管がフロントの「ワンホーン・トリオ」。

フロント管のアドリブ展開の自由度が広がる、バックのリズム隊の力量がその成否を左右する演奏フォーマット。ピアノレス・トリオの3人が並列に並んでいるが、リーダー格はドラムのジェフ・テイン・ワッツだろう。
 

Watts-turner-le-flemingmisterioso

 
全編に渡って、ワッツのドラミングが映えに映えている。ポリリズミックで小粋でダイナミック、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミングは見事。特に、これだけ高テクニックが要求されるドラミングだが、重量感があって、実にソリッドでしなやか。聴いていて、全く耳に付かないどころか、ついついドラムの音を追ってしまう。

マーク・ターナーのテナーがこれまた見事。ワッツのダイナミズム溢れるドラミングを推進力として、モーダルなフレーズをバンバン吹き上げていく。ワッツのドラミングに負けない素晴らしい吹きっぷり。ピアノのコードの制限が無い分、ターナーは限りなく自由に、ネオ・モーダルなフレーズを吹くターナーに耳を奪われる。とりわけ、2曲目の「Yesterdays」は素晴らしいインタープレイの応酬。

オーランド・ル・フレミングのベースがピアノレス・トリオ全体のビートの底をしっかり押さえて、限りなく自由度の高いワッツのドラミングとターナーのテナーをしっかりと導いている。フレミングのベースはこのトリオ演奏の中で、かなり重要な役割を果たしている。

この「優れたピアノレス・トリオ」の力量に見合った「玄人好みの選曲」も実に良い。ピアノレス・トリオのパフォーマンスの成否はドラマーが握る、と思っているが、この盤では「さすが、ジェフ・テイン・ワッツ」。ジェフ・テイン・ワッツのドラミングが、素晴らしい内容の「ピアノレス・トリオ」の演奏を引き出している。
 
 

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2023年8月 9日 (水曜日)

欧州のフリー・ジャズ・ピアノ

フリー・ジャズといえば、サックスが多い。音が肉声に近くて訴求力があること、そして、吹奏楽器として、長時間吹きづ付けることが出来ることが挙げられる。例えば、トランペットなどは、長時間吹くのには向かない吹奏楽器なので、フリー・ジャズの担い手にトランペッターはいない。

逆にジャズ・ピアノで完全フリーなピアノって意外と少ない。長時間引き続ける可能性が高いので、完全に体力勝負となること、激情に駆られるままフリーにピアノを弾くと、ピアノって打楽器の特性もあるので、喧しくて音楽として聴くことが出来なくなること、左手と右手、二つの音を出す方法があるので、一つの音で片付くサックスより、演奏難度が高いこと、それが障壁となって、フリー・ジャズなピアニストは数が少ないのだろう。

フリー・ジャズなピアノを弾くには、現代音楽や近代クラシックの無調、不協和音前提のフレーズに精通していること、そして、プロのクラシック・ピアニストに匹敵する演奏テクニックを保有していること、そして、長時間、ピアノを弾き続ける「演奏体力」があること。そんな要素が必須となる。これはなかなか「いない」。

フリー・ジャズをメインにしているジャズ・ピアニストと言われてパッと思い浮かぶのは、米国ではセシル・テイラー。我が国では山下洋輔。そして、欧州ドイツではシュリッペンバッハ。その3人くらいしか、思い浮かばない。山下洋輔、シュリッペンバッハは、欧州フリー・ジャズのメッカ、Enjaレーベル所属だったし、セシル・テイラーもどちらかと言えば欧州ジャズ寄りだったから、フリー・ジャズなピアノは欧州ジャズに偏っている、と言える。

Alexander von Schlippenbach『Payan』(写真)。1972年2月4日の録音。ENJAの2012番。ちなみにパーソネルは、Alexander von Schlippenbach (p) オンリー。欧州フリー・ジャズ・ピアノの鬼才、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハのソロ・ピアノ盤になる。
 

Alexander-von-schlippenbachpayan

 
アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ(1938年〜 )は、ドイツのジャズ・ピアニスト、作曲家。ベルリン生まれ。8歳でピアノを始め、ケルンでベルント・アロイス・ツィンマーマンに作曲を学んだ。勉学中、マンフレート・ショーフと共同演奏を始める。以降、欧州のフリー・ジャズ界における多くの重要な音楽家と共演歴を持つ。1994年、アルベルト・マンゲルスドルフ賞を受賞。今年で85歳になるレジェンド。

このソロ盤では、現代音楽や近代クラシックの無調、不協和音を下敷きにした、テクニック溢れる、即興演奏な弾き回しが素晴らしい。完全フリーなピアノ演奏でありながら五月蠅くないし、不協和音も耳に付かない。音楽として聴くことが出来る無調なフレーズや不協和音について事前にしっかり理解していて、その範疇で完全フリーなピアノ演奏を聴かせてくれる様なのだ。

セシル・テイラーも山下洋輔もそうだったのだが、完全フリーな演奏でありながら、五月蠅くないし、耳に付かない。加えて、シュリッペンバッハのフリーなピアノは、近代クラシックな響きが演奏の底にあり、現代音楽の前衛な展開が即興演奏の中に織り込まれている様で、意外と理路整然としていることろが独特の個性だと思う。

終始フリー・フォーム、明確なテーマもコード進行も無いインプロの連続なのだが、どこか理路整然としている即興演奏として耳に響く様は、聴いていて実に興味深い。欧州ドイツのフリー・ジャズなソロ・ピアノ。フリー・ジャズの範疇での希少価値として、一聴の価値はあるだろう。僕はとても興味深く聴くことが出来ました。
 
 

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2023年8月 8日 (火曜日)

オルガンのコルトレーンの出現

ブルーノート・レーベルは「オルガン・ジャズ」が得意。ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスを見出して(マイルスから紹介されたみたい)、リーダー作を録音させ、オルガン・ジャズの人気者に仕立て上げたのが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオン。

つまり、ライオンがジャズ・オルガンについて造詣が深かったが故、ブルーノートは、ジミー・スミスの後に出てくる有望なオルガニスト達をキャッチしてはリーダー作を録音させた訳で、1950年代から1960年代のジャズ・オルガンの歴史については、ブルーノートのカタログを押さえておけば良いくらいなのだ。

Larry Young『Into Somethin'』(写真左)。1964年11月12日の録音。ブルーノートの4187番。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Sam Rivers (ts, #1-4), Grant Green (g), Elvin Jones (ds)。「オルガンのコルトレーン」の異名をとるラリー・ヤングのブルーノートでのデビュー盤。

ラリー・ヤングはブルーノートでリーダー作を出す前、3枚ほど、他のレーベルからリーダー作をリリースしているが、ヤングのオルガンの個性がハッキリと記録されているのは、この盤以降のブルーノート盤だろう。加えて、サイドマンも厳選されていて、このブルーノートでのデビュー盤には、ヤングのオルガンの個性が溢れている。

オルガンによるモーダルなフレーズ、オルガンによる「シーツ・オブ・サウンド」、オルガンによるエモーショナルな展開、確かに「オルガンのコルトレーン」と呼ばれるのが、実に良く判る。この盤を聴けば直ぐに判るのだが、ヤングのオルガンは、既にジミー・スミスのオルガンとは全く異なる。つまり、ジミー・スミスの影響下に無い、当時として「新しいオルガンの響き」なのだ。
 

Larry-younginto-somethin

 
新主流派の時代を感じさせるモードなオルガン&演奏。フロントのパートナーの1人として、グラント・グリーンがいるのだが、パッキパキ硬質でファンクネスだだ漏れのシングルトーンのグリーンが、モーダルなジャズに何故いるのか、と思われる方がいると思うが、実はグラント・グリーンは、モード・ジャズも「いける」。

例えば『Idle Moments』で「Jean de Fleur」という完璧モーダルな秀曲を書いているし、本作2曲目の「Plaza De Toros」はモーダルな曲だが、これはグラント・グリーンによる作曲。

テナーのサム・リヴァース、ドラムのエルヴィン・ジョーンズは言わずもがな。このテナーとドラムは「モード・ジャズの申し子」的存在で「安心」。

それまでの「ファンクネス濃厚でソウルフルなオルガン」では無く、「モーダルでストイックでどこか欧州ジャズ的なオルガン」は実にユニーク。「ファンクネス濃厚でソウルフルなオルガン」は、ジミー・スミスによって、深化の余地が無い位に完成されている。現代のジャズ・オルガンは、この「モーダルでアーティスティックでどこか欧州ジャズ的なオルガン」を深化させているケースが大多数。

そういう意味でも、このラリー・ヤングの「モーダルでストイックでどこか欧州ジャズ的なオルガン」の出現は、オルガン・ジャズにとって重要な出来事だった。オルガンという楽器の可能性を広げ、深化の方向性を提示した。もっと評価されても良い、ラリー・ヤングのジャズ・オルガンの存在意義だろう。
 
 

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2023年8月 7日 (月曜日)

ハンク・モブレーの『転換点』

ブルーノートの4100番台は、カタログ順に聴き進めていると意外と面白い。ジャズの多様化の時代、1950年代のハードバップが成熟し、そのハードバップな演奏に留まる者。逆に、ハードバップから新しい演奏トレンド、モード・ジャズやフリー・ジャズに進化する者、

はたまた、ジャズの大衆化に沿って、大衆のジャズに対するニーズに応えるべく、ファンキー&ソウル・ジャズにステップアップする者、それぞれ、苦心して、ジャズに対する新しいニーズに応えようとしているのが、実に見事に記録されている。

Hank Mobley『The Turnaround!』(写真左)。1963年3月7日(#2-3)、1965年2月4日(#1, 4-6)の2セッションからの収録。ブルーノートの4186番。

ちなみにパーソネルは以下の通り。1963年3月7日の録音は、Hank Mobley (ts) Donald Byrd (tp), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Philly Joe Jones (ds)。1965年2月4日の録音は、Hank Mobley (ts), Freddie Hubbard (tp), Barry Harris (p), Paul Chambers (b), Billy Higgins (ds)。

1965年7月、LPでの初リリース時は全6曲。収録曲は以下の通り。

1. The Turnaround
2, East of the Village
3. The Good Life (Sacha Distel, Jack Reardon)
4. Straight Ahead
5. My Sin
6. Pat 'n' Chat
 

Hank-mobleythe-turnaround

 
ちなみにCDリイシュー時、1989年のCDリイシューはLP時の収録曲のシークエンスに対応しておらず、1963年のセッションが省略され、1965年2月5日のセッションが収録された。これは酷い。 
 
我が国では、2014年11月に限定SHM-CDでリリース。オリジナルのLPシーケンスに加え、『ストレート・ノー・フィルター』のCD版に収録されていた1963年のセッションの2曲、および1965年のセッションの残りのトラックで構成されている。この記事では、1965年7月、LPでの初リリース時の6曲シークエンスを前提に話を進める。

2曲目「East of the Village」と3曲目「The Good Life」が、クールなハードバップ志向。1963年3月7日の録音で、ドラムがフィリージョー。ピアノにハンコックがいるが、ドラムが「こってこてハードバップ」のフィリージョーだとモードに走る訳にはいかない。ただ、録音年が1963年だとすると、内容的には「手垢が付いた」と感じるところは否めない。

1曲目「The Turnaround」と、6曲目「Pat 'n' Chat」がジャズロック志向。アドリブにモードなフレーズが見え隠れ。4曲目「Straight Ahead」と5曲目「My Sin」がモード・ジャズ志向。モブレー固有のモーダルなテナーが聴ける。ただし、ちょっとやりにくそう。逆にフロントの相棒、ハバードは喜々としてモダールなフレーズを吹きまくっている。

タイトルの「The Turnaround」は「転換点」を意味するのか。とあれば、この盤は、モブレーの「転換点」を記録した番と解釈出来る。1963年3月7日のクールなハードバップ志向、1965年2月4日の録音のジャズロック&モード志向。この2つの録音の間にある「転換点」をこの盤で表現しているのか。

そうであれば、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンのアルバム企画力には脱帽。確かに、明らかに、この盤では、2つの「顔」のモブレーが確認出来る。
 
 

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2023年8月 6日 (日曜日)

ガーランドの面倒くさい編集盤

レッド・ガーランドは、1950年代、その人気は結構高かったと見えて、プレスティッジ・レーベルから相当数のリーダー作がリリースされている。しかも、1セッションでLPに収録出来ない位の曲数を録音しているので、当然、未収録の曲が出る。

それを寄せ集めて、リーダー作を編集してリリースする。これが実に扱いに困る。演奏傾向の違うものが混在していたりで、録音年月日を確認して、もともと、どのセッションに入っていたのかを突き止めて評価する必要が出てくる。

The Red Garland Quintet『Dig It!』(写真左)。1957年3月と12月、1958年2月の3つのセッションからの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts, tracks 1, 3, 4), Donald Byrd (tp, tracks 1, 4), George Joyner (b, tracks 1, 3, 4), Paul Chambers (b, tracks 2), Art Taylor (ds)。

1曲目「Billie's Bounce」と4曲目「Lazy Mae」が、1957年12月13日の録音。2曲目「Crazy Rhythm」が、1958年2月7日の録音。3曲目「CTA」が、1957年3月22日の録音。未発表音源としてはここまで。3曲目の「CTA」は、Art Taylor『Taylor's Wailers』に既に収録された演奏をそのままこちらに持って来ている。プレスティッジお得意の寄せ集めとはいえ、つきつめると、かなり「面倒くさい」。

この盤のサブタイトルが「with John Coltrane」。収録曲4曲全てにコルトレーンが頑張っているのかと言えば、そうでは無くて、2曲目の「Crazy Rhythm」にはコルトレーンはいない。3曲目の「CTA」にはコルトレーンはいるが、これはアート・テイラーのリーダー作からの「借り物」なので、純粋には4曲中、2曲しかコルトレーンはいない。これで、The Red Garland Quintetの演奏としてまとめて、しかもご丁寧にサブタイトルに「with John Coltrane」を付けるから、ますます判らない内容になる(笑)。

もともと、1957年12月13日の録音は「The Red Garland Quintet With John Coltrane And Donald Byrd」として録音。全5曲を録音しているが、そのうちの2曲をこの『Dig It!』へ収録、「Solitude」のみThe Red Garland Quintet With John Coltrane『High Pressure』へ切り売り。残りの2曲は未発表音源のまま。ベーシストはジョージ・ジョイナー。

1958年2月7日の録音は、そもそも「The Red Garland Trio」として録音しており、コルトレーンはいない。純粋なガーランド・トリオの録音。よってベーシストは、この録音だけポール・チェンバース。
 

The-red-garland-quintetdig-it

 
1957年3月22日の録音は、もともと「Art Taylor's All Stars」として録音されており、このセッションのリーダーはアート・テイラーであり、ガーランドでは無い。しかし、録音記録を見てみると、同一日に「The Red Garland Trio」の録音が8曲あって、主に『Red Garland's Piano』の為のトリオ演奏だった。

が、その後、何故かコルトレーンが参加して、この「CTA」だけを録音しているみたいなのだ。そして何故か、この曲だけ『Taylor's Wailers』に唐突に収録されている。『Taylor's Wailers』が1957年のリリース。今回ご紹介の『DIg It!』は1962年のリリースなので、この曲だけコルトレーンが入っているので、コルトレーン人気に便乗して、ガーランドのリーダー作の中に混ぜ込んだみたいなのだ。

とにかく、サブタイトルに「with John Coltrane」が付いているので、あの伝説のガーランド・トリオ、ガーランド・チェンバース、テイラーをバックに、コルトレーンが吹きまくった盤かと思うのだが、中身はそうではない。そもそもタイトルに「Quintet(5人編成)」とあるので、フロント管として、コルトレーンともう1人の誰かがいるわけで、それはトランペットのドナルド・バード。

しかも、3曲目の「CTA」は「Quintet(5人編成)」の演奏では無く、コルトレーンのワンホーン参加の「Quartet(4人編成)」で、バックはガーランド・チェンバース、テイラーだが、リーダーはテイラー。しかも、テイラーのリーダー作『Taylor's Wailers』に収録済みの曲を、この『Dig It!』に再掲、使い回しをしている。

タイトルに偽りあり。いかにもプレスティッジ・レーベルらしい仕業なのだが、それぞれの曲の演奏自体は申し分無い。が、この盤をガーランドのリーダー作として捉えるには無理がある。聴いてみると、録音年月日毎にニュアンスや響きが微妙に異なる。セッションの中の同一録音曲とは思えないのだが、この収録曲毎の収録年月日を追ってみて、その理由が判った。

ジャズのアルバムは録音年月日が重要な要素として扱われるが、ジャズは即興演奏がメインであるが故、セッション毎にアレンジやニュアンス、響き、そして、その時点でのテクニックや志向が異なってくる。

そういう意味でジャズの録音を評価する上で、録音年月日が重要なのだが、このガーランドの『Dig It!』を聴いていると、録音年月日毎にニュアンスや響きが微妙に異なっていて、その重要性が良く理解出来る。これはプレスティッジ・レーベルの「セッション切り売り」の功績だろう。
 
 

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2023年8月 4日 (金曜日)

記念すべき E.S.T.のデビュー盤

現代北欧ピアノ・トリオの草分けであるE.S.T.(エスビョルン・スヴェンソン・トリオ)は、スウェーデン出身。メンバーは、リーダーでピアノ担当のエスビョルン・スヴェンソン、ベースのダン・ベルグルンド、ドラムのマグヌス・オストロムで、1993年結成。

トリオ演奏の基本は、北欧ジャズの伝統的なピアノ・トリオの個性。耽美的でリリカル、クールな熱気、透明度の高い流麗なフレーズ、現代音楽を踏襲した硬質で前衛的な展開を、E.S.T.は、しっかりと踏襲している。

Esbjörn Svensson Trio『When Everyone Has Gone』(写真左)。1993年の録音。ちなみにパーソネルは、Esbjörn Svensson (ac-p, el-p, syn, Rhodes), Dan Berglund (b), Magnus Öström (ds)。記念すべき E.S.T.のデビュー盤。

ピアノ・トリオの個性は、基本的にピアノの個性に大凡は決定される。E.S.T.は、当然、リーダーのスヴェンソンのピアノの個性がポイント。スヴェンソンのピアノは、北欧ジャズの伝統的なピアノの個性をしっかりと踏襲している。弾きっぷり、弾き回し、音の響き、どれもが北欧ジャズの伝統的雰囲気をしっかりと保持している。

ただし、耽美的な度合いは軽い。カラッとしている。アドリブ展開では、米国ジャズのモード・ジャズ、1960年代から1970年代の新主流派のモード・ジャズの様な弾き回しが興味深い。
 

Esbjorn-svensson-triowhen-everyone-has-g

 
つまり、どっぷり北欧ジャズのピアノ・トリオ化はしていないところが、このデビュー盤の面白いところ。ただ、モーダルな展開なところも、米国ジャズよりタッチの透明度が高く、響きはリリカル。聴いていて、米国ジャズと間違うことは無い。

耽美的でリリカルな弾き回しは、ドライな「キース・ジャレット」。高速モードの弾き回しは軽めの「マッコイ・タイナー」。現代音楽を踏襲した硬質で前衛的な弾き回しは、ちょっと優しめの「チック・コリア」。そんな3人の先達ピアニストに影響を受けているところは感じるが、それぞれのエッセンスを吸収して、自らの個性に反映しているので、決して物真似には聴こえない。

北欧ジャズのコンテンポラリーな純ジャズ・トリオ。北欧ジャズの個性である「耽美的でリリカルな面」を強調すること無く、ドライに北欧ジャズの個性を下敷きにして、モーダルなジャズを展開する。演奏自体の精度はかなり高い。ベースのダン・ベルグルンド、ドラムのマグヌス・オストロムのリズム隊の息もピッタリ、静的に熱いリズム&ビートでスヴェンソンのピアノを鼓舞し、引き立てる。

デビュー盤にして、完成していた感のある E.S.T.。このデビュー盤における「スヴェンソンの北欧ピアノ・トリオ」をアルバムを重ねる毎に深化させていくことになる。しかし、その深化は、スヴェンソンがスキューバダイビング中の不慮の事故で亡くなる2008年6月14日で停止する。

このデビュー盤には、E.S.T.の原点の響きが溢れている。
 
 

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2023年8月 3日 (木曜日)

欧州フリー・ジャズの入門盤

Enjaレーベルは、欧州フリー・ジャズに造詣が深い。共同設立者のホルスト・ウェーバーは、アパレル時代に日本の企業と仕事をしており日本のジャズにも精通していた為、日本のジャズ・ミュージシャンの作品も多く手がけ、日本でのライヴ録音も行っている。

1970年代、欧州フリー・ジャズに強いレーベルは、Enja(エンヤ)しか無かったと記憶する。「欧州フリー・ジャズを聴くなら、Enjaを聴け」が、僕が学生時代の合い言葉(笑)。

Albert Mangelsdorff『Live in Tokyo』(写真)。1971年2月15日、東京「新宿DUG」でのライヴ録音。ENJAちなみにパーソネルは、Albert Mangelsdorff (tb), Heinz Sauer (ts), Günter Lenz (b), Ralf Hübner (ds)。欧州ドイツのトロンボーンの鬼才、アルベルト・マンゲルスドルフとハインツ・ザウアーのテナーの2管フロント。ピアノレスのカルテット編成。

フリー・ジャズって、①音階(キー)から、②コードあるいはコード進行から、③ハーモニーから、④リズムから、の束縛から逃れたインプロのことで、この「束縛」から逃れておれば、調性音楽でも「フリー・ジャズ」として成立する。

本能の赴くまま、激情に駆られて、個人的に自由に吹きまくる、という米国でよくあるフリー・ジャズは、音楽として鑑賞するにはちょっと辛いものが多々ある。フリー・ジャズは、あくまで音楽として鑑賞することが出来る程度のものであって欲しい。

このマンゲルスドルフ・カルテットのフリー・ジャズは、音楽として鑑賞できる優れもの。確かにアブストラクトに展開するところもあるし、自由な吹きまくりテナーの咆哮もある。
 

Albert-mangelsdorfflive-in-tokyo  
 

が、それらはほんの少し、演奏全体のスパイス的なもの。この盤の演奏は、しっかりと秩序を守ったフリー・ジャズ。ビートは最低限ではあるが「ある」。その最低限のビートの下で、真の即興を志向し、それを実行している。

欧州のフリー・ジャズ、ドイツのフリー・ジャズやなあ、と思う。フリー・ジャズというか、自由度の相当高い即興演奏かな、とも思う。さすが欧州ジャズ。現代音楽志向の展開、現代音楽のジャズ化、現代音楽志向の即興演奏、そんな雰囲気。

マンゲルスドルフのトロンボーンも、ザウアーのテナーも、激情に駆られて熱くはならない。クールに熱い、静的な感情の高ぶりを、現代音楽志向の即興演奏で表現。どこか客観的に「醒めた」視点を持って、客観的に自らのフリーな即興演奏を愛でながら展開するような「クールに熱い」フリー・ジャズ。

我が国では、フリー・ジャズと言えば、オーネット・コールマン志向、いわゆる「通常のモダン・ジャズがやらないことをやる」フリー・ジャズ。若しくは、コルトレーン志向の「本能の赴くまま、激情に駆られて、個人的に自由に吹きまくる」フリー・ジャズ、いわゆる米国のフリー・ジャズがもてはやされてきた。

が、意外とフリー・ジャズと言えば、欧州ジャズ、ドイツ・ジャズなのでは、と思わせてくれる、マンゲスドルフの秀逸な「欧州フリー・ジャズ」の記録である。このライヴ盤を聴けば、欧州のフリー・ジャズの雰囲気を的確に掴めると思う。欧州フリー・ジャズの入門盤的位置づけのライヴ盤。
 
 

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2023年8月 2日 (水曜日)

スヴェンソンのソロ・ピアノ盤

北欧ジャズがずっと、お気に入りである。そして、突如、今年になって、北欧ジャズをしっかり聴き直そうと思い立った。米国ジャズから始まって、和ジャズ、欧州ジャズ、そして、最後に北欧ジャズ。ジャズを約半世紀、ずっと聴いてきたが、ようやく北欧ジャズを聴き直すタイミングになってきた。

北欧の純ジャズは一定の傾向がある。透明感のある音とエコー。ファンクネス皆無。クラシック音楽に根ざした正統なフレーズ回し。スピリチュアル&エモーショナルのバランス取れた情感表現。決して熱くならない、クールに盛り上がるエモーショナルな表現。耽美的でリリカル、情感溢れるフレーズ。北欧ジャズには独特の響きがある。これが良い。

Esbjörn Svensson『HOME.S.』(写真左)。2008年春の録音。ちなみにパーソネルは、Esbjörn Svensson (p)。北欧ジャズで有名なエスビョルン・スヴェンソン・トリオ(e.s.t.) のリーダー、スヴェンソンのソロ・ピアノ盤。

エスビョルン・スヴェンソンが、2008年6月14日、ストックホルム近くの小島で、スキューバダイビング中の不慮の事故で亡くなるわずか数週間前に、彼の自宅で録音されたソロ・ピアノ音源。スヴェンソンの急逝後、妻のエヴァ・スヴェンソンによって、ハードディスクの中から発見された未発表音源。
 

Esbjorn-svenssonhomes

 
44歳での録音。天国からの贈り物。全9曲がオリジナル。それぞれの曲名がちょっと不思議なタイトルで、これって何だ、と思っていたのだが、資料によると、スヴェンソン本人が急逝した為、全ての曲のタイトルは決められていなかったので、宇宙が好きだった彼の想いを汲み、ギリシャ語のアルファベットにしたとのこと。なるほど。

硬質で力感溢れる打鍵、流麗な高速フレーズ。踊るように弾むタッチ、麗しい高揚感。内省的で静的、そして透明感溢れる響き。そして、フレーズの底に流れる「ジャジー&ブルージー」な感覚。耽美的でリリカル、それでいて力強く、強い意志を感じる、素晴らしいソロ・ピアノ。北欧ジャズの個性の全てを反映、包含したスヴェンソンのピアノは限りなく美しい。

「クールな熱気」ある弾き回しに思わず引き込まれる。スヴェンソン独自のメロディックな即興演奏。北欧ジャズを代表するソロ・ピアノのパフォーマンスの記録だろう。よくぞ発見されたと思う。

妻のエヴァ・スヴェンソン曰く「まるでエスビョルンの声が部屋の中に聞こえるようです。彼はまだ言いたいこと、伝えたいことがあるのです」。激しく合意する。久々に聴き応えのあるソロ・ピアノに出会った。
 
 

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2023年8月 1日 (火曜日)

日野皓正の欧州なフリー・ジャズ

今日の関東地方は不安定な天気。明け方、雨が降って、朝は久し振りに曇天。陽射しが無い分、気温はさほど上がらず、蒸し暑さは回避。昼間は東京ではゲリラ雷雨で大変だったみたいだが、我が方はチョロッと降っただけで、昼過ぎからは日が射したりして、最高気温は34℃。猛暑日は避けられたみたいだが、結局、真夏日となった。

今日は日中はほぼ曇り空で、部屋のエアコンの効きが良い。涼しい快適な湿度の部屋の中で、今日は久し振りに「フリー・ジャズ」を聴いてみようと思った。フリー・ジャズはいろいろあるが、最近は1970年代の「Enja(エンヤ」」レーベルのフリー・ジャズを選んで聴く様にしている。

エンヤ・レーベルは、1971年、ジャズ愛好家のマティアス・ヴィンケルマンとホルスト・ウェーバーによって、ドイツのミュンヘンで設立された、欧州ジャズ・レーベルの老舗のひとつ。ハードバップからモード、フリー、スピリチュアル・ジャズまで、モダン・ジャズの奏法、スタイルをほぼ網羅するが、とりわけ、前衛ジャズに造詣が深い。

ジャズの演奏スタイルの1つ「フリー・ジャズ」。従来のジャズの奏法を踏まえることなく、自由に演奏するスタイル、いわゆる「音階(キー)」「コードあるいはコード進行」「リズム(律動)」、以上3要素から自由になって演奏するのが「フリー・ジャズ」。しかし、これら3要素を全て自由にすると「音楽」として成立しないので、「必要最低限の取り決め」のもと、フリーに演奏するということになる。

日野皓正『Vibration』(写真)。1971年11月7日、ベルリンでの録音。ENJAー2010番。ちなみにパーソネルは、日野皓正(tp), Heinz Sauer (ts), Peter Warren (b), Pierre Favre (ds)。日野のトランペットとザウアーのテナーがフロント2管、ピアノレスのカルテット編成。演奏スタイルはフリー・ジャズ。欧州ジャズのフリー・ジャズ。
 

Vibration

 
日野皓正といえば、僕が本格的にジャズを聴き始めた頃は、NYに渡ってフュージョン・ジャズにドップリだったので、NYの渡る以前のハードボイルドで前衛的な日野皓正を聴いた時は、最初はビックリ。しかし、しっかり対峙して聴くと、かなり高度で難度の高い純ジャズをやっていて、フリー・ジャズはそのバリエーションのひとつ。

日野以外のメンバーは3人とも僕は知らなかった。この人選、ホルスト・ウェーバーによる人選だったらしく、録音当日、全員、初顔合わせだったらしい。しかし、録音された演奏を聴くと、初顔合わせとは思えない、フリー・ジャズ志向な演奏の中、メンバー間の連携と熱気が凄い。ピアノレスな分、フロントの2人の自由度が限りなく高い。

前衛的でアバンギャルド、激しいフレーズと無調のアドリブ。米国のコルトレーン直系の、心の赴くまま、とにかく「熱く吹きまくって力づく」というフリー・ジャズでは無く、クールでソリッドで硬質、切れ味良く、「前衛音楽の響きを秘めた欧州ジャズの範疇」でのフリー・ジャズ。加えて、高度なテクニックと音楽性を有しないと、フリー・ジャズとしての音楽を表現出来ないのだが、この盤のカルテット・メンバーの演奏テクニックはかなり高い。

日野の自由度の高い、シャープなトランペットの咆哮、ザウアーのゴリゴリと尖ったテナー、自由奔放にクールに暴れまくるファーヴルのドラム、そして、フリーな演奏の底をガッチリと押さえる、重心低くソリッドなウォーレンのベース。混沌とした無調のフリー・ジャズだが、「間」としっかり取って、それを活かしたフリーな展開が、この盤のフリー・ジャズを聴き易いものにしている。

定速ビートが無い分、聴くのに骨が折れるが、しっかり聴いていると、フリーな演奏の底に自由度の高い変則ビートが流れている様で、このフリーな演奏をどこか整然とした印象を持たせてくれる。限りなく自由度の高いモーダルなジャズのすぐ先にある、そんな感じのフリー・ジャズ。
 
 

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