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2023年7月13日 (木曜日)

ブルーノートの新主流派ジャズ

ブルーノートの4100番台は、カタログ番号順に聴き進めて行くと面白い。ジャズの多様化の時代にアルバムをリリースしているので、1960年代前半の様々なスタイルのジャズ、様々な志向のジャズが記録されていて、バラエティーに富んでいる。

成熟したハードバップももちろん、ファンキー・ジャズあり、ソウル・ジャズあり、モード・ジャズもあるし、フリー・ジャズもあるし、オルガン・ジャズもあるし、ギター・ジャズもある。ブルーノートの優れたところは「偏り」が無いこと。その時点でのジャズのスタイル、トレンドをしっかり網羅している。それもどれもが水準以上のレベルで、である。さすがブルーノート、といったところか。

Grachan Moncur III『Some Other Stuff』(写真左)。1964年7月6日の録音。ブルーノートの4177番。ちなみにパーソネルは、Grachan Moncur III (tb), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Cecil McBee (b), Tony Williams (ds)。

パーソネルを見れば、いやはや錚々たるジャズマン達の名が並ぶ。録音当時、新主流派でブイブイ言わせていた強者ども達である。これはもう、新主流派ジャズの極み、モード・ジャズ、もしくは、フリー・ジャズな内容なんだろうなと予想がつく。逆にこのメンバーで、こってこてのハードバップをやられたら、それはそれで面白いけど。

で、この盤の内容はと言えば、一言で言うと「自由度のかなり高いモード・ジャズ、時々フリー・ジャズ」という感じ。

実は僕はこの盤を初めて聴いた時は「フリー・ジャズ」だと思った。トロンボーンでフリー・ジャズをやるんや、と思った。が、今の耳で聴き直すと、これは「モード・ジャズ」がベース。しかも、かなり自由度の高い、フリー一歩手前のモード・ジャズをガンガンやっている。そして、ところどころで「口直し風」に、フリー・ジャズに展開する。

この盤の録音時期、モード・ジャズをやると、どうしても、始まりと終わりは従来の成熟したハードバップに戻ることが多いのだが、この盤は徹底的にモード・ジャズで推し進め、さらにところどころで、当時、最先端のジャズの志向のひとつ、フリー・ジャズに展開して、進化するジャズを的確に表現する。さすが、新主流派のメンバーで固めたクインテットでのパフォーマンスである。緩んだところが全く無い。切れ味良く、理路整然とモーダルに展開している。
 

Grachan-moncur-iiisome-other-stuff

 
グラチャン・モンカー3世のトロンボーンとショーターのテナーの2管が実に良い味を出している。ボワンと拡がりのある音色のトロンボーンと、縦に横に奥行きと拡がりのあるテナーの相性がバッチリ。モーダルなトロンボーンの音色に、ショーターのウネウネ、コズミックな拡がりテナーがとてもマッチしている。

ハンコック、マクビー、トニーのリズム・セクションは素晴らしいの一言。モードにもフリーにも完全対応。ハンコックのピアノが、モンカー3世とショーターのモーダルな吹奏に合わせた、音の拡がりと活かしたバッキングをしているところが実に「ニクい」。トニーのドラミングも同様。叩きまくるドラミングを押さえて、音の拡がりを引き立てる自由度の高いドラミングを披露している。

そして、最後に面白いのがマクビーのベース。このメンバー構成だとベースはロン・カーターが来るかと思うんだが、ここまマクビーのベースで正解かと思う。

バンド・サウンド全体としては、モンカー3世とショーターのモーダルな吹奏に合わせた、音の拡がりと活かしたモード・ジャズなんだが、マクビーのベースは「ビートが立って」いて、演奏全体のリズム&ビートをしっかりとキープし、他のメンバーに指針を与えている様なのだ。

ロンのベースは拡がりのある音が身上なので、この盤でベースがロンだと、演奏全体が「音の拡がり」オンリーになって、「ビートの締まり」が希薄な演奏になる可能性が高い。それはそれで面白いかもしれないが、ジャズ演奏としてはちょっと冒険が過ぎる、とブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは考えたのかもしれない。

そんなことをいろいろ考えながら聴ける、いろいろと示唆に富んだ「自由度のかなり高いモード・ジャズ、時々フリー・ジャズ」盤である。単純に流行のモード・ジャズをなぞるだけでは終わらない。さすがブルーノートだと思う。
 
 

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