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2023年7月の記事

2023年7月31日 (月曜日)

ジョー・チェンバースの最新作。

昨日、ブライアン・ブレイドの参加アルバムのことを書いて、この1〜2年にゲットして聴いたアルバムを見渡してみたら、意外とドラマーがリーダーの良好盤があることに、改めて気がついた。

ドラマーのリーダー作って、管楽器やピアノがリーダーのアルバムとは、その「作り」はちょっと異なると思う。ドラムという楽器、旋律楽器では無いので、その奏法やスタイルをメインにリーダー作をまとめる訳にはいかない。フロント楽器として演奏の旋律部分を担当する訳にもいかない。ドラマーのテクニックや個性を披露するにも、40〜50分の収録時間、ずっとドラムを叩くわけ訳にもいかない。

リーダーとして、演奏全体の志向や傾向を参加メンバーと意思統一をして、その志向や傾向に従った演奏の中で、リーダーとして、そのドラミングの技や個性を披露することになる。その志向や傾向に則ったアレンジとリーダシップが「鍵」となる。

Joe Chambers『Dance Kobina』(写真左)。2022年の作品。ニューヨークとモントリオールでの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Chambers (ds, perc, vib) , Caoilainn Power (as), Ira Coleman, Mark Lewandowski (b), Elli Miller Maboungou (perc), Andrés Vial, Rick Germanson (p), Michael Davidson (vib)。

1960年代から活躍しているベテラン・ジャズ・ドラマー、ジョー・チェンバーズ(以降、ジョーチェン)。1942年生まれなので、今年で81歳。この盤の録音当時は80歳。大ベテランというか、もはや「レジェンド」の域の存在である。

ジョーチェンはエリック・ドルフィー、チャールズ・ミンガス、ウェイン・ショーター、チック・コリアなど多くの著名なアーティストと共演している。ポリリズミックで新主流派なドラミングが身上で、コンテンポラリーな純ジャズが活躍のメイン・フィールド。
 

Joe-chambersdance-kobina

 
ブルーノートに移籍して以降、ジャズ、ラテン、ブラジル、アルゼンチン、アフリカ音楽の間の深い音楽的なつながりを探求した、ブルーノートでの2枚目のリーダー作。ラテン〜アフリカ路線とは言うが、こってこての、あからさまなラテン・ジャズ、および、ワールド・ミュージック志向の音作りでは無い。あくまで、ネオ・ハードバップの範疇の演奏に収めた「ラテン〜アフリカ志向」。
 
収録曲を見渡すと、ジョーチェンの自作曲と、ジャン=ピエール・ヴィアル、クルト・ヴァイル、ジョー・ヘンダーソン、カール・レイツァーなどのミュージシャンズ・チューンで固められている。これらの曲がラテン〜アフリカ志向の音作りに乗って演奏されるのだから堪らない。今までに聴いたことのないイメージの、コンテンポラリーなネオ・ハードバップが実に新鮮に響く。

パーソネルを見渡せば、実は「知らない」ミュージシャンばかり。過去に囚われない、今の、現代の、フレッシュなラテン〜アフリカ志向の演奏を目指していることが、このパーソネルを見ても良く判る。出てくる音はハイ・レベルな演奏の数々。名前は知らないけど、それぞれ実力十分のミュージシャンが参加していることは、演奏を聴いて良く判る。

「ラテン〜アフリカンなグルーヴを聴かせる」志向のビートの効いたパワフルな曲あり、スィートなバラード曲あり、特にバラード曲は、現代のR&Bのソフト&メロウな雰囲気を踏襲している様でもあり、ジョーヘンの曲などは、明らかにモードなんだけど、現代のネオ・モードなアレンジで、1960年代の新主流派の雰囲気は微塵も無い。

アルバム全体を通じて、この盤に詰まっている音は、現代の最新の「コンテンポラリーな純ジャズ」だと感じる。アレンジの過程で、ラテン〜アフリカ志向の音作りになっていて、精緻でテクニカルな純ジャズというよりは、アレンジとグルーヴで聴かせる、現代のラテン・ジャズ、および、アフリカン・ネイティヴなジャズ。硬派なコンテンポラリーな純ジャズな音作りで、聴き応え抜群です。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年7月30日 (日曜日)

今を行く硬派なギター・トリオ

当代のジャズ・ドラマーで、信頼して聴くことが出来るドラマーが幾人かいる。 ブライアン・ブレイド(Brian Blade)は、そんな「当代の信頼出来るジャズ・ドラマー」の1人。この人のドラミングは、初リーダー作『Brian Blade Fellowship』(1998年)から、ずっと聴いているが、リーダー、サイドマンどちらのドラミングも見事なもので、僕は「ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤は無い」と思っているくらいである。

Jeff Denson, Romain Pilon, Brian Blade『Finding Light』(写真左)。2022年1月17日,18日の録音。ちなみにパーソネルは、Jeff Denson (b), Romain Pilon (g), Brian Blade (ds)。米国中堅ベーシストのデンソン、フランス出身の才人ギターのピロン、そして、僕が信頼する当代きってのジャズ・ドラマーのブレイド、の3人が邂逅したギター・トリオ。

トリオの3名、並列の共同リーダー作。確かに、3人3様、それぞれがリーダーシップを取り合いながら、素晴らしいパフォーマンスを披露している。オーソドックスなスイング志向あり、変拍子な演奏あり、ジャズ・ファンクあり、ストイックで硬派なインプロビゼーションありで、それぞれのインタープレイの応酬が見事。
 

Jeff-denson-romain-pilon-brian-bladefind  

 
コロナ禍で収録スケジュールを3度、変更せざるを得なかったらしいが、間延びせず、鮮度の高いパフォーマンスを繰り広げている。演奏の基本はモード。現代の最先端の「ネオ・モード」な音が実に良い。何気なく、弾き流している様に感じるが、どうして、適度なテンションを張りつつ、かなりマニアックな、かなり難度の高いパフォーマンスが凄い。特に、ピロンのギターが流麗かつ耽美的、そしてリリカル。それでいて、ジャジーな雰囲気をしっかり湛えていて、かなり聴き応えのあるギターが印象的。

ベースとドラムのリズム隊は「素晴らしい」の一言。デンソンのベースは、トリオ演奏の「底」をしっかりと押さえて、他の2人が安心してパフォーマンス出来るベースラインを供給する。ブレイドのドラムは緩急自在、硬軟自在、変幻自在。ポリリズミックな展開も芳しく、トリオというシンプルな演奏の中、リズム&ビートに、ブレイドならはの「彩り」を添えていて、トリオ演奏をバラエティー豊かなものにしている。

現代のコンテンポラリー・ジャズ、「今」を行く硬派なギター・トリオとして、内容ある好盤だと思います。トリオ演奏として、音数は決して多くはないが、それぞれの「間」を上手く活かした、流麗でクールでエモーショナな演奏に、思わず聴き込んでしまう。ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤は無い」と感じて久しいが、この盤もブレイドがドラムを担当していて、その内容に「間違いは無い」。
 
 

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2023年7月29日 (土曜日)

ハバードにはジャズ・ロック

前作『High Blues Pressure』では、ジャズロックとモード・ジャズが混在、アルバム全体の印象がちょっと散漫になって、本当にジャズロック路線で攻めていって良いのか、世間の評価をどうなるのか、まだまだハバードには迷いがあったように感じた。しかし、僕の印象としては「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」。

Freddie Hubbard『A Soul Experiment』(写真左)。1968年11月11日(#3, 7, 9),13日(#1-2, 10),1969年1月21日(#4-6, 8)の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Carlos Garnett (ts, #3-9), Kenny Barron (p), Gary Illingworth (org), Billy Butler (g, #3, 7, 9), Eric Gale (g, # 1–2, 4–6, 8, 10), Jerry Jemmott (b), Grady Tate (ds, #3, 7, 9), Bernard Purdie (ds, #1, 2, 5)。

タイトルを訳すと「ソウルの実験」。おお、遂にハバードも吹っ切れたか、と期待する。そして、聴いてみて、ジャズファンク、ソウル・ジャズで統一されたジャズロック志向のアルバムに仕上がっている。加えて、すべての演奏がエレギ&エレベの、完全「エレジャズ」な布陣の演奏になっている。思い切っているなあと感じる。
 

Freddie-hubbarda-soul-experiment

 
タイトルは「ソウルの実験」だが、演奏全体の雰囲気は「お試し」。ハバードが試しにソウル・ジャズをやってみた、それも、エレ・ジャズな編成で、かつ、ジャズロック志向で、といったところか。「お試し」とは言え、このアルバムについては、きっちりジャズロック志向で揃えているので、中途半端な感じが無い。実に潔い。

冒頭「Clap Your Hands」は、エキサイトなソウル・ジャズ。エレ楽器メインのジャズロックな8ビートに乗って吹くハバードのトランペットが心地良い。指がよく動き、テクニックが優れているので、8ビートに流麗に乗った、滑らかなアドリブ展開は違和感が全く無い。4曲目「Lonely Soul」は、ハードボイルドなハバードの哀愁感溢れるバラード・プレイが聴けて、これまた良好。

確かにタイトルは「ソウルの実験」なので、本格的にジャズロック志向に舵を切ったのかどうかは、次のリーダー作以降を聴かないと判らないが、このオール・ジャズ・ロックな盤を聴く限り、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」という感覚は「確定」だろう。
 
 

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2023年7月28日 (金曜日)

過渡期のフレディ・ハバードです

フレディ・ハバードは、そのテクニックは卓越したものがあるのだが、如何せん、吹きすぎる盤が多い。メンバーによるのだが、自分から見て後輩のメンバーばかりの時は、アニキ風を吹かせるのか、後輩に花を持たせて、自分は抑制の効いた、余裕あるブロウを展開する。これは良い。優れたテクニックの持ち主でありながら、抑制の効いた、余裕あるブロウを披露するハバードは凄みすらある。

逆に、メンバーが同年代から先輩になる時は、とにかく目立ちたいのか、吹きに吹きまくる。「俺は凄いんだぞ」と言わんばかりに、ハバードの持つ卓越したテクニックを最大限に発揮して、五月蠅いくらいに吹きまくる。他のメンバーとのバランスや対比など、全くお構い無し。これは困る。優れたテクニックが、悪い印象に作用して、ただ五月蠅いトラペットになったりするのは困る。

Freddie Hubbard『High Blues Pressure』(写真左)。1967年11月13日の録音。アトランティック・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp, flh), James Spaulding (as, fl), Bennie Maupin (ts, fl), Herbie Lewis (b), Roman "Dog" Broadus (conga)、ここまでは全曲参加なんだが、Weldon Irvine (p, track 1), Kenny Barron (p, tracks 2-6), Freddie Waits (ds, tracks 1-3), Louis Hayes (ds, tracks 4-6), Howard Johnson (bs, tuba, tracks 2-6), Kiane Zawadi (tb, euphonium, tracks 2-6)。

前作『Backlash』で転身したジャズロック路線を踏襲したアルバムになる。しかし、面白いのは曲が進むにつれて、ジャズロック色は薄れていって、後半は「新伝承派」のモード・ジャズになっている。ハバードのトランペットにはジャズロックが合うんだがなあ。この盤の時点では、まだハバードには迷いがあったように感じる。意外とハバードは他のジャズマンからの評価を気にするタイプだったのかもしれない。
 

Freddie-hubbardhigh-blues-pressure

 
前半のジャズロック志向の演奏は実に良い。ハバードのトランペットには8ビートが良い。卓越した速いフレーズう吹きまくるに、速い8ビートがちょうど良い。そして、ジャズロックの十八番である「テーマのユニゾン&ハーモニー」では、抑制が効いて余裕あるハバードの吹きっぷりが実に良い響き。やっぱり、ハバードのトランペットには「ジャズロック」が良く似合う。

後半のモード・ジャズも良い演奏なんだが、ジャズロックのハバードに比べて、ハバードの悪い癖、驚異的なテクニックで吹きすぎるハバードが目立ちに目立つので、折角のハバードの優秀テクニックのトランペットが、ちょっと五月蠅く響く。しかも録音年は1967年。モード・ジャズは最初の成熟期を迎えていて、ハバードのモード・ジャズには「新しい発見」は無いのが惜しい。

テクニックが優秀なので、優れたジャズロックも出来るし、優れたモード・ジャズも出来る。俺は何でも素晴らしい演奏が出来るんだ、という自信がちょっと裏目に出た盤。アルバム全体の印象がちょっと散漫になっている分、この盤は損をしている。ジャズロック志向に専念するかどうか、少し迷っている「過渡期」的な内容ではある。

それでも、ジャズロックの部分は、ハバードの特質が100%活かされていて良い出来。前作『Backlash』と併せて、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」ということを証明したハバードのリーダー作である。しかし、アトランティック・レーベルのプロデューサーって何をしてたのかなあ。ハバードに「おんぶに抱っこ」な印象で、全くもって勿体ない盤である。
 
 

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2023年7月27日 (木曜日)

硬派でバップなキャノンボール

キャノンボール・アダレイ。1959年以降、ファンキー&ソウル・ジャズでヒット作をリリースして人気ジャズマンになった訳だが、人気者になればなるほど、我が国では「ファンクの商人」と揶揄され、硬派なジャズ者の方々から煙たがられた。しかし、キャノンボールのジャズは確かなもの。デビュー当時のハードバップをバリバリ吹きまくるキャノンボールをもっと評価しても良いと僕は思っている。

彼が人気者になった、ファンキー&ソウル・ジャズだって、そのベースには、ハードバップ時代のバリバリ硬派にアルト・サックスを吹きまくる実績があったからこそ。どうも、以前は、ジャズというもの、コマーシャルに走るのは「恥」という傾向が我が国のジャズ・シーンにはあったように思う。僕には全く理解出来なかったけど。

Cannonball Adderley『Cannonball's Sharpshooters』(写真左)。1958年3月4日と6日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cor), Junior Mance (p), Sam Jones (b), Jimmy Cobb (ds)。アルト・サックスのキャノンボール・アダレイがチーダーのクインテット編成。小コンボ編成のハードバップな演奏に変わっての3作目。
 

Cannonball-adderleycannonballs-sharpshoo

 
この盤は、前年の『ソフィスティケイテッド・スウィング』や、それに続く『キャノンボール・アンルート』の流れの中にある盤で、硬派にハードバップにアルト・サックスを吹きまくるキャノンボールを確認することが出来る。スタンダード曲を伸び伸び、切れ味良く吹き上げるキャノンボールは、自由奔放でブリリアント。このストイックに硬派にアルト・サックスを吹きまくるキャノンボールは聴き応え十分。

フロントのパートナー、弟ナットのコルネットも良い味を出している。破綻無く切れ味良くブリリアントなトランペットを随所で吹きまくる。マンスのピアノは小粋だし、ジョーンズのベースは堅実。コブのドラミングは、この盤のハードバップな要素をしっかり把握し、しっかりとハードバップなリズム&ビートを供給する。

『ソフィスティケイテッド・スウィング』『キャノンボール・アンルート』に続く、小コンボでハードバップな演奏なんだが、スタンダード曲とミュージシャンズ・チューンズを混在して選曲したこの盤の演奏は「小粋」そのもの。録音年は1958年、ハードバップが成熟した頃の録音。良い内容で聴き応え満点。いかにも「やっつけ」なジャケだけが減点対象。もうちょっとましなジャケにならんかったのかいな、とこの盤を聴く度に思う。
 
 

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2023年7月26日 (水曜日)

小コンボのキャノンボールは良い

初リーダー作より、レーベルのエマーシーから、ムーディーなモダン・ジャズを余儀なくされたキャノンボール。キャノンボールは意外と硬派にハードバップに吹きまくるのだが、如何せん、ウィズ・ストリングスあり、ビッグバンド・ジャズなアレンジのゴージャスな編成ありで、全体的な印象としては「イージーリスニング・ジャズ」志向。

やっと、エマーシー移籍後の4作目のリーダー作『Sophisticated Swing』で、クインテット編成の小コンボでの、硬派でハードバップな演奏を実現した。メインストリーム系の純ジャズとして聴くには、まずは少人数コンボでのパフォーマンスが聴きたい。キャノンボールのアルト・サックスを、やっとクインテット編成で聴くことが出来た訳である。

Cannonball Adderley『Cannonball Enroute』(写真)。1957年2月と3月の録音。EmArcyレーベル上位のMercuryレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Junior Mance (p), Sam Jones (b), Jimmy Cobb (ds)。キャノンボール・アダレイの6枚目のリーダー作。但し、録音時はお蔵入り。4年後の1961年にリリースされている。
 
Cannonball-adderleycannonball-enroute  
 
エマーシー移籍後の4作目のリーダー作で、ようやくクインテット編成の小コンボでの、硬派でハードバップな演奏を実現した『Sophisticated Swing』のアウトテイクと追っかけ録音で構成されたのが本盤。1961年のリリースなので、マイルスのバンドに参加し、ファンキー・ジャズに転身して録音した『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』の大ヒットもあって、人気の一流ジャズマンの地位を確立してからの「便乗リリース」盤である。

『Sophisticated Swing』のアウトテイクと追っかけ録音だからといって、内容には遜色は無い。溌剌として流麗、そこはかとなくファンクネス漂い、テクニック上々。歌心溢れ、ちょっと五月蠅いくらいにブラスの音が鳴り響くキャノンボールのアルト・サックス。弟のナット・アダレイのコルネットも元気溌剌、兄のキャノンボールに負けず劣らず、素晴らしい吹奏を聴かせてくれる。

バックのリズム・セクションも好調。クインテット編成の小コンボでのキャノンボールの演奏は素晴らしい。明確にハードバップで、明確にモダン・ジャズ。ムーディーなモダン・ジャズは、キャノンボールには似合わない。『Sophisticated Swing』と同様、聴き応え十分な、ファンキー・ジャズ一歩手前の正統なハードバップ演奏が実に良い。『Sophisticated Swing』と併せて聴きたい。
 
 

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2023年7月25日 (火曜日)

新主流派の名演・名盤の1枚

1950年代から1960年代のブルーノート・レーベルはかなり「懐が深い」。1500番台からそんな傾向は出ていた訳だが、とにかく、その時その時に出現した、ジャズの「新しいトレンド&奏法」に長けたジャズマンをチョイスして、しっかりリーダー作を録音させている。4100番台を見渡すと、当時、ジャズの最先端を走るフリー・ジャズやモード・ジャズにもしっかりと対応しているから凄い。

Sam Rivers『Fuchsia Swing Song』(写真左)。1964年12月11日の録音。ブルノートの4184番。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts), Jaki Byard (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。新主流派の中でも先進的で尖ったテナーのサム・リヴァースがリーダー。ピアノに、これまた新主流派で尖ったジャッキー・バイヤード。ロンとトニーは新主流派のリーダー格。

サム・リヴァースの初リーダー作。リヴァースは、1923年生まれなので、40歳を過ぎての遅い初リーダー作になる。僕がリヴァースを初めて知ったのは、マイルスの『イルス・イン・トーキョー』でのサックス・プレイ。モーダルではあるが、かなり前衛的で、マイルスの下で限りなくフリーに走ったり、ちょっとだけアヴァンギャルドに傾いたり、当時として「かなりヤバい」サックス奏者だった。
 

Sam-riversfuchsia-swing-song

 
そんなリヴァースの初リーダー作。収録曲は全てリヴァースの自作曲。メンバーは皆、新主流派。当然、出てくる音はモードなんだが、かなりヤバいモードである。とにかく、フリーか、と思う位の自由度の高いモーダルな展開、最低限、伝統のジャズの範疇には留まって、最低限の決め毎に従って演奏してはいるが、とにかく尖っている。それでも、今の耳には五月蠅くない、しっかりとしたモード・ジャズをやっているのだから、その力量たるや、目を見張るものがある。

バックのリズム・セクション、バイヤードのピアノ、ロンのベース、トニーのドラム、皆、喜々として、リヴァースの相当に限りなくフリーに近いモーダルな吹奏に追従している。バイヤードがカチカチ硬質なモーダル・フレーズを叩き出し、ロンの自由奔放なベースラインが蠢き、トニーが安全装置を外して暴走叩きまくり。それでも、しっかりと伝統のジャズの範疇に留まった演奏でまとめているのだから、このリズム隊の力量も凄いものがある。

何だか、とんでもない「モーダルな」内容の演奏の数々だが、フリーに走っても、アブストラクトに傾いても、ちゃんと伝統のジャズの範疇に着地するのだから、このアルバムは素晴らしい。当時の新主流派の演奏の中でも、とびきり硬派でとびきりカッ飛んだ内容のアルバムで、21世紀の今から振り返ってみると、この盤、新主流派の名盤の1枚として評価してよいかと思う。
 
 

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2023年7月24日 (月曜日)

タイナーの1970年代トリオ2態

マッコイ・タイナーは、以前はコルトレーンの伝説のカルテットのピアニスト、コルトレーンの逝去後、コルトレーン・ジャズの継承者としてもてはやされた時期があったが、今では、あまりそういう評価は当たらない、と僕は思っている。

タイナーがコルトレーンから継承したのは、コルトレーンの「ワールド・ミュージック志向」の音世界であり、バリバリとモーダルなフレーズを弾きまくるタイナーについては、コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」を深化させているイメージはあるが、コルトレーン後期のフリー&スピリチュアルな志向のジャズについては全く手付かず。

コルトレーンの「ワールド・ミュージック志向」の音世界の継承については、コルトレーンの名盤『Africa/Brass』を下敷きにしている様な感じはするが、ピアニストとして弾きまくるモード・ジャズについては、コルトレーンの影はあまり感じ無い。「シーツ・オブ・サウンド」については弾き回しのスタイルとして踏襲しているが、タイナーのモード・ジャズの展開/Users/matsuoka/Desktop/JZZ02650-1-1.jpg /Users/matsuoka/Desktop/スーパートリオズ.jpg は「タイナー・オリジナル」であり、タイナーのみが為し得るもの。

Mccoy Tyner『Supertrios』(写真)。1977年4月の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p) は共通、tracks 1-6(1977年4月9ー10日録音)は、Ron Carter (b), Tony Williams (ds) とのトリオ、tracks 7-12(1977年4月11ー12日録音)は、Eddie Gómez (b), Jack DeJohnette (ds)。2つのトリオ演奏を収録した、リリース当時、LP2枚組。

タイトルの「・・・・trios」と最後に's'を付けているのは、2つのトリオ演奏を収録しているからで、ひとつは、タイナー、ロン、トニーのトリオ(LPの一枚目)。ハービー・ハンコックのトリオのリズム隊が代表的。
 

Mccoy-tynersupertrios

 
もうひとつは、タイナー、ゴメス、デジョネットのトリオ(LPの2枚目)。これは、モントルーのビル・エヴァンスのリズム隊が代表的。どちらのリズム隊も、先進的で創造的な響きを維持した、当時、中堅のリズム隊である。

タイナー、ロン、トニーのトリオ演奏は、スタンダード、ミュージシャンズ・チューンズがメインの演奏。冒頭、ジョビンのボサノバ曲「Wave」のダイナミックでモダールな演奏に仰け反る。ロンは、何時になくストレート・アヘッドなアコベを弾きまくり、トニーは千手観音よろしく、ポリリズミックに叩きまくる。そこに、モーダルなタイナーのピアノが、ガーンゴーン、パラパラパラと疾走する。

とにかく「賑やか」なトリオ演奏。ダイナミックでメリハリの効いた、シーツ・オブ・サウンドを交えた、実に「多弁」なモーダルな演奏。聴く方の体調が悪い時などは「五月蠅い」くらいだ(笑)。LP1枚目のラスト「Moment's Notice」など、トニーのドラムは圧倒的「叩きまくり」である。だが、これが良い。こんなにダイナミックでメリハリの効いたピアノ・トリオはなかなか無い。

一方、タイナー、ゴメス、デジョネットのトリオは、タイナーのオリジナル曲で占められる。こちらは柔軟度の高いトリオ演奏で、シーツ・オブ・サウンドな疾走モードからマッコイ・オリジナルのフリー演奏まで、柔軟度と適応力が圧倒的に高いゴメス-デジョネットのリズム隊をバックに、思うがまま感じるがまま、タイナーは自由に弾きまくる。

ニッコリ笑ったタイナーのシンプルなジャケに騙されてはいけない。この盤には、当時の圧倒的に尖った、最先端を行くモード・ジャズが詰まっている。BGMにしようものなら、やかましくて賑やかで「ながら」は無理。それでも、演奏内容は濃く、レベルは高度なので、思わずテを休めて聴きこんでしまう。そんな「絶対にながらは出来ない」圧倒的にダイナミックでメリハリの効いた、先端を行くトリオ演奏が詰まっています。
 
 

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2023年7月23日 (日曜日)

レッド・ガーランドの「再訪」

レッド・ガーランドは、ハードバップ時代、人気絶大のジャズ・ピアニストだった。1956年の初デビュー作『A Garland of Red』から、1962年、一時活動を中断する直前の『When There Are Grey Skies』まで、30枚ものリーダー作をリリースしている。

右手の転がる様に流麗なシングル・トーン、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コード。シンプルな奏法だが、ガーランドの手にかかると、とても芳醇でハードバップなジャズ・ピアノになるから不思議。当時の人気のほども理解出来る。

しかし、ガーランドのリーダー作は「プレスティッジ・レーベル」に集中する。プレスティッジ・レーベルの出すアルバムの最大の特徴は、セッションの単位を無視して、幾つかのセッションの「あちらこちら」から曲を寄せ集めてアルバム化する「寄せ集め盤」が多いということ。ガーランドのアルバムにもそんな「寄せ集め盤」が多々あって、どの時点でのガーランドの演奏なのか、ちゃんと理解して聴かないと、曲毎に異なるニュアンスの違いが理解出来ない。

『Red Garland Revisited!』(写真左)。1957年5月24日の録音。プレスティッジの PR 7658番。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Kenny Burrell (g, tracks 3, 7), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。基本は、リーダーのガーランドのピアノ、チェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番のトリオ」演奏。そのトリオ演奏に2曲だけ、バレルの漆黒アーバンなファンキー・ギターが入る。

この盤はプレスティッジには珍しく、単一セッションの録音でアルバムがまとめられている。が、この盤、録音当時はリリースされずにお蔵入り。12年を経て、1969年にリリースされている。
 

Red-garland-revisited

 
プレスティッジの総帥プロデューサー、ボブ・ワインストックについては、この辺の感覚が僕には理解出来ない。聴くと判るが、内容的に全く問題が無い、どころか、ガーランドのピアノも好調、バレルの参加も効果的、という感じなのだが、どうして12年もの間、倉庫に眠っていたのか。

タイトルに「Revisited!(再訪)」とあるのだが、何故「再訪」だったのか、その理由は定かでは無い。恐らく、前述の様に12年もの間、お蔵入りしていて、1969年にようやくリリースしたので「再訪」としたのかもしれない。全く、罪作りなプレスティッジである。

さて、その内容であるが、名盤『Groovy』を録音した時と同時期の演奏なので悪かろう筈が無い。ガーランド、チェンバース、テイラーのトリオは絶好調。2曲に加わるバレルも良い味を出している。

テンポのいい曲とスロー・バラードがバランスよく配置されていて、バレルの入るカルテットの演奏も、バレルがホーンの代わりをしていて、良い耳直し的な演奏になっている。チェンバースが弾くベース・ラインがメロディアスで素晴らしく、テイラーのドラミングは柔軟で小粋。

テンポの良い曲での、ガーランドの右手、転がる様に流麗なシングル・トーンが走る様には、思わず体がスインギーに動く。スロー・バラードでは、ガーランドの左手、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コードが小気味良く、思わずじっくりと聴き入ってしまう。

ギター入りのカルテット演奏も良いアクセントになっていて、ガーランドのトリオ演奏としても非常に良好。この音源がセッションごとお蔵入りになっていた理由が判らない(笑)。ピアノ・トリオとしても絶妙な好盤だと思う。
 
 

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2023年7月22日 (土曜日)

ブルース基調のガーランドが素敵

ブログでは暫く御無沙汰だったが、レッド・ガーランドは、僕のお気に入りのピアニストの1人である。右手の転がる様に流麗なシングル・トーン、合いの手の様に絶妙のタイミングで入ってくる左手のブロック・コード。聴けば直ぐに判るほどの個性。「金太郎飴」とか、揶揄されることもあるが、どうして、こんなに個性的なジャズ・ピアノ、ガーランドの他にはいないのだから、唯一無二のスタイリストとして評価するべきだろう。

Red Garland『The P.C. Blues』(写真左)。1956年5月11日、1957年3月22日と8月9日の3つのセッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds, track 1), Art Taylor (ds, tracks 2-5) 。このアルバムは、録音から13年後の1970年になってようやくリリースされた、それまでのアルバムに収録されなかった「未収録音音源」を基にした編集盤。

プレスティッジ・レーベルお得意のセッション寄せ集め盤なんだが、これが意外と複雑怪奇。1曲目が1956年5月11日、Miles Davis『Workin' with the Miles Davis Quintet』に収録された演奏をそのまま再収録。2,4,5曲目が1957年8月9日、名盤『Groovy』セッションの未収録音源。3曲目が1957年3月22日の『Red Garland's Piano』セッションの未収録音源。
 

Red-garlandthe-pc-blues

 
タイトル通り、ブルース基調の演奏を集めた編集盤。未収録音源の寄せ集めっぽいイメージだが、収録された未発表音源の内容は良い。寄せ集め盤とは言え「捨て曲」は無し。いかに『Groovy』セッションと『Red Garland's Piano』セッションが優れていたかが良く判る。ガーランドのピアノは絶好調。しかも、お得意の「ブルース基調」の演奏なので、右手のシングル・トーン、左手のブロック・コードは映えに映える。

そして、そんなガーランドのバックに就くリズム隊、ポール・チェンバースのベースとアート・テイラーのドラムが、良く聴けば、ハードバップの演奏の中でも、先進的なリズム&ビートを捻り出していて、ガーランドのピアノを引き立て、ピアノ・トリオの演奏に「粋」でアーティスティックな響きを醸し出している。ガーランドのピアノ・トリオがマンネリしないのは、この2人のリズム隊が故である。

プレスティッジ・レーベルお得意の「セッション寄せ集め盤」で、しかも、直近の録音から10年以上経ってのリリースなんだが、内容はとても良い。ブルース基調な演奏が得意なガーランドのピアノの特質がしっかりと押さえられている。きっと、プレしティッジのプロデューサー、ボブ ワインストックはガーランドのピアノが好きだったんやないかなあ。この盤の選曲、ガーランドの個性と特質をしっかり理解していないと、こんなに上手い選曲にはならないだろう。良いピアノ・トリオ盤です。
 
 

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2023年7月21日 (金曜日)

グリーンとヤングとエルヴィンと

ブルーノートの4100番台の後半のアルバムの中で、このブログに記事として上げていないアルバムをメインに聴き直して、せっせと記事にしている。4100番台は、メインストリーム志向の純ジャズの範疇の中で、1960年代前半の「ジャズの多様化」の時代を確実に捉えて、当時のジャズのバリエーションを漏らさず網羅したアルバムを漏らさずリリースしている。

4100番台を通して聴けば、当時の成熟したジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」の全てが追体験できる。これは素晴らしいことである。そして、この4100番台で記録された、ジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」が、1980年代中盤以降の「純ジャズ復古」のベースとなっていて、現代のジャズに繋がっている。

Grant Green『Talkin' About!』(写真左)。1964年9月11日の録音。ブルーノートの4183番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。リーダーのグラント・グリーンのギター、プログレッシヴなモーダル・オルガニストのラリー・ヤング、そして、ポリリズムの塊ドラマーのエルヴィン・ジョーンズのトリオ編成。

この盤は、思いっ切り聴き応えがある。まず、リズム隊が、オルガンでモード・ジャズを演奏する、先進的で進歩的なオルガンと、ポリリズミックで自由度の高い革新的なドラムで構成されている。このリズム隊の叩き出すリズム&ビートは、従来のハードバップには無い、最先端のもの。
 

Grant-greentalkin-about

 
この最先端のリズム&ビートをバックに、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなシングル・トーンが個性のグラント・グリーンが先鋭的なフレーズを弾きまくる。演奏の基本は「ファンキー&ソウル」なジャズなんだが、演奏全体の雰囲気は先進的、先鋭的、進歩的な、実に硬派で、とてもストイックな演奏になっている。そして、アドリブの弾き回しは何時になく「熱い」。

が、グリーンのギターにも増して、ラリー・ヤングのオルガンが凄い。「ファンキー&ソウル」なグリーンを向こうに回して、プログレッシヴでストイックな「モーダルな雰囲気のオルガン」を弾きまくる。モーダルな雰囲気の中で、ファンキー&ソウルなフレーズを織り込んでくる。責めに攻めるヤングのオルガン。グリーンもこの先鋭的なオルガンをしかと受け止めて、熱くて硬派なソウルフル・フレーズを弾きまくる。

そして、そんな二人をしっかりと支え、しっかりと鼓舞しつつ、演奏全体のリズム&ビートをコントロールするのが、エルヴィンのドラミング。グリーンのギターとヤングのオルガンを前面に押し出し、引き立たせるエルヴィンのドラミングは相変わらず見事。このエルヴィンのポリリズミックで切れ味の良いドラミングがアルバム全体の雰囲気をビシッと締めている。

このブルーノートの4183番、ジャズ盤紹介本や雑誌記事に上がることが殆ど無い、地味な存在に甘んじている作品だが、どうして、この盤、グリーンの代表作の1枚だと思うし、1960年代半ばの「ジャズ多様化の時代」のクリエイティブで熱い、当時のジャズの「深化」をタイムリーに記録した名盤だと思う。
 
 

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2023年7月20日 (木曜日)

「無念」の最後のリーダー作です

哀愁のトランペッター、ケニー・ドーハム。キャッチフレーズの「哀愁の」については、ドーハムのワンホーンの名盤『Quiette Kenny』の印象が強くて「哀愁の」になるが、ドーハムって、もともとはビ・バップ時代から活躍する、筋金入りのバップ・トランペッター。基本は「溌剌としたバップなトランペット」。しかし、時々「フレーズがちょっと危うい」ところはご愛嬌。

そんなドーハム、1924年生まれ。しかし、1972年、腎臓病にて、48歳の若さでこの世を去っている。活動期間としては、初リーダー作が1953年、リーダー作の最後が1964年。活動期間としては僅か11年。それでも、20枚以上のリーダー作をリリースしているので、当時、人気のトランペッターだったことが窺える。

Kenny Dorham『Trompeta Toccata』(写真左)。1964年9月14日の録音。ブルーノートの4181番。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Joe Henderson (ts), Tommy Flanagan (p), Richard Davis (b), Albert Heath (ds)。筋金入りのバップ・トランペッター、ケニー・ドーハムの最終リーダー作。遺作になる。アンドリュー・ヒルの『Point of Departure』への全面参加で得た感覚をこの盤に反映している様な、当時のドーハムの新境地を感じることの出来る好盤。
 

Kenny-dorhamtrompeta-toccata

 
パーソネルが面白い。ドーハム、フラナガン、ヒースの3人は、ビ・バップ最終期からの、いわゆる「旧人類」。ヘンダーソンとデイヴィスは新主流派の、いわゆる「新人類」。新旧入り乱れてのパフォーマンスになる。それでも、ドーハム、フラナガン、ヒースは、新しい「新主流派」の演奏にも適応出来る柔軟性を持ったジャズマン達。この盤でも、果敢に、当時最先端のモーダルなジャズにチャレンジしている。

アフロ・ラテン・リズムの曲あり、ファンキー&ブルージーな曲あり、ジャズ・ロック調のボッサな曲あり、ストレード・アヘッドな曲あり、曲想がバリエーションに富んでいますが、アルバム全体を覆っているのは「モード・ジャズ」志向な展開。曲毎の雰囲気は、明らかにハードバップな曲とは雰囲気が異なる。しかし、どれもがバッチリ「キマっている」感じは無くて、まだまだ発展性のノリしろがある、ドーハムとしては、発展途上の過渡的な演奏だと思う。

この後、ドーハムはどこへ行くのだろう、どんなジャズを聴かせてくれるのだろう、そんな期待感を持たせてくれる、ポジティヴで発展途上な内容だが、これが最後のリーダー作となってしまった。なんと残念なことか。まだまだ先のある、ポジティヴで発展途上な音に、ドーハムの新境地を聴き損ねた、そんな「無念」を僕は感じる。
 
 

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2023年7月19日 (水曜日)

スマートなオルガン・ジャズ。

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。1500番台から、4000番台、4100番台、4200番台と、カタログを見渡せば、要所要所のオルガン・ジャズ盤が存在する。しかも、ジャズ・オルガニストのメンバーが豊富。ジミー・スミスばかりがクローズアップされるが、他にパットン、フェイス、ローチ、マクグリフ、スミス、ウィルソンなど、オルガニストを多く抱えている。

"Big" John Patton『The Way I Feel』(写真左)。1964年6月19日の録音。ブルーノートの4174番。ちなみにパーソネルは、"Big" John Patton (org), Richard Williams (tp), Fred Jackson (ts, bs), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。明らかにファンキーなハモンド・オルガン奏者、ジョン・パットンのリーダー作第3弾。

1960年代、ブルーノートのハウス・オルガニストとして多くのソウル・ジャズ盤に参加したジョン・パットン。このリーダー作第3弾では、初リーダー作以来のフレッド・ジャクソン、初リーダー作からずっとのグラント・グリーンの参加で、この盤も、おおよそ「ソウル・ジャズ」志向であることが判る。 
 

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全体を見渡すと、とても聴き易いファンキー&ソウル・ジャズ。全曲がパットンの自作曲で占められている。弾き易かったのだろうか。前2作に比べて、スイング感とファンクネスは軽め、どこか洗練されたスマートな弾き回しと、ポップで親しみ易いフレーズがこの番の特徴。各曲、突出した個性は無いが、一様にポップで親しみのあるファンキー&ソウル・ジャズが展開される。

冒頭の「The Rock」のソウルフルでエモーショナルで雰囲気に思わずグッとくる。ウィリアムス~パットン~ジャクソンが繰り出す、ファンキー&ソウルなソロがたまらなくエモい。ホーン2本を抜いて、オルガン、ギター、ドラムのトリオで演奏した4曲目「Davene」がスマートで「粋」。ファンクネスを湛え、ライトでソウルフルなフレーズをオルガンとギターが繰り出す。

有名なスタンダード曲が無いので、どこか掴みどころの無い、ちょっと地味な印象の盤という向きもあるが、その分、明らかにファンキーなハモンド・オルガン奏者、ジョン・パットンの持つ、本来の個性を堪能することが出来る好盤だと思う。ゆったりとしたファンキーでソウルフルな雰囲気が堪らない。良い雰囲気のオルガン・ジャズ。
 
 

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2023年7月18日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・264

暑い。酷暑である。特に、ここ千葉県北西部地方は、暫く、全くまとまった雨が降っていない。カラカラのはずが湿度が高くて蒸し暑いのなんの。特に昨日、今日と身の危険を感じるほどの酷暑である。千葉県はもう梅雨は明けていると思うのだが、梅雨明け宣言の単位が「関東地方」らしく、北関東は暫く天気が不安定だったので、梅雨明け宣言できないらしい。何とも意味の無い「梅雨明け宣言」である。

これだけの酷暑だと、まず、外を歩くのは危険。よってエアコンをつけて、応接間でジッとしながらジャズを聴く訳だが、こういう酷暑の季節は、いかにエアコンの効いた部屋とは言え、難しいジャズは敬遠したくなる。やはり、聴いて判り易く、聴いて心地良いハードバップ時代の好盤が良い。フリー・ジャズなど以ての外である(笑)。

Donald Byrd『Byrd's Word』(写真)。1955年9月29日の録音。サボイ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Frank Foster (ts), Hank Jones (p), Paul Chambers (b), Kenny Clarke (ds)。バップ〜ジャズファンクなトランペッター、ドナルド・バードのリーダー作。バードのトランペットとフォスターのテナーがフロント2管のクインテット編成。
 

Donald-byrdbyrds-word_20230718201301

 
バードは1932年生まれなので、この盤の録音時は23歳。若き日のプロフェッサー=ドナルド・バードである。全編、バードの溌剌としたブリリアントなトラペットが実に良い音を出している。奏でるフレーズは、そこかしこにビ・バップの面影を残しているが、ロングなアドリブ展開においては、ファンクネス溢れ流麗で知的な響きのする、バードのトランペットの個性が全開である。

フロント管の相棒、フランク・フォスターも元気一杯、バードのトランペットと迫力あるユニゾン&ハーモニーを奏でていて、なかなか良い感じ。ベースのポルチェンは弱冠20歳。若き天才は今までに無い、多彩なベースラインを展開している。ハンク・ジョーンズのピアノは「典雅」。元気一杯のフロント管にリリカルで耽美的な雰囲気を被せて「小粋」。そして、この盤のリズム&ビートを仕切るのがクラークのドラム。典型的なバップなドラミングで、バンド全体のビートをガッチリ引き締める。

単純に「良い雰囲気のハードバップ盤」だと思います。ハードバップ初期の「それまでのビ・バップと新しい響きのバップ」が混在している雰囲気がとてもジャズっぽくて、良い感じ。安心安定のモダン・ジャズ盤です。ちなみにジャケがちょっと「とほほ」な感じですが、このトーンがサボイ・レーベルの特徴なんで、これはこれで味があって良いです。でも、このジャケで損をしているところはあるんだろうな。
 
 

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2023年7月17日 (月曜日)

ウェスを愛でる為にあるライヴ盤

今年で生誕100年を迎えるウェス・モンゴメリー。生まれは1923年、逝去は1968年。今年は生誕100年で、逝去して55年になる。そうか、ウェスが亡くなってから、もう半世紀以上が経つのか。僕がウェス盤と出会った時は、既に鬼籍に入っていたので、生前、リアルタイムの自由に動くライヴ画像って数えるほどしか無くて、一度はライヴでこの目でウエスの名演ギターを聴きたかったなあ、と強く思うのだ。

Wes Montgomery『One Night In Indy featuring The Eddie Higgins Trio』(写真左)。1959年1月18日、Indianapolis Jazz Club でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Eddie Higgins (p), Walter Perkins (ds), ドラムスは誰が担当しているかが判らない。エディ・ヒギンズ・トリオをフィーチャーしている。ウェス・モンゴメリーの単独フロントのワン・ギター・カルテット。当時、ウェス36歳でのライヴ録音である。

ウェスの地元、インディアナポリスでのライヴ録音。バックにエディ・ヒギンスのピアノをメインとするリズム隊が控えるが、ベーシストの名前が不明などと、ジャズ録音ではあり得ない「演奏情報の欠落」がある。それでも、このライヴ盤を聴いて感じるのは、ウェスのギターの素晴らしさ。
 

Wes-montgomeryone-night-in-indy-featurin

 
全て同一日録音の、実質上、ウェスの初リーダー作になる。当時のウェスのギターの先進性や独特の個性を感じるにはライヴ盤が一番。このライヴ盤では、ウェスはバップをギターを自家薬篭中の物としつつ、オクターヴ奏法など、ウェス独特の奏法が駆使して、ウェスのギターの個性を愛でる上では、なかなか良く出来たライヴ盤に仕上がっいる。

ヒギンス・トリオが目立たない。ヒギンスのピアノは個性が希薄で「総合力で勝負」するタイプ。ヒギンスのピアノはミスは殆ど無いが、強烈な個性というものがあまり感じられない。逆に、ウエスのギターに催促され、ヒギンスのピアノに躍動感が立ち直り、リリカルな表現に磨きがかかるくらいである。しかし、ヒギンス・トリオが目立たない分、ウェスの個性的なギターが前面に押し出されるという感じのプロデュースがなされているように感じる。

それでも、水準もしくはやや上のリズム・セクションをバックに、前面に出て、バリバリとウェスは弾きまくる。オクターヴ奏法はまだ頻繁には出てこないが、このライヴ盤の録音時点では、オクターヴ奏法を含め、ウェスのギターの個性、在り方は既に完成の域に達している。このライヴ盤は、ウェスの初期の完成されたパフォーマンスを愛でる為にあるライヴ盤である。
 
 

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2023年7月16日 (日曜日)

リラックス度満点のウェス盤。

モダン・ジャズ・ギターの巨匠ウェス・モンゴメリー(1923-1968)。今年3月6日に生誕100周年を迎えたそうである。

全く意識していなかったなあ、面目ない。ウェスは1960年代以前のモダン・ジャズ・ギタリストの中で、3本の指に入るお気に入りのギタリスト。それなのに生誕100周年を忘れていたとはなあ。

確かに、ジャズ雑誌などを読んでいて、が遺した名盤のリイシューやベスト・アルバム、ムック本のリリースの宣伝が結構目についていたのだが、「最近、ウェスの再評価の機運が盛り上がっているのかなあ」と呑気に捉えていた。

Wes Montgomery『Movin' Along』(写真)。1960年10月12日の録音。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g, bass-g), James Clay (fl, ts), Victor Feldman (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。

ウェス・モンゴメリーのギターとジェームス・クレイのテナー&フルートがフロントを担う。ジェームス・クレイは当時、米国ウエストコースト・ジャズで活躍していたテナー奏者。ピアノのヴィクター・フェルドマンも西海岸で活躍していたピアニスト。2人の西海岸ジャズの名手を招いたクインテット編成になっている。

『The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery』と『Full House』ばかりが、もてはやされるウェスのリヴァーサイド盤だが、この盤、こってこてモダン・ジャズの雰囲気濃厚な内容で、聴き心地がとても良いギター・クインテット盤。ジャケも単純なデザインなので、かなりの長きに渡って触手が伸びなかったのだが、10年ほど前、ウェスのリーダー作の一気聴きの折、この盤を初めて聴いて「おおっ」と思って、以来、愛聴盤の1枚になっている。
 

Wes-montgomerymovin-along_20230716213801  

 
ウェスはバリバリ弾きまくるのでは無く、しっかり抑制の効いた、とても余裕あるパフォーマンスを披露しており、とてもリラックスして聴くことが出来る。メンバー全体が適度にリラックスして演奏している様子が伝わってくる。恐らく、このアルバムを録音する前に、メンバー全員で意思統一したとみえる。

この抑制の効いた、余裕溢れる弾きっぷりのウェスのギターが凄く良い。排気量の大きいスポーツカーが、速度を落として余裕をかましてゆったりと走っているかのような、余裕はあるが、力強くしっかりと凄みのある弾きっぷりには、思わず「ええなあ」と思いつつ耳を奪われる。こういうウェスのギター、好きやなあ。

フェルドマンのピアノが「粋」。この人のピアノが実に良いバッキングをしていて、この盤の余裕ある演奏の雰囲気は、フェルドマンのピアノの存在に寄るところが大きい様な気がする。そんな「粋」なバッキング。さすが、ウエストコースト・ジャズの人気ピアニストである。流麗でリリカルで「聴かせる」ピアノがニクい。

クレイはテナーとフルートを担当しているが、この盤ではフルートが主体の吹奏。恐らく、ウェスのギターの音色の太さを考慮しての選択だと思われる。

テナーの場合、ギターと交互に演奏しあう場合は、その音の対比が良い方向に作用するが、ユニゾン&ハーモニーになるとテナーの音が買ってしまう。その点、フルートは、ギターと交互に演奏しあうにも、ユニゾン&ハーモニーを取るにせよ、ギターの音色とのバランスが格段に良い。

そして、リズム隊のベースのサム・ジョーンズが良い音を出している。ルイス・ヘイズのドラムも堅実。端正で歯切れのいいスイング感を生み出すベースとドラムはこの盤のリズム&ビートをより豊かなものにしている。
 
 

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2023年7月15日 (土曜日)

メルドーのビートルズのジャズ化

ジャズ・ピアノの次世代を担うリーダー格の「ブラッド・メルドー」。1990年代、キース・チック・ハービーの後を継ぐ正統な後継者と目されて以来、初リーダー作から30年が経って、今年でメルドーも53歳。ジャズ・ピアニストとしては、充実し切った中堅の時代。流麗で耽美的でリリカルでモーダルな、ビル・エヴァンス以降のモダン・ピアノの後継として、その存在は実に大きい。

メルドーは若手の時代から、チャレンジ精神旺盛で、ビートルズの楽曲のジャズ化にチャレンジしたり、スタンダード曲も殆どマイナーな存在の曲を選曲したりして、聴き手に迎合すること無く、自らのやりたい、演奏したいピアノ・ジャズを積極的に展開してきた。最近では、プログレッシヴ・ロックの有名曲のジャズ化にチャレンジ、素晴らしい成果を披露している。

これが実に見事なプログレのジャズ化で、思わずひどく感心してしまった。実は僕は今を去ること50年ほど前、バリバリの「プログレ小僧」で、今でも時々、プログレを聴いてしみじみしたりしている。もちろん、メルドーのカバッているプログレ曲は全て判る。そんな背景もあって、このメルドーのジャズ化については「度肝を抜かれた」。完璧にジャズ化されているプログレ名曲の数々。素晴らしい成果だった。

Brad Mehldau『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles』(写真左)。2020年9月、フィルハーモニー・ド・パリでのライヴ録音。2023年2月のリリース。パーソネルは、Brad Mehldau (p) のみ。ブラッド・メルドーのソロ・ピアノによる「ビートルズのカヴァー」盤。

これがまあ見事な内容で、聴いてビックリした。ビートルズの楽曲ってコード進行がヘンテコな曲が多くて、ジャズ化の難度が高い。ジャズ化がやり易い曲もあって、「Here, There And Everywhere」や「Something」は結構、内容の良いジャズ化がなされている。
 

Your-mother-should-know-brad-mehldau-pla

 
が、概ね、ビートルズの楽曲の特別な旋律をなぞる「イージーリスニング」風のアレンジが多くて、即興演奏を旨とするモダン・ジャズ化についてはあまり進んでいたとは言い難い。

が、このメルドーのビートルズ曲のジャズ化はとても良く出来ている。ビートルズの楽曲の持つ特別な旋律のイメージをしっかり保持しつつ、ヘンテコなコード進行の曲を、モーダルなフレーズに変換して、ジャジーなアドリブ展開にも十分耐える、そんなアレンジが見事。曲名だけ見たら、このビートルズ曲をジャズ化したのか、上手くいったのかなあ、と心配してしまう曲がズラリと並ぶが、見事にジャズ化のアレンジが施されていて、違和感が全く無い。

また、ビートルズの楽曲って、リズム&ビートがユニークな曲が多くて、単純な4ビートや8ビートに乗せると、かなり単調なジャズ曲に聴こえてしまうリスクが高いのだが、メルドーは、メルドーのピアノの個性のひとつ「右手と左手が別人格」な弾き回しを駆使して、ビートルズのそれぞれの楽曲の持つ、特徴あるリズム&ビートのジャズ化を実現している。

メルドーのビートルズ曲のジャズ化って、ビートルズ曲のジャズ化としても、ジャズ化したビートルズ曲としても、どちらの側面でもしっかりと楽しめるし、聴き応えがある。このビートルズ曲がをジャズ化するとこうなるのか、とも思うし、これってジャズ化されたあのビートルズ曲やね、とも思う。実に良く出来たビートルズのジャズ化の数々である。

メルドーのピアノの個性全開、素晴らしいアレンジと弾き回しで、この盤のビートルズ曲のジャズ化は成功している。見事である。ちなみにラストの「Life on Mars?」は、ビートルズ曲では無いです。これ、デヴィッド・ボウイの名曲のジャズ化です。
 
 

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2023年7月14日 (金曜日)

ブレイスのブルーノート最終作

ジョージ・ブレイス(George Braith)。 ブルーノート4100番台の異色の存在だろう。ブレイスは、NY出身のソウル・ジャズ・サックス奏者。ブレイスの一番の特徴は「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」ところ。但し、カークの様に難度高く複雑にモーダルに展開することは無く、平易にシンプルなフレーズに終始する。

George Braith『Extension』(写真左)。1964年3月27日の録音。ブルーノートの4171番。ちなみにパーソネルは、George Braith (sax), Billy Gardner (org), Grant Green (g), Clarence Johnston (ds)。ブレイスがブルーノートに残したリーダー作の3枚目、最終作になる。3作ともドラムはコロコロ変わるが、グラント・グリーンのギターとビリー・ガードナーのオルガンは不変。

この盤、聴き進めると「あれれ」と思う。ブレイスの一番の特徴は「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」ところ、が鳴りを潜め、サックス1本でストレートに吹きまくっている。これだと、聴いていて誰なのか判らない。ブレイスのサックス1本だけの吹奏を取ると、これと言って強烈な個性が無いのだから困る。

しかし、アルバム全体としては「間の抜けた調子外れのテーマを吹いていたブレイスは何処へ行った」なんだけど、ブレイスの曲が良くて、そのテーマを吹くブレイスのサックスが良い感じで聴こえるから不思議。この盤は、収録されたブレイスの自作曲の「曲の良さ」に救われている。とにかく、ブレイス曲の格好良さが耳に残る。
 

George-braithextension

 
演奏の雰囲気はソウル・ジャズが基本なんだが、演奏のスピード感は「こってこてのハードバップ」。冒頭の「Nut City」から「Sweetville」まで、ブレイスはストレートにサックスを吹きまくる。

そして、やはりグラント・グリーンの「ぱっきぱき硬質で、こってこてファンキーなシングルトーン・ギター」が効いている。グリーンのギターがファンクネスをどっぷり供給して、この盤はソウル・ジャズに留めている。グリーンのファンキー・ギターが、ブレイスの吹くストレートにハードバップなサックスの中に漂うソウルフルな要素を呼び起こして、演奏全体の雰囲気をソウル・ジャズに引き戻している。

ラストのコール・ポーター作の有名スタンダード曲「Ev'ry Time We Say Goodbye」は、ブレイスの面目躍如。スローでバラードチックに演奏されることが多いこの曲を、「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」個性の封印を解いて、軽快なテンポで、ややアバンギャルドな響きのする叙情的な吹奏を繰り広げるブレイスが実に格好良い。

実はこのラストのスタンダード曲の吹奏で、「ああ、この盤のリーダーって、ブレイスなのね」と判る。そして、ブルーノートのブレイスとは、このラストの「Ev'ry Time We Say Goodbye」で、お別れなのだ。何だか意味深ですね。
 
 

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2023年7月13日 (木曜日)

ブルーノートの新主流派ジャズ

ブルーノートの4100番台は、カタログ番号順に聴き進めて行くと面白い。ジャズの多様化の時代にアルバムをリリースしているので、1960年代前半の様々なスタイルのジャズ、様々な志向のジャズが記録されていて、バラエティーに富んでいる。

成熟したハードバップももちろん、ファンキー・ジャズあり、ソウル・ジャズあり、モード・ジャズもあるし、フリー・ジャズもあるし、オルガン・ジャズもあるし、ギター・ジャズもある。ブルーノートの優れたところは「偏り」が無いこと。その時点でのジャズのスタイル、トレンドをしっかり網羅している。それもどれもが水準以上のレベルで、である。さすがブルーノート、といったところか。

Grachan Moncur III『Some Other Stuff』(写真左)。1964年7月6日の録音。ブルーノートの4177番。ちなみにパーソネルは、Grachan Moncur III (tb), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Cecil McBee (b), Tony Williams (ds)。

パーソネルを見れば、いやはや錚々たるジャズマン達の名が並ぶ。録音当時、新主流派でブイブイ言わせていた強者ども達である。これはもう、新主流派ジャズの極み、モード・ジャズ、もしくは、フリー・ジャズな内容なんだろうなと予想がつく。逆にこのメンバーで、こってこてのハードバップをやられたら、それはそれで面白いけど。

で、この盤の内容はと言えば、一言で言うと「自由度のかなり高いモード・ジャズ、時々フリー・ジャズ」という感じ。

実は僕はこの盤を初めて聴いた時は「フリー・ジャズ」だと思った。トロンボーンでフリー・ジャズをやるんや、と思った。が、今の耳で聴き直すと、これは「モード・ジャズ」がベース。しかも、かなり自由度の高い、フリー一歩手前のモード・ジャズをガンガンやっている。そして、ところどころで「口直し風」に、フリー・ジャズに展開する。

この盤の録音時期、モード・ジャズをやると、どうしても、始まりと終わりは従来の成熟したハードバップに戻ることが多いのだが、この盤は徹底的にモード・ジャズで推し進め、さらにところどころで、当時、最先端のジャズの志向のひとつ、フリー・ジャズに展開して、進化するジャズを的確に表現する。さすが、新主流派のメンバーで固めたクインテットでのパフォーマンスである。緩んだところが全く無い。切れ味良く、理路整然とモーダルに展開している。
 

Grachan-moncur-iiisome-other-stuff

 
グラチャン・モンカー3世のトロンボーンとショーターのテナーの2管が実に良い味を出している。ボワンと拡がりのある音色のトロンボーンと、縦に横に奥行きと拡がりのあるテナーの相性がバッチリ。モーダルなトロンボーンの音色に、ショーターのウネウネ、コズミックな拡がりテナーがとてもマッチしている。

ハンコック、マクビー、トニーのリズム・セクションは素晴らしいの一言。モードにもフリーにも完全対応。ハンコックのピアノが、モンカー3世とショーターのモーダルな吹奏に合わせた、音の拡がりと活かしたバッキングをしているところが実に「ニクい」。トニーのドラミングも同様。叩きまくるドラミングを押さえて、音の拡がりを引き立てる自由度の高いドラミングを披露している。

そして、最後に面白いのがマクビーのベース。このメンバー構成だとベースはロン・カーターが来るかと思うんだが、ここまマクビーのベースで正解かと思う。

バンド・サウンド全体としては、モンカー3世とショーターのモーダルな吹奏に合わせた、音の拡がりと活かしたモード・ジャズなんだが、マクビーのベースは「ビートが立って」いて、演奏全体のリズム&ビートをしっかりとキープし、他のメンバーに指針を与えている様なのだ。

ロンのベースは拡がりのある音が身上なので、この盤でベースがロンだと、演奏全体が「音の拡がり」オンリーになって、「ビートの締まり」が希薄な演奏になる可能性が高い。それはそれで面白いかもしれないが、ジャズ演奏としてはちょっと冒険が過ぎる、とブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは考えたのかもしれない。

そんなことをいろいろ考えながら聴ける、いろいろと示唆に富んだ「自由度のかなり高いモード・ジャズ、時々フリー・ジャズ」盤である。単純に流行のモード・ジャズをなぞるだけでは終わらない。さすがブルーノートだと思う。
 
 

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2023年7月12日 (水曜日)

ウェスの「フロント1本の名盤」

1960年代以前、ハードバップ期からジャズの多様化の時代、僕のお気に入りのジャズ・ギタリストは、ウェス・モンゴメリー、ケニー・バレル、グラント・グリーンの3人。ジャズを本格的に聴き始めて、一番後回しになった楽器が「ジャズ・ギター」。やっと、最近、この3人のリーダー作をカタログ順に聴き直していて、順次、記事をアップしている。

『The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery』(写真左)。1960年1月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Tommy Flanagan (p), Percy Heath (b), Albert Heath (ds)。ウェス・モンゴメリーのギターがフロントのカルテット編成。意外と珍しい、いわゆる「ワン・ギター・カルテット」である。

ギターは旋律を弾く場合、1本の弦をつま弾くので音が細い。ギターは弦が6本あって、ストローク奏法で、6本全部を使うと大きな音になるが、その場合は「リズム楽器」になって、旋律は弾けない。つまり、ギターは単独ではフロント楽器に向かないので、大体はサックスがフロントの相棒に着くケースが多い。

しかし、ウェスは違う。必殺の「オクターヴ奏法」を持っているので、2本の弦で旋律を奏でると、意外と旋律がハッキリする。しかも、ウェスの「オクターヴ奏法」はある程度の高速弾きもいけるとあって、ウェスのギターについては、ギター・アンプの性能と合わせて、オクターヴ奏法を駆使して、ギター1本でフロントを担うことが出来る。
 

The-incredible-jazz-guitar-of-wes-montgo

 
このウェスのリーダー作は、ウェスの「ワン・ギター・カルテット」でウェスのギターが堪能出来る、ということで「名盤」とされる。確かにそうなんだが、オクターヴ奏法で音が太くなるとは言っても、ギターの音色のバリエーションは単調なので、やはり「飽き」がくるのは否めない。

その「飽き」を回避する為に、フロント楽器の相棒が旋律を奏でる時にバックに回って「ストローク奏法」の秒を披露するのだが、この盤にはフロント楽器の相棒の「管」が無い。しかし、この盤では、そんな「管」が無くても困らない。優れた旋律を奏でてくれるフラナガンのピアノがある。

フラナガンが流麗な旋律を奏でる時、ウェスはストロークでバックに回り、ヒース兄弟と組んで、ギター入りのリズム・セクションとして、フラナガンのサポートに徹する。フラナガンのサポートに回った「伴奏のウェス」もこの盤の聴きどころ。ウェスのソロの弾きっぷりばかりがもてはやされるが、ウェスは伴奏に回っても「一流」なのだ。

収録された全8曲のうち、ウェスの自作は3曲、スタンダード曲が5曲。ウェスの自作曲でのパフォーマンスの素晴らしさは当たり前といえば当たり前なのだが、5曲のスタンダード曲でのウェスのパフォーマンスが凄い。鬼気迫るアドリブ・パフォーマンスでガンガンに攻めに攻めている。こんな弾きまくりのウェスは他のリーダー作ではなかなか聴けない。そういう面でも、この盤は「ウェスの名盤」なのかもしれない。
 
 

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2023年7月11日 (火曜日)

モーガンのモード・ジャズです。

リー・モーガンも「進化の人」だった。デビュー当時は、バリバリのハード・バッパーだったが、ジャズ・メッセンジャーズへの参加を経て、ファンキー・ジャズに手を染める。そこから、ジャズ・ロックにも適応。ジャズの大衆音楽化に多大な貢献をしたかと思いきや、1960年代半ばには、アーティステック志向のジャズ、モード・ジャズにチャレンジする。

モーガンのトランペットのテクニックは相当に高いものがあり、様々なジャズの演奏スタイルやトレンドに確実に適応している。それだけ高い演奏テクニックを持っている訳だが、モーガンの優れているところは、様々なジャズの演奏スタイルやトレンドに適応する際、絶対に物真似では無い、必ず、モーガンのオリジナリティーを発揮しているところ。

Lee Morgan『Search For The New Land』(写真左)。1964年2月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Grant Green (g), Reggie Workman (b), Billy Higgins (ds)。モーガンのトランペット、ショーターのテナーがフロント2管、グリーンのぱっきぱきファンキーなギターが入ってのセクステット編成。

ピアノにハンコック、ベースにワークマン、ドラムスにヒギンスの、これって、どう見たって「新主流派」志向のリズム・セクション。そう言えば、テナーのショーターがいる。でも、ギターはグリーン、トランペットはモーガンで、この2人はファンキー・ジャズ志向。どんなジャズが展開されるのか、聴くまでは全く予想もつかない布陣である。

冒頭のタイトル曲「Search for the New Land」を聴くと、あれれ、と思う。ブルースかと思いきや、これ、モード曲。1950年代後半のハードバップな響きと、1960年代前半のモーダルな響きが混在した、面白い雰囲気のモード・ジャズが展開される。
 

Lee-morgansearch-for-the-new-land

 
ブルースっぽい展開の部分は、グリーンのぱっきぱきファンキーなギターがスケール一発のハードバップな響きのアドリブをかまし、モーダルな展開の部分は、ハンコックがこってこてモーダルなフレーズでガンガンに攻める。

そして、主役のモーガンとフロント管の相棒ショーターは、ブルースっぽい展開の部分とモーダルな展開の部分の両方に対応する。それでも、ワークマンのベースとヒギンスのドラムののリズム&ビートは「モーダルな響き」を基本としているので、演奏全体はモード・ジャズの体をしている。

それにしても、モーガンのモーダルな吹奏は見事なもので、1950年代のハードバップ時代の響きを宿しながら、フレーズは絶対的に「モード」。

1950年代後半のジャズと1960年代前半のジャズが混ざってる、モーガン独特のモード演奏が実にユニークで聴き応えがある。そして、ショーターがこの「モーガンのモード」に合わせて、テナーを吹いているところがこれまたユニーク。サイドマンとしてのショーターの凄みを聴いた思いがする。

他の曲も、この冒頭の「モーガンのモード」に合わせたモーダルな展開をメインとした演奏で、明らかに1950年代のハードバップとは一線を画する、これからのジャズのメインのトレンドを聴く様で、思わず姿勢を正して聴き込んでしまう。決して、リラックスして聴ける4ビートな演奏では無いのだが、ジャズの持つアーティスティックな面を堪能出来る好盤だと思う。

タイトルを直訳すると「新たな地を求めて」。とても示唆に富んだタイトルだと思う。こういう、当時の時代の先端を行くモーダルな演奏を記録しているブルーノートは、やはり優れたジャズ・レーベルだったと思う。「ブルーノートを聴けば、ジャズの歴史が判る」。至極名言である。
 
 

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2023年7月10日 (月曜日)

モーダルな伝説の3管フロント。

1950年代後半、マイルスとビル・エヴァンスが始めたとされる「モード・ジャズ」。マイルスのバンドから派生したのは確実なようで、ここから、コルトレーンが、コルトレーンなりのモード・ジャズを始めた。それからは、マイルスとコルトレーンが中心になって、モード・ジャズが拡大する。

そして、このハードバップの老舗バンド、若手の登竜門「アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ」にも、モードの波がやってきた。その「モードの波」を持ち込んだのが、テナー奏者のウェイン・ショーター。ショーターは、マイルスとコルトレーンのモード・ジャズを参考にしつつ、ショーターなりのモード・ジャズを編み出している。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Free For All』(写真左)。1964年2月10日の録音。ブルーノートの4170番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b)。ハバードのトランペット、フラーのトロンボーン、ショーターのテナーが3管フロントのセクステット編成。ピアノはシダー・ウォルトン。

1961年10月の録音、Art Blakey & The Jazz Messengers『Mosaic』から始まった「ハバード〜フラー〜ショーターの「伝説の3管フロント」。この盤では3年以上が経過し、バンド・サウンドとしてもしっかりまとまって、円熟の極みのモード・ジャズがギッシリ詰まっている。

この「伝説の3管フロント」を擁したメッセンジャーズ。音楽監督はテナーのウェイン・ショーター。このショーターの生み出すモード・ジャズが、「アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ」のモード・ジャズとして定着した。
 

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極端に例えると、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドをベースとした音の「連鎖と早弾き」を活かしたモード・ジャズとマイルスの音の「拡がりと間」を活かしたモード・ジャズの良いところをハイブリッドした感じのモード・ジャズがショーターのモード・ジャズ。但し、ユニゾン&ハーモニーの音の重ね方や、アドリブ・フレーズの「コズミック」な響きはショーター独特のもので、決して、コルトレーンとマイルスの物真似では無い。

そんなショーター流のモード・ジャズがこの盤でも炸裂している。特に、円熟味を増した「伝説のフロント3管」のユニゾン&ハーモニーは単純に「格好良い」。特に、フラーのモーダルなトロンボーンには驚く。あの速いフレーズや音の上げ下げが苦手な楽器で、いとも容易くショーターのモード・ジャズに適応している。

ブレイキー御大のドラミングをベースにしたリズム・セクションもショーターのモード・ジャズをしっかり理解し、しっかりモーダルなリズム&ビートを供給していて立派。特に、ウォルトンのピアノが良い。モーダルなピアノを自家薬籠中のものとしていて、この盤でははっきりと「ウォルトンなりのモーダルなピアノ」を聴き取ることが出来る。

そして、凄いなあ〜、と感心するのが、ブレイキー御大のドラミング。ショーターのモード・ジャズにしっかり適応し、「伝説の3管フロント」に追従するどころか、リードし鼓舞し、しっかりと支えるドラミングは見事の一言。そうそう、ワークマンのモーダルなベースも良いです。ショーターのモード・ジャズ独特の速いフレーズや音の上げ下げにしっかりと適応しています。

僕は、この時代の「アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ」が大のお気に入り。今でも、この盤の冒頭のタイトル曲「Free for All」の前奏の「伝説の3管フロント」のユニゾン&ハーモニーを聴く度に、ショーターのコズミックなモーダル・テナーを聴く度に、ワクワクしっぱなし、です。良いアルバムです。
 
 

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2023年7月 9日 (日曜日)

タル独特のバップ・ギターを聴く

去年の11月から、タル・ファーロウのジャズ・ギターを聴き進めている。これが殊の外、楽しい。しかし、タル・ファーロウについては、我が国では意外と人気が薄い。

ジャズ・ギタリストとしては、ギターのスタイリストの1人として、そのテクニックの高さと合わせて一流。巨大な手を一杯に広げて縦横無尽にフレーズを紡ぎ出す様は「オクトパス・ハンド」と呼ばれるのだが、このダイナミックな高速フレーズの拡がりもタルならではの個性。

歴代のジャズ・ギタリストの中でも、抜きんでている存在だと思うのだが、どうにも我が国ではタルの話はあまり聞いたことが無い。ネットを見渡すと、米国でもタルの扱いはちょっと低い。ネットで十分に記事に扱われていないリーダー作も散見される。

恐らく、1960年代に入った途端に引退状態となり、それから約10年間、引退状態が続き、カムバックした時は既にジャズ界は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの時代に突入していた。タルのバップなギターが「ウケる」聴き手は数少なくなっており、実質上、忘れ去られた存在になっていたのが大きな理由だろう。加えて、タルのギター・スタイルのフォロワーが現れ出でなかったこと、これも人気の薄い理由のひとつだと僕は思っている。

しかし、タルのリーダー作に凡作は無い。どのアルバムを聴いても、タル・ファーロウの硬質でハイテクニックなギターを堪能することが出来る。
 

Tal-farlowthis-is-tal-farlow

 
Tal Farlow『This Is Tal Farlow』。1958年2月17, 18日の録音。ちなみにパーソネルは、Tal Farlow (g). Eddie Costa (p). Bill Takas (b, #1-4), Knobby Totah (b, #5-8), Jimmy Campbell (ds)。この盤では、前の『Tal』『The Swinging Guitar Of Tal Farlow』 とは違って、ドラムが加わってリズム&ビートが増強されている。

このキャンベルのドラムが好調で、リズム&ビートが増強される中、タルはアドリブ・フレーズの弾きまくりに専念している様に聴こえる。「オクトパス・ハンド」と呼ばれるダイナミックな高速フレーズに更に磨きがかかっている。収録曲は相変わらずスタンダード曲中心の選曲だが、パッキパキ高速でテクニカルなフレーズで、しかし、しっかり流麗にスイングした疾走するフレーズ。

バックのリズム・セクション、特に、エディ・コスタのピアノが良い。硬質なタッチ、叩く様なフレーズ。タルの硬質ギターにぴったり合った雰囲気のピアノ。このコスタのピアノがタルのギターのリズム&ビートを支え、タルのアドリブ・フレーズに自由なスペースと余裕を与えている。タルの凄く弾きやすい雰囲気が伝わってくる様だ。

録音年の1958年はハードバップが成熟した時代。しかし、この盤でのタルは、それまでのビ・バップやハードバップのギターの「常套句」をなぞってはいない。これがタルの一番優れたところ。この盤では、タルならではの、タル独特のバップ・ギターのフレーズと語法をしっかりと聴き取ることが出来る。好盤です。
 
 

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2023年7月 8日 (土曜日)

モーダルなジョーヘン参上です。

ブルーノート4100番台はモード・ジャズについても、様々なジャズマンが手掛ける、様々な表現形態のモード・ジャズを記録している。どれとして、同じ表現をしているジャズマンはいない。モードは表現の自由度がかなり高いと言われるが、この辺りは「至極納得」である。皆、それぞれの感性・感覚で、それぞれの個性的なモード・ジャズをやっている。

モード・ジャズというのは、かなりアーティステックで、聴いていても、ちょっと判り難い。音楽理論を学んだ経験のある人は「ははん」と、何となく理解出来るのだが、音楽理論に触れていない方には、説明されてもよく判らないところが本音だろう。ということで、モーダルなジャズって、当時もセールス的には厳しかったと思うのだが、ブルーノートはかなり積極的に、モード・ジャズの録音を残している。さすがである。

Joe Henderson『In 'N Out』(写真左)。1964年4月10日の録音。ブルーノートの4166番。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Kenny Dorham (tp), McCoy Tyner (p), Richard Davis (b), Elvin Jones (ds)。ウネウネなモーダル・テナーのジョー・ヘンダーソン(以降、略してジョーヘン)とケニー・ドーハムのトラペットがフロント2管のクインテット編成。

この盤でのジョーヘン、基本はモード・ジャズでキメている。ピアノのタイナー、ベースのディヴィス、ドラムのエルヴィンは、コルトレーン仕込みのモード・ジャズの担い手なので、この盤、こってこてのモード・ジャズなんだろうなあ、と思うのだが、トランペットにドーハムがいるのがちょっと違和感。ドーハムってモード・ジャズ、イケたんでしたっけ、と思わず思ってしまう。
 

Joe-hendersonin-n-out

 
ジョーヘンのモーダルなフレーズって、他の新主流派のフレーズとはちょっと雰囲気が違う。新主流派のモーダルなジャズは、マイルス仕込みとコルトレーン仕込みと、2つに大きく分かれると感じている。マイルス仕込みは、ハンコック、コリア、ショーター、ロン、トニーなど、マイルス・バンドの面々で、間と拡がりと緩急を活かしたモード。コルトレーン仕込みは、タイナー、エルヴィン、ハバード。シーツ・オブ・サウンドをベースとした、吹くまくり、弾きまくりのモード。

ジョーヘンのモードは、ウネウネと捻れて、あんまり起承転結の無い、いつまで続くんだ〜って感じの縦横に伸び縮みするフレーズが特徴。1曲きけば直ぐに判る。熱くなることは無い。どこまでもクールにウネウネ捻れて縦横に伸び縮みするモーダルなフレーズ。今の耳で聴くと、ちょっとレトロな雰囲気漂う、古き良き時代のモーダルなフレーズ。これが、ジョーヘン独特で唯一無二なのだ。

この『In 'N Out』、そんなジョーヘンのモーダルなフレーズが心ゆくまで楽しめる。そして、バップなトランペッター、ドーハムもしっかりモードに対応している。バップな響きで端正で明確なトランペットで「モーダルなフレーズ」を吹きまくっている。ドーハムのトランペットが端正な分、ウネウネ捻れて縦横に伸び縮みするジョーヘンのテナーとの対比がとても良いフロント2管である。

ジャケットも優秀。ブルーノートらしい「タイポグラフィ」が凄く良い。タイトルの「In 'N Out」の先頭の「i」の点の部分にジョーヘンの写真が小さくあしらわれていて、これがまた「粋」。良いジャケには良いジャズが宿る。そんな「格言」の典型的な例だろう。ジョーヘンのモーダルなジャズの好盤です。
 
 

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2023年7月 7日 (金曜日)

「ロイドの温故知新」の追記です

1984年、EMI傘下のジャズ・レーベルとして復活した「ブルーノート」。復活の手始めに「85100 シリーズ」として、 Stanley Jordan『Magic Touch』を1985年にリリースして以降、1987年まで、当時のメインストリーム志向の純ジャズを立て続け40枚弱、リリースしている。

Charles Lloyd Qartet『A Night In Copenhagen』(写真左)。サブタイトルが「Live At The Copenhagen Jazz Festival, 1983」。ブルーノートのBT 85104番。1983年7月11日、コペンハーゲン・ジャズフェスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl, Chinese oboe), Michel Petrucciani (p), Palle Danielsson (b), Woody Theus (ds, perc), Bobby McFerrin (vo,on #4 only)。

この盤は、2020年10月25日に「ロイド・カルテットの温故知新」(ここをクリック)と題して、記事をアップしている。が、今回、再びこのライヴ盤を聴き直して、ちょっと追記したくなってので、以下に追記部分をまとめてみました。

機を見て敏なるテナー・サックス奏者、チャールズ・ロイドが1管フロント。ミシェル・ペトルチアーニがピアノ、スウェーデン出身のベーシスト、パレ・ダニエルソン、そして、米国出身のウッディ・ゼウスがドラマー、のリズム・セクション。ロイドのワンホーン・カルテットになる。

コルトレーンの「軽いコピー」という、ちょっと胡散臭さ漂うテナーのロイドは、1970年代、ジャズシーンから姿を消していた。何処へ行った、という状態だったが、何と欧州にいた。というか、1981年、欧州にて、ペトルチアーニのツアーに参加する形で復活していた。その流れの中で、このライヴ盤はロイドがリーダーのカルテットとして、コペンハーゲン・ジャズフェスの出演した時のライヴ録音である。
 

A-night-in-copenhagen_live-at-the-copenh

 
ロイドのテナー・サックスは、相変わらず「コルトレーンぽい」のだが、クロスオーバー〜フュージョン時代を通過した、ポップで流麗でかなり判り易いコルトレーンになっている。1960年代のコルトレーンをベースに、1980年代のモーダルで軽快な、少しスピリチュアルなテナー・サックスに再構築されている。

ここまで、以前のコルトレーンの雰囲気とかけ離れたものになったのだから、この時点でのロイドの吹奏は「ロイド・オリジナル」と評価して良いかと思う。軽いが情感溢れるモーダルなフレーズは聴いていて心地良い。

そういう意味では、ロイドはペトルチアーニとの出会いによって復活し、確固たる個性を獲得したことになる。そんなロイドの記録がこのライヴ盤。ペトルチアーニ、ダニエルソン、ゼウスのリズム・セクションのパフォーマンスも実に良い感じなんだが、このライヴ盤では、自らの個性を確立したロイドのテナー・サックスを第一に愛でるべき盤だろう。

演奏される曲は、コルトレーン・ライクなスピリチュアルな吹奏はちょっと横に置いて、硬派で真摯なモードあり、ボサノバ調な軽快な演奏あり、ボーカルものあり、意外と「とっちらかって」いるのだが、以前より聴き手に迎合する傾向のある、機を見て敏なるロイドについては、まあこれも「アリ」だろう。

1981年の復活で自らの個性を獲得し、やっと「胡散臭さ」が抜けたロイドのテナー・サックス。このライヴ盤でのロイドの吹奏はオリジナリティー満点。復活して良かった、と心から思える素敵な内容のライヴ盤です。
 
 

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2023年7月 6日 (木曜日)

懐かしいアルバムに出会った。

ブルーノート・レーベルの「85100 シリーズ」のアルバムを、カタログ順に整理している。「85100 シリーズ」は、ブルーノートが1979年に活動を停止した後、1984年、EMI傘下でジャズ・レーベルとして復活、復活後の最初の録音シリーズである。カタログ番号は、BT 85101〜BT 85141まで、途中空き番が1つあるので、全40枚の小規模な録音シリーズになる。

このシリーズは、ブルーノート復活後、ジャズ界では「純ジャズ復古」の時代に入っての録音シリーズなので、当時のメインストリーム志向の純ジャズの録音がズラリと並んでいる。中には、過去の音源の復刻もあったりするが、聴くべきは、この「純ジャズ復古」が始まった時点での純ジャズの音源である。中には、実に懐かしい盤もあって、全40枚、聴き直していて飽きることは無い。

『Other Side Of Round Midnight featuring Dexter Gordon』(写真左)。1985年7月1–12日、8月20–23日の録音。ブルーノートのBT 85135番。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon, Wayne Shorter (ts, ss), Freddie Hubbard, Palle Mikkelborg (tp), Herbie Hancock, Cedar Walton (p), Ron Carter, Pierre Michelot, Mads Vinding (b), Billy Higgins, Tony Williams (ds), Bobby McFerrin (vo), John McLaughlin (g), Bobby Hutcherson (vib) 等。

いやはや、懐かしい盤である。結構、御無沙汰していた。今回、ブルーノートの「85100 シリーズ」のアルバムを整理していて、この盤の存在を思い出した。20数年振りに聴いたことになる。いやはや、懐かしいことこの上無しである。この盤は、映画『ラウンド・ミッドナイト』のためのセッション中に録音された演奏から、アウトテイクや採用されなかった曲中心に編集したブルーノート盤。プロデュースはハービー・ハンコックとマイケル・カスクーナ。

実は、先行して、コロンビア・レコードから、Dexter Gordon『Round Midnight(Original Motion Picture Soundtrack)』(写真右)がリリースされている。同傾向、同内容のサウンドトラック盤である。

こちらの方は、サブタイトルにもある様に、映画で採用した演奏で固めたサウンドトラック盤。映画の映像のバックに流れるBGM的な演奏なので、ジャズの個性である即興演奏の自由度や展開の柔軟度が制限されている雰囲気が見え隠れする。どこか、窮屈な、躍動感が削がれた演奏がメインになっている様に感じていて、僕はあまり好きじゃ無い。
 

Other-side-of-round-midnight-featuring-d

 
逆に、ブルーノートからの『Other Side Of Round Midnight featuring Dexter Gordon』(写真左)は、収録された演奏について、かなり水準の高い演奏で固められている印象で、この盤まるごと、純ジャズ復古後の、当時の先端を行くハードバップ盤として聴いても、十分に鑑賞に耐える内容。

映画の主役を務めたデクスター・ゴードン(愛称・デックス)に敬意を表して、デクスター・ゴードン名義のアルバムになっているみたいだが、中身はそれぞれの曲でそれぞれのジャズマンが演奏を担当している「オムニバス形式」の内容。アルバムのタイトルを良く見たら「featuring Dexter Gordon」とある。デックスは4曲のみに参加。デックスのリーダー作として聴くのには無理がある。

演奏の基本はモード・ジャズ。1960年代前半のモード・ジャズをベースに、1980年半ばならではの「新しい響き」をしっかりと宿していて、どの曲も、1980年代のハードバップな演奏として、高水準のレベルを維持している。デックスもモーダルな雰囲気の演奏の中で、ゆったりとした吹きっぷりで、しっかりモードに対応しているのだから立派としか言い様がない。4曲しか参加は無いが、デックスのテナーは、どの曲でも素晴らしいパフォーマンスを披露している。

そして、ラストのハービー・ハンコックのピアノ・ソロ「Round Midnight」は絶品。ハービーのソロ・ピアノはなかなか聴くことは出来ないが、こんなパッション溢れるハービーのソロは聴いたことが無い。1980年代仕様のハービーの純ジャズなモーダル・ピアノ。思わず聴き入ってしまう。

サウンドトラックの『Round Midnight』を最初に手に入れて聴いて、う〜ん、なんだかなあ、という印象を持ったのが正直なところ。その後、この『Other Side Of Round Midnight featuring Dexter Gordon』を手に入れて聴いて、合点がいった次第。やはり、純ジャズの演奏には、即興演奏としての「自由度と柔軟度」は必須ですね。

映画の方は、ジャズ者にとっては、なかなか良い感じの、判り易い映画かと。デックスが主演で良い味出してます。僕は以前、レーザーディスクで所有していました。今ではBSでやっていたものをハードディスクに残して楽しんでいます。
 
 

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2023年7月 5日 (水曜日)

マクリーン初期の名盤の1枚

ハードバップ期のマクリーンは、歌心満点の「唄う」アルト・サックスが素晴らしい。デビュー時には完成され、個性が確立されたプレイだったが、それに磨きをかけたのが、プレスティッジ時代のリーダー作の数々。

パッと集めてパッと録る、リハーサル無しのぶっつけ勝負録音が特徴のプレスティッジの中で、マクリーンはレギュラー・バンドをベースに、良く鍛錬されたパフォーマンスを聴かせてくれる。真摯なジャズマン、マクリーンの真骨頂。

Jackie Mclean『McLean's Scene』(写真左)。1956年12月、1957年2月の2セッション。ちなみにパーソネルは、1956年12月のセッション(Tracks 1, 3, 4)は、Jackie McLean (as), Bill Hardman (tp), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。1957年2月のセッション(Tracks 2, 5, 6)は、Jackie McLean (as), Mal Waldron (p), Arthur Phipps (b), Art Taylor (ds)。

1956年12月のセッション(Tracks 1, 3, 4)は、マクリーンとハードマンの2管フロントのクインテット編成。1957年2月のセッション(Tracks 2, 5, 6)は、マクリーンが1管フロントのワンホーン・カルテット。1956年12月のセッションは、意外とハードマンが絶好調。1957年2月のセッションのマクリーンのワンホーン・カルテットの演奏が、好調マクリーンの個性と特徴を捉えていて良い内容。
 

Jackie-mcleanmcleans-scene

 
特に、スタンダード曲の吹奏が良い。ミディアム・テンポで演奏される冒頭1曲目の「Gone With The Wind(風と共に去りぬ)」は、ガーランドのピアノに導かれて(ワン・フレーズ聴いて直ぐに判る)、ハードマンのトランペットが好調。マクリーンは、曲の良さに依存せず、自らの個性を活かすような、少し癖の強いフレーズでガンガン攻めている。こういうマクリーンが僕は好きだ。

ゆったりと演奏される3曲目のスタンダード曲「Mean To Me」は、マクリーンとハードマンのアンサンブルが良い雰囲気。こういうゆったりとしたスタンダード曲を伴奏させると、ガーランドは無敵。とても趣味の良いピアノで、マクリーンとハードマンを盛り立てている。

2曲目の「Our Love Is Here To Stay」は、マクリーンがワンホーンの軽快な演奏で、マクリーンがのびのびと聴き応えのあるアドリブ・フレーズを吹き回している。バラード曲、5曲目の「Old Folks」では、マクリーンは彼独特の特徴ある個性的なフレーズで、マクリーンならではのフレーズ展開をじっくりと聴かせてくれる。

プレスティッジ時代のマクリーン初期の傑作として『4, 5 and 6』のタイトルがよく挙がるが、この『McLean's Scene』は、その『4, 5 and 6』と比較して勝るとも劣らない、マクリーン初期の名盤だと思う。プレスティッジ時代のマクリーン初期の名盤として、この2枚は外せないですね。
 
 

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2023年7月 4日 (火曜日)

全てのスタイルを吹くハバード

フレディ・ハバードのリーダー作の聴き直しを再開した。ハバードのトランペットはとにかく「上手い」。途方も無く上手いのだが、その上手さを前面に押し出す「癖」がある。とにかく、どんなセッションでも途方も無いテクニックを駆使して、前へ前へ出る。テクニックについても、とにかく速いフレーズを吹きまくる。時には「五月蠅く」感じるほど。

以前、そんなハバードのリーダー作を聴き直していて、とにかく耳が疲れた。上手いのだが、リーダー作それぞれを聴いていて、どうにも個性とコンセプトが定着しない。様々なスタイル、トレンドの吹奏を披露するのだが、確かに上手い。凄く上手い。歌心もあるんだが、情緒に欠けるというのか、侘び寂びに欠けるというのか、演奏の行間が無いというのか、凄いテクニックだけが耳に残るだけの吹奏に耳が疲れた。

しかし、ほぼ全てのリーダー作を聴かないと、彼のトランペットの個性を断定することは出来ない、というか、リーダー諸作を中途半端に聴き終えるのは失礼というもんだ。ということで、ハバードのリーダー作の聴き直しを再開した。

Freddie Hubbard『Breaking Point!』(写真左)。1964年5月7日の録音。ブルーノートの4172番。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as, fl), Ronnie Mathews (p), Eddie Khan (b), Joe Chambers (ds)。

ハバードのトランペット、スポルディングのアルト・サックスが2管フロントのクインテット編成。ハバードと同じ年頃の、かなりの若手の、どちらかと言えば、マイナーな存在のジャズマンで固められている。恐らく、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの深慮遠謀だろう。

こういうメンバー構成でのセッションの場合、ハバードは前へ前へ出ようとはせず、周りの音に気を配りつつ、しっかりとグループサウンズ優先の、余裕ある、実に素晴らしい吹奏を聴かせてくれる傾向が強い。
 

Freddie-hubbardbreaking-point

 
この盤でも、1人で前へ前へ出ようとはせず、グループサウンズを維持する中で、途方も無いテクニック溢れる吹奏を聴かせている。ハバードの吹奏の「質」という面では、この盤は申し分無い、素晴らしい演奏家としてのパフォーマンスを聴かせてくれている。

演奏内容は、というと、一言で言うと「1964年時点でのアーティステック志向のジャズのショーケース」の様な内容。オーネット・コールマンに影響を受けた様なフリー・ジャズあり、コルトレーンの様なフリー・ジャズ&モード・ジャズあり、ジャズ・メッセンジャーズの様なモード・ジャズあり。

アルバム全体としては「前衛的」な雰囲気が濃厚なのだが、どこか従来のハードバップの雰囲気を残して、全面的に「前衛的」に展開するのを自制しているかの様な、ちょっと中途半端な内容。フリーに走り切ること無く、モードに振り切ること無く、そこはかとなく、ハードバップの雰囲気を残して、全ての聴き手に訴求しようとする。何とも、隔靴掻痒の感がする。

しかし、そんなバラエティーに富んだ内容で、テクニック的にも全てのスタイル、トレンドを水準以上に吹き切るのは難しいと思うんだが、ハバードはいとも容易く、全てのスタイル、トレンドに精通しているが如く、水準以上に吹き切っている。さすが、ではある。

この盤のハバードを聴いて感じるのは、ジャズ・トランペットの「プレイヤー」としては超一流。モダン・ジャズの「クリエイター」としては「発展途上」ということ。演奏家としては全く申し分無い、歴史に名を残すほどのハイ・テクニックの持ち主なのだが、ジャズ盤を制作する上でのリーダーとしての、クリエイターとしての素養についてはやや欠ける、と感じる。

ショーケース的な内容で、自らの持つ途方も無く素晴らしいテクニックを惜しげも無く披露するより、どれかのスタイルに絞って、ハバードなりに、そのスタイルを追求し極める位のチャレンジをしても良かったのでは無いか。ハバードだったら、どのスタイルに絞ろうが、かなり優れた成果を残せたと思うのだ。この「1964年時点でのアーティステック志向のジャズのショーケース」の様な盤を聴いて、そんな思いを改めて持った次第。

この盤は、ハバードのジャズ・トランペットの「プレイヤー」として素晴らしさを愛でる盤だろう。
 
 
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2023年7月 3日 (月曜日)

マクリーンの個性は変わらない

ジャキー・マクリーンのプレスティッジ盤には外れが無い。いきなり集まっていきなり本番の「行き当たりばったりのジャム・セッション風のやっつけ録音」そして「録音日、録音セッションの塊を無視した、感覚で切り貼りしたアルバム編集」が個性のジャズ・レーベルのプレスティッジの録音ながら、マクリーンの録音はどれもしっかりした内容で、ハードバップな好盤として聴き応えがある。

Jackie McLean『Jackie McLean & Co』(写真左)。1957年2月8日の録音。プレスティッジのPRLP 7087番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Bill Hardman (tp), Ray Draper (tuba, #1-3), Mal Waldron (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。プレスティッジの録音では意外と珍しい、単一日、単一セッションを1枚のアルバムに収録したアルバム。

この頃のマクリーンは、バンドのメンバーを基本的に固定していた様で、リーダー作に臨む時は、必ず、この固定メンバーのバンドを引き連れて録音に臨んでいた様で、演奏の内容もしっかりリハーサルされた様な、端正でしっかりアレンジされたもので固められている。この辺が「マクリーンのプレスティッジ盤には外れが無い」と言われる所以だろう。

この盤でも、マクリーンの吹奏の素晴らしさは変わらない。ところどころ、ちょっとピッチがずれた、ハードバップな吹奏が爽快。アドリブ・フレーズは切れ味良く流麗で、いかにもジャジーな響きの吹き回しがとても良い。
 

Jackie-mcleanjackie-mclean-co

 
ウォルドロン・ワトキンス・テイラーの「燻し銀」リズム・セクションとの相性が良く、マクリーンのちょっと個性的な吹き回しにジャストフィットしている様子が良く判る。

そして、この盤の面白いところは、1曲目から3曲目に参加しているチューバの存在。レイ・ドレーパーのチューバなんだが、チューバでジャズが出来るとは、ジャズのアドリブ・フレーズの吹奏が出来るとは思ってなかったので、初めて聴いた時にはビックリした。

さすがに速いフレーズの吹き回しは苦手みたいだが、ミッドからスローなテンポのフレーズの吹き回しについては、意外と雰囲気があって良い感じ。それでも、アルバム全体に判って聴くにはちょっと辛くて、この盤の様に3曲程度くらい、音の彩りを添える、という観点でのチューバの採用には納得出来る。しかし、チューバでこれだけ旋律を吹けるとは。実にユニークな存在である。

ハードマンのトランペットは相変わらず、端正でブリリアントな、教科書的なジャズ・トランペットを吹き上げていて良い感じ。マクリーンとのフロント2管のユニゾン&ハーモニーも熟れたもので、ハードバップな雰囲気を更に高めている。

ハードバップな雰囲気をしっかり湛えた、マクリーンの好盤です。チューバの存在も、音の彩りとして捉えれば意外と楽しめます。こういうアレンジやアンサンブルの工夫も、ハードバップ期には盛んに行われていたんでしょうね。
 
 

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2023年7月 2日 (日曜日)

クインテットのキャノンボール

リーダー作デビュー2枚目にして、大手ジャズ・レーベルのエマーシーに移籍したキャノンボール・アダレイ。大人数編成のビッグバンド仕様や、ウィズ・ストリングスなど、ジャズをあまり知らない一般の音楽ファンにもしっかり訴求する、耳当たりと聴き心地の良いアルバムを続けざまに3枚、リリースしている。

キャノンボールのアルト・サックスは溌剌として流麗バップなフレーズを吹きまくって良い感じなんだが、どうにも、純ジャズのパフォーマンスとして聴くにはちょっと物足りなかったのは否めない。

Cannonball Adderley『Sophisticated Swing』(写真左)。1957年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Junior Mance (p), Sam Jones (b), Jimmy Cobb (ds)。キャノンボールのアルト・サックスとナットのコルネット、兄弟2管フロントのクインテット編成。

エマーシー移籍4枚目にして、やっとクインテット編成の、本格的純ジャズな少人数コンボでのリーダー作をリリース。やっぱりメインストリーム系の純ジャズとして聴くには、まずは少人数コンボでのパフォーマンスが聴きたい。キャノンボールのアルト・サックスを、やっとクインテット編成で聴くことが出来た訳である。
 

Cannonball-adderleysophisticated-swing

 
キャノンボールのアルト・サックスは申し分無い。溌剌として流麗、そこはかとなくファンクネス漂い、テクニック上々。歌心溢れ、ちょっと五月蠅いくらいにブラスの音が鳴り響く。ワンフレーズ聴いて、これってキャノンボールね、と判る位の個性溢れるアルト・サックス。少人数コンボでは、そんなキャノンボールが目立ちに目立つ。

目立つと言えば、フロント管の相棒、弟のナット・アダレイのコルネットも元気溌剌としていて、兄のキャノンボールに負けず劣らず、素晴らしい吹奏を聴かせてくれる。ナットも上手いんだよね〜。このアダレイ兄弟の2管フロントって無敵ですね。

バックのリズム・セクションも良い味出している。ジュニア・マンスのピアノがこれまた溌剌としたバップ・ピアノで聴いていて気持ちが良い。切れ味の良い、そこはかとなくファンクネス漂う弾きっぷりで、フロントのアダレイ兄弟をしっかりと引き立てる。ベースのサム・ジョーンズのベースは堅実、ジミー・コブのドラムは、切れ味良くファンキーなリズム&ビートを趣味良く叩き出している。

「古き良きアメリカ」を彷彿とさせる、オープン・スポーツカーと若きシュッとした金髪の白人女性というジャケ写も雰囲気があって良い。こういう良好なジャケのジャズ盤に外れはありませんね。聴き応え十分な、ファンキー・ジャズ一歩手前の正統なハードバップ演奏がてんこ盛りの好盤です。
 
 

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2023年7月 1日 (土曜日)

北欧ジャズの「ジャズ・ロック」

欧州のジャズ・レーベルの老舗、ECMレーベル。アルバムのリーダーを張るミュージシャンは、米国ジャズとはかなり異なる。

大きく分けて、北欧、ドイツ、イタリア、東欧、最近ではイスラエル。レーベルの音のカラーとして、耽美的でリリカル、現代音楽的でスピリチュアルな「統一された音志向」があるので、米国ジャズを踏襲した音志向の欧州ミュージシャンが選ばれることは無い。

北欧ジャズは、明らかにECMレーベルの音志向にぴったり合致する音の個性を持っていて、ECMレーベルからかなりの数のリーダー作をリリースしている。スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランドと偏り無く、リーダー人材を発掘し、ECMらしい音志向のリーダー作をリリースしている。

逆に、8ビートが主体のリズム&ビートの効いたクロスオーバー・ジャズやジャズ・ロックはほとんど無いのが、これまた、北欧ジャズの個性と言えば個性。

Arild Andersen『Clouds in My Head』(写真)。1975年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Arild Andersen (b), Knut Riisnæs (ts, ss, fl), Jon Balke (p), Pål Thowsen (ds)。リーダーは、ノルウェー出身のベーシスト、アリルド・アンデルセン。残りの3人も全員ノルウェー出身。オール・ノルウェーの1管フロントのカルテット編成。

僕は今まで、このアルバムを聴いたことが無かった。今回、ECMのリリースで、北欧ノルウェー出身のカルテットの演奏なので、さぞかし、北欧ジャズっぽい、耽美的で透明感溢れる、リリカルで静的なモード・ジャズが展開されるのだろう、と予想して聴き始めたら、思わず仰け反った。
 

Arild-andersenclouds-in-my-head

 
北欧ジャズっぽさが希薄。といって、ファンクネスは皆無。ビートは8ビートが入っている。これって、クロスオーバー・ジャズ、若しくはジャズ・ロック志向の音作りではないか。

よくよく聴くと、出てくるフレーズは、明るくはあるが耽美的でリリカル、テナーの音などはスッと伸びた透明感溢れる音色で、リーダーのアンデルセンのベースはソリッドで切れ味抜群。

ジョン・バルケのピアノは、躍動感溢れ、ビートが効いてはいるがリリカルで透明度高く硬質なタッチ。ポール・トーセンのドラムは、自由度と柔軟度の高い拡がりのあるリズム&ビートを叩き出す。この4人の出す音って、基本は北欧ジャズであることが判る。

この盤、北欧ジャズを基本としたクロスオーバー・ジャズ、若しくはジャズ・ロックだと感じる。アップテンポの4ビートの演奏などは、米国ジャズの新主流派を彷彿とさせるのだが、ファンクネス皆無、北欧ジャズの個性を宿した楽器の音が、米国ジャズとは絶対的に「一線を画している」ところが興味深い。

ECMには似合わない、タイトなリズム&ビートの効いたクロスオーバー・ジャズ、若しくはジャズ・ロック、そして、米国ジャズの新主流派的な音世界。

しかしながら、この北欧ジャズの個性を宿した楽器の音と演奏の雰囲気が、辛うじてこの盤をECM盤として成立させている。きっと、アイヒヤーはしぶしぶリリースしたんじゃないかな。でも、良い内容、良い雰囲気の好盤だと思います。
 
 

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