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2023年5月16日 (火曜日)

硬派でモーダルなモブレー盤

ハンク・モブレーは、自身のリーダー作については、ほとんどが、ブルーノート・レーベルからリリースされている、いわゆる「ブルーノート専属」のテナー・マン。モブレーのパフォーマンの個性は、ブルーノートからリリースされたリーダー作を追うことで、しっかりと理解出来る。

Hank Mobley『No Room for Squares』(写真左)。1963年3月7日と1963年10月2日、2つの異なるセッションのカップリング。ブルーノートの4149番。アルバム・タイトルは「四角四面なヤツお断り」という意味。

ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Philly Joe Jones (ds), は2つのセッション共通。トランペットとピアノとベースが交代していて、1963年3月7日(#3 & 6)は、Donald Byrd (tp), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b)、1963年10月2日(# 1, 2, 4, 5, 7 & 8)は、Lee Morgan (tp), Andrew Hill (p), John Ore (b) が担当している。

録音年は1963年。ジャズはハードバップが成熟し、そのハードバップをベースとした「多様化」の時代に突入していた。ポップスとしてのジャズに追従した「ファンキー・ジャズ」「ソウル・ジャズ」、ジャズの芸術性を追求した「モード・ジャズ」「フリー・ジャズ」と、モダン・ジャズは両極端な演奏志向に二分されて、更なる進化をしていた時代である。

そこで、ハンク・モブレーである。モブレーは「ポップスとしてジャズ」を良しとしなかった様で、硬派にも「ジャズの芸術性を追求」する志向を突き進む。後にエレ・ジャズやジャズロックにも殆ど手を染めなかった様で、どうもモブレーは「硬派な志向のジャズマン」だった様な気がする。
 

Hank-mobley-no-room-for-squares

 
このアルバムも、2つのセッションに分かれているが、どちらも、こってこてのモード・ジャズである。2つのセッションに参加しているメンバーは、皆、モード・ジャズに精通しているメンバーばかりなので、これはこれで統一感があって良い。リーダーのモブレー自身、モーダルなテナーは得意中の得意なので、このアルバムのモブレーは堂々と思索溢れるフレーズを吹きまくっている。

1963年3月7日のセッション(#3 & 6)では、ハンコックが素晴らしい。こってこてモーダルなフレーズをガンガンに連発する。間の取り方といい、フレーズの拡げ方といい、絶妙としか言いようのない弾き回し。

1963年10月2日のセッションでは、モーガンのトランペットとモブレーのテナーの「モーダルなフロント2管」が格好良くって、モーガンもモブレーも、こってこてモーダルなフレーズをガンガンに吹きまくっている。しかし、モブレーのテナーって、モーガンのトランペットとの相性がとても良いよね。

タイトルの「四角四面なヤツお断り」というよりは「軟弱なヤツお断り」ってな感じの、筋金入りのモード・ジャズ盤。この盤を初めて聴いた時、モブレーがこんなに硬派な、こだわりのあるジャズマンだとは思わなかった。

偉大なるB級テナー・マンとか、ミドル級のテナー・マンとか、はたまた「バップ時代で最も過小評価されているミュージシャンの一人」(wikipediaより引用)とか、あまり芳しい評価が無いモブレーだが、モード・ジャズをガンガンに吹きまくるモブレーは無敵。モブレーはウェイン・ショーターに比肩する「こってこてモーダルなテナー・マン」と僕は解釈している。
 
 

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