ドーハムは演奏志向にブレが無い
昨日から、ケニー・ドーハムのトランペットを愛でるべく、当ブログで扱っていないリーダー作を「落ち穂拾い」している。
いろいろリーダー作を聴いていて、意外とドーハムって、どの盤でも溌剌としたバップなトランペットを吹いているんやなあ〜、と改めて感心した。加えて、ドーハムって、「フレーズがちょっと危うい」ところ、滑らかにアドリブ・フレーズを吹き進めていくのだが、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」ところがあるのだが、これは、どのリーダー作にも頻度の多少はあるが、必ず入っている。
このドーハムの「フレーズがちょっと危うい」ところって、セッション毎に好不調があるのでは無く、押し並べて、ドーハムの個性として備わっている類のものなんだろう、と感じる。この部分が気になるかならないかで、ドーハムの評価は分かれるのだろう。
Kenny Dorham『Jazz Contemporary』(写真左)。1960年2月11–12日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Charles Davis (bs), Steve Kuhn (p), Jimmy Garrison (b, tracks 2, 3, 7, 8 & 10), Butch Warren (b, tracks 1, 4-6 & 9), Buddy Enlow (ds)。ベースは、11日の録音がジミー・ギャリソン、12日の録音がブッチー・ワーレンと分担している。
ジャケが、ちょっと胡散臭い「手抜きのモダン・アート」な感じなので、ブートか、と思ったりするが、Timeレーベルからリリースされたハードバップな好盤である。
しかし、ピアノには、当時22歳、新進気鋭の新しい感覚のモーダルなピアニストのスティーヴ・キューン、バリトン・サックス(略してバリサク)には、最初はペッパー・アダムスかと思ったが、響きがちょっと違う。この盤では、R&B志向でソウルフルなチャールズ・ディヴィスがアサインされている。
録音年は1960年。ハードバップが成熟、このハードバップを基本に様々な志向のモダン・ジャズが展開され始めた時代。この盤では、その「新しい響き」を、まず、スティーヴ・キューンのピアノがそれを担っている。
この盤、リーダーはドーハムで、基本は、こってこてのハードバップなので、キューンも神妙にハードバップなピアノで応じているのだが、和音の重ね方とかアドリブ・フレーズの展開が、どこかモーダルな響きがしているのだが、これがドーハムの中音域がメインの、ブルージーでファンキーなバップ・トランペットとの相性が殊の外良い。
そして、R&B志向でソウルフルなチャールズ・ディヴィスのバリサクがかなり目立つ。演奏全体の志向はハードバップだが、チャールズ・ディヴィスのバリサクは、ソウルフルでR&B志向の「ジャズ・ファンク」な響きが個性。水と油かな、と危惧したのだが、これがドーハムの中音域がメインの柔軟で流麗なバップ・トランペットとの「好対象」な響きで、フロント2管として、意外と魅力的な響きを醸し出している。
ベースも、コルトレーンの下でモーダルなベースをブイブイ弾きまくるギャリソン、そして、当時、新進気鋭のブッチー・ワーレンが担当しているが、この二人もリーダーのドーハムの志向に沿って、神妙にハードバップなベースで応じている。
パーソネルを見渡せば、筋金入りの「ビ・バップ」なトランペッター、ドーハムが、新進気鋭のメンバーに応じて、新しい響きのモーダルなジャズに挑戦しているのか、と思うのだが、どうして、従来の「こってこてなハードバップ」でガンガンやっている。
そういう意味で、この盤の演奏を聴いていて、ドーハムって、演奏志向について「ブレの無い」ジャズマンやったんやな、と再認識。当然、ドーハムは好調、「フレーズがちょっと危うい」ところは頻度は低い。この盤、ドーハムの代表作の1枚として良い、充実した内容のリーダー作だと思います。
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