フリー&モードのモンカーである
ブルーノートの4100番台は、1961年後半から1965年前半の録音がメイン。ハードバップが成熟し、ハードバップを基に、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなど、ジャズの多様化の時代の真っ只中でのアルバムリリースを行っているのだが、フリー・ジャズについてもしっかりカバーしているのはさすがである。
Grachan Moncur III『Evolution』(写真左)。1963年11月21日の録音。ブルーノートの4153番。ちなみにパーソネルは、Grachan Moncur III (tb), Lee Morgan (tp), Jackie McLean (as), Bobby Hutcherson (vib), Bob Cranshaw (b), Tony Williams (ds)。ブルーノート・レーベルのフリー&モード・ジャズ。グラチャン・モンカー3世の初リーダー作である。
グラチャン・モンカー3世は、1937年6月、NY生まれのトロンボーン奏者。ニューアークで育ち、1960年辺りから、プロのジャズマンとして活動を開始、基本的な演奏スタイルは、フリー&モード・ジャズとアヴァンギャルド・ジャズを得意とする。が、1970年代は健康上の問題と著作権紛争に悩まされ、1980年代以降は、アルバムの録音は殆ど途絶えている。
この盤は、グラチャン・モンカー3世の「限りなくフリーに近い、自由度の高いモード・ジャズ」を捉えた記録である。後のアヴァンギャルドなフリー・ジャズとは一線を画した、クールで理知的な、ほとんどフリー・ジャズに近いモーダルなパフォーマンスを展開している。
しかも、彼の担当楽器はトロンボーン。トロンボーンの特性上、スライドを使っての速くてイレギュラーなフレーズを吹き回すのは大変な仕業だと思うのだが、モンカーは意外と検討していて、しっかりと吹き切っているのは立派。
フロントの相方には、リー・モーガンのトランペット、ジャキー・マクリーンのアルト・サックス。この二人については、ハードバップはもとより、「限りなくフリーに近い、自由度の高いモード・ジャズ」も得意の二人なので、モンカーのフロントの相方としては申し分無い。ピアノの代わりに入ったボビー・ハッチャーソンのヴァイブもアブストラクトの展開も難なくこなす。ドラムはフリー大好きなトニー・ウィリアムスだし、ベースもモーダルな展開を得意とするクランショウ。
メンバーの選定も、モンカーの得意とする「限りなくフリーに近い、自由度の高いモード・ジャズ」に、ばっちり応えるブルノート親派で固めて、駆け出しの初リーダー作だからといって、全く手を抜いていない、どころか、最高に近いメンバーを揃えているところは、さすが、ブルーノートの総帥ディレクター、アルフレッド・ライオンの成せる技である。
モンカーのトロンボーンも、トロンボーンという難度の高い楽器で、しっかりと「限りなくフリーに近い、自由度の高いモード・ジャズ」を展開し、バックの優れものメンバーに臆すること無く、当時のモンカーとしてなかなかのパフォーマンスを発揮している。モンカーは録音当時26歳。こういう将来有望な若手を発掘し、リーダー作の機会を与える。ここでも、さすがはブルーノートと感心してしまうのだ。
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