« 1970年代スタイルのジャマル | トップページ | 懐かしの『Grand Cross』です »

2023年5月 2日 (火曜日)

1960年代スタイルのジャマル

1950年代のジャマルは「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴だった。1958年録音の名盤『But Not for Me』が、その特徴を最大限に活かしたライヴ盤で、特に日本人ジャズ者の「心の吟線」にいたく触れるらしく、大人気の名盤である。

Ahmad Jamal『Happy Moods』(写真左)。1960年1月20–21日、シカゴでの録音。Argoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。1958年の名盤『But Not for Me』以来の「鉄壁のトリオ」での録音になる。

以前、当ブログで、1961年11月のライヴ盤『Ahmad Jamal at the Blackhawk』についての記事(2022年8月14日のブログ・左をクリック)をアップしたが、今回のスタジオ録音盤はその2年弱前の1960年1月の録音。トリオ演奏のスタイルは「シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた奏法」である。

音数は少ない傾向はそのままなのだが、メリハリを付けたファンキーな弾き回しに変わっている。1958年の『But Not for Me』は、音数少なくラウンジ風の「侘びさび」の効いた小粋な弾き回しだったが、その2年後、この『Happy Moods』では、ダイナミックな強いタッチが目立った、ちょっと五月蠅いくらいの弾き回しに変わっている。
 

Ahmad-jamalhappy-moods

 
トリオのメンバー構成は、1958年録音の名盤『But Not for Me』から代わっていないので、トリオ演奏として、演奏のスタイルと明確に変えていることになる。トリオのメンバーが代わって、その影響で演奏スタイルが変わったのでは無い。

この『Happy Moods』でも、弾く音を厳選した、音数の少ないフレーズはキープされているが、とにかく、ダイナミックなタッチでメリハリが強く付いていて、賑やかな雰囲気になっている。

加えて、ファンキーなフレーズが見え隠れするようになり、この「1960年代のジャマル」のスタイルは、ファンキー・ジャズの範疇で捉えた方が判り易い。収録された曲は全10曲。ジャマルのオリジナルは2曲のみ。残りの8曲はスタンダード曲。「Speak Low」以外、知る人ぞ知る、マニアックなスタンダード曲ばかりだが、どの曲にもファンキー・ジャズの味付けがされている。

「1960年代のジャマル」は「シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた、ファンキー・ジャズ」なスタイルからスタートしている。そう、ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニストなのだ。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« 1970年代スタイルのジャマル | トップページ | 懐かしの『Grand Cross』です »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 1970年代スタイルのジャマル | トップページ | 懐かしの『Grand Cross』です »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  

カテゴリー