1960年代スタイルのジャマル
1950年代のジャマルは「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴だった。1958年録音の名盤『But Not for Me』が、その特徴を最大限に活かしたライヴ盤で、特に日本人ジャズ者の「心の吟線」にいたく触れるらしく、大人気の名盤である。
Ahmad Jamal『Happy Moods』(写真左)。1960年1月20–21日、シカゴでの録音。Argoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。1958年の名盤『But Not for Me』以来の「鉄壁のトリオ」での録音になる。
以前、当ブログで、1961年11月のライヴ盤『Ahmad Jamal at the Blackhawk』についての記事(2022年8月14日のブログ・左をクリック)をアップしたが、今回のスタジオ録音盤はその2年弱前の1960年1月の録音。トリオ演奏のスタイルは「シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた奏法」である。
音数は少ない傾向はそのままなのだが、メリハリを付けたファンキーな弾き回しに変わっている。1958年の『But Not for Me』は、音数少なくラウンジ風の「侘びさび」の効いた小粋な弾き回しだったが、その2年後、この『Happy Moods』では、ダイナミックな強いタッチが目立った、ちょっと五月蠅いくらいの弾き回しに変わっている。
トリオのメンバー構成は、1958年録音の名盤『But Not for Me』から代わっていないので、トリオ演奏として、演奏のスタイルと明確に変えていることになる。トリオのメンバーが代わって、その影響で演奏スタイルが変わったのでは無い。
この『Happy Moods』でも、弾く音を厳選した、音数の少ないフレーズはキープされているが、とにかく、ダイナミックなタッチでメリハリが強く付いていて、賑やかな雰囲気になっている。
加えて、ファンキーなフレーズが見え隠れするようになり、この「1960年代のジャマル」のスタイルは、ファンキー・ジャズの範疇で捉えた方が判り易い。収録された曲は全10曲。ジャマルのオリジナルは2曲のみ。残りの8曲はスタンダード曲。「Speak Low」以外、知る人ぞ知る、マニアックなスタンダード曲ばかりだが、どの曲にもファンキー・ジャズの味付けがされている。
「1960年代のジャマル」は「シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた、ファンキー・ジャズ」なスタイルからスタートしている。そう、ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニストなのだ。
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