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2023年5月の記事

2023年5月31日 (水曜日)

ハードバップな雰囲気を楽しむ

何故か、梅雨の季節になると、ケニー・ドーハム(Kenny Dorham)のトランペットが聴きたくなる。中音域を多用しながら、芯がしっかりしているが、まろやかな歌心ある「哀愁のトランペット」が良い。時々、テクニック的に「ヨレる」ところがあるが、それも個性でご愛嬌。張りのあるブリリアントな「哀愁のトランペット」は、この梅雨の季節に合う。

Kenny Dorham『2 Horns / 2 Rhythm』(写真左)。1957年11月13日と1957年12月2日の録音。リバーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp, p), Ernie Henry (as), Eddie Mathias (b), G.T. Hogan (ds)。12月2日の録音では、ベースが、Wilbur Ware (b) に代わっている。

基本は、リーダーのドーハムのトランペットとヘンリーのアルト・サックスが2管フロントの「ピアノレス」カルテット。3曲目の「Soon」にだけ、なんと、ドーハムがピアノを弾いている。12月2日のセッションでは、ベースがウエアに交代して、4曲目の「Is It True What They Say About Dixie?」と8曲目の「Jazz-Classic」を演奏、その他の曲は11月13日の録音。

ピアノレスの2管フロント・カルテットという変則な編成だが、演奏全体の纏まりは良い。アレンジが効いているのか、ファンキー・ジャズ志向の根明なハードバップが展開されていて、意外と聴き応えがある。
 

Kenny-dorham-quartet-two-horns-two-rhyth

 
但し、ベースが弱く、12月2日のセッションでは、ウエアに交代して、何とか体裁を整えている。が、ドーハムのトランペットとヘンリーのアルト・サックスが良く鳴っていて、リズム隊の弱さをしっかりカヴァーしている。特に、この録音が最後になる、ヘンリーのアルト・サックスがなかなか健闘している。

ドーハムのトランペットは好調で、この盤では意外と「根明」なバップ・トランペットを吹き回している。冒頭の「Lotus Blossom」は、後の『Quiet Kenny』の「哀愁感溢れる名演」で有名になるドーハム作の名曲だが、この盤では、哀愁感はなく、根明でブリリアントな吹き回し。とても健康的に明るい「Lotus Blossom」で、ちょっと面食らうが、演奏的には、しっかりハードバップしていて、充実している。

2曲目の「Sposin」は、他のジャズマンの演奏よりも、はるかに明るい雰囲気で演奏されていて、この盤のドーハムは「哀愁のトランペッター」というよりは「根明でブリリアントなトランペッター」として、速いフレーズも、テクニックよろしく、バリバリ吹き回している。

但し、3曲目「Soon」でのドーハムのピアノはたどたどしくて、宜しくない。無理にピアノを弾かなくても良かったのに、とも思うし、プロデューサーのオリン・キープニュースにしても、この演奏をアルバムに収録しなくても良かったのに、とも思う(笑)。

この盤については、ドーハムの代表作としては、ちょっと内容的に弱いが、ドーハムのトランペットとヘンリーのアルト・サックスの2管フロントが好調で、ファンキー・ジャズ志向のハードバップ盤として、意外と楽しめる「変則カルテット」の演奏になっている。この盤に溢れるハードバップな雰囲気は聴いていて、単純に楽しい。
 
 

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2023年5月30日 (火曜日)

ソウルフルなスリー・サウンズ

スリー・サウンズ(The 3 Sounds)は、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの肝いりで結成された、ブルーノートお抱えの企画型ピアノ・トリオ。スタンダード曲をメインに、ファンキーで端正でハイ・テクニックなトリオ演奏が魅力で、ピアノ・トリオとしての実力は相当なものがある。しかし、我が国では何故か人気が無い。

The 3 Sounds『Black Orchid』(写真左)。1962年3月7ー8日の録音。ブルーノートの4155番。ちなみにパーソネルは、ene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。初出のLPの時は全8曲。CDでのリイシューで、ボートラが大量7曲(6曲のものもある)追加されている。が、この『Black Orchid』を語る上では、初出LPの8曲に絞ることにする。

もともとスリー・サウンズの演奏の基本は「ファンキー・ジャズ」。スタンダード曲がメインの演奏でも、しっかりと「ファンキー・ジャズ」なアレンジを施されていて、ファンキーで端正でハイ・テクニックなトリオ演奏が、スリー・サウンズの個性として定着している。
 

The-3-soundsblack-orchid 

 
スリー・サウンズは、スタンダード曲がメインの演奏なので、イージーリスニング志向のピアノ・トリオと勘違いされることが多いが、どのアルバムでも良いから聴いてみると、それは大きな勘違いといういうことが良く判るのではないか。意外と硬派なハードバップな演奏を展開している。そんなファンキー・ジャズ志向のスリー・サウンズが、この盤ではしっかりとソウル・ジャズ志向にシフトしている。

テクニックをひけらかす様な速い曲はひとつも無い。ミッド・テンポな落ち着いた演奏から、スロー・バラードな演奏でこの盤は埋められている。もともとファンクネス漂うトリオ演奏だが、このファンクネスの濃度が濃くなって、テンポはミッド・テンポ、ゴスペル風なフレーズも見え隠れして、この盤の雰囲気は、カラッとしたライトでアーバンなソウル・ジャズ志向なピアノ・トリオといった感じ。

ゆったりとしたテンポの演奏がメインで、難解なモーダルな展開や複雑なコードチェンジなど全く無く、ゆったりとしたテンポで、判り易いフレーズ展開で、カラッとしたライトでアーバンなソウル・ジャズを展開している。ファンクネスの濃度は高く、唄うが如くのフレーズはとことんソウルフル。「聴き手のニーズ」に呼応したブルーノートの4100番台のアルバムが、ここにもある。
 
 

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2023年5月29日 (月曜日)

4100番台のブレイキー盤は ....

ブルーノートの4100番台は、1961年後半から1965年前半の録音がメイン。ブルーノートは、成熟したハードバップを基に、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなど、聴き手に訴求するジャズの様々なニーズに応えていた。が、例外もある。

Art Blakey & The Jazz Messengers『The Freedom Rider』(写真左)。1961年2月12, 18日と5月27日の録音。ブルーノートの4156番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。ウェイン・ショーターが音楽監督を務めた時代の録音。録音当時お蔵入りだった音源の、録音3年後、1964年2月のリリース。

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズについては、1960年の録音でお蔵入りになったアルバム4枚、1961年の録音でお蔵入りになったアルバム1枚、1964年でお蔵入りになったアルバム1枚が、4100番台で五月雨式に、後年にリリースされている。特に1961年録音のお蔵入り盤は、4枚のアルバム共に内容は良好で、未だに、録音して直ぐにアルバム・リリースしなかったのかがよく判らない。
 

Art-blakey-the-jazz-messengersthe-freedo

 
この録音後、遅れてリリースに至ったアルバムは、全て、ショーターが音楽監督を務めた時代の、こってこてモーダルなファンキー・ジャズを展開した時代。モード・ジャズをメインとしていたからといって、難解なところは全く無く、ファンキー・ジャズ志向のアレンジが効いていて、とても判り易く、取っ付き易い、加えて、ジャズ・メッセンジャーズの個性溢れる、優れた内容になっている。

この『The Freedom Rider』についても、ショーターが音楽監督になって、しっかりとショーターのモード・ジャズ志向が根付いて、とても良好なアレンジ、加えて、明らかにジャズ・メッセンジャーズと判る音の響きで、モーダルなファンキー・ジャズを展開している。選曲も、ショーター、モーガン、ブレイキーの曲で占められており、ジャズ・メッセンジャーズ・オリジナルな雰囲気が満載。

4100番台のブルーノート盤の中で、ジャズ・メッセンジャーズだけが、録音ストックの中から五月雨式に、アルバムが遅れてリリースされているのが特徴的。ジャズ・メッセンジャーズの音志向は、あまり、ジャズの演奏トレンドや演奏方式に左右されない、普遍的な音志向なので、ジャズ・メッセンジャーズの音源については、ジャズ・メッセンジャーズのファンに向けてリリースし続けていたのかも知れない。
 
 

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2023年5月28日 (日曜日)

ブルーノートの「抱きしめたい」

ブルーノートの4200番台は、1965年から1969年までのリリース。1964年2月にビートルズが米国に上陸したのを切っ掛けに、ロックやR&Bが聴衆の心を掴み、聴き手の「ジャズ離れ」が始まりだした時代のリリース。公民権運動が盛り上がり、ベトナム戦争が泥沼化し、政治色に染まったジャズが出現し、フリー・ジャズがもてはやされた時代。

そんな時代の中、ジャズ人気の維持〜復権を目指して、売れに売れているビートルズの楽曲のカヴァーに走ったり、1960年代前半、一世を風靡した、聴き心地満点のボサノバ・ジャズを更に推し進めたり、とにかく聴き心地優先の「イージーリスニング・ジャズ」の登場もあり、それらの動きが、後のクロスオーバー&フュージョン・ジャズに繋がっていく。

Grant Green 『I Want To Hold Your Hand』(写真左)。1965年3月31日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Hank Mobley (ts), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。ファンクネス満タンのパッキパキのシングルトーン・ギター、グラント・グリーンがリーダーのオルガン・カルテット。

タイトル曲からして象徴的。これ、ビートルズの「抱きしめたい」である。ブルーノートが、グラント・グリーンがビートルズのヒット曲のカヴァーに手を染めている。収録曲も見ていくと、ボサノバの大ヒット曲「Corcovado」のカヴァーもある。グラント・グリーンがボサノバ・ジャズをやるのである。当時の時代背景からのジャズに対する負のプレッシャーは相当なものだったと痛感する。
 

Grant-green-i-want-to-hold-your-hand

 
しかし、パーソネルを見ると、ブルーノート親派の一流ジャズマンが集結して対応している。その演奏内容については、悪かろう筈が無い。しかも、プロデューサーは、ブルーノートの総帥、伝説のアルフレッド・ライオン。ビートルズのカヴァー、ボサノバのヒット曲のカヴァー、いずれも演奏内容は良い。

まず、グリーン、ヤング、エルヴィンのオルガン・トリオが好調。8ビートを取っても、ビートルズ独特のフレーズを取っても、演奏の根っこはしっかり「ジャズ」している。決して、安易なイージーリスニングにはならない。この「抱きしめたい」のカヴァーはしっかりジャズしている。そして、ボサノバ・ジャズの「コルゴバード」は、以前の同演奏に比べて、更に洗練されている。

ビートルズ曲、ボサノバ曲以外のジャズ・スタンダード曲も、聴くに心地良い、流麗な曲を選んでいて、これまた、素晴らしいアレンジを施して、とても洗練されたオルガン・ジャズに仕上げている。特に、グリーンのギターの特質のひとつ「ブルージーでソウルフル」な面をソフィストケイトした前面に押し出したアレンジがバッチリ填まっている。

さすがはブルーノート・レーベル、さすがはアルフレッド・ライオンと言わざるを得ない。流麗な有名スタンダード曲の中に、ビートルズ曲のカヴァー、ボサノバ曲のカヴァーが違和感無く入っている。アレンジも優秀、演奏も優秀。なにより、しっかり「ジャズしている」ところが素晴らしい。
 
 

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2023年5月27日 (土曜日)

ARTEMIS『In Real Time』良好

その時点での代表的なジャズマンを選定してグループを結成させ、スーパーグループとして売り出す、という企画型のレコーディングは、何時の時代にもある。1950年代には、ノーマン・グランツ主宰のJATP(Jazz at the Philharmonic)があった。フュージョン・ジャズの世界では「Fuse One」というスーパーグループがあったなあ。

一番覚えているのは、1980年代半ば、純ジャズ復古の時代に、新生ブルーノートがオーディションで発掘した20歳代前半のNY若手ミュージシャンによって結成された「Out of Blue(アウト・オブ・ブルー)」というスーパーグループ。このグループからは、有名どころとして、ケニー・ギャレット (Kenny Garrett) 、ラルフ・ピーターソン (Ralph Peterson Jr.) 、リニー・ロスネス (Renee Rosnes) を輩出している。

ARTEMIS『In Real Time』(写真左)。ちなみにパーソネルは、2023年5月のリリース。Ingrid Jensen (tp), Nicole Grover (ts), Alexa Tarantino (multi-reed), Renee Rosnes (p), Noriko Ueda (b), Allison Miller (ds)。現代ジャズの最高峰女性プレイヤーが集結したスーパー・グループ「アルテミス」の3年振りのアルバム。ブルーノート・レコードからの2作目になる。
 

Artemisin-real-time

 
音楽監督は、ピアニストのリニー・ロスネスが務める。ベースには、日本人女性ベーシストの上田典子が参加している。内容的には、現代の最先端を行く「ネオ・ハードバップ」もしくは「ネオ・モード・ジャズ」、いわゆるコンテンポラリーなメインストリーム・ジャズである。それぞれの演奏能力は非常に高く、様々な音楽要素へ柔軟に適応。これまでのジャズの様々な演奏スタイルやトレンドを包含して、新鮮でオリジナリティ溢れる「現代のモダン・ジャズ」の音を出していて見事。

それぞれのオリジナル曲も良い出来で、聴き応えは十分。ウェイン・ショーター作の「Penelope」、ライル・メイズ作の「Slink」のカヴァーもアルテミス自身の個性によってしっかり解釈された演奏で、とても新鮮に聴こえる。とにかく、演奏力は半端ない。そして、それぞれの楽器の音を良く聴き、適切な反応が素晴らしいインタープレイも見事。いやはや、とても良く出来た、現代の「ネオ・ハードバップ」もしくは「ネオ・モード・ジャズ」。

2020 年にデビューしたこのグループ「アルテミス」。今回は3年振りの録音となったみたいだが、これだけのコンテンポラリーで上質なジャズを表現出来るグループである。せっかくの企画、せっかくのスーパーグループである。もう少し短い頻度で、様々な企画盤を出し続けても良いと思うのだがどうだろう。こういうしっかりとした「音の志向」もったグループは稀少なので、僕はそれを期待したい。
 
 

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2023年5月26日 (金曜日)

ブルーノートの4200番台始め

ブルーノートの4200番台は、1965年から1969年までのリリース。ハードバップを基本として、聴き手のニーズに合わせた「ジャズ多様化」の時代は去り、1964年2月にビートルズが米国に上陸して以降、ロックやポップスが聴き手の心を掴む反面、その反動で、聴き手の「ジャズ離れ」が始まりだした時代に、4200番台は録音され、リリースされている。

ジャズ界の中では、フリー・ジャズ、アヴァンギャルド・ジャズが台頭し、一般の聴き手を置き去りに、公民権運動などとリンクして、政治色も濃厚だった時代で、1967年7月には、ジャズ界を牽引してきた一人、ジョン・コルトレーンが逝去し、スイング時代から綿々と進化してきたジャズが1つの「潮目」を迎えた時代でもある。

Stanley Turrentine『Joyride』(写真左)。1965年4月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Herbie Hancock (p), Kenny Burrell (g), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds)。バックに、オリヴァー・ネルソン率いるジャズ・オーケストラが付いている。ブルノートの4200番台の栄えある第一弾、4201番である。
 

Stanley-turrentinejoyride

 
ゴージャズなジャズ・オケ入りのムーディーな「ファンキー&ソウル・ジャズ」。アレンジは当時、一番モダンな、聴けば直ぐに判る、オリヴァー・ネルソン。ブルース感覚濃厚なジャズ・オケをバックに、これまた、こってこてブルージーでファンキーなタレンタインのテナーが、ちょっとライトにアーバンに吹き上げられる、ムード満点の「ファンキー&ソウル・ジャズ」。

面白いのは、ハービー・ハンコックのピアノが、当時お得意の「モーダルなピアノ」ではなく、デビュー当時に立ち返った様な「理知的なファンキー・ピアノ」をお洒落に弾いていること。タレンタインとバレルの「ファンクネス&ソウル」にしっかり合わせて、弾き分けている。ハービーのテクニックの豊かさ、引き出しの多さに、思わず感心する。

プロデューサーはまだ「アルフレッド・ライオン」。ブルーノートの総帥プロデューサー自ら、聴き手の心を掴むべく、ジャズ・オケがバックの、ややイージーリスニング・ジャズ志向のアルバムを指揮しているところに時代を感じる。しかし、そこはブルーノート、内容的にはとても良く出来たモ「ファンキー&ソウル・ジャズ」で、俗っぽいところ、手を抜いたところは全くありません。
 
 

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2023年5月25日 (木曜日)

ワシントン・ジュニアの『訪れ』

グローヴァー・ワシントンJr.(Grover Washington Jr.、以下「ワシントンJr.」と略)。スムース・ジャズの父、フュージョン・ジャズにおけるサックスの帝王。

そんなワシントンJr.が一番ポピュラーなアルバムをリリースしたのが「エレクトラ時代」。作品的には1979~1984年のリリース。「スムース・ジャズの父」と呼ばれるに相応しいアルバムを5作品リリースしているが、かの有名な『Winelight』もそんな中の一枚。

この『Winelight』だけが突出して扱われるので、ワシントンJr.は「一発屋」と誤解されることが多いが、どうして、エレクトラ時代の他の4枚も、スムース・ジャズの父」と呼ばれるに相応しいどれもが出来は上々。

Grover Washington Jr.『The Best Is Yet To Come』(写真)。邦題『訪れ』。1982年の作品。ちなみにパーソネルは、であるが、この作品、曲毎にパーソネルが異なるので、詳細は割愛する。主だったところをピックアップすると、Richard Tee (key), Eric Gale (g), Marcus Miller (b), Ralph MacDonald (perc) 等々、フュージョン畑の強者どもがしっかり参加している。

内容的には前々作の大ヒットアルバム『Winelight』の路線を踏襲している。ビル・ウィザースの名唱入りのヒット曲「Just the Two of Us(クリスタルの恋人たち)」に味を占めた訳では無いだろうが、このアルバム『訪れ』には、ボーカル入りの曲が3曲も入っている。
 

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メロウでグルーヴ、パティ・ラベルの名唱入りのタイトル曲「The Best Is Yet To Come」。ブラジリアン・スタイル、ボビー・マクファーリンの名唱入りの「Things Are Getting Better」。アーバンでソウルフルな雰囲気濃厚、セドリック・ナポレオンの名唱入りの「I'll Be With You」。

いずれのボーカル入り曲も、フュージョン・ジャズの「ツボ」を押さえていて、なかなかの出来。特に、バックの、フロント管、リズム・セクション含め、ソフト&メロウな「R&B志向」のパフォーマンスがとても心地良い。特にベース、ドラム、パーカッションがそこはかとなく効いている。

他のインスト曲は充実硬派なフュージョン・ジャズ。決して、イージーリスニングに流れない、ソフトにライトに、がっつりジャズ・ファンクしたパフォーマンスは見事。

ワシントンJr.は、相も変わらず、ソフィスティケイトされたサックス・ソロを聴かせる。トロピカル色豊かな、ソフト&メロウなフュージョン・チューン「More Than Meets The Eye」が特に良い感じ。

『Winelight』ばかりがクローズアップされるので、ちょっと地味な印象のアルバム『訪れ』であるが、ワシントンJr.をはじめ、フュージョン畑の名手達が腕によりをかけて、素晴らしいフュージョン・パフォーマンスを披露している。聴けば聴くほどに味わい深くなる好盤です。
 
 

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2023年5月24日 (水曜日)

フリー&モードのモンカーである

ブルーノートの4100番台は、1961年後半から1965年前半の録音がメイン。ハードバップが成熟し、ハードバップを基に、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなど、ジャズの多様化の時代の真っ只中でのアルバムリリースを行っているのだが、フリー・ジャズについてもしっかりカバーしているのはさすがである。

Grachan Moncur III『Evolution』(写真左)。1963年11月21日の録音。ブルーノートの4153番。ちなみにパーソネルは、Grachan Moncur III (tb), Lee Morgan (tp), Jackie McLean (as), Bobby Hutcherson (vib), Bob Cranshaw (b), Tony Williams (ds)。ブルーノート・レーベルのフリー&モード・ジャズ。グラチャン・モンカー3世の初リーダー作である。

グラチャン・モンカー3世は、1937年6月、NY生まれのトロンボーン奏者。ニューアークで育ち、1960年辺りから、プロのジャズマンとして活動を開始、基本的な演奏スタイルは、フリー&モード・ジャズとアヴァンギャルド・ジャズを得意とする。が、1970年代は健康上の問題と著作権紛争に悩まされ、1980年代以降は、アルバムの録音は殆ど途絶えている。

この盤は、グラチャン・モンカー3世の「限りなくフリーに近い、自由度の高いモード・ジャズ」を捉えた記録である。後のアヴァンギャルドなフリー・ジャズとは一線を画した、クールで理知的な、ほとんどフリー・ジャズに近いモーダルなパフォーマンスを展開している。
 

Grachan-moncur-iiievolution

 
しかも、彼の担当楽器はトロンボーン。トロンボーンの特性上、スライドを使っての速くてイレギュラーなフレーズを吹き回すのは大変な仕業だと思うのだが、モンカーは意外と検討していて、しっかりと吹き切っているのは立派。

フロントの相方には、リー・モーガンのトランペット、ジャキー・マクリーンのアルト・サックス。この二人については、ハードバップはもとより、「限りなくフリーに近い、自由度の高いモード・ジャズ」も得意の二人なので、モンカーのフロントの相方としては申し分無い。ピアノの代わりに入ったボビー・ハッチャーソンのヴァイブもアブストラクトの展開も難なくこなす。ドラムはフリー大好きなトニー・ウィリアムスだし、ベースもモーダルな展開を得意とするクランショウ。

メンバーの選定も、モンカーの得意とする「限りなくフリーに近い、自由度の高いモード・ジャズ」に、ばっちり応えるブルノート親派で固めて、駆け出しの初リーダー作だからといって、全く手を抜いていない、どころか、最高に近いメンバーを揃えているところは、さすが、ブルーノートの総帥ディレクター、アルフレッド・ライオンの成せる技である。

モンカーのトロンボーンも、トロンボーンという難度の高い楽器で、しっかりと「限りなくフリーに近い、自由度の高いモード・ジャズ」を展開し、バックの優れものメンバーに臆すること無く、当時のモンカーとしてなかなかのパフォーマンスを発揮している。モンカーは録音当時26歳。こういう将来有望な若手を発掘し、リーダー作の機会を与える。ここでも、さすがはブルーノートと感心してしまうのだ。
 
 

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2023年5月23日 (火曜日)

不思議なトロンボーンの企画盤

プレスティッジ・レーベルは、アルバムの編集方針が曖昧というか、気分次第でアルバム化している様で、同一セッションの演奏でも、切り売りして、あっちこっちのアルバムに雰囲気で入れたりして、1つのアルバムに複数のセッションが入っているなんてザラである。それぞれのジャズマンの力量や進化を推し量る上で、時系列で演奏が並んでいないのはちょっと困る。プレスティッジのアルバムを聴く時は、そのアルバムの「録音情報」は絶対に欠かせない。

J J Johnson, Kai Winding, Benny Green『Trombone By Three』(写真左)。 プレスティッジのPRLP 7023番。タイトル通り、3人のトンボーン奏者がリーダーを務めるセッションをそれぞれ収録している。異なるセッションを1つのアルバムに収録するという、プレスティッジの荒技なんだが、何故、この様なカップリングにしたのか判らない。が、3人それぞれのトロンボーンの特性を一気に比較出来て、それそれのトロンボーンの個性が良く判る。

まずは、J J Johnson(JJ・ジョンソン、以降、略して「JJ」)。1949年5月26日の録音。ちなみにパーソネルは、J J Johnson (tb), Kenny Dorham (tp), Sonny Rollins (ts), John Lewis (p), Leonard Gaskin (b), Max Roach (ds)。JJのトロンボーンとドーハムのトランペット、そして、ロリンズのテナーの3管フロント。リズム隊は、ピアノにジョン・ルイス、ベースのガスキン、ドラムにマックス・ローチ。収録された演奏曲は「Elysee」「Opus V」「Hilo」「Fox Hunt」。CDでの1〜4曲目になる。

続いて、Kai Winding(カイ・ウインディング、以降、略して「カイ」)。1949年8月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Kai Winding (tb), Brew Moore (ts), Gerry Mulligan (bs), George Wallington (p), Curly Russell (b), Roy Haynes (ds)。カイのトロンボーンとムーアのテナー、マリガンのバリサクの3管フロント。リズム隊は、ピアノにウォリントン、ベースにラッセル、ドラムにヘインズ。収録された演奏曲は「A Night On Bop Mountain」「Waterworks」「Broadway」「Sid's Bounce」CDでの7〜10曲目になる。

最後は、Benny Green(ベニー・グリーン、以降、略して「ベニグリ」)。1951年10月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), Eddie Davis, "Big Nick" (ts), Rudy Williams (bs), Teddy Brannon (p), Tommy Potter (b), Art Blakey (ds)。ベニグリのトロンボーン、デイヴィスのテナー、ウィリアムスのバリサクの3管フロント。リズム隊は、ピアノにブラノン、ベースにポッター、ドラムにブレイキー。収録された演奏曲は「Green Junction」「Flowing River」「Whirl-A-Licks」「Pennies From Heaven」。CDでの5,6,11,12曲目になる。
 

J-j-johnson-kai-winding-benny-greentromb  

 
録音年月日もバラバラ、録音は辛うじてNYでの録音だが、パーソネルは全て総替え。ただし、フロント3管+リズム・セクションのセクステット編成は3セッション共通。収録された演奏曲も平等に4曲ずつを収録。演奏編成と演奏曲が平等に割り当てられているので、不思議とアルバム全体で統一感がある。まるで、事前に周到に計画され実現した「3トロンボーンの比較盤」の様に聴こえるから、これまた不思議。

演奏編成が一緒なので、それぞれのトロンボーンの個性の比較がし易い。録音当時、1949年〜1951年は「ビ・バップ」の最終期であり、中間派と呼ばれるスイング・ジャズの発展形が流行していた時代。アレンジはシンプルで、フロント楽器のソロのスペースは平等に与えられておる。ビ・バップ、またはスイングのアレンジを基本的に踏襲しているので、アーティスティックな捻りは無い。トロンボーンのパフォーマンスに耳を傾けやすい演奏編成である。

ビ・バップ仕込みの切れ味の良い、テクニック確かなトロンボーンはJJ。バルブ・トロンボーンを駆使して、流麗なフレーズを吹き上げるカイ。そして、ゆったりとしたスイング・マナーで、ぼのぼのとしたトロンボーンが心地良いベニグリ。それぞれ4曲のみの収録だが、どの曲のトンボーン演奏も良好。個性豊かなトロンボーン3態である。

そして、それぞれ3セッションのサイドマンを見渡せば、当時のジャズ・シーンで活躍していた、錚々たるメンバーがバックを務めている。超有名どころとしては、トラペットのケニー・ドーハム、テナーのソニー・ロリンス、バリサクのジェリー・マリガン、ピアノのジョン・ルイス・ジョージ・ウォリントン、ドラムのマックス・ローチ・ロイ・ヘインズ・アート・ブレイキー等が名を連ねている。道理で、結構、ダイナミックで締まった演奏に仕上がっているのはその為か、と改めて感心する。

アルバムの編集方針もトロンボーン奏者のカップリングも、全く要領を得ない、プレスティッジの悪しき企画盤ではある。が、3人のトロンボーンのそれぞれの個性を楽しむことが出来ること。また、それぞれのセッションのサイドマンの演奏が好調で、それぞれ、ビ・バップ最後期、もしくは中間派の流行期のジャズ演奏として、意外と内容が充実していること。この2点から、このプレスティッジの不思議な企画盤は、意外とトロンボーンを楽しめる好盤として成立している。プレスティッジのアルバム編集方針の不思議である(笑)。
 
 
 
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2023年5月22日 (月曜日)

モブレー根明なモード・ジャズ

ハンク・モブレーのテナーも、その演奏志向のブレは無かった。もともと、こってこてのハードバップ。そして、モブレーのテナーの個性を活かしたモーダルなジャズへの変化。基本はモダン・ジャズの王道、ど真ん中を行くものだった。少なくとも、ポップなジャズ志向、ファンキー・ジャズやソウル・ジャズ、ジャズ・ロックに転身することは無かった。

Hank Mobley『A Caddy for Daddy』(写真左)。1965年12月18日の録音。ブルーノートの4230番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Curtis Fuller (tb), Lee Morgan (tp), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。

フロント3管は、ハードバップ初期から第一線で活躍してきた、ブルーノート・ファミリーなジャズマン3人、リーダーのモブレー、トランペットのモーガン、トロンボーンのフラー。バックのリズム・セクションは、新進気鋭のモード・ジャズが得意な若手トリオ。

冒頭のタイトル曲「A Caddy for Daddy」を聴くと、あれれ、と思う。リー・モーガンがやるようなジャズ・ロックな演奏。おお、遂にモブレーもポップなジャズ志向に舵を切ったか、と思うのだが、2曲目の「The Morning After」以降を聴くと、やっぱり、ポジティヴで根明なモード・ジャズで貫いている。

どうも冒頭のジャズ・ロックな「A Caddy for Daddy」は、ジュークボックスやラジオ用のシングル・カット対象の演奏だったのだろう。やっぱり、少しは売れないとブルーノートの屋台骨を支えられないからなあ。モブレーには似合わない様に感じるジャズ・ロックな演奏だが、意外と喜々と演奏しているモブレーが微笑ましい。やっぱり、モーガンとの相性が抜群なんだろうな。
 

Hank-mobleya-caddy-for-daddy

 
2曲目以降のポジティヴで根明なモード・ジャズは見事な演奏。というか、まず、曲が良い。モーダルなフレーズ展開を前提としたモブレーの書く曲がどれも良好。3曲目だけ、ウェイン・ショーター作の「Venus Di Mildew」なんだが、この盤の2曲目以降のモーダルな演奏についてはしっかりとした統一感があって、違和感が無い。逆に、1曲目のジャズ・ロックな演奏に違和感を感じる位だ。

プロデュースは、この盤ではまだ、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンが担当しているので、モダン・ジャズとして、硬派な内容はしっかりと維持されている。

モブレー&モーガンはバリバリとモーダルなフレーズを連発し迫力満点。意外だったのは、カーティス・フラーがモーダルなジャズに適応していること。フラーがモーダルなフレーズを吹きまくるなんて思いもしなかった。この盤ではトロンボーンの特性を活かした、音の拡がりと浮遊感を宿したモーダルなフレーズを連発している。

しかし、このジャケットはなあ。来たるべき、サイケデリックで、ラヴ&ピースな雰囲気濃厚のジャケ。タイポグラフィーは辛うじて往年のアーティスティック度を維持しているが、ここまでジャケット・デザインが俗っぽくなるとはなあ。

ジャケはとほほ、だが内容は充実。ブルーノート・レーベルにとって、モダン・ジャズにとって、苦しい時代に突入した時代の、それでいて、アーティスティックな「ブルーノート・ジャズ」としての矜持を維持した、傾聴に値する内容だと思う。
 
 

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2023年5月21日 (日曜日)

ドーハムは演奏志向にブレが無い

昨日から、ケニー・ドーハムのトランペットを愛でるべく、当ブログで扱っていないリーダー作を「落ち穂拾い」している。

いろいろリーダー作を聴いていて、意外とドーハムって、どの盤でも溌剌としたバップなトランペットを吹いているんやなあ〜、と改めて感心した。加えて、ドーハムって、「フレーズがちょっと危うい」ところ、滑らかにアドリブ・フレーズを吹き進めていくのだが、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」ところがあるのだが、これは、どのリーダー作にも頻度の多少はあるが、必ず入っている。

このドーハムの「フレーズがちょっと危うい」ところって、セッション毎に好不調があるのでは無く、押し並べて、ドーハムの個性として備わっている類のものなんだろう、と感じる。この部分が気になるかならないかで、ドーハムの評価は分かれるのだろう。

Kenny Dorham『Jazz Contemporary』(写真左)。1960年2月11–12日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Charles Davis (bs), Steve Kuhn (p), Jimmy Garrison (b, tracks 2, 3, 7, 8 & 10), Butch Warren (b, tracks 1, 4-6 & 9), Buddy Enlow (ds)。ベースは、11日の録音がジミー・ギャリソン、12日の録音がブッチー・ワーレンと分担している。

ジャケが、ちょっと胡散臭い「手抜きのモダン・アート」な感じなので、ブートか、と思ったりするが、Timeレーベルからリリースされたハードバップな好盤である。

しかし、ピアノには、当時22歳、新進気鋭の新しい感覚のモーダルなピアニストのスティーヴ・キューン、バリトン・サックス(略してバリサク)には、最初はペッパー・アダムスかと思ったが、響きがちょっと違う。この盤では、R&B志向でソウルフルなチャールズ・ディヴィスがアサインされている。
 

Kenny-dorhamjazz-contemporary

 
録音年は1960年。ハードバップが成熟、このハードバップを基本に様々な志向のモダン・ジャズが展開され始めた時代。この盤では、その「新しい響き」を、まず、スティーヴ・キューンのピアノがそれを担っている。

この盤、リーダーはドーハムで、基本は、こってこてのハードバップなので、キューンも神妙にハードバップなピアノで応じているのだが、和音の重ね方とかアドリブ・フレーズの展開が、どこかモーダルな響きがしているのだが、これがドーハムの中音域がメインの、ブルージーでファンキーなバップ・トランペットとの相性が殊の外良い。

そして、R&B志向でソウルフルなチャールズ・ディヴィスのバリサクがかなり目立つ。演奏全体の志向はハードバップだが、チャールズ・ディヴィスのバリサクは、ソウルフルでR&B志向の「ジャズ・ファンク」な響きが個性。水と油かな、と危惧したのだが、これがドーハムの中音域がメインの柔軟で流麗なバップ・トランペットとの「好対象」な響きで、フロント2管として、意外と魅力的な響きを醸し出している。

ベースも、コルトレーンの下でモーダルなベースをブイブイ弾きまくるギャリソン、そして、当時、新進気鋭のブッチー・ワーレンが担当しているが、この二人もリーダーのドーハムの志向に沿って、神妙にハードバップなベースで応じている。

パーソネルを見渡せば、筋金入りの「ビ・バップ」なトランペッター、ドーハムが、新進気鋭のメンバーに応じて、新しい響きのモーダルなジャズに挑戦しているのか、と思うのだが、どうして、従来の「こってこてなハードバップ」でガンガンやっている。

そういう意味で、この盤の演奏を聴いていて、ドーハムって、演奏志向について「ブレの無い」ジャズマンやったんやな、と再認識。当然、ドーハムは好調、「フレーズがちょっと危うい」ところは頻度は低い。この盤、ドーハムの代表作の1枚として良い、充実した内容のリーダー作だと思います。
 
 

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2023年5月20日 (土曜日)

ドーハムの初リーダー作です。

この季節の雨の日の午後、しとしと降る暖かい雨を見ながら、聴きたいなあ、と思うのが、ケニー・ドーハムの『静かなるケニー』。バップ仕込みの溌剌とした丸みのあるトランペットがベースのドーハム。シットリしたバラード演奏にも味があって、ついついしみじみと聴き入ってしまう。

で、ケニー・ドーハムのトランペットが無性に聴きたくなって、当ブログで扱っていないアルバムはあるのかしら、と物色して、なんと、ドーハムの初リーダー作については、まだ、当ブログで扱っていないことが判明。ということで、改めて、聴き直してみた。

『Kenny Dorham Quintet』(写真左)。1953年12月15日、Van Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jimmy Heath (sax), Walter Bishop Jr. (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。改めて、哀愁のバップ・トランペッター、ケニー・ドーハムの初リーダー作になる。ドーハムは録音当時は29歳。初リーダー作としては「遅咲き」である。

演奏内容としては、ビ・バップな演奏のそれぞれのパートが長くなった感じで、成熟したハードバップな演奏では無い。アレンジもビ・バップ時代の雰囲気濃厚。
 

Kenny-dorham-quintet

 
それでも、それはそれで「まずまずの出来」で、リーダーのドーハムのトランペットは溌剌としていて、しっかり吹き切っている。ドーハムのトランペットの特徴がしっかり記録されていて、音色は明朗で滑らか。テクニックもまずまず確か。

まあ、それでも、ドーハムの個性のひとつである「フレーズがちょっと危うい」ところ、滑らかにアドリブ・フレーズを吹き進めていくのだが、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」ところが、この初リーダー作でも見え隠れしているところは「ご愛嬌」。耳にすれば気になるが、もう今では、ドーハムやからなあ、と諦めて、拘らずに聴いている(笑)。

その弱点を凌駕して余りある「ビ・バップ仕込みの、中音域を活かした、溌剌として哀愁を帯びたファンクネス漂うフレーズ」がドーハムにはあるので、「よれる」もしくは「ふらつく」部分は許容出来る範囲。収録曲はオリジナル曲は1曲のみ。あとは、結構渋めのスタンダード曲とセロニアス・モンク曲。どの曲でもドーハムは溌剌とトランペットを吹き上げている。

CDリイシューの時、LP時代の未収録曲「I Love You(Take 2)」「Chicago Blues」「Lonesome Lover Blues」が入っているが、これはオミットした方が良いだろう。特に「Chicago Blues」「Lonesome Lover Blues」は、ドーハムのボーカル入りで、これが聴けたものでは無いのだ。僕はいつも飛ばしている(笑)。
 
 

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2023年5月19日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・262

ディヴ・リーブマンが元気そうでなにより。そんな思いを持てるような、リーブマンがここ5年ほどの間に、様々な演奏フォーマット&内容のリーダー作を結構な数、リリースしている。頼もしい限りである。

Dave Liebman『Trust and Honesty』(写真左)。2022年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Dave Liebman (ss, ts), Ben Monder (g), John Hébert (b)。リーダーのリーブマン、この盤ではピアノもドラムも使わないトリオ形式を選択している。ほとんど馴染みの無い編成での演奏なので、ついつい触手が伸びる。

なぜピアノもドラムも使わなかったか。この盤を聴けば直ぐに判る。この盤、全曲バラード曲で占められた企画盤なのだ。バラード曲をリーブマンがソプラノ&テナー・サックスで、心ゆくまで吹きまくる。

サックスだけがフロント楽器を務めるワンホーンであれば、リズムを刻むのはドラムよりギターの方が良い。ベースラインをしっかりと押さえる必要があるのでアコースティック・ベースは必須。
 

Dave-liebmantrust-and-honesty

 
ということで、今回は敢えてピアノとドラムはオミットして、心ゆくまでリーブマンが吹きまくり、そのリーブマンの奏でるフレーズだけを愛でる。それが狙いの演奏形態。これがスバリ大当たり。とても聴き応えのあるバラード曲集になっている。

リーブマンはサックスのバーチュオーゾの一人なので、バラード表現にも長けたものがある。「Stella By Starlight」や「Come Rain or Come Shine」「Lover Man」等の有名なスタンダード曲もさることながら、ちょっと玄人好みのスタンダード曲「Moon and Sand」「Bye Bye Blackbird」「Blue in Green」の出来が素晴らしい。リーブマンのバラード表現を堪能出来る。

バックのリズム隊、ギターのモンダーとベースのエベールは、実に息の合ったリズム&ビートで、リーブマンのサックスをサポートし、鼓舞し、引き立てる。サックスがワン・ホーンのバラード曲集での「ギター+ベース」の変則リズム隊は「絶対にアリ」と強く思わせる、説得力のあるリズム隊である。

ジョン・コルトレーンの『バラード(ballads)』、マイケル・ブレッカーの『ニアネス・オブ・ユー(Nearness Of You)』に比肩する、とても優れた内容のリーブマンのバラード集。後世における「名盤」候補。しみじみ聴ける好盤です。
 
 

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2023年5月18日 (木曜日)

レジェンドだけど「元気なロン」

1950年代のハードバップ期から、ずっと第一線で活躍してきたレジェンド級のベーシストについて、振り返って見ると、ほとんどが鬼籍に入ってしまっている。2020年辺りで、現役でプレイしているレジェンド級のベーシストは「ロン・カーター(Ron Carter)」しか見当たら無くなってしまったようだ。

Ron Carter『Foursight - The Complete Stockholm Tapes』(写真左)。2018年11月17日、ストックホルムのジャズクラブ「Fasching」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Jimmy Greene (ts), Renee Rosnes (p), Payton Crossley (ds)。テナー・サックスがフロント1管の、シンプルな「ワンホーン・カルテット」編成。

ロン・カーターは、このライヴ盤の録音時点で81歳。溌剌としたアコースティック・ベースを奏でていて素晴らしい。とても81歳とは思えないパフォーマンス。

ロンは、自身のリーダー作紐解くと、1960年代はリーダー作はドルフィー、マルとの『Where?』のみ。マイルスの下で「限りなくフリーなモード・ジャズ」を志向し、ベースの音は、いかにもモードな演奏に完全対応した様な、間と音の拡がりを活かしたもので、聴けば、これはロンのベースと直ぐ判るほどの個性溢れるベースだった。

しかし、1970年代、マイルスの下を去って独立すると、ほどなくCTIレーベルに移籍。フュージョン・ジャズをメインに活動を継続する。リーダー作の制作については、リーダーとして、ロンの志向するジャズをセッションで具現化する部分はまずまず良好な内容だったのだが、ロンのベースの音自体がいただけない。アンプで電気的に増幅し弦高の低いブヨンブヨンとゴムが伸びたように間延びした、しかも、ピッチが外れたベースの音で、聴くのが辛いリーダー作も多々あった。
 

Ron-carterfoursight-the-complete-stockho

 
1990年代、ブルーノート・レーベルに移籍して以降、ベースの効くに耐えない音が改善され、アコースティック・ベースの弦と胴の骨太な「鳴り」を活かした、ピッチのずれもかなり改善された、まずまずのベース音に修正されて、やっとまともに、ロンのリーダー作を鑑賞する気になった。誰かに指摘されたのかなあ、特に21世紀に入ってからは、安定して端正でロンの個性溢れるアコベで活躍している。

さて、このストックホルムでのライヴ盤に話を戻すと、ロンのベースの音は良好。演奏全体の志向は、過去のモード・ジャズを踏襲しつつ、新しいアレンジや響きを散りばめた「軽めのネオ・ハードバップ」な演奏になっている。大向こうを張ったハッとするような新鮮さはあまり感じられないが、絶対に過去のコピー、過去の焼き直しなモード・ジャズでは無い、どこか現代のモード・ジャズの響きをしっかり湛えた演奏は、意外と聴き応えがある。

他のメンバー、特に、これまたベテラン女流ピアニスト、リニー・ロスネスのパフォーマンスが充実している。そう、ロスネス、モーダルなピアノ、弾きまくりである。とっても溌剌として元気なパフォーマンスにはビックリ。往年のロスネスがここにいる。

サックスのジミー・グリーン、ドラムのペイトン・クロスリーも、あまり馴染みのあるジャズマンでは無いにしろ、当ライヴ盤でのパフォーマンスは大健闘だろう。良い雰囲気、良い感じでのパフォーマンスは聴き応えがある。

選曲も奇をてらわず、と言って、皆がとても知っている「どスタンダード曲」に依存することもなく、ロンの自作曲も交えて、ちょっと小粋なスタンダード曲をチョイスしているところも良い感じ。

現代の「軽めのネオ・ハードバップ」盤として、なかなかの内容の好盤です。録音当時、81歳のロンが元気にプレイしているところも好感度アップ。レジェンド級ジャズマンのリーダー作として、一聴の価値アリ、ですね。
 
 

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2023年5月17日 (水曜日)

聴いて楽しいソウル・ジャズ盤

ブルーノートの4100番台をカタログ番号順に聴き直しているのだが、この4100番台は演奏されるジャズについて、バリエーションが豊か。1962年から1965年までにリリースされたアルバム群なんだが、成熟したハードバップを起点にした「ジャズ多様化」の時代の傾向をもろに反映しているカタログには感心することしきり、である。しっかりと当時のジャズ演奏のトレンドを把握していて、それに見合った内容のアルバムをリリースする。さすがはブルーノート・レーベルである。

Stanley Turrentine『A Chip Off The Old Block』(写真左)。1963年10月14 & 21日の録音。ブルーノートの4150番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Blue Mitchell (tp), Tom McIntosh (tb, tracks 6 & 7), Charles Davis (bs, tracks 6 & 7), Shirley Scott (org), Earl May (b), Al Harewood (ds, tracks 1–5), Ben Dixon (ds, tracks 6 & 7)。

タレンタインのテナー、ミッチェルのトランペット、シャーリー・スコットのオルガン、アール・メイのベースは2セッション共通。1963年10月14日の録音(tracks 6 & 7)では、トロンボーンとバリトン・サックスが追加されてフロント4管、ドラムがベン・ディクソンが担当したセプテット編成。1963年10月21日の録音(tracks 1-5)では、タレンタインのテナー、ミッチェルのフロント2管のまま、ドラムだけがアル・ヘアウッドが担当したクインテット編成。
 

Stanley-turrentine-a-chip-off-the-old-bl

 
タレンタインは、ジャズ多様化の時代に「ポップスとしてのジャズ」を選択した様で、この盤では、ポップでライトなソウル・ジャズを気持ちよさそうに吹きまくっている。ライトでファンキーなスコットのオルガンも、そんな雰囲気にピッタリで、トランペットのミッチェルもそれの合わせて、ライトでファンキーな明るいトランペットで応じている。いわゆる「ライトで聴いて楽しいソウル・ジャズ」といった内容なのだ。

特に、タレンタインのテナー・サックスは、もともとは「こってこてのファンクネス滴る、思い切りジャジーで漆黒なテナー」だった。どこかオールド・スタイル風の「ディープなブルージーさ」も醸し出しながら、ブブブブ〜ッと重厚な漆黒テナーでブイブイ言わせていたんだが、この盤では「ライトでスッキリとした、ファンクネス香るソウルフルなテナー」に変化してきている。しかし、これが実に良い雰囲気なのだ。いわゆる「聴き手の立場に立った」聴いて楽しいソウル・ジャズで統一されている。

ファンキー・ジャズをポップにして、アーバンで明るいアレンジが施され、聴いて楽しいソウル・ジャズ。特にブルース・ナンバーとバラード・ナンバーの出来が良く、リーダーのタレンタインのテナーを筆頭に、参加メンバー、皆、好調でとても良いパフォーマンスを発揮している。タレンタインのポップな一面をクローズ・アップした、気楽に楽しめる好盤です。
 
 

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2023年5月16日 (火曜日)

硬派でモーダルなモブレー盤

ハンク・モブレーは、自身のリーダー作については、ほとんどが、ブルーノート・レーベルからリリースされている、いわゆる「ブルーノート専属」のテナー・マン。モブレーのパフォーマンの個性は、ブルーノートからリリースされたリーダー作を追うことで、しっかりと理解出来る。

Hank Mobley『No Room for Squares』(写真左)。1963年3月7日と1963年10月2日、2つの異なるセッションのカップリング。ブルーノートの4149番。アルバム・タイトルは「四角四面なヤツお断り」という意味。

ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Philly Joe Jones (ds), は2つのセッション共通。トランペットとピアノとベースが交代していて、1963年3月7日(#3 & 6)は、Donald Byrd (tp), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b)、1963年10月2日(# 1, 2, 4, 5, 7 & 8)は、Lee Morgan (tp), Andrew Hill (p), John Ore (b) が担当している。

録音年は1963年。ジャズはハードバップが成熟し、そのハードバップをベースとした「多様化」の時代に突入していた。ポップスとしてのジャズに追従した「ファンキー・ジャズ」「ソウル・ジャズ」、ジャズの芸術性を追求した「モード・ジャズ」「フリー・ジャズ」と、モダン・ジャズは両極端な演奏志向に二分されて、更なる進化をしていた時代である。

そこで、ハンク・モブレーである。モブレーは「ポップスとしてジャズ」を良しとしなかった様で、硬派にも「ジャズの芸術性を追求」する志向を突き進む。後にエレ・ジャズやジャズロックにも殆ど手を染めなかった様で、どうもモブレーは「硬派な志向のジャズマン」だった様な気がする。
 

Hank-mobley-no-room-for-squares

 
このアルバムも、2つのセッションに分かれているが、どちらも、こってこてのモード・ジャズである。2つのセッションに参加しているメンバーは、皆、モード・ジャズに精通しているメンバーばかりなので、これはこれで統一感があって良い。リーダーのモブレー自身、モーダルなテナーは得意中の得意なので、このアルバムのモブレーは堂々と思索溢れるフレーズを吹きまくっている。

1963年3月7日のセッション(#3 & 6)では、ハンコックが素晴らしい。こってこてモーダルなフレーズをガンガンに連発する。間の取り方といい、フレーズの拡げ方といい、絶妙としか言いようのない弾き回し。

1963年10月2日のセッションでは、モーガンのトランペットとモブレーのテナーの「モーダルなフロント2管」が格好良くって、モーガンもモブレーも、こってこてモーダルなフレーズをガンガンに吹きまくっている。しかし、モブレーのテナーって、モーガンのトランペットとの相性がとても良いよね。

タイトルの「四角四面なヤツお断り」というよりは「軟弱なヤツお断り」ってな感じの、筋金入りのモード・ジャズ盤。この盤を初めて聴いた時、モブレーがこんなに硬派な、こだわりのあるジャズマンだとは思わなかった。

偉大なるB級テナー・マンとか、ミドル級のテナー・マンとか、はたまた「バップ時代で最も過小評価されているミュージシャンの一人」(wikipediaより引用)とか、あまり芳しい評価が無いモブレーだが、モード・ジャズをガンガンに吹きまくるモブレーは無敵。モブレーはウェイン・ショーターに比肩する「こってこてモーダルなテナー・マン」と僕は解釈している。
 
 

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2023年5月15日 (月曜日)

ガッド・ギャング再び、である。

伝説のフュージョン・バンド「スタッフ(Stuff)」、ガッド率いるソウル・フュージョンなバンド「ガッド・ギャング(The Gadd Gang)」は、僕の大のお気に入りのクロスオーバー&フュージョン・ジャズ志向のバンドである。

スタッフとガッド・ギャングはメンバーが結構、重複していて、両バンド共通のメンバーは、ドラムのスティーヴ・ガッド、キーボードのリチャード・ティー、ギターのコーネル・デュプリーが共通。しかし、キーボードのティーとギターのデュプリーは他界してしまった。もはや、スタッフやガッド・ギャングのオリジナル・メンバーでの再結成は永遠に無い状態である。

しかし、スティーヴ・ガッドは今も元気である。今回、ガッド・ギャングのメンバーから、ベースのエディ・ゴメス、バリトン・サックスのロニー・キューバを、ゲストに、ギターのブルーノ・ミュラー、キーボードのボビー・スパークス、ジモン・オスレンダーを招いて、ガッド・ギャングの再現を実現した。

Steve Gadd, Eddie Gomez & Ronnie Cuber feat. WDR Big Band『Center Stage』(写真左)。2022年1月30日ー2月3日、ドイツのケルン「WDR Studio 4」での録音。

ちなみにパーソネルは、Steve Gadd (ds), Eddie Gomez (b), Ronnie Cube (bs), Bruno Mülle (g), Bobby Sparks II (Hammond B3, Rhodes), Simon Oslender (p, Hammond B3), Michael Abene (cond, arr), WDR Big Band。

伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」のレパートリーでもあった、スティーヴィー・ワンダーの「Signed, Sealed, Delivered」やボブ・ディランの「Watching the River Flow」、ガッド率いるソウル・フュージョンなバンド「ガッド・ギャング」のレパートリーから「I Can't Turn You Loose」「Che Ore So'」「Them Changes」「Way Back home」「Lucky 13」「Honky Tonk/I Can't Stop Loving You」「My Little Brother」等の懐かしの名曲を再演している。
 

Steve-gadd-eddie-gomez-ronnie-cuber-feat

 
「スタッフ」や「ガッド・ギャング」の従来のファンからすると、この盤の演奏内容は「堪らない」ものになっている。しかも、バックに、西部ドイツ放送「WDR」が運営する、現役バリバリのビッグバンド「WDR Bigband」(マイケル・アベネ指揮)がサポートに入っている。音的には、分厚く重厚なソウル・フュージョンな演奏になっていて、とにかく聴き応えがある。

もともと「スタッフ」も「ガッド・ギャング」も、バンドの音志向としては、ファンク、ソウル、R&Bの音要素を融合された「ソウル・フュージョンなサウンド」を個性としているのだが、今回、アレンジ良好な「WDR Bigband」のバッキングが、「ソウル・フュージョンなサウンド」の音の厚み、音のグルーヴ感、音のパンチ力に、とても有効に作用している。

ゲストのギターは、コーネル・デュプリーの様なファンクネス滴るソウルフルなエレギという訳にはいかないが、ブルーノ・ミュラーはシャープで軽めのファンクネスを纏ったギターで健闘。

ゲストのキーボードは、Hammond B3オルガン使いであるボビー・スパークスⅡ世、ジモン・オスレンダー、前者はローズ、後者はピアノも弾きこなす。両者共に、リチャード・ティーのこってこてファンキーでソウルフル濃厚なグルーヴ感溢れるキーボードという訳にはいかないが、スピード感溢れるグルーヴを醸し出すという点で健闘している。

ガッド・ギャングのメンバーの3人については、その演奏内容については、申し分無い。キューバのバリサクは、ソウルフルでグルーヴ感抜群なのは相変わらずだし、ガッドのドラム、ゴメスのベースによる「リズム隊」は、切れ味良くスインギーなリズム&ビートを叩きだし、極上のソウルフルなグルーヴを醸し出すは従来通り。まだまだ現役バリバリである。

良好な内容のソウル・フュージョンなアルバム。スタッフやガッド・ギャングの、ファンク、ソウル、R&Bの音要素を融合されたソウル・フュージョンなサウンドを踏襲して、「ガッド・ギャング再び」なサウンドを再演していて、聴いていてとても楽しい。

バックのWDR Bigband、ゲスト・ミュージシャン含めて、演奏のレベルは高く、演奏の雰囲気はスピード感良好でグルーヴィー。なかなか練られたアレンジが、この盤の演奏内容を、さらに一段、高めていて立派。現代フュージョン・ジャズの好盤だと思います。
 
 

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2023年5月14日 (日曜日)

硬派でアーシーなソウル・ジャズ

つい最近、1950年代から60年代のブルーノート・レーベルのカタログには、他のレーベルには見られない、「これ誰?」レベルのユニークなジャズマンのリーダー作がある、と書いたが、特に、4100番台には、そんなユニークなジャズマンのリーダー作が多い様な気がしている。

Don Wilkerson『Shoutin'』(写真左)。1963年7月29日の録音。ブルーノートの4145番。ちなみにパーソネルは、Don Wilkerson (ts), John Patton (org), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。

ソウル・ミュージック畑のサックス奏者、“テキサス・テナー”の雄、ドン・ウィルカーソンの、ブルーノートでのデビュー作『Preach Brother!』(BN4107番)に次ぐ、ブルーノートでの2作目。小難しいところは皆無。それでも、演奏内容としては、結構、高度な弾き回しもしていて、演奏のレベルは高い。

前作と同様、バックはブルーノート御用達のジャズメンで固めている。今回はピアノでは無く、ジョン・パットンのオルガンが入り、こってこてパッキパキのファンキー・ギターのグラント・グリーンは据え置きだが、ドラムがベン・ディクソンに代わっている。
 

Don-wilkersonshoutin

 
ダンサフルでアーシーな「踊れる」テナーのウィルカーソンの個性が、今回のオルガン入りギター・トリオの「こってこてファンキー」なリズム&ビートを受けて、より濃厚になっている。アーシーとファンキーは良い相互作用を起こすらしく、ファンキー・ジャズというよりは、ダンサフルなソウル・ジャズといった雰囲気になっている。

特にジョン・パットンのオルガンの参入が効いている。こってこてファンキーなうえに、スインギーなオルガンが、ウィルカーソンのアーシーなテナーを煽る煽る。ウィルカーソンはノリノリで、ダンサフルなフレーズを発散しまくる。

そして、意外とグリーンの「こってこてパッキパキ」のファンキー・ギターが、この盤の演奏全体の雰囲気に「ジャジー&ブルージー」な音付けをしていて、ソウルフルな雰囲気濃厚で、どこかR&B的な演奏に走りがちなところを、ジャズの範疇に軸足をしっかりとキープさせている。

とても「聴いて楽しい」ダンサフルなソウル・ジャズなんだが、さすがはブルーノート、ダンサフルなソウル・ジャズでも、ジャズとしての「アーティステック」な部分はしっかりキープしている。ブルーノートならではの「硬派でアーシーなソウル・ジャズ」盤ですね。
 
 

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2023年5月13日 (土曜日)

マクパーランドのピアノの個性

マリアン・マクパートランドは女性ジャズ・ピアニストのパイオニア。スイング期からビ・バップ期を始めとして今日まで、ジャズの歴史のほとんどをリアルタイムで活躍した本格派のジャズ・ピアニスト。また、ジャズ版 「徹子の部屋」みたいな感じのラジオ番組「The Mariian McPartlland Piiano Jazz radiio shows」の司会としても有名。

Marian McPartland & George Shearing『Great Britain's』(写真)。1曲目から4曲目まで1952年4月21日、5曲目から7曲目まで1952年12月22日の録音で、Marian McPartland (p) 。8, 11, 12, 14曲目が1947年12月23日、9, 10, 13, 15曲目が1947年2月3日の録音で、 George Shearing (p)。全てトリオの演奏。

まとめると、前半7曲がマクパーランドがピアノを担当、後半8曲がシアリングが担当している。タイトルが「偉大なる英国」。録音は全てNY。かなりやっつけのアルバム編集である(笑)。

しかし、この「やっつけ盤」を聴くと、マリアン・マクパーランドのピアノの個性が実に良く判る内容となっているから面白い。前半7曲がマクパーランドのピアノなんだが、弾きっぷりは見事なバップ・ピアノ。そこはかとなくロマンティシズム漂う耽美的な響きが特徴的。

バド・パウエルの様に、硬質なタッチでバリバリとダイナミックに弾きまくるのでは無く、端正なタッチでテクニックよろしく耽美的に弾きまくるのが、マクーパートランドのピアノ。そんな彼女独特の個性が良く判る。
 

Marian-mcpartland-george-shearinggreat-b

 
「オスカー・ピーターソンの女性版」と評されたこともあるマクパーランドのピアノであるが、このアルバムの弾きっぷりを聴いていると、思わず、なるほどなあ、と思う。とにかく上手い。速いフレーズも難なく弾きこなす。スイング感が半端ない。筋金入りの「バップ・ピアノ」である。

後半の8曲はジョージ・シアリングのピアノであるが、こちらは1947年の録音で、シアリングが「バップ・ピアノ」を弾いているのだが、米国のビ・バップを真似するのでは無く、アート・テイタムの弾きっぷりをベースに、欧州的な、ちょっとクラシック的な弾き回しを反映した、重厚な弾き回しになっている。

マクパーランドと比較すると、切れ味とスピード感はマクパーランドだが、ジャジーでブルージーなフレーズはシアリングに色濃い。マクパーランドの独特の個性は「ロマンティシズム漂う耽美的な響き」がそこはかとなく潜んでいるところ。逆に、シアリングは圧倒的にジャジーでブルージー。

タイトルの『Great Britain's』は、マクパーランドもシアリングも英国出身なので、このタイトルがついたのだろう。どういう意図でこういう企画盤に仕上げたのか、良く判らないアルバムだが、マクパーランドのピアノの個性がとても良く判る作りになっているのが、この盤の一番の価値だと僕は思う。
 
 

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2023年5月12日 (金曜日)

和クロスオーバーの好盤です。

この4〜5年の間に「和フュージョン」の名盤・好盤がリイシューされている。今までは、フュージョン・ブーム当時、売れた実績のあるアルバムのみがリイシューされてきたきらいがあるが、この4〜5年の間のリイシューはちょっと様相が違う。

フュージョン・ブームの時、確かにリリースされているが、内容的にマニア好み、若しくはレコード会社が販売に力を入なかった、そんな理由で、あまり売れること無く、ひっそりと廃盤になっていった「和クロスオーバー」「和フュージョン」の名盤・好盤がリイシューされているのだ。

我々、フュージョン・ジャズ者からすると、とても嬉しい、とても懐かしいリイシューである。いいぞ、どんどん出してくれ、と心の中で叫びながら、せっせとそんなアルバム達を聴き直している。

山岸潤史『Really?! - ほんまか』(写真左)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、鳴瀬喜博, 小原礼, 田中章弘 (b), 村上"ポンタ"秀一, ジョニー吉長, 上原裕 (ds), 国府輝幸, 難波弘之, 緒方泰男 (key), ペッカー, マック清水 (perc), 金子マリ, 亀淵友香, 上村かをる (chorus) 等。ホーン・セクションはスペクトラム。ゲストにGary Boyle (g)。特にバックスバニーのメンバーはギター以外、全員参加である。

現在ニューオーリンズに拠点を移し活動中の日本人ギタリスト、山岸潤史の初リーダー作。曲者揃いのパーソネル。音的には、フュージョン・ジャズというよりは、クロスオーバー・ジャズがピッタリ合う。
 

Really

 
ギタリストの山岸潤史。1953年6月生まれ。今年で70歳。もともとは、渋い和ロックのブルース・バンド「ウエスト・ロード・ブルース・バンド」のギタリストでデビュー。当時は「日本のジミ・ヘン」と形容されたアグレッシヴでブルージーなエレギでその名を馳せた。その後、ソウル・バンドのソー・バッド・レビューに加入。その後、ソロとして、この『リアリー?!』をリリースしている。

この盤での山岸のエレギは、まだブルース・ロックに軸足を残しているようで、ゲストのゲイリー・ボイルのジャジーなエレギに、山岸はブルース・ベースのフレーズで応対している。これがなかなかスリリングで、なかなかにユニーク。ジャズ・ギターとブルース・ギターとの融合。クロスオーバー・ジャズと形容するのが一番落ち着く。

僕は山岸のエレギについては、ウエスト・ロード・ブルース・バンドのデビュー作『Blues Power』で知った。日本人でも、こんなブルース・ギターがギンギンに弾けるんや、とビックリするやら、頼もしく思うやら。

そんな山岸のブルース・エレギが大活躍しているのが、この『リアリー?!』。ブルース・エレギを基調としながら、ファンクなフレーズも醸し出していて、アルバム全体の雰囲気は「クロスオーバー・ファンク・ロック」でしょうか。ギターインストのファンク・ミュージック、そのオフビートの音世界が、どこかジャズにつながっている。そんな感じかな。

いやはや、とにかく、思いっ切り「懐かしい」、和クロスオーバーなアルバムがリイシューされたもんです。ジャケットもとてもユニークで印象的。タイトルの『リアリー?!』は、ライナーには「ほんまか?!」と振り仮名がある。この「ほんまか?!」の方が、山岸のソロ・アルバムらしいネーミングですね。
 
 

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2023年5月11日 (木曜日)

特別にユニークなサックス奏者

1950年代から60年代のブルーノート・レーベルのカタログには、他のレーベルには見られない、「これ誰?」レベルのユニークなジャズマンのリーダー作がある。

ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンが、いろいろな人から紹介を受け、自分の耳で確認して、これは、というジャズマンに声をかけてリーダー作を作らせる。誰でも良い訳では無い。「ライオンの考えるジャズ」の吟線に響いて、ライオンが「モダンでクールなジャズだ」と思うジャズマンの演奏だけがチョイスされる。

これが、振り返ってみると、1950年代から60年代のジャズの「隙間を埋める」役割をしているのだ。有名盤が奏でるジャズばかりが「モダン・ジャズ」では無い。この「ライオンの考えるジャズ」のマイナーなジャズマンのパフォーマンスも、当時の「モダン・ジャズ」の一部なのだ。

つまり、ジャズは意外と、バリエーションが豊かで裾野が広く、奥深い音楽ジャンルだと言うことを、1950年代から60年代のブルーノート・レーベルのカタログは教えてくれる。

George Braith『Two Souls In One』(写真左)。1963年9月4日の録音。ブルーノートの4148番。ちなみにパーソネルは、George Braith (ss, stritch), Billy Gardner (org), Grant Green (g), Donald Bailey (ds)。ギター入りオルガン・トリオをバックに、ユニークなリード奏者、ジョージ・ブレイスがフロント1管のカルテット編成。
 

George-braithtwo-souls-in-one

 
ジョージ・ブレイスは、NY出身のソウル・ジャズ・サックス奏者。1939年6月生まれなので、今年で84歳。初リーダー作が1963年だから、今年で60年間の間にリーダー作が12枚なので、寡作ではある。

ブレイスの一番の特徴は「ローランド・カークが開発したテクニックで、循環呼吸を活用して、一度に複数の管楽器を演奏する」ところ。この盤では、ブレイスはソプラノとストリッチを同時に吹いている。これがユニークというか、僕はこれを面白く、興味深く聴ける。まあ、好き嫌いはあるとは思う。

この循環呼吸を活用したソプラノ・サックスとストリッチの2本を同時に吹いて、ユニゾン&ハーモニーを奏でる。その奏でるフレーズが、ソウル、ラテン、カリプソ。小難しい速いフレーズは全く無く、旋律がハッキリ判るシンプルでユッタリしたフレーズで攻めるので、管の2本同時吹奏の音の個性が良い方向に作用している。

そして、この盤の聴き応え支えているのが、ビリー・ガードナーのオルガンとグラント・グリーンのギター。この二人の気合いの入った弾き回しが凄い。ちょっとユッタリのんびりしたブライスのフレーズをがっちりサポートして、アルバムの演奏全体を引き締めている。

ユニークな内容のアルバムです。硬派なジャズ者の方々、綺麗なユニゾン&ハーモニーの愛好家の方々からは、もしかしたら、ブレイスのフレーズは許しがたいか、とも思います。が、かなり巧妙な音の重ね方で、とてもジャジーでブルージーなのでは、とも思います。アルバム全体の出来としては、なかなかのソウル・ジャズ盤だと僕は評価してます。
 
 

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2023年5月10日 (水曜日)

最後のブルーノートのスミス盤

ジャズ・オルガンと言えば、まずは「ジミー・スミス(Jimmy Smith)」である。オルガンをジャズのメイン楽器として定着させ、ジャズ・オルガンの音色・奏法・テクニックの基準・標準を確立させたレジェンド・ジャズマン。ジャズ・オルガンの開祖は、このジミー・スミスであり、ジャズ・オルガンの「最初の基準」である。

ジミー・スミスは、マイルスに紹介され、ブルーノートの総帥ディレクター、アルフレッド・ライオンに見出され、ブルーノートからアルバム・デビューしている。1956年の初リーダー作以来、ブルーノート一本槍。

1962年、さらなる好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくことを、ライオンは一切止めることは無く、喜んで送り出したくらいだそう。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音を残していった。

Jimmy Smith『Rockin' the Boat』(写真左)。1963年2月7日の録音。ブルーノートの4141番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Lou Donaldson (as), Quentin Warren (g), Donald Bailey (ds), "Big" John Patton (tambourine, tracks 2, 3 & 6)。録音日から見て、この盤は、大手レーベル・ヴァーヴに移籍する直前、ブルーノート契約配下での「最後の録音」の1つになる。

 
Jimmy-smithrockin-the-boat

 
寛いだファンキーなオルガン・ジャズ。ギターのクエンティン・ウォーレン、ドラムのドナルド・ベイリーは、昔から馴染みのリズム隊。このトリオ演奏だと「またか」的な、ちょっと飽きだぞ、という印象になるが、この盤はそうはならない。ゲスト参加的位置づけのフロント1管、ルーさんのアルト・サックスが良いアクセントになっている。

ルーさんのアルト・サックスは、ファンキーで「ネアカ」でブリリアントで溌剌とした音色なので、ジミー・スミスのオルガンの音に負けることは無い。ジミー・スミスは、フロント管がいる場合、フロント管を鼓舞しサポートする役回りに積極的に対応するので、フロント管不在の時の弾きすぎる、攻撃的なオルガンは程良く押さえられて、とっても趣味の良い、リラックスして楽しげにオルガンを弾くジミー・スミスが聴ける。

ゴスペル、C&W、R&B、ブルース、ソウル、カリプソの要素を取り込んだ、ファンキーなオルガン・ジャズが聴いていて楽しい。時代は「ジャズ多様化の時代」。ジミー・スミスとアルフレッド・ライオンは、この盤では「娯楽音楽としてのファンキー・ジャズ」を追求し、ものにしている。

どう転んでも「売れる」盤としたかったのではないか、と睨んでいる。この時期、一連のブルーノートでの録音を残して、ジミー・スミスはヴァーヴに移籍する。この盤に収録された音源は、ジミー・スミスのブルーノートに対する「感謝の置き土産」である。 
 
 

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2023年5月 9日 (火曜日)

現代トロンボーン盤の優秀盤

毎月、ジャズの新盤については、まめにチェックしている。そんな新盤の中で、Smoke Sessions Recordsは、コンスタントに良い内容のアルバムをリリースしていて、常々、感心している。

我が国にはその名がなかなか伝わってこない、実績のある中堅〜ベテランのジャズマンをリーダーにしたアルバムをメインにリリースしている。が、その内容は「昔の名前で出ています」的な旧来のハードバップな演奏を懐メロ風にやるのでは無く、しっかりと現在の「ネオ・ハードバップ」な演奏に果敢に取り組んでいて頼もしい。

Steve Davis『Bluesthetic』(写真左)。2022年2月8日、NYの「Seer Sound Studio C」での録音。Smoke Sessions Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Steve Davis (tb), Peter Bernstein (g), Steve Nelson (vib), Geoffrey Keezer (p), Christian McBride (b), Willie Jones III (ds)。トロンボーン奏者、スティーヴ・デイヴィスがリーダーの、ギター、ヴァイブ入りのセクステット編成。

リーダーのスティーヴ・デイヴィス(Steve Davis)は、1967年4月生まれ。今年で56歳。米国出身のジャズ・トロンボーン奏者。僕は、この人の名前をどこかで見たことがある、と思って調べたら「1989年にジャズ・メッセンジャーズに参加した」とある。

そうそう、ジャズ・メッセンジャーズにいたのね。思い出しました。そうそう、ワンフォーオールのメンバーでもあったのも、思い出しました。初リーダー作が1994年。これまでにリーダー作は20枚程度と、1.5年に1枚程度、コンスタントにリリースしているのも立派。

もともとトロンボーンという楽器の性格上、フロント管の一翼を担っているとは言え、ソロの「映え方」は、トランペットやサックスに比べると、どうしても劣る。速いフレーズが得意でないこと、ハイトーンが出ないこと、しかし、丸みのあるホンワカした独特の音色はトロンボーンならではのもので、一旦、填まると癖になる。
 

Steve-davisbluesthetic_20230509212701

 
この盤は、そんなトロンボーンをフロント管に「1管」としている潔さ。トロンボーンのワンホーン盤は、僕はあまり知らない。トロンボーンについては、先ほど上げた楽器の性格上の問題があるので、トランペットやサックスを加えて、主旋律のユニゾン&ハーモニーをクッキリ浮かび出させる工夫をするのだが、この盤ではそれはしない。トロンボーンの「聴かせる」テクニックがポイントになる。

そういう点では、この盤でのスティーヴ・デイヴィスは素晴らしいパフォーマンスで、フロント1管を吹き切っている。まず、テクニックが素晴らしい。ある程度の速いフレーズをしっかり吹き切り、様々なニュアンスの音色を吹き分け、切れ味の良い躍動感溢れる吹き回し。トロンボーンだけで、管楽器が請け負うニュアンスのフレーズを全て出し揃えている。ほんと上手い。

そんな優れたトロンボーンを引き立てる様に、ギターとヴァイブがしっかりと絡む。優れたスティーヴ・デイヴィスのトロンボーンを更に前面に押し出し、印象的に引き立たせる、そんな役割を持ったギターとヴァイブのブッキングが、この盤の成功の一番の仕掛けだろう。アレンジも優れているが、ギターとヴァイブをフロント・バックに据えることで、こんなにトロンボーンの音色が引き立つとは思わなかった。

バックのリズム・セクションも良好。ジェフ・キーザーのピアノがとりわけ良好で、印象的なフレーズをバンバン弾き回している。ベースのマクブライドは、フロント管が丸みのあるホンワカした独特の音色のトロンボーンなので、ブンブン、しなりのある重厚なベースラインはやらない。トロンボーンの音色を損なわない、優しくクッキリとしたウォーキング・ベースでしっかりと支える。これには感心することしきり、である。

トロンボーンがメインのネオ・ハードバップ盤として、白眉の出来です。久し振りに、爽快で心地良いジャズ・トロンボーンを聴かせて貰いました。現代ジャズにおけるトロンボーンがメインの優秀盤の1枚として良い内容だと思います。
 
 

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2023年5月 8日 (月曜日)

マントラの50周年記念アルバム

ジャズの世界でも、ピンのボーカルは数あれど、ボーカルのグループは「稀少」。ピンであれば、何もかもが「自分次第」なので、何かとやり易いのだが、グループの場合、メンバー同士の声質の相性が良くないといけないそ、そのグループの個性を活かした高度なアレンジが必要で、意外とグループの結成〜運営の難度が高いのが原因だと睨んでいる。

The Manhattan Transfer with the WDR Funkhausorchester『Fifty』(写真左)。2022年9月のリリース。唯一無二のジャズ・コーラス・グループ、マンハッタン・トランスファー(略して「マントラ」)の50周年記念アルバム。ドイツのケルン放送管弦楽団との共演盤である。

マントラの現メンバーは、Alan Paul, Janis Siegel, Cheryl Bentyne, Trist Curless の4人。グループの創設者でありリーダーであった Tim Hauser が、2014年10月16日、72歳で逝去。交代メンバーとして、Trist Curless が加入して、現在も、結成時どおり、4人のコーラス・グループとして活動している。

そんなマントラも結成50周年。僕は、1975年リリースの『The Manhattan Transfer(マンハッタン・トランスファー・デビュー!)』からリアルタイムで聴き続けてきたので、それでも48年になる。リーダーのティム・ハウザーが亡くなった時には、マントラも解散やろなあ、と残念に思ったのだが、トリスト・カーレスを交代メンバーとして迎えて、活動を継続したのには、心底、心強く思ったものだ。

この盤は、キャリア50年間の中でのマントラ自身のヒット曲の数々を、ドイツのケルン放送管弦楽団と共演して再録音した「マントラ with ストリングス」。


The-manhattan-transfer-with-the-wdr-funk

 
with ストリングス作品は、まずアレンジが一番の「キモ」。アレンジが陳腐だとイージーリスニングな軽音楽風に成り下がって、聴くに耐えない状態に陥る。が、この盤ではヴィンス・メンドーザ等の優秀なオーケストラ・アレンジャーが腕を振るっていて、マントラの個性を損なうこと無く、コンテンポラリー・ジャズな雰囲気をしっかり維持した内容になっている。

加えて、バックがストリングスなりのボーカル・アレンジも必要になるのだが、これも、アマンダ・テイラー等のヴォーカル・アレンジャーが腕を振るっていて、マントラのボーカル&コーラスの個性、アーバンで小粋でどこかコケティッシュな雰囲気、独特のコーラスの重ね方とフレーズの取り回し、それらを十分に活かした、ちょっと聴くだけで「マントラ」と判るボーカル・アレンジは素晴らしいものがある。

マントラのボーカル&コーラス自体は全く変わりなく、卓越したチームワーク&歌唱力で唄いまくる。その統率&規律がとれた一糸乱れの無いコーラス・ワークは圧倒的。そんなボーカル&コーラスが、ストリングスの力で、更に魅力を引き立たせ、この個性を前面に押し出し浮き出した、今までのマントラ盤に無い魅力が詰まった好盤である。

この盤の魅力って、マントラとして初録音となる、ジョージ&アイラ・ガーシュウィン作の有名スタンダート曲「The Man I Love」を聴けば良く判るかと思う。この歌唱はマントラとして最高の部類に入るのでは無いか、と思っている。

マントラ健在。そんな気持ちを強く持った傑作盤。しかし、2022年暮れから2023年にかけて「ファイナル・ワールド・ツアー」を敢行することがアナウンスされている。マントラも「レジェンド」の域に達したのか、と感慨深く思ったり残念にも思ったり。それだけ、唯一無二の稀少なジャズ・ボーカル・グループなんですよね、マントラって。
 
 

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2023年5月 7日 (日曜日)

テイラー良好、リズム隊が平凡

プレスティッジ・レーベル(Prestige Label)は、 1949 年、ニューヨークでボブ・ウェインストック(Bob Weinstock)によって設立されたジャズ・レーベル。モダン・ジャズ全盛期を記録したハードバップの宝庫であるが、その内容は、録音姿勢の問題もあって、玉石混交とている。

売れそうなジャズマン、暇そうなジャズマンをパッと集めて、殆どまともなリハーサル無しにパッと録音させる。そして、録音した音源は大した理由も無く、複数のアルバムに分断されることが多く、セッションとしての統一感に欠ける盤が多い。それでも、ハードバップ全盛期の録音なので、ジャズマンの力量は並外れていて、場当たり的なセッションでも、当たればその内容は素晴らしいものになっていた。故に、モダン・ジャズの名盤も多く存在する。

Billy Taylor『A Touch of Taylor』(写真左)。1955年4月10日、Van Gelder Studioでの録音。プレスティッジのPRLP 7001番。ちなみにパーソネルは、Billy Taylor (p), Earl May (b), Percy Brice (ds)。知性派バップ・ピアニスト、ビリー・テイラーがリーダー、アール・メイ、パーシー・ブライスとの、当時のレギュラー・トリオによる録音。ハードバップ名盤の宝庫であるプレスティッジの7000シリーズ(12"LP)第一弾。以前、一度、当ブログで扱っているが、今の耳で聴いた印象が当時と変わっているので再掲である。

ビリー・テイラーは、ディジー・ガレスピーやリー・コーニッツのグループで活躍、DJやテレビ番組の司会にも活躍、ジャズ・ピアノのみならず、多彩な活躍をした知性派ピアニスト。高等教育を受け、ダウンビート誌に寄稿したり、ロングアイランド大学で教鞭をとったり、エール大学のデューク・エリントン特別研究員でもあったり。アメリカ国内では、「Dr. Taylor(テイラー博士)」と呼ばれている。
 

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我が国では全く人気が無く、米国ですら「過小評価されている最たるジャズメンの一人」などという評価に甘んじている。それでも、リーダー作は結構な数を出している、という不思議なジャズ・ピアニストである。

このトリオ盤を聴くと、左手のブロックコード、右手のシングルトーンが個性。テクニックは上等、小気味好く端正でリリカルな弾き回し。でも、歌心溢れるバラードな展開や上品で端正なインテリジェンス溢れる展開は一目置ける個性。

我が国のベテラン・ジャズ者の方々が、ジャズに求める「崩れた魅力」は皆無で、耽美的でリリカルな弾き回しや、黒いファンクネス溢れる弾き回しとは無縁。どうも、この辺が、我が国で受けの悪いところなんだろう。

それでも、今の耳で聴くと、テイラーのピアノは意外と内容充実で聴き応えがある。どうも、この盤の物足りない点は、無名に近いベースとドラムのリズム隊にあるのだろう。聴いていて破綻は無いのだが、意外と平凡で単調。このリズム隊が充実しておれば、この盤、意外と名盤扱いされてたのでは無いか、と感じる。

この辺が、プレスティッジ・レーベルの残念なところで、ブルーノート・レーベルに比べて、プロデュース力に問題がある。ビリー・テイラーのピアノは申し分無い。このテイラーのピアノの個性を活かしきれない、リズム隊のブッキングがこの盤に最大の弱点だろう。実に惜しいプレスティッジ・レーベルの7000シリーズ(12"LP)第一弾である。
 
 

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2023年5月 6日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・261

「小粋なジャズ盤」の探索は続く。手持ちの音源をザッと見直しながら、小粋なジャズか否か、の取捨選択を繰り返しつつ、こんな盤あったんや、と聴いたはずだが、内容を忘れてしまった盤については、しっかり聴き直しつつ、「小粋なジャズ盤」の探索を続けている。

Joey Baron『Down Home』(写真左)。1997年の録音。ちなみにパーソネルは、Joey Baron (ds), Arthur Blythe (as), Bill Frisell (g), Ron Carter (b)。1955年、米国リッチモンド生まれのドラマー、ジョーイ・バロンがリーダーのカルテット編成。豪快なトーンと強烈な個性的アルト・サックスのブライスと、変則チックな自由で捻れたギターのフリゼールがメンバーに入っている。

このパーソネルだと、さぞかし捻れて限りなくフリーな即興インタープレイを想起するのだが、これがまあ、至極オーソドックスな、メンインストリーム志向の純ジャズを展開しているから面白い。当然、過去のハードバップの焼き直しでは無く、新しい響きを宿した、ネオ・ハードバップ志向のファンキー・ジャズがメイン。
 

Joey-barondown-home

 
スインギーな展開から、ファンクネス濃厚な展開、そして、浮遊感溢れるニュー・ジャズ的な展開まで、現代の「ネオ・ハードバップ」の走りのような展開のジャズが繰り広げられている。過去のハードバップやモード・ジャズの焼き直しでは全く無いところがこの盤の個性的なところ。リーダーでドラマーのバロンの志向がもろに反映されているのだろう。全く趣味の良いメインストリーム・ジャズである。

豪快トーンと限りなく自由度の高いモーダルなアルト・サックスのブライスと、変態チックに捻れるギターのフリゼールが、オーソドックスでハードバップ志向のパフォーマンスが面白い。さすが、ところどころに個性的で新鮮な響きやフレーズを織り込みながら、オーソドックスな展開でグイグイ攻める。アンサンブルもインタープレイも、なかなか締まった展開で聴き応えがある。

アバンギャルド・ジャズの中核ジャズマン、ジョン・ゾーンとの共演がメインだったジョーイ・バロンが、この盤では、一転、メンインストリーム志向の純ジャズなドラミングを披露しているのがとても興味深い。録音年は1997年。21世紀以降にジャズの演奏トレンドの1つとなる「ネオ・ハードバップ」の先駆けの様な内容は、聴いていてなかなか楽しめる。
 
 

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2023年5月 5日 (金曜日)

懐かしの『Grand Cross』です

最近、Electric Birdレーベルのアルバムを漁っては聴いている。1970年代後半にキングレコードが立ち上げた、純国産のフュージョン専門レーベル。目標は「世界に通用するフュージョン・レーベル」。ちょうど、フュージョン・ブームのピークに近い時期に立ち上げられたレーベルで、リアルタイムで聴いてきたフュージョン者の我々としては、とっても懐かしいレーベルである。

David Matthews『Grand Cross』(写真)。1981年の作品。Electric Birdレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、David Matthews (el-p, arr), Michael Brecker (ts), David Sanborn (as), Randy Brecker (tp, flh), John Tropea, Larry Carlton (el-g), Cliff Carter (el-p. syn), Marcus Miller (b), Steve Gadd (ds), Sammy Figueroa (perc)。プロデューサーも、デイヴィッド・マシューズが担当している。当時のフュージョン畑の一流ミュージシャンが一堂に会したオールスター・セッションの様な内容。

冒頭のタイトル曲「Grand Cross」のイントロから凄い。一糸乱れぬ、スピード感溢れる、高テクニックなユニゾン&ハーモニー。そして、アドリブ展開部に入って、疾走感溢れる切れ味の良い、サンボーンのアルト、マイケル・ブレッカーのテナー、そして、ランディ・ブレッカーのトランペット。ファンクネス度濃厚なジャズ・ファンク。う〜む、これは「ブレッカー・ブラザース」の音。否、ブレッカー・ブラザースより重厚で爽快。

そして、マーカス・ミラーのベース、ガッドのドラムの重量級リズム隊がガンガンに、ファンキーなリズム&ビートを供給する。この冒頭の1曲だけでも、この盤は楽しめる。こんなに濃密な内容のジャズ・ファンクは、そうそう聴くことは出来ない。マシューズのプロデュース、恐るべし、である。マシューズのキーボードもファンク度が高い。
 

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この盤、レゲエ〜ラテン〜アフロなフュージョン・サウンドが楽しいのだが、特に、レゲエを基調とした楽曲が3曲ほどあって、これが良いアレンジ、良い演奏で楽しめる。当時、流行のビート「レゲエ」。

2拍子のユッタリしたレゲエのオフビートは、演奏力が低いと冗長、冗漫になって、間延びした聴くに堪えない演奏になったりするのだが、さすがにこの当時のフュージョン畑の一流ミュージシャン面々、絶対にそうはならないところが凄い。特に、リアルタイムでこの盤を聴いていた僕達にとっては、このレゲエ調の楽曲って馴染みが深くて懐かしい。

カールトンとトロペイのエレギが良い音を出している。特に、レゲエ調の曲でのカッティングや、ジャズ・ファンク調の曲でのファンクネス溢れるソロなど、惚れ惚れする。カールトンもトロペイもフレーズを聴けば、すぐにそれと判る個性的な弾きっぷりで勝負しているところが実に高感度アップである。ほんと良い音だすよね。

デヴィッド・マシューズのアレンジ優秀、プロデュース優秀。これだけのメンバーを集めて、単なるオールスター・セッションにならずに、演奏の志向をきっちり共有化して、まるでパーマネント・グループの様なサウンド志向の統一感と演奏の一体感が発揮しているのは、やはりマシューズの統率力の「たまもの」だろう。

和製のフュージョン・ジャズとしての優秀盤、エレクトリック・バードの代表盤として、この盤は外せない。とにかく「痛快」な内容である。
 
 

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2023年5月 2日 (火曜日)

1960年代スタイルのジャマル

1950年代のジャマルは「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴だった。1958年録音の名盤『But Not for Me』が、その特徴を最大限に活かしたライヴ盤で、特に日本人ジャズ者の「心の吟線」にいたく触れるらしく、大人気の名盤である。

Ahmad Jamal『Happy Moods』(写真左)。1960年1月20–21日、シカゴでの録音。Argoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。1958年の名盤『But Not for Me』以来の「鉄壁のトリオ」での録音になる。

以前、当ブログで、1961年11月のライヴ盤『Ahmad Jamal at the Blackhawk』についての記事(2022年8月14日のブログ・左をクリック)をアップしたが、今回のスタジオ録音盤はその2年弱前の1960年1月の録音。トリオ演奏のスタイルは「シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた奏法」である。

音数は少ない傾向はそのままなのだが、メリハリを付けたファンキーな弾き回しに変わっている。1958年の『But Not for Me』は、音数少なくラウンジ風の「侘びさび」の効いた小粋な弾き回しだったが、その2年後、この『Happy Moods』では、ダイナミックな強いタッチが目立った、ちょっと五月蠅いくらいの弾き回しに変わっている。
 

Ahmad-jamalhappy-moods

 
トリオのメンバー構成は、1958年録音の名盤『But Not for Me』から代わっていないので、トリオ演奏として、演奏のスタイルと明確に変えていることになる。トリオのメンバーが代わって、その影響で演奏スタイルが変わったのでは無い。

この『Happy Moods』でも、弾く音を厳選した、音数の少ないフレーズはキープされているが、とにかく、ダイナミックなタッチでメリハリが強く付いていて、賑やかな雰囲気になっている。

加えて、ファンキーなフレーズが見え隠れするようになり、この「1960年代のジャマル」のスタイルは、ファンキー・ジャズの範疇で捉えた方が判り易い。収録された曲は全10曲。ジャマルのオリジナルは2曲のみ。残りの8曲はスタンダード曲。「Speak Low」以外、知る人ぞ知る、マニアックなスタンダード曲ばかりだが、どの曲にもファンキー・ジャズの味付けがされている。

「1960年代のジャマル」は「シンプルな弾き回しながら、メリハリを強くつけた、ファンキー・ジャズ」なスタイルからスタートしている。そう、ジャマルは「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニストなのだ。
 
 

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2023年5月 1日 (月曜日)

1970年代スタイルのジャマル

逝去したから、という訳では無いのだが、アーマッド・ジャマルのリーダー作の落ち穂拾いをしている。ジャマルについては、意外とこのブログで取りあげることが多いジャズマンの1人。

それには理由があって、ジャマルは「経年変化」が著しいピアニストで、活躍した年代によって異なる顔を持つ、つまり、年代によって、ピアノ演奏のスタイルが変わるピアニストなので、デビューした1950年代から逝去前の2010年代まで、それぞれの年代を横断してリーダー作を聴かないと、ジャマルのピアニストとしての個性が把握できないのだ。

Ahmad Jamal『Outertimeinnerspace』(写真)。1971年6月17日、モントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音。Impulse! レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (ac-p, el-p, fender rhodes), Jamil Sulieman (b), Frank Gant (ds)。ジャマルお得意のトリオ編成でのパフォーマンス。

1960年代終わり以前のジャマルのスタイルは「しっとりシンプルでクールなサウンド」だった。そして、1969年〜1970年辺りで、いきなり「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌する。
 

Ahmad-jamaloutertimeinnerspace

 
このモントルー・ジャズフェスでのライヴ・パフォーマンスは「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」。いわゆる「1970年代スタイル」のジャマルである。ライヴということもあるのだろう、長尺の演奏ばかり2曲のみ。エレギが入っていない分、その印象はほどほどなんだが、ジャズに軸足を置きつつ、演奏全体の雰囲気はクロスオーバー・ジャズ志向。

このライヴでは、ジャマルはエレピやローズも弾いていて、これがグルーヴ感濃厚なジャズ・ファンク風になっているから堪らない。1950年代のハードバップ志向のラウンジ風な演奏スタイルも、1960年代のダイナミックでファンキーな演奏スタイルも微塵も無い。ビートの効いた、アーシーで豪快なメリハリ・サウンドだけが、この盤に詰まっている。

ビートは効いているが、ジャズ・ファンクなメリハリの強い演奏になっておらず、サイケデリック&スピリチュアルな雰囲気が漂う、どこか疾走感と浮遊感が入り交じった展開になっているのは、モーダルな演奏をメインとしているからだろう。冒頭の約17分の長尺演奏の「Bogota」は、力業的なモーダルな展開がなかなか格好良い演奏になっている。

ジャケットもどこか、サイケデリック&スピリチュアルなポップ・アートで飾られており、ジャズ盤のジャケットとは思えない風情。それでも、このライヴ盤でのジャマル・トリオ、当時のジャズの最先端の演奏トレンドをしっかりと捉えつつ、オリジナリティー溢れる演奏に仕上げているのはさすがである。意外と癖になる内容です。
 
 

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