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2023年4月の記事

2023年4月30日 (日曜日)

1950年代スタイルのジャマル

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が、あの世に旅立って、そろそろ1ヶ月になる。4月6日、前立腺がんのため死去。92歳の大往生であった。現時点では、2019年リリースの『Ballades』が遺作になる。しかし、90歳になるまで、現役ピアニストを貫き通し、コンスタントにリーダー作を出し続けたジャマルは凄い。スタイルは年代毎に異なるスタイルを持つユニークなピアニストだった。

Ahmad Jamal『Ahmad's Blues』(写真左)。1958年9月6日、米国Washington, D.Cの「The Spotlite Club」でのライヴ録音。原盤はArgo。ちなみにパーソネルは、ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Israel Crosby (b), Vernel Fournier (ds)。

ジャマルは「経年変化」が著しいピアニストで、活躍した年代によって異なる顔を持つ。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。この『Ahmad's Blues』でのジャマルのピアノは、まさに「1950年代」スタイル。
 

Ahmad-jamalahmads-blues

 
スタンダード曲がメインのライヴ音源なので、1950年代ジャマルの特徴が良く判る。タッチは軽快でオーソドックス。変な捻れや癖は無い。間の使い方が上手く、フレージングは必要最小限の厳選された音での弾き回し。雰囲気はアーバンでクール。1950年代半ばの繊細なタッチは、1958年に来て、少しダイナミズムが加わって、弾き回しのスケールが一回り大きくなっている。

バックのリズム隊、イスラエル・クロスビーのベース、ヴァーネル・フォーニアのドラムも良い味を出している。ジャマルの「間」を活かし「音を厳選」した弾き回しに、スインギーに、とても上手く適応している。特にベースのチェンジ・オブ・ペース、そして、ドラムの上質なテクニック(ブラシなど)が、このトリオ演奏を格調高いものにしている。

ジャマルの1950年代スタイルの名盤『But Not for Me』ばかりがもてはやされるのだが、このワシントンD.Cでのライヴ盤は、決して内容的に劣っていない。どころか、弾き回しのダイナミズムは、この『Ahmad's Blues』の方が上回っていて、雰囲気の良い録音と相まって、まるでクラブの中に入って聴いているかのような臨場感がとても良い。ジャマルの1950年代スタイルの「隠れ名盤」でしょう。
 
 

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2023年4月29日 (土曜日)

本多の『Easy Breathing』再び

和フュージョンの専門レーベルとして有名なのは「ERECTRIC BIRD(エレクトリック・バード)」。世界に通用するフュージョン・レーベルを目標に、1970年代後半にキングレコードが立ち上げた、フュージョン専門レーベルである。この専門レーベルが持つ和フュージョンの音源が続々とリイシューされている。これが、僕にとっては実に懐かしいリイシューとなっている。

Toshiyuki Honda(本多俊之)『Easy Breathing』(写真)。1979年9-10月の録音。1980年、ERECTRIC BIRDからのリリース。ちなみにパーソネルは、本多俊之 (sax), 和田アキラ (el-g), 大徳俊幸 (key), 渡辺健 (el-b), 奥平真吾 (ds)。Seawindの Jerry Hey (tp, Flh), Larry Hall (tp, Flh), Bill Reichenbach (tb), Larry Williams (ts, fl, ac-p), Kim Hutchcroft (ts, bs), いわゆる「シーウィンド・ホーン・セッション」と、Paulinho Da Costa (perc)がゲスト参加。

帯紙のコピーを見れば「耳を澄ましてごらん。L.A.のそよ風が歌ってる。俊之とシーウィンドの友情溢れる再会セッション」とある。前半の「耳を澄ましてごらん〜」は思わず歯が浮くような、気恥ずかしいキャッチコピーだが、後半の「シーウィンドの...再会セッション」には思わず目を見張る。そうか、バックのブラスの充実度が高いのは、シーウィンド・ホーン・セッションのメンバーがバックアップしているからか、と納得。
 

Toshiyuki-hondaeasy-breathing

 
帯紙のコピーは続く。「アドリブ誌選出「日本のクロスオーバー・ベスト・レコード」2年連続受賞に輝く、サックスの俊英、待望の第3作!」。そう、この盤は、本多俊之のリーダー作『Barning Wave』『Opa! Com Deus』に次ぐリーダー作第3弾であった。本多俊之が初めて自身のバンド、自身のアレンジでL.A.レコーディングに臨んでいる。

当時の和フュージョン盤らしい曲揃えで、「あるある」のブラジリアン・フュージョンの2曲目「Samba Street」、乾いたグルーヴ感が心地良く浮遊感漂う3曲目「Loving You Slowly」、和フュージョンぽくて格好良いタイトル曲の5曲目「Easy Breathing」、ジャズ・ファンクの6曲目「Living In The City」は、メロウでドープなフレーズが粋。和フュージョン盤の傑作として、なかなか魅力的な演奏が詰まっていて楽しい。

海外のクラブシーンでも評価の高い本多俊之だが、このリーダー第3作目の『Easy Breathing』も聴き直してみて、なかなかの傑作だと思う。どうも、以前より、我が国ではフュージョン・ジャズが未だに正統に評価されないところがあるのだが、最近の和フュージョンの名盤・好盤の相次ぐリイシューで、そろそろ再評価の機運が高まってくるのかもしれない。
 
 

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2023年4月28日 (金曜日)

MALTA『High Pressure』再び

ここ4〜5年の間、日本人によるフュージョン・ジャズ、いわゆる「和フュージョン」の名盤、好盤がリイシューされている。

それまでは、和フュージョン盤のリイシューについては、過去に圧倒的に人気があった盤のみがリイシューされていて、売れなかったが内容的に優れている盤とか、マニアックな人気を獲得していた盤などは、レコード会社の方で「再発しても採算が取れない」と判断したんだろう、今まで、廃盤のままでリイシューされることは無かった。

が、何故かはよく判らないが、そういった「不採算」な和フュージョン盤がリイシューされる様になった。僕は、フュージョン・ブームについては、学生時代、リアルタイムで体験しているので、そんな「不採算」な和フュージョン盤は、ジャケを見るだけで音が聴こえてくるくらい、当時、聴き込んだ懐かしい盤ばかりである。

MALTA『High Pressure』(写真左)。1987年の作品。ちなみにパーソネルは、MALTA (sax), Don Grusin (key), Dann Haff (el-g, ac-g), Nathan East (el-b), Vinni Colaiuta (ds), Paulinho Da Costa (perc)。日本のフュージョン系のサックス奏者、マルタの5枚目のリーダー作。

マルタは1949年生まれ。鳥取県出身。本名「丸田 良昭」。今年で74歳。1973、東京芸大を卒業後、バークリー音楽大学に留学。1978年、ミンガスの『Me, Myself An Eye』『Something Like A Bird』の録音に参加。1979年より、ライオネル・ハンプトン楽団のコンサート・マスターを務め、1983年にJVCと契約し、初リーダー作『MALTA』をリリース。フュージョンをメインに活動。演奏以外にも、芸大にて教鞭を執る傍ら、音楽発展に尽力、とある。
 

Maltahigh-pressure

 
MALTAって、ミンガスのアルバムに参加しているんですよね。聴いたことがありますが、硬派でメインストリームな活きの良いサックスでした。MALTAのサックスって、素姓の良い、基本がしっかりしたサックスで、とっても良い音で鳴り、テクニックも優秀。もっと注目されても良いサックス奏者だと思います。

さて、『High Pressure』は、1987年、我が国でのバブル期にリリースされ、これは「売れた」。路線としては、ディヴィッド・サンボーンあたりだと思うが、サンボーンよりも、サックスの音が柔軟で素直で流麗。ブリリアントで癖が無くテクニックは優秀。そんなMALTAのサックスをとことん聴いて楽しむ事が出来る好盤である。

今回、改めて聴いてみて(20年ぶりくらいでした)、MALTAのサックスがとても良い音で鳴っているのは勿論のこと、バックの演奏が結構エグい。キーボードからギターからベースからドラムまで、相当、凄い演奏を繰り広げているに気がついて、思わず、スピーカーの前でしっかり聴き込む。

キーボードのフレーズはセンス良く、ギターはスピード感溢れ切れ味良く、だが、エレベが相当エグい。誰だろう、とパーソネルを確認したら、若き日のネイザン・イーストでした。納得。そして、ドラムがそれ以上にエグい。ポリリズミックな高速ドラミングで、8ビートでスイングするような疾走感。こんなエグいメンバーをバックに、MALTAは悠然とサックスを吹き上げ、疾走する。

和フュージョンの名盤として、聴き応え満点の『High Pressure』。バブル期のお洒落なフュージョンとは一線を画した、ワールドワイドで勝負出来る、フュージョン・ジャズの名盤だと思います。もう一回、聴き直したくなった。
 
 

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2023年4月27日 (木曜日)

ファンキー&ソウルフル濃厚

ブルーノートの4100番台は、録音時期としては、Donald Byrd『Royal Flush』(1961年9月21日の録音)から始まって、Lee Morgan『The Rumproller』(1965年4月21日の録音)まで、1961年後半から1965年前半になる。

この約4年間で、4100番台、きっちり100枚のアルバムを制作〜リリースしている(中には、当時、お蔵入りになって、後に発掘リリースされたものもあるが)。

ちょうど、ジャズとしては、ハードバップが成熟し、ハードバップを基に、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなど、ジャズの多様化の時代として、それぞれの志向のジャズに進化していった時期である。ブルーノートは、この多様化の時代の、それぞれの志向のジャズを、偏り無く、しっかりと録音に残している。

Grant Green『Am I Blue』(写真左)。1963年5月16日の録音。ブルーノートの4139番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Johnny Coles (tp), Joe Henderson (ts), "Big" John Patton (org), Ben Dixon (ds)。パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなシングル・トーンが個性のグラント・グリーンがリーダーのクインテット編成。ベースはオルガンが兼任するので、ベーシストはいない。
 

Grant-greenam-i-blue

 
この盤、ブルーノート・レーベルの紹介本には、代表盤として名前が上がることが殆ど無い盤なのだが、これがまあ、ギターがメインのファンキー・ジャズとして、はたまた、ファンキーなオルガン・ジャズとして、とっても素敵な演奏が詰まっている「隠れ名盤」なのだ。

とにかく、こってこてファンキーなグリーンのギターと、ブルージー&グルーヴィーなジョン・パットンのオルガンとの相性が抜群で、相乗効果で、ファンクネスを更に濃厚にしている。

フロント管は、ジョニー・コールのトランペット、ジョー・ヘンダーソンのテナーの2管なのだが、この2管もギターとオルガンが強烈に醸し出すファンクネスにどっぷり浸かって、とってもファンキーなフレーズ、とってもファンキーなユニゾン&ハーモニーを吹き上げている。特に、モードが得意なジョーヘンが、ご機嫌なファンキー・テナーを吹き上げている様が、実に微笑ましい。

ブルージーというより、ゴスペルでソウルな雰囲気が印象的。キレッキレの演奏とは違って、どこか適度にテンションを張った、不思議な「脱力感」が漂う、ファンキー&ソウルフルな演奏が実に良い。おもわず「ニンマリ」してしまう。適度に脱力はしているが、演奏自体はしっかり「締まっている」ところが、また良い。

この盤、ファンキー&ソウル・ジャズ、そして、オルガン・ジャズのファンには堪らない内容。やっぱ、隠れ名盤でしょう。
 
 

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2023年4月26日 (水曜日)

浅利史花のセカンド・アルバム

和ジャズにおいては、21世紀に入った途端に、ビッグバンでも起こったかのように、様々な新人が毎月の様に現れ出でるようになった。しかも、ボーカリストを除いては、どの楽器もかなりの確率でしっかり残って、今では、和ジャズの中堅として活躍しているジャズマンの沢山いるから立派だ。

Fumika Asari(浅利史花)『Thanks For Emily』(写真左)。2023年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、浅利史花 (g), 壷阪健登 (p), 三嶋大輝 (b), 山崎隼 (ds), ゲストに、片山士駿 (fl), 曽我部泰紀 (ts) が入っている。邦題が「エミリー・レムラーに捧ぐ」。今回の彼女のセカンド盤は、浅利が尊敬する伝説の女性ジャズギタリスト、エミリー・レムラーにちなんだセットリストを録音、とのこと。

浅利史花は1993年生まれ。今年で30歳。2012年、大学進学に伴い上京。和ジャズのギタリスト岡安芳明、潮先郁男に師事。2015年には、ギブソン・ジャズギター・コンテスト決勝進出。2020年11月に初リーダー作『Introducin'』をリリースしている。

彼女の「Official Web Site」を覗いてみると、使用ギターに、1957年製 Gibson ES-17 フルアコ、1946年製 Gibson L-4 フルアコ、Zemaitice V22SH DBM セミアコとある。ロックやR&B、そして、現代のジャズ・ギター奏者があまり用いないフル・アコースティックのエレクトリック・ギターを2本チョイスしている。これって、本格的なメインストリームな純ジャズ・ギターを志向しているに他ならない。

アルバムを聴いてみると、それが良く判る。フュージョンっぽさ、スムースっぽさは皆無。スインギー&ジャジーで、明らかに、メインストリームな純ジャズ・ギターである。シンプルで流麗、ジャジーでアーバンな弾きっぷりは、ジム・ホール、もしくは、ケニー・バレルを想起する。良い音だ。
 

Fumika-asarithanks-for-emily

 
弾きっぷりは、とにかく、真摯で実直、素直で真面目なギターで、砕けたところや捻れた「癖」は無い。和ジャズらしく、乾いたファンクネスは薄ら漂うが、黒っぽさは無い。ジム・ホールやケニー・バレルっぽくもあるのだが、アーバン感やグルーヴ感は希薄で、とても健康的で明るいジャジーさが濃厚なジャズ・ギターである。

全9曲、オリジナルが5曲、スタンダードが4曲。特に、スタンダード曲の演奏を聴けば、浅利のギターの個性が良く判る、素直なギターで、決して、砕けたり飛んだり跳ねたりする「やんちゃ」なギターでは無い。

そういう個性は反面、イージーリスニング風になってしまったり、面白味に欠けてしまったりする危険性があるのだが、この盤ではそうはならないところが良い。バックのリズム隊の成せる技。むっちゃ硬派で純ジャズで今様のリズム&ビートを繰り出して、フロントの浅利を盛り上げる。

ちょっと緊張感が高まっているのか、と感じるところもあるんだが、概ね、スインギーでジャジー。テクニックも優秀で、最初から最後まで安全運転で確実に弾き回す。これが初々しさ、瑞々しさとするか、面白味に欠けるとするかで、評価は分かれるかと思うが、僕は良い意味での個性だと感じている。彼女のソロ・ライヴを聴いてみたい。恐らく、バリバリ弾きまくるのでないか、と推測している。

ジャズとしては、年齢的にはまだまだ若手なので、真面目実直なところも長所として捉えることが出来る。あとは、バリバリに弾き回したり、ちょっと砕けたり捻れたりできる楽曲に出会えるかどうか、やなあ。安全運転が前提の有名スタンダード曲は避けた方が良いだろう。彼女をプロデュースする「力」にかけてみたいところもある。

さらなる鍛錬の後、成熟度を増した次作を早く聴いてみたい。素姓確かな、メインストリームな純ジャズ・ギターであることは確かなのだ。
 
 

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2023年4月25日 (火曜日)

河野啓三『Dreams』を聴く

和ジャズもしっかり聴く様にしている。最近では、サブスク・サイトで、和ジャズのアルバムが結構な数、アップされているので、試聴するには事欠かない。しかも、特定のサブスク・サイトでは「音が良い」。いわゆるハイレゾ対応されているので、CDで聴くのと同じくらい、若しくはそれ以上の音で聴くことができるが有り難い。

河野啓三『Dreams』(写真左)。2011年の作品。ちなみにパーソネルは、河野啓三 (kb), 宮崎隆睦, 平家徹也 (EWI, sax), 吉井俊倫, 布川俊樹 (g), 田中豊雪, 岡田治朗 (b), 岡野大介, 斎藤たかし (ds, perc), 伊沢麻美 (vo)。21世紀に入っての「T-Square」のキーボード奏者、河野啓三の初リーダー作。

冒頭「First Impression」の出だしのフレーズを初めて聴いた時、「あれ、T-Squareの盤と間違えたか」と慌てたくらい、T-Squareの音世界である。ディストーションを効かせたエレギ、シンセの様なユニークな音が出る吹奏楽器EWIの特徴のある伸びのある音、そのバックでリズム&ビートを刻むエレピ。作曲は河野自身で、河野はT-Squareでも楽曲提供しているので、T-Squareの音っぽくなっても仕方の無いことか。
 

Dreams

 
しかし、2曲目「Across The Sky」を聴いていると、確かに「T-Square」風の音の展開なんだが、演奏するメンバーが異なるので、演奏の音のテイストは「T-Square」とは違う。

「T-Square」はロック寄りのバカテク・フュージョンなんだが、河野のこの盤の音は、ポップなフュージョン・ジャズってな感じで、ノリが良くて聴きやすく、ジャジーな雰囲気も見え隠れし、フレーズは印象的でメロディアスで判り易い。河野の作曲のセンスの良さがとても良く判る。

河野のアコピが良い感じなんですよね。6曲目の「衣川館」での、河野のアコピ、布川のギター、宮崎のソプラノで醸し出すジャジーな雰囲気は、他のメロディアスで活きのよいポップな楽曲との対比に、思わず聴き入ってしまう。

そして、僕はこの盤での河野のシンセの音が大好きだ。ばりばり、アナログシンセの音。音が太くて、ちょっとノイジーで、変に捻れて、音がヒューンと伸びる。1970年代のプログレにおけるアナログシンセの音。このアナログシンセの音でソロ・フレーズを弾き回すところが、とにかく格好良くて素敵である。
 
 

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2023年4月24日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・25

ジャズ名盤と呼ばれるアルバムの中には、そのアルバムの制作された「背景」で、居抜きで高く評価される盤が幾つかある。

もともと、ジャズの歴史を振り返ると、ジャズに纏わるエピソード、特に「人」に関するエピソードはユニークなものばかり。芸術というものは「天才」と呼ばれる人達を中心に積み上げられると感じているのだが、この「天才」と呼ばれる人達に関しては、「人」に関するエピソードに事欠くことは無い。「天才」とは「変人、奇人」と紙一重何やなあ、と感心するばかり。

特に、ジャズについては、ジャズ・ジャイアント、ジャズ・レジェンドと呼ばれるジャズマンのエピソードは、ユニークかつ興味深いものばかり。超一流で伝説となったジャズマンほど、ユニークなエピソードが多い。恐らく、それだけ注目されていて、皆の記憶に残ったのだろうし、伝説として語り継がれてきたのだと思う。

しかし、「背景」の評価=「その演奏」の評価、とするのは、ちょっと違うとは思うので、やはり、ジャズは実際に自分の耳で聴いて、自分で判断するのが一番だろう、と思っている。背景は背景、エピソードはエピソードである。

Sonny Rollins『The Bridge』(写真左)。1962年1月30日、2月13–14日の録音。邦題『橋』。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Jim Hall (g), Bob Cranshaw (b), Ben Riley (ds), Harry "H.T." Saunders (ds, track 5 only)。基本は、ロリンズに、ギターのホール、ベースのクランショウ、ドラムのライリーのカルテット編成。何故か5曲目の「God Bless the Child」のみ、ドラムがサンダースに代わっている。

この盤には、モダン・ジャズの歴史や背景、事件を少しでも紐解いた人なら良く知っているエピソードがある。

ロリンズは、1950年代末には人気の絶頂にあった。が、コルトレーンの台頭により、ロリンズは自分のテナーの実力に疑問を感じる。ロリンズは自分の演奏を見つめ直すため、突如引退(実は2度目)。酒と煙草を絶ち、体と精神の鍛錬を怠らず、ウィリアムズバーグ橋にて、サックスの練習に明け暮れる。そして、1961年11月に突然活動を再開し、ほどなくRCAビクターと契約。1959年の夏から3年間の沈黙を経てリリースした復帰第1作が、この『The Bridge』。つまり「橋」である。
 

Sonny-rollins-the-bridge

 
僕はこのエピソードを、学生時代、FMレコパルの「レコパル・ライブコミック」で、石ノ森章太郎さんの書いた『橋』という一話完結の漫画で知った。このロリンズの2回目の「雲隠れ」は、その内容は如何にも当時の日本人好みで、僕もいたく感動した。もちろん、翌日、このロリンズの『橋』を買いにレコード屋へ走ったのは言うまでも無い(笑)。

この盤の感想は、当ブログの過去記事(2008年10月27日のブログ・左をクリック)をご一読いただくとして、今の耳で振り返ってみて、この盤は「ソニー・ロリンズが、ロリンズ自身をブランド化」に踏み切った盤だと感じている。

録音年1962年の当時、ジャズはハードバップの成熟の後、多様化の時代に入っていた。アーティスティック志向として「モード、フリー」、大衆音楽志向として「ファンキー、ソウル」。両極端な志向のジャズが「多様化の時代」の中で、入り乱れ始めていた。

恐らく、ロリンズは2回目の「雲隠れ」の中で、これから、ジャズマンとしてどの志向で勝負していこうか、をサックスの練習に明け暮れる中で考え続けたのでは無いか。そして、出した結論がこの『橋』で演奏されている音で、ロリンズは、実にロリンズらしく、ハードバップ時代のテクニックに磨きをかけたブロウで吹きまくっている。モードにもフリーにも、ファンキーにもソウルにも走らない、ロリンズの、良い意味で唯我独尊な、唯一無二なブロウのみで勝負している。

そんなところに、何故か、プリグレッシヴな、間を活かした枯れた味わいが芳しいジム・ホールのギターを入れたのかが「謎」なのだが、日本語Wikiには「ホールの1999年のインタビューによれば、ロリンズはピアノの和音よりもギターの和音の方が隙間があって触発されやすいと考え、サックス・ギター・ベース・ドラムのカルテットで制作することを決めたそうである」とある。

この『橋』というアルバムは「ロリンズ自身のブランド化」、つまり「ロリンズ・ジャズ」の立ち上げ宣言なアルバムと僕は理解している。このアルバム以降、ロリンズは、ジャズの演奏トレンドに染まること無く、孤高のロリンズ・ジャズを展開していく。それは、21世紀の現代にまで引き継がれていくのだ。
 
 

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僕なりのジャズ超名盤研究・24

ジャズ盤の中には、そのジャズマンの演奏志向とは外れたアルバムが存在することがある。恐らく、そのジャズマンの演奏志向を貫くと、当時のレコード盤のセールスに悪影響を及ぼす可能性が高いと予想される時、プロデュースという観点から、その演奏志向の修正を余儀なくされることが多い、と推察している。

John Coltrane『Ballads』(写真左)。1961年12月21日、1962年9月18日、11月13日の録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b, #1-6, 8), Reggie Workman (b, #7 only), Elvin Jones (ds)。演奏のメンバー編成の基本は、コルトレーンの伝説のカルテット。1曲だけ、ベースがレジー・ワークマンに代わっている。

この盤は「当時、フリー・ジャズに走り始め、アルバムの売れ行きに不安を感じたレコード会社が、アルバムを売る為にたてた企画盤」と言われる。確かにそう感じるは、コルトレーンはアトランティック時代(1960〜61年)で、高速シーツ・オブ・サウンドからフリージャズへの傾倒が感じられる盤を制作し、その演奏志向の大きな変化の中で、インパルス・レコードに移籍した。
 
インパルス・レコードでは、初っぱなは『Africa/Brass』で、ジャズ・オーケストラなサウンドに挑戦したが、オーケストレーションの主役は、ドルフィーとタイナー。2枚目の『Coltrane』では、嵐のような「モード+フリー」な展開となって、インパルスとしては、これではなあ、と感じたのでは無いか。
 

Jc_ballads_2

 
2枚目の『Coltrane』の後、『Duke Ellington & John Coltrane』とこの『Ballads』という話題性溢れる、「売れる」が狙いの企画盤のリリースが続く。その後、当時のコルトレーンの演奏志向をホットに捉えた『Impressions』が出るが、ほどなく『Ballads』の第2弾の様な、やはり「売れる」が狙いの企画盤『John Coltrane and Johnny Hartman』がリリースされている。

確かにこの盤『Ballads』のコルトレーンは、当時のコルトレーンの演奏志向らしくない内容で統一されている。高速シーツ・オブ・サウンドを極力封印し、フリーへの展開は皆無。演奏はタイトル通りバラード曲ばかりで、モーダルな展開もバラードなゆっくりしたリズム&ビートに乗っているので刺激が無い。つまり、とても聴き易い、聴いていて心地の良いジャズ演奏に仕上がっている。

この盤の感想については、当ブログの過去記事(2009年3月9日の記事・左をクリック)をご一読されたい。この盤は、明らかにコルトレーンの演奏志向とは全く異なる内容の「異質のアルバム」と言える。

しかし、コルトレーンは超一流のテナー・マン。バラード演奏だけでまとめてくれ、と言われれば、これだけのハイテクニックを駆使して、最高のバラード演奏集を「ものにして」しまうのだ。そういう意味では、この盤『Ballads』は、コルトレーンの、テナーマンとしての「途方も無い優秀性」の証しでもあるのだ。
 
 

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2023年4月22日 (土曜日)

アコピだけのボブ・ジェームス盤

ボブ・ジェームスは僕の大のお気に入りのミュージシャンの1人。本格的にジャズを聴き始める前から、1970年代前半の頃、FMのクロスオーバー・ジャズ特集で耳にして以来、ずっと、リアルタイムにボブ・ジェームスを聴き続けてきた。振り返れば、初リーダー作の『One』から、ずっとリーダー作を欠かさず聴いてきたことになるのか。

Bob James『Grand Piano Canyon』(写真左)。1990年の作品。ボブ・ジェームスの22枚目のリーダー作。ちなみにパーソネルは、Bob James (ac-p, horn-arr) はリーダーとして全曲参加だが、演奏曲毎にメンバーを選定している。パーソネルを見渡すと、後のフュージョンのスーパー・バンド「Fourplay」の初代メンバーが集結している。

ボブ・ジェームスはキーボーディストとしての腕前は超一流。フェンダー・ローズ、シンセサイザーといったエレクトリック・キーボードの演奏は素晴らしい。特に、フェンダー・ローズの腕前はトップクラス。さすが、フュージョンの大御所と呼ばれる所以である。

しかし、ボブ・ジェームスはアコースティック・ピアノの腕前も素晴らしいものがある。もともとは、ポスト・バップ〜フリー志向のジャズ・ピアニストから、彼のキャリアはスタートしているので、当たり前と言えば当たり前なんだが。メインストリームな純ジャズでは、なかなか出せなかったボブ・ジェームスの個性が、フュージョン・ジャズの中で花開いたと言って良いだろう。

特に「ピアノを唄わせる」様な弾きっぷりが個性。テクニックに走るのでは無く、ゆったりとしたテンポの中で、右手のシングルトーンで「フレーズを唄わせる」様にピアノを弾く。
 

Bob-jamesgrand-piano-canyon

 
タッチは硬質で明確、従来のジャズ・ピアノとは、音の重ね方が違っていて、メジャーにポップに響く。いわゆる「フュージョンのエレピ」の奏法をアコースティックに置き換えた様なピアノなのだ。

そんな「ボブ・ジェームスのアコースティック・ピアノ」を心ゆくまで愛でることが出来るアルバムがこの『Grand Piano Canyon』。このアルバムでは、ボブ・ジェームスはアコースティック・ピアノしか弾いていない。それほど、アコースティック・ピアノに拘って、フュージョン・ジャズ志向の演奏を展開している。

ボブ・ジェームス節満載のフュージョン色の色濃いサウンドから、後のフュージョンのスーパー・バンド「Fourplay」に繋がるスムース・ジャズ志向のサウンド、アコースティック・ピアノの深くて豊かな音が前面に押し出されてくる様な好アレンジまで、演奏のアレンジ、内容については、徹頭徹尾「ボブ・ジェームス」の音世界。

ボブ・ジェームスのアレンジャー&プロデューサーの引き出しの多彩さが反映されたラエティ溢れる内容だが、どの演奏にも「ボブ・ジェームス節」が炸裂していて、アルバム全体に統一感がある。コンテンポラリーな純ジャズとしても十分に評価出来る、優れた内容のアルバムである。

カバー・アートは、David Grath による「グランド ピアノ キャニオン」と題された原画から複製されたものだとか。良い内容のアルバムには、良いカバー・アートが宿る。このボブ・ジェームスの『Grand Piano Canyon』、1990年代のフュージョン&スムース・ジャズの傑作の1枚だろう。
 
 

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2023年4月21日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・260

小粋なジャズ盤を探索していると、特定のレーベルに「小粋なジャズ盤」が集まっているように感じる時がある。「Criss Cross Jazz(クリス・クロス・ジャズ)」もその1つ。ジェリー・ティーケンスによって、1980年に設立されたオランダのジャズ・レーベル。現代メインストリーム・ジャズにおける最重要レーベルのひとつである。

約40年もの間、有望な若手や新人ジャズマンをメインに、リーダー盤を数多く手掛けてきている。プロデューサー、エンジニア、ジャケット・デザイナーらジャズを専門とするスタップによる一貫した音作り。パッケージングやデザイニングは統一感があり、見れば「Criss Cross Jazz」と判るほどの徹底ぶり。いわゆる「現代のブルーノート」の様な雰囲気のレーベルである。

Richard Wyands Trio『Reunited』(写真左)。1995年6月18日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Richard Wyands (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。通好みのピアニストとして著名なリチャード・ワイアンズがリーダーのトリオ編成。リズム隊は、ベースのピーター、ドラムのケニーの「Wワシントン」。

リチャード・ワイアンズ(Richard Wyands)は、1928年7月生まれの米国オークランド出身のジャズ・ピアニスト。2019年9月に惜しくも91歳で鬼籍に入っている。ジーン・アモンズ、ケニー・バレルのサイドマンをはじめ、多くの一流ジャズマンのセッションに参加している。リーダー作は長いキャリアの中で僅か7枚。しかし、その内容は良い。
 

Richard-wyands-trioreunited

 
この『Reunited』は、そんな数少ないリーダー作の中の3作目。現代のNYを代表する最強リズム隊「Wワシントン」を従えて、いつになく充実したパフォーマンスを繰り広げている。選曲を見渡せば、なかなか味のあるスタンダード曲やジャズメン・オリジナル曲がピックアップされていて、原曲のフレーズの良さもあって、メロディアスで小粋な弾き回しは味わい深いものがある。

それと、当時67歳のワイアンズが、いつになく覇気溢れるピアノを弾き回しているのは、バックのリズム隊、ドラムのケニーの「Wワシントン」の存在が大きい。アルバム全体を覆う心地良いスイング感、小粋な「間」とファンクネスは、「Wワシントン」の叩き出すリズム&ビートが醸し出している。

そこに、ワイアンズの小粋でジャジーなピアノが乗っかって、実に味わい深い、ネオ・ハードバップなトリオ演奏に仕上がっているのだ。1995年という録音時期ながら、古き良きハードバップ時代の、スリリングでハイ・テクニックなインタープレイが展開されていて、聴き応えも十分。決してラウンジ・ジャズ風には展開しないところに、「Criss Cross Jazz」の矜持を感じる。

1995年の録音なので、ワイアンズは67歳。有望な若手や新人ジャズマンをメインにリーダー作を制作する「Criss Cross Jazz」としては、この大ベテランのワイアンズのリーダー作は異色ではあるのだが、味わい深い、小粋で安心感のある演奏にしあがっているのは、さすが「Criss Cross Jazz」だと感心している。
 
 

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2023年4月20日 (木曜日)

R&B系ミュージシャンとの邂逅

1960年前半のジャズは「多様化の時代」。ハードバップが成熟し、そのハードバップをベースとして、様々な演奏トレンドが出現し、発展していった。アーティスティック志向として「モード、フリー」、大衆音楽志向として「ファンキー、ソウル」。両極端な志向のジャズが「多様化の時代」として、入り乱れていた。

特に、大衆音楽志向のジャズとして「ファンキー、ソウル」では、R&B系ミュージックとの融合が始まる。ジャズお得意の「他ジャンル音楽の要素の取り込みと融合」である。奏でるミュージシャンも、ファンキー・ジャズを中心に、R&B畑からジャズ畑に参入してくる。後に振り返ると、そんなジャズマンいたっけ、と思う、この時期だけジャズ畑で録音に臨んだR&B系のミュージシャンもいた。

Harold Vick『Steppin' Out!』(写真左)。1963年5月27日の録音。ブルーノートの4138番。ちなみにパーソネルは、Harold Vick (ts), Blue Mitchell (tp), John Patton (org), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。リーダーのヴィックのテナー・サックス、ミッチェルのトランペットがフロント2管、バックがパットンのオルガン、グリーンのギター、ディクソンのドラムのオルガン・トリオのリズム・セクション。

リーダーのハロルド・ヴィックは、ジャズとR&Bを「またにかけて」活動したテナー・サックス奏者。バイオグラフィーを紐解くと、16歳の時にテナー・サックスを始め、R&Bのバンドで演奏し、1960年以降、ジャック マクダフを始めとしたジャズ・オルガニスト達や様々なジャズマンと共演し、1970年代以降は、ジャズとR&Bの両方で、セッションをこなしている。
 

Harold-vicksteppin-out

 
ブルーノートは、そんなR&B系のテナー・マンについても、何のこだわりも無く、リーダー盤の制作機会を与えている。ブルーノート・レーベルの懐の深さ、総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼と矜持を強く感じる。そして、その成果の1つがこの、Harold Vick『Steppin' Out!』である。

メンバー構成を見渡すと、リーダーのヴィック以外は、ブルーノート傘下のファンキー・ジャズ志向のジャズマンばかりで固めている。しかし、そこに、R&B系のヴィックのテナーが入ってくると、R&B色が濃厚になって、演奏全体の雰囲気は、ファンキーから一気にソウルフルに変化する。が、決して俗っぽい展開にはならない。

選曲を見渡すと、シンプルなリフも持ったブルーズ曲ばかりが並んで、これってジャズによるR&B曲のイージーリスニングにならないの、と危惧するが、そうはならない。

演奏全体の雰囲気はしっかりと「純ジャズ」している。ヴィックがリーダーとして「真面目に」ジャズに取り組み、プロデューサーのアルフレッド・ライオンが演奏全体の雰囲気をディレクションしていたことが良く判る。

こういった、ファンキー・ジャズを中心に「R&B畑からジャズ畑に参入してくるミュージシャン」をしっかり捉え、内容に優れたリーダー作を残すところは、ブルーノート・レーベル、さすがである。ブルーノートの1500番台と4000〜4300番台を押さえれば、当時のジャズの歴史とトレンドが判る、というが、それも至極納得である。
 
 
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2023年4月19日 (水曜日)

聴き直して「良いものは良い」

21世紀に入って、ジャズはまだまだ「深化」を続けている。20世紀、特に1950〜60年代の様に、ジャズの新しい演奏トレンド、例えば、モードやフリー、スピリチュアルなどの様な革新的な内容の演奏トレンドはもはや現れないとは思うが、これまでのジャズ演奏を彩った演奏トレンドを「深めていく」動きは衰えていない。

Bernstein, Goldings, Stewart『Perpetual Pendulum』(写真左)。2021年7月15ー16日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Larry Goldings (org), Peter Bernstein (g), Bill Stewart (ds)。ラリー・ゴールディングスのオルガン、ピーター・バーンスタインのギター、ビル・スチュワートのドラムで編成されたオルガン・ジャズ・トリオ。ジャケットを見ればすぐ判る「Smoke Sessions Records」からのリリース。改めての聴き直しである。

1980年代後半から、長年、セッションを重ねてきた3人のトリオ演奏。硬軟自在、緩急自在、変幻自在なスチュワートのドラミングが「肝」。そんな切れ味の良いドラミングに鼓舞されて、ゴールディングスがオルガンを、バーンスタインがギターを弾きまくる。魅力的なオルガンとギターのユニゾン&ハーモニー、そしてチェイス。曲毎に展開されるアドリブ合戦も聴いていて楽しいことこの上無い。
 

Perpetualpendulum_2  

 
演奏曲は全11曲。メンバーそれぞれの自作曲とスタンダード曲が上手く織り込まれていて、良い感じのアルバムに仕上がっている。それぞれのオリジナル曲の演奏も良い出来だが、とりわけ、スタンダード曲の解釈と演奏が白眉で、過去の演奏のコピーや焼き直しに陥っていないのには感心する。オルガン・ギター・ドラムのトリオ演奏は過去にごまんとあるんだが、この3人のスタンダード曲の解釈は新しい。

「Come Rain or Come Shine」は、オルガンの音色とギターの音色の特質を活かしたソロの受け渡しがユニーク。エリントンの「Reflections in D」は典雅なフレーズ、ロマン溢れる雰囲気が秀逸。バーンスタインの曲「Little Green Men」は劇的に突っ走る。タイトル曲「Perpetual Pendulum」は小粋な味のある演奏。いずれも、モーダルで理知的、それでいて、スインギーでブルージーな展開には感心させられる。

以前から「ごまんとある」オルガン・ジャズ・トリオだが、このバースタイン、ゴールディングス、スチュワートのトリオは、過去の音楽成果を焼き直したり、真似したりはしていない。紡ぎ出すフレーズの響きも新しいし、スタンダード曲の解釈も3人の個性を最大限に活かしたもので、他には無い響きがある。ネオ・ハードバップと一括りされそうな演奏であるが、実は内容的には「温故知新」。この現代ジャズにおける中核の3人、全く隅に置けない。
 
 

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2023年4月18日 (火曜日)

アーマッド・ジャマルを追悼する

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)が、あの世に旅立った。4月6日、前立腺がんのため死去。92歳。また1人、レジェンド級のジャズマンがあの世に旅立ったことになる。

ん〜、辛いなあ。ジャズを本格的に聴き始めた1970年代以降、50余年、ジャマルはリアルタイムでそのパフォーマンスを聴くことの出来るピアニストだった。同じ時代を生きたジャズマンが鬼籍に入るのを見るのは、やはり辛い。

Ahmad Jamal & Gary Burton『Live At Midem』(写真左)。1981年1月26日、フランス、カンヌで開かれた国際音楽産業見本市の中のパーム・ビーチでのミデムフェアにおけるライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Gary Burton (vib), Sabu Adeyola (b), Payton Crossley (ds)。Ahmad Jamal名義で『In Concert』(写真右)というタイトルでリリースされていたり、はたまた、ジャケ・デザインも様々ある不思議なライヴ盤。

当時のジャマル、バートンの活動の経緯を見ていると、このクインテットは、ジャマルのトリオにバートンが客演した形のようだ。見本市のフェアにおけるライヴなので、そういう一期一会のブッキングが可能となったのだろう。

冒頭、恐らくジャマルであろうMCから始まり、1曲目は「Morning of the Carnival」。のっけから、ジャマルがぶっ飛ばす。ファンキーでグルーヴ感満載、速弾きパッセージてグイグイ攻めて、硬質なタッチでガンガン叩きまくる。華のなる流麗なアドリブ・フレーズとコーラスがソウルフルで、1970年代のジャマルのトレンドが継続されている。

ジャマルってピアニストは「経年変化」が著しいピアニストで、活躍した年代によって異なる顔を持つ。1950年代は「間」を活かし、弾く音を限りなく厳選し、シンプルな右手のフレーズと合いの手の様に入る左手のブロックコードが特徴のジャマルのピアノ。
 

Ahmad-jamal-gary-burtonlive-at-midem

 
1960年代の終わり〜1970年代の作品は、ファンキー&アーシーで豪快なメリハリのあるサウンドに変化している。この1970年代のジャマルを継続しているのが良く判る。

それにしても強烈なグルーヴ感。「Morning of the Carnival」が全く別の曲に聴こえる。途中、「My Favorite Things」の引用が出まくって、この引用などは1950年代の古き良き中間派の影を引き摺っている。バートンのヴァイブは、そんなグルーヴ感溢れるファンキーな8ビート・ピアノに乗っかって、これまたグルーヴィーに8ビートに弾きまくる。

サブ・アデヨラのベースは、アタッチメントを付けたアコベなのか、エレベなのか、ちょっと判別がつかないが、エレクトリックなベースをブヨンブヨンと響かせる。これがまた良い方向に作用して、ジャマル&バートンのグルーヴ感を思い切り増幅している。ペイトン・クロスリーのドラムは、グルーヴ感豊かな、うねるような8ビートを叩き出し、演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支えている。

演奏曲もユニークで、ジャマルの78年のヒット曲「One」や、ラテン風の「Bogota」、チック・コリアのモーダルな「Tones for Joan’s Bones」と、なかなか他のバンドでは演奏しないぞ、と思われる佳曲を8ビートでぶっちぎっている。そして、有名スタンダードの「Autumn Leaves」。最後の「Autumn Leaves」だけが4ビートの演奏となっていて、これはこれで聴き応えがある。

実はこのライヴ盤、今回、小粋なジャズ盤を探索する中で出会った「初見」のライヴ盤で、ジャマルとバートン、それも、1981年という時代背景の中で、どんな演奏をしているのか、と興味津々で聴き始めた盤。ジャマルの訃報に触れた時、聴いていたのがこのライヴ盤で、不思議な縁にちょっと驚いている。
 
 

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2023年4月17日 (月曜日)

ペイトンのマイルスへの捧げ物

1980年代半ば辺りから始まった「純ジャズ復古」のムーヴメント。ウィントン・マルサリスをリーダーとする「新伝承派」、ブルックリンを中心に、そのアンチテーゼなジャズを展開した「M-Base派」などが、新しいメンストリーム志向の純ジャズを展開した。そんな中、1990年代のジャズ・シーンに現れ出でたトランペッター、ニコラス・ペイトン。

ニコラス・ペイトンは、ウィントン・マルサリス、ウォレス・ルーニーらと共に、次世代のジャズを担うトランペッターとして、将来を嘱望された。21世紀に入って現時点では、ウィントンは目立った活動が聞こえてこなくなり、ルーニーは、2020年3月、コロナでの合併症で他界した。ニコラス・ペイトンも今年で50歳。ペイトンだけが、現時点で、コロナ禍にも負けず、コンスタントにリーダー作をリリースし続けている。

Nicholas Payton『The Couch Sessions』(写真左)。2022年7月12&13日、NYでの録音。Smoke Sessions Recordからのリリース。ちなみにパーソネルは、Nicholas Payton (tp, p, rhodes & clavinet), Buster Williams (b), Lenny White (ds)。リーダーのニコラス・ペイトンが、マルチ・プレイヤーとして、トラペットとキーボードを担当し、ベースにバスター・ウイリアムス、ドラムにレニー・ホワイトというレジェンド級のリズム隊を擁したトリオ編成。
 

Nicholas-paytonthe-couch-sessions

 
アルバム全体の雰囲気は「マイルス・トリビュート」。タイトル通り、居間で寛ぎながらのセッション風の演奏が心地良い。冒頭のジェリ・アレン作の「Feed the Fire」では、ペイトンのマイルス風のトランペットは勿論のこと、ハンコック風のキーボードにも良い味を出していて、特にエレピはとても良い雰囲気。マイルスのバンドに所属していた経験のある、ウィリアムスのベース、ホワイトのドラムも、そんな「マイルス・トリビュート」な演奏にしっかりと追従している。

4曲目のウェイン・ショーター作の有名曲「Pinocchio」では、冒頭、マイルスについて語っている(と思われる)ペイトンのトークには、ウィリアムスやホワイトも合いの手や笑い声で応じている様子が録音されている。そして、続く演奏は、もろマイルスのペイトントランペット、ロン・カーター的なウィリアムスのベース、トニー・ウィリアムス的なホワイトのドラムが、このモーダルな難曲をクールに格好良く解釈し、疾走感&爽快感溢れるパフォーマンスに展開する。

確かに「マイルス・トリビュート」な演奏ばかりなんだが、マイルス・ミュージックの物真似になっていないところが良い。マイルス・ミュージックの「肝」の部分はしっかり押さえているが、演奏全体の雰囲気はペイトンのオリジナル。ところどころに、トークやサンプリング的なヴォイスやヴォーカルが入っているところを問題視する向きもあるが、僕は気にならない。それだけ、3人のパフォーマンスの部分が優れていてクールで格好良い。好盤です。
 
 

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2023年4月16日 (日曜日)

ブルーノートの音の「懐の深さ」

旧ブルーノートのカタログには「ライオンの狂気」と呼ばれるアルバムがある。ジャズの原風景である、アフリカン・ネイティヴな「リズム&ビートの洪水」がメインの内容で、アフリカ音楽の原風景、ジャズというよりは、今で言う「ワールド・ミュージック」なアルバム群である。

1554番・1555番の、Art Blakey『Orgy In Rhythm, Vol.1&2』(1957年3月録音)。その次に、ブルーノートの4004番・4005番の、Art Blakey『Holiday for Skins vol.1 & 2』(1958年11月9日録音)。ブルーノートの4097番の、Art Blakey『The African Beat』(1962年1月24日の録音)。1500番台、4000番台にそれぞれあるのだが、4100番台にも「ライオンの狂気」盤がある。

Solomon Ilori『African High Life』(写真左)。1963年4月25日の録音。ブルーノートの4136番。ちなみにパーソネルは、Solomon Ilori (vo, pennywhistle, talking drum, g), Coleridge-Taylor Perkinson (p, musical director), Jay Berliner (g), Hosea Taylor (as, fl), Ahmed Abdul-Malik (b), Josiah Ilori (sakara drum, cowbell), Robert Crowder (conga, shekere, cowbell), Montego Joe (conga), Garvin Masseaux (conga, xylophone, cowbell)。

アフリカン・ネイティヴなミュージシャンらしい、モダン・ジャズではほとんど見ない名前ばかりが並ぶ。ピアノもベースもアルト・サックス&フルートもアフリカン・ネイティヴ。ドラムやパーカッション、コンガ、カウベル、シロホン他、アフリカ音楽のリズム&ビートを司る打楽器がズラリと並ぶ。

出てくる音はもちろん、アフリカン・ネイティヴな「リズム&ビートの洪水」がメインの内容で、今で言う「ワールド・ミュージック」志向のダンサフルで躍動感溢れるもの。これがジャズか、と言えば、思わず「口ごもる」が、即興性を旨とした集団音楽という趣きはジャズと言っても良い、かとは思う。

音楽監督として、コールリッジ=テイラー・パーキンソンを別立てする念の入り様。アフリカ人の血の流れていない自分が、頭の理解だけで、アフリカン・ネイティヴな「リズム&ビートの洪水」がメインの「「ワールド・ミュージック」志向なアルバムをプロデュースしないところに、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの「本気」感じる。
 

Solomon-iloriafrican-high-life

 
ジャズというよりは、アフリカ音楽の原風景、アフリカの土着音楽のリズム&ビートを聴いている様で、これはこれで僕は好きだ。「ワールド・ミュージック」志向のフュージョン(融合)音楽として、録音年の鑑みれば、先進的な内容と僕は評価している。まあ、これが当時、若しくは現代においても、セールス的に満足することが出来るか、と問われれば、応えは「No」。

売れないからと言って録音しないのでは無く、ジャズの大本の1つであるアフリカン・ネイティヴな「リズム&ビート」をメインとした「ワールド・ミュージック」志向のフュージョン(融合)音楽を記録したというところに、ジャズ・レーベルの老舗を運営していたアルフレッド・ライオンの矜持を感じる。

ちなみに、CDではボートラが3曲(1964年10月30日の録音)、「Gbogbo Omo Ibile (Going Home)」「Agbamurero (Rhino)」「Igbesi Aiye (Song of Praise to God)」が追加されている。この3曲については『African High Life』と同一の録音では無いが、内容的には、アフリカン・ネイティヴな「リズム&ビートの洪水」がメインの同傾向の音で、これを、もともとの『African High Life』の音と比べてみると面白い。

ちなみにパーソネルは、Solomon Ilori (vo, pennywhistle, talking drum, g), Coleridge-Taylor Perkinson (p, musical director) までは同じ、以下、Donald Byrd (tp), Hubert Laws (ts, fl), Bob Cranshaw (b), Elvin Jones (ds), Chief Bey, Roger Sanders, Ladji Camara, Sonny Morgan (conga, hand drum, perc)。

リズム隊以外は、当時のブルーノートのお抱えの売れっ子ジャズマンで固められていて、音楽監督もコールリッジ=テイラー・パーキンソン、もちろん、リーダーは、ソロモン・イロリなんだが、出てくる音が『African High Life』の音とはちょっと違う。

リズム&ビートはアフリカン・ネイティヴな「リズム&ビートの洪水」で同じなんだが、ドナルド・バードのトランペット、ヒューバート・ロウズのテナー&フルートのフロント2管の音がハードバップ・ジャズな音なのだ。ボートラの3曲は、アフリカン・ネイティヴな「リズム&ビートの洪水」がメインのハードバップ・ジャズという趣き。明らかにフレーズの音がモダン・ジャズしている。

しかし、ブルーノート盤として、正式にリリースしたは、先に録音された『African High Life』の録音であり、後の1964年10月30日の録音は、正式なアルバム化には至っていない。そういうところにも、ブルーノートの総帥ディレクター、アルフレッド・ライオンの、プロデューサーとしての、経営者としての凄みを感じるのだ。

『African High Life』はブルーノートの音作りにおける懐の深さの「賜(たまもの)」である。
 
 

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2023年4月15日 (土曜日)

キット・ダウンズと再び出会う

21世紀のECMレーベルに録音するミュージシャンは「多国籍」。以前は北欧、ドイツ、イタリアがメインだった様に記憶するが、21世紀に入ってからは、範囲を拡げて、イギリス、東欧、中近東、そして、ジャズの本家、米国出身の若手〜中堅ミュージシャンの録音を積極的に推し進める様になった。

Kit Downes『Dreamlife of Debris』(写真左)。2018年11月、英ウェストヨークシャーのハダースフィールド大学「St. Paul's Hall」でのライヴ録音。ECMの2632番。

ちなみにパーソネルは、Kit Downes (p, org), Tom Challenger (ts), Stian Westerhus (g), Lucy Railton (cello), Sebastian Rochford (ds)。ピアノ&オルガンのキット・ダウンズがリーダーの、チェロ、ギター入り、ドラムのみ、ベースレスの変則クインテット編成。

Kit Downes(キット・ダウンズ)は、英国のジャズおよびクラシックの作曲家、ピアニスト&オルガニスト。 1986年5月生まれなので、今年で37歳になる中堅ジャズマン。英国では、ピアニストのジョン・テイラーが、1970年代以降、ポスト・バップなニュー・ジャズ志向のモーダルなピアノを展開したが、ダウンズはこの「ポスト・バップなニュー・ジャズ志向」のピアニストの1人になる。

英国のジャズと言えば、メインストリーム志向の純ジャズについては、ビ・バップ至上主義が長く続いて、どちらかと言えば、旧来のジャズの枠に留まった中間派ジャズを中心に発展した様に思う。しかし、21世紀に入って、急速にポスト・バップ志向、ニュー・ジャズ志向の展開が出てきて、ダウンズの様に、英国ジャズの枠を越えて、グローバル化に走るジャズマンも出てきた。
 

Kit-downesdreamlife-of-debris

 
さて、この『Dreamlife of Debris』であるが、出てくる音は、従来の「英国ジャズ」の雰囲気は皆無。ECMジャズ志向の耽美的でリリカル、透明度が高く、音の拡がりと間を活かしたニュー・ジャズな音志向が強く出ている。

ピアノはリリカル、ファンクネスは皆無、音の透明度が高い欧州ジャズ志向の純ジャズ・ピアノが、変幻自在、硬軟自在に、音のエコーと拡がりと間を活かして、時に耽美的に、時にスピリチュアルに変化していく様には、思わず真剣に聴き耳を立てたりする。

このクインテット演奏でユニークなのは、ダウンズ自身が弾くオルガンの音とルーシー・レイルトンの奏でるチェロの音。このオルガンとチェロの音自体が、ECMジャズのニュー・ジャズ志向を増幅し、このオルガンとチェロの音の拡がりが、ECMジャズ志向の音世界に不思議な変化を醸し出す。

特にオルガンの音は、ECMジャズにとっては「不意打ち」に近いイメージなんだが、これはこれで良い感じ。ECMジャズにオルガン、これ「目から鱗」です。

どこか「アンビエント・ミュージック」を彷彿とするフレーズも満載で、ECMジャズの美意識そのものの音世界は結構、癖になる。当然、即興演奏がメインとなった展開で、クールで静的な展開ではあるが、時にフリーに展開する部分もあり、丁々発止とインタープレイを展開する部分もあり、欧州ジャズの秀作として、しっかりと楽しめる内容になっている。

これも「ジャズ」である。21世紀に入って、ジャズの裾野はどんどん広がっていく。
 
 

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2023年4月14日 (金曜日)

ステファノ・バターリアを知る

春の陽気には、ECMレーベルの音が良く似合う。欧州ジャズ独特の黄昏時の様な、クールな「寂寞感」。ECMの音にはその欧州ジャズ独特の「寂寞感」が、独特のエコーを纏って、しっかりと「ある」。特にマイナー調なフレーズでは、その「寂寞感」は増幅される。その増幅された「寂寞感」は、静的なスピリチュアル・ジャズとして、ECMの音に反映される。

Stefano Battaglia Trio『In The Morning - Music of Alec Wilder』(写真左)。2014年4月, 伊トリノでの録音。ECMの2429番。ちなみにパーソネルは、Stefano Battaglia (p), Salvatore Maiore (b), Roberto Dani (ds)。イタリア出身のピアニスト、ステファノ・バターリアがリーダーのピアノ・トリオ編成。

ステファノ・バターリアはイタリアのジャズ・ピアニスト。1965年、イタリアのミラノの生まれ。今年で58歳になるベテランの域に入った、実績のあるジャズ・ピアニストである。初リーダー作は1987年。2003年からECMレーベルをメインに活動している。

ベースのサルヴァトーレ・マイオーレは、イタリアのサルデーニャ州出身、1965年生まれ。ドラムのロベルト・ダニは、イタリアのヴィチェンツァ出身、1969年生まれ。

このステファノ・バターリアのトリオは全員イタリア出身。純イタリアのピアノ・トリオである。純イタリアのピアノ・トリオが、イタリアのジャズ・レーベルでは無く、ECMレーベルに録音を残す。ジャズのボーダーレス化をここでも感じる。
 

Stefano-battaglia-trioin-the-morning-mus

 
この盤のタイトルには副題で「Music of Alec Wilder」とある。そう、この盤は米国の作曲家アレック・ワイルダー(Alec Wilder、1907-1980)のトリビュート盤である。このワイルダーは、米国のポップス曲、クラシックの室内楽やオペラ等の作曲家とのこと。実は僕は知らなかった。それでも、聴いてみると印象的なフレーズがてんこ盛りで、パターリアがアルバムの企画対象として採用した訳が良く判る。

イタリア・ジャズのピアノは、結構、ジャズとして伝統的な音作りがメインで、欧州ジャズの中でも、耽美的ではあるが、意外と骨太で粘りがある。が、バターリアのピアノはその傾向が無い。透明度が高く、スッキリとした音で耽美的、かつリリカル。どこか、キース・ジャレットを想起するが、キースほど難解では無い。スッキリ判り易い、耽美的で透明度の高いモーダルなフレーズが、パターリアのピアノの個性である。

そんなパターリアのピアノが「ECMレーベルの音の個性」にジャストフィットしているのが、とても良く判る。耽美的で透明度の高い、静的スピリチュアルなピアノ。テクニックは抜群で、様々な即興演奏のパターンを披露し、ニュー・ジャズ志向のモーダルな演奏を展開する。ゆったりとしたビートに乗って、音が漂う、印象的な「浮遊感」。そして、魅力的な「音の間」。バリエーション豊かな、静的スピリチュアルな即興演奏。

マイオーレのベース、ダニのドラムも、パターリアのピアノの音の個性にしっかり追従し、パターリアのピアノを引き立て、音の個性を増幅する。この硬軟自在、緩急自在、変幻自在のリズム隊、その能力はかなり高い。

ECMレーベルでのピアノ・トリオ盤と言えば、キースの「スタンダーズ・トリオ」が直ぐに浮かんで、その後が続かないのだが、このパターリア・トリオの音は、キースの「スタンダーズ・トリオ」に匹敵する、内容の濃い音だと思う。静的スピリチュアルでモーダルな音が実に芳しい。
 
 
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2023年4月13日 (木曜日)

フレディ・ハバードのお蔵入り盤

ブルーノート・レーベルの有名なアルバムのカタログに、1500番台、4000番台、4100番台、4200番台がある。ブルーノートは几帳面なレーベルで、それぞれの「番台」のカタログで空き番や飛び番が無い。

それぞれの「番台」で、ちゃんと100枚、アルバムがアサインさている。しかし、理由が明確では無い、アルバムの内容の出来は良いのに、何故か「お蔵入り」になったアルバムがある。これが実に不思議な存在なのだ。

Freddie Hubbard『Here to Stay』(写真左)。1962年12月27日の録音。ブルーノートの4135番だが、録音当時は未リリース。1976年になって、ようやくリリースされている(写真右)。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b), Philly Joe Jones (ds)。リーダーのハバードのトランペットと、ショーターのテナーがフロント2管のクインテット編成。

この盤は先にご紹介した、理由が明確では無い、アルバムの内容の出来は良いのに、何故か「お蔵入り」になったアルバムの1枚である。カタログ番号もアサインされ、アルバム・ジャケットも決定され、ほぼ全てを仕上げながら、当時リリースされなかった盤。

パーソネルを見渡せば、当時所属していた、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの親分のドラムを、マイルスの1950年代の黄金のクインテットのドラマー、フィリー・ジョーに代えたクインテット編成。ハバード以下のメンバーは、当時の新主流派の主要メンバー。それではこの盤の演奏の志向は「新主流派=モード・ジャズ」かと思いきや、従来の手慣れたハードバップの演奏が展開されるから、ちょっと肩すかしを食らう。
 

Freddie-hubbardhere-to-stay

 
フィリージョーに遠慮した訳でもないのだろうが、このハードバップの音はちょっと違和感が伴う。1950年代のハードバップの名演の数々の様に「熱く」ない。というか、悠然としていてクール。まるで、モード・ジャズを演奏する雰囲気とマナーで、ハードバップを振り返って演奏している感じがするのだ。

収録された楽曲も取り立てて共通項は無く、ジャム・セッションの時の様な「その時に思いついた様な」選曲。しかしながら、スタンダード曲の選曲は良い感じ。が、これらのスタンダード曲はモードで演奏して欲しかったなあ、と感じる。ハードバップ風に演奏しても良い感じなんだが、このメンバーではモードでの演奏を聴きたかった思いがする。

しかし、この「モード・ジャズを演奏する雰囲気とマナーで、ハードバップを振り返って演奏している感じ」でも、超有名スタンダード曲の「Body and Soul」は名演に値する。ハバードのクールな吹きっぷり、ショーターの新鮮なアドリブライン、ウォルトンのクールで小粋に揺らぐピアノ。1960年代の「ジャズの多様化」の時代に、新しい響きを宿したハードバップな演奏と解釈。

1962年当時、ジャズの多様化の時代、そして、この盤のメンバーの大半は新主流派でモーダルなジャズが得意。そんな時代とメンバーでハードバップをやったから、判り難いというか、理解し難いというか、当時のジャズの演奏トレンドに乗った個性が際立たないというか、恐らく、聴き手に強く訴求しないのでは、とブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは判断したのかもしれない。

それでも、メンバー個々のパフォーマンスは水準をはるか超えている。これだったら、モード・ジャズをやれば良かったのになあ、と思う。アルフレッド・ライオンもそう思ったのでは無いか。やっぱり、皆、フィリージョーに遠慮したのかなあ(笑)。
 
 

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2023年4月12日 (水曜日)

トランペッターのアヴィシャイ

21世紀に入ってからずっとECMジャズの快進撃が続いている。一時、現代音楽や現代クラシックの融合に傾倒して、即興演奏がメインではあるが、モダン・ジャズとはちょっと距離ができはじめた時期もあった。が、21世紀に入ってから、米国出身の実績あるジャズマンや中近東や東欧のジャズマンをリーダーとして登用したり、以前より、純「欧州」にこだわらない音作りになって以降、逆に新しいジャズの要素が強く出るようになって、ECMは現代ジャズを牽引する重要なジャズ・レーベルのひとつに返り咲いている。

Avishai Cohen『Into The Silence』(写真左)。2015年7月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Bill McHenry (ts), Yonathan Avishai (p), Eric Revis (b), Nasheet Waits (ds)。イスラエル・テルアビブのトランペッター、アヴィシャイ・コーエンがリーダーのフロント2管のクインテット編成。

ECM独特のエコーのかかったトランペットの音を聴いて、思わず「マイルス・デイヴィス」を想起した。スッと伸びた、やや「ひしゃいだ」様な、ブリリアントでクールな音色。ミッドなテンポで囁くように語りかける様な吹き回し。拡がりと奥行きと伸びのあるモーダルなフレーズ。アヴィシャイのトランペットは、マイルスのトランペットを、クラシックっぽく整えて欧州ジャズ化した様な音なのだ。これが実に「染み入る」。

演奏の基本はモード。モード・ジャズのECM版、欧州ジャズをベースにしたモード・ジャズ。リズム&ビートは柔軟。時々、スピリチュアルな響きも出てくる。欧州ジャズの下でのモード・ジャズなので、ファンクネスは皆無。フレーズのここかしこに、エスニックな雰囲気が漂う。いわゆる「イスラエル・ジャズ」の特質もしっかりと反映されている。
 

Avishai-coheninto-the-silence

 
共演のメンバーも皆、好演。特に印象に残るのは、ヨナタン・アヴィシャイのピアノ。モーダルなピアノで、音を拡げていく様なアルペジオな弾き回しは、どこか「ハービー・ハンコック」を、現代音楽的な硬質なフレーズを繰り出すところは「チック・コリア」を想起する。が、物真似では全く無い。ヨナタンのモーダルなピアノは、いかにも欧州ジャズらしくファンクネス皆無、マイナー調な哀愁感がドップリ漂う個性的な音。

ナシート・ウェイツのリズム・キープでなく煽るようにフィルをつぎつぎ入れてくる手数多いドラミングは、まるで「トニー・ウィリアムス」。欧州ジャズよろしくクールで透明度の高いトニー、といった風情の、クールで情感溢れる多弁なドラミングはとても印象的。演奏全体のリズム&ビートを取り回し、キープし、演奏全体の「底」をサポートするのは、エリック・レヴィスのベース。これまだ、このレヴィスのベースを聴いていると「ロン・カーター」を想起するのだ。

テナー・サックスのビル・マッケンリーはモーダルなテナーで、欧州ジャズ的なフレーズを吹き上げる。クールでモーダルで、時々エスニックなフレーズは、フロント管の相棒、アヴィシャイのトランペットの「影」の様に、アヴィシャイのトランペットを引き立て、魅力を増幅する。アヴィシャイのトラペットを良く理解したフロント管の相棒である。

現代のECMレーベルらしい音作りになっていて、欧州ジャズ、ECMジャズにおける「モード・ジャズ」といった、今までのECMレーベルに無い演奏内容が実にユニークかつ素晴らしい。この盤を聴いていて、21世紀に入って「ジャズのグローバル化&ボーダーレス化」が進んでいることを改めて実感した次第。良い内容のアルバムです。
 
 

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2023年4月11日 (火曜日)

エルヴィンの未発表音源です

ここ2〜3年、ジャズの未発表音源について、対象となるジャズマンのバリエーションが広がって来た様に感じる。以前は、決まって「ビル・エヴァンス」か「ジョン・コルトレーン」。この2人のジャズ・ジャイアントの未発表音源は「絶対に売れる」らしい。よって、この2人の未発表音源ばかりが出回っていた様な気がする。

しかし、最近は、なかなか興味深いジャズマンについての未発表音源のリリースが出てきていて、どの未発表音源も内容が実に濃い。最近の未発表音源で興味深かったのは「エルヴィン・ジョーンズ」「デイブ・ブルーベック」「ローランド・カーク」「チック・コリア」。この5人の未発表音源は良かったなあ。

Elvin Jones『Revival / Live at Pookie's Pub』(写真左)。1967年12月、NYの「Pookie's Pub」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ts), Wilbur Little (b), Billy Greene (p)。伝説のドラマー、エルヴィン・ジョーンズがリーダーのカルテット編成。コルトレーン死去からわずか2週間後の公演である。

当時、新進気鋭のジョー・ファレルのテナーがフロント1管、曲者ベーシスト、ウィルバー・リトルと、Elvin Jones & Richard Davis『Heavy Sounds』(1967年録音)で共演したピアニスト、ビリー・グリーンとリーダーのエルヴィン・ジョーンズのリズム隊のカルテット編成。

たった4人のライヴ演奏なんだが、音がとても厚くて迫力がある。これは、エルヴィン・ジョーンズの重戦車の様な、重くてポリリズミックでスピード感溢れるドラミングの賜物である。
 

Elvin-jonesrevival-live-at-pookies-pub

 
ライヴ演奏の基本は「モード・ジャズ」。ハードバップの延長線上にある「限りなく自由度の高い」従来の伝統的なモダン・ジャズ演奏の範疇にしっかりと軸足を残したモーダルな演奏。先頭を切って、フロントのジョー・ファレルのテナーが疾走する。このファレルのモーダルなテナーが個性的かつ印象的。1970年代以降の活躍も納得である。

そんなモーダルなテナーをエルヴィンのドラミングが、がっちりとサポートし、頼もしく鼓舞する。そして、リトルのベースとグリーンのピアノが追従する。そう、このリズム・セクションのパフォーマンスが見事なのだ。コルトレーンが、まだ「限りなく自由度の高い」従来の伝統的なモダン・ジャズ演奏の範疇にしっかりと軸足を残したモーダルな演奏をやっていた頃のリズム&ビートを進化させた、エルヴィンならではのリズム&ビート。

エルヴィンがリーダーのライヴ盤なので、エルヴィンのドラム・ソロがふんだんに入っている。大体はライヴ盤でのドラム・ソロって冗長感抜群で、聴いている途中で飽きが来たりするのが常なのだが、エルヴィンのドラム・ソロは飽きない。

コルトレーン死去からわずか2週間後の公演だが、エルヴィン以下、カルテットのメンバーは皆、溌剌とエネルギッシュに演奏している。当時、死去前のコルトレーンは、フリー&スピリチュアルに思いっ切り傾倒していたので、このライヴのカルテットのメンバーとは既に距離があったのかもしれない。

1960年代後半のモード・ジャズのホットなライヴ音源が「今」になって体感できた。やはり、当時の「限りなく自由度の高い」従来の伝統的なモダン・ジャズ演奏の範疇にしっかりと軸足を残したモーダルな演奏はレベルが高かったんやなあ、と改めて再認識した次第。ほんと、良い未発表ライヴ音源でした。
 
 

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2023年4月10日 (月曜日)

ファンキー&グルーヴィーな盤

ブルーノートのお抱えギタリスト、グラント・グリーン。我が国ではあまり知られたギタリストでは無かった。通算で約30枚ものリーダー作をリリースした、ジャズ・ギタリストのメジャーな存在だと思うのだが、僕がジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半から暫くは、グリーンの名前を聞いたことが無かった。

グリーンの名前が我が国でも流布し始めたのは、RVGリマスターのブルーノート盤の復刻シリーズからだと思う。それでも、それ以来、爆発的にその人気が上がったということは無く、不思議なことなんだが、恐らく、グリーンの「ファンクネス濃厚、パッキパキ鋼質のシングルトーン」の渋いギターが、どうも我が国では分が悪いらしい。速弾きなどの派手派手しさは無く、流麗でスインギーなオールド・スタイルのジャズ・ギターでも無いところがネックなんだろう。

Grant Green『Feelin' The Spirit』(写真左)。1962年12月21日の録音。ブルーノートの4132番。 ちなみにパーソネルは、Grant Green (el-g), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds), Marvin Masseaux (tambourine)。ブルーノートのお抱えギタリスト、グラント・グリーンの通算13枚目のリーダー盤。
 

Feelin-the-spirit

 
この盤でのグラント・グリーンのギターは「ファンクネス濃厚、パッキパキ鋼質のシングルトーン」は変わらない。ほんと、スタイルがブレないギタリストである。この盤は、タイトルから類推できる様に「アフロ・アメリカンのスピリチュアル」を志向した音作りになっている。これが、グラント・グリーンのギターの持つ「ファンキー・グルーヴ」にジャストフィット。ブルージーでグルーヴィーでファクネス溢れる名演に惚れ惚れする。

そして、これは凄いなあ、と感心したのが、ハービー・ハンコックのバッキング。新主流派志向、モーダルで時々フリーなピアノのハンコックが、このグラント・グリーンのギターにフィットするのか、と思ったんだが、さすがハンコック、素晴らしいテクニックと弾き回しで、グリーンのギターの邪魔をすること、音がぶつかることは全く無く、グリーンのギターのグルーヴ感を増幅し、ファンクネスを増強する。ハンコックのピアノのテクニックの奥深さを再認識した。

ワーレン、ヒギンスのリズム隊のサポートも良好で、この盤については、ジャズ・ギター盤にありがちな「ギターの一本弾きが単調が故にダレる」が全く無く、全編、締まった内容の演奏になっている。ジャズのルーツともいうべきブルースやゴスペルを基にした演奏が実にしみじみと染み入ります。ジャズ・ギターの、グラント・グリーンの名盤と言えるでしょう。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年4月 9日 (日曜日)

バリサク炸裂のフュージョン盤

フュージョン・ジャズは、1970年代後半から1980年代前半までが流行期だったが、それ以降の時代でも、フュージョン・ジャズは切々と深化している。「時代の徒花」などという揶揄もあるフュージョンだが、優れた内容のアルバムも多くあって、僕は「フュージョン・ジャズ」という1つのジャズの演奏トレンドを肯定的に認めている。

Ronnie Cuber & David Sanborn『Pin Point』(写真左)。1986年の作品。我が国の「ELECTRIC BIRDレーベル」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Ronnie Cuber (bs), David Sanborn (as), George Wadenious (g), Rob Mounsey (key), Will Lee (b), Steve Gadd (ds), Steve Thornton (perc), David Matthews (arr)。

バリサクのキューバー、アルトのサンボーンのフロント2管に、キーボードのリズム・セクション、そして、ギター、パーカッションが入ったセプテット編成。アレンジはデイヴィッド・マシューズが担当。

リリース年の1986年は、フュージョン・ジャズのブームは去って、純ジャズ復古が始まった時代。フュージョン・ジャズは成熟仕切り過ぎて、冗長で甘い、AOR志向のイージーリスニングなフュージョン盤が細々とリリースされていた、と記憶する。あの頃を振り返えると、「ああ、フュージョンも終わったなあ」と寂しく思ったことを覚えている。

皆がこぞって、純ジャズ復古に流れていく中、この盤のリリースに出会った。とにかく、ロニー・キューバーのバリサクが好きで、ディヴィッド・サンボーンのアルトが好きで、そんな2人がフロント2管を仕切るフュージョン盤である。聴く前から不思議とこの盤は、おざなりな「AOR志向のイージーリスニングなフュージョン盤」では無いと感じていた。
 

Ronnie-cuber-david-sanbornpin-point

 
で、聴いてみると「当たり」。フュージョン・ジャズの「良き時代の良きサムシング」が横溢した、ばりばり硬派なフュージョン・ジャズが展開されている。メンバーもフュージョン全盛期の第一線を走り抜けてきた強者共ばかり。メンバーそれぞれが好調で、味とテクニック溢れる、力の入ったパフォーマンスが展開される。

もちろん、キューバーのバリサク(全曲参加)とサンボーンのアルト(1曲目「Two Brothers」と4曲目「Move It」のみ参加)は絶好調。なるほど、フロント管がきっちりキメるセッションは絶対に内容が良い。

特に、キューバーのバリサクがとても良い。低音のブラスの響きを轟かせて、時に捻る様に、時に軋むような、バリサク独特のエネルギッシュでクールなブロウを吹き上げる。あれだけ図体のでかいバリサクを駆使して、意外と速いフレーズを吹きまくっていくキューバーは迫力満点。

僕の大好きなスタンダード曲「On Green Dolphin Street」は、アレンジ、演奏共に素晴らしい出来。キューバーのソロは圧巻、マシューズのアレンジは、ライトな「ネオ・ハードバップ」で、意外と硬派で骨太な展開。最後がフェード・アウトで終わるのが惜しいが、この演奏は素晴らしいの一言。

バックの面々も好演につぐ好演で、ガッドのシャッフル・ビートなドラミングはとても小粋に響き、マウンジーのシンセはお洒落でご機嫌、リーのベースのスラップも格好良く、ヴァンドロスのエレギはフュージョンな響きが満載。

良い内容のフュージョン盤です。硬派でイージーリスニングに流れない、後のライトな「ネオ・ハードバップ」志向のエレ・ジャズで、アルバムに収録された全曲に、マシューズのアレンジがバッチリ効いています。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2023年4月 8日 (土曜日)

味のあるスコットのオルガン

ブルーノート・レーベルは、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの卓越した本質を見抜く感性のもと、当時からオルガン・ジャズに長けていた。オルガンの醸し出すファンクネスとグルーヴが聴き手にしっかりと訴求する、ということを見抜き、1950年代、1500番台のジミー・スミスの重用から、オルガン・ジャズをしっかりと録音してきた。

Stanley Turrentine『Never Let Me Go』(写真左)。1963年1月28日と2月13日の録音。ブルーノートの4129番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Shirley Scott (org), Major Holley (b, tracks 1-5 & 7), Sam Jones (b, tracks 6 & 8), Al Harewood (ds, tracks 1-5 & 7), Clarence Johnston (ds, tracks 6 & 8), Ray Baretto (congas)。

スタンリー・タレンタインの単独名義のリーダー作だが、当時、夫婦だったスタンリー・タレンタインとシャーリー・スコットの共演盤になる。2つのセッションからの選曲で、ベースとドラムが、それぞれのセッションで異なるジャズマンが担当しているが、音の大勢に影響は無い。逆に、レイ・バレットのコンガの参加が、タレンタインとスコットの持つファンクネスを増幅していて、実に効果的。

音の傾向としては、タレンタインお得意の「どっぷりソウルフルで骨太なファンキー・ジャズ」では無く、スコットの「明るくポップで軽快なファンキー・ジャズ」な雰囲気が強い。夫婦の共演だが、どちらかと言えば、細君のシャーリー・スコットのオルガンの個性を活かす方向のアレンジで、この盤はまとめられている。夫君のタレンタインが細君のスコットの音の個性に寄り添う恰好になっている。
 

Stanley-turrentinenever-let-me-go

 
つまり、この盤では、明るくポップで軽快なタレンタインのテナー・サックスが聴ける訳で、太くて低音をブライアントに響かせるソウルフルなテナーが、明るくポップで軽快なオルガンの醸し出すリズム&ビートに乗って唄うのだ。意外とキュートでライトなテナーを吹くタレンタイン。やはり一流のテナーマン、演奏テクニックの引き出しの多さに感心する。

シャーリー・スコットのオルガンは、フット・ペダルでベースラインを代替することはしないので、この盤のセッションではベーシストが必ず入っている。やはり、低音のリズム&ビートを司る専門のベースが入っている分、演奏全体のベースラインが多彩で、なかなか内容の濃い、テクニックの高いファンキー・ジャズに仕上がっている。「明るくポップで軽快なファンキー・ジャズ」だが、しっかりと音と対峙する鑑賞に耐える内容なのには感心する。

軽快に飛ばすスタンダード曲の「Without A Song」、歌心溢れるタレンタインのテナーとグルーブ感溢れるスコットのオルガンが出色の出来の、ミュージカル「ジプシー」の挿入曲の「You'll Never Get Away From Me」、スコット作のタイトル曲も良い出来。収録された全ての曲が明るくポップで軽快なファンキー・ジャズ」としてまとめられていて、アルバム全体の統一感も良好。

スタンリー・タレンタインの単独名義のリーダー作だが、シャーリー・スコットのオルガンの個性、「明るくポップで軽快なファンキー」な個性がしっかり記録された好盤。当時、夫君だったタレンタインも、そんなスコットの個性を引き立たせる側に回っていて好演。なかなか味わい深い「オルガン・ジャズ」盤です。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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2023年4月 7日 (金曜日)

オルガン・ジャズの隠れ好盤です

我が国のジャズ・シーンでは、オルガン・ジャズは評価が低い時代が続いた。精神性を追求したコルトレーンが絶対的な存在の時代、1960年代後半から、オルガン・ジャズは「俗っぽい」として低評価だった。ファンキーでダンサフルで脳天気なオルガン・ジャズは精神性と芸術性に大きく欠けるとする向きが多かった記憶がある。

ということで、僕がジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半の頃は、レコード屋にはオルガン・ジャズは稀少だった。ジミー・スミスだって意外とマイナーな存在。そもそも、ジャズ盤の箱に特別に「オルガン」って無かったような気がする。

オルガン・ジャズが注目され始めたのは、ブルーノートのRVGリマスターの紙ジャケシリーズで、ブルーノートお得意の「オルガン・ジャズ」盤の数々が復刻されたのが切っ掛けだったと思う。それと「レア・グルーヴ」のブーム。レア・グルーブで引用されるジャズ盤の中で、オルガン・ジャズ盤が結構あって、それも注目の切っ掛けだったかと思う。

Freddie Roach『Mo' Greens Please』(写真左)。1963年1月21日、3月11日の録音。ブルーノートの4128番。ちなみにパーソネルは、Freddie Roach (org), Conrad Lester (ts), Kenny Burrell, Eddie Wright (g), Clarence Johnston (ds)。 
 

Freddie-roachmo-greens-please

 
オルガンのフレディ・ローチがリーダーのカルテット編成。ギターは2人で交代で担当している。ベーシストがいないのは、オルガンがフットペダルでベースラインを担当しているからである。

この盤はブルーノートのカタログ順のリイシュー盤で初めて見た。21世紀に入ってからである。そもそも、フレディ・ローチの名前は知っていたが、このジャケットはそれまで見たことが無かった。やっぱり、その頃までオルガン・ジャズってマイナーな存在だったのかあ、と思う。

聴くと、とってもご機嫌な、グルーヴ感溢れるオルガン・ジャズ盤である。熱いハードバップなファンキー・チューンやボサノバな雰囲気の躍動感のある演奏、はたまた、ライトでブルージーな演奏、そして、オルガン・ジャズお得意のソウル・ジャズ風の演奏。オルガン・ジャズの長所を活かしたご機嫌な演奏の数々。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの手腕、恐るべしである。

これだけ、オルガン・ジャズの楽しさ、グルーヴ感、味わいを伝えてくれるオルガン盤はなかなか無いと思う。今でも、フレディ・ローチのリーダー作の中でもマイナーな存在だとは思うが、とにかく、オルガン・ジャズは聴いて楽しく、聴いてグルーヴィーでないと、と常々思っているので、この盤オルガン・ジャズの隠れ好盤だと思います。
 
 

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2023年4月 6日 (木曜日)

フュージョン最後期のバリサク盤

1970年代後半から1980年代前半にかけて、フュージョン・ジャズが大流行。フュージョン・ジャズとは、基本的には、ジャズを基調にロックやラテン音楽、電子音楽、時にはクラシック音楽などを融合(フューズ)させた音楽のジャンル(Wikipediaより)。

厳密には、1970年代前半、ロックやラテン音楽、電子音楽、時にはクラシック音楽などを融合(フューズ)させた8ビートベースのジャズは「クロスオーバー・ジャズ」だと僕は定義付けている。1970年代半ばから、AORやR&Bとの融合が図られ、「ソフト&メロウ」もしくは「アーバン&ファンキー」の雰囲気を強調としたクロスオーバー・ジャズの発展形が「フュージョン・ジャズ」だと解釈している。

言い換えると、クロスオーバー・ジャズは「ロック」なリズム&ビートを前面に押し出したエレ・ジャズだと思うし、フュージョン・ジャズは「ソフト&メロウ」もしくは「アーバン&ファンキー」なリズム&ビートを前面に押し出したエレ・ジャズだと思っている。

Ronnie Cuber『Passion Fruit』(写真左)。1985年の作品。ちなみにパーソネルは、Ronnie Cuber (bs), Richard Tee (key), Rob Mounsey (Syn), Will Lee (b), Dave Weckl (ds), Georg Wadenius, George Benson (g), Manolo Badrena, Sammy Figueroa (perc), David Matthews (arr, cond, produce)。バリトン・サックス(以降、バリサクと略)奏者、ロニー・キューバがリーダーのフュージョン・ジャズのブームの最終時期における録音。

日本発のフュージョン・ジャズ専門レーベル(と言って良いだろう)であるElectric Birdレーベルからのリリース。パーソネルを見渡せば、フュージョン・ジャズで活躍してきた錚々たるメンバーが参加。成熟仕切った「絵に描いた様な」フュージョン・ジャズがこの盤に詰まっている。
 

Ronnie-cuberpassion-fruit

 
当時の帯紙のクレジットでは「with GEORGE BENSON」とあるが、1曲目のタイトル曲「Passion Fruit」、4曲目の「Love Notes」の2曲のみ。他の4曲は、スウェーデンのゲオルグ・ウェデニアスが担当している。しかし、2曲だけの参加のジョージ・ベンソンであるが存在感は抜群。ロニー・キューバのバリサクとのユニゾン&ハーモニーなんか、アーバンでファンキーな雰囲気濃厚。

ロニー・キューバのバリサクが小粋でお洒落。明らかにフュージョン・ジャズの「良いところ」切り取った様な、マシューズのアレンジが巧妙に効いて、無骨で重低音なバリサクであるが、「ソフト&メロウ」もしくは「アーバン&ファンキー」の雰囲気を強調としたブロウになっている。バリサクでもアーバンでお洒落なフュージョン・ジャズが出来る、という好例だと思う。

そして、この盤の演奏に一本筋が入った様に感じるのは、デイヴ・ウェックルのドラミングの賜物だろう。何気なく叩いているが、意外と変幻自在、硬軟自在なドラミングで演奏全体のビートを整え、コントロールしている。このウェックルのドラミングの技術の高さは特筆に値する。このウェックルの優れたドラミングが故、演奏全体のリズム&ビートが引き締められ、ソフト&メロウな演奏に躍動感が加わっていて、効いていて気持ちが良い。

録音の時期が時期だけにあまり内容的には期待出来ない様に感じるが、どうして、フュージョン・ジャズ最後期の録音だが、その内容は意外と良い。演奏者全員、好調なパフォーマンスを発揮していて、演奏の密度は濃い。それぞれのソロ・パフォーマンスも聴きどころ満載。意外や意外、この盤、フュージョン最後期の、エレクトリック・バード・レーベルの好盤だと思います。
 
 

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2023年4月 4日 (火曜日)

ウエストコースト・ジャズのタル

ジャズ・ギターのスタイリストの1人、タル・ファーロウを聴いている。超絶技巧な高速弾き回し、巨大な手を一杯に広げて縦横無尽にフレーズを紡ぎ出す様を形容した「オクトパス・ハンド」によるダイナミックなフレーズの拡がり。ピッキングも力強く、音は硬質。しかし、出てくる音は歌心満点。とても聴き応えのある純ジャズ志向のギターである。

『A Recital By Tal Farlow』(写真左)。1955年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Perkins (ts), Bob Gordon (bs), Bob Enevoldsen (tb), Tal Farlow (g), Monty Budwig (b), Lawrence Marable (ds)。ピアノレス。ウエストコースト・ジャズにおける、3人の実力派ホーン奏者と共演したタルのリーダー作。

ウエスト・コーストでのセッションになるので、当時の「お洒落なアレンジで聴かせるジャズ」が、この盤に詰まっている。まず、中低音域のテナー・サックス、バリトン・サックス、ヴァルブ・トロンボーンが織り成す豊かなユニゾン&ハーモニーが良い。そのお洒落で聴き応えのあるホーン・アレンジをバックに、切れ味の良いシングル・トーンのタルのギターが浮き出てくる。
 

A-recital-by-tal-farlow

 
テナー、バリトン、ボーンの低音中心の三管編成というところが、この盤のアレンジの「キモ」。ウエストコースト・ジャズの良いところが満載。実に雰囲気ある、聴き応えの良い演奏に仕上がっている。ウエストコースト・ジャズのバック演奏は流麗そのものなのだが、この流麗なバックの下、タルが訥々としたシングルトーンの、バキバキで骨太なギターで、超絶技巧に弾きまくる。

ルンバ調が楽しい「アウト・オブ・ジ・ノーホエア」、ブルージーでバップな名曲「ウォーキン」、溌剌と躍動感溢れる「ウィル・ユー・スティル・ビー・マイン」など、どの曲のアレンジは良好、タルのギターは絶好調である。タルがバッキングに回った時のコード・プレイも見事。

ジャケット・デザインも良好。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介記事にはまず、この盤のタイトルが上がったのを見たことがない。タルのリーダー作紹介ですら、この盤のタイトルが上がるのを見たことが無いのだが、この盤、ウエストコースト・ジャズにおけるタルのリーダー作として、とても良い出来だと思います。好盤。
 
 

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2023年4月 3日 (月曜日)

タウナーのソロ・ギターの新盤

マンフレート・アイヒャーが1969年に設立した「ECM(Edition of Contemporary Music)」。欧州ジャズの老舗レーベルであり、1970年代以降、21世紀に入って今日に至るまで、西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」を発信し続けている。

アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」を反映した、限りなく静謐で豊かなエコーを湛えた録音が個性。レーベルのジャズの演奏志向としては、4ビートのスインギーな従来のジャズとは無縁。即興演奏をメインとした、現代音楽から静的なスピリチュアル・ジャズの影響が色濃い「ニュー・ジャズ」。

Ralph Towner『At First Light』(写真左)。2022年2月、オスロでの録音。ちなみにパーソネルは、Ralph Towner (g) のみ。プロデュースはマンフレート・アイヒャー。ECMレーベルと共に歩み続けて、およそ50年。今年83歳になる米国のプログレッシヴなギタリスト、ラルフ・タウナーの最新ソロ・アルバムになる。
 

Ralph-townerat-first-light

 
凛とした透明度の高い、切れ味の良い音。フレーズは躍動感溢れ、限りなくリリカルで耽美的でメロディアス。そんなタウナーのギターが「ECMエコー」と呼ばれる印象的な深いエコーを纏って鳴り響く。タウナーのギターは明らかに「ECMレーベルの音」を具現化している。そんなタウナーのギターをこの最新のソロ盤で再確認することが出来る。

ホーギー・カーマイケルの 「リトル・オールド・レディ」、ジュール・スタインの 「メイク・サムワン・ハッピー」、人気のスタンダード曲「ダニー・ボーイ」など、選曲も小粋で聴き応えがある。タウナーの自作曲も内容は濃い。それにしても、タウナーのギターはブレが無い。かの初期の名盤『Diary』から約50年。タウナーのギターの個性はまったく変わらない。それでいて、マンネリに陥らないところが素晴らしい。高い演奏力と表現力の賜物だろう。お得意の12弦ギターのストロークも透明度高く躍動感抜群。

タウナー本人いわく、ジョージ・ガーシュウィン、ジョン・コルトレーン、ジョン・ダウランド、ビル・エヴァンスなどからの影響を受けている、というが、このソロ・パフォーマンスを聴いていて、それも至極納得。そして、ECMのお抱えギタリストらしく、出てくる音は「ECMの音」そのもの。そんなタウナーのギターが堪能出来る好盤である。
 
 

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2023年4月 2日 (日曜日)

ラヴァとピエラヌンツィのデュオ

21世紀になって、本格的に聴き始めたのだが、イタリア・ジャズは隅に置けない。欧州ジャズの雰囲気をしっかりと受け継いだ、メインストリーム系の純ジャズがメイン。硬派で骨のあるストイックな純ジャズ志向の演奏が主流で、イタリア・ジャズの範疇でのエレ・ジャズやフリー・ジャズを僕は聴いたことが無い。

Enrico Pieranunzi & Enrico Rava『Nausicaa』(写真左)。1993年3月29, 30日の録音。Enrico Rava (tp), Enrico Pieranunzi (p)。イタリア・ジャズの大御所、トランペットのエンリコ・ラヴァ、ピアノのエンリコ・ピエラヌンツィ、2人のデュオ演奏。ラヴァが54歳、ピエラヌンツィが44歳の時の録音。

トランペットのエンリコ・ラヴァは、リーダー作のカタログを見ていると、デュオ演奏が好きみたい。特にピアノとのデュオが結構ある。この盤は、イタリア・ジャズの大御所同士、ラヴァがベテランの域に入った時期、ピエラヌンツィがバリバリ中堅ど真ん中のデュオになる。どちらも油の乗りきった実績抜群のジャズマン。内容の濃いデュオ演奏を繰り広げる。
 

Enrico-pieranunzi-enrico-ravanausicaa

 
トランペットとピアノのデュオなので、ピアノが単体でリズム・セクションの機能とフロント楽器の機能の2つを果たすことが出来るので、どうしても、トランペットがフロント一辺倒、ピアノが伴奏がメインで、時々フロントのソロという役割分担になる。よって、トランペットのラヴァが目立ってはいるが、ピエラヌンツィも伴奏にソロに大活躍。

ピエラヌンツィの優れたピアノ伴奏があってこその、ラヴァの自由奔放なトランペット・ソロ。ラヴァのアドリブ・フレーズをよく聴いて、クイックに反応するピエラヌンツィのピアノ伴奏は見事。モーダルなトーンのフレーズで伴奏に回ったラヴァのトランペットのテクニックも見事。音も重ならず、リズム&ビートがぶつかることも無い。粛々とデュオ演奏を重ねているが、これは双方のテクニックのレベルが高く無ければ実現しない。

こういう雰囲気のデュオ演奏は、米国ジャズにはなかなか無い類のもので、ラヴァとピエラヌンツィ、双方のフレーズに仄かに哀愁感、寂寞感が漂うトーンがクールで、音もクッキリ明確で切れ味が良い。いかにも欧州ジャズらしい。イタリア・ジャズというよりは、欧州ジャズ共通の雰囲気を色濃く湛えた、じっくり聴いて感じ入る、極上のデュオ演奏がこの盤に詰まっている。
 
 

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2023年4月 1日 (土曜日)

2曲目以降のトリオ演奏が良い

ウィントン・ケリーのディスコグラフィーを確認していて、あれっ、と思った。ケリーのリーダー作と言えば、リヴァーサイドとヴィージェイの2つのレーベルからのリリースと思い込んでいたら、なんと、あの大手のヴァーヴ・レコードからのリリースもあったんですね。

ヴァーヴからのリーダー作は『Comin' in the Back Door』『It's All Right!』『Undiluted』『Smokin' at the Half Note』の4枚なのだが、そう言えば『Comin' in the Back Door』は聴いたことが無い。近々に聴きたいなあ。後は今までに聴いたことはあるんですが、ヴァーヴからのリリースとは印象が薄かったですね。

Wynton Kelly『Undiluted』(写真左)。1965年2月5日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds), Rudy Stevenson (fl, track 1 only), Unknown musician (perc, track 1 only)。1曲目の「Bobo」だけフルートを入れたカルテット、後は全てピアノ・トリオでの演奏になる。

1曲目の「Bobo」はカリプソ調の演奏で、フルートとパーカッションがカリプソ色を濃厚にしている。そう言えば、ケリーはジャマイカの血を引く家系の生まれ。そういう面で、カリプソには愛着があったのかな。ただ、この曲は如何にも「売らんが為」のポップで軽音楽的な演奏で、この曲だけ聴くと、後の曲は聴く気が起こらないほど。しかし、この盤の本質は2曲目以降にある。
 

Wynton-kellyundiluted

 
2曲目の「Swingin Till the Girls Come Home」以降、素敵なピアノ・トリオのパフォーマンスを愛でることが出来る。ケリーのピアノの個性である「健康優良児的にコロコロと明るく転がるように、独特の「揺らぎ」が翳りとなってスイングする」が、この盤のトリオ演奏で良く判る。

大手のヴァーヴ・レコードからのリリース故、やや商業主義に走った、ポップで軽音楽的なアレンジが、かえって良かったのだろう。ケリーはコロコロと明るく転がるようにピアノを弾くのだが、どこか「翳り」が見え隠れして、それが哀愁感となって我々の耳に響く。そんなケリーのピアノの翳り、哀愁感が、ポップで軽音楽的なアレンジが故に、明確に浮き出てくるようなのだ。

ただ、この翳りや哀愁感は、一般万民向けの大衆音楽としては地味な印象になって損をする。恐らく、このケリーのリーダー作は、セールス的にはあまり良くなかったのでは無いだろうか。でも、ケリーのピアノの個性については、この盤ではしっかりと前面に出ていて、ケリーのピアノの個性を愛でるには好適なリーダー作ではある。

ジャケもやっつけ感満載で、ヴァーヴ・レコードとしては、あまり多くは期待して無かったのかなあ。それでも、このリーダー作の2曲目以降の、ケリーのピアノ・トリオ演奏は実に味わい深い。ベースのポルチェンもドラムのコブも好演。ウィントン・ケリーのファンには聴き逃せない好盤だと思います。
 
 

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