テキサス・テナーの雄の好盤
ブルーノートの4100番台は、1962年〜1965年に渡ってリリースされたアルバムで全100枚。1962年~1965年と言えば、ジャズの世界はハードバップ全盛期を経て、多様化の時代に突入していた。そして、ブルーノートはこの4100番台で、この「ジャズの多様化」にしっかりと応えている。
多様化とは、ハードバップからジャズのアーティスティックな部分にスポットを当てた「モード・ジャズ」「フリー・ジャズ」「スピリチュアル・ジャズ」が、ポップで大衆向けの音楽として「ファンキー・ジャズ」「ソウル・ジャズ」「ラテン・ジャズ」と、ハードバップから、様々な志向毎にジャズ演奏のトレンドが派生したことを指す。
Don Wilkerson『Elder Don』(写真左)。1962年5月3日の録音。ブルーノートの4121番。ちなみにパーソネルは、Don Wilkerson (ts), John Acea (p), Grant Green (g), Lloyd Trotman (b), Willie Bobo (ds)。テキサス・テナーの雄、ドン・ウィルカーソンのテナーと、グラント・グリーンのぱっきぱきシングル・トーンなファンキー・ギターがフロントのクインテット編成。
ドン・ウィルカーソンは、1932年、米国ルイジアナ州マローヴィル生まれの、R&Bとソウル・ジャズのテナー奏者&バンド・リーダー。テキサス・テナーの雄として知られる。テキサス・テナーとは、ブルースを基調とした、骨太で気合いや根性を優先、豪快なブロウを身上とした、米国南部の男らしい荒くれテナーのこと。
そんなテキサス・テナーが心ゆくまで楽しめる。少しラテンなリズムが入ったダンサフルで躍動感のあるテナー、アーシーでブルージーで、ややゴスペルっぽいテナー、R&B基調のソウルフルでガッツのあるテナー、そんなテキサス・テナーをウィルカーソンが全編に渡ってガンガンに吹きまくっている。
そして、フロントの相棒、グラント・グリーンのパッキパキ・ファンキー・ギターが、このウィルカーソンのテキサス・テナーにばっちり合っている。グリーンのギターは切れ味の良い、骨太なシングルトーンが身上なんだが、ウィルカーソンの骨太テキサス・ギターとの相性抜群。
そして、ファンクネスだだ漏れのグリーンのギターが、ウィルカーソンのテナーと交わって、ソウルフルなギターに変身したりして、これがまたまた聴き応えがある。このウィルカーソンのテナーとグリーンのギターの化学反応も聴きものである。
ジャズ多様化の時代に、こういうテキサス・テナーがメインのリーダー作をリリースしてくるブルーノートって、懐深く、なんて粋なんだろう。だからこそ、ブルーノートの4100番台は、当時のジャズの演奏トレンドを幅広く捉えていて、聴いて楽しく、聴いて勉強になる。そして、ジャズって本当に他の音楽ジャンルに対して「懐が深い」なあ、と再認識した次第。
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