躍動するスナーキー・パピー
基本は、8ビートに乗った、ピアノ&キーボード、時々エレギをフロント・メインとしたインスト。高速8ビートのスムース・ジャズといった雰囲気。「クロスオーバー+ファンク+ダンス+フュージョン」を融合したエレクトリック・ジャズ。ダンサフルな面もあり、プログレッシヴ・ロックの様な側面もあり、ロックとジャズの間を突き抜ける、現代の「ジャズ・ロック」の担い手である。
Snarky Puppy『Empire Central』(写真左)。2022年3月3ー10日、ダラスの「Deep Ellum Art Company」でのライヴ録音。パーソネルを見渡すと、エレクトリックなジャズ・ビッグバンドといった風情。特徴としてはパーカッションが充実していて、リズム&ビートがしっかり効いていて、ダンサフルでもあり、疾走感抜群でもあり。ライトでポジティヴなジャズ・ファンクの響きが個性。
スナーキー・パピーのルーツであるテキサス州ダラスで、50人の観客を前にしたスタジオ・ライヴ録音。リーダー格は、Michael League (el-b, Minimoog Model D bass)。このマイケル・リーグのベースがスナーキー・パピーの個々の音をガッチリとまとめ、統率している。収録曲はボーナス曲を含み17曲。メンバーの19人中12人が作曲に参加するという、気合いの入った内容になっている。
バンドのメンバーはそれぞれ、テクニック優秀で、あらゆる展開にしっかりと追従していて、その統一感には舌を巻く。揺るぎやズレの無いユニゾン&ハーモニー、流麗なアドリブ・リレー。純ジャズの様に、フレーズにマイナーな翳りが稀少なので、演奏全体の雰囲気は明るくダンサフル。疾走感溢れる流麗なアンサンブルは、どこか、1970年代のプログレッシブ・ロックやジャズ・ロックの響きがしていてグッド。
米国出身のジャズ・ファンクらしく、内容的にはシンプル。欧州ジャズの様な複雑さやカオスは無い。爽快感と流麗さが前面に押し出されているので、気がつき難いが、R&B、ゴスペル、ファンクなど、米国ルーツ・ミュージックのルーツがしっかり組み込まれていて、それが、このスナーキー・パピーの演奏を「ジャズ」のジャンルに踏みとどまらせている。
こういうインスト・バンドって、最近のジャズ・シーンには稀少になってきたので、スナーキー・パピーって貴重な存在。演奏力もアレンジも最高で、バンドのピークを捉えたライヴ盤に仕上がっているのでは無いだろうか。高みに達したスナーキー・パピー。次の展開はどこへ行くのか。少々不安になるくらい、上出来のライヴ盤である。
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