ボーダーレスなジャズの響き
ロバート・グラスパーの5th.アルバム『Black Radio』から10年。ジャズ、ユーロ、ラップ、ヒップホップ、R&Bなど、ブラック・ミュージックを融合して、新しい響きを宿したニュー・ジャズな音世界も、いよいよ充実〜成熟の域に達したのでは無いかと感じる今日この頃。昨年、その集大成の様なアルバムがリリースされている。
Robert Glasper『Black Radio III』(写真左)。2022年2月のリリース。ネットの情報では「この作品は、社会の変化によって破壊された世界のフラストレーションとチャンスを、グラスパーが最も直接的に表現したもの」とのこと。ボイスの英語があまり聞き取れないので、そのメッセージの革新性は良く判らない。何とか理解出来るのは、そのバックの音の革新性。
以前、マイルス・デイヴィスが生前、遺作となったアルバム『Doo-Bop』で、ラップとエレ・ジャズの融合を試みたのだが、その試みが、ロバート・グラスパーの5th.アルバム『Black Radio』で、ほぼ完成の域に達したのでは、と感じたが、今回の『Black Radio III』では成熟の域に達し、1つのジャズの演奏スタイルとして定型化したのではないか、と高く評価している。
基本は、1960年代から綿々と引き継がれているブラック・ミュージック。このブラック・ミュージックの様々な響きを外していないところが素晴らしい。そして、ビートは「エレ・ファンク」。マイルスが起源となった「エレ・ファンク」を、現代の楽器環境、録音環境を積極活用して洗練されたビートは、これまた素晴らしい。
もともと、グラスパーは、ヒップホップ志向のピアニストだと思っているので、ジャズとヒップホップ、ラップを融合させた成果は、ジャズの歴史に残ると思っている。この「ブラック・レディオ」シリーズでは、ピアニストというよりは、バンドマスター的存在であり、どちらかといえば、プロデューサーとしての才能が際立っている。
フィーチャリングされた歌手の豪華な面子はやっぱり凄いですが、やっぱり、バックの音とリズム&ビートに僕は惹かれるなあ。ジャズとヒップホップ、ラップを融合させて、ブラック・ミュージックのサウンドの味付けをスパイスの様に忍ばせる、グラスパーならではの音世界は唯一無二。この最新盤は、その音世界がさらに研ぎ澄まされ成熟して、1つのマイルストーンの様な位置づけになっている。現代ジャズを理解する上では、避けて通れないジャンルのアルバムだろう。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
★ AORの風に吹かれて
★ まだまだロックキッズ 【New】 2022.12.06 更新。
・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。
★ 松和の「青春のかけら達」
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から11年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« 欧州風味のスムース・ファンク | トップページ | MJQのモントルー・ライヴ '82 »
コメント