僕なりのジャズ超名盤研究・21
「サウンド・オブ・ミュージック」というミュージカル映画がある。結構、お気に入りの映画で繰り返し見ている。その中の有名曲に「My Favorite Things」というのがある。雷を怖がる子供たちを「楽しいことを考えて」と、主人公のマリアが励ます場面で使われる曲。そうそう、JR東海「そうだ 京都、行こう」のCMにも、長年使われている。
ジャズの世界では、この「My Favorite Things」は超有名なスタンダード曲扱いで、その切っ掛けは、伝説のテナー・マン、ジョン・コルトレーンになる。コルトレーンが、この「My Favorite Things」という愛らしい楽曲を気に入り、自らのレパートリーにした。そして、それがジャズ者の間で有名にあり、他のジャズマンもカヴァーしたりして、ジャズの世界では超有名曲になっている。
John Coltrane『My Favorite Things』(写真左)。1960年10月21, 24, 26日の録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ss, ts), McCoy Tyner (p), Steve Davis (b), Elvin Jones (ds)。メンバー的には、まだ、ベースにギャリソンが参加していないので、「伝説のカルテット」直前の録音になる。
この盤は、コルトレーンがソプラノ・サックスを初めて正式盤で吹いた盤とされ、そのソプラノ・サックスを吹いた「My Favorite Things」の初収録された盤とされる。
が、この盤でのコルトレーンのソプラノ・サックスは、テクニック的にもまだまだ稚拙で、よくこんな平凡な吹奏の「My Favorite Things」をリーダー作に収録したもんだ、と変に感心している。最近のジャズ本や雑誌を見ると、この『My Favorite Things』のソプラノ・サックスはイマイチという評価になっているのも無理は無い。冒頭収録の「My Favorite Things」については「これが初収録」という評価に留まる。
それより、2曲目のバラード「Ev'ry Time We Say Goodbye」の、ビブラートの無い、真っ直ぐなブロウ、そのストレートな音のシンプルなバラード表現にコルトレーンの個性を感じるし、やっとまともな演奏レベルになりつつあるソプラノ・サックスが聴ける。
LPのB面、CDでは3曲目「Summertime」と4曲目の「But Not for Me」は、テナー・サックスに戻して、目眩くバカテク、疾走するシーツ・オブ・サウンドが素晴らしい。モード奏法と前提とした、伝統的なテナー・サックスの奏法については完全に完成の域に達している。
バックの、エルヴィン・ジョーンス(ds), マッコイ・タイナー(p), がやっとコルトレーン好みの「モーダルなリズム隊」の機能を果たしだしたことが良く判る。あとはベースを待つだけ。スティーヴ・デイヴィスのベースは終始、従来のウォーキング・ベースに徹していて、モーダルな他のメンバーとは違和感がある。高速モーダルなフレーズを追うのにウォーキング・ベースは辛そうだ。
この『My Favorite Things』って、結構、扱いが難しいアルバムである。コルトレーンがソプラノ・サックスを初めて正式盤で吹いた盤だが、ソプラノ・サックスについては、まだ吹きこなされていない様で、コルトレーンのソプラノ・サックスを堪能するには、もう少し後のリーダー作を聴いた方が良いだろう。
3曲目「Summertime」と4曲目の「But Not for Me」については、コルトレーンのモード・ジャズの成熟が聴けるが、この2曲だけではちょっと物足りない。
それでもこの盤は「コルトレーンの名盤」とされ、ジャズ者初心者の入門盤の1枚とされる。そういう面では、ジャズ者として、一度はしっかりと聴いておくべき盤、ということは言える。ソプラノ・サックスについては、もう少し練習を積んでから、正式録音に臨んで欲しかったなあ。
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