マイルス・ジャズの高度な再現
この盤の宣伝文句を読んで、マイルスが亡くなってから、もう30年も経つのか、と改めて驚いた。マイルスが亡くなったのは、1991年9月28日。確かに、現時点で既に31年が経過している。マイルスが亡くなってからも、未発表音源が定期的にリリースされているので、没後30年と言われても、あまり実感が湧かないのが本音。
『Jazz at Berlin Philharmonic XIII: Sketches of Miles』(写真左)。2021年11月27日、ベルリンでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Theo Croker (tp), Danny Grissett (p), Joshua Ginsburg (b), Gregory Hutchinson (ds), Magnus Lindgren (cond, ts,fl)。シオ・クローカー・カルテットにマグナス・リンドグレンをゲストに迎えたクインテット編成と、シオ・クローカー・カルテットとベルリン・フィルとの共演、の2形態。
マイルス・デイヴィス没後30 年を記念し、ACTの創始者シギ・ロッホのキューレーションで、2021年にベルリンで行われたコンサートの模様をとらえたライヴ盤。
前半は、シオ・クローカー・カルテットにマグナス・リンドグレンをゲストに迎えたクインテットで、マイルスの2つの黄金のクインテットで演奏されたモーダルなジャズを現代風にリメイク。後半は、マイルスとギル・エヴァンスとのコラボでのジャズ・オーケストラの名演を、マグナス・リンドグレンのアレンジ&指揮の下、シオ・クローカー・カルテットとベルリン・フィルとの共演で再現したもの。
まず、前半のモーダルなジャズ。収録された曲は「Pinocchio」「Footprints」「My Funny Valentine」「So What」の4曲。これがまあ、本家本元を上回る内容の濃さで、見事に充実したモード・ジャズを聴かせてくれる。とにかく切れ味が良く、スピード感も抜群。これらの曲がマイルスの下で演奏されていたのが、1950年代後半から1960年代前半。その頃の演奏から比べると、遙かに精度も良く、密度も濃い。ジャズの演奏技術の進歩を強く感じる演奏の数々。
後半のジャズ・オーケストラの演奏については、ジャズとクラシックを融合させた作品を得意としているマグナス・リンドグレンの面目躍如。マイルスの場合は、ギル・エヴァンスのジャズ・オーケストラをバックにしていたが、この盤の場合は、バックにクラシック・オーケストラが控える。つまり、ジャズ・オーケストラの楽器それぞれのパートを、クラシックの楽器のそれぞれに置き換えていく、というアレンジが必要になるのだが、リンドグレンはその無理難題にしっかりと応えている。
収録曲は「Miles Ahead Suite」「Sketches of Spain Suite」「Porgy and Bess Suite」「All Blues」の4曲。いずれも、オリジナルの「マイルスのシンフォニック・ジャズ」と全く違和感の無いレベルで、クラシック・オーケストラをバックに再現されているのは見事。音の響き、音の重なり具合の再現性は半端ない。
オリジナルの演奏があるのなら、オリジナルを聴けば良いではないか、と思わないではないが、ジャズの演奏技術の進歩、ジャズのアレンジ技術の進歩を確認するのには必要な作業であり、これはこれで、有意義なチャレンジではないかと思う。実は、マイルス者としては、このライヴ盤を聴いていて、意外と楽しい気分になるのだ。それほど、このライヴ盤での再現性は素晴らしい。
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