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2022年11月の記事

2022年11月30日 (水曜日)

ロイド「Trio of Trios」の第二弾

3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」の第一弾は『Trios: Chapel』(左をクリック)。2018年12月4日、テキサス州サンアントニオのコーツ・チャペルでのライヴ録音。良い意味であざとくもあるが、この10年間辺りの流行である「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を志向した、現代のモダン・ジャズである。

Charles Lloyd『Trios: Ocean』(写真左)。2020年9月9日、ロイドの故郷であるカリフォルニア州サンタ・バーバラの150年の歴史を持つロベロ・シアターでの録音。コロナ・パンデミックの最中、観客無しでライブ配信されている。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (as, ts, fl), Gerald Clayton (p), Anthony Wilson (g)。

3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」の第二弾。共演のジェラルド・クレイトンは、西海岸ベースの伝説的存在ジョン・クレイトンの息子。アンソニー・ウィルソンは著名なバンドリーダー&トランペッター、作曲・編曲家のジェラルド・ウィルソンの息子。この「Trio of Trios」の第二弾は、有名なミュージシャンを父に持つ2人のミュージシャンとの共演になる。
 

Charles-lloydtrios-ocean

 
この盤は、ジャズは「即興演奏の賜物」を再認識させてくれる。冒頭の「The Lonely One」は、クレイトンとウィルソンの伴奏に合わせてキーとテンポが決まった瞬間から、サックス、ギター、ピアノの3者対等な、自由度の高いモーダルなインタープレイが展開される。反芻的でありながら神秘的。静的でクールなスピリチュアルな音世界が厳かに展開される。

「Hagar of the Inuits」は、ブルース的なグルーヴを醸し出しつつ、ここでも、サックス、ギター、ピアノの3者対等な、自由度の高いモーダルなインタープレイが展開される。とりわけ、ウィルソンのギター・ソロが印象的。続く「Jaramillo Blues」もブルース志向で、明るいトーンが印象的。ブルース志向の自由度の高いインタープレイが実に「スピリチュアル」。クレイトンのピアノが演奏全体を仕切っているのにも感心した。

今回の「Trio of Trios」の第二弾は、自由度の高いモーダルなインタープレイがメインだが、ブルース曲を中心に純ジャズな雰囲気を強く感じつつ、曲によっては、ECM的な「ニュー・ジャズ」なサウンド志向も見え隠れする、ユニークな「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を表現していて、実に興味深い。
 
 

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   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
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2022年11月29日 (火曜日)

エレ・チックの未発表ライブ音源

チックが亡くなって、1年と10ヶ月が過ぎようとしている。チックが亡くなったのって、遠い昔みたいに感じるのだが、チックが亡くなって、まだ2年経っていないんやね。と思っていたら、最近、サブスクサイトに、チックの未発表音源がちょくちょくリリースされているのに気がついた。なんで生前に正式盤としてリリースしなかったのか、と思う、内容の充実した音源ばかりで、さすがはチック、演奏の出来にバラツキが無かったんやなあ、と改めて感心している。

Chick Corea『Live Under The Sky ’79』(写真左)。1979年7月27日、田園コロシアムでのライヴ録音。オフィシャル級のステレオ・サウンドボード録音にて収録らしい。確かに音はまずまず良い。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (key), Tony Williams (ds), Al Di Meola (g), Bunny Brunel (b)。「Live Under The Sky 1979」に向けて、特別に組成したカルテット編成。

チックのアグレッシヴでプログレッシヴなシンセの弾きまくりに、ディメオラが調節技巧エレギで応戦。チックとディメオラのバトルを、これまたアグレッシヴでポリリズミックで叩きまくりのトニーのドラムが煽りに煽る。これだけでも凄い迫力なのだが、ここに、バニー・ブルネルの重量級エレベが参戦、さらにその「ど迫力」に拍車をかけている。
 

Chick-corealive-under-the-sky-79

 
冒頭の「Night Street」、チックのソロ盤『My Spanish Heart』からの選曲なのだが、ディメオラ、トニー、ブルネルが演奏し慣れているが如く、疾走感溢れる弾きまくりである。チックとディメオラのフロントで、ど迫力のユニゾン&ハーモニー。どんだけ音が分厚いのか。そこに、マシンガンの如く、トニーのドラムが「ドドドドド」と迫り来る。そして、ブルネルのエレベがブンブン鳴り響く。

収録曲も魅力的。チックのファンであれば、タイトルだけ見ても「痺れる」曲がズラリと並ぶ。「All Blues」から「Senor Mouse」〜「Spain」には聴き惚れるばかり。そして、ディメオラのソロから、チックが参戦してデュオになり、トニーのドラムとブルネルのベースが入って来たな、と思ったら「Isfahan」に突入する。どの曲の演奏も素晴らしい「ど迫力」。生で聴きたかったなあ。ラストのチックのソロも絶品。チック者には堪らない。

ブートとして一部のマニアだけが聴けるだけなのは惜しい。こんな未発表音源が他にもあるのなら、もっと正式盤でリリースして欲しい。実は、チックのアコピのコンサートには何度か足を運んだが、エレピのチックは生で体験したことが無い。チックのエレピが聴ける、クロスオーバー〜フュージョン志向のエレ・チックのライヴ音源があるのなら、なおさらである。
 
 

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2022年11月28日 (月曜日)

ジョーダン・トリオのお蔵入り盤

冬を感じる頃になると、決まって聴きたくなるピアニストがいる。デューク・ジョーダン(Duke Jordan)。恐らく、ジョーダンの代表盤の1枚『Flight to Denmark』のジャケットのイメージがそうさせると思うんだが、確かに、ジョーダンのピアノって、秋の終わりから冬にかけて聴くと沁みる印象が強い。

Duke Jordan Trio『Truth』(写真左)。1975年3月2日、コペンハーゲンでの録音。SteepleChaseレーベルの SCS 1175番。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Mads Vinding (b), Ed Thigpen (ds)。録音当時はお蔵入りの音源で、リリースは1983年。ジョーダンお得意のトリオ編成。ベースにヴィンディング、ドラムにシグペン。かの名盤『Flight to Denmark』と同じトリオ編成で、約1年半後の録音。

その内容は十分に期待出来るレベルだと思うのだが、録音当時は何故かお蔵入り。1983年にやっとリリースされている。スティープルチェイスの総帥ディレクター、ニルス・ウィンターが、既リリースの『Flight to Denmark』『Two Loves』と同じメンバー、同じ曲想のアルバムが続くのは好ましくないと判断したのだろうか。

内容的に素晴らしいピアノ・トリオである。確かに、先行の『Flight to Denmark』『Two Loves』と雰囲気・演奏の志向は同じなのだが、デューク・ジョーダンのピアノの個性がより判り易くなっている様に感じる。
 

Duke-jordan-triotruth
 

ジョーダンは、レジェンド級のバップ・ピアニストで、ピアノ腕前もさることながら、彼の書く曲は佳曲ばかり。特にブルースについては、魅力的な曲ばかり。この盤でも、冒頭の「Layout Blues」など絶品である。

ジャズの自作曲には、作曲を担当するジャズマンの楽器の個性がダイレクトに伝わるものが多い。恐らく、この盤に収録された曲全てが、ジョーダンのオリジナルだということもあるだろう。ジョーダンの自作曲もそうで、ジョーダンのピアノの個性がより判り易くなっている。

ジョーダンの個性の1つが、左手のリズム&ビートが「オン・ビート」であること。普通は「オフ・ビート」なんだが、ジョーダンのビートは「オン・ビート」。これが、ジョーダン独特のフレーズの「ノリ」を生んでいる。そして、その独特の「ノリ」が、バックのベース&ドラムのリズム&ビートに埋もれる事無く、逆に全面に浮き出てくる効果を醸し出している。

ジョーダンの代表盤に上がらない、地味なジョーダンのトリオ盤であるが、その内容は先行の『Flight to Denmark』『Two Loves』と引けを取らない。逆に、先行の『Flight to Denmark』『Two Loves』と併せて、3部作として一気に聴き通した方が、ジョーダンのピアノの個性が良く理解出来て良い様な気がする。
 
 

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2022年11月27日 (日曜日)

タル・ファーロウのサード盤

タル・ファーロウは、ブルーノートでの初リーダー作から、そのギターの個性は完成されていた。超絶技巧の限りを尽くした「弾きまくりバップ・ギター」。初リーダー盤から次作のセカンド盤は、歌心溢れるバラード・プレイも素晴らしかったが、とにかく、超絶技巧の弾きまくりギターが目立ちに目立っていた。

Tal Farlow『The Artistry Of Tal Farlow』(写真左)。1954年11月15日、LAでの録音。ちなみにパーソネルは、Tal Farlow (g), Gerry Wiggins (p), Ray Brown (b), Chico Hamilton (ds)。

ヴァーヴ・レコードからのタルのリーダー作第2弾。米国ウエストコースト・ジャズの人気ジャズマンのトリオをバックに、超絶技巧で余裕溢れるバップ・ギターを弾きまくった、タル初期の名盤。

さすがに、3枚目のリーダー作で、大手ジャズ・レーベルのヴァーヴからの2枚目のリーダー作。収録されたそれぞれのギター・プレイには、濃厚な「余裕」が感じられて、超絶技巧なパフォーマンスにせよ、歌心溢れるバラード・プレイにせよ、程良いテンションの下、アドリブ・フレーズにも、どこか柔らかな「余裕」が感じられて、超絶技巧なタルのプレイが、更に迫力を持って迫ってくる。
 

Tal-farlowthe-artistry-of-tal-farlow
 

特に、僕は「歌心溢れるバラード・プレイ」の代表的パフォーマンスとして、3曲目の「Autumn In New York(ニューヨークの秋)」を愛して止まない。1本の弦を1オクターヴ低く調律して低音域を広げて、豊かな表現の幅を拡げたソロ・プレイが素晴らしい。ギターの一本弾きをメインにして、このタルの豊かな表現力は驚異的。この1曲だけでも、このタルのリーダー作の3作目は名盤に値する。

超絶技巧なパフォーマンスも素晴らしい。ギンギンにテンションを張った超絶技巧な弾き回しも聴き応えがあるが、ちょっと「疲れる」。しかし、この盤でのタルの超絶技巧な弾き回しには「余裕」が感じられて、その「余裕」が豊かな表現力に直結していて、カッ飛ぶ高速な弾き回しでも歌心は満点。

冒頭の「I Like To Recognize The Tune」から「Strike Up The Band」の余裕ある超絶技巧なプレイは聴き応え満点。ラストの「Cherokee」など、高速な弾き回しには、しっかりした歌心が宿っていて、これまた聴き応え満点。

安定した高速弾き回しと「余裕」が感じられるアドリブ・パフォーマンスの下、超絶技巧なパフォーマンスと歌心溢れるバラード・プレイが良好に共存しているこの盤は、タルの初期の名盤として良い内容だと思う。
 
 

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2022年11月26日 (土曜日)

タル・ファーロウのセカンド作

純ジャズ系のギター盤を聴く上で、タル・ファーロウのアルバムは避けて通れない。と言って、何処から聴いたらよいか、ということになるが、タルのリーダー作の場合は、ビ・バップ時代の鍛錬が効いていて、1954年、ブルーノートに吹き込んだ初リーダー作にして、タルのギターの個性は完成していたので、初リーダー作から順に聴き進めて行くのが良いだろう。

『The Tal Farlow Album』(写真左)。1954年6月2日、NYでの録音。Norgranレコード(後のVerveレコード)からのリリース。ちなみにパーソネルは、Barry Galbraith, Tal Farlow (g), Oscar Pettiford (b), Joe Morello (ds)。編成的には、ブルーノートの初リーダー作(1954年4月11日の録音)と同じ。タル・ファーロウとバリー・ガルブレイスの2ギター+ピアノレス、変則カルテットの編成。

演奏形態がブルーノートの初リーダー作と同じなので、音的にはそれと変わらない。ただ、リーダーとしてセカンド盤なので慣れてきたのか、タルは硬さが取れて、ちょっとリラックスして弾いている様に感じる。卓越した超越技巧なソロ弾きは、さらに流麗になり、流れるが如く軽快。タルのパッキパキなフレーズが映えに映える。
 

The-tal-farlow-album_1

 
有名スタンダード曲が中心の選曲なので、他のギタリストのパフォーマンスと比較し易くて良い。結論から言うと、タルのギターって、そのテクニックの高さについては、純ジャズ系ギタリストの中では最高峰の1人だろう。速いバップな曲もバラードの曲も、簡単そうに「そつなく」弾きまくる。ピッキングも力強く、音は硬質。しかし、出てくる音は歌心満点。とても聴き応えのある順ジャズ系ギターである。

ガルブレイスとのユニゾン&ハーモニーも流麗で、ガルブレイスのリズムギターも良い感じ。それでも、ガルブレイスのギターに負けること無く、埋もれること無く、タルのギターは、音が太くとピッキングが協力なので、くっきりハッキリ浮き出てくる。力強く流麗で超絶技巧な弾きっぷり、チャーリー・クリスチャン直系と評されるのは納得。

CDリイシュー時にボートラで追加された、9曲目~12曲目の4曲は、1955年4月25日、ロサンゼルス録音でギター、ピアノ、ベースのトリオ編成で録音されたもの。オリジナルLPには収録されていないものなので注意が必要。ピアノレスで聴くと、タルの個性がとても良く判る。『The Tal Farlow Album』としては、1曲目〜8曲目の前半8曲で鑑賞されたい。
 
 

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2022年11月25日 (金曜日)

タル・ファーロウの初リーダー作

僕のジャズ盤週集で、一番後回しになった楽器が「ギター」。もともと、アルバム蒐集はロックから入ったので、ロックギターの派手派手しいフレーズがお気に入りになっていて、純ジャズのギターは、コード弾きと一本弾きのシンプルというか、地味なものだったので、どうしても、純ジャズ系のギターの盤には触手が伸びなかったのが正直なところ。

それでも、年齢を重ねて、ジャズを聴き始めて20年位経った頃、やっと純ジャズ系のギターのシンプルさが良い方向に聴こえる様になってきて、一本弾きのアドリブ・フレーズが、実は超絶技巧、小粋に唄うものだ、ということが判った瞬間、ジャズ・ギター盤の蒐集が本格的に始まった。以来、ジャズ・ギターの週集もやっと、人並みになったかなあ、と思う今日この頃。

『Tal Farlow Quartet』(写真左)。1954年4月11日の録音。ブルーノートの5042番。ちなみにパーソネルは、Don Arnone, Tal Farlow (g), Clyde Lombardi (b), Joe Morello (ds)。

純ジャズ・ギターの最高テクニシャンの1人、タル・ファーロウの初リーダー作。何故か、タル・ファーロウとドン・アルノーンの2ギター+ピアノレスの変則カルテットの編成。それでも、ピアノが無い分、ギターのパフォーマンスが十分に楽しめる。

2ギターの意味が聴けば判る。ドン・アーノンをサイド・ギターに据え、タルの縦横無尽のソロ・プレイの妙技を全面に押し出した恰好。
 

Tal-farlow-quartet

 
なるほど、時にソロ、時にコード弾きとなると、タルのソロのテクニックの部分が薄まるので、サイド・ギターを据えて、基本的にはリズム(コード弾き)を担当させて、タルには、心ゆくまでソロを弾きまくらせるプロデュース。さすがはブルーノートである。

聴けば聴くほど、その超絶技巧さに舌を巻くタルのギター・ソロ。チャーリー・クリスチャン直系、ビ・バップあがりの驚異的な速さソロ・フレーズのスピード。この速さで、ハードバップの特徴の1つである「ロングなアドリブ・ソロ」をやるのだから圧巻である。

冒頭の「Lover」の高速弾き回しを聴くだけで、思わず「ごめんなさい」(笑)。2曲目のバラード「Flamingo」の、ハーモニクスを効果的に活かしつつ、情感溢れる正確無比な弾き回しに、これまた思わず「ごめんなさい」(笑)。以降、胸が空くような圧倒的速弾きパフォーマンス。いや〜、聴いていて思わず感動して「頭が下がる」。

タルの弾き回しの特徴の1つ、巨大な手を一杯に広げて縦横無尽にフレーズを紡ぎ出す様は「オクトパス・ハンド」と呼ばれるのだが、このダイナミックなフレーズの拡がりもこの盤で堪能出来る。

もともと10インチ盤でのリリースなので、曲数は6曲、トータル24分と短いが、そんなことは全く気にならない。圧倒的な超絶技巧、かつダイナミックなタルの純ジャズ・ギターの弾き回しである。
 
 

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2022年11月24日 (木曜日)

Return to Foreverのラジオ音源

Return to Forever(リターン・フォー・エヴァー・以下RTFと略)のブート音源はあまり見かけ無いのですが、今回、音源のサブスク・サイトにアップされてきた音源を見つけた。エレクトリック化したRTFの、ギターが、ビル・サマーズからアル・ディ・メオラに変わったばかり、『Where Have I Known You Before(邦題 : 銀河の輝映)』を録音したばかりの時期のライヴ音源である。

Return to Forever『Alive In America』(写真左)。1974年8月8日のライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (key), Stanley Clarke (b), Al Di Meola (g), Lenny White (ds)。コロラド州デンバーのエベッツ・フィールドのラジオ放送の音源とのこと。ラジオ音源なので、意外と音が良い。

冒頭「Beyond The Seventh Galaxy」から「Vulcan Worlds」〜「The Shadow Of Lo」〜「Where Have I Known You Before」と、『Where Have I Known You Before(邦題 : 銀河の輝映)』に収録されている楽曲が迫力あるパフォーマンスで展開される。たった4人の演奏とは思えない、ど迫力の分厚い演奏にちょっとビックリする。メンバーそれぞれの演奏能力の高さが窺い知れる。
 

Return-to-foreveralive-in-america

 
特に、さすがはチック、キーボードの演奏力はずば抜けている。当時、エレキの演奏といえば、プログレッシブ・ロックだが、プログレのキーボード演奏などとは比べものにならない、切れ味の良い高度なテクニック、迫力ある分厚い音、官能的に歪んだ音、疾走感溢れる弾き回し。とにかく、キーボードのテクニックが凄い。なるほど、当時、エレ・マイルスが愛したキーボーダーである。

このライヴ音源には、メンバー各人のロング・ソロが入っている。その中でも、スタンリー・クラークのエレベのソロ・パフォーマンスが「ど迫力」。レニー・ホワイトのドラム・ソロも意外と聴き応えがある。チックのソロは曲目のタイトルに無いが、ラストの「Song to the Pharoah Kings」で、チックのキーボードがふんだんにフィーチャーされている。ディメオラのソロはとにかく超絶技巧。あまりに超絶技巧で聴いていて飽きてくる(笑)。

ただし、このメンバー各人のソロは、それぞれの楽器のパフォーマンスに興味のある向きには聴き甲斐があるが、一般のジャズ者の方々には、ちょっと冗長かもしれない。それを考えると、このライヴ音源って、ちょっと趣味性が高い。そこを勘案して、このライヴ音源を鑑賞していただきたい。当時のRTFの演奏力のずば抜けた高さをダイレクトに実感出来る内容で、聴き応えは十分です。
 
 

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2022年11月18日 (金曜日)

エヴァンスの「多重録音」第3弾

ビル・エヴァンスのワーナー時代、最晩年のリーダー作を再度、聴き直している訳だが、実は6枚しかない。1977年8月、ワーナーに移籍して録音を始めたら、なんと1980年9月15日には鬼籍に入ってしまったのだから、ワーナー時代は実質3年ほどしかない。リーダー作が少ないのは仕方が無い。

Bill Evans『New Conversations』(写真)。1978年1月26~28日30日、2月13~16日録音。パーソネルは、Bill Evans (ac-p,el-p)のみ。ビル・エヴァンスのソロ盤ですが、作りは「多重録音」。アコピとフェンダー・ローズをオーバーダビングするという手法を駆使して録音した作品。邦題は『未知との対話ー独白 対話 そして鼎談』。なんと仰々しい邦題であることか(笑)。

ワーナーに移籍して最初に録音したのが『You Must Believe in Spring』だったのだが、何故かお蔵入りになって(1981年、エヴァンスの没後にリリース)、この多重録音の『New Conversations』がワーナー移籍後の初リーダー作になる。

エヴァンスは多重録音によるソロ・パフォーマンスが好みな様で、ヴァーヴ時代に『Conversations with Myself』(1963年)、『Further Conversations with Myself』(1967年)と2枚の「多重録音」盤を出している。そして、今回ご紹介する『New Conversations』は、この「対話シリーズ」の第三弾になる。
 

Bill-evansnew-conversations

 
第3弾となって、やっとこの「多重録音」での個性の表出が上手く出来る様になった感がある。前の2作にあった違和感、喧噪感が無い。多重録音による「良い効果」を自己表現出来る様になった。この多重録音による「良い効果」によって、ビル・エヴァンスのアコピとエレピの個性というものがハッキリ感じ取れる。

アコピにせよ、エレピにせよ、出てくるフレーズは「エヴァンス・オリジナル」なもので、全く異論は無い。特にこの時期のエヴァンスのアコピの特徴である、タッチは明快でフレーズは切れ味良く耽美的、エヴァンス独特の音の響きを伴った「流麗なバップ・ピアノ」な弾き回しが良く判る。

また、この盤を聴いて、改めて感心したんだが、エヴァンスはエレピが上手い。特に、フェンダー・ローズの扱いが上手い。軽く聴いていたら、どこかチック・コリアに似た、ローズの特性を十分に把握した、とてもリリカルでエモーショナルな弾き回しは見事。エヴァンスのエレピについては十分に評価するべきだろう。当時としても、このエレピの弾き回しは秀逸。

ワーナーに移籍して最初のリーダー作に「ソロ・パフォーマンスの多重録音」盤を持って来た理由は図りかねるが、録音当時のエヴァンスのピアニストとしての特徴が良く判る内容になっている。「ソロ・パフォーマンスの多重録音」はどこか際物の匂いがするが、気にすることは無い。エヴァンスのソロ・パフォーマンスを愛でるに十分なアルバムである。
 
 

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2022年11月17日 (木曜日)

『Affinity』はエヴァンス好盤

ビル・エヴァンスのワーナー時代、最晩年のリーダー作を再度、聴き直している。というか、このワーナー時代は、僕がジャズを聴き始めて間もない頃で、ほぼリアルタイムでエヴァンスのリーダー作に触れている。エヴァンスのリーダー作の中でも、とりわけ特別な懐かしさを感じるのが、このワーナー時代。

ワーナー時代は、レーベルとしては「Warner Bros.」「Elektra Musician」「Nonesuch」と変わるが、どれもが同系列。いずれのリーダー作も、ジャズを聴きはじめた頃に、FMラジオの番組で聴いては、そのエヴァンスのピアノに魅せられて、バイト代を叩いて、即、ゲットしていたなあ。

Bill Evans『Affinity』(写真)。1978年10月30日〜11月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p, key), Marc Johnson (b), Eliot Zigmund (ds), Larry Schneider (fl, ts, ss), Toots Thielemans (harmonica)。「エバンス・トリオと伝説のハーモニカ奏者 トゥーツ・シールマンスとの共演」との触れ込みだが、全曲で共演している訳では無い。

この盤、リリース当時は、プロ、アマ評論家の皆さんはこぞって、エヴァンスが、エレピは弾くわ、かつシールマンスのハーモニカと唐突なコラボはするわ、で概ね不評の大合唱(笑)。とにかく、エヴァンスについては、ストイックで耽美的なピアノ・トリオしか認めない、と言わんばかりで、この盤については「ケチョンケチョン」だった思い出がある。
 

Bill-evansaffinity

 
でも、ですね。当時もそう思ったし、今の耳で聴いてもそう思うんだが、この盤、なかなか良い内容だと思いますよ。エヴァンスのピアノは、ばりばりバップなピアノを弾きまくっていた時代を通り過ぎて、タッチは明快、フレーズは切れ味良く耽美的。流麗でバップな、エヴァンス独特の音の響きを伴った弾き回し。好パフォーマンスだと思います。

シールスマンとのコラボは数曲あるんですが、どれもが良い出来。さすがは伴奏上手なエヴァンス。シールスマンとの息の合ったデュオ・パフォーマンスは見事。ハーモニカはベースラインを押さえるのに不得手な楽器なので、マーク・ジョンソンのベースがサポートに入っていて、これが良いアクセントになっている。曲のベースラインがクッキリ浮き出て良し。

ラリー・シュナイダーのテナーは可も無く不可も無くではあるが、やはり、エヴァンスは「トリオ演奏」が良い感じ。数曲、トリオ演奏が入っているが、ファンタジー時代の「流麗ではあるが、ばりばりバップなピアノ」から、ほど良く力が抜けたタッチが実に良い。1978年、逝去の2年前にして、新しい響きのエヴァンスのピアノをこの盤で提示している。さすがである。

「聴かせるジャズ・ピアノ」「心地良く鑑賞出来るジャズ・ピアノ」として、この盤の内容は「アリ」だろう。昔のプロ、アマ評論家の皆さんが言うような「エヴァンスとしてあってはならない凡作」では無い。この盤でも、エヴァンスはしっかり「存在している」。しかも、新しい響きのエヴァンスが「いる」。エヴァンスとしての好盤です。
 
 

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2022年11月16日 (水曜日)

ジャズ・ファンクなヘインズ盤

ドラマーがリーダーのジャズ盤を聴き直している。最近、ロイ・ヘインズのリーダー作を何作か聴き直した訳だが、なかなかの内容の優秀盤が多い。その時代ごとのジャズの演奏志向、トレンドを捉え、メンバーもなかなか考えた人選で、コンテンポラリーな純ジャズを溌剌とやっている。

ただし、何故か、ロイ・ヘインズは我が国では人気がイマイチ。ロイ・ヘインズのリーダー作については、『We Three』『Out of the Afternoon』ばかりが紹介されて、他のリーダー作については、まともな評論はあまり見たことが無い。ハードバップ初期から、21世紀に入るまで、ずっと第一線を走ってきたのドラマーなのに、この過小評価な扱いは未だに納得しかねる。

Roy Haynes『Hip Ensemble』(写真左)。1971年の録音、作品。ちなみにパーソネルは、Roy Haynes (ds, timpani), George Adams (ts, fl), Marvin Peterson (tp), Mervin Bronson (el-b), Elwood Johnson (bongo, tambourine), Lawrence Killian (conga), Carl Schroeder (p), Teruo Nakamura (b)。

全体の音志向は、当時流行っていた「ジャズ・ファンク+クロスオーバー」なジャズ。純ジャズ畑のロイ・ヘインズが、ジャズ・ファンクに手を染めている訳で、ど〜なるの、と思って聴き進めたら、意外と思いっ切り雰囲気のあるジャズ・ファンクがバッチリ決まっているから面白い。
 

Roy-hayneship-ensemble

 
パーソネルを見渡すと、若き日のハンニバル・マーヴィン・ピーターソンのトランペット、ジョージ・アダムスのテナー・サックスがフロントに控えていて、こりゃ〜、思いっ切りスピリチュアルに傾くのか、と思って聴いていたら、ピーターソンのトランペットは、アグレッシブにハイノートでグイグイ攻め、アタムスのテナーは骨太で豪快。しっかりと従来のジャズの枠に填まって熱演している。
 
グルーヴ感溢れるファンキーなヘインズのドラミングに、ベースはエレベ、ボンゴやコンガのパーカッションが、そのグルーヴ感を増幅して、グルーヴ感濃厚なジャズ・ファンクが展開されている。ヘインズ中心に叩き出すビートが意外にアーバンでクールなので、下世話な「どファンク」になっていないところが、この盤の小粋なところ。

メインストリームな純ジャズからは外れる、ジャズ・ファンクな演奏なんだが、純ジャズ感は濃厚。特に、疾走するハンニバルのトランペットとアダムスのテナーは聴き応え満点。バックのリズム&ビートがジャズ・ファンクなのに、そんなことお構いなしに、ストレート・アヘッドなアドリブを吹きまくる。
 
 

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2022年11月15日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・254

1950年代の米国のウエストコースト・ジャズのアルバムは一聴すれば直ぐに判る、独特の「音の傾向」を持っている。小粋に洒脱にアレンジされ、バンド・アンサンブルは小洒落ていて、クールで落ち着いている。どのウエストコースト盤も、そういう音の傾向を持っていて、少なくとも冒頭から1〜2曲聴けば、ウエストコースト盤か否かが判る。

ビ・バップの様にそのテクニックを披露するジャズでもなければ、熱くブロウするジャム・セッションなスタイルでも無い。ウエストコースト独特のラウンジ・ジャズ志向、もしくは、室内でじっくり聴く鑑賞音楽としてのジャズ、つまり「聴かせるジャズ」でる。アレンジは、東海岸のハードバップよりも精緻でアカデミックで、しっかりと音楽理論に則った、事前にしっかり準備されたアレンジが大多数である。

Bud Shank and Bob Cooper『Blowin' Country』(写真左)。1956年11月29日と1958年2月18日の2セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (as, fl), Bob Cooper (ts, oboe), Claude Williamson (p), Don Prell (b), Chuck Flores (ds)。

西海岸ジャズの人気アルト奏者、バド・シャンクと、洒脱なテナー奏者、ボブ・クーパーが2管フロントのクインテット編成。CDリイシュー時には、5曲のボートラが追加されているが、ここでは、LP時代の10曲収録盤での聴き込み。
 

Bud-shank-and-bob-cooperblowin-country

 
冒頭の「Dinah」の前奏のアルトとテナーのユニゾン&ハーモニーを聴けば、これは直ぐに、ウエストコースト・ジャズの優秀盤だと感じる。どの曲にも施される小粋で洒脱なアレンジ。特に、シャンクのアルトとクーパーのテナーによる、ユニゾン&ハーモニー、チェイス、コール&レスポンス、対位法的な掛け合い等、とてもよくアレンジされていて、聴いていて気持ちが良い。

シャンクのアルト・サックスが絶好調で、とても良い音を出している。負けじとクーパーのテナー・サックスも魅力的なフレーズを吹き上げる。特に、バラード演奏における、シャンク&クーパーは絶品。「聴かせるジャズ」の面目躍如、情感豊かに、歌心豊かに、素敵な「聴かせる」フレーズを連発する。他にシャンクはフルート、クーパーはオーボエを吹いて、クインテットのジャジーな演奏に良いアクセントを付けている。

バックを司る、クロード・ウィリアムソンのピアノを核としたリズム・セクションも良い。特に、ウィリアムソンのピアノは、洒脱で小粋で味がある。ウエストコースト・ジャズの雰囲気を代表するピアノのパフォーマンスだろう。

良いウエストコースト盤です。本当に久し振りにこの盤を聴き直したのだが、実にウエストコーストしていて聴き応え抜群。ウエストコースト・ジャズの代表盤の1枚として良い優秀盤です。
 
 

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2022年11月14日 (月曜日)

Weather Report (1982) 再び

「コズミック&モーダル」と「アーシー、エスニック&ユートピア」を志向としたエレ・ジャズというのが、ウェザー・リポートの音世界だったと思う。

ショーターは「コズミック、モーダル」を担当したが、バンド内での活動の縮小によって、「コズミック、モーダル」な音志向は後退、「アーシー、エスニック&ユートピア」の音志向はザヴィヌルが担当、ユートピア志向は「Birdland」を頂点に、急速に後退していった。

『Weather Report(1982)』(写真左)。1982年の作品。ちなみにパーソネルは、パーソネルは、Josef Zawinul (Key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds), Robert Thomas Jr. (hand ds)。前作の傑作『Night Passage』と同一メンバーによる作品。1980年代録音の最初のリリースということで、その意味も込めて、アルバム・タイトルは、デビュー盤と同様、グループ名だけを冠した『Weather Report』としている。

音的には前作の音志向を踏襲している。ポップでキャッチャーでフュージョン・チックなフレーズは、冒頭の「Volcano for Hire」のみ。2曲目以降は、コンテンポラリーな純ジャズな演奏として、インプロビゼーションに重点を置いた、意外に「硬派」な内容になっている。この盤でもジャコのアースキンのリズム隊は強烈。2曲目以降が、コンテンポラリーな純ジャズな演奏になっているのは、この強烈なリズム隊のお陰でだろう。

しかし、どの演奏も、前作にも増して「バンド演奏としての一体感と熱量の不足」に拍車がかかっている。ジャコのモーダルで自由度の高いベース・ラインと、アースキンの高速ポリリズミックなドラミングが強烈にも関わらず、何だか演奏の盛り上がりに欠け、ジャズ演奏の熱量に欠け、即興演奏の熱気に欠けた、静的でどこか覇気の無い、ちょっと陰鬱なエレ・ジャズが展開される。
 

Weather-report1982

 
この頃のザヴィヌルは、録音に関して「完全主義者」と化していて、ジャコのベース、アースキンのドラムに対して、ザヴィヌル自身が気に入る音になるまで、何度もやり直しをさせていた、とのこと。この盤に録音されたジャコのベースとアースキンのドラムは、本人達が満足するパフォーマンスでは無く、ザヴィヌルがやり直しを命じ、ザヴィヌルが気に入ったものを採用して、リズム&ビートのベースにしている。

この「演奏の盛り上がりに欠け、ジャズ演奏の熱量に欠け、即興演奏の熱気に欠けた、静的でどこか陰鬱なリズム&ビート」がザヴィヌルのお気に入りだったのだから堪らない。確かに、リズム&ビートの躍動感と自由度が後退し目立たなくなった分、ザヴィヌルのキーボードは目立ってはいるが、この盤でのコンテンポラリーな純ジャズな音志向からすると、ザヴィヌルのキーボードは必然性に欠ける。

前作『Night Passage』と同一メンバーでの演奏なのに、この『Weather Report(1982)』の演奏内容の落差には驚くばかり。ザヴィヌルのワンマン化が進み、バンドとしての一体感は無くなり、同一の音志向を追求することも無かったのだろう。当時、ザヴィヌルは何を考えていたんだろう。音を創作するクリエイターの立場にいたザヴィヌル。この盤におけるプロデュースは感心できない。

振り返れば、リーダー以外の音志向を反映した「リズム&ビート」が要となった、ストイックでアーティスティックなコンテンポラリーなエレ・ジャズを志向した「ジャコ&ショーターのウェザー」は、『Mr.Gone』『8:30』『Night Passage』の3枚の傑作を残して終わった。今でも、WRのアルバムの中でも、この3枚は傑作として評価が高い。

しかし、同一メンバーで臨んだ『Weather Report(1982)』は、そんなジャコ&ショーターのWRの抜け殻でしかなかった。平凡なデザインのジャケットと共に、この盤はWRの問題作の1枚だろう。決して凡作では無い。しかし、傑作でも無い。様々な問題を内包した「問題作」だろう。
 
 

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2022年11月13日 (日曜日)

『Night Passage』を聴き直す

今の耳で聴き直していて、ウェザー・リポート(Weather Report)というバンドの「根っこの音志向」って何だったんだろう、と思うことがある。アルバムによって、売上を度外視したアーティステックなジャズを追求する場合と、売上を目指して大衆的なジャズを追求する場合と両極端に「バンドの音の志向」が振れている様に感じるのだ。

Weather Report『Night Passage』(写真左)。1980年のリリース。ちなみにパーソネルは、パーソネルは、Josef Zawinul (Key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (b), Peter Erskine (ds), Robert Thomas Jr. (hand ds)。WRのバンドの歴史史上、最強のラインアップでの録音になる。

音を聴くと判るのだが、ライヴ録音っぽい音をしている。実は『Madagascar』以外の収録曲は、1980年7月にロサンゼルスのコンプレックス・スタジオに観客を動員した上で、2日間にわたってライヴ形式で録音。残る『Madagascar』は、同年6月に大阪フェスティバル・ホールで開催されたライヴ演奏の音源が収録されている。オーヴァーダヴなどはしていないぞ、というWRの宣言なのだろうか。この録音形式をとった動機が未だに良く判らない。

とにかく、最強のラインアップでライヴ録音した『8:30』は、基本的にポップでフュージョンな『Heavy Weather』のライヴ盤的な内容だったが故、売れに売れた。前作『Mr.Gone』 での売れ行き低下に歯止めをかけ、再び、人気ジャズバンドとしての地位に返り咲いた訳である。で、この『Night Passage』であるが、収録曲の曲想から、どうも『Heavy Weather』の二番煎じを狙った節がある。

収録曲の作曲担当の配分を見ても、ザヴィヌルが5曲、ショーターが1曲、ジャコが1曲、そして、エリントンの曲が1曲。ほとんどをザヴィヌルが担当。ポップでフュージョンなエレ・ジャズを目指したザヴィヌル。しかし、曲の出来としては、ショーターの「Port of Entry」と、ジャコの名バラード「Three Views of a Secret」が突出している。
 

Weather-reportnight-passage

 
ザヴィヌル作のポップでフュージョンなエレ・ジャズでも、ジャコのアースキンのリズム隊は強烈。ジャコはモーダルな高速ベース・ラインを弾きまくり、アースキンは高速ポリリズムを叩きまくる。ザヴィヌルの用意したポップでキャッチャーなフレーズを、この強烈なリズム隊が、ストイックでアーティスティックなフレーズに変化させている。

デューク・エリントンの『Rockin in Rhythm』のカヴァーや表題曲における4ビートの導入だって、売らんが為のキャッチャーな話題作りの匂いがプンプンするが、このカヴァーは、キーボードを重ねてのビッグバンドの音の再現は平凡だと感じるが、ジャコとアースキンの強烈リズム隊の、モダンでストイックで「疾走する4ビートなスイング感」で、名カヴァーの1曲として、高く評価されている。

ショーターのサックスだって、もう二度と「A Remark You Made」の様な、甘々でポップでフュージョン・チックなフレーズは吹かないぞ、とばかりに、ジャコとアースキンの強烈リズム隊に引っ張られるように、限りなく自由度の高い、ストイックでアーティスティックなフレーズを吹きまくっている。この盤では、ショーターは完全にジャコとアースキンの強烈リズム隊に「乗って」いる。

僕はアルバム全体を覆う「バンド演奏としての一体感と熱量の不足」が以前から気になっていたのだが、そんな複雑なバンド環境の中で、この『Night Passage』は成立しているからだと推察している。バンド・リーダーの音志向がバンド全体に行き渡り、バンド一体となって、その音志向に向かって邁進する、そんな「一体感と熱量」がこの盤には、どこか不足している。

それでも、この『Night Passage』は、ポップでキャッチャーでフュージョン・チックなフレーズを散りばめながら、当時のエレ・ジャズとして、そのアーティステックな内容が高く評価されて、WR史上の最高傑作として評価されている。

僕もこの『Night Passage』は、WRのデビュー盤『Weather Report』、ジャコWRの『Mr.Gone』に匹敵する傑作だと評価している。いずれの盤も「リズム&ビート」が要。エレ・ジャズには、そのバンドの音志向を反映する「リズム&ビート」が必須。

そういう面で、この『Night Passage』はちょっと異質で、リーダー以外の音志向を反映した「リズム&ビート」が要になっている。それでも傑作なのだ。ジャズは面白い。
 
 

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2022年11月12日 (土曜日)

ブルー・トレイン 65周年記念盤

ネットのジャズ関連の記事を眺めていて、「歴史的発掘!永遠の名盤『ブルー・トレイン』65周年記念完全盤が登場!」というタイトルが目に飛び込んできた。またまた「歴史的発掘」か。幾度と無くこのフレーズは繰り返されてきた感がある。マスターテープは切れ切れになっている訳では無いので、「歴史的発掘」が幾度と繰り返されることは無いとは思うのだが(笑)。

またか、とも思う。しかも「65周年」記念というところにも、中途半端感は拭えない。それでも、正式なアルバムリリースでは完全初出となる「別テイク7曲のうち4曲」が収録されているから、聴きたいなあ、という気持ちにもなる。別テイクは、1本のマスターテープに連続で録音されている筈なので、こんなに切れ切れにリリースしなくても、という思いにも駆られる(笑)。

John Coltrane『Blue Train / The Complete Masters』(写真)。1957年9月15日の録音。ブルーノートの1577番。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Kenny Drew (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。伝説に残るセクステット編成である。

1枚目は、もともとのステレオ版『Blue Train』に、最新リマスタリングを施している。この手のリマスタリングについては、もう満腹感満載で(笑)、以前の「RVGリマスタリング」の衝撃ほどの感動は全く無い。CDのリマスタリングについては限界が来ていると思うので、ふ〜ん、こんな音にもリマスタリング出来るのね、と思うのみ。こんなにリマスタリングで捏ねくり回すのなら、いっそのこと、LPバージョンの音を聴いた方が良いなあ、とも思う。

2枚目は、初出音源含む、別テイク7曲を収録。これが意外と聴きもので、Blue Train [Alternate Take 7]、Blue Train [Alternate Take 8] と併せて、本テイクを聴くと、この曲を完成するのに、かなりの試行錯誤を経ていることが良く判る。
 

Blue-train_the-complete-masters  

 
イントロのユニゾン&ハーモニーの音の組みあわせの試行錯誤。それぞれのアドリブ展開の内容の試行錯誤。特に、コルトレーンのアドリブ展開の内容が各テイクによって全く違うことに驚く。演奏レベルは最高、それでいて各テイク毎に展開とテイストが違う。コルトレーンの凄まじき演奏テクニックの成せる技。他のジャズマンのアドリブも同様だが、コルトレーンが突出している。

用意周到にリハーサルを重ねて本録音に臨ませる方針のブルーノート・レーベル。この素晴らしい録音マナーが、この別テイクから垣間見える。「ブルー・トレイン」1曲でも少なくとも「Take8」。8回取り直しているんですよ。8回取り直そうとするミュージシャン側の粘りも凄いが、それに応えるレーベル側のプロデュースも半端ない。当時のブルーノートが良い録音を残すのは当たり前か、と感心する。

「ブルー・トレイン」1曲で、これだけの試行錯誤を重ねているのだ。演奏する側の演奏テクニックも相当高いものがあるのだろうし、アレンジ能力も優れたものがある。それでも、様々なバリエーションを織り交ぜて、最低8テイクを重ねているのだから凄い。今回の別テイク集を聴いていて、改めて、ジャズは「アート(芸術)の音楽」であるということを実感する。

そして、今回のもう1つの目玉が、別盤仕立ての「モノラル・バージョン」。僕は『Blue Train』のモノラル盤を初めて聴いたのだが、モノラルはモノラルで味わい深い。ステレオ盤の音を聴き馴れているのだが、ステレオは横に音が広がる。モノラルは奥に音が広がる。音の塊に奥行きがグッと出て、狭いライブハウスで、目の前で演奏を浴びる様に聴いている雰囲気に思わず仰け反る。これはこれで「アリ」やな。

手垢の付いた「歴史的発掘の記念盤」。またかいな、とも思うんだが、今回の様に、初出の別テイク音源や、聴く機会の無かったモノラル音源がついてくれば、やっぱり触手は伸びるなあ。そして、改めて、この『Blue Train』というアルバムの素晴らしさと、ブルーノート・レーベルの録音方針の素晴らしさを再認識する。やはり、歴史的名盤は「格が違う」。
 
 

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2022年11月11日 (金曜日)

チック流のエレ・マイルス

Chick Corea『Is』は、1969年5月11–13日の録音。録音した時期は、チックがマイルス・バンドに参加していて、アグレッシヴでエモーショナルなローズをブイブイ弾き回していた頃。この盤は「チックの考えるエレ・マイルス」だと評価した訳だが、まだ、このセッションでの未収録曲があった。

Chick Corea『Sundance』(写真)。1969年5月11–13日の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Hubert Laws (fl, piccolo-fl), Bennie Maupin (ts), Woody Shaw (tp), Dave Holland (b), Jack De Johnette (ds), Horace Arnold (ds)。 『Is』と同一セッションなので、当然、パーソネルも『Is』と同じ。リリースはさすがに『Is』から、2年8ヶ月後、1972年2月のリリースである。

『Is』でもそうだったが、ウディ・ショウ~ベニー・モウピン~ヒューバート・ロウズ、トランペット〜サックス〜フルートというフロントがチックらしい選択だろう。特に、ロウズのフルートを持って来たところに、後の「ユートピア・サウンド」へのアプローチを感じる。この辺りが、エレ・マイルスの「ファンク志向」とは異なるところ。

ホランドのベースとデジョネットのドラムが効いている。リズム&ビートは「ロスト・セッション」の頃のエレ・マイルスのリズム&ビート。そのビートをコリア流にアレンジして活用しているのが、この『Sundance』の音志向。そこに、エレ・マイルスの下でのエレピでは無く、アコピでチック流のエレ・マイルスを展開し尽くした。そんな音世界がこの盤に渦巻いている。
 

Chick-coreasundance

 
エレ・マイルスの「ファンク志向」を避けているところがチックの良い深慮遠謀。冒頭「The Brain」は限りなく自由度の高いビ・バップの様であり、2曲目「Song of Wind」は、限りなく自由度の高い新主流派の様であり、ラストのタイトル曲「Sundance」こそは、実にチックらしい、モーダルでキャッチャーな曲想で、後の「Return to Forever」を彷彿とさせる。

3曲目の「Converge」は完全なフリー・ジャズ。マイルスが絶対に手を出さなかったフリー・ジャズなんだが、ここでは、チックの考える「エレ・マイルスによるフリー・ジャズ」が感じられる。リズム&ビートによる約束事をベースに、集団即興演奏を展開する。

マイルスの嫌う、無手勝流の勝手気ままなフリー・ジャズでは無い。どこか、ビートによる規律が感じられるフリー・ジャズ。エレ・マイルスの手法をフリー・ジャズに応用して、チック流のフリー・ジャズを展開している様に聴こえる。

「エレ・チック」の根っこには、しっかりと「エレ・マイルス」がいるんやなあ、と妙に感心してしまう。しかも、この盤は「チック流のエレ・マイルス」。チックの音志向をエレ・マイルスの手法に落とし込み、チックの音志向を前面に押し出した「チック流のエレ・マイルス」。

そして、チック流のフリー・ジャズの基本的考え方がこの盤の「Converge」で取り纏められている。そして、この「基本的考え方」が、次のチックの展開である「サークル」で花開くのである。
 
 

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2022年11月10日 (木曜日)

ランディの素晴らしいライヴ音源

2022年11月5日のブログ「マイケルの素晴らしいライヴ音源」でご紹介した、弟マイケル・ブレッカーのライヴ音源と同一日、同じジャズフェスでの兄貴のランディ・ブレッカーのライブ音源がある。同一日なので、一日で、ブレッカー兄弟それぞれのバンドのライヴが聴けた訳か。ええなあ。

Randy Brecker『Live at Fabrik Hamburg 1987』(写真)。1987年10月18日、The Jazzfestival Hamburgでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Randy Brecker (tp), Bob Berg (sax), Dieter Ilg (b), David Kikoski (p), Joey Baron (ds)。ハンブルグ・ジャズフェスにて、ランディ・ブレッカーバンドを率いて演奏した折の未発表ライヴ音源。

演奏にクインテットを選んだのは、ホレス・シルヴァーを意識した、とのこと。確かに、ネオ・ファンキー・ジャズと呼んで良い位に、とても洗練された、とてもお洒落でテクニカルなファンキー・ジャズが展開されている。どこか、当時のエレ・マイルスのジャズ・ファンクを判り易い演奏にリコンパイルし、ポップに味付けした様な、エレ・マイルスにインスパイアされた印象を持つのは僕だけかなあ。
 

Randy-breckerlive-at-fabrik-hamburg-1987

 
ただし、ランディはトランペッター。エレ・マイルスの影響をそのまま出したら、マイルスの物真似に聴かれると困る。そこで、一捻りして、ファンクネスの表現の部分はシルヴァーのファンクネス表現をリニューアルし、新しいファンキー・ジャズの雰囲気に乗って、マイルスを口語体に直した様な、判り易いポップなフレーズを吹きまくる。これは良い。これは聴かせるファンキー・ジャズだ。

メンバーも厳選されている。特に、サックスは、エレ・マイルスを経験しているボブ・バーグが担当していて、ストレートでファンキーなサックスを吹きまくっている。キコスキーのピアノはファンキーな弾きこなしで切れ味抜群。ブレイキー、ミンガス、シルバー、モンクら、ジャズのレジェンドへの敬意に満ちた、ストレート・アヘッドな、軽快なファクネス溢れる展開は効き応え抜群。

ランディ・バンド、マイケル・バンド、メンバーも音志向も異なるんですが、演奏の音の「底」はしっかり繋がっているなあ、と改めて感心。特に、ストレート・アヘッドなランディのトランペットが秀逸。確かに、ランディのトランペットは純ジャズの系譜でも一流でした。今回のライヴ盤を聴いて再認識しました。
 
 

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2022年11月 7日 (月曜日)

傑作ライヴ盤『8:30』を聴き直す

このライヴ盤は売れた。内容的にも充実している。ウェザー・リポートのメンバーが、やっと、テナー・サックスのワンホーンに、キーボード+ベース+ドラムのリズム・セクションの4人について、最適のメンバーが顔を揃え、最適なメンバーで固定された記念すべきライヴ盤である。

Weather Report『8:30』(写真)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (el-b), Peter Erskine (ds)。 ほとんどの曲がザヴィヌル作であり、大ヒットアルバム『Heavy Weather』の人気曲をメインに、他のアルバムから、同傾向の音志向の人気曲が選曲されている。WRが一番、フュージョン・ジャズに接近したライヴ盤である。

このライヴ盤は売れた。選曲は『Heavy Weather』と他のアルバムの人気曲が選ばれており、ポップでキャッチャーな楽曲ばかりが並んでいる。そりゃ〜当時は売れただろうな、と思う。しかし、今の耳で聴き直せば、ジャズとしての即興演奏の妙は、ジャコのベース・ソロ曲と、ショーターのサックス・ソロ曲だけに留まっていて、他の楽曲は既定路線に乗った、金太郎飴の様な聴き馴れたアレンジで統一されている。

前作の『Mr,Gone』からの選曲は全く無く、如何に前作がセールス的に「問題作」だったかが窺い知れる。が、このライヴ盤で、このライヴ盤『8:30』をジャズの範疇に留めているのは、ジャコのベースとアースキンのドラムである。このライブ盤の全編に渡って、この二人のリズム&ビートは半端ない。それまでのWRの人気曲に躍動感を与え、ジャジーな自由度を拡げている。どの曲もオリジナルよりもテンポが速く、ベースラインもドラミングも複雑極まりない。
 

Wr-830

 
加えて、何時になく、ショーターがサックスを吹きまくっている。吹きまくり、とはこのこと。しかも、誰にも真似できない、ショーターならではの宇宙人的に捻れたフレーズが満載。どの収録曲もザヴィヌルの楽曲で、ショーターの音志向である「エスニック&ミステリアス」な音は希薄でありながら、である。恐らく、ジャコとアースキンのリズム隊の「賜物」だろうと思う。ジャコとアースキンが、ショーターの「ジャズ魂」に火を付けたのだ。

一方、ザヴィヌルのキーボードは安全運転、というか、聴き馴れたフレーズばかりで、可も無く不可も無く。まるでスタジオ録音の演奏を聴いているようだ。せっかくのライブ音源なのに、もっと自由度を拡げて、もっと魅力的なフレーズを弾きまくって欲しかった。

なお、LP時代のD面のスタジオ録音については、発売当時、1980年代のジャズを予言するものとして、持てはやされたものだが、今の耳で聴くと、完成度は「道半ば」、ブラッシュアップ中の未完な雰囲気が漂っていて、僕はあまり評価していない。これをLP時代のLP2枚目のD面に入れるのなら、他の曲のライヴ音源を追加して欲しかった。今となっては、このLP時代のD面の存在意義が良く判らなくなっている。

ショーターとジャコ、アースキン。この3人の卓越したテクニックの下、ジャジーで自由度の高い、変幻自在な演奏が、このライヴ盤を「ジャズ」の範疇に留め、未だ、エレ・ジャズの傑作ライヴ盤の1枚としての評価を維持しているのだ。
 
 

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2022年11月 6日 (日曜日)

今の耳で『Mr.Gone』を聴き直し

Weather Report(ウェザー・リポート)というバンドについて、その本質となる音の志向はなんだったんだろう、と思うことがある。レコード会社の意向の翻弄されて、売らなければならないというプレッシャーの中では、なかなか、その本質となる音の志向を、バンドのメンバーが思うとおりに追求するのは、なかなか難しかったと思われる。

Weather Report『Mr.Gone』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key, syn), Wayne Jaco Pastorius (b, ds (tracks 1,2))。アディショナル・メンバーとして、Peter Erskine (ds (tracks 1 and 7), Tony Williams (ds (tracks 5 and 6)), Steve Gadd (ds (tracks 3 and 8)), Manolo Badrena, Jon Lucien (vo (track 1)), Deniece Williams, Maurice White (vo (track 8))。

ザヴィヌルとジャコの双頭プロデュース。音の志向としては、ジャコ主導のプロデュースで、この盤は成立している。というのも、このアルバム、それまでのWRの音志向とは全く異なるもので、アーティスティックな雰囲気に彩られた、エスニックでアーシーで、ワールド・ミュージック的な音世界。前作のヒット・アルバム『Heavy Weather』のポップでフュージョンな音世界の微塵も無い。

しかしながら、このジャコの音志向が、WRのバンドとしての本質な音志向のひとつにヒットしているのだから面白い。エスニックで呪術的で限りなく自由度の高いモード・ジャズの音世界。これが、もともと、ザヴィヌルとショーターとヴィトウスが描いていた「WRの音世界」のひとつである。ザヴィヌル、ショーター抜きのジャコ主導のプロデュースで、この音世界が表現された訳だから、ジャコのプロデュースの才能は凄い。

よくこんな「ジャコの冒険」をザヴィヌルが許したもんだと感心する。冒頭の「Pursuit of the Woman With the Feathered Hat(貴婦人の追跡)」を聴くだけで判る。このアルバムが、ジョー・ザビヌルのものでないことを。ボーカルの使い方、キーボードの重ね方、サックスの使い方、どれをとっても「ザヴィヌルの音」では無い。これは「ジャコの音」である。
 

Wrmrgone

 
面白いのは、この「ジャコの音」に乗って、ショーターがサックスを喜々として吹いているところ。ジャコのエスニックで呪術的な音志向が、ショーターのサックスの音志向にバッチリ合うのだろう。この盤で、ショーターは、メインストリーム志向の、実に魅力的なモーダルなフレーズを連発する。そして、このショーターのサックスが、この盤を「メインストリームな純ジャズ」志向の音世界に染め上げている。

ジャコのベースは大活躍。とりわけ、6曲目のジャコ作『Punk Jazz』が凄い。ザビヌルも、ポリフォニック・シンセで真っ向から応戦しているのだが、あまりにもジャコのインプロビゼーションが凄すぎて、他のメンバーが目立たなくなるほど。凄まじきジャコのエレベである。他の曲でも凄まじき、自由度の高い、ファンキービートの効いたエレベの乱舞。

WRは、この盤で、唯一、WRの音志向に合致したドラマー、ピーター・アースキンに出会う。ちなみにこの盤では、まだドラマーは固定されていない。苦し紛れにトニー・ウィリアムスを持って来たり、スティーヴ・ガッドを持って来たり、果ては、またまた、ジャコ自身がドラムを叩いたりしている。しかし、今の耳で聴くと、アースキンのドラムが一番、WRの音世界にフィットしている。

僕はこの『Mr.Gone』の音世界が大好きだ。でも、リリースされた当時は、評論家筋の評価は全く思わしく無かった。でも、今の耳で聴いても、この『Mr.Gone』の音世界は、Weather Reportのアルバムの中でもトップクラスである。当時、何故、あんなに評価が低かったのかが理解しかねる。この盤は、歴史的な成果を誇る、WRの代表作の1枚である。
 
 

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2022年11月 5日 (土曜日)

マイケルの素晴らしいライヴ音源

現代で活躍するジャズマンを見渡して見ると、ピアノ、トランペット、アルト・サックス、ベース、ドラムなどは、現代ジャズにおいて、演奏スタイルやトレンドをリードする「後を継ぐ者」がしっかりと存在している。が、テナー・サックスについては、ちょっと低調な感がある。

そもそも、マイケル・ブレッカーが、2007年早々に57歳で急逝してしまって、21世紀に入って、ブランフォードが活動を徐々にスローダウンさせて、それ以降、何人かの優れたテナーマンは現れ出でてはいるのだが、そんな中で突出した名前が浮かばない。

まあ、テナー・サックスについては、1967年に逝去した「ジョン・コルトレーン」という偉大な存在が未だに君臨していて、テナーマンの新人が出てくる度に、やれコルトレーンそっくり、だの、コルトレーンの方が優れている、だの、何かにつけ、コルトレーンと比較され、コルトレーンの存在は絶対で、常に低評価される傾向にあるので、正統な評価を得ることが出来無いのだろう。

Michael Brecker Band『Live at Fabrik, Hamburg 1987』(写真)。1987年10月18日、The Jazzfestival Hamburgでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (sax), Joey Calderazzo (key), Mike Stern (g), Jeff Andrews (b), Adam Nussbaum (ds)。テナー・サックスの雄、マイケル・ブレッカーがリーダーの、ギター入りクインテット編成。ライヴ・アット・ファブリーク・シリーズ第3弾になる。

録音年の1987年は、マイケルにとって、自身単独の初リーダー作がリリースされた記念すべき年。このライヴ盤では、とても充実したマイケルのサックスが堪能出来る。そして、ライヴ盤であるがゆえ、マイケルのサックスの個性がとても良く判る。
 

Michael-brecker-bandlive-at-fabrik-hambu

 
マイケルもデビュー以降、常にコルトレーンと比較され、やれ、コルトレーンの後継だの、やれ、コルトレーン以下だの、マイケルのテナーは、概ねコルトレーンのフォロワーと評価されていたが、このライヴ盤のマイケルのテナーを聴くと「それは違う」ことが良く判る。コルトレーンと似ているのは、ヴィブラートやフェイク無しのストレートな吹奏だけ。

マイケルのバンドの音志向は、どちらかと言えば、当時の「復活後のエレ・マイルス」を志向していたと感じる。とてもヒップで疾走感溢れる「クールなジャズ・ファンク」。

リズム&ビートは切れ味良くコンテンポラリーでファンキー。そんなリズム&ビートをバックに、クールでモーダルなフレーズを吹きまくるマイケル。そのフレーズは、シーツ・オブ・サウンドでもなければ、エモーショナルでスピリチュアルなフリーでも無い。

バックの演奏もそうだ。ジェフ・アンドリュースとアダム・ナスバウムの叩き出す、ポリリズミックでファンキーなリズム&ビートに乗った、キーボードのジョーイ・カルデラッツォとギタリストのマイク・スターンのインプロは凄絶。まるで、1960年代後半のエレ・マイルスのチック・コリアとか、ジョン・マクラフリンとかを彷彿させる、その「ど迫力と自由度」。
 
マイケルのテナーは、当時の「復活後のエレ・マイルス」におけるマイルスのトランペットのフレーズをフォローし、自家薬籠中のものとしたもので、それが唯一無二の個性なのだ。マイケルは、決して、コルトレーンのフォロワーでは無かった。それがとても良く判る未発表ライヴ盤。こんなライヴ音源が残っていたなんて。1987年辺り、タイムリーにリリースして欲しかったなあ。
 
 

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2022年11月 4日 (金曜日)

ソロライヴ「ボルドーのキース」

2017年2月15日の米「カーネギーホール」でのコンサート以降、一切公演を行っていないキース・ジャレット。その後、2018年2月と5月、2度の脳卒中を起こし、左半身が麻痺。1年掛けてかなりリハビリしたものの、片手でしか演奏できず、キースいわく「両手演奏のピアノ曲を聴くと、非常にもどかしく感じる」。それから、3年が経過している。キースの状態はどうなんだろう。

最近、キースはNPRからのインタヴューを受けたらしく、現在はニュージャージー州北西部の自宅で静かにリハビリを続けていて、ピアノの前に座り、インプロヴィゼーション、スタンダード、ビバップを右手で弾いていると明かしているそうだ。復帰する、しないに関わらず、回復して欲しいと切に思う。

Keith Jarrett『Bordeaux Concert』(写真左)。2016年7月6日、フランスのボルドーでのライヴ録音。キース・ジャレットのソロ・パフォーマンスの記録。

キースの最後の欧州ツアーの最初に録音された『ブダペスト・コンサート』、その欧州ツアーの最後に録音された『ミュンヘン2016』は既にリリースされている。今回リリースされた『ボルドー・コンサート』は、同じ最後の欧州ツアーにおけるブダペストのコンサートから3日後、ミュンヘンのコンサートの10日前に録音された作品。

ブタペストでは、前半は「バルトークへの生涯の愛着にインスパイアされたソロ・パフォーマンス」、後半は「耽美的でメロディアスで躍動的でジャジーなパフォーマンス」で構成されていた。
 

Keith-jarrettbordeaux-concert

 
ミュンヘンでは、前衛音楽の様なフリーキーな即興演奏から、アーシーなリズム&ビートを伴ったアメリカン・フォーキーな演奏、モーダルで限りなく自由なスタンダード演奏まで、なかなかバリエーションに富んだ内容だった。
 
このボルドーでは、ブダペストやミュンヘンと同じく、往年の「長尺の演奏で、起伏のある抒情的なメロディアスな曲」とは異なる、短尺の曲が志向を変えて入れ替わり立ち替わり展開されるという構成は変わらない。

オープニングは抑えめな曲調で、現代音楽風の無調なインプロから始まるが、後半になるに従って、ブタペストの様な「耽美的でメロディアスで躍動的でジャジーなパフォーマンス」になって、特に「美しい曲想」のパフォーマンスが多い。前半は「現代音楽〜現代クラシック」の志向が強く、後半は「極上の耽美的で躍動的なジャズ」の志向が強くなる。

キースのソロ・パフォーマンスのショーケースの様な内容で、適度なテンションの中、切れ味の良い、ダイナミックかつ繊細な、極上なピアノ・ソロの連続に、これはこれで良いよな、と一気に13の即興演奏を聴き通してしまう。

最近のインタヴューで、同じツアーで既に発売されている2作(ブタペスト、ミュンヘン)と本作以外に、他に訪れてライヴ演奏をした、ウィーンとローマも発表したいとのこと。そちらのリリースも大いに期待したい。
 
 
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2022年11月 3日 (木曜日)

スナーキー・パピーのライヴ盤

Snarky Puppy(スナーキー・パピー)。は、ベーシストのマイケル・リーグ率いる米国のインスト集団。音の志向は「ジャズ、ロック、ワールド ミュージック、ファンク」の音要素を融合したもの。ファンクネスはライトで薄め、ワールド・ミュージックの要素も変化を付ける為の小道具的扱いで、基本は、8ビートに乗った、ピアノ&キーボード、時々エレギをフロント・メインとしたインスト。高速8ビートのスムース・ジャズといった雰囲気。

Snarky Puppy『Live at GroundUP Music Festival』(写真左)。2022年3月のリリース。マイケル・リーグが主催しているレーベルの〈GroundUP Music〉が毎年マイアミで開催しているフェスでの音源をまとめたライブ盤。スナーキー・パピーとして、2番目の「ライブ&インコンサート」のアルバムになる。スタジオ録音では無い、ライヴ録音というところがこの盤の「キモ」の部分だろう。

とても高度なテクニックに裏打ちされた、揺るぎない、破綻の無い、流れる様な8ビートのインストで、ライトで薄めではあるが、ファンクネス漂い、明快で重量感のあるオフビートの演奏なので、このインスト演奏は「ジャズ、もしくはフュージョン、またはスムース」と解釈される。電気楽器を活用しているが、音質として生楽器に近いテイストをしているので、テクノ・ポップっぽい、無機質な音作りにならないところが良い。
 

Snarky-puppylive-at-groundup-music-festi

 
力感溢れる演奏ではあるが、実に流麗な演奏。ひとつ間違えば、高度なテクニックのエレクトリックなイージーリスニングに陥りそうなんだが、上手くファンクネスをビートに効かせ、時折、ワールド・ミュージックな音の要素を織り込んで、単調さ、マンネリを防止している。バックの低音を強調した8ビートな「リズム&ビート」が強力なので、躍動感が高まり、ダンス・ミュージックな雰囲気も漂うところが面白い。

キーボードがフロント・メインな演奏が多いので、どこかプログレッシヴ・ロックの様な雰囲気も漂うインストは、しっかりオフビートを効かせて、聴き手を「乗せる、煽る、躍らせる」音楽を切れ目無く供給する。お洒落でスムースなダンス・ミュージックと表現しても良いかもしれない。

スナーキー・パピーのインストは「ばらつき」が無い。どの演奏も、その演奏テクニックは高度、「ジャズ、ロック、ワールド ミュージック、ファンク」の要素を融合した音の志向、そして、明快で重量感のあるオフビート、という個性をしっかり守った、流麗でダンサフルなエレ・インストは聴いていて気持ちが良い。
 
 

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2022年11月 2日 (水曜日)

『Bitches Brew Live』は語る

エレ・マイルスの名盤『Bitches Brew』を聴くと、エレ・マイルスの基本は「ジャズ」で、しっかりと「メインストリームなジャズ」であり、クロスオーバーでも無ければ、フュージョンでも無いことを確信する。この盤に表現されているのは、サイケでプログレなビートに乗った「即興演奏を旨とするエレクトリックな純ジャズ」である、と感じる。

が、『Bitches Brew』はスタジオ録音であり、何度もリハーサルを繰り返すことが出来るし、良いところだけ切り取って編集することだって出来る。確かに、限りなく自由度の高い、即興演奏を旨とするエレクトリックな純ジャズなんだが、どこか「作られた雰囲気」が漂うことは否めない。そういう時、ライヴではどうだったのか、という思いに行き着く。そう、ライヴ音源が聴きたい。

Miles Davis『Bitches Brew Live』(写真左)。1969年7月5日のニューポート・ジャズフェス、1970年8月29日のワイト島フェス、2つのライヴ音源をカップリングしている。ちなみにパーソネルは、ニューポート・ジャズフェスでは、Miles Davis (tp), Chick Corea (el-p). Dave Holland (b), Jack DeJohnette (ds)、ワイト島フェスは、Miles Davis (tp), Gary Bartz (as, ss), Chick Corea (el-p), Keith Jarrett (el-org), Dave Holland (el-b), Jack DeJohnette (ds), Airto Moreira (perc) 。
 

Miles-davisbitches-brew-live

 
ニューポートでの演目は「Miles Runs the Voodoo Down」「Sanctuary」「It's About That Time/The Theme」。ワイト島での演目は「Directions」「Bitches Brew」「It's About That Time」「Sanctuary」「Spanish Key/The Theme」。いずれの曲も『In a Silent Way』〜『Bitches Brew』録音期の楽曲である。パーソネルも、『In a Silent Way』〜『Bitches Brew』録音期のパーソネルに準じている。

このライヴ音源を聴くと、『In a Silent Way』〜『Bitches Brew』は、当時の電気楽器の特性を最大限に活かした、相当に自由度の高い即興演奏であり、モード・ジャズであったことが良く判る。『In a Silent Way』や『Bitches Brew』といったスタジオ録音盤は、決して「テオ・マセロのたまもの」では無かった。

凄まじいばかりの自由度の高いエレ・ジャズが、人間の手で実現されていたのだ。これだけ自由度の高い、切れ味良く、疾走感溢れる、即興演奏をメインとするエレ・ジャズは、現代でもなかなか聴くことは叶わない。このライヴ音源を聴いて、やはりエレ・マイルスはただものでは無い、当時、時代の最先端を走っていたのだ、ということを再認識する。無視してはならないライヴ音源である。
 
 

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2022年11月 1日 (火曜日)

1960年代の隠れた傑作盤です

1960年代は「ジャズの多様化」の時代。ハードバップが成熟仕切って、大衆受けを狙った志向と、ジャズをアーティスティックに捉えて、より即興演奏の自由度を求める志向など、ハードバップを根源として、ジャズは様々な志向に発展していった時代。そんな中、それまでのスタンダードな編成から、マンネリズムを避けて、ちょっと変化を付けた編成で演奏する、などという工夫も見られた。

Jimmy Raney, Zoot Sims & Jim Hall『Two Jims and Zoot』(写真左)。1964年3月11, 12日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Raney, Jim Hall (g), Zoot Sims (ts), Steve Swallow (b), Osie Johnson (ds)。タイトル通り、二人の「Jims」、ジミー・レイニーとジム・ホールの2人のギタリストと、歌心溢れ、スインギーで小粋なテナーマン、ズート・シムズの3人並列のリーダー作。

ルイス・ボンファの名曲「カーニバルの朝」やアントニオ・カルロス・ジョビンの代表曲「エステ・ソー・オルハー」など、当時流行していた軽いボサノヴァ路線が中心の選曲だが、これが実に雰囲気が良い。ホールの自作曲を含め、この盤ではまず、レイニー&ホールのギターと、シムズのテナーを引き立てる様な「選曲の妙」が目に付く。
 

Two-jims-and-zoot

 
知的でセンシティヴ、切れ味良くプログレッシヴなレイニー&ホールのギターが傑出している。ツインリードと形容して良い、二人が平等に並び立つギターが実に良い雰囲気。ユニゾン&ハーモニーでの微妙なフレーズのズレも心地良く、二人のギターの相性は抜群。室内楽的に流麗に響く二人のギターは「歌心」も抜群。思わず聴き惚れてしまう。

どんな曲でも見事にスイングするズート・シムズのテナーも聴きもの。ボサノヴァ曲でのフンワリした力強いフレーズも心地良く、レイニー&ホールの二人のギターとの絡みもスインギー。特にこの盤では、レイニー&ホールの二人のギターに触発されたのであろう、実に味わいのある、歌心溢れるテナーを聴かせてくれる。

ギター2本&テナーの変則フロントに、それを引き立てる選曲&アレンジ。1960年代の「ジャズの多様化」の時代に「じっくりと聴かせる小粋なジャズ」。我が国ではあまりメジャーな存在では無いが、この盤は「1960年代の隠れた傑作盤」として良いと思う。サブスク・サイトにもしっかりアップされているので、気軽に一度は聴いて欲しい「隠れ名盤」である。
 
 
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