ジャズ喫茶で流したい・252
ジャズは、大衆音楽の側面と芸術音楽の側面、2つの側面を持つ。ポップス同様、大衆向けの音楽として、キャッチャーで判り易い、耳当たりの良い演奏と、しっかりとした音楽理論の下、確かなテクニックと理論的な演奏手法を基に、芸術性を前面に押し出した演奏、2つの側面を持つ、ユニークな音楽ジャンルである。
John Lewis『Private Concert』(写真左)。1990年9月10〜12日、NYでの録音。仏PolyGramレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Lewis (p) 1人。Modern Jazz Quartet(MJQ)のリーダー&ピアニストのジョン・ルイスのピアノ・ソロである。
ジョン・ルイスは、一流のジャズ・ピアニストであり、クラシックの様々な音楽理論にも精通した、アーティステックな音楽家である。Modern Jazz Quartetでは、弦楽四重奏的な演奏手法を取り込み、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジしたり。ジョン・ルイスは、芸術性を前面に押し出したジャズ・ミュージシャンの代表格であった。
で、このソロ・ピアノであるが、冒頭の「Saint-Germain-Des-Prés」を聴いて、ジャズの「クラシックに匹敵する芸術性」を改めて認識した。流麗で軽やかでアーティスティック。小粋なフレーズがどんどん湧いて出てきて、思わず、じっくりと聴き耳を立ててしまう。まるで、クラシックの様なピアノ演奏だが、出てくるフレーズはしっかりとジャズしている。
「Saint-Germain-Des-Prés」=サンジェルマン・デ・プレはパリ6区に位置する「知性と文化を代弁する」エリア。いわゆる「アーティスティック」な街。その街の名を曲名にした冒頭の魅力的な1曲が、このソロ・ピアノ盤の音志向を決定付けている。つまり、確かなテクニックと理論的な演奏手法を基に、芸術性を前面に押し出した演奏が詰まっている。
同様に、パリを題材にしたジョン・ルイスの自作曲が全部で4曲。どれもが、流麗で軽やかでアーティスティック。小粋なフレーズが印象的な楽曲ばかりで、ちょっと洒落ている雰囲気が実に良い。
アーティスティックな面を押し出しているからといって、堅苦しくは全く無い。バッハの曲も2曲「The Opening Bid」「Down Two Spades」でカヴァーされているが、しっかりとジャズ化していて、和音の重ね方もビートも「ジャズ」である。
スタンダード曲の「Don't Blame Me」と「'Round Midnight」は、大衆ジャズっぽくアレンジせず、あくまでアーティスティックに格調高くアレンジされている。それでも、底のビートはジャズなんだから、ジョン・ルイスの演奏能力の高さは定評通り。そこはかとなくファンクネスも漂う弾きっぷりは、確かに芸術的である。
この盤、たまたまネットを徘徊していてピックアップ出来たのだが、こんなジョン・ルイスのソロ・ピアノ盤が、1990年にリリースされていたとは知らなかった。しかし、たまたまピックアップ出来て良かった。ジョン・ルイスのアーティスティックな側面を強烈に感じる盤はそうそう無い。ジョン・ルイスのピアノを感じるに最適のソロ・ライヴ盤だと思う。
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