« 当時の流行を捉えたエルヴィン盤 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・249 »

2022年9月13日 (火曜日)

キューンの個性の変化を捉える

1970年代のECMレーベルからリリースされた諸作から、耽美的でリリカルな抒情派、前衛的なモーダルな弾き回しで、時にフリー、時にアブストラクトに硬派で尖った、ニュー・ジャズ系のピアニストと目されていたスティーヴ・キューン。

1981年に一旦、ECMレーベルを離れたが、再び、ECMレーベルに戻ったのが、1995年のリーダー作『Remembering Tomorrow』。この盤で、明らかにキューンのピアノは変わったと感じた。

耽美的でリリカルな抒情派な部分はそのままなのだが、前衛的なモーダルな弾き回しで、時にフリー、時にアブストラクトに硬派で尖った個性が後退し、バップな雰囲気の、どこか判り易い「ポップな」弾き回しが前面に出てきた。

そして、1997年の『Sing Me Softly of the Blues』、1998年の『Love Walked In』で、ヴィーナス・レコードからリーダー作をリリースするようになる。ここにきて、キューンのピアノの変化は決定的になる。まず、明るくなった。そして、耽美的でリリカル、幾何学模様的なモード展開、整ったリズム&ビートが判り易くなった。

そして、ジャズ・スタンダード曲を演奏するようになった。前衛的なモーダルな展開が魅力の自作曲中心だったキューンが、ここにきて、ジャズ・スタンダード曲を演奏するようになる。最初は、ヴィーナス・レコードの強い要望があったのかと邪推した。しかし、キューンは筋金入りのジャズ・ピアノ職人。ヴィーナスでの諸作を聴くにつけ、そんな要望に応えるのでは無く、自らがその選択肢を選んだ様に感じた。

Steve Kuhn『Countdown』(写真左)。1998年10月19, 20日、NJ,のVan Gelder Recording Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Steve Kuhn (p), David Finck (b), Billy Drummond (ds)。キューンの個性がダイレクトに伝わるピアノ・トリオ編成。この盤でも、収録曲を見渡せば、結構マニアックなジャズ・スタンダード曲を好んで演奏している。
 

Steve-kuhncountdown

 
この盤は「Reservoir」というレーベルからのリリースになるが、この盤でも、耽美的でリリカルな抒情派な部分はそのままなのだが、 バップな雰囲気の、どこか判り易い「ポップな」弾き回しがメインになっている。しかも、ヴィーナスの諸作に比べて、スイング感が半端ない。この盤での、ハードにスイングするキューンは、まさに「バップ・ピアノ」である。

しかし、1950年代から60年代の旧来のバップ・ピアノの焼き直しでは無く、前衛的なモーダルな弾き回しを織り交ぜながら、モーダルな展開にしろ、コードの基づいた展開にしろ、新しい響き、新しいフレーズを散りばめた、現代の「ネオ・ハードバップ」に通じる、新しい「バップ・ピアノ」に仕上がっているのには恐れ入った。さすがはキューン。硬派で尖った、ニュー・ジャズ系のジャズ・ピアニストの影が、この盤の「バップ・ピアノ」に宿っている。

「Four」や「When Lights Are Low」といった、マイルスの名演で有名なジャズ・スタンダード曲を、キューンの新しいイメージのピアノで切れ味良く再構築しているところなど、実に「小粋」。これまた超有名スタンダードの「Speak Low」では、「マイルストーンズ」のメロディを引用しているところは、まるで、1950年代のハードバップ。

この「Reservoir」盤を聴いていると、やはり、1990年代半ばでの、キューンの個性の変化はキューン自身が自ら企て、自発的に変化したものだということが良く判る。

なにも、ヴィーナス・レコードにそそのかされた訳では無い(笑)。耽美的でリリカルな抒情派な部分そのままに、 バップな雰囲気の判り易い「ポップな」弾き回しのキューンをタイムリーに捉えることが出来たのだから、逆にヴィーナス・レコードはラッキーだった。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

« 当時の流行を捉えたエルヴィン盤 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・249 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 当時の流行を捉えたエルヴィン盤 | トップページ | ジャズ喫茶で流したい・249 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2022年11月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

カテゴリー