ファーマーのハードバップの成熟
ジャズ・トランペッターについては、一に「マイルス・デイヴィス(Miles Davis)」、二に「アート・ファーマー(Art Farmer)」、三に「リー・モーガン(Lee Morgan)」。マイルスは別格として、アート・ファーマーが、ジャズ・トランペッターの「お気に入りの上位」である。
ジャズを聴き始めた頃、『Modern Art』に出会って、アート・ファーマーの「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いトランペット」が好きになった。歌心も十分、そこはかとなくファンクネス香る、知的なトランペットに「填まった」。以来、今までずっと、40年以上、ファーマーのトランペットを聴き続けている。
Art Farmer『Farmer's Market』(社員左)。1956年11月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp), Hank Mobley (ts), Kenny Drew (p), Addison Farmer (b), Elvin Jones (ds)。アート・ファーマーの初期、6枚目のリーダー作になる。ベース担当の「アディソン・ファーマー」は、アート・ファーマーの双子の兄弟。
メンバー個々のそれぞれの楽器演奏や斬新なアドリブ展開を楽しむ、というよりは、盤全体のハードバップな雰囲気をまるごと楽しむ盤である。
メンバーはそれぞれ、ハードバップ時代の名手ばかりなので、ユニゾン&ハーモニー、インタープレイ、アドリブ展開、どれをとっても、お手本の様な「ハードバップな演奏」がギッシリ詰まっている。そこかしこに「手慣れた感」が漂うのは、この時期、ハードバップ・ジャズが成熟していた証であろう。
リーダーのアート・ファーマーのトランペットが絶好調。端正でブレの無い、ブリリアントで流麗でウォームなトランペットが疾走する。そして、ピアノのケニー・ドリューがとっても良い。切れ味の良い、端正なファンキー・ピアノを弾きまくっている。
テナーのモブレーは、ちょっと迷いやミスが見え隠れするが、何とか他のメンバーのレベルに合わせていくところは、さすがである。双子の兄弟、アディソン・ファーマーのベースとエルヴィンのドラムが、がっちりとリズム&ビートを支え、フロント2管をピアノ・ソロを鼓舞する。
ルディ・ヴァン・ゲルダーの手になる、鮮度と切れ味の良い録音で、アート・ファーマーの「ハードバップの成熟」を記録している。音も良く、個々の演奏も良く、グループ・サウンズとしての完成度も高く、とても良く出来た「ハードバップ盤」である。意外と我が国では人気が無いのが不思議でならない。もう一度言うが「ハードバップの優秀盤」です。
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