ラリー・コリエルの最終録音盤
ラリー・コリエル(Larry Coryell)。米国のフュージョン・ギタリスト。1970年代から1980年代半ばにかけて、我が国ではクロスオーバー・ジャズ〜フュージョン・ジャズの人気ギタリストとして君臨。何故か、1980年代半ば以降、我が国では人気が急速に衰え、1990年代では、知る人ぞ知るクロスオーバー・ギタリストになっていた。
恐らく、日本のレコード会社と未契約のレーベルからのリリースだったので、国内で宣伝が行き届かなかったと推測している。しかし、米国ではコンスタントにリーダー作をリリースしていたのだから、人気はキープしていたのだろう。2017年2月19日、ツアー滞在先のNYのホテルで心不全にて逝去。73歳没。今では、我が国でラリー・コリエルのギタリストの名を知っているのは、年配のフュージョン者の方々だけだろう。
『Larry Coryell's Last Swing with Ireland』(写真左)。2016年5月にダブリンの「TheHellfireStudios」での録音。ちなみにパーソネルは、Larry Coryell (g), Dave Redmond (b), Kevin Brady (ds)。ラリー・コリエルの遺作になる。当時、どういう心境の変化だったのだろう、シンプルなキーボードレスのトリオ編成。コリエルのギターの個性がとても良く判る編成。
ラリー・コリエルは、クロスオーバー・ジャズの時代の「エレギの寵児」。超絶技巧、ジャズとロックの融合、いわゆるクロスオーバー・ジャズのシーンで大活躍した。あまりの超絶技巧さとジャズの原型を留めない、完璧ロックな演奏をギンギンにやる傾向にあって、我が国では「キワモノ」扱いされることもしばしばだった。が、この遺作では、スタンダード曲中心の構成になっている(スタンダードは4曲、トリオメンバーが共同作曲したオリジナルが2曲)。
冒頭の「In a Sentimental Mood」など、スローな弾きっぷりの中に、鋭い切れ味を感じるフレーズが凄い。パーカー作の「Relaxin' at the Camarillo」では、バップ・ギターの弾き回しが新鮮だ。このバップ・ギターの弾き回しの中で、超絶技巧なテクニックを惜しげも無く披露する。ディズニー曲の「Someday My Prince Will Come」は、コリエルのギターの音がとても美しい。完璧ロックな演奏をギンギンにやるコリエルが、情緒豊かにリリカルで耽美的なギター・ソロを展開するコリエルは見事である。
コリエルの遺作が、なんと「クラシック・ジャズギター盤」だったとは、何だか感心することしきり、である。クロスオーバー・ジャズ時代のエレギの寵児の「白鳥の歌」が、モダン・ジャズの原点、バップ・ギターでのスタンダード曲の演奏だったとは。とても内容充実の聴いて楽しい「クラシック・ジャズギター盤」。惜しいギタリストを亡くした、とつくづく思う。
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