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2022年7月の記事

2022年7月31日 (日曜日)

『Cumbia & Jazz Fusion』再び

久々に「チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)」のリーダー作を一気に聴き直したくなった。ミンガスのキャリア初期の名盤『Pithecanthropus Erectus(直立猿人)』 を聴いて、雄大なオーケストラルな音世界、正統なモダン・ジャズのアレンジを踏襲した重厚な音作り、しっかりと統率されたグループ・サウンド、に感じ入って以来、節目節目でミンガス・ジャズを聴いてきた。

僕はミンガス・ジャズには、モダン・ジャズの「基本中の基本」の音作りが宿っていると感じている。エリントン・ジャズを踏襲し、当時のジャズの最新の演奏トレンドを積極的に取り込み、何時の時点でも、その時点での「先端を行くジャズ」を表現している。つまり、モダン・ジャズを常に進化させている訳で、これは音楽を創造していく上での「基本中の基本」で、ミンガス・ジャズはそれをアルバム毎に、メンバー一体となって表現している。

マイルスと同じレベルで、モダン・ジャズを進化させ続けたミンガス・ジャズ。そんなミンガス・ジャズをもう一度、網羅的に体験したいと思い立った。今回は、遺作からキャリア初期に遡って、ミンガスのリーダー作を聴き直していく。逆に、そのアプローチの方が、ミンガス・ジャズの進化を感じ取れ易いと考えた。

Charles Mingus『Cumbia & Jazz Fusion』(写真左)。1976年3月はローマ、1977年3月はNYでの録音。ビッグバンド編成に、バズーンやオーボエ、イングリッシュ・ホルン、バスクラなど、木管楽器や多くのパーカッションを参入させているので、パーカッションの表記はオミットさせていただく。ドラムに永遠の相棒、ミンガスのベースの最高のパートナーであり、最高のリズム隊を構成するドラマー、ダニー・リッチモンドはちゃんといる。

LP時代の正式な収録曲は2曲のみ。A面を占める「Cumbia and Jazz Fusion」とB面を占める「Music for "Todo Modo"」の2曲。CDリイシュー時のボートラである「Wedding March/Slow Waltz」と「Wedding March/Slow Waltz [alternate take]」は蛇足な追加収録として、本来のアルバム作品としては不要なので、常にオミットして聴いている。
 

Charles-minguscumbia-jazz-fusion

 
"Cumbia(クンビア)"とは、カリブ船沿岸の黒人たちが多く住みついた漁村を中心に広がった、南米の北端に位置するコロンビアを代表する音楽のことで、アフリカン・ネイティヴぽく長閑で土着的な響きが特徴。"Jazz Fusion"は、1970年代後半、「融合」のジャズとして一世を風靡した演奏トレンドのことを指すのだろうが、ここでは、ジャズの歴史的な演奏方法、演奏トレンドの全てが詰まっていて、それが違和感なくミックスされ、展開されていくミンガス・ジャズの「融合」を指すのだと思う。

1曲目の「Cumbia & Jazz Fusion」は、収録時間28分強、長尺の力作。その演奏は、クンビアの長閑でホンワカした演奏から、ハードなジャズ・オーケストラまで目眩く「ジャズ絵巻」。全体的にスピード感のある、非常に優れたジャズ・オーケストラ。クンビアの調べの存在が、この演奏には「ジャズのルーツ」を感じさせる、実に印象的な演奏になっている。クンビアとジャズの「融合」。僕はこの演奏が大好きだ。

2曲目の「Music For "Todo Modo"」は、トランペットやサックスのフロント楽器による映画音楽的なロマンティックなテーマ演奏から入ります。それが5分ほど経つと、ちょっと捻りの入ったフリーキーな演奏に早変わり。再び、映画音楽的なロマンティックなテーマ演奏に戻り、次にやって来るのは、正統派ハード・バップな演奏。ミンガスの骨太ベースが響き渡って、この2曲目の演奏は、ジャズの演奏トレンドの「融合」。ミンガス・ジャズの真骨頂である。

途中でダレない構成力と演奏力。この盤に詰まっているメロディーは、意外とキャッチャーであり、ソフト&メロウでもある。時に、フリーキーにアブストラクトにも展開するが、それはジャズが故の、即興演奏を旨とするジャズとしての必然でもある。ミンガスの考える「フュージョン・ジャズ」がこの盤に詰まっている。

ミンガスは、この素晴らしい内容の「融合」ジャズをものにしてリリースした後、翌年早々に鬼籍に入ることになる。潔いと言えば潔い、ミンガスと言えばミンガスらしい、最後のミンガス・ジャズの記録である。
 
 

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2022年7月30日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・17

この盤が「フリー・ジャズ」の原点だ、とするのには違和感がある。この盤を聴けば「フリー・ジャズがなんたるかが判る」なんてことは無い。そんなにジャズは単純なものでは無いし、甘いものでも無い。

作った本人からすれば、一応「ハーモロディクス理論」というものに則った結果だというし、演奏を聴けば、必要最低限の「重要な何らかの決めごと」が演奏の底にあるのが判る。それでなければ、旋律を持った「音楽的な演奏」が成立していない。しかし、作った本人が、この「ハーモロディクス理論」について、精神的な言葉は残っているが、具体的な記述を残していない。これは、決定的に困惑する。

Ornette Coleman『The Shape Of Jazz To Come』(写真左)。1959年5月22日の録音。邦題は『ジャズ来るべきもの』。ちなみにパーソネルは、Ornette Coleman (as), Don Cherry (cor), Charlie Haden (b), Billy Higgins (ds)。仰々しい邦題。この盤以降は、皆、この盤に録音されているジャズをやるんだ、なんて誤解を生むような邦題である(笑)。

この盤を聴けば、少なくとも、それまでのジャズ、いわゆる、スイングやビ・バップ、ハードバップな演奏とは全く異なる雰囲気であることは判る。といって、コールマンに対して批判的な方々が言う「でたらめ」な演奏では無い。コード進行とリズム&ビートに乗った演奏であるところは、スイングやビ・バップ、ハードバップな演奏と変わらない。

しかし、この盤では、それまでの伝統的なジャズが、やらないこと、やったことがないこと、やってはいけないこと、を全部やっている、それまでの伝統的なジャズに対する「アンチテーゼ」の様な演奏がギッシリ詰まっている様に聴こえる。
 

Ornette-colemanthe-shape-of-jazz-to-come

 
当然、斬新に聴こえるし、革新的にも聴こえる。しかし、この盤はジャズの「イノベーション」では無い。従来のジャズに対する「アンチテーゼ」をベースに演奏した、当時のコンテンポラリーなジャズだと思う。

選ばれたコードは、いままでの伝統的なジャズが採用しないコードがてんこ盛りだし、リズムはスインギーな4ビートでは無い。無調志向の演奏もあるし、コードに基づかないユニゾン&ハーモニーの採用もある。それまでの伝統的なジャズが、やらないこと、やったことがないこと、やってはいけないこと、をやって、新しいジャズの音、響きを表現している様に感じる。

文字で書けば簡単に感じるが、それまでの伝統的なジャズが、やらないこと、やったことがないこと、やってはいけないこと、をやるのって、ジャズマンとして、卓越した「自由度の高い」演奏テクニックと「それまでのジャズ」に対する卓越した知識が必要で、パーソネルを見渡すと、そういう意味で納得できるメンバーが厳選されている。

確かにこの盤に記録されている演奏は「ユニーク」。発想の転換であり、正論の裏を取った様な、一種「パロディー」の様な演奏である。これって、演奏自由度を最大限に発揮出来る「即興演奏」がメインのジャズだからこそ出来る、もしくは許される「技」である。

それまでの「伝統的」なジャズに無い、新しい響きを宿したジャズなので、ジャズのイノベーションに感じるのかもしれないが、今の耳で聴くと、それまでの伝統的なジャズに対する「アンチテーゼ」であり、ましてや、フリー・ジャズの原点では無いだろう。

それでも、それまでの伝統的なジャズが、やらないこと、やったことがないこと、やってはいけないこと、をやるのは、録音当時、発想の転換であり、新しい響きのジャズを創造するという切り口では「アリ」だと思う。発想として面白いし、同業者のジャズマンとして、チャレンジのし甲斐のあるテーマだと僕は感じる。
 
 

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2022年7月29日 (金曜日)

粋なラテン&フラメンコ・ジャズ

夏はラテン・ジャズが良い。エアコンの効いた涼しい部屋の中で聴くラテン・ジャズは格別のものがある。こってこてラテンな音楽は、ねっとり暑苦しくていけないのだが、シャープなアレンジに乗った、切れ味良く軽快なラテン・ジャズは聴いていて気持ちが良い。ラテンなフレーズには「キメ」のフレーズがあるのだが、それがバッチリ決まると爽快である。

Chano Dominguez, Rubem Dantas & Hamilton de Holanda『Chabem』(写真左)。2022年6月のリリース。ちなみにパーソネルは、Chano Dominguez (p), Rubem Dantas (perc, Cajón), Hamilton de Holanda (bandolim) 等。

ラテン・ジャズ&フラメンコ・ジャズを手掛けるスペインのピアニストのチャノ・ドミンゲス、カホンの名手であるルベン・ダンタス、バンドリンの名手のアミルトン・ヂ・オランダ、3人の共同リーダー作。

チック・コリアの名曲「Armando’s Rhumba」を彷彿させるスパニッシュで情熱的な演奏である、2曲目の「Para Chick」では、スナーキー・パピーのマイケル・リーグ(Michael League)がゲスト参加している。

ジャズをベースに、フラメンコ、ブラジル音楽、ラテン音楽を融合した「ラテン・ジャズ&フラメンコ・ジャズ」が、この盤の中にてんこ盛り。
 

Chabem_1

 
基本的に「融合」のジャズなので、フュージョン・ジャズ志向の音作りかと思いきや、意外とメインストリーム志向の純ジャズ風のアレンジが施されていて、聴き応えがある。

しかも、ラテン&フラメンコの民族楽器「カホン」そして「バンドリン」そのものを導入してジャズ化しているので、その民族楽器の響き自体が「ラテン・ジャズ&フラメンコ・ジャズ」のイメージを増幅させている。

チャノ・ドミンゲスは1960年スペイン・アンダルシア州のカディス生まれ。ルベン・ダンタスは1954年ブラジル・バイーア州サルバドール生まれ。アミルトン・ヂ・オランダは1976年ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。

共同リーダーを張る3人は、皆、フラメンコ音楽、ブラジル音楽の発祥の地の出身がゆえ、演奏の根幹に「ラテン音楽」のイメージがしっかり根付いている。それが聴き手にダイレクトに伝わって、この盤の「ラテン・ジャズ&フラメンコ・ジャズ」には違和感が無い。

ヒスパニックとブラジルの伝統音楽の出会い。この盤における「ラテン・ジャズ&フラメンコ・ジャズ」は内容が濃く、粋である。我が国ではあまり人気の無い「ラテン・ジャズ&フラメンコ・ジャズ」。この盤を聴けば、「融合」上手なジャズの中で、「ラテン・ジャズ&フラメンコ・ジャズ」は確固たる1ジャンルを確立させている、と感じる。
 
 

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2022年7月28日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・16

モード・ジャズあるいはモーダル・ジャズ(modal Jazz)は、コード進行よりもモード(旋法)を用いて演奏されるジャズ。モダン・ジャズのサブ・ジャンルのひとつ。旋法とは、旋律の背後に働く音の力学。 旋法は主音あるいは中心音、終止音、音域などの規定を含む(Wikipedia より抜粋)。

モード奏法は、それまでのジャズ、いわゆる、ビ・バップ〜ハードバップにおける「コード進行によって限定される、アドリブ・パターンの画一化とマンネリ化」のブレイクスルーに貢献。コード奏法に比べて、アドリブ展開が穏やかになる懸念はあるが、アドリブ展開の柔軟度、自由度が飛躍的に高まった。

以上が、モード・ジャズの文章での説明であるが、やっぱり判り難い。クラシックの楽理なんかを、ある程度、基礎として理解していないと基本的に判らない。ジャズに楽理なんか必要ないよ、という声も聞こえるが、ジャズの演奏を深く理解する上では、楽理の助けは必須になる。その楽理を前提とした最初のジャズの奏法が「モード・ジャズ」だったと思う。

Miles Davis『Kind of Blue』(写真)。1959年3月、4月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Cannonball Adderley (as), John Coltrane (ts), Wynton Kelly (p), Bill Evans (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds) 。このマイルス盤は、モード・ジャズの金字塔、いや、ジャズの金字塔の一枚とされる。トータル・セールスは実に1,000万枚を超えている、ジャズ界のモンスター・アルバムである。

いわゆる「モード・ジャズを採用した優れた成功例」であるというところが評価されているのだが、聴く側にとっては、モード・ジャズの採用、といった部分が、この盤の演奏のどの部分に当たるのかが判り難い。しかし、演奏全体の雰囲気が、それまでのビ・バップ〜ハードバップの演奏の雰囲気とは明かに違う、といったことは判るかと思う。

コード進行による劇的な進行変化、そして、アドリブ展開の決めフレーズ、といった、コード進行によるジャズの特徴、つまり、メジャー・コードからマイナー・コードに変わると、演奏される旋律の雰囲気はダイナミックに変化するし、定番のコード進行に乗って、定番のアドリブ・パターンが展開される。モード・ジャズにはこれらが無い。
 

Miles-daviskind-of-blue_1

 
モード・ジャズは、主音を基にした、自由度の高いアドリブ展開なので、コード奏法の様な音の「色の劇的な変化」が希薄。絵画で例えると、モノトーンの濃淡の様な、グラデュエーションの様な音の変化がモード・ジャズの特徴。モード奏法でのアドリブ展開は、このモノトーンの濃淡をベースとした展開になるので、例えば、墨絵の様な淡い濃淡の様な「音の拡がり」になる。

この辺りが、この『Kind of Blue』と、それまでのビ・バップ〜ハードバップの演奏の雰囲気と明らかに異なる理由になる。そんなモード・ジャズが、アルバム一枚分、ほぼ成功例で埋め尽くされた優れた内容の一枚が、この『Kind of Blue』。

ただ、聴いていて面白いのは、演奏メンバー全員がこのモード・ジャズを完璧に理解していたか、という点である。リーダーのマイルスとモード・ジャズ創成のパートナー、ビル・エヴァンスは十分理解していたことがこの盤の演奏を聴いていて良く判る。コルトレーンは、この盤の録音時点では、直感的に何となく理解していたのでは、と感じる。他のメンバーは、モード・ジャズを十分理解していたかどうかは疑わしい。ただ、モード・ジャズの「基本中の基本」はしっかり抑えた演奏になっているのはさすがだ。

それだけ、録音当時、モード・ジャズは、ジャズ界にとって「強烈なイノベーション」だったと思う。いわゆる、テクニックとスピリッツ、気合いで通用したそれまでのジャズが、楽理というアカデミックな要素を身につけないと理解出来ない奏法が出現したのだ。以降、ジャズマンにとって、モードに対応出来るか否かは重要な課題となっていく。

しかし、そんな「イノベーション」によって、ジャズは大衆音楽の1ジャンルから、アーティスティックな音楽ジャンルへステップ・アップした訳で、このモード・ジャズの成立は、ジャズの進化、ジャズの深化にとって、必要不可欠だった。

『Kind of Blue』は、そんな「事実」を十分に感じさせてくれる、モード・ジャズの金字塔、ジャズの金字塔の一枚である。
 
 

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2022年7月26日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・15

バド・パウエルは、モダン・ジャズ・ピアノの祖であり、ピアノ・トリオ・スタイルを確立させた、つまり「ピアノ+ベース+ドラム」の現代のピアノ・トリオ編成を定着させたピアニスト。ジャズ・ピアノを知る上では避けては通れないピアニストであり、パウエルのピアノを理解しておかないと、他のピアニストの個性や特徴が判らなくなる。

といって、パウエルのどのアルバムを聴けば良いのか、迷うところではある。ルーストの『バド・パウエルの芸術』が一番だが、これは内容が非常に尖っていて、ジャズ者初心者にとっては荷が重い。ブルーノートの『The Amazing Bud Powell Vol.1』だって、冒頭の「Un Poco Loco」の3連発には「ひく」。パウエルのピアノが嫌いになっては元も子もないので、まずはパウエルのピアノに親しむことが出来るアルバムを選ぶことになる。

Bud Powell『The Scene Changes : The Amazing Bud Powell Vol.5』(写真左)。1958年12月29日の録音。ブルーノートの4009番。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。パウエルの米国での正式リーダー作の最終盤である。編成は「ピアノ+ベース+ドラム」のピアノ・トリオ編成。
 

Bud-powellthe-scene-changes-the-amazing-

 
冒頭の「Cleopatra's Dream(クレオパトラの夢)」が、我が国では異常に人気があって、僕がジャズを聴き始めた頃は、この曲をジャズ喫茶でリクエストするのは「ジャズのトーシロ(素人)」とされた(笑)。それほど、人気があって、判り易い内容なのだが、パウエルのピアノの弾きっぷりはかなり個性的であることが判る。全盛期はまだまだこんなものではないが、パウエルのピアノの先鋭的なところがしっかり捉えられている。

2曲目以降の演奏についても、パウエルはトリオ演奏であっても、ベース、ドラムに関しては「我関せず」。1人ピアノをバリバリ弾いて突っ走るタイプなのだが、この盤ではしっかりとベース、ドラムの音を聴きながら、バップなピアノを弾き進めている様子が良く判る。いわゆる「パウエルだけが尖った」ところがこの盤には無い。パウエルのピアノがとても聴き易いのはそのせいだろう。

この盤は、バド・パウエル入門盤として最適、というか、この盤しかない、と思う。確かにこの盤は、バド・パウエルの全盛期を捉えた演奏では無い。しかし、当時として革新的なジャズピアノとしての、右手・左手の使い方が実に良く判る、パウエルの個性を理解するのに十分な内容を維持している。ゴスペルチックな「Borderick」、カリプソチックな「Comin' Up」など、当時のパウエルが「過去の人」になっていないことが良く判る。
 
 

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2022年7月25日 (月曜日)

チャーラップの個性を再確認

ジャズ・ピアノについては、ジャズの基本楽器のひとつとして、粛々と伝統は引き継がれている。フュージョン・ジャズのブームの時も、電子ピアノやシンセなど、鍵盤楽器の系譜はしっかりと引き継がれている。1980年代半ばの純ジャズ復古のムーヴィメント以降は、堅調に若手ピアニストが出てきて、現代においても、ジャズ・ピアニストはコンスタントに活躍している。

Bill Charlap(ビル・チャーラップ)。1966年10月15日、米国NY生まれ。音楽的に恵まれた環境で育った「サラブレット」。2000年前後でサイドマンとしてデビュー。1993年、27歳で初リーダー作をリリース。現代の若手ピアニストとしては、至って順調に活躍の範囲を広げている。ヴィーナス・レコードの企画型ピアノ・トリオ「ニューヨーク・トリオ」のピアニストでもある。

Bill Charlap『'S Wonderful』(写真左)。1998年12月26日、NYの「Clinton Recording Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。チャーラップの通算9枚目のリーダー作。日本のヴィーナス・レコードからのリリースで、この時点では、まだ米国での認知度は低かった。

この盤では、チャーラップは自らの演奏志向を前面に押し出している。盤全体の雰囲気、音の作りは、過度に耽美的でリリカルに傾倒すること無く、全くヴィーナス・レコードっぽくない。まるで、チャーラップのセルフ・プロデュース盤の様な演奏の雰囲気。ヴィーナス・レコードの録音志向である「深くて乾いたエコー」が良い方向に作用している。つまり、この盤、チャーラップのピアノの個性をしっかり確認出来る秀作なのだ。
 

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チャーラップのピアノは「耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ」。一聴するとビル・エヴァンスのピアノの様に感じるのだが、しばらく聴いていると、確かに「耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ」なんだが、エヴァンスとは音の響き、和音の響き、フレーズの弾き回しが全く違うことに気付く。

エヴァンスの音の響き、和音の響き、フレーズの弾き回しを避けた「耽美的でリリカル、そしてバップなピアノ」なのだ。演奏全体の雰囲気はエヴァンス風なのだが、演奏内容は「エヴァンスの様でエヴァンスで無い」チャーラップ独自の個性が息づいている。

ベースとリズム隊は、長年のパートナーとなる2人。前作『All Through the Night』で出会った2人だが、チャーラップとの相性は抜群。もう長年連れ添った様な「あうんの」呼吸でリズム&ビートをコントロール出来る、優れたリズム隊。そんなベースとドラムに恵まれて、チャーラップは、独自の個性溢れるバップなピアノを気持ちよさそうに弾き進めていく。

この盤以降が、チャーラップの真骨頂。逆に言えば、チャーラップのピアノの個性を理解するには、この盤から始めるのが良い。選曲もヴィーナス・レコードらしくない、渋いジャズ・スタンダード曲が選曲されていて、ジャズの素人さんにウケる「どスタンダード曲」は見当たらない。これも「好感度アップ」なポイントで、チャーラップってジャズを判ってるなあ、と嬉しくなるのだ。
 
 

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2022年7月24日 (日曜日)

ロイとディズの華やかな競演

2週間ほど前に、Roy Eldridge, Dizzy Gillespie, Harry Edison『Tour De Force』について語ったのだが、この盤、録音も良くて、難しいことを考える事無く、リラックスして聴ける、聴いて気持ちがスカッとなるジャズ盤。そういえば、ディジー・ガレスピーとロイ・エルドリッジが組んだ、同じ様なトランペット・バトルな盤があったなあ、と思い立った。

Roy Eldridge & Dizzy Gillespie『Roy and Diz』(写真左)。1954年10月29日、NYでの録音。Verveレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Roy Eldridge, Dizzy Gillespie (tp, vo), Oscar Peterson (p), Herb Ellis (g), Ray Brown (b), Louis Bellson (ds)。ディジー・ガレスピーとロイ・エルドリッジがフロント2管、バックは、オスカー・ピーターソン・トリオ+ドラム。

Verveレーベルの人気ジャズマンを集めての、プロデューサーのノーマン・グランツお得意のジャム・セッションの記録。ハードバップ初期のシンプルで覇気溢れる演奏を聴くことが出来る。フロントはトランペット2本。人気のトランペッター、ガレスピーとエルドリッジが担当。師匠と弟子の華やかな競演、良く似てはいるが、個性は全く異なる本格派トランペッターの2人である。
 

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ガレスピーとエルドリッジ、共にエモーショナルでブリリアントな吹きっぷりで、聴いていてとても楽しい。ロイ・エルドリッジはサッチモの演奏手法を継承、スイング時代に活躍したスター・トランペッター。ガレスピーの師匠としても知られている存在。大変なハイノート・ヒッターで、このハイノートが気持ち良く伸びて、耳触りで無いのが凄い。

ガレスピーは、流麗で歌心溢れる豊かな表現力が魅力のビ・バップを創成したイノベーター。ガレスピーのハイノートは、師匠のエルドリッジととても良く似て聴き分けが出来ないくらい。エルドリッジとの個性の違いは「流麗」なところ。ガレスピーは低音域から高音域まで、滑らかでスッとした柔らかな音の伸び。エルドリッジは中音域はザラっとしていて、高音域は突き上げるような切れ味が個性。この辺りが2人を聴き分けるポイントかな。

このアルバムは、当時色々なタイトルで出ていたアルバムを一枚にまとめたコンプリート盤。アップテンポ、バラード、オープン、ミュート、バトルなど、トランペットがメインのジャズの楽しいところが満載。加えて、2人とも歌が上手い。まさに「JATP」といったノーマン・グランツがプロデュースのアルバム。湿気の多い酷暑の日々に、スカッと爽快感感じるシンプルなジャズ盤。難しいことを考えずに、ただただ、トランペットのバトルに耳を傾ける。
 
 

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 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

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2022年7月23日 (土曜日)

新しい響きの「ビ・バップ」

とにかく暑い。3日ほど前までは不安定な天候で「前の梅雨明け宣言は間違いやったな」と思っていたら、一昨日辺りから、晴れるようになったら、途端に湿度過多の酷い暑さがやってきた。前の梅雨明け宣言時は、これほど湿度は高くなかったのだが、今は朝から外出を憚るような、異常なほどの湿度の多さ。これでは、ジャズ鑑賞もままならない。

Pasquale Grasso『Be-Bop!』(写真左)。2022年6月のリリース。ちなみにパーソネルは、Pasquale Grasso (g), Ari Roland (b), Keith Balla (ds), Samara Joy (vo, track:5)。タイトル通り、イタリア出身のギタリスト、パスクァーレ・グラッソの「パーカー、ガレスピー、そして、師バリー・ハリスに捧げたビバップ曲集」である。

圧倒的テクニックを誇る、イタリア出身のギタリスト、グラッソが「ビ・バップ」をやる。とても興味深い企画盤である。超絶技巧なテクニックを駆使して、電光石火のアドリブ・フレーズを即興で弾きまくる「ビ・バップ」。現代の超絶技巧なギタリストが、このジャズの古典的な「ビ・バップ」をどう解釈し、どう個性を付加して展開するのか。興味津々でこの盤を聴き始める。
 

Pasquale-grassobebop

 
まるでピアノを弾いているかの如き音を、ギター一本で奏でるのには参った。ピアニストの左右の手をギターに置き換える「独特の手法」は、超絶技巧なテクニックを持っているが故に実現出来る手法。ギターのビ・バップ演奏にありがちな「単音が故の単調さ」を全面的に払拭し、ギターによって、音調が豊かでスインギーな「ビ・バップ」を表現している。これは今までに聴いたことが無い、ギターのビ・バップ演奏だ。

今までに聴いたことが無いギター手法で「ビ・バップ」を表現しているのだが、パスクァーレの演奏は、新しい響きを湛えて尖っているのでは無く、どちらかと言えば、ノスタルジックで一種懐かしい雰囲気がする。ちょっとだけ聴けば、1950年代のジャズ・ギターの響きと間違えそうな響きなのだが、その超絶技巧なテクニック故に、現代の最先端の響きとすぐに判る。

「Shaw ‘Nuff」「Groovin’ High」「Cheryl」「Ornithology」「Be-bop」「Ruby, My Dear」「Quasimodo」 など、ビ・バップの名曲を、新しい響きのギターで、ビ・バップ独特の音の雰囲気そのままに、スインギーにジャジーに弾き進めていく。南イタリア出身で現在33歳のギタリストのパスクァーレ、末恐ろしい若手ギタリストである。
 
 

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2022年7月22日 (金曜日)

ECMレーベルの「米国ジャズ」

最近のECMレコードは、欧州各国の優れたジャズマンのみならず、米国の中堅クラスの優れたジャズマンのアルバムを制作している。以前は米国のジャズについては、ECMレコードの「音志向」に合わないところがあって、米国のジャズマンの、ECMレコードでのアルバム制作は希だった。

ただ、最近は、例えば、ヴィジェィ・アイヤー、クレイグ・テイボーン等など、米国ジャズの中堅ジャズマンが続々とECMと契約して、優れた内容のリーダー作をリリースしている。黒人(アフリカン・アメリカン)が中心だった米国ジャズの個性が、多国籍化して中和され、グローバル化してきたのが、主な理由だと思っている。

Mark Turner『Lathe of Heaven』(写真左)。2013年6月、NYの「Avatar Studios」での録音。ECMレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Mark Turner (ts), Avishai Cohen (tp), Joe Martin (b), Marcus Gilmore (ds)。

テナー・サックス奏者、マーク・ターナーがリーダー、アヴィシャイ・コーエンのトランペットとのフロント2管の「ピアノレスのカルテット」編成。アヴィシャイだけがイスラエル出身、ターナー以下、ベース、ドラムは米国出身。そんな米国+イスラエル連合バンドが、欧州ジャズの老舗レーベル、ECMレコードの下でレコーディングする。20世紀ではまず、無かったことだろう。
 

Mark-turnerlathe-of-heaven

 
ブラッド・メルドーいわく「マーク・ターナーのホーンのサウンドは見紛いようがない。暖かく、深い優しさをたたえ、甘たるくなく、まさにこれぞ誘惑の味がする」。

今までの米国のテナー奏者は、基本的に「コルトレーン」の影を追っていたような所があったが、ターナーのテナーにはその傾向が希薄。響きや節回しは米国ジャズなんだが、米国ジャズのテナーマンの大凡が追いかけていた「コルトレーン」の影響が希薄なところが、ECMの「音志向」にフィットした理由なのかも、と睨んでいる。

米国ジャズらしい、クールではあるが、官能的でエモーショナルなテナーサックス。イスラエル・ジャズらしい、哀愁感豊かに朗々と鳴り響くトランペット。そんなテナーとトランペットによるモーダルな展開。ピアノが入ってない分、2本の管楽器のパフォーマンスの自由度が増して、欧州ジャズには無い、米国ジャズらしいオープンな拡がりのある、明るい音色のアドリブ展開がユニーク。それでも、耽美的で哀愁感漂い、リリカルな雰囲気は、ECMレコードの「音志向」をしっかりと反映している。

ターナーは1965年11月生まれなので、この盤の録音時は47歳。バリバリ中堅の年齢で「ECMレコードがプロデュースした米国ジャズ」を体現した。21世紀に入って、米国ジャズ、欧州ジャズの垣根が取っ払われつつあって、米国ジャズがグローバル化し始めている。そんな感覚を強く感じる、マーク・ターナーの『Lathe of Heaven』。
 
 

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2022年7月21日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・244

マンフレート・アイヒャーによって、1969年に設立された欧州のジャズ・レーベル「ECM(Edition of Contemporary Music)」。ECMレーベルは、ジャズについては「典型的な欧州ジャズ」を旨とする。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。

21世紀に入ってもなお、ECMレーベルは活発な活動を継続している。1969年の設立以降、停滞、中断の期間が全く無いのが凄い。21世紀に入ってからは、欧州各国の欧州ジャズの優れた才能に着目してリーダー作を制作させていて、ECMレーベルは名実共に「欧州ジャズを代表しリードする老舗のジャズ・レーベル」となっている。

Mathias Eick『Skala』(写真左)。2009年12月〜2010年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Mathias Eick (tp), Andreas Ulvo (p), Audun Erlien (el-b), Torstein Lofthus (ds), Gard Nilssen (ds), Morten Qvenild (key), Tore Brunborg (ts), Sidsel Walstad (harp)。リーダーのマティアス・アイクはノルウェー出身のトランペッター。パーソネルを見渡せば、ノルウェー出身のミュージシャンで固めた「純ノルウェー」ジャズである。
 

Mathias-eickskala

 
アイクは1979年生まれなので、今年で43歳。バリバリ中堅のジャズマン。北欧ジャズらしい、耽美的でリリカル、明瞭で流麗、哀愁感溢れるトランペットを聴かせてくれる。ECM独特の深いエコーに乗って、浮遊感溢れる、墨絵の様な複雑な拡がりのあるトランペットはアイクならでは。加えて、今回のリーダー作は全曲自身のオリジナルで構成されていて意欲的。

北欧ジャズらしい響きと旋律の中で、従来の純ジャズでも無く、クロスオーバー&フュージョンなジャズでも無い、新しい感覚の「21世紀のニュー・ジャズ」。奏でられるメロディーが実に聴き易く、ユッタリとしていて、それでいて、即興演奏の妙がそこかしこに散りばめられている。即興演奏に軸足をしっかり置いている以上、この演奏内容はしっかりと「ジャズ」であると思う。

北欧ジャズの、ノルウェー・ジャズの「今」を聴く想いの、21世紀のノルウェー・ジャズの「創造力の充実」と「即興演奏力の高さ」をビンビンに感じる優秀作。何となく「ジャズ・ロック」な雰囲気も漂う、どこか、北欧の「ウエザー・リポート」、若しくは、北欧の「パット・メセニー・グループ」の様な、良い意味で、コンテンポラリーなジャズ・ロックな雰囲気も僕は好きだ。
 
 

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2022年7月20日 (水曜日)

エルヴィンのJCへのメッセージ

エルヴィン・ジョーンズのドラミングがお気に入りである。もともとは、ジャズを聴き始めた頃、ジョン・コールトレーンの「伝説のクインテット」の諸作を聴く中で、ドラムのパフォーマンスがとても気に入って、そのドラムを叩いているのが「エルヴィン・ジョーンズ」だった。それ以降、40年以上が経過した今でも、エルヴィン・ジョーンズのドラミングはお気に入りである。

Elvin Jones『Dear John C.』(写真左)。1965年2月23 & 25日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds). Charlie Mariano (as), Roland Hanna (p, 1, 3, 8), Hank Jones (p, 4, 5, 7), Richard Davis (b)。リーダーのドラマー、エルヴィン・ジョーンズが、まだコルトレーンの下にいた頃、コルトレーンがフリー・ジャズに染まりだした頃、ちょうど、大名盤『A Love Supreme(至上の愛)』の後の録音になる。

このエルヴィンのリーダー作、意味深なタイトルが付いている。まだ、コルトレーンの下にいたのにも関わらず、「親愛なるジョン・コルトレーン」。何だか他人行儀なタイトルである。この盤の内容がコルトレーンに対する、何らかのメッセージ、若しくは示唆、であることを感じさせるタイトルである。ウィットに富んでいる、ととるか、アイロニーに富んでいる、ととるか。
 

Elvin-jonesdear-john-c

 
この盤を聴けば、この盤の内容は、モーダルでシーツ・オブ・サウンドを駆使した、当時、限りなく先進的で尖ったハードバップなジャズがてんこ盛り。コルトレーンのリーダー作で言うと、Atlanticレーベルからの『Coltrane Jazz』や、Impulse!レーベルからの『Coltrane』辺りの音の志向をベースとしている様で、そこから、さらにモーダルな展開の充実度を上げ、流麗でスピード感のある演奏にステップアップさせている。

収録された演奏自体は優れたもので、特に、チャーリー・マリアーノのアルト・サックスが好調だ。ピアノのハナもハンクもモーダルな展開について、しっかりと対応していて立派。特に、ハンクのモーダルなピアノは堂に入っていて、70年代の「グレイト・ジャズ・トリオ」での圧倒的モーダルなパフォーマンスを先取りしている。デイヴィスのベースも申し分無く、勿論、リーダーのエルヴィンのドラミングは、ポリリズミックで、変幻自在、緩急自在、硬軟自在で絶好調。

恐らく、エルヴィンは、この辺りの音の志向のジャズ、モーダルでシーツ・オブ・サウンドを駆使した、当時、限りなく先進的で尖ったハードバップなジャズを、コルトレーンとやり続けたかったのでは無いか、と僕は感じている。エルヴィンは、フリーに傾くコルトレーンに、心情的に「ついていけなくなりつつあった」のでは無いか。それでも、コルトレーンはエルヴィンが大好きなジャズマン。「俺はコルトレーンと、本当はこんな感じのジャズがやりたいんだよ」と言う様なメッセージが、この盤に込められている感じがしてならない。
 
 

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2022年7月19日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・14

Art Blakey & The Jazz Messengers(アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ)は、僕の大好きなバンドの一つ。ドラマーのアート・ブレイキーが主宰するバンドで、1955年に旗揚げ、1990年にリーダーのブレイキーが亡くなるまでの、35年間の長きに渡って、第一線で活躍した。ジャズ・メッセンジャーズは、有望新人の登竜門的なバンドで、35年の活動期間の間に、相当数の一流ジャズマンを輩出している。

そんなジャズ・メッセンジャーズも旗揚げから、3年ほどは鳴かず飛ばず。しかし、Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Merrit (b) の優秀なメンバーに恵まれ、ブルーノートの4003番『Moanin'』(1958年10月30日の録音)で復活の狼煙を上げる。この時のバンド・メンバーは、メッセンジャーズ史上、最強の部類に入る。

『Art Blakey et les Jazz-Messengers au club St. Germain, Vols. 1-3』(写真)。1958年12月21日、仏パリの「サンジェルマン」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Blaakey (ds), Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Merrit (b)。メッセンジャーズ史上、最強のラインナップ。復活の狼煙、伝説の名盤『Moanin'』の録音の約2ヶ月後のパフォーマンス。この「僕なりのジャズ超名盤研究」の書き下ろしの為に、久し振りに聴き直してみた。
 

At-club-st-germain

 
邦題『サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ』。LP時代に3枚のアルバムに分けて発売され、CDリイシュー時もその構成は踏襲されたが、出来れば、3枚一気に聴き通して欲しい。ここでのメッセンジャーズの演奏は最高に近い。ライヴ録音でありながら、エネルギッシュで迫力満点の演奏でありながら、ミスもほどんど無い。伝説の名盤『Moanin'』の名演の数々が霞むくらいだ。

メンバーそれぞれが、力量確かな一流ジャズマンなので、それぞれの演奏のバランスが抜群。それぞれのソロ演奏については、結構、時間をかけているのだが、内容が良いので「長い」と感じ無い。そして、メンバーそれぞれが、お互いのソロ演奏をよく聴き、よく理解していて、ソロをバトンタッチしていく際、繋がりがとても良く、独りよがりな展開にならない。3枚のライヴ盤、全12曲、捨て曲無し。どの演奏も「ファンキー・ジャズ」の代表的名演である。

ファンキー・ジャズ、ここに極まれリ、って感じの演奏の数々に思わず、じっくり聴き込んでしまいます。欧州でのモダン・ジャズの人気については、このライヴ盤の客席の掛け声など、熱い雰囲気が伝わってきて、熱狂的なものがあったことが判ります。ヘイゼル・スコット(Hazel Scott)が、ティモンズのソロの途中に感極まって「おお、神よ、憐れみを!(Oh Lord have mercy !)」と叫んだところなど、バッチリと録音されていて、その熱狂度合いを肌で感じることが出来ます。
 
 

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2022年7月18日 (月曜日)

パスのストーンズのカヴァー盤

ジャズ盤をいろいろ聴いていると、たまに「これ何」と聴き耳を立てる異色盤が出てくる。特に、1960年代後半、ジャズがポップス&ロックの潮流に押されて、人気のポップ音楽から聴き手を限定するマニアックな音楽になりつつあった頃、何とか、ポップス&ロックのファンに訴求する「カヴァー・ジャズ」が流行した。

つまり、当時流行っていたポップス曲やロック曲をジャズにカヴァーしてアルバム化する訳だが、ポップス曲やロック曲のコード進行はジャズのコード進行の標準とは違うものも沢山あって(特にレノン=マッカートニーの楽曲はジャズ化し難かった)、なかなか上手くいかない。加えて、アレンジのスキルにも問題があって、上手くカヴァー出来ないケースが続出した。

Joe Pass『The Stones Jazz』(写真左)。1966年7月20日の録音。Joe Pass (g), Bill Perkins (ts), Bob Florence (p, arr, cond), Ray Brown (b), John Guerin (ds), Victor Feldman (perc)、ここに、トロンボーンが3本、ギターが2本入って、スモールコンボ形式での演奏になる。

タイトルから類推出来る様に、この盤は、ローリング・ストーンズのヒット曲のカヴァー集。当時、ビートルズと人気を二分していたストーンズの有名曲をジャズ化している。もともと、ストーンズの楽曲はブルースを基調としていて、ビートルズの楽曲よりはジャズ化し易かったはず。確かに目の付け所は良かったと思う。
 

Joe-passthe-stones-jazz

 
が、リーダーのジョー・パスは、バリバリ純ジャズ・ギターの「ヴァーチュオーゾ」。イージーリスニング・ジャズよろしく、耳当たり良くポップに、ストーンズの楽曲を弾き回すかと思いきや、これがまあ、徹頭徹尾「純ジャズ」なギターの弾き回し。テーマの旋律ですら、原曲をよく聴いていないと、ストーンズのヒット曲とはほとんど判らない(笑)。

しかし、このジョー・パスのギターの弾き回しについては、純ジャズとして聴く分には上質でハイテクニックなジャズ・ギターとして成立しているのだから面白い。つまりは、パスはこのストーンズのカヴァー盤で、ポップス&ロックのファンに訴求しようとは思っていなかった様で、ストーンズの楽曲の個性を上手くピックアックして、純ジャズなギターで、素敵なアドリブ・パフォーマンスを展開している。

演奏全体のアレンジは旧態依然としたスモール・バンドのアレンジで、ユニゾン&ハーモニーなども旧式の音作りで、これではポップス&ロックのファンに訴求する「カヴァー・ジャズ」としては成立しない。そんなパスのストーンズのカヴァー盤だが、違った側面の「不思議な魅力」があるから、ジャズは面白い。

まずは、ジョー・パスは根っからのジャズ・ギターのヴァーチュオーゾだということ再認識出来ること、そして、ストーンズの楽曲は意外とジャズ化するのに意欲が湧くものだと言うこと。しかしながら、この後、ストーンズの楽曲のジャズ・カヴァーがほとんど無かったのが意外。

ジャケットも当時のサイケデリック&ラヴ・アンド・ピースの流行を踏襲した「これがジャズ盤のジャケか」と戸惑うばかりのユニークなもの。それでも、パスのギターは「純ジャズ」しているのだから、この盤は面白い。
 
 

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2022年7月17日 (日曜日)

エロール・ガーナーのソロ盤

最近、天候が不安定な千葉県北西部地方。梅雨明けしたのは良いが、その後、1週間ほど酷暑の日が続いたと思ったら、一転、2週間前の土曜日辺りから、ほどんど晴れない、雨模様の日々、そして、いきなりゲリラ豪雨と、特にこの2週間、戻り梅雨のような状態になって鬱陶しい。おまけに天気予報が当たらない。その日になっても予報が当たらないなんて、どんな予報システムをしているのやら。

鬱陶しい不安定な日に加えて、湿度が異常に高くて、不快指数MAX。ここまでくると、エアコンの効いた部屋の中でも、難しいジャズは聴けない。パッと聴いてパッと判って楽しめる、シンプルなジャズが良い。ピアノ・ソロやピアノ・トリオ、そして、爽快感溢れるハードバップなジャム・セッション。聴いて心地良く疲れるフリー・ジャズなどは控えたくなる。

Erroll Garner『Afternoon of An Elf』(写真)。1955年3月14日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Erroll Garner (p)。孤高のスライド・ピアノの名手、エロール・ガーナーのピアノ・ソロ盤。聴かせるジャズ・ピアノ。エンタテインメント性バリバリのジャズ・ピアノのソロ・パフォーマンスが満載である。
 

Erroll-garnerafternoon-of-an-elf

 
エロール・ガーナーとは、1921年生まれ。1977年1月没。左手のベースラインをメインに、メロディを弾く右手は自由自在にタイム感を後ろにずらす「ビハインド・ザ・ビート」が特徴。エロール・ガーナーは、生涯楽譜が全く読めなかったとのことだが、ジャズも場合、それは全く関係無い。ジャズとは「感性」の音楽である。二度と同じフレーズが無い、究極の即興演奏が、このソロ・ピアノ盤に詰まっている。

難解なところは全く無い。オープンで大らかでハッピー・スインガーなガーナーの面目躍如。スイング・ジャズを踏まえたスインギーなフレーズ、当時の流行の弾き方だったブギウギ・ピアノで大立ち回り、スライド・ピアノで歌心満点な弾き回しを披露する。ピアノ・ソロだけに、ガーナーのピアノの個性にだけ集中出来るのが良い。「ビハインド・ザ・ビート」が心地良く耳に響く。

妖しい魅力を持った、打楽器的ピアノ・エンタテインメント。独創性溢れる究極の即興演奏。これが難しく響かず、判り易く心地良く聴くことが出来る「聴かせる」ピアノ・ソロ。エンタテインメント性バリバリのピアノ・ソロ。ガーナーのピアノは「ブレ」が無い。聴いて爽快な「ビハインド・ザ・ビート」。パッと聴いてパッと判って楽しめる、シンプルなピアノは個性濃厚である。
 
 

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2022年7月16日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・243

先々週の土曜日より、梅雨が戻った様な、イマイチの天気がずっと続いている千葉県北西部地方。一昨日からは定期的にゲリラ豪雨に見舞われて、ゴーッという雨の音にビックリしたりする。天気が悪いのに加えて、湿度が異常に高い。少し、家事で動いたら、汗が噴き出てくる。こういう時、気持ちがスカッとするジャズを聴きたくなる。

Roy Eldridge, Dizzy Gillespie, Harry Edison『Tour De Force』(写真左)。1955年11月2日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Roy Eldridge (tp), Dizzy Gillespie (tp), Harry 'Sweets' Edison (tp), Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Herb Ellis (g), Buddy Rich (ds)。録音当時の人気トランペッター3人が共演した、ノーマン・グランツ監修の、Verveお得意のジャム・セッション盤。

フロント3管が全てトランペット。ロイ・エルドリッジはサッチモの演奏手法を継承、スイング時代に活躍したスター・プレイヤー。ハリー・エディソンはベイシー楽団の人気トランペッターで、「Sweets」の愛称の通り、甘い音色と分かり易いフレーズが身上。そして、ディジー・ガレスピーは、魅力的なハイノート・ヒッターであり、流麗で歌心溢れる豊かな表現力が魅力のビ・バップを創成したイノベーター。
 

Tour-de-force_1

 
バックのリズム・セクションは、ギター+ピアノ・トリオ。フロントのトランペットは3人共に、当時の人気トランペッターがズラリ、バックのリズム・セクションは、録音当時のピーターソン・トリオにドラムのバディ・リッチを加えた、豪華かつハイレベルなもの。

当然、演奏のレベルは高い。どのジャズマンのソロ・パフォーマンスであれ、聴いていて「おっ」と聴き耳を立ててしまうくらい、その演奏テクニックと歌心は充実している。特に、主役のトランペッター3人が好調で、次々とバトン・タッチされていくソロ・パフォーマンスと、丁々発止とやりあうアドリブ合戦は聴き応え満点。時に速いテンポの演奏については、聴いた後、スカッと爽快感を感じる。

当時のノーマン・グランツ・プロデュースお得意のバラード・メドレーが、これまた出来が良くて、参加メンバーそれぞれの高いレベルの歌心満載なソロ演奏を楽しむ事が出来る。とてもモダンなジャム・セッションで、単純にモダン・ジャズをあっけらかんと楽しむ事が出来る。録音も良くて、難しいことを考える事無く、リラックスして聴ける、聴いて気持ちがスカッとなるジャズ盤である。
 
 

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2022年7月15日 (金曜日)

小粋な Herbie Harper Sextet

「小粋なジャズ」を探し当てては聴いている。そもそも「小粋」とはどういう意か。辞書を紐解くと「どことなく粋(気質・態度・身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気があること)なこと。洗練されていること」とある。ジャズで言うと、米国のウエストコースト・ジャズ(西海岸ジャズ)がそんな感じかな。洗練されていて、垢抜けていて、仄かな色気がある。うん、米国西海岸ジャズがズバリかな(笑)。

『Herbie Harper Sextet』(写真左)。1957年7月、でハリウッドでの録音。米国西海岸ジャズの御用達レーベル「Mode」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Herbie Harper (tb), Jay Core (ts), Marty Paich (p), Howard Roberts (g), Red Mitchell (b), Frankie Capp, Mel Lewis (ds)。ドラムだけ複数人で分担しているが、演奏の基本編成は「セクステット(6重奏団)」。

リーダーのハービー・ハーパーはトロンボーン奏者。比較的地味な存在で、リーダー作も10作に届かない「寡作」のジャズマン。特に、この『Herbie Harper Sextet』を録音した1957年以降は、スタジオ・ミュージシャンとして活動した為、逝去する2012年1月まで、リーダー盤は2枚程度。これでは、なかなか印象に残らない。僕はハーパーの名前については、CDリイシュー時、2007年に、初めて知った。
 

Herbie-harper-sextet_1

 
しかし、このハービー・ハーパーのトロンボーン、なかなか良い感じなのだから面白い。端正な吹きっぷり。安定したピッチ。流麗な節回し。米国西海岸ジャズの特徴である、ほど良くアレンジされた、鑑賞に耐える「聴かせる」ジャズなバッキングに乗って、明るく流麗なトロンボーンが乱舞する。西海岸ジャズらしく、ファンクネスは薄ら、ユニゾン&ハーモニー、そして、アンサンブルが良くアレンジされていて、聴いていて楽しい。

バックのパーソネルも、当時の米国西海岸ジャズの名手ぞろい。テナー・サックスのジェイ・コアだけが無名。ペイチのピアノも滋味溢れる、実に小粋なバッキングでフロント2管を盛り上げる。レッド・ミッチェルのベースは演奏全体のベースラインをグイグイ牽引する。ドラムの2人も洒落たドラミングで、演奏の良いアクセントになっている。

この盤、聴いて思うのは、米国西海岸ジャズの良いところをしっかり捉えた好盤だということ。ハービー・ハーパーのトロンボーンも良い感じ。片割れは無名のテナーマンではあるが、2管フロントもそこそこ良い感じ。「小粋なジャズ」盤とは、こういう盤のことを言うのだろう。時々、繰り返して聴く、長いレンジのヘビロテ盤。米国西海岸ジャズ、特に「Mode」レーベルにそういう「小粋なジャズ」盤が潜んでいるのだ。Mode」レーベルは隅に置けない。
 
 

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2022年7月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・242

「小粋なジャズ」盤を探しては聴いている。ネットを徘徊していて「The Roy Haynes Trio」の盤に引っ掛かった。「The Roy Haynes Trio」と言えば『We Three』という名盤がある。こちらは、ベースにポール・チェンバース、ピアノにフィニアス・ニューボーンJr.。錚々たるメンバーなんだが、もう一つ「The Roy Haynes Trio」の盤があるのか、と思わずチョイス、である。

The Roy Haynes Trio『Just Us』(写真左)。1960年7月5日、New JerseyのVan Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Roy Haynes (ds), Richard Wyands (p), Eddie De Haas (b)。ジャズ・ドラムの職人ロイ・ヘインズがリーダーのトリオ盤。ピアノにリチャード・ワイアンズ、ベースにエディ・デ・ハース、と知名度が低いパーソネルにちょっとビックリ。

というのも、この盤、なかなかの出来なのだ。1960年の録音なので、基本、ファンキー・ジャズなトリオ演奏かと予想したのだが、冒頭の「Down Home」の意外な軽快さに、ちょっとビックリする。とても小粋な軽快さ。適度なファンクネス、切れ味の良いリズム&ビート、アーバンでジャジーな弾き回し。この1曲だけで、この盤は「隅に置けない」盤だということが理解出来る。
 

The-roy-haynes-triojust-us

 
美しい旋律を持つ「Sweet and Lovely」や「Con Alma」については、過度に耽美的にならず、甘きに流されず、アーバンで良い意味で「お洒落な」演奏になっていて、これまたビックリ。マイナーな存在の、ピアノのリチャード・ワイアンズ、ベースのエディ・デ・ハースがとても良い仕事をしている。もちろん、リーダーのヘインズのドラムは絶好調で、各曲でバリバリ職人芸的なドラミングを連発する。

ラストの「Speak Low」が、実に味のある演奏になっている。ちょっと地味だけど、ファンクネス漂う名スタンダード曲なんだが、ちょっと速いテンポで、切れ味の良いトリオ演奏を繰り広げる。ファンクネス漂う切れ味の良いピアノ、正確なウォーキング・ベース。そして、何より、リズム・キープ優先だが、職人芸的なテクニックを繰り広げるドラミング。味のある、小粋なピアノ・トリオ演奏。

実は、最近まで僕はこの盤の存在を知らなかった。知ってビックリ、知って感心。パーソネルに騙されることなかれ。この盤の「教訓」。小粋で味のあるピアノ・トリオ演奏。この盤、もっと聴かれて然るべき、優れた内容のピアノ・トリオ盤です。ドラミングの妙も素晴らしく、加えてこの盤、ドラマーがリーダーの優秀盤でもあります。
 
 

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2022年7月13日 (水曜日)

チェットにとって超異色な作品

男性ジャズ・ボーカルについては、一に「フランク・シナトラ」、二に「チェット・ベイカー」、そして、三に「メル・トーメ」。この3人がずっとお気に入りである。シナトラは小学校の時代からラジオで聴き親しんでいたので「別格」なのだが、チェット・ベーカーは、ジャズを聴き初めてから、最初に好きになった男性ボーカリストである。

チェットの人生は「破天荒」そのもので、若かりし頃は天才プレイヤーで、ルックスも良く、女にモテモテだったチェット。しかし、麻薬と縁が切れなかった為、その麻薬癖がどんどん深刻になってゆき、1960年代から徐々に、チェットは第一線から消えていった。そして、1970年、マフィアから、トランペッターの命でもある「前歯」を抜かれるという仕置きをされるに至り、休業に至る。

しかし、 1974年に、ミュージシャン仲間や関係者の尽力により復活を果たし、シワシワのおじいちゃんとなってしまったチェットではあるが、そのシワと引き替えに、チェットは、演奏家としての「円熟味」を手に入れた。そして、フュージョン・ジャズにも進出し、CTIレーベルから、名盤『She Was Too Good To Me(邦題:枯葉)』をものにしている。

Chet Baker『You Can't Go Home Again』(写真左)。1977年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (tp), Hubert Laws (fl, piccolo), Paul Desmond (as), Michael Brecker (ts), John Campo (bassoon), Don Sebesky (arr, el-p), Kenny Barron (el-p), Richie Beirach (el-p, clavinet), John Scofield (g), Gene Bertoncini (ac-g), Ron Carter (b), Alphonso Johnson (el-b), Tony Williams (ds), Ralph MacDonald (perc), ここにストリングスが加わる。
 

Chet-bakeryou-cant-go-home-again

 
何だか、錚々たるメンバーである。パーソネルを見渡すと、この盤、フュージョン・ジャズ志向の盤ということが推察される。そして、冒頭の「Love for Sale」と、2曲目の「Un Poco Loco」(LP時代のA面)を聴くと、思わず「仰け反る」(笑)。「ど」が付くほどのジャズ・ファンクのビートにのって、スタンダードの名曲が演奏されるのだ。実にシュールな響きだが、意外とまとまっているのだからジャズは面白い。

こういうジャズ・ファンクが基調の演奏の中で、トニー・ウィリアムスのドラムは大暴れ。マイケルBもジョンスコの「イケイケ」のブロウ。そんな中、当のリーダーのチェットのトランペットは、悠然とした、リリカルで流麗な「チェット節」溢れるブロウを吹きまくるのだから、何が何だか判らない(笑)。それでも、チェットのリリカルなトランペットだけが前面に浮き出てくるのだからジャズは面白い。

しかし、後半(LP時代のB面)の「You Can't Go Home Again」〜「El Morro」はジャズ・ファンクはどこかへ雲散霧消、リリカルそのもの、コンテンポラリーな純ジャズ志向のフュージョンで迫ってくる。この後半の2曲は聴き応えがある。「El Morro」は、スパニッシュ志向の「哀愁旋律」路線であるが、チェットのリリカルなトランペットが実に良く映える。マイケル・ブレッカーのテナーも良好。

CDリイシュー時、なんと16曲が追加されて全20曲の重厚な内容になっているが、LP時代は前半の4曲のみ。この4曲のみが良くて、A面は良い意味で「ハチャメチャな」ジャズ・ファンク、B面は「リリカルな」純ジャズ志向のフュージョン・ジャズ。この対比が面白くて、LP時代は何度かジャズ喫茶で耳にした。とにかく,この盤は、チェットにとって超異色な作品。でも、フュージョン者の方々なら、意外と楽しく聴ける「小粋な好盤」だと思います。
 
 

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2022年7月12日 (火曜日)

楽しいチック・トリビュート盤

2021年2月9日、チック・コリアは永眠した。79歳であった。それから、既に1年5ヶ月が経過しった。チックがあの世に旅立ったことが、今でも信じられず、まだ、元気にピアノを弾いている様な気がしてならない。今年2月9日の一周忌に合わせて、チック・コリア・トリビュート盤がリリースされているのを見ると、やっぱり、チックはあの世に旅立ったんやな、としみじみしてしまう。

Steve Gadd & Mika Stoltzman『Spirit of Chick Corea』(写真左)。今年6月のリリース。スティーヴ・ガッドのプロデュース。日本のマリンバ奏者、ミカ・ストルツマン(吉田ミカ)がチックゆかりのジャズマン達と制作した、チック・コリア・トリビュート盤である。参加ミュージシャンは、Richard Stoltzman (cl), Mika Stoltzman (mrmb), Eddie Gómez (b), Gayle Moran (vo) 等々、チックゆかりのジャズマン達。録音エンジニアは、チックが絶大なる信頼を寄せ、ともに音楽世界をつくってきたバーニー・カーシュ。

収録曲も実に良いチョイス。今や、チック作のネオ・スタンダード曲と言える「Spain」「Armando's Rhumba」「Crystal Silence」、それから、チックがミカの為に作曲した「Marika Groove」、ジョン・パティトゥッチが書き下ろした「Chick's Groove」など、チック作の有名曲、そして、チックゆかりの曲が収録されていて、チック者の僕達からすると、聴いていてとても楽しい。
 

Steve-gadd-mika-stoltzmanspirit-of-chick

 
実は、僕はマリンバ奏者、ミカ・ストルツマン(吉田ミカ)を全く知らなかった。Wikipediaを見ると、チック・コリアをはじめ、スティーヴ・ガッドやエディ・ゴメスと共演歴があるんですね。知りませんでした。

マリンバは木製鍵盤打楽器。ヴァイブが鉄製鍵盤打楽器。違いはあるが、マリンバの音、そして、チック・コリアとくれば、どうしても「ゲイリー・バートン」を想起してしまうので、この盤での木製ならではの「軽くて乾いた」マリンバの音と弾き回しの雰囲気については、ちょっと違和感が残る。やはり、チックの曲には「クリスタルで硬質な」ヴァイブの音と弾き回しの雰囲気が合う。

ただ、チックの曲は流麗なフレーズを持つ曲が多いので、マリンバの流れる様な弾き回しについては、イメージがピッタリ。チックの曲のフレーズの流麗さが引き立つこのアルバムは聴き心地については問題無い。ただ、バリバリ丁々発止とした、メインストリームでコンテンポラリーな即興演奏が展開される訳では無いので、そのところはちょっと物足りなさは残る。

チックの名曲の個性と流麗なフレーズを愛でるに、聴いて楽しい「チック・コリア・トリビュート」盤である。
 
 

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2022年7月11日 (月曜日)

『この素晴らしき世界』を聴く

今日は猛暑がぶり返した千葉県北西部地方。湿度も高くて、朝からグロッキー気味。これだけ暑いとシビアなジャズは聴けない。ボサノバ・ジャズも良いんだが、選盤としては「ありきたり」。最近、ネットを徘徊していて、この人のアルバムを見つけた。ルイ・アームストロング、愛称は「サッチモ」。久し振りに、サッチモのボーカルを聴きたくなった。

Louis Armstrong『What a wonderful world』(写真左)。1968年、NYとラスベガスでの録音。パーソネルは、Louis Armstrong (vo, tp), Tyree Glenn (tb), Joe Muranyi (cl), Marty Napoleon (p), Buddy Catlett (b), Danny Barcelona (ds)。伝説のトランペッター&ボーカリスト、ルイ・アームストロング(愛称:サッチモ)の大ベストセラー盤。

邦題『この素晴らしき世界』。ベタな話だが、冒頭のタイトル曲がダントツに良い。味のあるダミ声、ダミ声だが優しい響き、音程のしっかりとれたボーカル。ジャズを聴き始めた頃、僕はサッチモのボーカルが苦手だった。ダミ声がどうにも駄目で、暫く遠ざけていた。サッチモのボーカルが「良い」と感じたのは、40歳を過ぎる頃だったか。ジャズ・ボーカルに対する「耳」も肥えて、サッチモのボーカルの良さをダイレクトに感じることが出来た。
 

Louis-armstrongwhat-a-wonderful-world

 
さて、このタイトル曲『What a wonderful world(この素晴らしき世界)』、ポジティヴな哀愁感漂う伴奏に乗って、優しいダミ声、正統派なサッチモのボーカルが流れてくる。聴けばいつも、心がホッとし、気分が明るくなり、なんだか晴れ晴れする。聴くといつも思うんだが、サッチモのボーカルは説得力がある。声という「楽器」を聴いているが如く、である。

冒頭のタイトル曲ばかりがもてはやされるが、2曲目「Cabaret」以降、ラストの「Hellzapoppin'」まで、聴き応えのあるサッチモのボーカルとバックの小粋な伴奏が続く。どの曲も良くアレンジされ、サッチモのボーカルも好調、ダレた曲、平凡な出来の曲は全く無く、心地良いテンションの中、心ゆくまで、サッチモのボーカルを堪能することが出来る。

サッチモ入門盤としてお勧めの内容。久し振りに聴いて、改めて、その内容の良さに感心した。ちなみに愛称「サッチモ」の由来であるが、WIkipedia等によると、サッチモという愛称は「satchel mouth」(がま口のような口)というのをイギリス人記者が聞き違えたとする説と「Such a mouth!」(なんて口だ!)から来たとする説などがあるそうです。とにかく、ルイの印象的な「口」に関するニックネームみたいですね。お後がよろしいようで(笑)。
 
 

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2022年7月10日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・241

1970年代、和ジャズのピアニストは、管楽器に比べて、地味な存在が多かった。皆、テクニックは優秀、個性もしっかり備えているのにも関わらず、米国本場の有名ピアニストが常に優先され、もてはやされた。酷い時は、ちょっと聴いただけで、米国本場のピアニストの物真似、と揶揄されたこともある。

しかし、皆、一流のジャズ・ピアニストであったと思っている。しかも、シッカリとした個性を兼ね備えていたと思う。それでも、レコード屋ではなかなかリーダー作に出会うことは無かった。僕はジャズを聴き始めた頃、専ら、大学近くの「秘密の喫茶店」で聴かせて貰っていた。

板橋文夫トリオ『濤(Toh)』(写真左)。1976年3月1日、東京、第一生命ホールでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、板橋文夫 (p), 岡田 勉 (b), 楠本卓司 (ds)。和ジャズを代表するピアニストの1人、板橋文夫の初リーダー作である。

板橋のピアノの個性が良く判るピアノ・トリオでの録音。僕はこの盤を1979年に聴いている。そして、今回、約40年振りに再び聴くことが出来た、懐かしの盤である。
 

Toh

 
当時は「マッコイ・タイナーにそっくり」なんて言われたが、そんなことは全く無い。左手の和音の弾き方が同じ「ハンマー奏法」なだけで、和音の重ね方とかファンクネスの濃淡など、タイナーとは全く異なる個性である。タイナーよりも弾き回しが冷静で、モーダルな展開がアーティスティックに響くところが良い。

2曲目「Good-bye」がとても良い曲。板橋の自作曲であるが名曲だと思う。タッチは硬質だが、弾き回しは「耽美でリリカル、そして叙情的」。板橋独特の個性であり、もちろんタイナーには無い個性である。

LP時代、B面を占めていたタイトル曲「濤」は壮大な展開。約20分弱の長尺な演奏だが、ダレたところが全く無い。ずっとテンションを張ったまま、ヴァイタルな弾き回しを展開する板橋は素晴らしい。これがライヴでの演奏なのだから恐れ入る。究極のモーダルな即興演奏が展開される。

これが板橋の初リーダー作。ジャズ・ピアニストとしては完成されていて、その実力は、国際的に十分に通用するレベルである。これが1976年の演奏なのだから、我が国にジャズ演奏のレベルは当時からして、相当に高かったことが良く判る。和ジャズのピアノ・トリオ名盤の一枚。
 
 
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2022年7月 9日 (土曜日)

ダニロ・ペレスのピアノを愛でる

ダニロ・ペレス(Danilo Pérez)は、パナマ出身のジャズ・ピアニスト。1965年12月29日生まれなので、現在56歳。耽美的でリリカルな現代ジャズ・ピアニストの中堅的存在。リーダー作は、1993年以降、現在まで10数枚。どちらかと言えば、サイドマンとしての客演アルバムが多い。ウェイン・ショーターとの共演を始め、レジェンド級のジャズマンとの共演も多い。僕は、ショーターのリーダー作でペレスの名を知った。

Danilo Pérez『...Till Then』(写真左)。2003年2月24-26日、NYの「Avatar Studio」での録音。Verveレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Danilo Pérez (p), Lizz Wright (vo), Donny McCaslin (ss), John Patitucci (b), Ben Street (b), Brian Blade (ds), Adam Cruz (ds, steel pan, perc)。録音当時、ペレス37歳。当時の現代ジャズにおける「腕に覚えのある」中堅どころが集結。リズ・ライトがボーカルとして参加。

ダニロ・ペレスのピアノは、耽美的でリリカルで流麗。その特徴が強く出ていて、この盤を聴いて思うのは、このピアニストは「総合力で勝負する」タイプでは無いということ。どこか、チック・コリア、ブラッド・メルドーの影が漂うが、彼らほど尖ってはいない。柔和で優しい、しっかりとした耽美的でリリカルなタッチがペレスの個性だろう。
 

Danilo-pereztill-then

 
テクニックは優秀で、その弾き回しは流麗そのもの。シンプルだけど、テクニックのある弾き回しがゆえ、フレーズがマンネリに陥ることは無く、逆に、シンプルではあるが、多彩でバリエーション溢れる展開が素敵なピアノである。聴いていてホッとするし、聴いていて和やかになる。モーダルなフレーズもその流麗さ故に、難解に響かないところがとても良い。

テクニックに優れたピアニストである所以は、リズ・ライトのボーカルの「歌伴」にも聴くことが出来る。3曲目「....Till Then」と、9曲目「Fiddle and Drum」の2曲にリズ・ライトのボーカルを聴くことが出来るが、この2曲でのペレスのピアノ伴奏がとても良い雰囲気。伴奏上手は「名盤請負人」でもある。ペレスには、どこかトミー・フラナガンの影も感じるのだ。確かに、ペレスはサイドマンでの客演がかなり多い。

現代ジャズ・ピアノの環境の中では、ちょっと地味な存在のペレスではあるが、このリーダー作については、ペレスのピアノの個性を確認するに打って付けのアルバムだと思います。意外と難しいことをやっているんですが、テクニックがあるピアニストなので、難解にならずに、逆に流麗で奥が深い、アーティステックな内容が魅力的なアルバムに仕上がっています。
 
 

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2022年7月 8日 (金曜日)

ラリー・コリエルの最終録音盤

ラリー・コリエル(Larry Coryell)。米国のフュージョン・ギタリスト。1970年代から1980年代半ばにかけて、我が国ではクロスオーバー・ジャズ〜フュージョン・ジャズの人気ギタリストとして君臨。何故か、1980年代半ば以降、我が国では人気が急速に衰え、1990年代では、知る人ぞ知るクロスオーバー・ギタリストになっていた。

恐らく、日本のレコード会社と未契約のレーベルからのリリースだったので、国内で宣伝が行き届かなかったと推測している。しかし、米国ではコンスタントにリーダー作をリリースしていたのだから、人気はキープしていたのだろう。2017年2月19日、ツアー滞在先のNYのホテルで心不全にて逝去。73歳没。今では、我が国でラリー・コリエルのギタリストの名を知っているのは、年配のフュージョン者の方々だけだろう。

『Larry Coryell's Last Swing with Ireland』(写真左)。2016年5月にダブリンの「TheHellfireStudios」での録音。ちなみにパーソネルは、Larry Coryell (g), Dave Redmond (b), Kevin Brady (ds)。ラリー・コリエルの遺作になる。当時、どういう心境の変化だったのだろう、シンプルなキーボードレスのトリオ編成。コリエルのギターの個性がとても良く判る編成。
 

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ラリー・コリエルは、クロスオーバー・ジャズの時代の「エレギの寵児」。超絶技巧、ジャズとロックの融合、いわゆるクロスオーバー・ジャズのシーンで大活躍した。あまりの超絶技巧さとジャズの原型を留めない、完璧ロックな演奏をギンギンにやる傾向にあって、我が国では「キワモノ」扱いされることもしばしばだった。が、この遺作では、スタンダード曲中心の構成になっている(スタンダードは4曲、トリオメンバーが共同作曲したオリジナルが2曲)。

冒頭の「In a Sentimental Mood」など、スローな弾きっぷりの中に、鋭い切れ味を感じるフレーズが凄い。パーカー作の「Relaxin' at the Camarillo」では、バップ・ギターの弾き回しが新鮮だ。このバップ・ギターの弾き回しの中で、超絶技巧なテクニックを惜しげも無く披露する。ディズニー曲の「Someday My Prince Will Come」は、コリエルのギターの音がとても美しい。完璧ロックな演奏をギンギンにやるコリエルが、情緒豊かにリリカルで耽美的なギター・ソロを展開するコリエルは見事である。

コリエルの遺作が、なんと「クラシック・ジャズギター盤」だったとは、何だか感心することしきり、である。クロスオーバー・ジャズ時代のエレギの寵児の「白鳥の歌」が、モダン・ジャズの原点、バップ・ギターでのスタンダード曲の演奏だったとは。とても内容充実の聴いて楽しい「クラシック・ジャズギター盤」。惜しいギタリストを亡くした、とつくづく思う。
 
 

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2022年7月 7日 (木曜日)

パークスの初ソロ・ピアノ集です

アーロン・パークス(Aaron Parks)。1983年10月、シアトルの生まれ。16歳でNYに移り、マンハッタン音楽学校に編入。18歳の時、ケニー・バロンの推薦でテレンス・ブランチャードのバンドに参加。24歳でブルーノートから『Invisible Cinema』でメジャーデビュー。2010年代は、ECMレーベルに所属。現代ジャズにおける「リリカルで耽美的なピアノ」の代表格。

Aaron Parks『Arborescence』(写真左)。2011年11月、マサチューセッツ州ウースターの「Mechanics Hall」での録音。ECMレーベルからのリリース。アーロン・パークスの自己名義3作目。初のソロ・ピアノ演奏集になる。パークスの個性が露わとなるソロ・パフォーマンスの塊である。

パークスのピアノには、本人も語っているが、音の展開や音の重ね方などに、キース・ジャレットの影響が感じられる。パークスのピアノの個性の基本は「リリカルで耽美的なピアノ」。そこに、ECMレーベルでの歴代のソロ・ピアノの特徴がしっかりと反映されている。そして、パークスのソロ・パフォーマンスのパークス独特の特徴が「構築美と完成度」。
 

Aaron-parksarborescence

 
今までの歴代のソロ・ピアノは「即興演奏」に重点を置いて、パフォーマンスのイメージを、ピアノを弾きながら具体的に固めていきながら、音を紡いで行くのだが、パークスの場合、このパフォーマンスのイメージがピアノを弾く前に具体的になっていて、その具体的なイメージをしっかりと即興演奏として音にしていく感じなのだ。これが、今までの歴代のソロ・ピアノと異なる雰囲気である。

パークスの場合、そういう前提があるので、雰囲気に流されること無く、自己陶酔に陥ることも無く、つまり、演奏が長くなることも無く、同じフレーズを重ねることも無い。クラシック・ピアノの美しさを底に忍ばせた、聴いていて爽快感すら感じる「構築美と完成度」を個性とした「リリカルで耽美的な」ソロ・ピアノである。

キース・ジャレット、チック・コリア、ポール・ブレイ、リッチー・バイラークなど、ECMレーベルの音のカラーをダイレクトに反映した「リリカルで耽美的な」ソロ・ピアノの特徴をしっかり継承しつつ、自らの独特の個性を加味したアーロン・パークスのソロ・ピアノ。見事である。
 
 

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2022年7月 6日 (水曜日)

マエストロのECM初リーダー作

マンフレート・アイヒャーによって、1969年に設立された欧州のジャズ・レーベル「ECM(Edition of Contemporary Music)」。ECMレーベルは、ジャズについては「典型的な欧州ジャズ」を旨とする。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。

このECMについては、1970年代後半、僕がジャズを聴き始めた頃、新興の欧州ジャズのレーベルとして、我が国での有名になりつつあった。ECMのジャズは、従来の伝統的なハードバップとは全く対極の「沈黙に次いで最も美しい音」を基本とす
る、即興演奏をメインとした演奏自由度の高いニュー・ジャズ。当時、硬派なベテラン・ジャズ者の方々からは、これはジャズじゃない、と結構煙たがられたレーベルである。

ECMは設立の1969年から、常に充実した活動を続け、21世紀に入っても、ECMレーベルの勢いは衰えることは無い。衰えるどころか、新しいジャズマンを各国から発掘し、コンスタントに新盤をリリースし続けている。今年の3月から、そんなECMレーベルの、ECM独特の音を表現するアルバムを20枚チョイスした〈21世紀のECM〉キャンペーンがスタートしている。
 

Shai-maestrothe-dream-thief

 
Shai Maestro『The Dream Thief』(写真左)。2018年4月の録音。ECMの2616番。邦題『夢盗人』。ちなみにパーソネルは、Shai Maestro (p), Jorge Roeder (b, except 1,6,8), Ofri Nehemya (ds, except 1,6,8)。イスラエル・ジャズの才能あふれる若手ピアニスト、シャイ・マエストロの初のECMでのリーダー作品になる。トリオ演奏とソロ演奏がほど良く混在し、マエストロのピアノの個性が良く判る展開になっている。

ベーシストはペルー出身、ドラマーはイスラエル出身。ECMらしい、ユニークな出身のメンバーが集うピアノ・トリオ。出てくる音は、明らかにECMの音。ピアノ、パーカッション、ドラム。空間たっぷりの演奏スペースに、耽美的にリリカルに即興演奏が展開する。間と響きを活かした音世界。墨絵の様に漂うエコー。クリスタルで硬質なピアノのタッチが即興演奏のエッジを立たせ、その印象的なフレーズを全目に押し出してくる。

ECMのアイヒヤーによってプロデュースされた、ECMの音を纏ったイスラエル・ジャズ。マエストロのピアノの個性が、ECMの音によって増幅され、より明確になっている。アイヒヤーの的確なプロデュースによって、マエストロは、ECMデビュー盤でありながら、ECMでの代表作を手に入れた。21世紀に入っても、ECMの音は健在。そして、そのECMの音の「担い手」の新しい才能もしっかりと確保されている。まだまだECMレーベルは安泰である。
 
 

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2022年7月 5日 (火曜日)

ジョン・スコフィールドの凄み

ジョン・スコフィールド(John Scofield・愛称「ジョンスコ」)のギターがお気に入りである。初めて、ジョンスコを聴いたのが1979年。確か『John Scofield Live』だった。独特の捻れたエレギの音。間と音の伸びを活かした、音のスペースが絶妙なアドリブ展開。1回聴いただけで、ぞっこん、である。

当時のジャズ・ギターの世界の中でも、ジョンスコは、ジョン・アバークロンビーと双璧の「尖ってプログレッシヴ」なジャズ・ギタリストだった。

『John Scofield』(写真左)。2021年8月、ニューヨーク、カトナ、トップ・ストーリー・スタジオにての録音。キャリア初となるソロ・アルバムになる。ECMレーベルからのリリース。ECMレーベルからのリリースは、2020年の『スワロウ・テイルズ』に続き、本作が2枚目。

このジョンスコのソロ・パフォーマンス。独特の雰囲気が漂う、唯一無二な内容。リズム&ビートは、ジョンスコ好みのコードとリズムをループ・マシンに入れて、それを使用したもののみ。即興パフォーマンスのフレーズの流れの中に、ジョンスコ独特のグルーヴが存在する。

ジョンスコの強烈に個性的なエレギの音が、延々と流れる様に、浮遊する様に広がっていく。それでいて、決してマンネリに陥らない。常に新しいフレーズ、新しい響き、新しい音色が湧き出てきて、聴いていて、とても楽しめる。
 

John-scofield-solo-2022

 
この新盤に関するインタビューの中で、ジョンスコの印象的な言葉がある。「家で一人で演奏することで身についた繊細さがあると思う」。コロナ禍の影響が窺える。その中で「バンド演奏がなくなってしまって、弦楽器の美しさをピンポイントで表現するような、より繊細なアプローチに取って代わった」とある。

そのジョンスコの言葉通りのこの新盤の音世界。ジョンスコのエレギの個性はそのままに、とても繊細にフレーズを紡ぎ、とても繊細にピッキングの表情を変えていく。このテクニックの高さも特筆すべきもの。そして、捻れた独特のフレーズの中に、濃厚に横たわる歌心。

特に、この盤では、ジャズ・スタンダード曲が秀逸。数々のスタンダード曲を独自の解釈で演奏していて、これがどの曲も素晴らしい出来なのだ。「My Old Flame」では、ループ・マシンを止めて、ジョンスコのギターだけが鳴り響く。これが、また良い。それだけでは無い。ジョンスコ自身の作曲した楽曲も良好。ジョンスコのギターの個性と独自の解釈が冴えに冴える。

ジャズとは即興の音楽である。そんな言葉をこのジョンスコの新盤を聴いて、再認識する。ジョンスコはループ・マシーンと対話しながら「即興演奏の妙」を綿々と弾き進めていく。そして、その即興演奏のフレーズが常に新しい想像力に満ちている。ジョンスコのジャズ・ギタリストとして凄みを感じる。そんな新盤である。
 
 

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2022年7月 4日 (月曜日)

ギルの考えるビッグバンド・ジャズ

「音の魔術師」の異名を取った。伝説のアレンジャー、ギル・エヴァンス(ギル・エヴァンス)。アレンジのベースは「ビッグバンド」。しかし、そのビッグバンドの楽器の編成、音の重ね方、ユニゾン&ハーモニー、どれもがユニーク。他のビッグバンドには無い音が個性。そして、ソロイストの演奏スペースの広さ。アドリブ展開の自由度の高さが二つ目の個性。

『The Individualism of Gil Evans』(写真左)。1963年9月、1964年4月6日、5月25日、7月9日、10月29日の録音。パーソネルは、録音日によって大きく異なり、この盤は、ギル・エヴァンスのアレンジの妙を堪能するアルバムなので、ここでは割愛する。ちなみに邦題は『ギル・エヴァンスの個性と発展』。直訳は『ギル・エヴァンスの個人主義』。

Individualism = 個人主義、については、個人の自立を重く見た、個人の権利や自由を尊重するスタンスの意。よく日本語訳にある「自分勝手な」という含意はない。後方の日本語訳に「個性」があるので、それを取って「個性と発展」の和訳を充てたのだろう。

しかし、この盤での、それまでの「ビッグバンド」に無い、ギル・エヴァンス独特の楽器編成、音の重ね方、ユニゾン&ハーモニー、演奏スペースの割り振り等を考えると、その唯一無二の個性ゆえに、「Individualism = 個人主義」の意の方が、すんなり入ってくる。従来のアレンジとはあまりにかけ離れた、あまりに個性的なアレンジではあるが、このギル・エヴァンスのアレンジも確実に「ジャズ・ビッグバンドのアレンジ」なのだ。
 

The-individualism-of-gil-evans_1

 
この盤で気をつけなければならないのは、CDの収録曲は9曲あるが、LP時代のオリジナル盤の収録曲は「The Barbara Song(1964/7/9)」「Las Vegas Tango(1964/4/6)」「Flute Song / Hotel Me(1963/9 + 1964/4/6)」「El Toreador(1963/9)」の4曲だけだということ。1963年9月、1964年4月6日、7月9日の録音から厳選されていて、5月25日と10月29日の録音からは採用されていない。

聴けば判るのだが、ギル・エヴァンスのアレンジの「Individualism = 個人主義」については、この4曲を聴けば良く理解出来る。それほど、この4曲は出来が良い。アレンジの優秀性と参加ミュージシャンのパフォーマンス、両者のバランスが取れた、絶妙な演奏の記録がこの4曲に詰まっている。楽器の編成、音の重ね方、ユニゾン&ハーモニー、いずれも、ギル・エヴァンスにしか為し得ない音世界である。

この盤は、ギル・エヴァンスのビッグバンドの楽器の編成、音の重ね方、ユニゾン&ハーモニーなど、彼のオーケストレーションの成熟を記録した名盤である。「ギル・エヴァンスの考えるビッグバンド・ジャズ」がこの盤に詰まっている。

アコースティック楽器を使用した「ギル・エヴァンスの考えるビッグバンド」としては、これ以上のアレンジは無いのだろう。この盤は、ギル・エヴァンスを理解する上で、絶対の「必聴盤」である。まずは、CDの2〜5曲目から、しっかりと聴いていただきたい。
 
 
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2022年7月 3日 (日曜日)

「音の魔術師」の初リーダー作

ビッグバンドについては、実はこの人のビッグバンドが一番のお気に入り。ギル・エヴァンス(Gil Evans)である。「音の魔術師」の異名を取った。伝説のアレンジャーである。生前は「清貧のアーティスト」だったそうで、その才能と実績に見合う収入は確保されていなかった、と聞く。しかし、彼のアレンジ&オーケストレーションは限りなくアーティスティック。

ギル・エヴァンスのアレンジについては、まず、各楽器のハーモニーの組み立て方、楽器の編成に独特なものがある。チューバやバス・クラリネット、フレンチ・ホルンなど、他のビッグバンドでは採用しない楽器(特に木管楽器)を取り入れて、ギル・エヴァンス独特のユニゾン&ハーモニーの響きを実現している。この「響き」が独特。

そして、ソロ楽器のアドリブ・スーペスをしっかり確保していること。このアドリブ・スペースの存在が、多人数のビッグバンドでありながら、演奏の自由度が高い、モーダルなアドリブ展開を可能にしている。つまり「即興演奏」を旨とする、ジャズとしてのビッグバンドが、ギル・エヴァンスのアレンジで実現しているのだ。

『Gil Evans & Ten』(写真左)。1957年9月9 & 27日、10月10日の録音。ギル・エヴァンスの初リーダー作。ちなみにパーソネルは、Gil Evans (p), Steve Lacy (ss), Jack Koven (tp), Jimmy Cleveland (tb), Bart Varsalona (b-tb), Willie Ruff (French horn), Lee Konitz (as), John Carisi (tp (1)), Louis Mucci (tp (2–7)), Dave Kurtzer (bassoon), Jo Jones (ds (1)), Nick Stabulas (ds (2–7)), Paul Chambers (b)。
 

Gil-evans-ten

 
パーソネルを見れば、楽器編成のユニークさが良く判る。まず、他のビッグバンドでは採用されない、ベース・トロンボーン、フレンチ・ホルン、バズーンの存在が目を引く。そして、このユニークな楽器編成が、ギル・エヴァンスのアレンジ独特の音の響きを現出している。そして、その音の響きが重なって、ギル・エヴァンス楽団独特のユニゾン&ハーモニーが実現している。このギル・エヴァンス楽団の音の響きのユニークさは1曲聴けば直ぐに判る個性的なものなのだ。

ちなみにギル・エヴァンスは、この盤以前に、Claude Thornhill Orchestraの『クールの誕生』のアレンジ、そして、マイルス・デイヴィスとのコラボ作品である『Miles Ahead』のアレンジで、既に独自のアレンジ&オーケストレーションを確立しており、この盤はギル・エヴァンスの初リーダー作ではあるが、その完成度は高い。ギル・エヴァンスのアレンジ&オーケストレーションの原点を堪能出来る。

実はこの盤、タイトルやジャケが二転三転してややこしい。まず、オリジナルは1957年にPrestigeレーベルから『Gil Evans & Ten』としてリリースされた。しかし、1959年、何故かジャケットとタイトルを変えて、Prestigeの傍系レーベル New Jazzから『Big Stuff』として再プレス。1973年には、ジャケットを『Gil Evans & Ten』に戻し、タイトルは『Big Stuff』のまま、Prestigeレーベルから再リリースされている。ここでは、オリジナルの『Gil Evans & Ten』のジャケットとタイトルを引用している。

ギル・エヴァンスの「音の魔術師」たる所以を知るには、この初リーダー作は避けて通れない。ジャズのアレンジの極意を感じるには「マスト」の名盤である。
 
 

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2022年7月 2日 (土曜日)

ウィスパー・ヴォイスの妖精

暑い。とにかく暑い。酷暑である。この3日間、日中、外出するのは憚れる。夜になっても熱帯夜の連続。エアコンが無ければ、とうの昔に干上がっている(笑)。来週月曜日以降は、台風の影響で天気が悪化し、陽射しが滞るので、酷暑は一旦回避出来るとのこと。ほんまかいな、とも思うが、台風の影響が出てくることは間違い無い。

これだけ暑くて湿度が高くなると、エアコンの効いている部屋の中とは言え、熱気溢れるジャズや、難度の高いジャズは聴くのがしんどくなる。フリー・ジャズや激しいスピリチュアル・ジャズなど以ての外。リラックスして聴けるボサノバ・ジャズや、ライトなジャズ・ボーカル、爽やかなフュージョン・ジャズが良い。

『Blossom Dearie』(写真左)。1956年9月11–12日の録音。ちなみにパーソネルは、Blossom Dearie (p, vo), Herb Ellis (g), Ray Brown (b), Jo Jones (ds)。誰が呼んだか、良い意味で「元祖かまととシンガー」(笑)、ウィスパー・ヴォイスの妖精、ブロッサム・ディアリーのデビュー盤である。
 
ブロッサム・ディアリーは、米国のジャズ・シンガーであり、ピアニスト。「ビ・バップのベティ・ブープ(アニメの架空の少女キャラクター)」と評される、キュートでチャーミングな歌唱が個性。
 

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従来の女性ジャズ・ボーカルは、しっかりと音の座った、少し太めの中音域中心の力強い歌声が主流だった。もちろん、歌唱テクニックは相当に高い。パワフルな声量と圧倒的な歌唱力がメインだったが、ディアリーの歌声はその「正反対」。硬派なジャズ・ボーカル者の方々からすると、「認めたくない」ボーカリストの類だろう。

ディアリーの歌声はキュートであり、可愛らしい子供のような、チャーミングを絵に描いたような独特の歌声が特徴。聴いていて爽やかであり、温和であり、心地良くジャジー。

ややもすれば、歌唱の「凄み」に欠けるところがあるディアリーのボーカルだが、その「凄み」の部分をバックの一流ジャズマン達がしっかりと補い、ディアリーのキュートなボーカルの良いところを前面に押し出し、ディアリーのボーカルのキュートな雰囲気によって、甘きに流れそうな演奏全体のイメージを、キッチリと引き締めている。

ディアリーのキュートで個性的なボーカルと控えめだがツボを押さえたピアノ、そして、バックのリズム隊の演奏の水準の高さによって、この盤はライトでリラクゼーション溢れる、爽やかで聴いていて心地良いボーカル・アルバムに仕上がっている。酷暑の夏に聴くに相応しい、女性ボーカルの優秀作だと思う。
 
 

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2022年7月 1日 (金曜日)

Miles Davis『Bitches Brew』

エレクトリック・マイルス、マイルス・デイヴィスのエレ・ジャズ時代のアルバムを順に聴き直している。今の耳で聴き直してみると、10〜15年前には聴こえなかった音や見逃していた音が聴けたりして、意外と面白い。

現代ジャズでは、エレクトリック・ジャズは、ジャズの1ジャンルとして認められていて、意外とエレ・ジャズをやるジャズマンは結構いる。その現代のエレ・ジャズの担い手は、皆、エレ・マイルスの音世界をしっかりと踏まえつつ、自らのエレ・ジャズを表現している。立派である。

Miles Davis『Bitches Brew』(写真左)。1969年8月の録音。ちなみに、パーソネルは、Miles Davis (tp), Bennie Maupin (bcl), Wayne Shorter (ss), Chick Corea, Joe Zawinul (el-p), John McLaughlin (g), Dave Holland (b), Harvey Brooks (el-b), Jack DeJohnette (ds), Lenny White (ds), Don Alias (cga), Jim Riley (shaker)。当時のジャズの先端を行く一流どころがズラリと顔を並べている。

この盤はマイルスのリーダー作の歴史の中で、「大名盤」の扱いを受けていて、今更、その詳細を語るのは憚られる。書籍やネット記事に多くの評論が載っているので、一般的な評論については、そちらを参照されたい。ここでは、僕の個人的な、主観的な印象を語らせていただく。

前作『In a Silent Way』で、「エレ・マイルス」の方法論、エレ・ジャズの基本は「ビート」、という方法論を確立した訳だが、この盤ではその方法論に則り、当時、米国で流行していた「サイケデリック・ロック」や「プログレッシブ・ロック初期」の音を「エレクトリック・ジャズ」でやることが音のコンセプト。サイケやプログレをやるには、ビートの幻想的な広がりや揺らぎが必要なので、どうしても電気楽器の力が必要になる。
 

Miles-davisbitches-brew

 
マイルスの場合、必要に応じた電気楽器の導入しているので、電気楽器の活用が前提のジャズでは無く、ジャズとして表現したい音世界に電子楽器が不可欠だっただけなのだろう。マイルスの音楽に「コマーシャル」な側面は無い。録音当時、どんな音がヒップでクールか、だけを考えて、それに応じて、参加ジャズマンを選定し、必要な楽器を厳選している。

この『Bitches Brew』は、今の耳で聴くと、突拍子も無いエレ・ジャズでは無く、必要に応じて電気楽器を導入した、限りなく自由度の高いモード・ジャズ、言い換えると、当時のメインストリーム志向のコンテンポラリーな純ジャズだといえる。クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの原点がこの盤にある、とする評論もあるが、違う様な気がする。

この盤の音世界は、当時の(現代でもだが)メインストリームな純ジャズであり、必要が故に電気楽器を導入しているだけ。電気楽器の導入が前提でロックビートを採用したクロスオーバー・ジャズや、聴き心地の良い、ソフト&メロウでソウルフルなフュージョン・ジャズとは、音作りの志向が全く異なる。

この盤でも、マイルスは、ジャズの原点である「即興音楽の可能性」について執拗に追求しているだけで、音のコンセプトに関して、「サイケデリック・ロック」や「プログレッシブ・ロック初期」の音の要素を引用しているに過ぎない。そうして、出来上がった音世界が、限りなく自由度の高いコンテンポラリーな純ジャズであり、サイケやプログレを彷彿とさせるポリリズミックで変則拍子なビートの採用だったのだ。

エレ・マイルスの基本は「ジャズ」。この盤も今の耳で聴くと、しっかりと「メインストリームなジャズ」であり、クロスオーバーでも無ければ、フュージョンでも無い。この盤に表現されているのは、サイケでプログレなビートに乗った「即興演奏を旨とするジャズ」である。
 
 

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