ジャズ喫茶で流したい・239 『Arc』
もともとベースは「縁の下の力持ち」的存在。ベーシストの個性はその楽器の特性上(ソロやフレーズのバリエーションが少ない)、管楽器や鍵盤楽器ほど、明確にはならない。リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっているか、若しくは、担当のプロデューサーが、リーダーのベーシストの何を表現したいかが明確になっていないと、良いリーダー作にはなかなかならない。
Jimmy Haslip『Arc』(写真左)。1993年の作品。ちなみにパーソネルは、Jimmy Haslip (b), Peter Erskine (ds) のリズム隊のみ固定メンバーで、あとは曲毎にメンバーを選定して演奏に臨んでいる。次世代を担う中堅ベーシスト、ジミー・ハスリップの初リーダー作。リリース当時42歳(今年で72歳)。録音当時はバリバリな中堅ベーシストである。
ハスリップはフュージョン・ジャズ畑のベーシストで、彼は長年、Yellowjackets(イエロージャケッツ)のオリジナルメンバー、ベーシストとして活動している(2012年、フェリックス・パストリアスと交代し脱退)。良く唄うエレベで、リズム&ビートを堅実に押さえて、ソロでは旋律楽器の如く「唄う」エレベである。ほど良く角の取れたジャコ・パストリアスといった風情。
この盤に詰まっている音は「ウエザー・リポート」。そこはかとなく、ウエザー・リポート全盛期、『ミステリアス・トラベラー』から『ナイト・パッセージ』辺りまでの音が、そこはかとなく、このハスリップの初リーダー作に反映されている。しかし、音のカヴァーでは無い。雰囲気が「ウエザー」で、演奏自体は「ウエザー」の音をスムース・ジャズ化した様な音世界。
ベースとドラムだけを固定して、後は色々なゲストが演奏する、そして、アレンジャーも複数名が担当しているが、アルバム全体の雰囲気の統一感は見事。純ジャズ基調のコンテンポラリーなエレジャズとして、その出来は良い。さすが、イエロージャケッツのオリジナルメンバーとして、フュージョン・ジャズを極めて来ただけはある、見事な初リーダー作である。
ハスリップのベースがほどよく角の取れたジャコの雰囲気、ドラムはウエザー全盛期のドラマー、アースキンそのもの。このベースとドラムのリズム隊だけで、「ウエザー・リポート」の音の雰囲気のベースをしっかり表現しているのは、凄いなあ、と感心するばかり。リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっている「ベーシストのリーダー作」は聴いていて気持ちが良い。
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