Now He Sings, Now He Sobs
チック・コリアのリーダー作の振り返り。リーダー作の第2弾。このピアノ・トリオ作は、チックの代表作とされる。極端な評論家は「最高傑作で、これ以降は聴くべきものはない」なんて書いていて、それはかなり言い過ぎやな、と思うのだけど、チックのキャリア初期の中での傑作ではあります。
Chick Corea『Now He Sings, Now He Sobs』(写真左)。1968年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Miroslav Vitouš (b), Roy Haynes (ds)。録音当時26歳、若きチックが、モーダルで自由度の高いピアノを弾きまくった傑作。モーダルで革新的なベースのヴィトウス、機敏で硬軟自在な職人ドラマーのヘインズとリズム隊には不足は無い。
このトリオは、録音当時、ピアノ・トリオの最先端を行く内容を誇っていたと思う。ビル・エバンスの確立した「3者3様のインプロビゼーション」を基本とし、メロディアスかつモーダルな展開を、限りなく自由度の高いレベルで実現し、端正でクールな即興演奏を繰り広げた、そんな内容で、当時の「新主流派」の先を行くものであった。
この盤は、以下のの5曲で聴くべきアルバム。LP時代はこの5曲のみで、CDになってから、8曲が追加されて、なんか訳の判らないアルバムになってしまった。『Now He Sings, Now He Sobs』を鑑賞する上では、この5曲のみで聴き切って欲しいと思う。
1. Steps - (with What Was)
2. Matrix
3. Now He Sings, Now He Sobs
4. Now He Beats The Drum, Now He Stops
5. The Law Of Falling And Catching Up
冒頭の「Steps - What Was」は、モード奏法を深化させた「新主流派」の演奏の最終形の様な演奏。モーダルなフレーズから、フリーに展開し、現代音楽的なアブストラクトな響きを醸し出す。特にトリオ全体の創造力豊かな「即興演奏の妙」が凄い。
2曲目の『Matrix』は、歌うような印象的なフレーズを持つ人気曲。作曲上手なチックの面目躍如。フレーズの響きは袖に「チック独特」のもので、この曲を聴くだけでも、チックの個性は既に完成されている。モードを追究した「新主流派」の音を軽く越えている。
3曲目のタイトル曲は、チックならではの黒いブルージーな感覚とチックお得意のスパニッシュ系なロマンティシズム溢れるフレーズが魅力的。そして、4曲目「Now He Beats the Drum, Now He Stops」とラストの「The Law of Falling and Catching Up」では、完全にフリーでアブストラクトな演奏に傾いていく。
LP時代のA面の2曲とB面の3曲の内容の落差に改めて驚く。このチックのリーダー作には、チックの2面性がしっかりと記録されている。ロマンティシズム溢れるモーダルで自由度の高い演奏と、完全にフリーでアブストラクトな演奏との2面性。しかし、どちらもしっかりと「即興演奏の妙」を追求しているところが、いかにもチックらしい。
このトリオ盤、チックを理解する上で、絶対に外せない盤である。聴き心地の良い「最高傑作」では決して無い。
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