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2022年6月の記事

2022年6月30日 (木曜日)

真夏のヘビロテ・ピアニスト

暑い。暑すぎる。酷暑である。ここ千葉県北西部地方で、気温36〜7℃。朝の9時あたりで30℃を越える。もう朝から真夏日。外へ出ることは出来ない。身の危険を感じる。しかし、この猛暑の夏になると聴きたくなるジャズがあるから面白い。Dollar Brand(Abdullah Ibrahim)である。彼の「アフリカン・ネイティヴ」なジャズの音世界が無性に聴きたくなる。

Dollar Brand(Abdullah Ibrahim)『Zimbabwe』(写真左)。1983年5月29日、独ルートヴィヒスブルクの「Tonstudio Bauer」での録音。ちなみにパーソネルは、Dollar Brand /Abdullah Ibrahim (p, ss), Carlos Ward (as, fl), Essiet Okun Essiet (b), Don Mumford (ds)。アフリカ回帰なレジェンド・ピアニスト、アブドゥーラ・イブラヒム(ダラー・ブランド)の好盤である。

ジャズはアフリカン・アメリカンが育んだ音楽であるが、アブドゥーラ・イブラヒム(ダラー・ブランド)は、そんなジャズを生み出したアフリカン・アメリカンのルーツであるアフリカの「ルーツ音楽」をベースにジャズを展開したユニークなピアニスト。この盤でも、そんな「アフリカン・ネイティヴ」な雰囲気の音世界がてんこ盛り。これが、猛暑の夏の雰囲気に合うんですね〜(僕だけかなあ)。
 

Dollar-brandabdullah-ibrahimzimbabwe

 
アフリカの土着音楽の響き、哀愁感と郷愁感がない交ぜになった、パーカッシヴでエスニックな音世界。このユニークな音世界を彷彿とさせるフレーズを、ハイテクニックなピアノで紡ぎ上げて、モーダルなジャズに昇華している。そして、イブラヒム自らのソプラノ・サックスや、カルロス・ワードのアルト・サックスやフルートの音色が、そんな「アフリカン・ネイティヴ」な雰囲気を増幅している。

この盤の良さは「適度な余裕」。ロックで言うと「レイドバック」しているところ。「アフリカン・ネイティヴ」な雰囲気だからといって、過度のストイックにならず、どこかポップさを宿して、「くつろいだ、リラックスした」ホンワカなアフリカの土着音楽の響きがとても良い。聴いていて、スッとリラックスしていく感じがとても素敵だ。

もともとの名前が「Dollar Brand(ダラー・ブランド)」。1970年前後に、イスラム教に改宗し「Abdullah Ibrahim(アブドゥーラ・イブラヒム)」に改名したので、ダラー・ブランド=アブドゥーラ・イブラヒム、同一人物である。僕は、イブラヒムの「アフリカン・ネイティヴ」な雰囲気の音世界が大好き。特に、真夏に良く聴く「真夏のヘビロテ・ピアニスト」である。
 
 

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2022年6月28日 (火曜日)

猛暑の日々にラテン・ジャズ

先日、梅雨が明けた関東地方。梅雨明けしたら、しばらく暑い日が続くと言うが、それにしても暑い。暑過ぎる。連日の真夏日。朝からエアコンが無ければ、家の中でも過ごせない。これだけ暑いと思考も鈍る。もはや難しいジャズは聴きたくない。聴いて良く判る、聴いて楽しいジャズが良い。

『The Latin Jazz Quintet』(写真)。1960~61年、NYにて録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (fl, b-cl, sax), Felipe Diaz (vib), Bobby Rodriges (b), Artur Jenkins (p), Tommy Lopez (congas), Luis Ramirez (timbales)。こってこてポップなラテン・ジャズ。しかし、フロント管に、エリック・ドルフィーが参加している異色盤である。

パーソネルを見て「なんなんだ、この盤」と思った。ドルフィー以外、ほとんど知らないメンバーばかり。タイトルから「ラテン・ジャズ」をやっている盤。しかも、ドルフィーがラテン・ジャズをやる、とな? これは途方も無い「駄盤」か、意外と面白い「異色盤」かのどちらかだ。しかし、この最近の酷暑で、難しいジャズは嫌だ。ということで、この不思議なラテン・ジャズ盤を聴くことにした。
 

The-latin-jazz-quintet_1

 
ドルフィーは独特に捻れたサックスを封印して、メンバーの一員として、調和の取れたパフォーマンス。しかし、サックスの基本が相当しっかりしているのだろう、良い音出している。フルートもバスクラも良い音出している。ラテン・ジャズの独特の旋律を、とても良い音で、とても良いブロウで吹き上げている。ドルフィーの全く違った、しかし別の優れた側面を聴いた様な気がして、不思議な高揚感にかられる。

収録曲が面白い。ラテン・ジャズの演奏でありながら、収録曲はジャズ・スタンダード曲がメイン。ラテン・ジャズの企画盤なので、ラテン・ミュージックのヒット曲などを選曲するのが常套手段だが、この盤は違う。ラテン・ジャズの企画盤なのに、収録された演奏は、ジャズ・スタンダードをラテン・ジャズ風にアレンジしたものばかり。これが聴いていて面白い。難しいことを考えること無く、ラテン・ジャズ風にアレンジするとこうなるのか、とあっけらかんと感心するばかりである。

全体の雰囲気は「ラウンジ・サウンド」風なんだが、演奏の基本がしっかりしているので、意外と聴き応えのある「ラテン・ジャズ」に仕上がっているのだから面白い。猛暑の日々に、肩肘張らずにリラックスして楽しんで聴けるジャズ。こういうジャズもたまには良い。
 
 

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2022年6月27日 (月曜日)

マルティーノの初リーダー作

3日連続の真夏日。家にいても、エアコンをかけていても、動くと汗がジンワリ出てくる。精神的にも変に疲れてきた様な気がする。これだけ暑いとジャズを聴くどころでは無い。が、やっぱりジャズを聴いて、気分だけでもスカッとしたい。ちょうど最近「小粋なジャズ」を探しては聴いている。「小粋なジャズ」にはシンプルで爽快感溢れる盤が多く存在する。今の「酷暑の日」にピッタリだ。

これだけ暑くなると、まず、フリー・ジャズや、自由度の限りなく高いモーダルなジャズは、難度が高くて、この「酷暑の日々」には、絶対に向かない。1曲聴くだけで、額に汗が噴き出してくる。ガンガンにノリの良い「熱い演奏」のハードバップも駄目だ。1曲聴くと、目の前がクラクラしてくる(笑)。切れ味の良い、スインギーで聴き心地の良い、判り易いジャズが良い。聴いて楽しい「小粋なジャズ」が良い。

Pat Martino『El Hombre』(写真左)。1967年5月1日の録音。Prestigeレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Pat Martino (g), Danny Turner (fl), Trudy Pitts (org), Mitch Fine (ds), Vance Anderson (bongos), Abdu Johnson (congas)。ボンゴとコンガ入り、リーダーのマルティーノのギターがメイン、管楽器にフルートを配し、オルガンを入れた6人編成。マルティーノ、弱冠22歳での初リーダ作の録音であった。
 

Pat-martinoel-hombre

 
遅れてきたバップ・ギタリスト、マルティーノの初リーダー作。そのマルティーノのギターが爽快。絶好調である。コンガとボンゴを入れてリズム隊を増強した「ファンキー・ジャズ」の範疇の演奏ではあるが、マルティーノのギターは、ストレートで変な捻りが皆無。少し骨太な音で、高速フレーズを弾き進めていく。このマルティーノのギター・パフォーマンスは爽快そのもの。

聴き手に迎合すること無く、硬派で真摯で男気溢れるハードバップな演奏をグイグイ引っ張っていく。飄々と速いフレーズを弾き進めていくので、聴き流している分には単純な弾き回しに聴こえるが、しっかり聴くと結構、複雑なことをやっている。ファンクネスはしっかり備わっているのだが、粘ること無く、黒くなること無く、乾いて、どちらかと言えば「白いファンキーなジャズ・ギター」が当時として新しい個性。

ハイテクニックで意外と複雑なことをやっているのに、切れ味の良い、スインギーで聴き心地の良い「判り易いジャズ」な、聴いて楽しい「小粋なジャズ」な、演奏に仕上げっているのに感心する。シンプルで切れ味が良くて骨太な、単旋律がメインのマルティーノのギター。迫力抜群、グイグイ耳に訴求するマルティーノのギター。爽快抜群で、聴いた後、スカッとします。
 
 

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2022年6月26日 (日曜日)

リッチの楽しいビッグバンド

バディ・リッチのビッグバンド盤を聴き直している。バディ・リッチのビッグバンドはとても判り易い。ユニゾン&ハーモニー、アンサンブル、チェイスなど、ビッグバンドの基本をしっかり判り易く押さえて、アレンジもビッグバンド演奏の「ツボ」を押さえた、簡素で判り易いアレンジで、聴いていて、とても判り易い。

Buddy Rich『Big Swing Face』(写真)。1967年2月22–25日, 3月10日、米国ロサンゼルスの「Chez Club」でのライヴ録音。Buddy Rich (ds) が率いる The Buddy Rich Big Band のライヴ・パフォーマンスを記録した好盤である。

1967年といえば、ジョン・コルトレーンが亡くなった年。ロック&ポップスに大衆音楽の人気を奪われ、ジャズが斜陽に差し掛かった年。この時期は、ジャズはフリー・ジャズの台頭、ジャズのポップ化など、ジャズの「質」の面で複雑化、俗化が進み、聴かせるジャズ、聴いて楽しいジャズの存在は矮小化しつつあった。

そんな環境の中で、バディ・リッチのビッグバンドは、ビッグバンドの王道的な演奏を繰り広げ、判り易い、聴いて楽しいビッグバンド・ジャズを貫き通しているところが立派だ。
 

Buddy-richbig-swing-face

 
このライブ盤を聴いて思うのは、このビッグバンドはとても親しみ易いということ。難しいことは一切やっていない。スイング時代から演奏し続けられてきた、スインギーでダイナミックなユニゾン&ハーモニー、アンサンブル、チェイスなど、ビッグバンドの基本をしっかり押さえた演奏で魅了する。

冒頭の「Norwegian Wood」は、当時、大人気だった Lennon & McCartny の曲で、とても洒落たアレンジで、この難度の高いロック曲をしっかりとビッグバンド・ジャズの演奏として、上手くカヴァーしている。逆に、ジャズの有名スタンダード曲「Love for Sale」も、それまでに無い、新しい感覚のアレンジで、まるで新曲の様な雰囲気で聴かせてくれる。

そんな、お洒落で小粋な、正統派ビッグバンドを牽引しているのが、バディ・リッチのドラミング。大音量&大迫力、ハイテクニックなドラミングでビッグバンド全体を鼓舞し牽引する。ビッグバンドのメンバーもこのリッチの迫力あるドラミングに鼓舞されて、スインギーでダイナミックなパフォーマンスを繰り広げる。

とても、聴き応えのある、聴いて楽しいビッグバンド・ジャズのライヴ盤です。難しいことは言わずに、このシンプルで判り易いビッグバンドに耳を傾けると、ジャズという音楽にとって、何が大切なのか、を考え直させてくれます。バディ・リッチのビッグバンド、やっぱりなかなか良い感じです。他のアルバムについても、もっと聴きたい想いに駆られました。
 
 

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2022年6月25日 (土曜日)

セシル・テイラーの初リーダー作

「小粋なジャズ」の探索は続いているのだが、「小粋なジャズ」との出会いって、CDリイシューのタイミングで、昔、聴いたままで、長く聴くことの無かった盤に出会って、これは、と聴き直して「ビンゴ」というケースがあったりする。

最近の過去の名盤、好盤のCDリイシューは、エヴァー・グリーンな名盤の類では無い、ちょっと小粋な、知る人ぞ知る隠れ名盤、隠れ好盤の類を選盤してくるので隅に置けない。

Cecil Taylor『Jazz Advance』(写真左)。1956年9月14日、ボストンでの録音。ちなみにパーソネルは、Cecil Taylor (p), Buell Neidlinger (b), Denis Charles (ds), Steve Lacy (ss, tracks 2 & 4)。フリー・ジャズ・ピアノの先駆者、セシル・テイラーの初リーダー作である。

フリー・ジャズ・ピアノの萌芽とされるが、今の耳で聴き直してみると、意外にノーマルなジャズに聴こえるから不思議だ。冒頭の「Bemsha Swing」を聴けば、それが良く判る。

この曲の作曲者、セロニアス・モンクのピアノによるパフォーマンスの方がフリー・ジャズに近い。不規則なタイム感覚に、従来のコード進行に基づくことの無いフレーズの音飛び。突然、響く不協和な左手のブロックコード。とりわけ、1950年代のモンクのピアノは「フリー・ジャズに一番近い存在」だった。
 

Cecil-taylorjazz-advance

 
この初リーダー盤のテイラーは、このモンクの不規則なタイム感覚から「間」を取り除いて判り易くして、フレーズの音飛びを「常識の範囲内」に留めて聴き易くし、突如響く不協和な左手を、速い不協和なフレーズの右手に置き換えた様な、まとめていうと「モンクの持つフリー・ジャズな要素を、弾きやすく判り易くした様な」ピアノだと思うのだ。

意外とコードに準じているし、リズム&ビートもアブストラクトにブレイクすることは希。録音年は1956年。このハードバップ全盛期に、完全フリーな演奏をするにはちょっと無理がある。

しかし、このテイラーのピアノは、後のテイラーがやる「フリーなジャズ・ピアノ」の原点となる様なパフォーマンスであり、他のジャズマンとは一味違った個性であることは確か。

オーネット・コールマンは「普通でやらない」ことでフリーなジャズを追求したが、テイラーは「普通にやること」の中でフリーなジャズを追求した。

同じフリー・ジャズでも、アプローチが全く異なる訳で、フリー・ジャズというのは、意外と奥が深い。無手勝流な激情に任せて吹きまくるだけ、弾きまくるだけがフリー・ジャズでは無い。
 
 

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2022年6月24日 (金曜日)

バディ・リッチを再評価したい

ジャズマンの人気について、米国では人気があるのに、我が国では「知る人ぞ知る」的存在な、人気イマイチのジャズマンは結構いる。

日本のジャズ評論家の皆さんが、それぞれの主観に基づき、こぞって「バッテン」を付けてしまったり、レコード会社がそのジャズマンが在籍するレーベルと販売契約を結んでいなくて、そもそも我が国にそのジャズマンの情報が入ってこなかったり、が主な原因だと思っている。

ジャズ・ドラマーでは「バディ・リッチ(Buddy Rich)」がそんな「我が国で何故か人気が無いジャズマン」の1人。米国では「ビッグバンド・ジャズの新境地を開いた人物、およびビバップの誕生に協力したジャズ・マンとして尊敬されている(Wikipediaより)」のだが、我が国では、その名前が挙がることは希。この落差について、確固たる理由は不明。

Buddy Rich Big Band『Keep the Customer Satisfied』(写真左)。1970年3月30日〜4月1日の録音。パーソネルについては、The Buddy Rich big bandであるが、そのメンバーについては、あまり馴染みの無い名前ばかりが並ぶ。中に、Richie Cole (fl, as), Joe Sample (key) の名前があって、おっ、と思う位。
 

Buddy-rich-big-bandkeep-the-customer-sat

 
バディ・リッチのドラミングは「超人的なテクニックと、迫力満点、ショウマン・シップに溢れる」ドラミング。正確無比に刻まれるビート、パワー溢れる叩きっぷり。この「ど迫力」のドラミングは、ジャズ畑、ロック畑を見渡しても、そうそういない。このドラミングを推進力として、1966年に自らの楽団「Buddy Rich Big Band」を結成し、以後、晩年までドラマー兼バンドリーダーとして活動した。

この盤は、ビッグバンド結成の4年後、バンド・サウンドもしっかり整った、とても迫力ある、とても判り易いビッグバンドのパフォーマンスが記録されている。とりわけ、リーダーのバディ・リッチのドラミングが凄い。ビッグバンドの音圧に全く負けていないどころか、凌駕している。このリッチのドラミングがバンド全体の推進役で、凄く判り易いアンサンブル、ユニゾン&ハーモニーがダイナミックに炸裂する。

電気楽器もしっかり導入済み。エレベ、エレギの音も芳しく、ファンク色漂い、ダイナミックなグルーヴ感が、Buddy Rich Big Bandの真骨頂。今の耳には、このビッグバンドの音は「モダン」に感じる。決してコマーシャルでも、俗っぽくも無い。このビッグバンドの音は「アリ」である。

1987年4月に逝去しているが、バディ・リッチのドラミング、ビッグバンドの影響は米国中心にまだまだ残っている。が、しかし、我が国での人気、知名度はイマイチなんですよね。そう言えば、トランペッターの「ウッディ・ショウ」に通じるところがあるな。バディ・リッチ、ウッディ・ショウ、再評価しなければ、と思う今日この頃である。
 
 

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2022年6月23日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・240

欧州ジャズは奥が深い。まず、歴史が古い。1950年代からジャズは欧州各地で演奏されている。そして、国毎に「ジャズの質と個性」が異なる。国毎にジャズの浸透度合いに濃淡があり、国毎にジャズのスタイルの好みが異なる。

しかも、ネットの時代になるまで、欧州ジャズの詳細な情報がなかなか日本に来なかった。21世紀に入った頃から、欧州ジャズの情報もリアルタイムで入手出来る様になって、欧州ジャズの奥深さを十分に楽しめる様になった。

Eddy Louiss『Recit Proche』(写真左)。2000年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Eddy Louiss (org), Jean-Marie Ecay (g), Xavier Cobo (ts, fi), Daniel Huck (as), Julio Rakotonanahary (b), Paco Séry (ds)。ギター、テナー・サックス、アルト・サックスがフロント、オルガン・トリオがバックに控えるセクステット編成。

Eddy Louiss(エディ・ルイス)は、フランスのオルガン奏者。僕は、ペトルチアーニとのデュオ盤で、エディ・ルイスの存在を知った。今を去ること20年ほど前のことになる。テクニック優秀、オルガンの奏法としては、プログレッシブなオルガニストである。オーソドックスな奏法からアブストラクトな奏法まで、幅広くオールマイティーに弾きまくる、実に優れたオルガン奏者である。
 

Eddy-louissrecit-proche

 
ルイスのオルガンは唯一無二。従来のジャズ・オルガンのスタイルや個性を全く踏襲していない。といって、欧州風の教会音楽の中のオルガンの様な重厚さも無い。とてもポップで明るい音色が特徴で、そんな個性的な音色で、オーソドックスなフレーズから、アブストラクトなフレーズまでを弾き分ける。どこの国のジャズ・オルガンにも無い、独特の個性的なオルガンである。

7曲目の超スタンダード曲「Summertime」を聴けば、ルイスのオルガンの個性が良く判る。ファンクネスは皆無。レスリー・スピーカーなどでジャジーさを増幅することも無く、エッジの丸い暖かい音色で、マイナーでジャジーな「Summertime」の有名なフレーズを弾き進めていく。それでも、フレーズにはジャズっぽい翳りが感じられ、ポップでイージーリスニングな音には陥らない。

フレーズの弾き回しが、独特の捻れ方をしてるようで、どこか、プログレッシヴ・ロックのオルガンを聴く様な「攻撃性」をそこはかとなく感じる。飄々とちょっと捻れたフレーズを弾き進めている風でもあり、弾き回し全体の雰囲気は軽快ですらある。

面白いジャズ・オルガン。演奏全体の雰囲気は、決してカッチリとまとまっていない、ちょっとラフなアンサンブルといった調子で、この辺はフランスのジャズらしい雰囲気。どこか郷愁を感じる切なさが底に流れるところも、実にフランスのジャズらしい。ジャズ・オルガンの好盤だと思います。
 
 

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2022年6月22日 (水曜日)

CASIOPEA 3rdとしての音の変化

正統派フュージョン&バカテクのバンドであるカシオペア(CASIOPEA)。2006年にすべての活動を一旦休止。2012年にCASIOPEA 3rd(カシオペア・サード)として活動を再開。活動再開と同時に長年のオリジナル・メンバーであった、キーボード担当の向谷の脱退を受け、その後任として、大高清美の加入により現在の形態になる。ギターが野呂一生、ベースが鳴瀬喜博、キーボード大高清美、そしてドラムが神保彰(サポート)の4人編成。

フュージョンというよりは、ロック色が色濃くなり、ボンヤリ聴いていると「これってプログレッシブ・ロック」って思ってしまうほど。バカテクのプレグレ、という雰囲気。恐らく、大高のキーボードが、今回、さらに「キース・エマーソン」風になっているということ。成瀬と神保のリズム隊が、大高のキーボードに呼応して、ロックっぽくなっていること。それらが大きく作用している。

CASIOPEA 3rd & INSPIRITS『『4010』 Both Anniversary Gig』(写真左)。2017年12月24日、東京「EX THEATER ROPPONGI」にてのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、野呂一生 (g), 鳴瀬喜博 (b), 大高清美 (key), 神保彰 (ds, サポート)。ISSEI NORO INSPIRITS と、CASIOPEA 3rd & INSPIRITS 両バンド・メンバーによる白熱のライヴを収録している。

2017年のライヴ音源。カシオペアとしては、2012年に「CASIOPEA 3rd」として再出発して、5年目のライヴ・パフォーマンス。直近のT-スクエアは、スムース・ジャズ化していったのだが、CASIOPEA 3rd は、ジャズ・ロック化していったようだ。
 

Casiopea-3rd-inspirits4010-both-annivers

 
このライヴ音源を聴いてビックリしたのが「CASIOPEA 3rdとしてのバンド・サウンドの変化」。CASIOPEA 3rd 結成当初の「バカテクのプレグレ」から、ポップなジャズ・ロック志向に変化しているように感じる。切れ味鋭い、バカテクな正統派フュージョン・ジャズとしてのカシオペアの面影はほぼ無くなっている。

大高のキーボードが前面に押し出される割合が増えているのが理由だろう。ポップなジャズ・ロック化が悪いといっているのではない。CASIOPEA 3rdとなって、再びサウンドが変化し、加えて「バカテク」という要素が後退、オリジナル「カシオペア」の音世界がほぼ払拭されたサウンドに変化した、ということである。長年の「カシオペア」者の方々の中には、この変化を「良しとしない」向きもあるだろうな。それほど、大きくサウンドは変化している。

サポートメンバーとして活動に帯同してた神保が、2022年5月28日のビルボードライブ大阪公演をもって卒業。新メンバーを補充して、CASIOPEA 3rd としての活動は継続するそうだが、新メンバーを迎えて更に、CASIOPEA 3rdとしての音世界は変化するだろう。

T-スクエアといい、カシオペアといい、時代の流れに伴う「変化」だから仕方が無いこととは言え、デビュー当時からずっと聴き親しんできた僕としては、このバンド・サウンドの変化について、どこか寂しい印象は拭えない。あの頃の音はアルバムで聴き返すしか無いんだろうなあ。
 
 

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2022年6月21日 (火曜日)

ミンガスとホーズの邂逅の記録

昨日、書いたのだが、「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤については、だいたい、新装リイシューされるタイミングで、その存在を思い出し、おもむろに聴き直して、再び感動する。のだが、実はこの盤も、そういった、20年ほど前に聴いたっきり、「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤になっていた類のものである。

Charles Mingus『Mingus Three』(写真左)。1957年7月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Hampton Hawes (p), Dannie Richmond (ds, tambourine (overdubbed))。米国西海岸からニューヨークへやってきたホーズが、ミンガスとたまたま出会って、リッチモンドを誘って録音した音源だそうだ。

「怒れるベーシスト」ミンガスは、大型のコンボやビッグバンドで演奏することが多く、ピアノ・トリオで録音するのは珍しい。トリオ演奏でのミンガスといえば、デューク・エリントンとマックス・ローチとの『Money Jungle』くらいしか思い浮かばない。逆にホーズはトリオでの演奏が多く、トリオ演奏でその個性と実力を発揮するタイプである。

全7曲中、2曲がミンガス作、1曲がホーズ作、他はスタンダード曲。ミンガス&ホーズ作の曲も良い感じだが、スタンダード曲のアレンジが、実にミンガスらしいもので感心する。
 

Charles-mingusmingus-three

 
他のスタンダードのアレンジとは、一風趣きが異なって、かなり聴き応えがある。音楽監督な役割が得意なミンガスの面目躍如。かなり「ノって」いたのだろう、ミンガスのベース・ソロも躍動感溢れ、変幻自在な重低音をブンブン響かせて絶好調である。

ホーズが何時になくバリバリ、バップなピアノを弾きまくっている。当時、西海岸では、洒落たアーバンな弾き回しのトリオ盤を出していた頃なので、このバリバリなバップらしい、カッ飛んだ弾きっぷりにはビックリ。しかし、このバリバリなバップ・ピアノがホーズの本質なんだろう。とてものびのびと弾きこなしている。タッチも切れ味が良く、ホーズも絶好調だ。

リッチモンドのドラムも硬軟自在で、ミンガスとホーズに追従する。タンバリンをオーバーダブしたりして、リッチモンドも絶好調。

発売65周年を記念して、貴重な未発表音源を収録したデラックス・エディションで、CDリイシューされて、そのタイミングで20年振りに聴き直した『Mingus Three』。その素晴らしい出来に思わずビックリ。名盤はいつ聴いてもやはり名盤だなあ、と感心することしきり、である。
 
 

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2022年6月20日 (月曜日)

ブレイキーとモンクの相性の良さ

ジャズの過去の優秀盤については、長年の間に「定期的に選盤しては再度聴く」盤と「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤に分かれる。「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤については、だいたい、新装リイシューされるタイミングで、その存在を思い出し、おもむろに聴き直して、再び感動する、この繰り返しである。

『Art Blakey's Jazz Messengers with Thelonious Monk』(写真左)。1957年5月14–15日の録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Art Blakey (ds), Bill Hardman (tp), Johnny Griffin (ts), Spanky DeBrest (b)。ドラマーのアート・ブレイキーが率いるグループ、ジャズ・メッセンジャーズとピアノのセロニアス・モンクのコラボレーションの記録である。

この盤は20年ほど前に「Deluxe Edition」で入手、10年ほど前に聴いて、そのまま「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤になった盤である。今回、またまた「Deluxe Edition」で、CDリイシューされたタイミングで、その存在を思いだし、おもむろに聴き直した次第。もともと、アート・ブレイキーとセロニアス・モンクは相性が良く、その内容には期待が持てる盤ではある。

しかしながら、この時期のジャズ・メッセンジャーズは、ブルーノートとの長期契約を開始する寸前、1950年代の「低迷期の最後のメンバー編成」で、演奏内容に問題は無いのか、聴く前は不安になる。ジャズも知識が付くと、意外と聴く前に変な先入観を持つようになるから、十分に気をつけないといけない。
 

Art-blakeys-jazz-messengers-with-theloni

 
というのも、このジャズ・メッセンジャーズとセロニアス・モンクのコラボ盤、意外と骨太で硬派で内容の濃いハードバップがぎっしり詰まっているのだ。これには驚いた。もちろん、アート・ブレイキーとセロニアス・モンクは相性の良さは全編に渡って十分に感じられて、思わず、聴き込んでしまう。

ブレイキーのモンクのパフォーマンスに対する鼓舞の仕方、タイミングが絶妙。モンクの変則フレーズにしっかりと変則ビートでクイックに反応する、ブレイキーのテクニックの凄さ。そんなブレイキーのドラミングをバックに、モンクは気持ちよさそうに独特の変則フレーズを弾き上げて行く。ブレイキーのドラミングをバックにした時のモンクの弾き進めるフレーズには全く淀みが無い。

低迷期のメンバーとされた、メッセンジャーズのメンバー、それぞれもパフォーマンス好調。グリフィンはモンクの変則フレーズに乗って、ごりごりハードバップなフレーズをブリブリ吹きまくり、変則フレーズのモンクのバッキングに関わらず、ハードマンのトランペットもモンクのフレーズにしっかり乗って、ブリリアントで流麗に吹きまくる。このフロント2管のパフォーマンスに緩んだところは全く無い。

10年前に聴き直して以降、「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤になっていた訳だが、今回、聴き直して、その内容の濃さにビックリした。以前はこの盤の何を聴いていたのやら。録音年は1957年、ハードバップ全盛期。この盤にもハードバップの良いところを十分に表現した、充実したパフォーマンスが記録されている。そして、改めて、ブレイキーとモンクの相性の良さを再認識した。ちなみに、このリイシュー盤、ボートラも充実していて捨て曲無し。良いリイシュー盤です。
 
 

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2022年6月19日 (日曜日)

カナダの「バップなジャズ新盤」

「小粋なジャズ」を探し漁っては聴いている毎日だが、「小粋なジャズ」は、何も以前リリースされた既発盤ばかりがその対象では無い。新盤の中にも「小粋なジャズ」は存在する。あまり馴染みの無いジャズマンの新盤をピックアップして、「小粋なジャズ」として当たった時は、とにかく気分が良い。

Cory Weeds『Just Coolin'』(写真左)。2021年9月15日、バンクーバーの「Will and Norah’s house」での録音。ちなみにパーソネルは、Cory Weeds (ts), Tilden Webb (p), John Lee (b), Jesse Cahill (ds)。CELLAR LIVE レーベル のオーナーであり、カナダを代表するサックス奏者、コリー・ウィーズの19枚目となるリーダ―・アルバム。

コーリー・ウィーズ(Cory Weeds)。19枚目となるリーダー盤なので、大ベテランの域のサックス奏者で、カナダを代表するサックス奏者とのことだが、僕は知らなかった。ネット上にも彼のバイオグラフィーについて、まとまったものは見当たらず、本当に、カナダを代表するサックス奏者なのか、とも思うが、この新盤から出てくるテナーは確かなもの。
 

Cory-weedsjust-coolin

 
もともとこの盤も「ジャケ買い」が切っ掛け。このジャケットのイラストに妙に惹かれた。リーダーの名前に馴染みは無かったものの、なんか良い音が出てきそうなジャケじゃないですか。思わず「ポチ」。出てくる音は、何も味付けも癖も無い、ストレートで端正なテナー・サックス。この盤、リーダーのウィーズのテナーがフロント一管の「ワンホーン・カルテット」なので、ウィーズのサックスがズバッと前面に出てくる。

ミッド・テンポのスインギーな演奏がメイン。ファンクネスは希薄、アーバンでジャジーなオールド・スタイルなハードバップをベースに、ウィーズのテナーが、クールにライトにスインギーにテナーを吹き上げていく。リズム隊は堅実にジャジーなビートを供給し、ウィーズのテナーをしっかりとサポートする。何の変哲も無い、味のある、小粋でバップな演奏なんだが、これが意外と小気味良い。

カナダ・バンクーバーの「フランキーズ・ジャズクラブ」でのギグの為に集まったカルテット。その素晴らしい演奏を聴いた友人がサポートを申し出て、当アルバムのリリースが実現したと言う。その演奏内容の確かさ、メンバーの演奏テクニックの高さから、カナダ・ジャズのレベルの高さを垣間見る想いだ。聴いて楽しい「小粋なジャズ盤」。現代のバップなジャズを楽しめる好盤です。
 
 

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2022年6月18日 (土曜日)

日本人独特のエレ・ファンク

SOIL &“PIMP”SESSIONS。「ソイル・アンド・ピンプ・セッションズ」と読む。2001年、東京のクラブイベントで知り合ったミュージシャンが集まり、「ステージと観客の間の壁を壊す」という明確な目的のもと、結成された日本の6人組ジャズバンド。そんなSOIL &“PIMP”SESSIONSの新盤が出た。

SOIL &“PIMP”SESSIONS『LOST IN TOKYO』(写真左)。2022年6月、約2年半振りのオリジナル盤をリリース。バンドのホームでもあるビクター・スタジオ(Victor Studio 302st)で行われたスタジオ・セッションの記録。ちなみにパーソネルは、タブゾンビ (tp), 丈青 (p), 秋田ゴールドマン (b), みどりん (ds) 社長 (Agitator) 。

この新盤は「東京」をテーマにしたコンセプチュアルな企画盤。思い入れのある街の地名などをもじったタイトルのもとに展開されるインスト楽曲がズラリと並ぶ。ジャズを基軸にしつつ、レアグルーブ、ジャズファンクからアシッドジャズまで、幅広く取り入れたバンド・サウンドが個性なのだが、この新盤では、ジャズに力点を置いて、純ジャズ基調のエレクトリック・ジャズといった風情。
 

Soil-pimp-sessionslost-in-tokyo

 
このバンド特有のグルーヴ感が堪らない。エレ・ジャズだからといって、フュージョン・ジャズ基調かと言えば、そうでは無い。この新盤を聴き進めて行くと、ふと「マイルス・デイヴィスのエレ・ジャズ」を想起する。マイルスのエレ・ジャズは重量級のど・ファンクだったが、この「ピンプ」のエレ・ジャズは、軽快で切れ味の良い、日本人独特のライトなファンクネスを湛えたビートが基本で、爽快で躍動感のあるグルーヴ感がぐいぐい迫ってくる。

独特のグルーヴ感に乗って、ダンサフルでキャッチャーな演奏がズラリと並ぶ。特に、このバンドの自作曲は旋律がキャッチャー。印象的な曲が多く、旋律がキャッチャーなだけに、途中、フリーに展開したり、アブストラクトにブレイクしても、聴いた後の「後味」は爽快であり、良いジャズ聴いたな〜、って印象に落ち着くのだ。

コンテンポラリーな現代のエレ・ファンクとして、聴き応えのある新盤。現代の和ジャズのレベルの高さを再認識する。意外と純ジャズ志向の演奏の流れが実に「硬派」に響いて、聴き応え満点。米国のエレ・ファンクとは全く異なる、日本人独特のエレ・ファンクというところがニクい。現代エレ・ファンクの優秀盤。
 
 

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2022年6月17日 (金曜日)

梅雨空に欧州的ジャズ・ファンク

今年の南関東の6月は天気がかなり悪い。とにかく晴れない。青空を見ることが無い。昨日、今日などは、天気予報は「晴れる」なんて言っておきながら、昨日など終日、今日は午前中、全く陽射しが差すことが無い。とにかく晴れない。どんより梅雨空か雨である。鬱陶しい。せめて、聴くジャズだけでも爽快感豊かな、ちょっとインパクトを感じるジャズが聴きたい。

Gianni Brezzo『Tutto Passa』(写真)。2022年5月、ベルリンのJakarta Recordsからのリリース。マルチ・インスト奏者&プロデユーサー Marvin Horsch によるスタジオ・プロジェクト「Gianni Brezzo」のニューアルバム。

ちなみにパーソネルは、Jan Philipp (ds), Bridget Jackson (harp), Reinaldo Ocando (perc), Simon Below (key), Conni Trieder (fl), Johanna Klein (sax), Ferdinand Schwarz (tp), Lukas Wilmsmeyer (b)。ここにストリングスが加わる。

現代のエレ・ジャズ。基本は「エレ・ファンク」。ヨーロピアンで、アーティステックでプログレッシヴな「エレ・ファンク」。ネットでのアルバム紹介を紐解くと「今作 "Tutto Passa “ は、Marvin Horschが2021年、家族と共に南イタリアに滞在した時の体験、印象を音楽作品として反映したもの」とのこと。
 

Gianni-brezzotutto-passa

 
耽美的で静的なヨーロピアン・ジャズ・ファンクと言った感じの「エレ・ジャズ」で、牧歌的でフォーキー、内省的でソウルフル、耽美的でスピリチュアル、どこかユーロピートの様な響きもあり、ストリングスの加わったジャズ・ファンクな趣きは欧州ならではの音世界。打ち込みと人間によるドラミングとを融合させた様な切れ味良く、メリハリの効いたリズム&ビートがこの盤の演奏の「要」。

この盤のユーロなジャズ・ファンク、じっくり聴けば聴くほど、エレ・マイルスを思い出す。マイルスの晩年作、マーカス・ミラーとのコラボ作『Siesta』と同等の音世界をふと感じたりする。ユッタリとしたファンク・ビート、耽美的で静的な旋律楽器の響き。南イタリアの昼下がり、シエスタの時間を彷彿とさせる、どこか寂寞感を感じるエレクトリックでスピリチュアルな展開。

昨日、今日の午前の様な、どんより曇りな梅雨空の日に聴くと、その爽快感と寂寞感が心に響いて、梅雨空で苛立った心が、何だか落ち着くのを感じる。

実はこの「Gianni Brezzo」のニューアルバム、聴く切っ掛けは「ジャケ買い」。ジャケ写が「シチリアっぽい」。これは良いかも、と思って聴いたら、耽美的で静的なヨーロピアン・ジャズ・ファンク。エレ・ジャズ好きの僕にとってはこれは「アリ」。良いエレ・ジャズ盤に出会いました。
 
 

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2022年6月16日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・239

もともとベースは「縁の下の力持ち」的存在。ベーシストの個性はその楽器の特性上(ソロやフレーズのバリエーションが少ない)、管楽器や鍵盤楽器ほど、明確にはならない。リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっているか、若しくは、担当のプロデューサーが、リーダーのベーシストの何を表現したいかが明確になっていないと、良いリーダー作にはなかなかならない。

Jimmy Haslip『Arc』(写真左)。1993年の作品。ちなみにパーソネルは、Jimmy Haslip (b), Peter Erskine (ds) のリズム隊のみ固定メンバーで、あとは曲毎にメンバーを選定して演奏に臨んでいる。次世代を担う中堅ベーシスト、ジミー・ハスリップの初リーダー作。リリース当時42歳(今年で72歳)。録音当時はバリバリな中堅ベーシストである。

ハスリップはフュージョン・ジャズ畑のベーシストで、彼は長年、Yellowjackets(イエロージャケッツ)のオリジナルメンバー、ベーシストとして活動している(2012年、フェリックス・パストリアスと交代し脱退)。良く唄うエレベで、リズム&ビートを堅実に押さえて、ソロでは旋律楽器の如く「唄う」エレベである。ほど良く角の取れたジャコ・パストリアスといった風情。
 

Jimmy-haslip-arc

 
この盤に詰まっている音は「ウエザー・リポート」。そこはかとなく、ウエザー・リポート全盛期、『ミステリアス・トラベラー』から『ナイト・パッセージ』辺りまでの音が、そこはかとなく、このハスリップの初リーダー作に反映されている。しかし、音のカヴァーでは無い。雰囲気が「ウエザー」で、演奏自体は「ウエザー」の音をスムース・ジャズ化した様な音世界。

ベースとドラムだけを固定して、後は色々なゲストが演奏する、そして、アレンジャーも複数名が担当しているが、アルバム全体の雰囲気の統一感は見事。純ジャズ基調のコンテンポラリーなエレジャズとして、その出来は良い。さすが、イエロージャケッツのオリジナルメンバーとして、フュージョン・ジャズを極めて来ただけはある、見事な初リーダー作である。

ハスリップのベースがほどよく角の取れたジャコの雰囲気、ドラムはウエザー全盛期のドラマー、アースキンそのもの。このベースとドラムのリズム隊だけで、「ウエザー・リポート」の音の雰囲気のベースをしっかり表現しているのは、凄いなあ、と感心するばかり。リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっている「ベーシストのリーダー作」は聴いていて気持ちが良い。
 
 

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2022年6月15日 (水曜日)

レアで幻のアルト・サックス奏者

長年、Twitterを利用している。自らも定期的にツイートしているが、他のジャズ者の皆さんのツイートの中に、小粋なジャズ盤の紹介ツイートがあって、いつも楽しく拝見している。これは、という小粋なジャズ盤のご紹介があった時などは、いそいそと該当盤を探し当てて、早速聴いている。一度も聴いたことの無い初見の盤もあるし、昔、聴いたことがあるが、しばらく御無沙汰だった盤もある。

『Jenkins, Jordan and Timmons』(写真左)。1957年7月26日の録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Jenkins (as), Clifford Jordan (ts), Bobby Timmons (p), Wilbur Ware (b), Dannie Richmond (ds)。ハードバップ全盛期、デビューわずか1年で消えた、幻のアルト・サックス奏者、ジェンキンスが、テナーのジョーダン、ピアノのティモンズとの共同リーダーで、クリフォード・ジョーダンのテナー・サックスと2管フロントを構えたクインテット編成。

ジョン・ジェンキンスは、幻のアルト・サックス奏者。リーダー作をブルーノートからもリリースしているので、アルト・サックスの腕前は確かなもの。癖の無いストレートで、少しファンクネスのかかったアルト・サックスが個性。しかし、1957年に録音活動を集中して行った後、デビューわずか1年でその活動は途絶え、唯一、逝去直前、1990年にクリフォード・ジョーダンのビッグバンドに参加したが、1962年以降は完全に引退状態。
 

Jenkins-jordan-and-timmons

 
そんなジョン・ジェンキンスの数少ないリーダー作(共同リーダー作ではあるが)の一枚がこの『Jenkins, Jordan and Timmons』。リズム隊が一流どころで固めているので、安定したハードバップな演奏を聴くことが出来る。ジェンキンスのアルト・サックスは、少しファンクネスのかかった、癖の無いストレートで明るいものなので、クリフォード・ジョーダンの無骨でブラック・ファンクなテナーとのバランスが良く、フロント2管の演奏はなかなかの出来。

リズム隊の要、ピアノのティモンズは「ファンキー・ピアノ」の代表格の一人だが、この盤では、こってこてファンキーなピアノをグッと押さえて、アーバンで小粋なバッキングに注力している。ベースのウエアはちょっと捻りの効いたベースで、当時のハードバップな演奏にちょっとした「新しい響き」を与え、リッチモンドのドラミングは堅実そのもの。1957年のハードバップな演奏としては水準以上のレベルで、こってこてハードバップな演奏をしっかりと楽しめる。

プレスティッジ・レーベルからのリリースなので、ジャケットはほとんど「やっつけ」。それでも、今の目で見れば、ちょっと味のあるデザインかな、とも思う(笑)。録音とマスタリングは、かの「ルディ・ヴァン・ゲルダー」が担当しているので、音はまずまず良い。歴史に残る名盤というものではありませんが、ハードバップな演奏を楽しく聴くことの出来る「隠れ好盤」として、良い感じのアルバムでした。
 
 

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2022年6月14日 (火曜日)

ケニー・バロンの隠れライヴ名盤

先日、6月9日がケニー・バロンの誕生日だったそうで、Twitter上でバロンの様々なリーダー作について、結構沢山、ツィートされていた。ケニー・バロンって、世界的に見ると意外と人気の高いピアニストだったんやなあ、と改めて驚いた。ちなみに、僕にとっては暫く忘れていたピアニストだったのだが、その誕生日を境に、バロンのリーダー作の聴き直しを始めた。

Kenny Barron『Imo Live』(写真左)。1982年6月9日、東京の中野南口の「Imo House(いもはうす)」でのライヴ録音。1983年のLPでのリリース時は「Whynotレーベル」から、CDリイシュー時は「PJL(Polystar Jazz Library)」からのリリース。我が国のジャズ・レーベル発のライヴ盤である。ちなみにパーソネルは、Kenny Barron (p), Buster Williams (b), Ben Riley (ds)。

ケニー・バロンが49歳、ベースのバスター・ウィリアムスが42歳、ドラムのベン・ライリーが48歳、トリオを編成する3人、皆、中堅の一流どころ。全編に渡って、テクニック優秀、充実したライヴ・パフォーマンスが展開されている。3人それぞれが「達人」の域なので、聴き応えのある、ダイナミックでメリハリの効いたインタープレイを聴くことが出来る。
 

Kenny-barronimo-live

 
癖が無く端正なところがバロンのピアノの個性。平均的に素晴らしいプレイを聴かせるところが、いわゆるピアニストとしての総合力の高さが個性。その「総合力」全開、バロンはガンガン弾きまくる。ウィリアムスのベースが、しっかりと演奏のベースラインをしっかりと押さえ、ライリーのドラムが演奏のリズム&ビートをしっかりと供給する。そんな優れたパフォーマンスが、このライヴ盤を通じて、しっかりと伝わってくる。

ケニー・バロン作が1曲、残り3曲はスタンダード曲。特にスタンダード曲は「Manha Do Carnaval(Black Orpheus)」「Rhythm A Ning」「Someday My Prince Will Come」と、ボサノバあり、モンク曲あり、ディズニー曲あり、様々な曲想のスタンダード曲を、総合力で勝負するピアニストのバロンは、その「総合力」を駆使して、見事に弾き分けている。スタンダード曲こそが、総合力勝負のピアニストの得意とするところなんだろう。

演奏のスタイルはハードバップだが、それまでに無い、新しい響きを聴くことが出来る。後のネオ・ハードバップの萌芽を確認することが出来る、なかなか内容のあるライヴ盤である。ジャケットも優秀、我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』では、ケニー・バロンの隠れライヴ名盤として、長年愛聴しています。
 
 

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2022年6月13日 (月曜日)

1970年代のギブス盤に感心する

テリー・ギブス(Terry Gibbs)は、米国のジャズ・ヴァイブ奏者。1924年生まれなので、今年で98歳。まだ存命中。いわゆる「伝説」のヴァイブ奏者である。久し振りに、テリー・ギブスのリーダー作をサブスク・サイトで目にして、思わず、即「ジャケ聴き」である。

ヴァイブのスタイルはライオネル・ハンプトンに代表される「オールド・スタイル」。旋律楽器=フロント楽器として、両手を使った単音の旋律弾きがメイン。後のジャズ・ヴァイブの代表格、ミルト・ジャクソン、ゲイリー・バートンとは、基本的に奏法が異なる「シンプル」なもの。

Terry Gibbs Dream Sextet『4am』(写真左)。1978年7月30日、米国カリフォルニア州の「Lord Chumley's」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Terry Gibbs (vib), Bob Cooper (ts), Conte Candoli (tp), Lou Levy (p), Bob Magnusson (b), Jimmie Smith (ds)。フュージョン華やかりし頃の、米国西海岸での「純ジャズ」ライヴの記録である。

この ”ドリーム” セクステットは、当時の米国西海岸ジャズの一流どころを招聘していて、とても充実している。ライヴの記録を聴いてみて、米国西海岸ジャズの良き時代の音が、このライヴ盤で再現されている。
 

Terry-gibbs-dream-sextet_4am

 
しかも、このライヴ盤に収録されている曲は全てギブスの自作曲で占められている。1970年代後半のライヴなので、古き良き時代の「ジャズ・スタンダード曲」ばかりが演奏された方が、聴衆ウケが良いのではと思うのだが、そうでは無い。ライヴ盤から伝わってくる聴衆の様子が意外にも「盛り上がっている」のだ。

この「ギブスのオリジナル曲で占められている」ところに、フュージョン華やかりし時代でも、メインストリームな純ジャズは生き残っていたんやなあ、懐メロに成り下がっていなかったんやなあ、と妙に感心する。

ギブスの曲はどれもが非常にメロディックで叙情的。また、ギブスの曲は、演奏する側に立つと、コードの変更が演奏していてとても楽しいらしく、このライヴ盤でも、ギブスをはじめ、他のフロント管のメンバーが実にリラックスして楽しげに演奏している様子が伝わってくる。とても「往年の純ジャズ」らしいジャズがこのライヴ盤の中で、魅力的に演奏されている。

全く、一般に知られていないライヴ盤だと思うが、聴けば、内容的には、とても「往年の純ジャズ」らしいジャズが展開されていて、聴いていてとても楽しい。1970年代後半、米国西海岸で、こんなメインストリームな純ジャズが息づいていたなんて、ちょっと感動した。良い内容のライヴ盤だと思います。
 
 

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2022年6月12日 (日曜日)

ジム・ホールの小粋なライヴ盤

最近、まだ聴いたことの無い「小粋なジャズ盤」を求めて、ネットを徘徊している。徘徊するのは、音楽のサブスク・サイト、そして、Twitter。Twitterなどでは、様々な国の様々なジャズ者の方々が、ジャズ盤の情報を挙げている。「小粋なジャズ盤」の探索条件は、まず「パーソネル」、次に「録音年」、最後に「ジャケット」。この条件にネットの評論内容を確認して、聴くアルバムをチョイスしている。

この方法で「小粋なジャズ盤」であろう、という予想を立てて盤を聴くと、まず間違いが無い。的中率は90%程度。たまに「ありゃりゃ」という失敗チョイスもあるが、それはそれでご愛嬌。特に「パーソネル」は重要で、やはり一流どころのジャズマンで固められたアルバムには「外れ」は圧倒的に少ない。

Jim Hall『Grand Slam』(写真左)。2000年1月20-22日、マサチューセッツ州ケンブリッジのチャールズホテル「レガッタバー」での録音。Telarcレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jim Hall (g), Joe Lovano (ts, ss, al-cl), George Mraz (b), Lewis Nash (ds)。ギタリスト、ジム・ホールを中心としたグループ「グランド・スラム」のファースト盤である。

当ライヴ盤の録音時、70歳のプログレッシヴなギタリスト、ジム・ホールがリーダー。フロント管にサックスのジョー・ロヴァーノ、リズム隊に、ジョージ・ムラツのベース、ルイス・ナッシュのドラムという、ピアノレスのギター入り、フロント1管のカルテット編成。メンバーいずれも、職人芸を旨とするベテランばかりで、玄人好みのラインナップである。
 

Jim-hallgrand-slam

 
出てくる音は往年のハードバップ。ジム・ホールのプログレッシヴなギターが好調。唄う様に滑らかに、それでいてメリハリのあるアドリブ・パフォーマンスをガンガンに繰り広げる。録音当時70歳ですよ。音の芯の太さといい、切れ味の良いストロークといい、とても大ベテランの翁のパフォーマンスとは思えないダイナミックさである。

ロヴァーノのサックスも良い味を出している。クラリネットも良い感じで、演奏の主旋律をしっかりと吹き上げていて、聴いていて気持ちが良い。ロヴァーノのサックスは聴いていて「ああ、ジャズやなあ」と思わず口に出るほど、ジャジーでブルージーなサックスで、このロヴァーノのサックスが演奏全体の良いアクセントになっている。

そして、この盤ではリズム隊がかなり充実している。ムラツの重低音ベースがブンブン、ウォーキング・ベースを唸らせ、バンド全体のリズム&ビートを牽引する。そして、ナッシュの硬軟自在なドラムが、時に繊細に、時に大胆に、リズム&ビートを叩き出して行く。この優秀なリズム隊をバックにしているからこそ、ホールのギターとロヴァーノのサックスが自在にパフォーマンス出来るのだ。

我が国では人気が芳しく無いジム・ホールのギターで、ネットでもほとんどそのタイトルが挙がらないライヴ盤ですが、聴いてみると、意外や意外、硬派でメインストリームな純ジャズが展開されていて、演奏内容も充実していて、聴き応え十分。我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』では、最近発見した「小粋なジャズ盤」として、ちょくちょく聴いています。
 
 

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2022年6月11日 (土曜日)

イスラエル・ジャズらしい新盤

イスラエル・ジャズの特徴はと言えば、ネットを紐解くと「イスラエル、ジューイッシュ(ユダヤ)の哀愁を帯びたフレーズやメロディ、または近隣アラブ諸国〜北アフリカ地域の音楽的要素なども取り入れられており、結果生成された今までにないハイブリッドなジャズ・サウンドが特徴」とある。

そんな「イスラエル・ジャズ」。もともと若い頃から、米国以外の、エスニックもしくはアフリカンな「ワールド・ミュージック系」のジャズが好きで、イスラエル・ジャズが流行始めた1990年代後半頃から、機会があるにつけ、イスラエル・ジャズの盤を聴いてきた。特に、ECMレーベルからリリースされるイスラエル・ジャズの盤は、レーベル独特の深いエコーと相まって、その特徴が増幅され、聴き応えのあるものになっている。

Avishai Cohen『Naked Truth』(写真左)。2021年9月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p), Barak Mori (b), Ziv Ravitz (ds)。アヴィシャイ・コーエンは同姓同名で2人のジャズマンがいるが、この盤のリーダーは、トランペッターのアヴィシャイ・コーエン。全員イスラエル&テルアビブ出身のワンホーン・カルテットである。
 

Avishai-cohennaked-truth

 
全編、曲のタイトルに「Naked Truth」が振られていて、組曲風のアルバム構成になっている。演奏全体の雰囲気は、全曲、幽玄で哀愁感漲る、浮遊感と音の「間」が芳しい、ゆったりとした曲調。耽美的でリリカルなコーエンの「空間の拡がりと浮遊感溢れる」トランペットが、そんな哀愁感や音の陰りを的確に表現していく。このマイナー調の哀愁感とエスニック感が、全く以てイスラエル・ジャズそのものに感じる。

リズム隊のリズム&ビートは、ほとんどフリー・インプロヴィゼーションに近い、スインギーなビートとは全く無縁の自由度の高いもの。これが、コーエンの「空間の拡がりと浮遊感溢れる」トランペットに絡んで、少し憂いを帯びた薄暗い、空間の広がりと奥行きを感じさせる、独特な音世界を創り出している。これがこの盤の最大の個性。この盤はリズム&ビートでさえ幽玄であり、深遠であり、独特の浮遊感がある。

不思議な音の魅力が詰まったイスラエル・ジャズ盤である。浮遊感溢れる旋律の哀愁感、音の重なりは明らかにイスラエル・ジャズの雰囲気濃厚。アルバム全体の音の統一感も素晴らしい。スインギーなビートの効いたジャズとは全く対極にある、ほとんどフリーに近い、自由度の高いインプロビゼーション。実にイスラエル・ジャズらしい逸品であり、実にECMレーベルの盤らしい逸品である。
 
 

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2022年6月10日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・238

先日の6月9日は、ジャズ・ピアニストのケニー・バロン(Kenny Barron)の誕生日だったそうだ。Twitterなどでは、誕生日のお祝いで、ケニー・バロンのリーダー作がいろいろ紹介されていた。ケニー・バロンって意外と人気ピアノストなんだなあ、と改めて感心した。

というのも、癖が無く端正なところがバロンのピアノの個性。「これ」といった特徴や癖に欠けるが、平均的に素晴らしいプレイを聴かせてくれる、つかみ所の無い、意外と判り難いピアニスト。平均的に素晴らしいプレイを聴かせるところ、いわゆるピアニストとしての総合力の高さが個性、というのが僕の評価。Twitterで、ケニー・バロンのリーダー作をいろいろご紹介している人が多いのに、ちょっとビックリした次第。

Kenny Barron『Live At Bradley's』(写真左)。1996年4月3ー4日、NYのUniversity Placeのバー「Bradley's」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Barron (p), Ray Drummond (b), Ben Riley (ds)。ケニー・バロン、52歳の春の「寛ぎ」のライヴ・パフォーマンスの記録である。
 

Kenny-barronlive-at-bradleys

 
バロンは気合いが入ると、意外と尖った、シビアなピアノを弾く。切れ味鋭く、バリバリとバップなピアノを弾き回し、時にアブストラクトに時にフリーに展開する。Enjaレーベルでの諸作に、そんなバロンのピアノを聴くことが出来る。が、このライヴ盤では、バロンはとても「寛いで」いる。余裕を持って、じっくりとフレーズ展開のバリエーションを楽しむ様な、リラックスした弾き回しがとても良い雰囲気を醸し出している。リラックスした弾きっぷりにこそ、バロンの「総合力勝負の個性」が引き立つ。

そんな「寛いだ」バロンに対して、スインギーに緩やかにバッキングを仕掛けるレイ・ドラモンドのベースとベン・ライリーのブラシが心地良い。とても機微に富んだリズム隊で、バロンの寛ぎに合わせて、柔らかいリズム&ビートで対応し、バロンの弾き回しにバリエーションにクイックに反応する。じっくり耳を傾ければ傾ける程に、このリズム隊の懐の深さを強く感じる。とても良好なリズム隊。

バロンの寛ぎのパフォーマンスは聴き応え十分。難しいことは一切やっていないが、フレーズ展開のバリエーションの変化や、寛ぐほどに度合いを増す「千変万化」なタッチと弾き回し。総合力勝負のピアニスト、ケニー・バロンの面目躍如なライヴ盤である。「ジャケ買い」に十分耐えるジャケットも良い。実はこのライヴ盤、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の長年の「息の長いヘビロテ盤」である。
 
 
 

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2022年6月 9日 (木曜日)

北欧のピアノ・トリオの「今」

「ECM(Edition of Contemporary Music)」。創立者はマンフレート・アイヒャー。演奏家としての素養と録音技術の経験を基に、自らが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問うべく、自らのレーベルを1969年に立ち上げる。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。

21世紀に入っても、ECMレーベルの活動は衰えることは無い。北欧系、東欧系、イスラエル系の有望なジャズマンを積極的に発掘し、ECMらしいニュー・ジャズをリリースし続けている。マンフレート・アイヒャーは今年で79歳。ECMの総帥プロデューサーとしてまだまだ盛んである。

Tord Gustavsen Trio『Opening』(写真左)。2021年10月、スイスにての録音。ちなみにパーソネルは、Tord Gustavsen (p, electronics), Steinar Raknes (b, electronics), Jarle Vespestad (ds)。リーダーのピアニスト、トルド・グスタフセンは、ノルウェー出身のジャズ・ピアニスト。ECMからのトリオ作品としては5作目になる。
 

Tord-gustavsen-trioopening

 
墨絵の様な、漂うが如き、芯の入った音の広がり。ゆったりとした展開のインタープレイ。そこに、ECMレーベル独特の「限りなく静謐で豊かなエコー」がかかる。静謐かつ深遠にて耽美的な、そして、どこか一筋の光が差し込んで来る様な音世界。マイナーな和音の重ね方が「北欧ジャズ風」。北欧ジャズ独特の「不思議な開放感」が心地良く耳に響く。

グスタフセンの内省的で耽美的なピアノが映える。広がりと間に重きを置いた、ゆったりとした弾きっぷりだが、しっかりとしたタッチで音を重ねる。ノルウェーの実力派ベーシスト、スタイナー・ラクネスが、変幻自在なベースで、演奏のベースラインを際立たせる。同じくノルウェー出身のヤール・ヴェスペスタの繊細なスティック捌きと硬軟自在なブラシワークが演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支える。

叙情的でリリカルな旋律が淀みなく淡々と流れて行く、スイング・ジャズの対極にある演奏。時に出てくるマイナー調のゴスペルっぽい響きは北欧ジャズ独特の響き。この盤は、現代の北欧ジャズの「今」を、ECMレーベルのピアノ・トリオの「今」をじっくりと聴かせてくれる。
 
 

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2022年6月 8日 (水曜日)

2014年のホールズワースです。

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)が亡くなったのは、2017年4月15日。既に4年が経過したことになる。享年70歳は今では「若すぎる」。前年の2016年に16年振りのソロ・アルバムをリリースした矢先の出来事であり、2017年4月10日にサンディエゴで、彼の最後のギグを元気に演奏していたというのだから、余りに急すぎる「死」であった。

Allan Holdsworth『Jarasum Jazz Festival 2014』(写真左)。2014年10月5日、韓国ジャラサムのジャズフェスでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Jimmy Haslip (b), Gary Husband (ds)。ホールズワース、鉄壁のトリオ演奏。ホールズワースのオフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズの第5弾になる。

ホールズワースのエレギは、アームを駆使した捻れフレーズに、独特で流麗なレガート奏法をメインにバリバリ弾きまくるのだが、このライヴ盤でも同様な、テンションの高い、ハイテクニックで疾走感溢れる演奏が繰り広げられている。このライヴ録音当時、ホールズワースは67歳。このガンガンに高速フレーズを、アームを駆使してグチョングチョンに弾きまくるのだから凄い。還暦を過ぎた大ベテラン・ギタリストの仕業とは思えない。
 

Allan-holdsworthjarasum-jazz-festival-20

 
即興性を重んじたパフォーマンスなので、ジャズの範疇に留まっているが、このホールズワースのエレギは従来のジャズの範疇から、はみ出している。しかし、リズム&ビートはジャジーで、決してロックでは無い。加えて、ファンクネスは皆無。とにかく高速なカッ飛び&捻れフレーズを弾きまくる訳で、伝統的なモダン・ジャズの範疇の演奏では無い。いわゆるニュー・ジャズの範疇で、そこがホールズワースの個性であり、孤高の存在である所以である。

このライヴ盤でのホールスワーズのパフォーマンスは若かりし頃のそれと全く変わらない。こんな過激なエレギをフロントにした、バックのリズム隊、ハスリップのベース、ハズバンドのドラムについては、これまた「凄い」の一言。ホールズワースの最高レベルのパフォーマンスを向こうに回して、全くひけを取らない、対等に相対し、強烈なインタープレイを丁々発止とやりあう。このバンドの最高に近いパフォーマンスの記録である。

これだけ、先進的で過激、強烈な個性の下、アームを駆使した捻れフレーズ、独特で流麗なレガート奏法を弾きまくる、ジャズ・ギタリストにおける「代表的スタイリスト」の1人でありながら、生前はなかなか環境に恵まれなかったようだが、死後、リリースされ続けている「オフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズ」はどれもが素晴らしい内容。このアーカイヴ・シリーズのリリースによって、ホールスワーズのギターが再評価されることを強く願っている。
 
 

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2022年6月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・237

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズ・ギタリスト。ファンクネスやスイング感は皆無。リリカルで情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。ちょっとパット・メセニーを想起する面はあるが、基本的に、今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。

Gilad Hekselman『Far Star』(写真左)。2020年3月〜12月にテルアビブ、2020年12月〜2021年6月にNY、2020年9月にフランス、3ヶ所での録音。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman(g, key, b, whistle, tambourine, body percussion, voice), Eric Harland (ds), Shai Maestro (key), Ziv Ravitz (ds), Amir Bresler (do-production, ds, perc), Nomok (do-production & key), Nathan Schram (viola, violin), Alon Benjamini (ds, perc), Oren Hardy (b)。

ギラッド・ヘクセルマンの新盤になる。冒頭、口笛で始まる「Long Way From Home」から、哀愁感&寂寞感溢れる、マイナー調のリリカルで情緒豊か、エキゾチックな響き濃厚なサウンドに思わず耳を奪われる。今回の新盤では、ネイチャーな響きは薄れ、エキゾチック&エスニックなマイナー調の、不思議な浮遊感が際立つ哀愁フレーズがメインになっている。
 

Gilad-hekselmanfar-star

 
演奏の大本は、エキゾチック&エスニックなマイナー調の哀愁フレーズをベースにしたニュー・ジャズ風の展開だが、ところどころにフリーに傾いたり、アバンギャルドに走ったりと、意外と硬派でシビアな純ジャズ。過去のジャズの遺産の継承はあまり感じられない、プログレッシヴな、今まで聴いたことの無いフレーズがてんこ盛り。イスラエル・ジャズの個性である「音の広がりと間を活かした耽美的でリリカルな音世界」はしっかりと押さえられている。

3曲目の「I Didn’t Know」ではアコースティックギターを弾いているが、どこかノスタルジックでネーチャーな音世界が実に良い。この音の雰囲気は今までに聴いたことが無い。5曲目「Magic Chord」は奇妙なヴォイシングのコードの連続だが、耽美的で哀愁感溢れる雰囲気が独特。ラストの「Rebirth」は変拍子に乗って、耽美的でポジティヴな響きのエレギが芳しい。逆回転風の効果音も散りばめられ、実にミステリアスでプログレッシヴな音世界だ。

ギラッド・ヘクセルマンいわく「パンデミックに見舞われ、突然、この音楽を実現するために残されたのは、楽器とマイクとコンピューターだけだった」。コロナ禍によって、自室に閉じ込められたヘクセルマンが、先行きが見通せないまま、作り続けてきた音楽。様々な想いが交錯し、様々な想いが込められた楽曲。どこか敬虔でスピリチュアルな響きがするのは、そういう背景があったからなのだろう。現代ジャズの秀作の一枚である。
 
 

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2022年6月 6日 (月曜日)

メルドーの考える「プログレ」

今や、ブラッド・メルドー(Brad Mehldau)は、現代ジャズ・ピアノの代表格。「キース・チック・ハービー」のジャズ・ピアノの第2世代の後継、第3世代の筆頭と言っても良い。

しかし、メルドーのピアノは、歴史的に著名なスタイリストの要素を多角的に取り入れつつ、自らの個性を添付しているスタイルなので、その個性が見えにくい。しかし、総合力を武器とするピアニストでは無い。明らかに、現代ジャズ・ピアノのスタイリストの1人であることは確かである。

加えて、メルドーは、他のジャンル、特にロック&ポップス畑の楽曲に着目し「ジャズ化」するのが得意である。しかもその「ジャズ化」がほぼ成功を収めているのだから凄い。

以前の第2世代のピアニストにも、ロック&ポップス畑の楽曲の「ジャズ化」を目論んだケースもあったが、基本的に成功を収めた例は少ない。ロック&ポップスの楽曲の持つキャッチャーなメロディーを踏襲しすぎて、ジャズの本質である「即興性=アドリブ展開」を置き去りにした失敗例が多い。

Brad Mehldau『Jacob's Ladder』(写真左)。2022年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Brad Mehldau (p, key,sinth, etc.), Mark Guiliana (ds), Becca Stevens, Pedro Martins (vo), Joel Frahm (ss), John Davis (ds programming), Chris Thile (mandolin) etc.。ブラッド・メルドーがマーク・ジュリアナのサポートを得て制作した電子音アプローチの第3弾。

往年のプログレッシヴ・ロック(以降、略して「プログレ」)好きのメルドーによる、プログレからの音楽的インスピレーションをジャズに交えて、プログレの楽曲を「ジャズ化」した、実にユニークなリーダー作。プログレを「ジャズ化」するのだから、電子音アプローチを採用しているのか。なるほど、と至極納得である。
 

Brad-mehldaujacobs-ladder

 
メルドーは次のように語る。「ラッシュやジェントル・ジャイアント、エマーソン、レイク&パーマーらによるプログレは、ジャンルがもつコンセプト性、コンセプト的な部分、そして感情的な部分の幅を示唆している」。確かに、プログレはジャズに通じるものが多い。僕も高校時代はバリバリの「プログレ小僧」だったので、それが良く判る。

この『Jacob's Ladder』は、ジャズ側から見た「プログレ」。音の全体の雰囲気はジャズだが、演奏自体は「プログレ」そのものと言って良い位だ。2曲目「Herr und Knecht」は、まるでEL&P。ラストの「Heaven」については、耽美的なピアノ・フレーズに続いて,Yesの「Starship Trooper」の「Life Seeker」が出てくる。その他、Rush, Gentle Giant, Peripheryをカヴァーしている。

う〜ん、このメルドーの新盤、純粋にジャズ盤として取り扱って良いのやら(笑)。メルドーが表現する「ジャズの衣を着たプログレ」かな。プログレを聴き親しんだ「プログレ小僧」にとっては、ジャズというよりは、純粋にプログレに聴こえる。

そうか、演奏の底のリズム&ビートが「プログレの持つ変拍子の複雑なリズム」を取り入れているからか。そう、この盤のリズム&ビートは「ジャズ」とはちと違うのだ。これが、恐らく、妙な違和感の理由だろう。

しかし、現代ジャズ・ピアノの代表格のブラッド・メルドー、良い意味で「厄介な」アルバムをリリースしたもんだ。恐らく、ジャズ者の方々の中では賛否両論だろうなあ。僕は「これはアリ」です。僕の頭の中では「ジャズ ≒ プログレ」ですから。何も「プログレ」はロックでしかやってはいけない、なんて決まりも無いですしね。僕は楽しんで聴くことが出来ました。
 
 

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2022年6月 5日 (日曜日)

スムース・ジャズ化のT-SQUARE

1978年、「ポップ・インストゥルメンタル・バンド」としてデビューしてから44年。2021年11月、伊東たけし、坂東慧のユニット形態として活動を始めた「T-SQUARE alpha」。ポップでロックなフュージョン・ジャズから、ポップでロックなスムース・ジャズに変化してきた様だ。

T-SQUARE『WISH』(写真左)。2022年5月のリリース。そんな「T-SQUARE alpha」での初オリジナル盤。ちなみにパーソネルは、伊東たけし (sax), 坂東慧 (ds) が「T-SQUARE alpha」。そこにゲスト・ミュージシャンとして、様々なメンバーが参加している。「T-SQUARE alpha」は、素晴らしいサポートメンバーを交えたT-SQUAREという意味合いだろう。

そんなサポート・メンバーを思いつくままに列挙すると、まず、T-SQUAREの必須サポートである、田中晋吾 (b), 白井アキト (key), 佐藤雄大 (key)。ゲスト・ギタリストとして、渡辺香津美、是方博邦。20数年ぶり、T-SQUAREへのゲスト参加となった本田雅人 (sax), 松本圭司 (key)。

加えて、ホーン・セクションとして、エリック・ミヤシロ (tp), 西村浩二 (tp), 中川英二郎 (tb), 半田信英 (tb)。他にもいると思うが、とにかく、我が国の優れものジャズマン達が、こぞってサポート・メンバーとして参加しているから凄い。
 

Tsquarewish

 
もともと、デビュー当時からのT-SQUAREの音の志向が「ポップ・インストゥルメンタル・バンド」だったので、他の我が国のフュージョン・バンドと比して、ジャズ度は軽く、ポップス度、ロック志向が強い。今回の「T-SQUARE alpha」の音は更にそれが進んで、今までは辛うじて「フュージョン・ジャズ志向」の範疇に留まっていたが、今回は「スムース・ジャズ志向」に完全に変化した様な音世界である。

もともとフュージョン・ジャズというのは、エレギの音がそのフュージョン・バンドの音の「カギ」を握っていたケースが多く、T-SQUAREは「ギター・バンド」の印象が強かった。そんな「ギター・バンド」から、結成当時から不動のメンバーとして君臨していたギターの安藤正容が抜けたのだから、バンド・サウンドがガラッと変わっても不思議では無いのだが、案の定、今回「T-SQUARE alpha」の音はガラッと変わった。

以前は「ポップ・インストゥルメンタル・バンド」とは言っても、ジャズ度はほどよく漂い、演奏のフレーズには、どこかジャズ・ライクな捻りや「引っ掛かり」があったりして、ポップでロックな雰囲気はあるが、基本的にはフュージョン・ジャズの音志向を貫いていたと思う。

アルバムの出来はそつなく優秀、よく聴けば、T-SQUAREらしさは押さえられている。しかし、今回の「スムース・ジャズ志向」の耳当たりの良いサウンドは、恐らく「賛否両論」だろう。
 
 

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2022年6月 4日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・98

最近、リッチー・バイラークのリーダー作をいろいろ聴き直していて、この盤をかけた時、このバイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚について、当ブログで取り上げていないのに気がついた。いやはや驚いた。

Richard Beirach『Eon』(写真)。1974年11月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Richard Beirach (p), Frank Tusa (b), Jeff Williams (ds)。耽美的でリリカルで多弁なピアニスト、リッチー・バイラークの初リーダー作。

リッチー・バイラークはNY生まれ。当初、クラシック音楽とジャズの両方を学び始め、バークリー音楽大学に入学。1年後、彼はバークリーを離れ、マンハッタン音楽学校に移り、彼はマンハッタン音楽学校を音楽理論と作曲の修士号を取得して卒業した才人。確かに、バイラークのアレンジは「理詰め」の雰囲気が強い。

初リーダー作の冒頭に「Nardis」を収録したのが誤解のもと。「Nardis」は、耽美的でリリカルなバップ・ピアニストとされるビル・エヴァンスの十八番曲。我が国では、ビル・エヴァンスは「耽美的でリリカルな」ピアニストと誤解されることが多い。余りに短絡過ぎる評価だと思うが、その偉大なピアニストが十八番曲とした「Nardis」を弾くので、バイラークは今でも「耽美的でリリカルな」ピアニストと分類されることが多い。

が、この初リーダー作を隅々までしっかり聴き通すと、バイラークは単なる「耽美的でリリカルな」ピアニストに留まらず、とにかく「多弁」なピアニストであることが判る。この「多弁」がバイラークのピアノの最大の個性。
 

Richard-beiracheon

 
「耽美的でリリカルな」ピアニストの特徴として、「間」と「音の広がり」を活かしたインプロビゼーションが挙げられるが、バイラークはその反対。音符を敷き詰めた様に「多弁」なフレーズを弾きまくる。タッチは「耽美的でリリカル」。しかし弾きっぷりは「シーツ・オブ・サウンド」と言って良いくらい「多弁」。

しかし、その「多弁」な弾きっぷりが、テクニックが確かで端正、そして、タッチの響きが「耽美的でリリカル」なので、意外と五月蠅くない。特に速いフレーズにおける、バイラークのピアノのタッチと弾きっぷりは「クラシック・ピアノ」の雰囲気が色濃く反映されている。この弾きっぷりが五月蠅いならば、クラシック・ピアノの速いフレーズは全て「五月蠅い」ということになる。

バイラークは、単に「耽美的でリリカルで多弁なピアニスト」に留まらず、フリー&アヴァンギャルドな志向のピアノに走ったり、現代音楽風のピアノの様な無調の響きを醸し出したりするところが、チック&キース&ハービーなどの「新主流派世代」の括りのピアニストだと思う。故に、ニュー・ジャズが中心の、ECMレーベルのピアノ盤の中ではちょっと異質な雰囲気がする。

初リーダー作は、そのリーダーであるジャズマンの個性と特徴が如実に反映されている、というが、このバイラークの初リーダー作にもそれが言える。この盤を聴けば、バイラークのピアノが何たるか、をしっかり捉えることが出来る。バイラークの初リーダー作であり、代表作の一枚。名盤です。
 
 

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2022年6月 3日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・236

長年、ジャズを聴いていると、あまり名盤ばかり聴いていると、はっきりいって「飽きる」。ジャズの世界で「名盤」と呼ばれる盤は、1950年代〜60年代に集中している。いわゆる「オールド・スタイル」なジャズである。ジャズは長い年月を経て、進化&深化しているのだから、現代のジャズにも当然「優秀盤」は沢山ある。そんな「現代の名盤」候補となる優秀盤を見つけては聴き込む。これが、ジャズ盤鑑賞の醍醐味でもある。

David Kikoski『Surf's Up』(写真左)。2001年1月18日、NYはBrooklynでの録音。Criss Crossレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、David Kikoski (p), James Genus (b), Jeff 'Tain' Watts (ds)。中堅ピアニスト、デヴィッド・キコスキーのピアノ・トリオ盤。ベースにジェームス・ジーナス、ドラムにジェフ・ティン・ワッツ。リズム隊に一流どころを配して、聴き応えのあるトリオ・パフォーマンスを聴くことが出来る。

デヴィッド・キコスキーは、1961年米国はニュージャージ生まれのピアニスト。1980年代にはバークレー音楽院でジャズを学ぶ。いわゆる「正統な教育を受けた」ジャズ・ピアニストである。タッチはやや硬質で端正、流麗な右手。ひねったり、ねじったりしたところは一切無し。ダイナミックにバリバリ弾き進めるバップなピアノ。いわゆる「総合力で勝負する」タイプのピアニストである。
 

David-kikoskisurfs-up

 
「総合力で勝負する」タイプのピアニストのトリオ盤は、アルバム自体の「企画性」と収録した楽曲の「アレンジ力」が重要になる。今回のこのキコスキー盤は収録曲が面白い。1曲目がフランク・ザッハの「Oh No」、4曲目がデュラン・デュランの「A Noite Do Meu Bem」、6曲目がビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソン作の「Surf's Up」という風で、ポップス・ロック畑の有名曲をジャズ・アレンジしている。これがなかなか出来が良い。キコスキーの「アレンジ力」の高さをしっかりと感じることが出来る。

ミュージシャンズ・チューン系のスタンダード曲にも「アレンジ力」が発揮されている。チャーリー・パーカー作の2曲目「Cardboard」は、テンポが速くてゴキゲンな明るさでトリオが疾走。セロニアス・モンク作の3曲目「Four In One」はちょっとコミカルにお茶目にモンク・ライクな旋律を弾き回す。ジャッキー・マクリーン作の5曲目「Little Melonae」は、アップテンポでノリが良いが、どこか影のある印象的な表現。キコスキーの個性溢れる「アレンジ」が印象的。

リズム隊がしっかりしているので、この「総合力で勝負する」タイプのピアノ・トリオの演奏がとても魅力的に仕上がっている。そんな魅力的な演奏力のあるトリオが、小粋なアレンジを施されたポップス・ロック畑の有名曲とミュージシャンズ・チューン系のスタンダード曲を演奏する。これ、なかなか良い感じのピアノ・トリオ盤ですよ。硬派でストイックな現代のピアノ・トリオ盤ですが、どこか「小粋」な雰囲気漂う優秀盤です。
 
 

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2022年6月 2日 (木曜日)

マクブライドのビレバガ・ライヴ

クリスチャン・マクブライド(Christian McBride)は、現代のモダン・ジャズにおける最高峰のベーシスト。超絶技巧、歌心溢れるフレーズ、鋼の如く硬質にしなるようなウォーキング・ベース。どんな曲想にも適応する、どんな奏法にも適応する高いテクニック。ファースト・コール・ベーシストとして君臨するマクブライドも、今年で50歳。

Christian McBride『Live at the Village Vanguard』(写真左)。2014年12月5–7日、NYのヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Christian McBride (b), Steve Wilson (as, ss), Carl Allen (ds), Peter Martin (p), Warren Wolf (vib)。

2014年12月に2週間に渡って行われた、クリスチャン・マクブライド・グループのギグの未発表音源を収録したライヴ盤。2014年の年末最後の6日間に出演したクインテット(Inside Straight)のパフォーマンスが記録されている。フロント楽器として、サックスとヴァイブの2楽器が採用されたクインテット編成。

このライヴ盤を聴けば、現代のネオ・ハードバップの現状が良く判る。モーダルで限りなく自由度の高いインタープレイ中心の演奏。ルーツは、1950年代後半、マイルス・デイヴィスを中心としたメンバーが「モード・ジャズ」にチャレンジし、1960年代には「新主流派」として、当時のジャズ演奏のトレンドを牽引。

一度は沈滞した純ジャズだったが、1980年代中盤の「純ジャズ復古」のムーヴメントの中で現れ出でた、1960年代の「新主流派」の音が最良のジャズとして、1990年代、ウィントン・マルサリスを中心したメンバーが「新伝承派」として、モード・ジャズを深化させた。
 

Christian-mcbride_live-at-the-village-va

 
そして、21世紀に入って、難解になり過ぎた「新伝承派」の音に、1950年代のハードバップの親しみ易さ、ポップさを回帰させた「ネオ・ハードバップ」が主流となって現在に至る、なのだが、この「ネオ・ハードバップ」の好例が、このマクブライドのライヴ盤に詰まっている。

結構、難しいことをやっている割に難解には聴こえない、流麗でポップでキャッチャーな演奏がメイン。要所要所で、それぞれの楽器のロング・ソロがあって、高度なテクニックを披露するところは、ハードバップ時代の良き慣習の「踏襲」。

モーダルで限りなく自由度の高いインタープレイ中心の演奏をやっているのだが、1960年代の「新主流派」や、1990年代の「新伝承派」の音のクセや志向といったものを全く感じさせないところが、このクリスチャン・マクブライド・クインテットの凄いところ。

マクブライドのベースが、そんなモーダルで限りなく自由度の高いインタープレイ中心の演奏を自在にコントロールしているのが、ライヴ盤全般で聴いて取れる。マクブライドのグループ・リーダーとしての優れた手腕にほとほと感心する。グループ・メンバーの優秀性については「言わずもがな」。

今から7年ほど前の演奏になるが、古さは感じない。我が国では、あまり人気が芳しく無いマクブライドであるが、どうして、コンスタントに素晴らしい内容のリーダー作をリリースし続けている。当ライヴ盤も例に漏れず、現代のネオ・ハードバップを代表する素晴らしい内容の演奏がギッシリ詰まっている。 
 
 

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2022年6月 1日 (水曜日)

Now He Sings, Now He Sobs

チック・コリアのリーダー作の振り返り。リーダー作の第2弾。このピアノ・トリオ作は、チックの代表作とされる。極端な評論家は「最高傑作で、これ以降は聴くべきものはない」なんて書いていて、それはかなり言い過ぎやな、と思うのだけど、チックのキャリア初期の中での傑作ではあります。

Chick Corea『Now He Sings, Now He Sobs』(写真左)。1968年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Miroslav Vitouš (b), Roy Haynes (ds)。録音当時26歳、若きチックが、モーダルで自由度の高いピアノを弾きまくった傑作。モーダルで革新的なベースのヴィトウス、機敏で硬軟自在な職人ドラマーのヘインズとリズム隊には不足は無い。

このトリオは、録音当時、ピアノ・トリオの最先端を行く内容を誇っていたと思う。ビル・エバンスの確立した「3者3様のインプロビゼーション」を基本とし、メロディアスかつモーダルな展開を、限りなく自由度の高いレベルで実現し、端正でクールな即興演奏を繰り広げた、そんな内容で、当時の「新主流派」の先を行くものであった。

この盤は、以下のの5曲で聴くべきアルバム。LP時代はこの5曲のみで、CDになってから、8曲が追加されて、なんか訳の判らないアルバムになってしまった。『Now He Sings, Now He Sobs』を鑑賞する上では、この5曲のみで聴き切って欲しいと思う。

1. Steps - (with What Was)
2. Matrix
3. Now He Sings, Now He Sobs
4. Now He Beats The Drum, Now He Stops
5. The Law Of Falling And Catching Up
 

Now-he-sings_now-he-sobs

 
冒頭の「Steps - What Was」は、モード奏法を深化させた「新主流派」の演奏の最終形の様な演奏。モーダルなフレーズから、フリーに展開し、現代音楽的なアブストラクトな響きを醸し出す。特にトリオ全体の創造力豊かな「即興演奏の妙」が凄い。

2曲目の『Matrix』は、歌うような印象的なフレーズを持つ人気曲。作曲上手なチックの面目躍如。フレーズの響きは袖に「チック独特」のもので、この曲を聴くだけでも、チックの個性は既に完成されている。モードを追究した「新主流派」の音を軽く越えている。

3曲目のタイトル曲は、チックならではの黒いブルージーな感覚とチックお得意のスパニッシュ系なロマンティシズム溢れるフレーズが魅力的。そして、4曲目「Now He Beats the Drum, Now He Stops」とラストの「The Law of Falling and Catching Up」では、完全にフリーでアブストラクトな演奏に傾いていく。

LP時代のA面の2曲とB面の3曲の内容の落差に改めて驚く。このチックのリーダー作には、チックの2面性がしっかりと記録されている。ロマンティシズム溢れるモーダルで自由度の高い演奏と、完全にフリーでアブストラクトな演奏との2面性。しかし、どちらもしっかりと「即興演奏の妙」を追求しているところが、いかにもチックらしい。

このトリオ盤、チックを理解する上で、絶対に外せない盤である。聴き心地の良い「最高傑作」では決して無い。
 
 
 

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