Michael Weiss『Milestones』
様々なジャズ盤をリサーチしては聴いていると、これは良いなあ、と感心する、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌でそのタイトルがほぼ挙がることのない、いわゆる「隠れ優秀盤」が結構な数があることに気がつく。恐らく、21世紀に入って、ジャズの演奏レベルの平均値が上がっていると思われる。いわゆる「駄盤」「凡盤」の類が圧倒的に少なくなった、というか、ほぼ淘汰されている。
21世紀に入ってから、ネットを通じてジャズの新盤やリイシューの情報が豊富に入って来る様になり、そんな「隠れ優秀盤」に出会う確率が圧倒的に増えた。加えて、この5年位の「音楽サブスク・サイト」の充実で、そんな「隠れ優秀盤」について、気軽にストリーミング鑑賞が可能となって、ジャズ盤鑑賞のオールド・ファンとしては、この鑑賞環境の劇的向上については嬉しい限り。
Michael Weiss『Milestones』(写真左)。1998年4月の録音。SteepleChaseレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Michael Weiss (p), Paul Gill (b), Joe Farnsworth (ds)。そんなストリーミング鑑賞で出会った「隠れ優秀盤」。ピアニストのマイケル・ワイスがリーダーのトリオ編成。現代の「伝統的なバップ・ドラミング」の担い手、名手ファンズワースの名が見える。
マイケル・ワイスは1958年、米国テキサス州ダラス生まれ。今年で64歳、録音当時は40歳。初リーダー作『Presenting Michael Weiss』(Criss Cross)は1986年のリリース。以降、ジョニー・グリフィンのバンドで頭角を現している。Vanguard Jazz Orchestraの一員でもあり、現在まで、リーダー作は5作と意外と寡作のピアニストである。
マイケル・ワイスのピアノは、一聴すると、まずは「端正で破綻の無い堅実なピアノ」で、これも総合力で勝負するピアニストのタイプかなと思う。が、2曲目のボサノバ名曲「Wave」あたりから、左手は効果的なタイミングで入る「ブロック・コード」、右手は流麗でよく唄うシンプルな弾き回し。間を上手く活かしたアプローチも聴かれて、ワイスのピアノって、ハードバップな「レッド・ガーランド」や「アーマッド・ジャマル」のピアノを洗練して切れ味良くして、モーダルな味わいを付加した様なピアノだということが判ってくる。
まず、冒頭のタイトル曲「Milestones」は、マイルスの名曲ではない。John Lewis作の同名異曲。この演奏でも、左手は効果的なタイミングで入る「ブロック・コード」、右手は流麗でよく唄うシンプルな弾き回しが確認できるのだが、あまりに流麗なピアノなので、その個性が判り難い。特に「Love For Sale」や「Stella By Starlight」などの、超スタンダード曲において、その傾向は強い。
しかし、ジョビン作のボサノバ名曲「Wave」や、ミュージシャンズ・チューンである、マクリーン作の「Walter Davis Ascending」「 Little Melonae」や、ケニー・ドーハム作の「Buffalo」になると、特に効果的に入る左手のブロックコードに乗った、右手のシンプルな弾き回しが前面に出てくる。
とにかく「ながら」で聴いていると、端正で破綻の無い、堅実で流麗なピアノが耳に付くので、これって「カクテル・ピアノか」なんて思いますが、それは早合点。しっかりとスピーカーに対峙して聴き込むと、1950年代のガーランド&ジャマルの深化形、ネオ・ハードバップなジャズ・ピアノだということが判ります。テクニック、選曲、アレンジ、どれを取っても素晴らしい、現代のピアノ・トリオ盤だと思います。
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