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2022年5月の記事

2022年5月31日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・235

欧州では、1970年代からの「ニュー・ジャズ」志向の音世界がしっかりと継承されていて、耽美的でリリカルなジャズ・ピアノについては、欧州で深化している。ピアニストの個性としては、現代音楽風、現代クラシック風の透明度の高い、硬質なタッチで、耽美的でリリカルなピアノを志向するタイプが多い、

Vijay Iyer『Uneasy』(写真左)。2019年12月、ニューヨーク州マウントバーノンの「OktavenAudioStudio」での録音。ちなみにパーソネルは、Vijay Iyer (p), Linda May Han Oh (b), Tyshawn Sorey (ds)。現代ジャズの哲人、ニューヨーク州アルバニー出身の中堅ピアニスト、ヴィジェイ・アイヤーのピアノ・トリオの新作になる。

Vijay Iyer(ヴィジェイ・アイヤー)は、1971年10月生まれ。今年で51歳の中堅ピアニスト。リーダー作は、1995年の初リーダー作以来、20枚以上を数える。2014年からはECMレーベルからのリリースに絞り、今回のトリオ新作もECMからのリリースになる。もともと、アイヤーのピアノは、耽美的でリリカルなピアノが個性なので、ECMレーベルの「音のカラー」にはピッタリのピアニストではある。

今回のトリオは、ベースにマレーシア出身のリンダ・メイ・ハン・オー(1984年生まれ)、ドラムスにニュージャージー出身のタイショーン・ソレイ(1980年生まれ)という国際色豊かなトリオ。この新作の録音まで、1年間、活動を共にしてきたとのこと。トリオ演奏の息はピッタリ。硬軟自在、変幻自在、緩急自在なトリオ演奏が素晴らしい。

この新作については、メインはアイヤーのピアノなのだが、アイヤーのピアノは耽美的でリリカルだが、その展開はダイナミックでメリハリがあるのが個性。このダイナミズム溢れる耽美的でリリカルなピアノで、様々な曲想の楽曲を自由自在に弾き回す。
 

Vijay-iyeruneasy

 
ファンクネスは極小、耽美的でリリカルであるがダイナミズム溢れる弾きっぷりは、どこかチック・コリアやミシェル・ペトルチアーニを彷彿とさせる。が、アイヤーの弾きっぷりは端正でクラシック・ピアノのマナーに通ずるものがあり、米国出身でありながら、欧州ジャズ・ピアノの志向を根強く踏襲しているようだ。

静謐な雰囲気からスタートし、段々に盛り上がっていく1曲目「Children Of Flint」。後半、アイヤーのダイナミックなピアノが炸裂する。耽美的でリリカルなピアノが印象的な、2曲目「Combat Breathing」。ゆったりとした演奏のビートを支えるのは、リンダのベース。リズムを色彩豊かにするのは、タイショーンのドラム。

3曲目「Night And Day」は、少しかかったような、スピード感溢れる演奏。トリオのテクニックの高さをビンビンに感じる。4曲目「Touba」は、地に足が着いたような、アーシーで力感溢れるピアノ。魅力的なベースライン、キャッチャーでどこかエスニックな雰囲気を醸し出すメロディーライン。素敵な演奏だ。冒頭からの4曲で、このトリオ演奏のレベルの高さと歌心溢れる流麗な演奏内容が聴いてとれる。

我が国ではどうにも知名度が低いィジェイ・アイヤーだが、国際的には、次世代のジャズ・ピアノを担う中堅ピアニストの1人として認知されている。今回のトリオ新作も実に濃い内容で、トリオ演奏のレベルも高い。不思議と繰り返し聴きたくなるピアノ・トリオの秀作です。
 
 

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2022年5月30日 (月曜日)

チックの完成された初リーダー作

チック・コリア(Chick Corea)が亡くなって1年が過ぎた。僕が大好きなジャズ・ミュージシャンだったので、その急逝の報にはビックリした。というか大ショックである。しばらく元気が出なかった。その半年前には、リモートではあるが、元気な姿でNHKに出演していたのになあ。享年79歳。まだまだ活躍出来る年頃だったのになあ。

僕が大好きなジャズマンだったチック・コリアなので、このブログでは初期の頃に、リーダー作のレビュー記事を早々にアップしている。もう10年以上も前の事になる。中には拙いレビュー記事もあるし、もうちょっとシッカリと聴き込んで書き直したい記事もある。チック・コリアが亡くなって1年。これを機会に、チック・コリアのリーダー作を順に振り返ってみようと思った。

Chick Corea『Tones for Joan's Bones』(写真左)。1966年11月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p), Woody Shaw (tp), Joe Farrell (ts, fl), Steve Swallow (b), Joe Chambers (ds)。チック・コリアの初リーダー作である。この初リーダー作のリリース時には、まだ、マイルス・デイヴィスのグループには入っていない(参加は1968年後半)。

収録された4曲中の3曲、1曲目「Litha」、3曲目「Tones for Joan's Bones」と4曲目「Straight Up and Down」がチック作。この3曲については、チックの独特のフレーズ、和音、リズム&ビートがしっかり反映されていて素晴らしい出来である。チック・コリアの個性、いわゆる「チック節」が全開、何回聴いても、冒頭の数フレーズで、これってチックの曲かな、と判るほど。スタンダード曲の2曲目「This is New」についても、アレンジと弾き回しが明らかに「チック節」で固められていて、アルバム全体の楽曲演奏の統一感が素晴らしい。
 

Tones_for_joans_bones_2

 
他のジャズマンからしても、このチック作の楽曲は魅力的だったようで、「Tones for Joan's Bones」と「Straight Up and Down」は、コリアの初リーダー作の前、ブルー・ミッチェルが、コリアをフィーチャーしたアルバム『Boss Horn』に収録。「Litha」は、このコリアの初リーダー作の約半年後、コリア入りのスタン・ゲッツ・カルテットによって録音され、アルバム『Sweet Rain』に収録されている。

この初リーダー作にして、チックのピアノの個性は完成されている。後にお得意となる「ラテンな雰囲気のフレーズ」はまだ影を潜めているが、リリカルで耽美的、それでいて、硬質で力感溢れるタッチ、バップ・ピアノとは異なる、完全モーダルな弾き回し。そして、チックの紡ぎ出す音の重ね方が独特の響きを生み出している。モーダルな新主流派の音をスタート地点とした個性であり、以前の先達ジャズ・ピアニストのスタイルのフォロワーの雰囲気は微塵も無い。

バックのそれぞれのメンバーも、チックの音世界の創造に大きく貢献している。フロント2管を司るトランペットのウッディ・ショウとテナーのジョー・ファレル、そして、リズム隊のスティーヴ・スワローのベース、ジョー・チェンバースのドラム、それぞれがチックの個性と音世界を十二分に理解し、チックの音世界を現出している。このパーソネルのまま、チック・コリア・クインテットとして、パーマネント・グループ化しても良い位の素晴らしいメンバーである。

このチックの初リーダー作、意外に我が国では評価が芳しく無い。が、チックを理解する上で、この初リーダー作は外せない。ピアニストとしての個性、作曲の才能とセンス、リーダーとしてのグループ・サウンドのまとめ方など、既にそれらの非凡な才能がこの初リーダー作に溢れている。チック者としては、この盤は絶対に外せないのだ。
 
 

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2022年5月29日 (日曜日)

パイプオルガンとテナーのデュオ

ジャズは楽器を限定しない。旋律が奏でられるか、リズム&ビートが取れるか、でジャズ演奏に適応する。よって、ジャズの楽器選定には、この演奏形態はこれ、とか、この演奏トレンドの時はこれ、などという楽器の限定は全く無い。2人でやるジャズ「デュオ」においても、楽器を限定することは無い。

岩崎良子 & 竹内直『Meditation for Organ & Tenor Saxophone』(写真左)。2021年の作品。ちなみにパーソネルは、岩崎良子 Ryoko Iwasaki (Pipe Org), 竹内直 Nao Takeuchi (ts)。世にも珍しい、パイプ・オルガンとテナー・サックスによるデュオ演奏である。

ジャズにおいて、パイプ・オルガンを弾いたジャズマンは、ソロ演奏としてキース・ジャレットがいるが、以外にジャズでパイプ・オルガンを採用した盤を僕は知らない。

そもそもパイプ・オルガンは、教会やクラシック・コンサートホールに設置されている訳で、可搬性は全く無い。どこでも弾けるオルガンでは無い、加えて、演奏テクニックの難度が高い。よって、ジャズにおいてはなかなか採用されない楽器である。

岩崎はジャズ・ピアニストとパイプ・オルガン奏者の「二足の草鞋」を履くベテラン・キーボード奏者。竹内は「日本のコルトレーン」と評価も高いベテラン・サックス奏者。還暦を過ぎたベテランのジャズ・ミュージシャンが、異色のデュオに挑戦している。なお、収録曲は以下の通り。
 

Meditation-for-organ-tenor-saxophone

 
1.Goldbers Variations 【J.S.バッハ】
2.Wise one 【J.コルトレーン】
3.前奏曲とフーガイ短調 【J.S.バッハ】
4.My favorite things 【R・ロジャース】
5.Veni Emmanuel (久しく待ちにし) 【聖歌】
6.Naima 【J.コルトレーン】
7.Greensleeves 【聖歌】
8.Affter The Rain 【J.コルトレーン】
9.いと高きところにいます神にのみ栄光あれ 【J.Sバッハ】
10.Crescent 【J.コルトレーン】
11.Meditation for Organ 【A.ハイラー】
12.Amazing Grace 【聖歌】
 

バッハのジャズ化、聖歌のジャズ化、コルトレーンゆかりの曲のカヴァーがメイン。いずれも「スピリチュアルな」響きが独特な楽曲ばかり。パイプ・オルガンの雄壮で大らかな響きと、肉声の如く、エモーショナルな旋律を吹き上げるテナー・サックスの響きが思いのほかマッチして、スピリチュアルな雰囲気を増幅し、敬虔な雰囲気を醸し出す。

デュオ演奏をするのに、パイプ・オルガンである必然性は無いが、パイプ・オルガンもジャズに十分適応する楽器であることが良く判る。そして、管楽器との相性も良く、意外と「イケてる」デュオ演奏である。
 
 

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2022年5月28日 (土曜日)

ECMの次世代を担うピアニスト

ピアノ・トリオについては、21世紀に入って、演奏志向の「二極化」が進んでいるのではなかろうか、と思っている。

米国では「ハードバップの現代版」である「ネオ・ハードバップ」志向のピアノ・トリオが主流。それもピアノの個性としては「総合力で勝負する」タイプが殆どを占める。強烈な個性というよりは、コードやモード、ファンキー、ソウルなどのジャズ演奏のトレンドを総合して、新しい響きのハードバップを演奏する志向が強い。

欧州では、1970年代からの「ニュー・ジャズ」志向の音世界がしっかりと継承されていて、耽美的でリリカルなジャズ・ピアノについては、欧州で深化している。ピアニストの個性としては、現代音楽風、現代クラシック風の透明度の高い、硬質なタッチで、耽美的でリリカルなピアノを志向するタイプが多い、というか、バップなピアノを志向するピアニストは少数派。

そんな耽美的でリリカルな「ニュー・ジャズ」志向のピアノ・トリオについては、欧州ジャズ・レーベルの老舗中の老舗、ECMレーベルに多く存在する。創立者のマンフレート・アイヒャーの音の志向が「西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた、アコースティックな表現を基本とした耽美的でリリカルな音」。ECMレーベルは1970年代から、ずっと耽美的でリリカルなジャズ・ピアノをコンスタントに制作している。
 

Vermillion

 
Kit Downes, Petter Eldh, James Maddren『Vermillion』(写真左)。2021年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Kit Downes (p), Petter Eldh (b), James Maddren (ds)。新盤のキャッチコピーが「次世代ECMを担う、注目の英国発のピアニストのピアノ・トリオ作品」。英国出身のピアニスト、今年36歳のキット・ダウンズをメインに、スウェーデン出身のベーシスト、ペッター・エルドと同じ英国人ドラマー、ジェームズ・マドレンとが組んだピアノ・トリオの新盤。

明らかにECMレーベルのピアノ・トリオの「今の音」が詰まった優秀盤。欧州で脈々と継承される、耽美的でリリカルな「ニュー・ジャズ」志向のピアノ・トリオの「今」がこのトリオ盤に宿っている。冒頭の「Minus Monks」を聴けば、そこは既に「耽美的かつリリカル」な音世界。どこかエスニック風でもあり、どこか牧歌的でもあり。どこか、チックやキースの香りがしたり、バイラークやキューンの響きがしたり。しかし、個性の基本はダウンズのオリジナル。

時折、幽玄な音世界を漂ったり、硬質な現代音楽的な無調のインタープレイに走ったり、時に、フリーのマナーも見え隠れする、ネオ・ハードバップとは対極に位置する耽美的でリリカルな「ニュー・ジャズ」志向のピアノ・トリオ。そこに、しっかりとECMエコーがかかって、耽美的でリリカルな音世界に拍車をかける。

実にECMレーベルらしい、ピアノ・トリオ盤である。さすがECMレーベル、まだまだ健在である。
 
 

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2022年5月27日 (金曜日)

また、コルトレーンの未発表音源

ジョン・コルトレーンの人気は未だ衰えない様だ。またまた「未発表音源」が発掘され、正式盤としてリリースされた。「John Coltrane奇跡のライブ音源発見」「音楽史を揺るがす大発見」と、宣伝のキャッチコピーは凄い表現を採用している。ちょっと大袈裟過ぎやしないか、と感じつつ、思わず訝しく思ってしまう(笑)。

John Coltrane『A Love Supreme : Live In Seattle』(写真左)。1965年10月2日、ワシントン州シアトル、ペントハウスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane, Pharoah Sanders (ts). Carlos Ward (as), McCoy Tyner (p), Donald Rafael Garrett, Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds)。

コルトレーンの「黄金のカルテット」に、ファラオ・サンダース(ts) ~カルロス・ワード(as)~ドナルド・ギャレット(b) が加わった、計7名のセプテット編成。「至上の愛」は難度の高い曲と記憶するが、黄金のカルテットに3名のサポートを加えた7名編成で、分厚いアンサンブルが展開される。メンバーそれぞれの演奏力の高さが聴いて取れる。

演奏される『至上の愛』は、コルトレーンの生涯で、たった2回しか公のステージで演奏されなかったと伝えられる組曲。その組曲の幻の3回目のライヴ音源の発掘である。これまで『至上の愛』は、スタジオ盤と65年のフランスのジャズ・フェスティヴァルでのライヴ録音の2種類の演奏がリリースされていた。が、今回発掘されたシアトルでのライヴ演奏が録音されていたことは記録に残っていなかった、とのこと。

今回のライヴ盤の『至上の愛』は、4つのインタールードを挟み、4パートから成る組曲すべてが収録された貴重な音源。僕は、スタジオ録音盤の『至上の愛』しか聴いたことが無かったので、ライヴでの『至上の愛』は、スタジオ録音盤をどこまでライヴで再現しているか、が興味の中心だった。
 

John-coltranea-love-supreme-live-in-seat

 
スタジオ録音盤は、スタジオ録音であるが故、何度も取り直しが出来る。編集も比較的柔軟に対応出来る。よって、スタジオ録音盤の『至上の愛』は理路整然とした、リハーサルをしっかり積んだ、破綻の無い整った演奏だった。今の耳で聴けば、スピリチュアル性はしっかり担保されていたが、アヴァンギャルド性はちょっと後退気味な表現だった。

さて、今回のライヴ盤ではどうか。ちょっと録音が悪い分、大人しい感じの演奏に聴こえる。それでも、7人編成でこれだけ厚みのあるアンサンブルが取れるのは凄いこと。よくこれだけ難しい組曲を、ここまで理路整然とライヴ演奏出来るものだ、と感心する。さすがライヴ演奏だけあって、それぞれの演奏に個々の想いと個性が反映されていて、アヴァンギャルド性もしっかり担保されている。

録音バランスもあまり良く無く、エルヴィンのドラムがやたら前面に出てくる。主役=リーダーのコルトレーンのサックスがちょっと引っ込み気味なのが残念だが、音的には、しっかりとコルトレーンしていて、『至上の愛』はやっぱりコルトレーン率いる黄金のカルテットの演奏に限るなあ、と改めて思ったりする。

ライヴ音源なので、エルヴィンのドラム、タイナーのピアノ、ギャリソンのベースのロングソロもしっかり収録されている。しかし、これだけ、思いっ切り強烈な個性を持ったジャズマン達が、コルトレーン・ミュージックの志向を汲んで、コルトレーンの音世界を表現するのだから恐れ入る。どれだけの演奏テクニックを持っているんだか、感心することしきり、である。

このライヴ盤は、コルトレーン入りの黄金のカルテットによる『至上の愛』のライヴ演奏が聴けるところに最大の価値がある。録音の音質、バランスの問題はあるにせよ、生きているうちに『至上の愛』のライヴ演奏が聴けたことは幸いであった。ペントハウスのショーを録音した故ジョー・ブラジルと、50年後にテープを発見したスティーブ・グリッグスの2人に「感謝」である。
 
 

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2022年5月26日 (木曜日)

60年代「ブルーベック3」の快作

ジャズには多くの「発掘音源」や「未発表音源」がある。これはもう1970年代辺りから、有名盤のLPリイシュー時に「テイク違い」で収録されたり、CDでのリイシュー時には「ボーナス・トラック」として収録されたり、はたまた、未発表音源を1つのアルバムとしてリリースしたり、とにかく沢山の「発掘音源」や「未発表音源」が出回っている。

ただ、未発表音源を1つのアルバムとしてリリースする場合は、そのリーダーのジャズマンの「人気」が重要みたいで(つまり売れるかどうか、やね)、とにかく良く出るのは、ジョン・コルトレーン、ビル・エヴァンス、そして、マイルス・デイヴィス。この3人については、正式なレーベルからのリリースである「正式盤」として、未発表音源が良く出てきた。

『Dave Brubeck Trio : Live from Vienna 1967』(写真左)。1967年11月12日、ウィーンでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Dave Brubeck (p), Gene Wright (b), Joe Morello (ds)。

「スクエアに揺れる」変則スイング・ピアニスト、ディヴ・ブルーベックの正式な「発掘音源」。ブルーベックの正式な「発掘音源」は珍しい。が、米国、欧州では今でも人気があるピアニストなので、需要はあるのだろう。

1967年のこの時期のブルーベックは、今回のトリオに、アルト・サックスのポール・デスモントを加えた「最高のカルテット」で安定したパフォーマンスを発揮していた時期。資料によれば、参加予定だったポール・デズモンドが飛行機に乗り遅れるというアクシデントにより急遽、ピアノ・トリオ編成で公演することになったらしい。
 

Live-from-vienna-1967_dave-brubeck

 
ブルーベックのカルテットは、流麗でリリカルなデスモントのアルト・サックスがあるから評価出来る、なんていう暴論がある。今まで、デスモント抜きのトリオ編成での音源がほとんど出てこなかったので、何とも言えなかったが、このトリオ演奏を聴くと、このトリオの演奏レベルの高さ、トリオの個性の強烈さが浮き出てきて、このトリオだけでも成立する、素晴らしいトリオ演奏である。

加えて、ブルーベックはスイングしない、と評価の低い我が国のジャズ・シーンであるが、どうして、このライヴ盤を聴けば、ブルーベックは十分にスイングしている。独特の「間」と「スクエアに揺れる」スイングである。現代音楽の様な、硬質でエッジの立ったタッチが紡ぎ出すフレーズは、プログレッシヴであり、エモーショナル。ブルーベックは、オフ・ビートに乗って、スクエアに硬質にスイングする。

ジーン・ライトのベース、ジョー・モレロのドラムのリズム隊も、オフ・ビートに乗って、スクエアに硬質にスイングするブルーベックを好サポートする。時に独特の「間」に対応し、時に変則拍子を繰り出して、ブルーベックのピアノを鼓舞し、サポートする。

独特の「間」を活かしつつ、スクエアに硬質にスイングするブルーベックは、変則拍子に柔軟に対応する。現代音楽、現代クラシックに通じる様なピアノの弾きっぷり。この前衛性、この強烈な個性が、米国や欧州のジャズ・シーンで受ける所以だろう。

しかし、デズモンドが飛行機に乗り遅れるというアクシデントによって、ブルーベック、モレロ、ライトのトリオ演奏の素晴らしさが確認できたのだから、何が幸いするか判らない。とにかく個性溢れる、素晴らしいトリオ演奏である。こういう「発掘音源」は大歓迎である。
 
 

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2022年5月25日 (水曜日)

バンドネオンの純ジャズ盤です

ジャズに使用する楽器については、特に制限は無い。楽器の類であれば、ジャズは演奏出来る。旋律が弾ける楽器であれば、フロント楽器として、ソロを取ることも出来るし、打楽器であれば、リズム&ビートを担う「リズム隊」の一部を担うことも出来る。まあ、基本的に、クラシック音楽で使用する楽器は全てジャズでも演奏可能だし、民族音楽で使用する楽器も全てジャズでも演奏可能である。

Richard Galliano『New York Tango』(写真)。1996年6月11ー13日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Richard Galliano (bandoneone), George Mraz (b), Al Foster (ds), Biréli Lagrène (g)。リーダーのリシャール・ガリアーノはバンドネオン奏者。バンドネオン、ベース、ドラムのトリオにギターが入ったカルテット編成。

リシャール・ガリアーノはフランスのカンヌ出身。1950年生まれなので、今年で72歳になる。14歳でバンドネオンに関するアイデアを拡げるためにジャズを聴き始め、トランペット奏者のクリフォード・ブラウンのすべてのコーラスをコピーした、と語っている。「世界アコーディオン・キャップ・コンペティション」で2度優勝。ジャズの世界では1990年代になって知られるようになった。彼のタンゴとジャズのドッキングがユニーク。
 

New-york-tango

 
ジャズとタンゴの組みあわせは聴いていてとても興味深い。ガリアーノのバンドネオンは生粋の正統派なバンドネオンだが、このジャズ盤での他のメンバーは、ベースがジョージ・ムラーツ、ドラムスがアル・フォスター、ギターがビエリー・ラグレーンと、純ジャズ畑の中でも選りすぐりの3人である。ガリアーノもとてもジャズっぽいラインを弾いていて、このジャズ畑のメンバーとのインタープレイについても違和感は全く無い。これって、凄いなあ。

1曲目ピアソラの「Vuelvo Al Sur」は哀愁たっぷり。バンドネオンの音色の特徴を最大限に活かしていて印象的。3曲目のタイトル曲「New York Tango」は、タンゴらしい畳み掛ける様なリズム&ビートの曲ですが、アル・フォスターのドラムは思いっ切りジャジー。ジャジーなリズムのなかでのタンゴのインプロビゼーション。ガリアーノならでは、でしょう。ラストの「Three Views Secret」は、ジャコの名曲。原曲はトゥーツ・シールマンスのハーモニカが活躍するが、それをバンドネオンに置き換えて、情感豊かに弾き上げている。

バンドネオンも弾き手のテクニックとセンスがあれば、ジャズ演奏の主要楽器として問題無く適用できることを、リシャール・ガリアーノ自身が身を持って証明している。バンドネオンの持つ、哀愁感や切なさ感を強く感じさせる音色は、意外とジャズに合うなあ、とこの盤を聴いて改めて感心しました。ガリアーノのジャズ盤については、もっと掘り下げてみても良いなあと思った次第。
 
 

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2022年5月24日 (火曜日)

ナットとヴィンセントに外れ無し

「小粋な」ジャズ盤を求めて、まだ聴いたことの無い、「小粋な」内容そうなアルバムを発掘しては選盤している。基本的に、冒頭1曲目の演奏をじっくり聴いて、これは「小粋な」ジャズ盤として、2曲目以降を聴くか、1曲目で聴くのを止めるか、を判断している。逆に、パーソネルを確認して、これは「小粋な」ジャズ盤に違いない、と一気に聴き通す場合もある。

Nat Adderley Quintet『We Remember Cannon』(写真左)。1989年11月18日、スイスのアールブルク「Moonwalker Club」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Vincent Herring (as), Arthur Resnick (p), Walter Booker (b), Jimmy Cobb (ds)。リーダーのナット・アダレイのコルネットと、ヴィンセント・ハーリングのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。

このライヴ盤の録音年は1989年。純ジャズ復古が実現し、新伝承派やM-BASE派の硬派なネオ・ハードバップがトレンドになっていた時代。リーダーのナットは58歳。全盛期を過ぎて、大ベテランの域に差し掛かった頃。さすがに1980年代のナットのリーダー作は「平均点」レベルの盤が多いのだが、ヴィンセント・ハーリングとフロントを張ったアルバムは、どれもが充実した内容で外れが無い。
 

Nat-adderley-quintetwe-remember-cannon

 
このライヴ盤『We Remember Cannon』は、内容的には「キャノンボール・アダレイ」のトリビュート。ただ選曲を見渡して見ても、キャノンボールの自作曲は無く、ナットの自作曲も有名な「Work Song」1曲。他の6曲はスタンダード曲。どの辺が「キャノンボール・トリビュート」なのか良く判らないが、内容的には、白熱した素晴らしいライブ演奏が堪能出来る優れもの。

ヴィンセントのアルト・サックスが絶好調で、雰囲気的に「キャノンボール寄り」で吹きまくっている。この絶好調のヴィンセントのアルト・サックスに煽られて、ナットのコルネットもバリバリに吹きまくっている。良きフロント2管である。バックのリズム隊では、ジミー・コブのドラムが元気一杯。このライブ盤の時でコブは60歳。ドラムソロも交えて、バンバン叩きまくって、フロント2管を鼓舞している。

昔のハード・バップ期、ファンキー・ジャズ華やかなりし頃に戻った様な、熱気溢れるヴァイタルな演奏がとても良い。各曲のアドリブ・フレーズも、引用含めて「小粋な」ものが多く、聴いていて楽しい。やっぱり、ナットのヴィンセントとフロントを張った盤には外れが無い、と思っていたが、このライヴ盤についても「大正解」。「小粋な」ライヴ盤として、結構楽しめる内容です。
 
 

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2022年5月23日 (月曜日)

硬派な「映画音楽カヴァー集」

21世紀に入ってから、ジャズマンの「多国籍化」が進んでいるが、1970年代から80年代にかけて、欧州ジャズの台頭というトレンドがあった。もともと北欧では1960年代からジャズが浸透していたが、特に、1970年代から80年代にかけての欧州ジャズの台頭については、国で言うと「イタリア、フランス、ドイツ」だろう。特に、イタリア・ジャズの台頭は目を見張るものがあった。

Franco Ambrosetti『Movies』(写真左)。1986年の録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Franco Ambrosetti (tp, flh), John Scofield (g), Geri Allen (p, key), Michael Formanek (b), Daniel Humair (ds), Jerry Gonzalez (perc)。タイトル通り、イタリアのレジェンド・トランぺッター、フランコ・アンブロゼッティによる映画音楽作品集。

Franco Ambrosetti(フランコ・アンブロゼッティ)は、イタリア系スイス人。スイスのルガーノ(イタリア語圏)の生まれ。1941年生まれ。今年で81歳のレジェンド。1960年代以降は主にイタリアを中心に活動している。この『Movies』の録音当時は45歳、バリバリの中堅トランペッターである。

1950年代以降の映画音楽を中心に選曲されている様で、ジャズの中でも「ジャズ化」が極めて珍しい「The Magnificent Seven / 荒野の7人」や、ビートルズ映画の「Yellow Submarine」など、異色の映画音楽カヴァーである。「Yellow Submarine」など、フリーに傾いたり、限りなく自由度の高いモーダルな演奏に傾いたり、当時、ジャズの先端を行く「新伝承派」の音が色濃く反映されている。
 

Franco-ambrosettimovies

 
スタンダード化されている「Summertime」はリリカルでストレート・アヘッドな切れ味の良い演奏。「Chan’s Song」や「 Good Morning Heartache」などのバラード演奏は歌心溢れる耽美的なブロウ。

このアルバムには、個性的な、良い意味で「捻れた変態エレギ」ジョン・スコが参加していて,アンブロゼッティのストレートなトランペットとの絡みとユニゾン&ハーモニーがとても官能的。

NYの選りすぐりの中堅で固めたバック・メンバーとのインタープレイは実にスリリング。映画音楽作品集だからといって、安直な「イージーリスニング・ジャズ」にならないどころか、思いっ切りストレート・アヘッドな演奏は素晴らしいの一言。

この映画音楽作品集は、かなり硬派な、当時としても、新しい印象のハードバップな演奏になっていて、聴き応え十分。ジョン・スコを始めとするバックを支えるメンバーの好演も、アンブロゼッティの充実したインプロビゼーションに大きく貢献していて立派だ。

この盤、タイトルと収録曲の曲名を見て、イージーリスニング・ジャズな映画音楽のカヴァー集と思うなかれ。2曲目の「Summertime」辺りで、もう一度、頭に戻って聴き直すこと必至です。
 
 

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2022年5月22日 (日曜日)

真摯でポジティヴなピアノ盤です

「小粋な」ジャズ盤を聴こう、と、まだ聴いたことの無い盤の中で、有望な盤と当てをつけては聴いている。すると、意外とまだ聴いたことの無い盤が沢山あって、これがまた、意外と内容のある盤が沢山ある。21世紀に入って、新しく出てくるジャズ盤の「内容の平均点」が上がったのを実感する。駄盤、凡盤の類が圧倒的に少なくなった。

Bill O'Connell『A Change Is Gonna Come』(写真左)。May , 2021年5月13&14日の録音。ちなみにパーソネルは、Bill O’Connell (p, Rhodes), Lincoln Goines (ac-b, el-b), Steve Jordan (ds), Craig Handy (ts, ss), Pedrito Martinez (perc)。

1953年、NY生まれ、ラテン・ジャズ界の大御所のバンドへの参加や、ジャズ界の巨匠(チェット・ベイカーやソニー・ロリンズ、デイヴ・ヴァレンティン等)との共演歴も持つピアニスト、ビル・オコンネルのリーダー作。様々なフォーマット編成でコンスタントに新作を発表しているオコンネル。オコンネルのリーダー作には、どの盤にも一貫した「コンセプト」に基づいて録音されているのが良く判る。

オコンネルはバランスの取れた「作曲家、アレンジャー、楽器奏者」であり、ニュージャージー州のラトガース大学のニューブランズウィックキャンパスにあるメイソングロス芸術学校でジャズピアノを教えている「教育者」でもある。
 

Bill-oconnella-change-is-gonna-come

 
オコンネルのジャズは「人間皆平等でポジティヴ」がコンセプトの様に感じる。様々な人種の様々な幅広い音楽スタイルを取り込み、分け隔て無く、素晴らしいジャズにアレンジし、演奏する。そんなフラットな音楽性をメインとしたジャズがこの盤にも溢れている。

収録曲を聴けばそれが良く判る。ファンク、ブルース、サンバ、カリプソが中心の、幅広い音楽スタイルを取り込んだ明るい軽快なサウンド。オコンネルは、ピアノ自体は「総合力」を武器とした個性で、その「総合力」を全面的に発揮して、ポジティヴな曲調の演奏をメインとしている。これはオコンネルのピアノ・パフォーマンスの「ポリシー」なんだろう。

今回は、タイトルを見れば良く判る、「A Prayer for Us」「Chaos」など、最近の米国で起こった人種的偏見、政治的混乱、コロナ禍等の様々な問題を振り返った曲もあって、ジャズの持つ個性のひとつ「社会的問題の反映」を扱った演奏もあり、聴き応えがある。

オコンネルのピアノは「総合力」に富んだ流麗なピアノ。そのピアノをオコンネルの優れた「アレンジ力」が際立たせている。オコンネルのアレンジはどれもが優秀で、聴きどころ満載。何かの個性や特徴が突出したジャズ盤では無いが、ネオ・ハードバップを基調とした、真摯でポジティヴなピアノ盤として、聴き応えのある優秀作だと思う。
 
 

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2022年5月21日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・234

21世紀に入ってからだろうか。ジャズマンの「多国籍化」が進んでいるように感じる。20世紀は、米国が中心。米国ジャズがそのまま飛び火して、欧州ジャズとして進化し、和ジャズとして進化した。21世紀はアジアでの広がりは鈍いのだが、欧州での、特に東欧諸国とイスラエル中心に「多国籍化」が進んでいる。

Tigran Hamasyan『StandArt』(写真左)。2022年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、Tigran Hamasyan (p), Matt Brewer (b), Justin Brown (ds) のトリオがメイン。ゲストとして、フロント管の Mark Turner (sax, track 3), Joshua Redman (sax, track 4), Ambrose Akinmusire (tp, tracks 7, 8) が参加している。

リーダーのピアニスト、ティグラン・ハマシアンは、アルメニア出身。1987年生まれなので、今年で35歳。若手の時代を経て、いよいよ中堅の時代に入らんとする年頃。ハマシアンの作曲はアルメニアの民俗伝統に強く影響されているのだが、今回の新盤は、ハマシアンの自作曲は1曲のみ。他は、グレイト・アメリカン・ソングブックからとジャズマンによる「ミュージシャンズ・チューン」のスタンダード曲で占められている。
 

Tigran-hamasyanstandart

 
ハマシアンのスタンダード曲の演奏が興味深い。ハマシアンの作曲の「癖」が無い、他のジャズマンが演奏してきた、グレイト・アメリカン・ソングブックからとジャズマンによる「ミュージシャンズ・チューン」のスタンダード曲の演奏を聴くことによって、ハマシアンのピアノの音の個性がハッキリ判るのだ。ワールド・ミュージック・ジャズの雰囲気が薄まって、先進的なネオ・ハードバップ志向のピアノが前面に押し出ている。

まず、バド・パウエルやビル・エヴァンスといった、ジャズ・ピアノの「第1世代」からの直接の影響は感じられない。どちらかと言えば、チック・コリア、ハービー・ハンコックといった「第2世代」からの影響を強く感じる。コンテンポラリーな音の響きは、ブラッド・メルドーと同質のものと感じた。当然、コピーでは無く、そういった影響を基に、ワールド・ミュージック・ジャズ志向な個性をしっかり出しているから立派だ。

過去のジャズ・ピアノのスタイルをしっかり踏まえて、ハマシアンなりの、現代の最先端を行くジャズ・ピアノの個性とスタイルを確立しているのを、この新盤を聴いて強く感じる。ハマシアンのピアノが、アルメニアの民族伝統に依存している訳では無いこと、モダン・ジャズ・ピアノの正統な後継者の1人である、ということが、この新盤を通じて明確になった。アーティスティックな響きを湛えた優秀盤である。
 
 

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2022年5月20日 (金曜日)

正統派オルガン・トリオの好盤

コロナ禍になって、エンタテインメントの類が全て「自粛」の嵐に見舞われ、ジャズについても「もう暫くはジャズの新盤は出ないのではないか」と心配になった時期があった。もう新しいジャズは聴けないのでは、なんて悲観的になったこともあったが、昨年の半ば辺りから、感染防止対策を施した「新しい録音環境」が整備されて、徐々にジャズの新盤が出てくる様になった。

コロナ禍の中で、コロナに感染して命を落としたジャズマンもいた。かなり有名なジャズマンもいたりして、びっくりした。しかし、中堅からベテランのジャズマンも積極的に、コロナ禍がまだ残る中、感染防止をしっかりしながら、録音活動やライブ活動を再開している。心強い限りだ。有事にはエンタテインメントは不要、なんて酷い意見もあるが、有事にこそ、エンタテインメントは必要だと僕は思うのだ。

Larry Goldings, Peter Bernstein, Bill Stewart『Perpetual Pendulum』(写真左)。2021年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Larry Goldings (org), Peter Bernstein (g), Bill Stewart (ds)。

ニューヨークにて、2度目のパンデミックが回復の兆しを見せはじめ、人々に希望が満ちつつある時期に録音された、「オルガン+ギター+ドラム」の正統派オルガン・トリオでの作品。  
 

Perpetual-pendulum_1

 
オルガン担当のラリー・ゴールディングスは1968年生まれで、録音時は53歳。ギター担当のピーター・バーンスタインは1967年生まれで、録音時は54歳。ドラム担当のビル・スチュアートは1966年生まれで、録音時は55歳。大ベテランの域に達しつつある、同年代でのトリオ演奏。このオルガン・トリオ、そう言う意味で、バランスがとても良い。

洒脱で軽快なスチュワートのドラミングに先導&扇動され、オーバースイングぎりぎりに、思いっ切りスイングするギター、クールに熱気溢れる弾きっぷりのオルガン。この大ベテランの入口に立つ3人が、スリリングにダイナミックに「インタープレイ」を披露する。ネオ・ハードバップな「真っ直ぐ・ど真ん中」な、ストイックで正統派なメインストリーム・ジャズ。クールで熱いバトル。

収録曲は11曲。3人のオリジナルもバランス良く収録されていて聴いていて楽しい。スタンダード&ミュージシャンズ・チューンについても、ウエイン・ショーターのオリジナル曲「United」や、ゲイリ−・バーツの「Libra」、ジョン・ルイスの有名曲「ジャンゴ」や有名スタンダード「Come Rain or Come Shine」など、なかなか「小粋な」選曲。

この『Perpetual Pendulum』、現代ネオ・ハードバップの、正統派オルガン・トリオの好盤である。
 
 

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2022年5月19日 (木曜日)

よく唄う「小粋」なトランペット

「小粋」の意味=「どことなくさっぱりした気立てで、あかぬけがし、色気もただようこと」。最近、「小粋」なジャズ盤を探してきては聴いている。名盤の類を聴いていると、どこか疲れてくることがある。そんな時、小粋な盤を聴くと、意外とリラックスして、ジャズの楽しさ&良さを再認識できる。これが意外とあるから面白い。

Carmell Jones『Business Meetin'』(写真左)。1962年4月25日の録音。ちなみにパーソネルは、2つのユニットに分かれて、1つは、Carmell Jones (tp), Harold Land (ts), Frank Strazzeri (p), Gary Peacock (b), Donald Dean (ds)。

もう1つのユニットが、Carmell Jones (tp), Harold Land (ts), Bud Shank (as), Wilbur Brown (ts), Joe Splink (ts), Don Rafell (bar), Frank Strazzeri (p), Leroy Vinnegar (b), Ron Jefferson (ds)。

演奏の基本は「西海岸ジャズ(ウエストコースト・ジャズ)」。美しくアレンジされたブラスのユニゾン&ハーモニーの響き。そこに、スッと滑り込む様に、粋に入ってくる、リーダーのカーメル・ジョーンズのトランペット。流麗にリズミカルにフロント管をサポート&鼓舞するフランク・ストラゼリのピアノ。ピーコック&ヴィネガーのベース隊がかなり強力にベースラインを弾き上げる。地味だがドラムの2人は堅実。
 

Carmell-jonesbusiness-meetin

 
ウエストコースト・ジャズの「良いところ」がグッと詰まった好盤。特に、カーネル・ジョーンズのトランペットが良い音をしている。流麗かつブリリアント、力感もあり、テクニックも優秀。とても爽やかで、聴いていて気持ちの良いトランペット。「小粋」なトランペットとはこのことを言うのだろう。何とも端正でブリリアントな、そして、テクニックが確かなトランペットである。

調べてみれば、アイドルは「クリフォード・ブラウン(ブラウニー)」。至極納得である。確かに、ブラウニーばりの美しいトーン、ちょっと線が細いのが気にはなるが、それを補ってあまりある、気負いの無い、素姓の良い端正なフレージング。こんなに小粋で優秀なトランペットが地味な存在に甘んじているのが不思議なくらいである。

雰囲気的には西海岸ジャズというよりは、東海岸ジャズに向いたトランペットだと感じるのだが、その個性が故に、ウエストコースト・ジャズの特徴にバッチリとフィットするのだから、ジャズって面白い。ウエストコースト・ジャズの端正なアレンジに、カーメル・ジョーンズのトランペットがよく唄う。そんな「組合せの妙」を強く感じる。良い雰囲気の「小粋」なジャズ盤としてお勧め。
 
 

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2022年5月17日 (火曜日)

ビルの「ラス前」トリオ発掘音源

ジャズ・ピアノの最大のレジェンド、ビル・エヴァンス(Bill Evans)。ビルは、1980年9月15日に51歳で没している。今年で「没後42年」になるのだが、彼の人気は衰え知らず。今でもビルの人気は高く、ジャズ・ピアニストの中でも、ビルのフォロワーは数知れず。ドビュッシー、ラヴェルなどのクラシックに影響を受けた印象主義的な和音は、今ではジャズ・ピアノ演奏の基本の1つになっている。

故に、没後40年以上経っても、ビル・エヴァンスの未発表音源、発掘音源がリリースされる。というか、没後40年以上経って「まだあるのか」と呆れるくらいである。そんなに多くの「非公式録音」が行われていたのか、とも思うし、よく今まで所蔵されていたもんだ、とも思う。しかも、出てくる未発表音源、発掘音源の「音質」が、まずまず〜良好なのにも驚く。

Bill Evans『On A Friday Evening』(写真左)。1975年6月2日、カナダ・バンクーバー「オイル・キャン・ハリーズ」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Eliot Zigmund (ds)。

当時カナダのCHQMでラジオ番組のホストをしていたゲイリー・バークレイのために録音され、彼の人気ジャズ番組CHQMで放送されたもの。バークレイが自宅に持ち帰ったテープが、所有者が2回代わった後、今回、発掘音源としてリリースされた、とのこと。
 

Bill-evanson-a-friday-evening

 
ビル・エヴァンスの「ラス前」トリオのライヴ演奏。ベースにゴメス、ドラムにジグムント。1975年と言えば、ジャズ界はフュージョン・ジャズの流行前期。そんな「純ジャズの逆風の時代」に、これだけ内容の濃い、濃密なライヴ演奏を繰り広げていたなんて、やっぱりジャズって懐が広いなあ、と思う。発掘音源の音質が良いこともあって、エヴァンス〜ゴメス〜ジグムントの「ラス前」トリオのパフォーマンスの素晴らしさを追体験出来る。

まず、ビルのピアノが好調。バップなタッチで、印象主義的な和音とモーダルな展開をガンガン弾きまくっている。ダイナミックで迫力十分。ゴメスのベースは、そんなビルのバップなピアノに負けないベースラインを繰り出していて、これまた迫力十分。そして、ジグムントのドラムは、そんな迫力十分なビルのピアノとゴメスのベースを受け止めて、最適なリズム&ビートを供給し、演奏全体のビートを支え続けている。

このライヴ盤には、エヴァンス・トリオの代名詞のように愛奏されていた「Nardis」が入っているのだが、いい意味で余分な力が抜けた魅力的な演奏で、エヴァンス〜ゴメス〜ジグムントの「ラス前」トリオのポテンシャルの高さを感じさせてくれる。

エヴァンス〜ゴメス〜ジグムントの「ラス前」トリオも素晴らしかったんやなあ、と再認識させてくれる好ライヴ盤です。
 
 

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2022年5月16日 (月曜日)

Simon Phillips『Protocol V』

ホールズワースの初リーダー作や、マクラフリンのライブ盤を聴いていて、ふと、ギタリストがリーダーでは無いが、ホールズワースやマクラフリンの様な「ハードなクロスオーバー&ジャズロック」なバンドの存在を思い出した。ドラムのレジェンド、サイモン・フィリップスのソロ・プロジェクト 「プロトコル」である。

この「プロトコル」は、1988年から続いているのだが、これまでに4枚のアルバムをリリースしている。どれもが「ハードなクロスオーバー&ジャズロック」で、聴いていて、ホールズワースやマクラフリンの音世界を彷彿とさせる。そんなサイモン・フィリップスのソロ・プロジェクトが、今年の3月、前触れなく、5枚目のアルバムをリリースしたのだから、思わずビックリした。

Simon Phillips『Protocol V』(写真左)。2022年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Simon Phillips (ds), Otmaro Ruiz (key), Jacob Scesney (sax), Alex Sill (g), Ernest Tibbs (b)。

2017年の『プロトコルIV』以来、約5年振りとなる新盤。ドラマーのサイモン・フィリップスがリーダーのアルバムながら、内容は、エレギとサックスとキーボードがメインの「ハードなクロスオーバー&ジャズロック」である。

もともとはロック畑のドラマーで、マイケル・シェンカー・グループ、ホワイトスネイクやザ・フーといった錚々たるグループで活躍してきたサイモン・フィリップス。ベースのアーネスト・ティブスは、前作にも参加した、サイモン・フィリップスの良き相棒。
 

Simon-phillipsprotocol-v

 
キーボードのオトマロ・ルイーズは、元ジョン・マクラフリン・バンドのメンバー。サックスのジェイコブ・セスニーは、ロベン・フォードやクリスチャン・スコットと共演し、ポストモダン・ジュークボックスにも参加している逸材。ギターのアレックス・シルは期待の若手。

サイモン・フィリップスは、今年で65歳。もうレジェンド級のドラマーなのだが、この新盤の音世界はとことん「尖っている」。まず、ギターのアレックス・シルの、とにかくプログレッシヴ・ロックっぽく、ハードでほどよく捻れたクロスオーバー風のエレギが「尖っている」。

同じフロントを担う、ジェイコブ・セスニーのサックスも、プログレッシヴ・ロックっぽく、ハードで捻れたクロスオーバー風のサックスが「尖っている」。ルイーズのキーボードは、しっかりと「クロスオーバー・ジャズ」に軸足をしっかり置いた、ジャジーなもの。決して、プログレッシヴ・ロック志向では無い。

そんなエレギとサックス、キーボードをサイモン・フィリップスのドラムが鼓舞し、リードする。サイモン・フィリップスのドラムはジャズロック。ジャジーでロックっぽい。フィリップスのドラムがジャジーになると、演奏全体はクロスオーバー志向となり、フィリップスのドラムがロックになると、演奏全体はロック志向になる。演奏全体をフィリップスのドラムがコントロールしているのが良く判る。

さすが、サイモン・フィリップスは、英国ロンドン出身のドラマー。この『Protocol V』の音は、プログレッシヴ・ロックとクロスオーバー・ジャズとの境界が曖昧な英国ジャズロックの音世界そのものであり、それがこの「プロトコル」の最大の個性。僕はこの音世界が意外と気に入っていて、意外とこの『Protocol V』、緩やかなヘビロテ盤になっている。
 
 

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2022年5月15日 (日曜日)

全く無名のギター・デュオ盤

ジャズの特質の1つが「即興演奏」。そして「インタープレイ」。3人で演奏する「トリオ」、4人で演奏するのは「カルテット」、5人でえんそうするのが「クインテット」。大人数になればなるほど、演奏家それぞれの即興演奏の特徴、インタープレイの妙が判り難くなる。そう、即興演奏の特徴、インタープレイの妙が一番判り易い演奏フォーマットが「デュオ」。2人でジャズ演奏する形態である。

ジャズ演奏って、基本的に何でもアリ、なんで、使用する楽器も何でもアリ。デュオ演奏だって、この組合せが定番といった楽器の組合せは無い。2人でジャズ演奏するので、双方、違った楽器の方が良いかと思いきや、そうでも無い。

例えば「ピアノとギター」はどちらも旋律も弾けるしコードも弾ける、という似たような特徴を持つため、音がぶつかりやすい。逆に、同じ楽器でデュオをすると、演奏はし易いのだが、同じ楽器が故に演奏が単調になりやすい。

Joachim Schoenecker & Peter Bernstein『Dialogues』(写真)。2010年の作品。ちなみにパーソネルは、Joachim Schoenecker, Peter Bernstein (g)。ギタリスト同士のデュオ演奏になる。ピーター・バースタインは、1967年、米国NY生まれ。ヨアヒム・シューネッカーは、1966年、ドイツ生まれ。同年代の中堅ギタリスト同士のデュオになる。
 

Joachim-schoenecker-peter-bernsteindialo

 
ギター2本、つまり同じ楽器のデュオなので、まず、下手をすると演奏方法自体がぶつかる可能性がある。これは決め事を事前に申し合わせて、事前回避することが出来る。

逆に「同じ楽器が故に演奏が単調になりやすい」部分については、デュオ演奏する双方のギター・テクニックに依存する。演奏表現の引き出しが少ないと単調になる。しかし、この2人の同年代の中堅ギタリストについては、この「テクニックと表現の引き出し」については全く問題が無い。

収録曲を見渡すと「Gone With The Wind」「How Deep Is The Ocean」「Stella by Starlight」などのハードバップ時代の定番曲とオリジナル曲を織り交ぜた構成で、バップ定盤曲では、2人のギタリストのスタンダード曲の解釈とアレンジの妙を感じることが出来、オリジナル曲については、2人のギタリストの演奏テクニックを堪能することが出来る。

テンションの張った、丁々発止と「即興演奏とインタープレイ」を繰り広げる、白熱のデュオ演奏だが、その音は優しく、心地良くスイングする。双方のギタリストの出すフレージングが実に小粋で飽きが来ない。全く無名のデュオ盤ではあるが、この盤に詰まっているギター2本のデュオ演奏は『Dialogues』というタイトル通り、二本のギターで楽しんで対話している様な「ハイレベル」なもの。好盤です。
 
 

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2022年5月14日 (土曜日)

Michael Weiss『Milestones』

様々なジャズ盤をリサーチしては聴いていると、これは良いなあ、と感心する、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌でそのタイトルがほぼ挙がることのない、いわゆる「隠れ優秀盤」が結構な数があることに気がつく。恐らく、21世紀に入って、ジャズの演奏レベルの平均値が上がっていると思われる。いわゆる「駄盤」「凡盤」の類が圧倒的に少なくなった、というか、ほぼ淘汰されている。

21世紀に入ってから、ネットを通じてジャズの新盤やリイシューの情報が豊富に入って来る様になり、そんな「隠れ優秀盤」に出会う確率が圧倒的に増えた。加えて、この5年位の「音楽サブスク・サイト」の充実で、そんな「隠れ優秀盤」について、気軽にストリーミング鑑賞が可能となって、ジャズ盤鑑賞のオールド・ファンとしては、この鑑賞環境の劇的向上については嬉しい限り。

Michael Weiss『Milestones』(写真左)。1998年4月の録音。SteepleChaseレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Michael Weiss (p), Paul Gill (b), Joe Farnsworth (ds)。そんなストリーミング鑑賞で出会った「隠れ優秀盤」。ピアニストのマイケル・ワイスがリーダーのトリオ編成。現代の「伝統的なバップ・ドラミング」の担い手、名手ファンズワースの名が見える。

マイケル・ワイスは1958年、米国テキサス州ダラス生まれ。今年で64歳、録音当時は40歳。初リーダー作『Presenting Michael Weiss』(Criss Cross)は1986年のリリース。以降、ジョニー・グリフィンのバンドで頭角を現している。Vanguard Jazz Orchestraの一員でもあり、現在まで、リーダー作は5作と意外と寡作のピアニストである。
 

Michael-weissmilestones

 
マイケル・ワイスのピアノは、一聴すると、まずは「端正で破綻の無い堅実なピアノ」で、これも総合力で勝負するピアニストのタイプかなと思う。が、2曲目のボサノバ名曲「Wave」あたりから、左手は効果的なタイミングで入る「ブロック・コード」、右手は流麗でよく唄うシンプルな弾き回し。間を上手く活かしたアプローチも聴かれて、ワイスのピアノって、ハードバップな「レッド・ガーランド」や「アーマッド・ジャマル」のピアノを洗練して切れ味良くして、モーダルな味わいを付加した様なピアノだということが判ってくる。

まず、冒頭のタイトル曲「Milestones」は、マイルスの名曲ではない。John Lewis作の同名異曲。この演奏でも、左手は効果的なタイミングで入る「ブロック・コード」、右手は流麗でよく唄うシンプルな弾き回しが確認できるのだが、あまりに流麗なピアノなので、その個性が判り難い。特に「Love For Sale」や「Stella By Starlight」などの、超スタンダード曲において、その傾向は強い。

しかし、ジョビン作のボサノバ名曲「Wave」や、ミュージシャンズ・チューンである、マクリーン作の「Walter Davis Ascending」「 Little Melonae」や、ケニー・ドーハム作の「Buffalo」になると、特に効果的に入る左手のブロックコードに乗った、右手のシンプルな弾き回しが前面に出てくる。

とにかく「ながら」で聴いていると、端正で破綻の無い、堅実で流麗なピアノが耳に付くので、これって「カクテル・ピアノか」なんて思いますが、それは早合点。しっかりとスピーカーに対峙して聴き込むと、1950年代のガーランド&ジャマルの深化形、ネオ・ハードバップなジャズ・ピアノだということが判ります。テクニック、選曲、アレンジ、どれを取っても素晴らしい、現代のピアノ・トリオ盤だと思います。
 
 

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2022年5月13日 (金曜日)

中山英二 meets Don Friedman

今年の5月の千葉県北西部地方は、例年になく天気が悪い。とにかくスカッと晴れない。「五月晴れ」というが、今年の5月はこのスカッと晴れ渡った「五月晴れ」にお目にかかったことが無い。今日も朝から雨。外に散歩に出ることも叶わず、家に留まることになる。そういう時は「ジャズ」を聴く。しとしと静かに降る雨を見ながら聴くジャズは「デュオ」が良い。

中山英二 meets Don Friedman『Conversation』(写真左)。1986年4月18日、東京での録音。ちなみにパーソネルは、Eiji Nakayama/中山英二 (b), Don Friedman (p)。伝説の日本人ベーシスト、中山英二と、硬質で切れ味の良い「ビル・エヴァンス」ライクなピアノ、ドン・フリードマンのデュオ演奏。フリードマンが、中山とのデュオで日本各地を回るというツアーのために来日。その折にレコーディングされたのが本作。リーダーは中山英二。

中山英二は、エルビン・ジョーンズ率いるリズムマシーンに参加したり、1991には「中山英二 ニューヨークカルテット」を結成したり、ローランド・ハナとデュオ活動をしたりと、かなりの実績のある日本人ベーシスト。当ヴァーチャル音楽喫茶『松和』のブログでも、2013年3月14日のブログで、中山のリーダー作『AYA'S SAMBA / アヤのサンバ』を取り上げている。
 

Meets-don-friedmanconversation

 
ピアノが前面に出て、バックでベースがしっかり支えると言ったデュオ演奏ではなく、ベースとピアノが対等に渡り合った、素晴らしいデュオ演奏である。中山英二のベースは、骨太でソリッド。ブンブン重低音を鳴り響かせて、メロディアスなフレーズを連発する。フリードマンのピアノも好調。硬質で切れ味良く、耽美的でリリカルな個性的なピアノをバンバン弾きまくる。

それでいて、お互いにお互いの音をしっかり聴きつつ、それぞれの個性を前面に押し出したインタープレイを展開するのだから、意外と迫力がある。ピアノとベースのデュオ演奏で、この盤の様な、ベースとピアノが対等な立場に立ったインタープレイの応酬といった内容はあまり無いので、最初は聴いて耳新しくて「おおっ」と思う。しかし、じっくり聴いていると、ベースとピアノが対等な立場に立っている分、デュオ演奏として、その内容はとても「濃い」。

中山のベースを再評価するのに良い機会となるデュオ盤。フリードマンのピアノも申し分無い。このデュオは「即席」ではなく、1986年~90年の間に、4年間、6回のツアーを行い、加えて、この『Conversation』の翌年に、2枚のスタジオ録音盤を残している。とても息の合った、相性の良いデュオ。フリードマンは2016年に鬼籍に入っているので、このデュオの再会セッションの機会が潰えているのがとても残念である。
 
 

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2022年5月12日 (木曜日)

ジャマルの70年代ニュー・ジャズ

アーマッド・ジャマル(Ahmad Jamal)は「年代によって異なる顔を持つ」ジャズ・ピアニスト。1960年代終わり〜1970年代の作品は「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」が中心。1960年代終わり以前のジャマルのスタイルは「しっとりシンプルでクールなサウンド」だった。そして、1969年〜1970年辺りで、いきなり「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」に変貌する。

Ahmad Jamal『Live at Oil Can Harry's』(写真)。1976年8月13日の録音。ちなみにパーソネルは、Ahmad Jamal (p), Calvin Keys (g), John Heard (b), Frank Gant (ds), Seldon Newton (congas)。ギター・コンガ入りのピアノ・トリオ、クインテット編成での演奏。カナダ・バンクーバーの有名クラブ「Oil Can Harry's」でのパフォーマンスを収録した傑作ライヴ盤である。

1970年代のジャマルは「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」。このライヴ盤でも、ギターの存在が大きくクローズアップされて、どこか、クロスオーバー・ジャズの音志向に繋がるような、ビートの効いた、メリハリのある展開になっている。少なくとも、この演奏はハードバップ系の演奏内容では無い。1970年代ならではの「ニュー・ジャズ」な音世界である。
 

Live-at-oil-can-harrys_1

 
ECMを中心とする欧州の「ニュー・ジャズ」との相違点は「アーシー」な雰囲気の有無。このライヴ盤でのジャマル中心の演奏はとても「アーシー」。この「土臭い、泥臭い」音志向は米国ジャズ独特のものであり、特に米国南部にこの音志向が強い。ロックのおいても、米国南部中心のスワンプ・ロック、サザン・ロックの音志向が「アーシー」。

このライヴ盤での、カルヴン・キーズのエレギが、実にアーシーな響きを放っている。加えて、セルドン・ニュートンのコンガも、アーシーさを増幅させる。そして、ジャマルのピアノの左手のブロックコードが、どこかマッコイ・タイナーのハンマー奏法の響きと似たアーシーな響きを宿していて、ビートの効いた「軽めのジャズ・ファンク」に展開するところはスリリングだ。

1970年代半ば、ならではの「ニュー・ジャズ」。クロスオーバー・ジャズ志向の「アーシーで豪快なメリハリのあるサウンド」は実にユニーク。当時のウェザー・リポートやジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラに通じる部分もあり、意外と格好良い「イケてる」サウンドですが、このライヴ盤、知る人ぞ知る存在に甘んじているのが実に残念です。
 
 

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2022年5月11日 (水曜日)

「変わらない」という素敵な個性

Dexter Gordon(デクスター・ゴードン、愛称「デックス」)は、生涯、そのテナー・サックスのスタイル、奏法を変えなかった。そのスタイルを変えない、というところが最高の個性で、デックスのテナーは、どのリーダー作でも「大らかで誠実でどこか哀愁感漂う」テナーは変わらなかった。実に素敵な個性である。

Dexter Gordon『The Tower of Power!』(写真左)。1969年4月2日&4日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), James Moody (ts,track 1 only), Barry Harris (p), Buster Williams (b), Albert "Tootie" Heath (ds)。冒頭の「Montmartre」のみ、デックスとムーディーのダブル・テナー、他は、デックス1管フロントの「ワンホーン・カルテット」編成。

この録音時期には、デックスは欧州(主にパリとコペンハーゲン)に移り住んでいる(1976年には米国に戻っているが)。米国でのレーベル契約を、BlueNoteからPrestigeに切り替えていたため、この盤は、プレスティッジ・レーベルでの録音になっている。プレスティッジでの録音と聞くと、お得意の「ジャムセッション一発録り」を想起して、内容について不安になるが、この盤は大丈夫だ。
 

Dexter-gordonthe-tower-of-power

 
ピアノはバリー・ハリス、ベースはバスター・ウィリアムス、ドラムスはアルバート・ヒース。バックのリズム・セクションも純ジャズの人気が落ちてきた当時としてはかなり充実していて、デックスの好調さと併せて、実に気持ちの良いハードバップな演奏が繰り広げられている。

1曲だけだが、ジェームス・ムーディーとの2テナーでの演奏も良い雰囲気。ムーディーも男性的でよく歌うテナーが持ち味で、デックスとバトるかな、と思っていたら、実に相性の良いデュエットといった趣で、これがムーディーで聴き応え十分。ラストの「Those Were the Days」は「悲しき天使」の邦題で知られる当時のヒット曲。哀愁感溢れる美しいフレーズをデックスが情感豊かに吹き上げて、実に印象的。さすがデックスである。

「Stanley the Steamer」は、デックスの古いオリジナル曲だが、こういったシンプルなブルースを「大らかで誠実でどこか哀愁感漂う」テナーで吹き上げていくところなど、やはりさすがデックスである。この盤、デックスのリーダー作の中でも、あまり話題に上らない「地味盤」だが、出会ったら絶対に聴くべし、である。往年の良質なハードバップが、デックスのテナーがこの盤に詰まっている。
 
 

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2022年5月10日 (火曜日)

モントルーのマクラフリン集です

昨日、ジョン・マクラフリンのアルバムについて語った訳だが、ちょうど、もう一枚、マクラフリン関連のライヴ盤があることに気がついた。しかし、マクラフリンは、1942年生まれなので、今年で80歳の大台に乗る。21世紀に入ってからも、過激でダイナミックで尖ったエレギの「トップ集団」をキープしているのは凄い。

John McLaughlin & The Mahavishnu Orchestra『John McLaughlin: The Montreux Years』(写真左)。1984~2016年 歴代モントルー・ジャズ・フェスティヴァル出演時のライヴ音源を収録したベスト盤的内容。1984年のマハヴィシュヌ・オーケストラを率いての演奏から、1987年のパコ・デ・ルシアとのライヴ、そして新しい所では 2016年のフォース・ディメンションを率いてのライヴまでが収録されている。

マクラフリン自らが、膨大なライヴ音源の中から、選曲と編集を手掛けているらしく、演奏内容はどの曲もピカイチ。マクラフリン本人のエレギ・アコギはもとより、共演者のパフォーマンスもピカイチ。どの演奏も「どれだけ凄い人選をしてるん」と呆れるほどの、エモーショナルでダイナミックで尖り具合である。いかに、モントルー・ジャズ・フェスでの演奏は内容が濃かったか、である。
 

John-mclaughlin_the-montreux-years

 
マハヴィシュヌ・オーケストラ、シャクティ、スーパー・ギター・トリオ、ファイヴ・ピース・バンドなどの、その時代毎の先端を行くグループやユニットで活躍してきたマクラフリンだが、このモントルー・ライヴを聴いていると、これだけ個性の強いギターでありながら、バンドや共演者が異なれば、個性のベースはそのままに、しっかりとそのバンドの目指す音世界や共演者と目指す音世界に合わせて「音や弾き方」を微妙に変えているのには感心する。

特に「マハヴィシュヌ・オーケストラ」名義の演奏は、1970年代、一世を風靡したマハヴィシュヌでのエレギの音を忠実に再現している、というか、テクニック的に深化しているのが凄い。パコ・デ・ルシアとの共演では、あの「スーパー・ギター・トリオ」の時と同じ、アコギの音がブワーッと広がって、「ああ、これこれ、この音」と懐かしく思い出される。エレギ、アコギの音を聴いて、その時のバンドや共演者がすぐに浮かぶって、やっぱり凄い。

マクラフリンのギターの歴史を、モントルーのライヴ音源で振り返るって、やっぱり良い企画ですね。音もかなり良いし、演奏内容は充実してる、で聴き応え十分。やっぱり、マクラフリンって凄いな、って改めて思いました。脱帽です。
 
 

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2022年5月 9日 (月曜日)

未だ過激で捻れるマクラフリン

アラン・ホールズワースの初リーダー作を聴いていて、やっぱり、クロスオーバー系のジャズ・エレギって、ロックよりもバカテクで、ロックよりも尖っていて捻れていないとな、と思った次第。と同時に、やわなロック・ファンはついてこられない、過激でダイナミックで尖ったエレギの始祖「ジョン・マクラフリン」の名前が浮かんだ。で、ライブラリーを漁っていたら、好適な盤に出くわした。

John McLaughlin & The 4th Dimension『The Boston Record』(写真左)。2013年6月22日、米国ボストンの「Berklee Performance Center」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g), Gary Husband (key), Etienne M'Bappe (b), Gary Husband, Ranjit Barot (ds), Ranjit Barot (voice)。

2013年に行われノースカロライナ、ニューヨーク、トロントなど8カ所を廻ったツアーのボストン公演の演奏を収めたライブ盤になる。ギター、キーボードに、ベース、そして、部分的にダブル・ドラムの厚みのある編成。マクラフリンは1942年生まれなので、録音当時71歳(!)。往年のハードで捻れたエレギに磨きがかかって、大迫力のパフォーマンスである。とても70歳を過ぎた翁とは思えない。
 

John-mclaughlin-the-4th-dimensionthe-bos

 
キーボードのゲイリー・ハズバンドは「Allan Holdsworth Group」などで活躍、ベースのエティエンヌ・ムバッペは「The Zawinul Syndicate」などで活躍、そして、ドラムのランジット・バロットはジョン・マクラフリンから「ドラムの最先端の1つ」と評価されるインド人打楽器奏者。現代の最先端のエレクトリック・ジャズをやる上で、申し分の無いラインナップである。

マクラフリンは、若かりし頃、1960年代後半から1970年代の尖りまくった、他の追従を許さないハードなエレギに、約半世紀の年を経て、成熟と余裕、そして更なるバカテクをかまして、このライブで弾きまくっているから凄い。アドリブ・フレーズは大らかに尖って展開し、他の楽器とのインタープレイは更に過激に立ち回る。それでいて、聴き心地は良好で、決して耳に五月蠅くない。成熟と安定のエレ・ジャズである。

ホールズワースが鬼籍に入り、ジョンスコとパットがやや大人しくなって、過激でダイナミックで尖ったエレギ・ギターの担い手もマイナーな存在になりつつある昨今、この大御所マクラフリンが「この過激さ、この捻れ具合」は脱帽もの。スピリチュアルな側面も充実していて、まだまだ現役。逆に、若手ギタリストの奮起を促す様な、素晴らしいパフォーマンスの記録である。
 
 

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2022年5月 8日 (日曜日)

総合力勝負のチェスナットです

ハードバップ全盛期から多様化の時代に生まれた、いわゆる「新伝承派」のピアニストが気になっている。特に、ケニー・カークランド、マルグリュー・ミラー、サイラス・チェスナット、マーカス・ロバーツなど、強烈な個性は無いが、「総合力」で勝負するピアニスト達が気になっている。

というか、そう言えば、新伝承派のピアニストって、強烈な個性は無いが、「総合力」で勝負するピアニストばかりではないか。ハードバップから多様化の時代のジャズの演奏トレンドを「最良」として、それまでに無い新しい解釈や新しいアレンジを施して、ハイ・テクニックで演奏する。

演奏の雰囲気や響きはハードバップから多様化の時代からの借用であって、ピアニストとしての強烈な個性はあまり必要とされないのが「新伝承派」なので、どうしても「総合力」で勝負するピアニストが主流になるのは仕方の無いことか。でも、しっかり聴いていると、タッチとか手癖とか得意フレーズとか、「総合力」に隠れて、どこかに必ず個性が潜んでいるところが聴きどころと言えば、聴きどころ。

Cyrus Chestnut『Earth Stories』(写真左)。1995年11月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Cyrus Chestnut (p), Eddie Allen (tp), Antonio Hart (as), Steve Kirby (b), Alvester Garnett (ds)。サイラス・チェスナットの7枚目のリーダー作になる。エディ・アレンのトランペット、アントニオ・ハートのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。
 

Cyrus-chestnut_earth-stories

 
右手はシンプルで美しいシングルトーンで、明確に歯切れ良くメロディアス。左手は中低音部を幅広に使いつつ、重く分厚いコード演奏を繰り広げる。メロディーラインは典雅、しかしながら、重厚な左手によるコード弾きは限りなくソウルフル。演奏の雰囲気や響きはハードバップから多様化の時代からの借用ではあるが、そこに「それまでにない個性」を偲ばせている。

さすがチェスナット、「総合力」で勝負するピアニストとしての面目躍如。強烈な個性は無いが、ハードバップから多様化の時代からの借用をベースに、そこはかとなく「個性」を発揮しているところが「ニクい」。この辺りが「新伝承派」のピアニストを理解するポイントだろう。

米国においては、既にベテランの域に達していて実績も十分。しかしながら、我が国においては「決定的な代表作が未だに無い」という理由で人気はイマイチ。新伝承派のピアニストは、こぞって「総合力」で勝負するピアニストばかりなので、決定的な代表作に恵まれないのは仕方の無いこと。

それでも、リーダー作は水準以上の内容を保っていて駄作が無いので、どのリーダー作を選んでも、安心して聴くことが出来るのは素晴らしい。アレンジも十分な工夫がなされていて、ブルージーでありながらゴスペル的でストレートな響きが実に「ソウルフル」。聴いていて心地良い「新伝承派」なジャズである。
 
 

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2022年5月 7日 (土曜日)

ホールズワースの最高傑作です

現代においても、ジャズ・ギタリストには従来の伝統的なモダン・ジャズギター系と、クロスオーバー・ジャズより生まれ出でて発展した、クロスオーバー&フュージョン系のギターと2通りのスタイルに分かれる。どちらのスタイルも順調に深化を続けていて、有望な後継者もしっかりと出現していて頼もしい限りだ。

Allan Holdsworth『I.O.U.』(写真)。1979年の録音。1982年のリリース。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, vln), Paul Williams (vo), Gary Husband (ds, p), Paul Carmichael (b)。借金までして自主制作した初ソロ・リーダー作。ハードで心地良く捻れて、ウネウネ・フレーズを擁して訴求力抜群なホールスワースのエレギが心ゆくまで堪能出来る。

この盤がアラン・ホールズワースの正式なソロ・デビュー盤になる。この『I.O.U.』の前に、CTIにて録音した『Velvet Darkness』があるが、ホールズワースは「この録音はリハーサル・テイクで、正式にリリースを許可した覚えは無い」ということで、自身のリーダー作として認めていない。
 
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確かに『Velvet Darkness』は荒削りな内容になっているので、それは「そういう理由やったんや」と思わず納得した。極的には『Velvet Darkness』は、ホールズワースとして納得いくものだった様で、よく聴けば、多くのトラックが、この『I.O.U.』に、より洗練され、完成度を上げて収録されていることが判る。とにかく、ホールズワースの初ソロ・リーダー作であり、かつ最高傑作の誉れ高い名盤である。

自身がもてるテクニックをふんだんに盛り込みつつ、しっかりとアレンジされた、ストイックでクールな演奏は、初リーダー作とはいえ、かなりのレベルにある。ホールズワースのエレギは、アームを駆使した捻れフレーズに、独特で流麗なレガート奏法をメインにバリバリ弾きまくっていて爽快。英国のプログレ・バンドを渡り歩いただけあって、基本はプログレ風、そこにジャジーな要素が加わるユニークな「ジャズロック」風フュージョン・ギターで、実に個性的。

バックのベース、ドラムのリズム隊も、ホールズワースのハードなエレギにしっかり耐え、なかなか迫力あるリズム&ビートを供給している。トリオでこれだけ迫力のある音が出せるなんて、凄いなあ。迫力だけじゃ無い、テクニックも優秀、歌心もあって、申し分の無いクロスオーバー&フュージョン系のエレギを聴くことが出来る。ホールズワースの才能の全てを感じ取る事ができる「ホールズワース入門」盤としても、なかなかイケる盤である。
 
 

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2022年5月 6日 (金曜日)

フォーチュンの「トレーンの魂」

ジャズにおいて、テナー・サックスの最高峰と言えば「ジョン・コルトレーン&ソニー・ロリンズ」。ロリンズはまだ存命中だが、コルトレーンは、1967年7月、今から55年前、早々に鬼籍に入ってしまっている。

それでも、コルトレーンはテナー・サックスの改革者の1人として、未だにフォロワーは多数、現在、第一線で活躍しているテナー・マンは、必ず一度はコルトレーン・ライクなブロウにチャレンジしているはずである。

コルトレーンには存命中からフォロワーが多数いて、「ストレートなブロウのスタイルの踏襲」派、「フリー&スピリチュアル・ジャズへの傾倒」派、と大きく分けて2種類に分類されるだろう。どちらのフォロワーも、どこかで「コルトレーン・トリビュート盤」をリリースしていて、コルトレーン・ライクなブロウにチャレンジした成果を披露している。

Sonny Fortune『In The Spirit of John Coltrane』(写真)。1999年7月9ー10日の録音。邦題『コルトレーンの魂』。ちなみにパーソネルは、Sonny Fortune (sax), John Hicks (p), Santi Debriano (b), Ronnie Burrage (ds)。何故か良くわからないが、どこか過小評価されてきたサックス奏者、ソニー・フォーチュンの「コルトレーン・トリビュート盤」である。
 

In-the-spirit-of-john-coltrane_1

 
演奏曲はフォーチュン作が7曲、コルトレーン作が2曲。フォーチュンのオリジナルは、コルトレーン作の「Countdown」や「Moment's Notice」からコード進行を借用している様で、しっかりとコルトレーンの楽曲の影響下で書かれている。

収録曲全9曲の楽曲の全てが「コルトレーンの楽曲の雰囲気」で統一されているのはそのためだ。といって、フォーチュンのサックスは、コルトレーンの単なるコピーでは無いので、コルトレーンのリーダー作、といった感じは全くしない。

コルトレーンの音世界をフォーチュン独特のサックスで表現している。その成果は見事。やや軽めの切れ味の良いストレートなブロウ。シーツ・オブ・サウンドなど、高速ブロウでの確かなテクニック、バラード演奏時の歌心。フォーチュンならではのブロウは聴き応え十分。

ジョン・ヒックスのピアノ、サンティ・ディブリアーノのベース、そしてロニー・バラージのドラムによるリズム・セクションが大健闘。また、ゲスト・ミュージシャンも充実していて、コルトレーン作の「オーレ」には、ラシッド・アリとレジー・ワークマンが、フォーチュン作の「フォー・ジョン」にはバタ・ドラムスのスティーブ・ベリオとフリオ・コラッツォが加わっていて、素敵な演奏を繰り広げている。

ジャケ写については、現在、米国Shanachieから発売されている音源のジャケットはイラスト(写真左)、日本キングのパドルホイールから1999年に発売されたCDはフォーチュンの横顔のアップ(写真右)。どちらも雰囲気のある良いジャケです。
 
 

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2022年5月 5日 (木曜日)

ピーターソンのガーシュイン曲集

オスカー・ピーターソンは、ジャズ・ピアニストの代表格。その卓越したテクニック、スイング感、ダイナミズム、そして歌心。恐らく、他のピアニストに比して、テクニックはアート・テイタムと同等、スイング感は筆頭、ダイナミズムはバド・パウエルと同等、歌心はビル・エヴァンスに比肩する。それ故、彼についたニックネームが「鍵盤の皇帝」。

あまりに上手すぎて、あまりにスイングして、あまりにダイナミックな弾きっぷりが完璧すぎて一部で「嫌われる」、不世出なピアニストである。しかし、完璧すぎて嫌われ、スイングして「スイングの権化」と揶揄され、いやはや、我が国では、ちょっと可哀相なピアニストである。が、僕は、ピーターソンのピアノ、概ね好きですね〜。

『Oscar Peterson Plays George Gershwin』(写真左)。1952年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Barney Kessel (g)。ソングブック・シリーズの第2作目。ジャズの愛されたクラシック&ポップスの作曲家、ジョージ・ガーシュウィンとアイラ・ガーシュウィンが書いた人気曲をカヴァーした楽曲集。

後に1985年にリイシューされた『OscarPeterson The George Gershwin Songbook』(写真右)の原盤になる。演奏はトリオ形式。ドラムレスの「ピアノ・ベース・ギター」のオールドスタイルのピアノ・トリオでの演奏になる。これが、意外と洒落ていて、ガーシュインの小粋な楽曲を演奏するには最適の演奏フォーマットではないか、と思ってしまう位である。
 

Oscar-peterson-plays-george-gershwin_1

 
加えて、アレンジが良い。どの曲にも、こうくるだろう、という予想を覆す、嬉しい「小粋なアレンジ」が施されていて、聴いていてとても楽しい。この小粋なアレンジ、ガーシュインの持つ楽曲の可愛さ、美しさを引き立たせる様で、歌心溢れるピーターソンのピアノと相まって、どの曲も楽しく美しいトリオ演奏になっていて、聴き応えがある。

リズム隊も良い感じ。後に長年のパートナーを務める、レイ・ブラウンのベースが演奏のベースラインをしっかり捉えて、安定したビートを維持する。バーニー・ケッセルのギターは、リズム・キープの役割をしっかり果たしつつ、時に、ピアノと小粋なユニゾン&ハーモニーを奏でて、とっても良い感じの、歌心溢れるフレーズを展開する。

ジャズにおいて、ガーシュインのソングブックって、かなりの種類のアルバムが出ているが、このピーターソンのソングブックはアレンジが唯一無二と言って良い位、ユニークで優れたアレンジを施している。このアレンジがこの盤の最大の「ウリ」。ピーターソンのピアノの優秀性を横に置いても、ピーターソンのピアノの「歌心」が突出する、傾聴に値する「ガーシュイン楽曲集」である。
 
オスカー・ピーターソンのリーダー作と構えること無く、気軽に聴いて欲しいですね。この「ガーシュイン楽曲集」のピアノはとにかく「イケて」ます。
 
  
 

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2022年5月 4日 (水曜日)

フィニアスの短いけれど隠れ名盤

フィニアス・ニューボーン Jr. のリーダー作を聴き直している。フィニアスについては、1931年生まれ、1989年の57歳の若さで逝去するまで、本格的に活動出来たのは、1956年から1962年までと1974年から1979年の、併せて約10年間と短期間になる。しかしながら、フィニアスのリーダー作は20数枚あり、半数近くが、今でも音源が何とか入手出来るのは有り難い。

『Phineas Newborn Plays Again!』(写真左)。1959年5月28日、イタリアのローマでの録音。ちなみにパーソネルは、Phineas Newborn Jr. (p), Carlo Loffredo (b), Sergio Pisi (ds)。

録音当時はお蔵入り音源で、正式にリリースされたのは、1978年になる。ミルス・ブラザーズと欧州ツアーの合間、ローマを訪問した際、イタリアの現地ジャズマンとのトリオ演奏を記録したもの、とのこと。

フィニアスは、トリオ演奏とは言え、3者対等のインタープレイを展開するピアニストでは無い。どちらかと言えば、アート・テイタムやバド・パウエルに近く、ベースとドラムはあくまで「リズム隊」の扱い。リズム隊が優秀な場合は、それに触発されて、化学反応が起きることもしばしば。しかし、リズム隊が水準レベルか、それ以下の場合は、リズム隊にリズムだけをしっかりキープさせて、自分単独でバリバリ弾きまくる傾向がある。
 

Phineas-newborn-plays-again_1

 
このトリオ演奏の場合、後者の状態に近く、フィニアスは、リズム隊にかまうことなく、リズム隊に自由を与えることも無く、フィニアス自身でバリバリ、ピアノを弾きまくっている。が、これがフィニアスの個性であり、特徴なので、これはこれで良いかと思う。よって、このトリオ演奏では、フィニアスのピアノの個性と特徴が明確に感じ取れる内容になっている。

冒頭の「Night In Tunisia(チュニジアの夜)」を聴けば、フィニアスの硬質で、マイナーではあるが、ブルージーに傾かず、どちらかと言えば、ポジティヴで溌剌とした切れ味の良い弾き回しがとても良く判る。

4曲目の「Bag's Groove」などは、イントロのアレンジが決まらず右往左往するが、演奏が進むにつれ調子を取り戻し、切れ味良くブルージーで重厚なフィニアス節をバリバリ弾き回すところは聴いていて興味深い。

全収録時間は「28分」と短いが、フィニアスのピアノの個性をはっきり確認出来る好盤。ジャケットのイラストもなかなかで、意外とこの盤は「隠れ名盤」ではないか、と思っている。
 
 

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2022年5月 2日 (月曜日)

フィニアスの最盛期を捉えた盤

Phineas Newborn, Jr.(フィニアス・ニューボーン・ジュニア)。1931年生まれ。1989年、57歳の若さで鬼籍に入っている。彼のピアノは「驚異のテクニシャン」と表現される。オスカー・ピーターソンやアート・テイタムなどの様な流麗なタッチでは無い、ブロックコードの使い方など、パキパキ硬派なタッチ&フレーズが個性的。

『The Great Jazz Piano of Phineas Newborn Jr.』(写真左)。1961年11月21日と1962年9月12日、ハリウッドでの録音。ちなみにパーソネルは、Phineas Newborn Jr. (p), 1961年11月21日の録音が、Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)、1962年9月12日が、Leroy Vinnegar (b), Milt Turner (ds)。録音日毎に、ベースとドラムが変わる。

フィニアスの活動中期、一番の活動期最後のトリオ演奏になる。特に、1961年11月21日の録音は、ベースに重量級モーダルなベーシスト、サム・ジョーンズに、名手ルイス・ヘイズがドラムを担当していて、このトリオでのフィニアスのパフォーマンスが素晴らしい。

 

The-great-jazz-piano-of-phineas-newborn-

 

フィニアスの個性全開で、とても気持ち良くピアノを弾きまくっている。恐らく、ドラムのヘイズとの相性が良いのだろう。サム・ジョーンズのベースも、どちらかと言えば「ポール・チェンバース」寄りなので、所謂、例の名盤『We Three』のリズム隊に良く似ていて、フィニアスとしても相当に弾き易かったはずである。

逆に、1962年9月12日の録音では、リズム隊がちょっと弱くて、フィニアスは、リズム隊を置いてきぼりにして、自分のピアノを自分の世界の中でガンガンに弾きまくっている様に聴こえる。それでも、フィニアスのピアノだけ取ってみれば、それはそれは素晴らしいもので、フィニアスのピアノの個性が手に取るように判る演奏になっているから面白い。

「ジャズシーンにおけるゴッホ」と形容されるフィニアス。生前認められないという焦燥感から精神に異常をきたしていたとのこと、実はこの盤の後、リーダー作の作成のペースは落ちていき、同時に、それが故の「妖気漂う緊張感」にバラツキが生じ、パーフォーマンスのレベルは徐々に落ちていく。

「メジャーになりきれなかった天才」の最盛期の演奏が、この盤に刻み込まれている。傾聴に値する名盤である。
 
 

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2022年5月 1日 (日曜日)

欧州の新しい響きの純ジャズ

雑誌Jazz Lifeの「Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を眺めていて、つくづく思うのは、現代では、意外と欧州でメインストリーム系の純ジャズが深化している様に感じる。本場米国では、どちらかと言えば、静的なスピリチュアル・ジャズや、ラップなどのストリート・ミュージックとの融合を目指したコンテンポラリー・ジャズが、新しいトレンドとなっている様だ。

Emile Parisien『Louise』(写真左)。2021年6月、仏アミアンでの録音。独の「現代の重要レーベル」ACT Musicからのリリース。ちなみにパーソネルは、Emile Parisien (ss), Theo Croker (tp), Roberto Negro (p), Manu Codjia (g), Joe Martin (b), Nasheet Waits (ds)。リーダーのエミール・パリジーンは、1982年生まれのフランス出身のサックス奏者。

リーダーのパリジーンとギターのマニュ・コジア(46歳)はフランス出身、ピアノのロベルト・ニグロ(40歳)はイタリア出身。ドラムのセオ・クロッカー(36歳)、ベースのジョー・マーティン(51歳)、ドラムのナシート・ウエィツ(50歳)は3人とも米国出身。欧州+米国の混成セクステットになる。年齢的にも中堅が中心の充実のセクステットである。
 

Emile-parisienlouise

 
このセクステットの表現する音世界は、従来は米国の新伝承派やM-BASE派がやっていたメインストリーム系の純ジャズ。加えて、その音は懐古趣味なものでは無く、21世紀の現在のメインストリーム系の純ジャズの響きをしっかりと反映して、最先端の「メインストリーム系の純ジャズ」なパフォーマンスが展開されている。

宣伝のキャッチに「現代のヨーロピアン・ジャズとアメリカン・ジャズが有機的に溶け合う、スリリングなグローバル・ジャズ」とあるが、これが実に「言い得て妙」。この盤に溢れるモーダルな音世界は、欧州ジャズの環境だからこそ、深化したものである。モード・ジャズの老舗、米国ジャズの伝統のパワーと、欧州で深化した純ジャズのスタイリッシュさが相互作用を引き起こして、新しい響きの純ジャズを展開している。

全9曲(うち組曲が3曲)聴き応えのある演奏ばかりで感心する。意外と我が国のジャズ・シーンでは注目度は低いみたいだが、この盤に詰まっている最新の「メインストリーム系の純ジャズ」は一聴に値する。もしかしたら、メインストリーム系の純ジャズの深化については、21世紀は「欧州ジャズ」が担うかもしれない。そんな予感がする優秀盤である。
 
 

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