ブラッキーン最後のソロ・ピアノ
自分のアルバム・カタログを見渡していて、久々に、Joanne Brackeen(ジョアン・ブラッキーン)の名前が目に留まった。1938年7月26日、米国カリフォルニア州バンチュラ生まれ。今年で84歳の高齢になる。ジュリアード音楽院を卒業し、フレディ・ハバードのグループでデビュー。69年にはメッセンジャーズに参加。力強く前衛的、捻りが効いた柔軟でリリカルな弾き回しが個性。
Joanne Brackeen『Popsicle Illusion』(写真左)。2000年の作品。ジョアン・ブラッキーンのソロ・ピアノ盤になる。彼女のキャリアの中で、ソロ・ピアノ盤は数枚あるが、その最後の盤。彼女のディスコグラフィーを確認したら、この盤を最後に、ブラッキーンのリーダー作は途絶えている。このソロ・ピアノ盤については、彼女のピアノの個性が非常に良く判る、優れた内容になっている。
ブラッキーンのピアノは端正でタッチが強い。とても明快なピアノである。しかし、アレンジはちょっと「捻くれている」。素直に、ハードバップ風な、モード・ジャズ風なアレンジかと思いきや、変則拍子であったり、いきなりアブストラクトに走ったり、転調を繰り返したり。でも、それが実に自然に展開するのだから素晴らしい。この「捻くれている」ことが、ブラッキーンの最大の個性なのだ。
このソロ・ピアノ盤も、その「捻くれている」個性が随所に現れていて、ブラッキーンのピアノやなあ、と思わず感心するのだ。冒頭の「If I Were A Bell」、ストライド奏法で始まる。スタンダード曲をストライド奏法。と思いきや、4分の7拍子で演奏している。いや〜「捻くれている」(笑)。何か不思議な雰囲気の「If I Were A Bell」。
タイトル曲で自作の「Popsicle Illusion」は、ブラッキーンらしい複雑な曲。逆に、ビートルズの名曲カヴァー、2曲目の「Michelle」は、味わい深くリリカルなタッチで聴かせる。4曲目のスタンダード曲「From This Moment On」のダイナミズム溢れる弾きっぷりは、ブラッキーンならではのもの。7曲目の「Telavivision」も変拍子で硬派に攻めた演奏。演奏ラス前の「Prelude To A Kiss」は歌心満点なバラード演奏。
このソロ・ピアノ盤の録音当時、ブラッキーンは62歳。ジャズ・ピアニストとして、まだ老け込む年齢では無いし、隠遁する年齢でも無い。このソロ・ピアノ盤以降、ブラッキーンについてはリーダー作の無い状態が続いていて(現在、バークリー音楽院で教鞭を執っているようだ)、ちょっと惜しいなあ、という気持ちにさせてくれるソロ・ピアノ盤。最後に、このアルバムのラストに収録されている「Interview With Joanne(インタヴュー音源)」は「蛇足」ですね。
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