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2022年4月25日 (月曜日)

ジェリの多彩で小粋なトータル盤

中堅女性ジャズ・ピアニストの最近動向を探るなかで、ジェリ・アレン(Geri Allen)の名前を思い出した。多彩かつ個性的な女性ピアニスト「ジェリ・アレン」。男前な新伝承派モーダル・ピアノが身上で、硬派で明確なタッチで、何の揺るぎも無い、確信を持ったインプロビゼーションを展開する。2017年6月、既に他界しているが、彼女のリーダー作をちょっと聴きたくなった。

Geri Allen『Timeless Portraits and Dreams』(写真左)。2006年3月16-17日の録音。ちなみにパーソネルは、Geri Allen (p), Ron Carter (b), Jimmy Cobb (ds), Wallace Roney (tp), Donald Walden (ts), Carmen Lundy (vo), George Shirley (tenor) に、Dwight Andrews指揮の「The Atlanta Jazz Chorus」が加わる。ジョージ・シャーリーとは、メトロポリタンオペラで歌う最初のアフリカ系アメリカ人テノール歌手、とのこと。

ウォレス・ルーニーのトランペットとドナルド・ウォルデンのテナー・サックスが2管フロントのクインテット編成が基本。ボーカルものには2人のソロ・ボーカリストが、そして、伴奏の一部として、ジャズ・コーラス隊が加わっている。内容的には、ジェリ・アレン自作曲、スタンダード曲、そして、スピリチュアル志向の曲とが、上手く融合した「トータル・アルバム」風な内容。ストーリー性のあるアルバム作りになっている。

ジェリ・アレン、48歳のリーダー作になる。若い頃は、M-BASE派の代表的ピアニストの1人として、ブイブイ言わせていたが、さすが、アラフィフに差し掛かって、角の取れたリラックスしたピアノに変化している。ただ、弾き紡ぐフレーズは「キラリと輝く」小粋なものが随所に聴くことが出来て、優秀なテクニックと合わせて、十分に楽しめるピアノになっている。
 

Geri-allentimeless-portraits-and-dreams

 
リズム隊がロン・カーターとジミー・コブだが、これが、ジェリの「角の取れたリラックスしたピアノ」と相性が良いみたいで、良い雰囲気のトリオ演奏が展開されている。以前「ジェリはリズム隊によって、ピアノのアプローチが変わる」と感じたのだが、恐らく、ジェリは、このアルバムでは、ロンとコブに合わせた「ピアノの弾きっぷり」を選択したのだろう。

まず、ボーカル、コーラス抜きのクインテットの演奏が良い。コブのダイナミックではあるが、要所要所での繊細なドラミングが良い。モーダルな展開でのロンのベースラインはやはり素晴らしい。ルーニーのトランペットは2曲のみの参加だが、さすがのトランペットを聴かせてくれる。2006年時点での、先端を行く新伝承派なモーダルな展開が瑞々しい。

ボーカル、コーラス入りの曲の存在が気になるのだが、コーラスについては上手く使っている印象。2曲目の「Melchezedik」では、味付け程度のコーラスで、バックでさらっと歌っている感じが実に良い。他の曲でも、決して、ゴスペル・コーラスの様に「グワーッ」という盛り上がったコーラスにはなっていない。

ボーカルについては、ジョージ・シャーリーはテノール歌手なので、正統派テノールの如く、ブワーツと歌い上げてしまうのは仕方が無い。やはり、ジャズ盤の中では「テノール」な歌唱は違和感がある。特にCDではボーナスCDとして別扱いになっている「Lift Every Voice and Sing」については、ジャズ・アルバムとしては、あまり必然性を感じない。

だが、アルバムを通して聴けば、まずまずの満足感を感じる。「トータル・アルバム」風な、ストーリー性のあるアルバム作りが、ジェリの個性のひとつである「多彩さ」とマッチして、アルバム全体の完成度を高めているようだ。この盤の「多彩さ」の1つ、ライトで静的なスピリチュアル・ジャズ的な雰囲気は、確実に時代を先取りしている。
 
 

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