最近出会った小粋なジャズ盤・7
ジャズとビートルズとの関係は深い。もともとジャズは、その時代時代に流行った音楽のカヴァーや要素の取り込みが上手で、例えば「ラテン・ジャズ」「ボサノバ・ジャズ」などがその好例だと思う。
そして、ロック/ポップス史上最大のイノベーションだった「ビートルズ」についても同様で、ジャズはこぞって、タイムリーにビートルズの楽曲をカヴァーし、その音楽の要素を上手に取り込んだ。
よって、ジャズのニュー・スタンダード化したビートルズ曲も多数ある。「Norwegian Wood(ノルウェーの森)」「A Day in the Life」「A Day in the Life」「Yesterday」などが、ほぼスタンダード化していると思う。
しかし、ビートルズの楽曲って、キー進行が独特で、ブルーノートを踏襲していないので、ジャジーなアドリブを展開するのがなかなかに難しく、なかなかジャズらしい演奏にならない。アドリブ展開を含めた優れたアレンジが全て、といったところかな。
John Pizzarelli『Midnight McCartney』(写真左)。ちなみにパーソネルは、John Pizzarelli (g) をメインに、多くのコンテンポラリー・ジャズ畑のミュージシャンが参加。メインボーカルは、Michael McDonald。加えて、オーケストラがバックに入っている。演奏のアレンジはJohn Pizzarelli(ジョン・ピザレリ)自身が担当、オーケストラのアレンジは Don Sebesky(ドン・セベスキー)が担当している。
タイトルから判る通り、この盤は「ポール・マッカートニー」トリビュートの企画盤。全曲、ポール・マッカートニーがソロになってからの、ポール作の楽曲で占められている。ビートルズでは無い、アフター・ビートルズのポールの楽曲に焦点を当てたところ、これがユニーク。
但し、ポールの楽曲の特徴は、≒ビートルズなので、やはり、単純にジャズにはなりにくい。よって、やはりここも「アドリブ展開を含めた優れたアレンジが全て」がポイントになる。アレンジ担当は、リーダーでギタリストのビザレリが担当。さて、その手腕やいかに。
結論から言うと「大成功」。冒頭の「Silly Love Songs」、4曲目「Coming Up」、7曲目「Hi, Hi, Hi」、10曲目「Let 'Em In」等々、基本的に収録曲全曲、しっかりと「ジャズ化」されている。
主旋律のメロディーはアレンジするにせよ崩すこと無く、ポールの曲の主旋律の良さをしっかりと出し、アドリブ部に入って、ポールの楽曲の持つコード進行を捻ったり、裏返したりしながら、原曲の持つコード進行の妙を維持しつつ、ジャズらしいアドリブ展開を実現している。このアレンジには「まいった」。バラード曲でのセベスキーのアレンジもジャジーで良好。
『McCartney II』収録の「Coming Up」や、シングルでヒットした「Hi, Hi, Hi」がジャズになるなんて思いもしなかった。
やはり、ビートルズ関連の楽曲のジャズによるカヴァーはアレンジが勝負。ポールの楽曲も同様で、テーマがあって、アドリブがあって、テーマに戻る。そういった、ジャズとして当たり前のルーチンが実現してこそ、正統なカヴァーと言えるのではないか。
そういう点で、このピザレリの『Midnight McCartney』は大成功の部類。とにかく、小粋なアレンジが素晴らしい「ポール・マッカートニー」トリビュート盤です。
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