ロスネスの「温故知新」な好盤
久し振りに「ジョアン・ブラッキーン」のソロ・ピアノを聴いたら、他の中堅女性ジャズ・ピアニストの動向が気になった。ちょうど、小粋なジャズ盤はないかいな、と音源を物色していた矢先、まず「Renee Rosnes(リニー・ロスネス)」の名前が目に入った。おお、ロスネスか。しばらく御無沙汰やなあ、ということで、この盤を選盤。
Renee Rosnes『Manhattan Rain』(写真左)。2009年9月25-26日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Renee Rosnes(p), Steve Nelson(vib), Rich Perry(ts), Peter Washington(b), Bill Stewart(ds)。ベースにピーター・ワシントン、ドラムにビル・スチュワートと、実に玄人好みの味わい深いリズム隊がバックに控えている。これには、絶対に「触手が伸びる」。
1980年半ばからの「純ジャズ復古」のムーブメント以降、優れた女性ジャズ・ピアニストの頭角が相次いだが、このリニー・ロスネスなどはその先駆的存在。カナダ出身、1962年3月生まれなので今年で 60歳。還暦である。もうベテランの域に達した、ジャズ・ピアニスト才媛である。
ロスネスのピアノの展開の基本は「モード」。1960年代の新主流派の音作りを踏襲するものだが、その懐かしさの中に現代の新しい響きが織り込まれているところが、ロスネスのリーダー作の小粋なところ。所謂「温故知新」な音作り。
オリジナル曲の主旋律もアドリブ部の展開も、そのフレーズは美しく、ロスネスのリリカルで耽美的なピアノの面目躍如といったところか。リリカルで耽美的なところで留まらず、明快なタッチでキリッと締まった弾き回しは、現在でも活躍するロスネスの矜持を強く感じる。
フロント楽器に、テナー・サックスとヴァイブが入っていて、メリハリが効いた展開が小気味良い。ロスネスのオリジナルが4曲と、エリントン、ジョン・ルイス、ジョビン曲他で全9曲。
いずれも、ピアノ、ヴァイブ、テナー共に「歌心」を重視したパフォーマンスで統一されていて、聴き心地満点。リリカルで耽美的なパフォーマンスの中に、しっかりと現代的なモード展開をしつつ、過去の伝統的なジャズなかでのモード奏法も踏襲していて「温故知新」。
タッチも以前は「ハービー・ハンコック」のフォロワーかと思った時期もあったが、この盤でのタッチは「チック・コリア」にちょっと通ずるものがあると感じた。加えて、以前は内省的なピアノが得意か、とも思ったが、この盤では意外と陽気でポジティヴな展開もあって、着実にロスネスのピアノの表現の幅が広がっているのを感じる。
この盤の録音時点で47歳のロスネス。この歳の辺りから、恐らく、ロスネスのピアノの表現の幅が広がりだしたのかもしれない。そういえば、ロスネスが、ビ・バップの表現方法の中での「リリカルで耽美的な」ジャズ・ピアノが個性の「古いスタイルだが新しい」ピアニスト、ビル・チャーラップと結婚したのが2007年。意外とその辺が好要素として作用したのかもしれない。
何十回も聴き直す様な「歴史的な名盤」では無いが、時々、思い出しては聴き直す、小粋な内容の盤。ロスネスの現時点での個性を確認するのにも適した好盤である。
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