70年代のメアリー・ルー再評価
メアリー・ルー・ウィリアムス(Mary Lou William)は、ジャズ界のレジェンドたちからの敬愛を一身に集めた女性ピアニストの草分け、作曲・編曲家である。彼女の経歴を紐解けば、米国では著名で実績豊富な、ジャズ史にその名を留めるべきジャズ演奏家であることが判る。が、我が国では「我が国におけるマイナーなジャズ演奏家」の1人。
Mary Lou Williams『Free Spirits』(写真左)。スティープルチェイスのSCS1043番。1975年7月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Mary Lou Williams (p), Buster Williams (b), Mickey Roker (ds)。リーダーのメアリー・ルー・ウィリアムスが録音当時65歳、バックのリズム隊、ベースにバスター・ウィリアムス、ドラムにミッキー・ローカーという名手を従えてのピアノ・トリオの演奏になる。
メアリー・ルー・ウィリアムスの風貌、この盤のジャケットを見れば、何処か、映画女優の「ウーピー・ゴールドバーグ」に似ている感じがして、確か、端正でエレガントで流麗な、そこはかとなくファンキーで、ゴスペルチックな和音もところどころで聴くことができるピアノだった印象があって、この盤もそうかと思って聴き始めたら、これがまったく違う。
内容的には、クールでアーティスティックで、静的なモード・ジャズがメイン。音を厳選して、音と音の間を活かしつつ、どこか内省的な内容で、当時のメインストリーム系ジャズの最先端を行く印象。これにはビックリした。初めて聴いた時、思わずジャケットを見直した、そして、最後はCD本体のラベルの名前を見直した位である。
現代の「静的なスピリチュアル・ジャズ」に通じる響きもあり、フリーっぽくなるところも格好良く、トリオ演奏に漂う適度な緊張感が実に心地良い。欧州ジャズ独特のクリスタルでクラシカルな音の響きが、ウィリアムスの持つファンクネスをアーティスティックな響きに「浄化」している。ティモンズ作のファンキー曲「Dat Dere」が、趣味の良いファンキー・ジャズに変化しているのが面白い。
さすが、海外の評価の「ジャズ界のレジェンドたちからの敬愛を一身に集めた女性ピアニスト」であることを、この盤でしっかりと再認識させてもらった。録音当時、ジャズ界はクロスオーバー〜フュージョン・ジャズが流行していて、この盤の様なメインストリーム系の純ジャズは商売にならない、と敬遠されていた時期。いやはや、当時の欧州ジャズ、スティープルチェイスのジャズに対する懐の深さを思い知った。
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