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2022年1月の記事

2022年1月31日 (月曜日)

エリントンとブラウンのデュオ盤

パブロ・レーベルには、ハードバップ時代に「ありそうで無かった」メンバーのカップリングが多数ある。加わて、この人がこんな編成の演奏するの、とビックリする企画ものもある。フュージョン全盛期の1970年代に活発に活動したレーベルで、メインストリーム系のジャズ・レーベルからすれば「逆風」の時代ではあるが、純ジャズ・ベースの内容の濃いアルバムも多数リリースしているから立派。

Duke Ellington & Ray Brown『This One's for Blanton』(写真)。1972年12月5日の録音。パーソネルは、Duke Ellington (p), Ray Brown (b)。全編に渡って、ジャズ界きっての巨匠、デューク・エリントンとジャズ・ベースの「ヴァーチュオーソ」の1人、レイ・ブラウンとのデュオ演奏である。この組合せ、パブロ・レーベルでないと成立しないだろう。総帥プロデューサーのノーマン・グランツに感謝、である。

ジャズ界きっての巨匠、デューク・エリントンであるが、最晩年の1971〜73年の間、パブロ・レーベルに、自分のオーケストラを離れ、単独のピアニストとして、5枚のリーダー作を録音している。あまり注目されていないようだが、どのアルバムもピアニスト・エリントンの個性を十分に反映していて、聴き応えのあるものばかり。
 

This_ones_for_blanton

 
このレイ・ブラウンとのデュオ盤も内容は非常に濃い。パーカッシブで硬質なタッチで、音間に「黒いファンクネス」が漂い、ブルージーな右手の「スクエアに流麗な」旋律、という、エリントンのピアノの個性が手に取るように判る。加えて、レイ・ブラウンが、いかに「ヴァーチュオーゾ(卓越した技巧をもつ演奏家)」レベルのベーシストであったかが、手に取るように判る。

エリントンのピアノについては、音数は比較的少なく、バリバリ弾きまくる訳でもない。スクエアにスイングしつつ、間を活かした、流麗で「タメ」のあるアドリブ・フレーズは唯一無二。どこから聴いても「エリントン」な、どこから聴いても「エリントン」と判る個性的なピアノが、ブラウンの卓越したベース・ラインに乗って、乱舞する様はいつ聴いても鳥肌の立つ思い。

エリントンの唯一無二な個性的なピアノを、もっと聴きたかったなあ、と強く思わせる、素敵な内容のデュオ盤。出しゃばらず、エリントン御大を素晴らしいテクニックのアコースティック・ベースでサポートするレイ・ブラウンも素敵。それまでありそうで無かったパブロのデュオ盤。ジャケットもまずまずで、おすすめの名盤です。
 
 
 
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2022年1月30日 (日曜日)

キースのクラシックとの融合音楽

キース・ジャレットが体調不良を理由に、2017年2月15日、NYのカーネギー・ホールで行われたソロコンサートを最後に活動を休止してから5年になる。その間、2018年に脳卒中を2回発症、2020年10月の時点で左半身が部分的に麻痺しており、そのためピアノ演奏に復帰できる可能性が低いことを明らかにしている。

キースが「引退」状態になって寂しい限りである。ふと、キースのピアノの個性について再確認したくなった。キースは活動期間後半の「スタンダーズ・トリオ」ばかりがクローズアップされるが、キースのピアノは「スタンダーズ」だけでは無い。かなり多岐に渡る個性で、それぞれが「優れた個性」。そんな、それぞれの「優れた個性」があちらこちらに突然に顔を出す。その「優れた個性」を確認するのに、ちょっと面倒くさいピアニストである。

Keith Jarrett『Arbour Zena』(写真左)。邦題『ブルー・モーメント』。1975年10月の録音。全曲キース・ジャレットのオリジナル。オーケストラとの共演。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Charlie Haden (b) に、Stuttgart Radio Symphony Orchestraがバックに着く。キースの「いくつかの個性」と交響楽団との共演。

ここでのキースの音世界は、リズム&ビートと即興演奏をキーワードに「ジャズとクラシックの融合」。ジャズ側にはドラムがいない。演奏全体の定形なリズム&ビートは交響楽団に任せている。つまり、ジャズ演奏における「リズム・セクション」を交響楽団が担っている。
 

Arbour-zena_blue-moment

 
そんな交響楽団をバックに、キース率いる「ジャズ側メンバー」は、ジャズお得意の即興演奏を繰り広げるわけだが、その即興部分のリズム&ビートは、ヘイデンのベースが担っている。この交響楽団とヘイデンのベースとの「リズム&ビートの役割分担」が絶妙。この両者のリズム&ビートが明らかに「ジャズ」なのだ。

演奏全体のイメージは「キースの考える欧州ジャズ」。印象派クラシックの様に耽美的で叙情的で幽玄、そして流麗。この雰囲気は、キースの「ヨーロピアン・カルテット」に通じる音世界。ガルバレクのクリアで切れ味の良いサックスがその印象を更に強くする。そして、時々、ジャズ側メンバーと交響楽団が一体となって、時々「アーシーでゴスペルチック」なジャズを展開。これがまた、キースのピアノの個性。

2曲目の「Solara March (dedicated to Pablo Casals and the sun) 」を聴けばそれが良く判る。10分弱の長尺な演奏だが、前半は耽美的で叙情的で幽玄、そして流麗な「ヨーロピアン」な演奏が続く。そして、この演奏の半ば辺り、キースのピアノが「荒城の月」の出だしの「春、高楼の〜」の様なフレーズを叩き、それを合図に「アーシーでゴスペルチック」なジャズ演奏に展開。これが、とにかく「見事」。

この盤、キースの音楽性の幾つかが効果的に絡み合って、素晴らしい「ジャズとクラシック」の融合音楽を成立させている。これは、ECMレーベルにしか出来ない盤。総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの敏腕も見逃すわけにはいかない。この盤は、ECMとキースの個性とがガッチリ組んだ、新しい響きを湛えた「ジャズ」である。
 
 
 
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2022年1月29日 (土曜日)

Joe Pass『For Django』です

昨日、Herb Ellis & Joe Pass『Two for the Road』についての記事を載せた訳だが、ふと2人それぞれの単独リーダー作が気になり始めた。まずは、ジョー・パス(Joe Pass)の単独リーダー作を漁り始める。

ジョー・パスの単独リーダー作と言えば『Virtuoso(ヴァーチュオーゾ)』が真っ先に浮かぶ。これが1973年のリーダー作、というか、ソロ盤である。1970年代以降は、パブロ・レーベルの専属ギタリストといった風情で、この『Virtuoso』が、パブロ第一弾だった。で、パブロのジョー・パスのリーダー作には意外と駄作は無い。が、強い印象を残す盤は余り記憶が無い。

Joe Pass『For Django』(写真左)。1964年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Pass (g), John Pisano (g), Jim Hughart (b), Colin Bailey (ds)。2ギター+リズム隊のピアノレスな変則カルテット編成。2ギターではあるが、ジョン・ピサノはバッキングに徹しているので、フロントはパスの1ギターがフロント。残りの3人はリズム・セクションになる。

ジョー・パスのディスコグラフィーを見渡すと、パブロ・レーベルからのリーダー作が圧倒的に多いが、次に多いのが、米国西海岸の老舗ジャズ・レーベルの1つ「パシフィック・レーベル」からのリリース。デビュー作から6作ほど出ているが、この『For Django』の出来が頭1つ抜きん出ている。
 

For-django

 
恐らく、ピアノレスで、単独フロント楽器の位置付けのパスのギターは、何の制約も無く、かなり自由に弾きまくることが出来たのでは無いか、と睨んでいて、そのストレスフリーな自由度の高さが、この盤におけるパスの名演を生んだのでは無いか、と思っている。

この盤でのパスのギターはとても力強い。しっかり芯の入った力強い流麗な音で、メロディーがしっかりと、ホーンライクに伝わってくる。フロント楽器に向くギターの音と言える。そんな特徴が良い方向に出た、力感溢れる流れる様なフレーズがアルバム全編に渡って散りばめられている。どの曲も流麗で耳に心地良い演奏で、米国西海岸ジャズ独特の「聴かせるジャズ」がここにもしっかり記録されている。

1ギター+ベース+ドラムのリズム・セクションがパスのギターをしっかりと引き立てている。パスのギターを前に伴奏を入れるタイミングが絶妙で、切れ味も良く、聴いていて心地良いリズム&ビートが素晴らしい。このリズム・セクションの存在も、この『For Django』をパスの名盤に仕立て上げている好要素のひとつである。

パスの歌心豊かなスインギーな弾き回しは、とにかく「素晴らしい」の一言。この1964年の段階で、パスは「ヴァーチュオーゾ(卓越した技巧をもつ演奏家)」なギターの妙技を身につけていた、ということが良く判る名盤です。
 
 
 
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2022年1月28日 (金曜日)

ハービー&ジョーの魅力的デュオ

パブロ・レーベル(Pablo Label)は、1970年代を中心に、メインストリームな純ジャズのアルバムをリリースしたジャズ専門レーベルである。

僕が本格的にジャズを聴き始めたのが1970年代終盤なのだが、パブロ・レーベルの盤は基本的に敬遠していた。我が国のジャズ・シーンでは、パブロは「昔の名前で出ています的な懐メロ・ジャズ」と揶揄されていて、昔の懐メロ的な純ジャズを聴いても仕方が無い、という風潮があった。加えて、当時はフュージョン・ジャズの全盛期。ジャズの歴史的な定盤とフュージョンの人気盤を入手するだけで、手元の資金が底を突いていた、ということもあった。

よって、ジャズ喫茶でパブロ盤をリクエストしようものなら(当時、硬派なジャズ喫茶だったら、パブロ盤は置いてなかったかもしれないが)、白い目で見られそうでリクエストは出来ず、レコード屋の棚で、こんなアルバムが出てるんやなあ、とジャケットを眺めるに留めていた。

が、21世紀に入ってから、パブロ盤は比較的入手し易くなり、今では音楽のサブスク・サイトで、パブロの有名盤は殆ど聴くことが出来る様になった。で、自分の耳でパブロ盤を聴き直してみて、「昔の名前で出ています的な懐メロ・ジャズ」というのは「偏った」評価だったようやなあ、とつくづく思った。パブロって、結構、内容の良い盤をリリースしているのだ。
 

Two-for-the-load-1
 

Herb Ellis & Joe Pass『Two for the Road』(写真)。1974年1月30日〜2月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Herb Ellis, Joe Pass (g)。ハーブ・エリス(ハービー)、ジョー・パス(ジョー)、ジャズ・ギターのレジェンド級の名手2人の「デュオ」編成。ギターは、旋律楽器にもリズム楽器にもなる。ギターのデュオはそんなギターの特性を活かして、2人でどうやって役割分担しながら、インタープレイを展開するか、が聴きどころである。

当然、ギタリスト同士の相性や人間的な「好き嫌い」も重要な要素となる訳だが、ハービーとジョーについては、その点は全く問題が無かった様である。冒頭の手垢の付いた、どスタンダード曲「Love for Sale」を聴くと良く判るのだが、ハービーもジョーも「攻めている」。懐メロ・ジャズよろしく、イージーリスニング風に日和っても良いのだが、この2人はそうはならない。

ユニゾン&ハーモニーは意外と斬新な響き、アドリブ・フレーズもこれまた意外と尖っている。とてもポジティヴで攻めたデュオ演奏になっていて、聴き応え十分。収録曲の殆どがスタンダード曲なんだが、どの演奏も「手垢の付いた」感が全く無い。録音当時、ハービー53歳、ジョー45歳。ジャズマンとしては油の乗りきったバリバリの中堅。充実のパフォーマンスである。

パブロ・レーベルの盤はどれもが大体そうなんだが、ジャケットのデザインが「イマイチ」。この盤もジャケットのイメージで損をしているように感じるが、この盤は「イケて」いる。ハービーとジョーの「ヴァーチュオーゾ」なギター演奏を心ゆくまで堪能出来ます。
 
 
 
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2022年1月27日 (木曜日)

ファンキーなモード・ジャズ

ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)って、健康優良児的なファンキーで明るいタッチのピアニストなんだが、意外と結構、起用で、前進するピアニストだったと思うのだ。特に、1959年〜61年のVee Jay絵Rーベル時代の諸作については、パーソネルに「ウェイン・ショーター」がいたりして、かなり先進的な内容になっている。

Wynton Kelly『Kelly Great』(写真左)。1959年8月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。モーガンのトランペット、ショーターのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。ベースがポルチェン、ドラムがフィリージョーということで、当時のほぼベストの布陣である。

前リーダー作までRiversideレーベルで、ファンキーでハードバップど真ん中なサウンドを聴かせていたのだが、この盤では、ちょっと雰囲気が異なる。基本が「モード」なのだ。あのモード・ジャズ独特の旋律の響きがこの盤に充満している。これはパーソネルに名を連ねている「ウェイン・ショーター」の仕業だろう。ショーターが全5曲中2曲がショーター作で、バリバリ「モード」な曲なのだ。
 

Kelly-great

 
このショーターの存在が、この盤の「モード」な雰囲気を醸し出していることは明確。ショーターのテナーがどの曲においても「モード」なのだ。ケリーのピアノがファンキーだろうが、モーガンのトランペットがハードバップだろうが容赦無い(笑)。しかし、そこは一流ジャズマンの集まり。ショーターの「モード」の挑戦状をしっかと受けて立っているところがこの盤の聴きどころ。

ケリーが「健康優良児的なファンキーで明るいタッチ」のモーダルなピアノを弾いている。ショーターのモーダルなテナーに戸惑う事無く、逆にショーターの宇宙的なウネウネフレーズに、仄かに明るいファンクネスを塗している。健康優良児的な明るいモーダル・フレーズって、これ、ケリーにしか弾けないのでは。ケリーのピアノのポテンシャルを見せ付けられた様な気分になる快演である。

モーガンも負けじとモーダルに対応して、この盤は「ファンキーなモード・ジャズ」大会の様な雰囲気が蔓延している。この「ファンキーなモード・ジャズ」をもっと深掘りして欲しかったなあ、と思えるほど、意外とユニークな内容になっていて、そこに漂う不思議な訴求力が、この盤の最大の魅力である。
 
 
 
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2022年1月26日 (水曜日)

SUPER TAKANAKA LIVE 再び

高中正義の1970年代〜1980年代前半のリーダー作が、サブスク解禁されたみたいで、今一度、全てのアルバムを聴き直している。で、リアルタイムで一番聴いた、1970年代〜1980年代前半のリーダー作って何だったっけ、と思い立った。恐らく、一番聴いたのは学生時代。下宿で、古墳調査の車の中で、行きつけの喫茶店で、聴きまくった盤である。

高中正義『SUPER TAKANAKA LIVE』(写真左)。1980年3月のリリース。1979年12月23日〜24日に日本武道館にて行われた井上陽水とのジョイント・ライヴの模様を収録した盤である。「ジョイント・ライヴ」とは懐かしい響き(笑)。

ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), 石川清澄, 小林“MIMI-CHAN”泉美 (key), 上原ユカリ, 井上“SHI-CHAN”茂 (ds), 高橋ゲタ夫 (el-b), 椎名和夫 (el-g), 土岐英史 (sax), 中島御, 菅原“SUGA-CHIN”裕紀 (perc)。当時の「高中バンド」のベスト・メンバーである。

選曲が『JOLLY JIVE』から4曲、LP時代のA面を占める。そして、LP時代のB面を占めるのは『SEYCHELLES』『BRASILIAN SKIES』『TAKANAKA』からそれぞれ1曲ずつ、サディスティック・ミカ・バンドのアルバム『黒船』から1曲である。LP1枚の収録時間上限、45分程度を考えると、当時のほぼベスト盤的な選曲で、この選曲がこのライヴ盤の一番の魅力。
 

Super_takanaka_live 

 
ライヴ音源なので、当時の高中バンドのテクニックとパフォーマンスの凄さが良く判る。出だしの1曲目の「BLUE LAGOON」は、高中作の永遠のインスト名曲であるが、スタジオ録音より速いテンポで、疾走感溢れる弾きっぷりに思わず耳を奪われる。そして、2曲目「EXPLOSION」も高速フレーズが目玉の1曲で、爽快感溢れるノリで弾きまくり。

3曲目の「珊瑚礁の妖精」では、ワウワウなど、アナログなアタッチメントを駆使した、耽美的で幻想的なフレーズを披露する。これ、相当に高いテクニックで弾きまくってる。「TROPIC BIRD」「DISCO “B”」「READY TO FLY」は高中作のベストな楽曲で、聴いていてとにかく気持ちが良い。高中のギターが映えに映える。

そして、僕の個人的にこの盤の一番の目玉がラストの「黒船」。サディスティック・ミカ・バンドのアルバム『黒船』の6曲目(A面のラスト)の「黒船(嘉永六年六月四日)」で、3分弱の演奏だが、これが名曲中の名曲。聴いていて、気持ち良いこと、この上無し。

LP時代の音源で、トータルで45分弱しかないので、今の耳にはちょっと聴き足りない感じではある。が、内容的には充実した、当時の高中バンドのテクニックとパフォーマンスを手っ取り早く体感出来る、素晴らしいライヴ盤。今でも、気軽に聴くことが出来る、上質の「高中印のライヴ盤」である。
 
 
 
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2022年1月25日 (火曜日)

「with コロナ」なライヴ録音盤

昨日に引き続き「Smoke Sessions Records」の新盤の話題を。ジャズ・ドラマーのリーダー作というのは、その数はあまり多く無い。ドラムはバックに回ってリズム&ビートを供給する「リズム隊」の役割が主。かつ、打楽器という特性上、旋律が奏でられないので、管楽器やピアノの様に、その旋律のパフォーマンスで自己を表現する訳にもいかないので、ドラマーのリーダー作は数が少ない。

Joe Farnsworth『New York Attitude』。2021年2月19-21日、NYの「Smoke Jazz & Supper Club」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Joe Farnsworth (ds), Kenny Barron (p), Peter Washington (b)。前作『Time to Swing』に続いて、ファンズワース、バロン、ワシントンのピアノ・トリオ編成。

録音当時、リーダーのドラマー、ファンズワースは53歳。ベースのワシントンは56歳。ピアノのバロンは77歳。バロンが「レジェンド級」、ファンズワースとワシントンは「中堅」。ピアノとリズム隊、親子ほど歳の離れたピアノ・トリオ。演奏内容については、バロンに合わせるか、と思いきや、リズム隊のリズム&ビートは「ネオ・ハードバップ」な雰囲気で「新しい」。
 

New-york-attitude_joe-farnsworth

 
そんな新しい響きの「ネオ・ハードバップ」なリズム&ビートを得て、バロンがバリバリ弾きまくる。バロンは高テクニックで歌心満点、総合力で勝負するタイプのピアニストで、共演のリズム隊のリズム&ビートの個性に合わせて、最適な弾き回しをやってのける柔軟性を兼ね備えている。録音当時77歳のレジェンド級のピアノが、新しい響きの、現代のネオ・ハードバップに合致したフレーズを弾きまくるのだから痛快だ。

ファンズワースのドラミングは、伝統的なバップ・ドラミング。伝統的ではあるが、おかずの入れ方とか、タイム感覚とか、従来に無いドラムの響きが「新しい」。今までに聴いた記憶が無い、良い意味で正統派でユニークなドラミング。そんな「新しい」響きのドラミングで、変幻自在、硬軟自在、緩急自在に、バンド・サウンドをコントロールし、鼓舞する。ドラム・ソロも要所要所で聴くことが出来て、そんな「新しい」響きを堪能することが出来る。

このライヴ盤は、コロナ禍でNYがまだまだ大変だった2021年2月の録音になる。「Smoke Jazz & Supper Club」での無観客ライヴ録音で、トリオの3人はマスク姿、そして、お互いがアクリルボードで仕切られる。それでも、オンラインで鑑賞しているジャズ者の為に、最高のパフォーマンスを繰り広げたそうだ。コロナ禍に負けない、withコロナなライヴ録音。そんなライヴ録音の裏事情を知れば、このライヴ盤も更に味わい深いものになる。
 
 
 
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2022年1月24日 (月曜日)

ベテラン達の「Plays Coltrane」

最近、ジャズの新盤を漁っていると、よく出くわすレーベルがある。「Smoke Sessions Records」である。1999年、ニューヨークのアッパーウエストにオープンしたジャズクラブ「Smoke」のオーナーによって、2014年に設立されたジャズ専門レーベル。ジャズクラブ「Smoke」に出演している人気アーティストのライヴ録音がメイン。

ベテランと今後のジャズシーンを担う若手、両極端なリーダー起用が特徴で、「ポスト・バップ&メインストリーム」系のオーソドックスな作品を中心にリリースしている。ジャケット・デザインがほぼ統一されていて、デザイン的には、ちょっと平凡だと思うが、一目見れば直ぐに、この盤って「Smoke Sessions Records」からのリリースだと良く判る。

Harold Mabern『Mabern Plays Coltrane』(写真左)。2018年1月、ジャズクラブ「Smoke」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Harold Mabern (p), Vincent Herring (as), Eric Alexander (ts), Steve Davis (tb), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds)。ベテランのジャズメンがメインの布陣。アルト&テナー・サックス+トロンボーンがフロント3管のセクステット編成。
 

Mabern-plays-coltrane_1

 
タイトルに「Plays Coltrane」とあるので、このベテランのジャズメンがメインの布陣で、高速シーツ・オブ・サウンドやウネウネなモード・ジャズ、はたまた、スピリチュアル&フリーをやるのか、とドキドキして聴き始めたが、そんなことは無かったです(笑)。確かに、選曲にはコルトレーンが愛奏した楽曲が並んでいるのだが、演奏の雰囲気は「ネオ・ハードバップ」。

アルト&テナー・サックス+トロンボーンがフロント3管のセクステット編成なので、コルトレーンの名盤『Blue Train』を彷彿とさせるが、『Blue Train』よりは軽めで優しいアレンジがこの盤の特徴だろう。「ネオ・ハードバップ」だからと、ギンギンにシビアな演奏を繰り広げるのでは無く、余裕のある、ホンワカ優しく少しポップに、ハードバップで上質なジャズ演奏を聴かせてくれる。さすが、ベテランがメインの「Plays Coltrane」。

まとめると、この「Plays Coltrane」は、ベテランがメインのパーソネルで「俺たちがやったら、こんなハードバップな演奏になるよ。楽しんで聴いてくれ」なんていうアナウンスが聞こえてきそうな、ゆったりリラックスして聴くことが出来る「コルトレーン名曲集」である。じっくり聴いて、ジンワリその良さが染み入って来る、そんなベテラン達のパフォーマンスである。
 
 
 
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2022年1月23日 (日曜日)

高中正義『T-WAVE』を聴き直す

高中正義の1970年代〜80年代前半、「Kitty Records」時代のリーダー作がサブスク解禁になったようで、1st.作から11th.作まで、一気に聴き直している。すると、意外と今の耳で聴いてみると、リリース当時など、以前に聴いた印象とは違った音が聴こえてきて、意外と面白い。恐らく、歳を取るにつけ、耳が肥えて、良い意味で音に対する許容度が高くなってきたのだろう。

高中正義『T-WAVE』(写真)。1980年6月のリリース。高中6枚目のオリジナル盤。セルフ・プロデュースで、パーソネルも曲毎に異なるが、基本は、高中正義 (g), 小林"MIMI"泉美 & 石川清澄 (key), 高橋ゲタ夫 & 田中章弘 (b), 井上茂 (ds), 菅原裕紀 (perc)。当時のフュージョン・ジャズ畑のミュージシャンとは一線を画した、「高中の音世界」独特のメンバーである。

冒頭の目覚まし時計の音で始まる「Early Bird」から、爽快で疾走感溢れる高中のギターが疾走する。演奏の内容的には「クロスオーバー・ロック」。ロックとジャズが融合した「クロスオーバー」な演奏だが、リズム&ビートは「ロック」。当然、オフビートではあるが「ファンクネス」は皆無。しかし、8ビートが疾走するギター・インストのテイストは「クロスオーバー」。
 

Twave_masayoshi_takanaka

 
そして、3曲目「Mambo No.6」に至っては、ロック・ビートに乗ったマンボな演奏が繰り広げられる。ラテン系のテイストが個性の「高中の面目躍如」。ロックとマンボの融合。フュージョン(融合)なロックである。4曲目「Crystal Memories」やラストの「Le Premier Mars」は、当時の流行である、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズなテイストのギター・インストがメインの演奏。

今の耳で聴きながら思うに、この盤って、日本人ならではの「クロスオーバー〜フュージョン・ジャズ」なのではないか、と感じている。米国の「クロスオーバー〜フュージョン・ジャズ」とは異なり、リズム&ビートは「ロック」、それでいて、疾走感溢れる「弾きまくるギター」はクロスオーバー・ジャズに近いし、ソフト&メロウなギター・インストは、明らかにフュージョン・ジャズ。

特にこの『T-WAVE』は、高中のリーダー作の中でも完成度が高く、テクニック的にも内容的にも、米国のフュージョン・ジャズと比肩するレベル。そういう面からも、この盤は日本人ならではの「クロスオーバー〜フュージョン・ジャズ」の傑作の1枚と評価しても良いかと思う。今の耳で聴くと、この盤のクールな爽快感と疾走感はしっかりと耳に残る。日本のクロスオーバー〜フュージョンの名盤の1枚だろう。
 
 
 
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2022年1月22日 (土曜日)

「高中」流のフュージョンの傑作

高中正義は日本のギタリストのレジェンド。日本の既成の音楽ジャンルに収まらないボーダーレスでクロスオーバーのギターが個性。加えて、ハイ・テクニック。音の志向の個性として特徴的なのは、マンボやサンバなど、ラテン・ミュージックに造詣が深いこと。そんな高中正義のアルバムが、ほぼ全部、サブスク解禁になったようで、めでたいことである。

高中正義『Saudade(サダージ)』(写真左)。1982年9月10日にリリースされた、高中の9枚目のオリジナルアルバムである。キャッチコピーは「身体(からだ)が揺れて心も揺れて…」。何ともこそばゆい、バブルの入口の時代の成せるキャッチコピーである。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), Joaquin Lievano (g), Narada Michael Walden (ds), T.M. Stevens (b), Frank Martin (key), Sheila Escovedo (perc)。プロデューサーにドラムも担当している、ナラダ・マイケル・ウォルデンを起用している。

時代はフュージョン・ジャズの流行後期。この盤の音世界はフュージョン・ジャズ、時々、スムース・ジャズな雰囲気で、エコーがタップリ効いている分には、スムース・ジャズ的な傾向が強い。しかし、ビートがしっかり立った楽曲については、スピード感も豊か、演奏テクニックも「バカテク」で、この辺は、当時、流行真っ只中のフュージョン・ジャズど真ん中。
 

Saudade_masayoshi_takanaka

 
冒頭の「A Fair Wind」は、エコーがたっぷり効いた、爽快でキャッチャーなフレーズが心地良い「スムース・ジャズ」志向の演奏。メンバーそれぞれの演奏のテクニックも素晴らしく、とても端正で整った演奏には、思わず聴き入ってしまう。いつもの高中盤と雰囲気がちょっと違うのは、プロデュースを他人に任せて、高中自身は「1人のフュージョン・ギタリストに徹している」ところだろう。高中はギター小僧よろしく、喜々としてエレギをアコギを弾きまくっている。

スチール・パンやパーカッションが活躍して、雰囲気は「カリビアン」なのに、出てくる旋律はマイナー調で、和風な哀愁感がそこはかとなく漂うタイトル曲「Saudade」は、いかにも和風なフュージョン・ジャズ」といったもので、これぞ高中の音世界らしい演奏。その他、ディスコ・チューンあり、ジャム・ナンバーな曲あり、ラストの「Manifestation」では、高中がロックなエレギをギンギンに弾きまくっている。

この盤、「高中正義」流のフュージョン・ジャズの傑作盤だろう。音の要素はジャズあり、ロックあり、ディスコあり、カリビアンあり、ラテン調あり、シャッフルあり、高中が得意とする音楽ジャンルをごった煮して、ギターを弾きまくった傑作。米国西海岸フュージョンの強烈なリズム隊に乗って、高中のギターが唄いまくっている。
 
 
 
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2022年1月21日 (金曜日)

ピーターソンの未発表ライヴ音源

オスカー・ピーターソン(Oscar Peterson)は、ジャズ・ピアニストのレジェンド中のレジェンド。今から14年前、2007年12月に逝去しているので、ジャズ者の間でも忘れ去られた存在になりつつあるのが残念なんだが、ピーターソンは、ジャズ・ピアニストの中でも最高のテクニシャン。ドライブ感溢れ、スイングしまくり、バリバリ弾くピアノには圧倒される。

それでいて歌心もしっかり備えているので、とにかく聴き応えのあるピアニストであった。奏法の基本はハードバップ。しかも「聴かせるピアノ」が身上。自らのアドリブの幅を拡げる「モード」や「フリー」には一切、手を染めず、コマーシャルな「ファンキー」や「ソウル」にも手を出さない、あくまで硬派なバップ・ピアノのスタイルを変えなかった。

『Time For Love : The Oscar Peterson Quartet - Live In Helsinki 1987』(写真左)。1987年、フィンランドのヘルシンキでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Joe Pass (g), Dave Young (b), Martin Drew (ds)。リーダーのピアニスト、オスカー・ピーターソンは62歳。大ベテランの域に入ったバーチュオーゾなピアノをメインに、これまた大ベテランのギタリスト、ジョー・パスをゲストに迎えたカルテット編成。
 

Time-for-love

 
こんなライヴ音源が残っていたとは。1987 年秋ヨーロッパ・ツアー最終公演ヘルシンキ、クルトゥリタロで行ったライヴ音源。音も良く、ピーターソンの「ドライブ感溢れ、スイングしまくり、バリバリ弾く」ピアノが鮮度良く捉えられていて良い感じだ。パスのギター、ヤングのベース、ドリューのドラムも躍動感溢れるもので、とても良いライヴ盤である。

緻密で華麗なテクニック、そして目の覚めるようなスウィング感を伴って、「Waltz For Debby」や「When You Wish Upon A Star」等の、ポップなスタンダードの名曲を演奏しているピーターソンが耳新しい。以前では想像出来なかったですね〜。そして、「Love Ballade」「 Cakewalk」等のオリジナル曲については、流麗な弾き回しに、更に磨きがかかって、聴き応え抜群。

1987年の録音、しかも北欧のヘルシンキでのライヴなので、「昔の名前で出ています」的な、ちょっと懐メロ的になっていないか、聴く前は心配だったが、どうして、新しいイメージのピーターソンがバリバリに弾きまくっている。1960〜70年代の弾きっぷりよりも、しっかりとした余裕が感じられて、ピーターソンも良い歳の取り方をしていたんだなあ、と感心した。ほんと、良いライヴ盤です。
 
 
 
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2022年1月20日 (木曜日)

ポップなウィントン・ケリー盤

ウィントン・ケリーのピアノは、健康優良児的なファンキーで明るいタッチ。しかし、その奥に見え隠れするブルージーな哀愁感が堪らない。転がる様に軽く飛び跳ねるように軽快なフレーズの中に、そこはかとなく漂う粘り。ケリーのピアノは、実に親しみ易いもので、聴いていて楽しく、リラックス度満点のピアノである。

Wynton Kelly『It's All Right!』(写真左)。1964年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Kenny Burrell (g), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds), Candido Camero (conga)。6曲目の「The Fall of Love」には、The Tommy Rey Caribe Steel Bandという、スティール・パン&マラカス軍団が加わっている様だ。

この盤は、Verveレコードからのリリース。Verveレコードは当時、大衆向け音楽の大手レーベル。ジャズについても、大衆向けのファンキー・ジャズやソウル・ジャズを量産していた。このケリーの『It's All Right!』は、そんなVerveのジャズ大衆路線の一環。プロデューサーは、後の「フュージョンの仕掛け人」、クリード・テイラー。
 
Its-all-right_wynton-kelly

 
アルバム全体の印象は、聴いて楽しい、アーバンでダンサフルな「ソウル・ジャズ&ラテン・ジャズ」。垢抜けたソウル・ジャズ、そして、当時流行のラテン・ジャズ。Verveのジャズ大衆路線の面目躍如。ケリーの親しみ易い、聴いて楽しいピアノが、この「大衆向けのジャズ」にピッタリ。

キャンディドのコンガが効いている。ゲスト参加のスティール・パン&マラカスが効いている。特に、ラテン・ジャズ志向の演奏については両者、効きまくっている。ポップでダンサフルな雰囲気を撒き散らしている。そして、ケニー・バレルの漆黒アーバン・ギターもバッチリ効いている。アーバンで夜のジャズな雰囲気を思いっ切り増幅する。

ジャケットも、独特な「American cartoon(米国漫画)」風のユニークなジャケットで、とてもジャズのアルバムとは思えない。さすがは、Verveレコードである。ともあれ、お気楽なポップ志向のジャズ盤っぽいが、ケリーのピアノ、バレルのギター、それぞれの個性を最大限発揮していて申し分無い。気楽に聴き流して楽しいケリー盤である。
 
 
 
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2022年1月19日 (水曜日)

ウィントン・ケリー入門盤です

リヴァーサイド・レコード(Riverside Records)は、1953年にオリン・キープニュースとビル・グラウアーによって設立されたジャズ・レーベル。アルバムをカタログ順に聴き直していて思うのは、意外と硬派なレーベルだということ。ハードバップ全盛期に活発な活動を誇ったレーベルだが、意外と聴衆に迎合した、大衆的なアルバムは少ない。

セロニアス・モンク、ビル・エヴァンス、マックス・ローチ、ランディ・ウエストン等、リヴァーサイドの看板ジャズマンは皆、硬派なハードバップをやる人達。ポップで判り易い大衆的なところは無い。ファンキー・ジャズをやるウィントン・ケリーや、ボビー・ティモンズ、キャノンボール・アダレイだって、意外と硬派でストイックなファンキー・ジャズをやっている。

Wynton Kelly『Kelly Blue』(写真左)。1959年2月19日と3月10日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Nat Adderley (cor, tracks 1 and 5), Bobby Jaspar (fl, tracks 1 and 5), Benny Golson (ts, tracks 1 and 5), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。セクステット編成が2月19日、ピアノ・トリオ編成が3月10日の録音になる。
 

Kelly-blue

 
1曲目の「Kelly Blue」と5曲目の「Keep It Moving」が、フロント3管のセクステット編成。その他がピアノ・トリオ編成。フロント3管のセクステット編成の演奏が、リヴァーサイドとしては珍しく、典型的なファンキー・ジャズで、ユニゾン&ハーモニーもキャッチャーで、ちょっと気恥ずかしくなるくらいに、演奏全体の雰囲気がポップ。

確かに、セクステット編成の演奏はそうなんだが、ケリーのピアノをメインとするピアノ・トリオ編成の演奏は、意外とストイックで、ケリーのピアノの個性、健康優良児的にハッピーな弾き回しだが、その底にそこはかとなく漂う哀愁とマイナー感が良く判る内容で、ケリーのピアノを理解するに最適な演奏となっている。

この盤、リヴァーサイドの中でも「ポップでキャッチャーな内容のファンキー・ジャズ盤」として、ジャズ者初心者向けのアルバムとして、よくそのタイトル名が上がる盤。しかし、冒頭の「Kelly Blue」だけで、ジャズ者初心者向けのジャズ入門盤とするには、あまりに短絡的すぎる。セクステット編成の演奏の中でも、ケリー節は唸っている。この盤、ウィントン・ケリーのピアノを理解する、「ケリー入門盤」として捉えた方がしっくりくる。
 
 
 
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2022年1月18日 (火曜日)

T-Square『FLY! FLY! FLY!』

日本のフュージョン・ジャズの「バンド・サウンド」については、カシオペアとT-スクエアの2つの代表的バンドの音の個性がそのまま、日本のフュージョン・ジャズの「バンド・サウンド」の個性になった。呆れるほどの高テクニック、スピード感溢れる高速フレーズ、バラードについてはキャッチャーで印象的なフレーズの連発。当然、本場の様な「粘る様なファンクネス」は皆無。

T-Square『FLY! FLY! FLY!』(写真左)。T-SQUARE48枚目のアルバム。2021年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、安藤正容 (g), 伊東たけし(as, EWI), 坂東慧 (ds) のオリジナル・メンバーに加えて、サポートとして、田中晋吾 (b, #1, 3, 5-7), Taiki Tsuyama (b, #2), 森光奏太 (b, #4, 8, 9), 白井アキト (key), 伊沢麻未 (vo, #3) が参加している。

1978年のプロデビューから43年間に渡ってバンドを牽引し、支え続けたリーダーであり、作曲家、ギタリストの安藤正容が、本作への参加と2021年のコンサートツアーをもって退団。つまり、本作は安藤正容がメンバーとして参加した最後のアルバムである。43年間、ずっと変わらずT-Squareのメンバーだった安藤の退団の報はショックだった。
 

Fly-fly-fly

 
相変わらずの「T-スクエアの音世界」である。これだけサウンドの根幹を変えずにやってきたら、マンネリに陥ったりする部分があったりするのだが、それが全く感じられないところが凄い。1曲目の「閃光」を聴くだけで、これは「T-スクエアの音」やな、と当たりが付く。ライトでポップでスピード感抜群。キャッチャーなフレーズがポジティヴに響く。

どこか今までのT-スクエアの音に無い、新しい雰囲気が感じられるのだが、これは、恐らく、全9曲中6曲を作曲している、最も若いメンバー板東慧の楽曲が柱となっているからだろう。従来のT-スクエアらしさを醸し出しつつ、若かりし頃の「やんちゃな音」を差し引いた、堅実で落ち着いたリズム&ビートをベースに、大人のT-スクエアの音で、ガンガンに攻めている。

43年間に渡ってバンドを牽引し、支え続けたリーダーであり、ギタリストであった安藤がいなくなる。恐らく、次作というか、安藤脱退後の、伊東と坂東のユニット&サポートメンバーによる「T-SQUARE alpha」の音は、「ポップ・インストゥルメンタル・バンド」の前提は変わらないのだろうが、ガラッと変わってくるのだろう。日本のフュージョン・ジャズの「1つの時代」が終わった様な気がする。
 
 
 
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2022年1月17日 (月曜日)

The Remarkable Carmell Jones

ジャケットを見て「これは」と思う。そして、その盤の素姓をネットで調べて、気に入れば即ゲット。そうやって、今まで聴いたことの無い盤に出会い、その内容がクールだったり、小粋だったりすると、何だか幸せな気分になる。ジャズ盤の蒐集の醍醐味である。

Carmell Jones『The Remarkable Carmell Jones』(写真左)。1961年、Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、Carmell Jones (tp), Harold Land (ts), Frank Strazzeri (p), Gary Peacock (b), Leon Pettis (ds)。パーソネルを見渡せば、米国西海岸ジャズの面子で占められている。カーメル・ジョーンズのトランペットとハロルド・ランドのテナーがフロント2管のクインテット編成。

実は、カーメル・ジョーンズについては、その名前しか知らなかった。じっくり聴いたことが無い。数年前、この盤に出会った時、まず思ったのが「何とイカしたジャケではないか」。そして、タイトルの「Remarkable(注目に値する)」が目を引いた。何か良さそうな盤やな〜、と思って、即ゲット。
 

The-remarkable-carmell-jones1

 
何とも端正でブリリアントな、そして、テクニックが確かなトランペットである。調べてみれば、アイドルは「クリフォード・ブラウン(ブラウニー)」。至極納得である。確かに、ブラウニーばりの美しいトーン、ちょっと線が細いのが気にはなるが、それを補ってあまりある、気負いの無い、素姓の良い端正なフレージングは新人離れしている。

2管フロントの相棒「ハロルド・ランド」のテナー・サックスも好調。"ブラウン&ローチ・クインテット時代よりも伸び伸び吹いているかもしれない。カーメル・ジョーンズのトランペットとの相性は良い。このフロント2管が充実しているので、このクインテット盤の内容はグッと締まったものにしている。良い雰囲気のハードバップ・ジャズだ。

雰囲気的には西海岸ジャズというよりは、東海岸ジャズに向いたトランペットだと思うのだが、調べて見たら、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)の名作『Song for My Father』に参加している。そうか、あの印象的な、ちょっとファンキーで端正なトランペットは「カーメル・ジョーンズ」だったのか。ブルーノートの音に実にフィットしたトランペットだった。カーメル・ジョーンズ、東海岸で活動していたら、結構、人気トランペッターになっていたかも、とちょっと思った。
 
 
 
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スティーヴ・カーンのアコギ。

Steve Khan(スティーヴ・カーン)のギターは、心地良くスッと伸びたサスティーン、キャッチャーなフレーズ、癖の無いナチュラルな音が個性。エレギばかりがクローズアップされてきたが、本来のギタリストとしてのテクニックはどのレベルなのか。そういう場合、アコギの演奏も聴きたくなるのだが、そんな声に応えてくれたのがこの盤。

Steve Khan『Evidence』(写真)。1980年7月の録音。東海岸フュージョン最高のギタリストと誉れ高い、スティーヴ・カーンによるソロ・ギター盤(曲によって多重録音)。カーンがアコギを弾きまくる。タップリとかかるエコー、硬質でクリスタルなアコギの響き。耽美的でロマンティシズム溢れるフレーズの連続。

ただのソロ・ギター盤では無い。演奏する楽曲が、ウェイン・ショーター、ジョー・ザヴィヌル、リー・モーガン、ランディ・ブレッカー、ホレス・シルバー、そして、セロニアス・モンク。一癖も二癖もある「ミュージシャンズ・チューンズ」のてんこ盛り。モンクの楽曲については、当時LPのB面全部を占める「Thelonious Monk Medley」として、連続して演奏される。
 

Evidence_steve-khan

 
LPのA面の「ミュージシャンズ・チューン」集のアレンジが見事。ショーター、ザヴィヌルの楽曲については、かなり癖のある、ニュー・ジャズっぽい難曲なんだが、耽美的でロマンティシズム溢れるアレンジを施していて、このショーター&ザヴィヌルの難曲に新しい魅力を加えている。加えて、カーンのアコギの魅力がダイレクトに伝わってくる。

LPのB面の「セロニアス・モンク・メロディー」についても、やはりアレンジが見事。思いっ切り癖のあるモンクの楽曲を、モンクの癖のあるフレーズを残しつつ、基本はバップの楽曲を、これまた、耽美的でロマンティシズム溢れる楽曲に変身させている。これ、結構、聴き応えがある。モンクの楽曲にこういうアレンジで、こういうアコギで攻めるんだ、と感心する。

聴いていると、どこか、ECMレーベルのニュー・ジャズ系のアコギ盤を聴いている様な気分になる。決して、フュージョンっぽく無い、メインストリーム系の硬派な純ジャズ・アコギの調べに思わず聴き込んでしまう。やっぱ、このギタリスト、ただ者では無いなあ、と改めて思う。
 
 
 
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2022年1月15日 (土曜日)

ブルーノートの懐の深さを感じる

ブルーノート・レーベル4000番台は、純粋にジャズ出身のミュージシャンばかりで無く、R&B畑出身のミュージシャンにもリーダー作のチャンスを与えている。こういうところは、本当にブルーノートって懐が深い。他のレーベルとは異なり、レーベルとして、商業主義とはかけ離れた、確固たるアルバム制作の方針があるからだろう。

Fred Jackson『Hootin' 'n Tootin'』(写真左)。1962年2月5日の録音。ブルーノートの4094番。ちなみにパーソネルは、Fred Jackson (ts), Earl Van Dyke (org), Willie Jones (g), Wilbert Hogan (ds)。フレッド・ジャクソンは、R&B出身のテナー・サックス奏者。ジャクソンのテナーがフロント1管、ギター、オルガン、ドラムがリズム隊の変則カルテット編成。

リトル・リチャーズのバンド出身という変わった経歴を持つテナー奏者のリーダー作である。確かに、どっぷりジャズなテナー・サックスでは無い。どこかポップ、ブルージーでソウルフルなテナー・サックスで、後の「ソウル・ジャズ」の先駆け的な、ファンキーでR&B志向のジャズを聴くことが出来る。決して、メインストリームなジャズでは無い。
 

Hootin-n-tootin

 
全曲オリジナルというところも、メインストリームなジャズっぽく無い。どの曲もファンキーでソウルフルな演奏で、1950年代にジャズ界を席巻した「ハードバップ」や、マイルスが先鞭をつけた「モード・ジャズ」などとは、音の雰囲気が全く異なる。ジャクソンのテナーもR&B志向のファンクネス漂う、ブルージーで、どこか親しみ易いキャッチャーな音が特徴的。聴いていて「楽しい」テナー・サックスである。

後のモータウンの人気オルガン奏者、アール・ヴァン・ダイクのプレイも聴きどころ。これまた、ジミー・スミスなどの、いかにもストイックでジャジーなオルガンとは全く異なる、親しみ易くソウルフルな、そして、どこかポップなオルガンは、純ジャズの世界には無い響き。そして、素姓は良く判らないが、ウィリー・ジョーンズのこってこてソウルフルなギターも良い味を出している。

このジャクソン盤はどう聴いても、ハードバップでも無ければ、ファンキー・ジャズでも無い。明らかに後のソウル・ジャズの先駆的な音と言える。収録された曲は全てジャクソンのオリジナルで固められ、ジャズ・スタンダード曲は皆無。そういう面でも、この盤は、ブルーノートにおける「異色作」であり、逆にジャクソンの意欲作であり、ソウル・ジャズの先駆け的な好盤と言える。
 
 
 
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2022年1月14日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・227

ブルーノート・レーベル4000番台の凄いところは、当時のハードバップの最先端や流行をしっかり押さえ、かたや、有望な新人のリーダー作をもしっかり押さているところ。しかも、そんな中、モダン・ジャズ以前のジャズ、例えば、スイング・ジャズや中間派ジャズもしっかり押さえているところが凄い。

当時のジャズの上質な「ショーケース」であり、ブルーノートを聴けば「その時代のジャズの全貌が判る」というのも頷ける。当然、一般ウケしないアルバムもあるし、どう考えても売れないアルバムもある。しかし、そんな「商業主義」からはみ出たアルバムも含めて、当時のジャズの上質な「ショーケース」を形成しているブルーノートは、やはり尊敬に値する存在。

Ike Quebec『Heavy Soul』(写真左)。1961年11月26日の録音。ブルーノートの4093番。ちなみにパーソネルは、Ike Quebec (ts), Freddie Roach (org), Milt Hinton (b), Al Harewood (ds)。リーダーのアイク・ケベックのテナーがフロント1管のカルテット編成。ピアノの代わりにオルガンが入っているところが「ミソ」。
 

Heavy-soul

 
オルガンが入っているので、ファンキー・ジャズな内容かと思うが、リーダーのケベックのテナーは絶対に「ファンキー・ジャズ」では無い。ケベックは当時のジャズのトレンドからは「超越している」存在。ケベックのテナー・サックスはどう聴いても「スイング」若しくは「中間派」。ファンキー・ジャズでは無いが、ケベックのテナーはファンクネス濃厚。

どっぷりジャジーでブルージーな普遍的なジャズがここにある。オルガンが入ることによって、どこかゴスペルっぽくもあり、厳かな教会音楽風でもあり。しみじみとマイナー調のテナーを引き立てるローチのオルガンの存在は大きい。そして、ケベックのテナー・サックスの魅力が最大限に愛でることが出来る。オルガンのファンクネスが、ケベックのテナーのファンクネスを増幅させている。

当時、最先端のハードバップの様に垢抜けてないし、ポップでもないし、キャッチャーでもない。でも、しみじみと、切々とジャズを感じさせてくれるテナーなんですよね。「Just One More Chance」や「The Man I Love」などのスタンダード曲での太い音だが繊細で豊かなニュアンスの「スイング」若しくは「中間派」のテナーが秀逸。いつ聴いても惚れ惚れする内容です。
 
 
 
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2022年1月13日 (木曜日)

BN4000番台の「異質」な存在

ブルーノート・レーベルは、ニューヨークに拠点を置く老舗ジャズ・レーベル。当然、東海岸の「モダン・ジャズ」がメイン。しかし、1500番台にも、4000番台にも、ブルーノートのカタログの中で、明らかに異質なアルバムが「1枚だけ」存在する。これが実に不思議な存在で、ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの、カタログに入れた「真実」を訊きたい気持ちで一杯である。

1500番台では、Gil Melle『Patterns In Jazz』、ブルーノートの1517番が有名な「異質なアルバム」だろう。東海岸のハードバップの最先端のアルバムがひしめく中で、爽やかでお洒落なウエストコースト・ジャズ。西海岸で録られた音源を持って来たのかと思いきや、1956年4月の録音だが、しっかりと、Hackensackの「Van Gelder Studio」で録音されている。ブルーノートの確固たる意志で録音されたものだが、1500番台のアルバムの中で明らかに違和感がある。

Kenny Clarke, Francy Boland & Co. 『The Golden 8』(写真左)。1961年5月、西ドイツ(当時)のケルンでの録音。ルディ・ヴァン・ゲルダーはマスタリング担当。ブルーノートの4092番。ちなみにパーソナルは、Kenny Clarke (ds), Francy Boland (p), Dusko Gojkovic (tp), Raymond Droz (alto horn), Derek Humble (as), Karl Drevo (ts), Chris Kellens (euphonium), Jimmy Woode (b)。
 

The-golden-8  

 
ケニー・クラークをリーダーとしたオクテット編成。音の雰囲気はもはや「ビッグバンド」。ブルーノートの4000番台は、ハードバップの多様化をタイムリーに捉えたアルバムがてんこ盛りなのだが、そんな中に、やや古風な「ビッグバンド」志向なオクテット編成の演奏がいかにも「異質な存在」である。しかもバリバリ正統派なビッグバンド志向の音に、ブルーノートらしく無くて、ちょっと戸惑ってしまう。

リーダーでドラムのクラークとベースのウッドは米国出身だが、ピアノのボランはベルギー、トランペットのゴイコヴィッチはボスニア、アルト・ホルンのドローはスイス、アルト・サックスのハンブルは英国、テナー・サックスのドレヴォはオーストリア、ユーフォニウムのケレンスはベルギー。米国2人、欧州6人の欧州ジャズのオクテットなので、出てくる音にファンクネスは殆ど感じられない。端正で統制の取れた、如何にも欧州らしい「ビッグバンド」志向な音が、これまた、ブルーノートらしく無くて、ちょっと戸惑ってしまう。

メンバーの中に、若き日のバルカンの至宝トランペッター、ダスコ・ゴイコヴィッチが参加していたり、オクテットの演奏レベルは高い。アフロキューバンなリズムとモードを採用しているところが、欧州ジャズの中ではユニークで、ここから、クラーク=ボラン・ビッグバンドに発展していく、記念すべき盤でもある。しかし、欧州ジャズな「ビッグバンド」志向なオクテットは、ブルーノート4000番台の中では「異質」ではある(笑)。
 
 
 
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2022年1月11日 (火曜日)

カーンのフュージョン・ファンク

Steve Khan(スティーヴ・カーン)のエレギが「お気に入り」。初めて聴いてから、かれこれ40余年、カーンのギターをずっと聴いてきた気がする。1947年4月生まれだから、聴き始めた時で、カーンは30歳過ぎ。今ではカーンは74歳。大ベテランの域を超えて、もはや、フュージョン・ギターのレジェンド級ギタリストである。]

カーンについては、不思議と我が国ではメジャーな存在では無い。知る人ぞ知る、フュージョン・ジャズにおいては、隠れ「エレギの名手」の様な扱い。知っている人はカーンに「ぞっこん」の場合が多く、知らない人はその名前すら聞いたことが無い、と言い放つ(当たり前かw)。

いわゆる「玄人好み」のギタリスト。米国では「グラミー賞」に時々ノミネートされるくらいメジャーな存在なのに不思議なことである。

Steve Khan『Arrows』(写真)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、Steve Khan (g), Randy Brecker (tp), David Sanborn (as), Michael Brecker (ts), Will Lee (b), Steve Gadd, Rick Marotta (ds), -Jeff Mironov (g), Don Grolnick, Rob Mounsey (key), Errol "Crusher" Bennett (per)。フュージョン畑の錚々たるメンバーが名を連ねる。
 

Arrows

 
スティーヴ・カーンの単独名義リーダー作の第3作目。パーソネルは見わたせば、フュージョン畑の豪華すぎる面子に驚く。フロント管にブレッカー兄弟、ディヴィット・サンボーン。ドラムにスティーヴ・ガッド、ベースにウィル・リー、と、フュージョン・ジャズの中でも、R&B志向な、フュージョン・ファンクの音の要素が、そこはかとなく漂うところが「ミソ」。

カーンのギターは、心地良くスッと伸びたサスティーン、キャッチャーなフレーズ、癖の無いナチュラルな音、が個性なのだが、バックの音にファンクネスがしっかり漂っていて、アルバム全体の雰囲気は「ライトなフュージョン・ファンク」な感じに仕上がっている。この辺りが、米国でウケて、我が国ではウケない理由なのかもしれない。

でも、僕はこの「ライトなフュージョン・ファンク」な雰囲気がお気に入りで、この乾いたライトなファンクネスは、どちらかと言えば「日本人ジャズな志向」だと思うのだが、如何だろう。

演奏メンバーがメンバーだけに、かっちりとキメた、ハイ・テクニックで流麗な、極上なフュージョン・ジャズが展開されている。フュージョン・ジャズ盤として優秀な内容である。
 
 
 

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2022年1月10日 (月曜日)

ソニー・クラークの遺作盤です

ブルーノート・レーベルには「お抱えのジャズマン」が何人かいる。ほとんどブルーノート・レーベル専属に近い状態で、ブルーノートのカタログにその名前が、リーダーにサイドマンに結構な数が上がるジャズマンである。基本的に、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの「大のお気に入りジャズマン」である。

Sonny Clark『Leapin' and Lopin'』(写真左)。1961年11月13日の録音。ブルーノートの4091番。ちなみにパーソネルは、Sonny Clark (p), Tommy Turrentine (tp, except track 2), Charlie Rouse (ts, except track 2), Ike Quebec (ts, track 2 only), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。基本は、トミタレのトランペット、ラウズのテナーのフロント2管のクインテット編成。

ソニー・クラーク(以降「ソニクラ」と略)は、アルフレッド・ライオンの「大のお気に入りジャズマン」の1人。本職のピアノもさることながら、どうも、ソニクラの書く曲が大好きだった節がある。それでも、31年の短い生涯の間のリーダー作11作のうち、9作がブルーノートからのリリースである。
 

Leapin-and-lopin

 
確かに、収録された全6曲中、3曲を占めるソニクラの曲は、突出してアーバンでブルージーで魅力的な曲ばかり。そんな「ジャジーでブルージー」な曲を、ソニクラの「流麗ではあるがファンクネス漂い、マイナーで哀愁感溢れる」黒いバップなピアノが奏でるのだ。むっちゃジャジーな雰囲気が堪らない。

この盤は、実はソニクラの遺作になる。この盤の録音の1年2ヶ月後、ソニクラは、ヘロインの過剰摂取により、帰らぬ人となる。恐らく、そんな事、当の本人は思ってもいなかったと思われる。なぜなら、この盤のソニクラのピアノは、モーダルで新しい響きを宿した、ハードバップなフレーズを連発していて、次のステップへ進化しようとする「意欲」が聴いてとれるのだ。

初リーダー作『Oakland, 1955』(Uptown)以外、今、聴くことの出来るソニクラのリーダー作は10枚。どれもが、ソニクラらしい、ブルーノートらしい音が詰まった秀作揃い。特に、この遺作の『Leapin' and Lopin'』については、ソニクラのジャズマンとしての「前進する姿」を捉えた好盤だと言える。それにしても享年31歳、実に惜しい早逝であった。
 
 
 
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2022年1月 9日 (日曜日)

ジュニア・マンスを偲ぶ・3

ジャズ盤紹介本にあるアルバムの評論文と実際にアルバムを聴いた印象のギャップがあるジャズマンって、結構あるな、って思っている。ジュニア・マンス(Junior Mance)もそんなジャズマンの1人で、我が国では、マンスのピアノが如何にウケが悪かったかを物語っている様で興味深い。

Junior Mance『Live At the Top of the Gate』(写真)。1968年9月、NYの「The Village Gate」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), David Newman (fl, ts), Wilbur Little (b), Rudy Collins, Paul Gusman (ds)。アルバムのサブ・タイトルに「Guest Artist David Newman」とあるように、サックス奏者のデヴィッド・ニューマンをフロント1管に迎えたカルテット編成。

ライヴということもあって、冒頭の「Before This Time Another Year」から、こってこてファンキーなフレーズを弾きまくる。「総合力で勝負する」タイプのピアノで、独特の癖や奏法が無く、端正で明確なタッチで、ファンクネスだだ漏れのピアノを弾くのだ。聴いていて爽快感すら感じる、ドライブ感溢れるグルーヴィーなマンスのピアノ。

恐らく、これがマンスのピアノの「真実」なんだろう。バップでノリの良い、エンタテインメント性も併せ持った「総合力で勝負する」タイプのピアノは、聴いていてとても楽しい。
 

Live-at-the-top-of-the-gate

 
これぞ「モダンなジャズ・ピアノ」という演奏が詰まったライヴ盤であるが、今まで、我が国のジャズ盤紹介本では見たことが無い。そんな状態なので、マンスについて、我が国で人気が出るはずが無い。

しかし、実際に自分の耳で聴いてみて、このライヴ盤のこってこてファンキーなフレーズを弾きまくるマンスのパフォーマンスは強く印象に残る。ファンキー・ジャズの好盤として、ソウル・ジャズの好盤として、是非とも挙げたいライブ盤である。「The Village Gate」の聴衆もノリノリで聴いている。このライヴ感もなかなか良い雰囲気で、この臨場感も心地良い。

我が国では、マンスの代表盤と言えば、初リーダー盤の『Junior』ばかりが挙げられるのだが、この盤は、他のリーダー作と比べると、初リーダー作ということもあって「大人しすぎる」。マンスのピアノの個性はシッカリ感じられるが、「バップでノリの良い、エンタテインメント性も併せ持った」という面では、他のリーダー作の方が優れているだろう。

それほどまでに、ジャズ盤紹介本にあるアルバムの評論文と実際にアルバムを聴いた印象のギャップがあるマンスである。昔と違って、今では、サブスク・サイトを含め、マンスのリーダー作は結構耳にすることが出来る環境にある。今一度、マンスのリーダー作を実際に自分の耳で聴いて、マンスのピアノの真の個性を実感して欲しいなあ、と思うのだ。
 
 
 
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2022年1月 8日 (土曜日)

ジュニア・マンスを偲ぶ・2

ドイツの名門ジャズ・レーベル、エンヤ・レーベル(Enja Label)。エンヤのカタログを見渡すと、フリー・ジャズ、スピリチュアル・ジャズのアルバムが多くリリースされている。欧州はドイツ出身のジャズ・レーベルなので、とにかく、内容的に硬派でストイックなフリー&スピリチュアル・ジャズな演奏がほとんどなんだが、中には、内容の濃い「ネオ・ハードバップ」な盤をリリースしているから「隅に置けない」。

Junior Mance『At Town Hall Vol.1&2』(写真)。1995年、NYの「Flushing Town Hall」でのライヴ録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Houston Person (ts), Calvin Hill (b), Alvin Queen (ds)。ピアニストのジュニア・マンスがリーダー、フロントにテナー・サックス奏者のヒューストン・パーソンを迎えた、カルテット編成。

録音当時、既に大ベテラン・クラスのピアニスト、「総合力で勝負する」タイプを代表する1人のジュニア・マンスであるが、このライヴ盤でも、その個性を遺憾なく発揮している。ファンキーなノリとグルーヴィなフレーズ、端正で明確なタッチ。堅実かつリズミカルな左手。その弾きっぷりはダイナミックで、バリバリ弾き進めるバップなピアノである。
 

At-town-hall-junior-mance_20220108213701

 
そんなマンスのピアノが2枚のライヴ盤で、心ゆくまで楽しめる。リーダーのマンスが録音当時、67歳。ベースのカルヴィン・ヒルは50歳。ドラムのアルヴィン・クイーンは45歳。フロント・テナーのヒューストン・パーソンは、61歳。ベテランから中堅のメンバーでの演奏であるが、お互いにインタープレイを楽しんでいるような、溌剌としたパフォーマンスが見事である。

そして、Vol.1&2、ともに選曲が良い。マンスの「総合力で勝負する」タイプが、その個性を十分に発揮出来るスタンダード曲が効果的にチョイスされていて、マンス独特のスタンダード曲の解釈が良く判るし、アレンジの妙がしっかりと体感出来る。特にVol.2が楽しい。冒頭の「Blues in the Closet」、3曲目の「My Romance」そしてラストの「Mercy, Mercy, Mercy」、意外と癖のあるスタンダード曲だが、なかなかの解釈とアレンジで、小粋な演奏に仕上がっている。

なかなか決定盤に恵まれないマンスであるが、Enjaレーベル、良いライヴ盤を残してくれた、と思っている。ライヴ演奏をそのままアルバム化している様で、冗長なところやラフなところもあるにはある。が、逆にそれが臨場感に感じられて、僕にとってはなかなかのライヴ盤として、マンスを聴きたい時、時々引きずり出しては、繰り返し聴いている。歴史を変えるような名盤では無いが、味のある、小粋な内容の好盤として、長年、愛聴している。
 
 
 
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2022年1月 7日 (金曜日)

ジュニア・マンスを偲ぶ・1

昨年も多くのジャズマンが鬼籍に入っている。今、流行のコロナ禍に倒れたジャズマンもいれば、通常のよくある病気で、天寿を全うしたジャズマンもいる。ハードバップが現れ出でて約70年。当時、メインで活躍したジャズマンは殆ど鬼籍に入ってしまった。1960年代に活躍したジャズマンも、毎年、どんどん鬼籍に入っていく。

特に、自分がジャズを聴き始めた頃、リアルタイムでその活躍を耳にしてきたジャズマンが鬼籍に入るのを見るのはとても辛い。2021年1月17日に逝去した、ジュニア・マンス(Junior Mance)もそんなジャズマンの1人。実際にマンスが来日した時に、生で彼のピアノを聴いたほど、リアルタイムで聴いてきた、親しみのあるジャズ・ピアニストであった。

Junior Mance『Nadja』(写真左)。1998年5月14日、NYでの録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Earl May (b), Jackie Williams (ds)。ジュニア・マンス、録音当時、69歳のピアノ・トリオ演奏。冒頭のタイトル曲である快活なブルース曲からラスト曲までマンスのピアノの魅力満載の好盤である。
 

Nadja_junior_mance

 
マンスのピアノは、ファンキーなノリとグルーヴィなフレーズが持ち味の「総合力で勝負する」タイプのピアノである。独特の癖や奏法がある訳では無い。端正で明確なタッチ。堅実かつリズミカルな左手。とても整った弾きっぷりで、ダイナミズムもほど良く備わっていて、独特のノリの良いフレーズが、なかなかに格好良い。聴いていて爽快な気分になる。

そんなマンスが、バリバリに弾きまくっているのが、このトリオ盤。マンスと同じく大ベテランのベーシストのアール・メイ。そして。これまた、大ベテランのドラマー、ジャキー・ウィリアムス。この2人の大ベテラン・リズム隊との相性が抜群で、ドライヴ感とグルーブ感を振り撒いて、グイグイ、バリバリ、マンスが魅力的なバップ・ピアノを弾き進めていく。

この盤はマンスのピアノを聴くだけの好盤。ベースとドラムのリズム隊はサポートに徹している。しかし、それが単調にならず、様々なニュアンスとイメージを繰り出して、とても聴き応えのあるピアノ・トリオ演奏に仕上がっている。平均年齢60歳代後半のピアノ・トリオであるが、ネオ・ハードバップな新しい響きを採用しているところには痛く感心した次第。良いトリオ盤です。
 
 
 
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2022年1月 6日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・12

ジャケットを見るだけで、これは名盤だな、と感じるアルバムがある。アルバムの1曲目を聴くだけで、これは名盤だな、と感じるアルバムがある。パーソネルを確認するだけで、これはきっと名演だろうな、と想像出来るアルバムがある。そんなアルバムは「ブルーノート・レーベル」に沢山ある。

Sonny Clark『Cool Struttin'』(写真左)。1958年1月5日の録音。ブルーノートの1588番。ちなみにパーソネルは、Sonny Clark (p), Jackie McLean (as), Art Farmer (tp), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。リーダーは、早逝の哀愁ファンキー・ピアノ、ソニー・クラークがリーダー。マクリーンのアルト・サックス、アート・ファーマーのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

最初に、この盤は「モダン・ジャズ」を強烈に感じることの出来る名盤である。特にハードバップの良いところが「てんこ盛り」。フロント2管のユニゾン&ハーモニーの重ね方&響き、ソニクラのピアノに、ポルチェンのベース、フィリージョーのドラムが叩き出す、切れ味良い、躍動感溢れる、クールなファンキー・ビート。ソニクラの書く名曲のキャッチャーなマイナー調のメロディー。
 

Cool-sreuttin_1

 
このアルバムに収録されている全ての演奏が「モダン・ジャズ」と言い切って良いかと思う。とにかく、リーダーのソニクラの書く曲が絶品。マイナー基調でファンキーで流麗。印象的なメロディーとキャッチャーなフレーズ。そのソニクラの書く秀曲の間で演奏されるスタンダード曲の選曲も実に良い。アルバム全体を包む「マイナーでファンキーで小粋なハードバップ」な雰囲気が実に芳しい。

演奏上の工夫も、どれもが「モダン・ジャズ」らしい。ユニゾン&ハーモニーとチェイスの合わせ技、切れ味の良いベースとドラムの効果的ソロ、ピアノ伴奏の印象的なコンピング、どれもがハードバップで培われた演奏上のテクニックなんだが、これらが実に良いタイミングで、要所要所に散りばめられていて、聴いていてとても楽しい。聴いていて「ジャズってええなあ」って思う。

最後にジャケットも本当に「秀逸」。この『Cool Struttin'』のジャケについては、語り尽くされた感があるが、とにかく「ジャズ」している。妙齢の女性のスラッとした足だけの白黒基調のジャケ写、そして、絶妙なバランスで配置されるタイポグラフィー。この盤に詰まっている音が、このジャケットを通して聴こえてくる様だ。大名盤である。
 
 
 
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2022年1月 5日 (水曜日)

「モード・ジャズ」の名盤の1枚

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズは、1954年から1990年の36年間、活動し続けた伝説のジャズ・バンド。リーダーはアート・ブレイキー。しかし、リーダー以外の他のメンバーはそれぞれの時代で、総替えイメージで入れ替わる。そして、このジャズ・メッセンジャーズに所属して活躍したジャズマンは、皆、一流のジャズマンとして独り立ちしている。

このジャズ・メッセンジャーズの、それぞれの時代毎の演奏のスタイル、トレンドを聴けば、ハードバップ系のジャズの演奏スタイルの変遷、1950年代前半のハードバップ誕生〜ファンキー・ジャズ〜モード・ジャズ〜1970年代のハードバップ〜新伝承派ジャズ〜ネオ・ハードバップまで、それぞれの時代の「音楽監督」の存在と共に、ジャズ演奏のスタイル、トレンドを押さえることが出来る。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Mosaic』(写真)。1961年10月2日の録音。ブルーノートの4090番。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard (tp), Curtis Fuller (tb), Wayne Shorter (ts), Cedar Walton (p), Jymie Merritt (b)。ハバード〜フラー〜ショーターの「伝説のフロント3管」のセクステット編成。この時点でのメッセンジャーズの音楽監督は、テナーのウェイン・ショーター。
 

Mosaic

 
僕はこの時代のメッセンジャーズの音が大好きだ。テクニック優秀、歌心もあり、出て来る音も迫力満点の「伝説のフロント3管」のユニゾン&ハーモニーは官能的でファンキー。ソロ・パフォーマンスに入れば、バリバリ「モーダルな」インプロビゼーション。メンバーそれぞれが自作曲を持ち寄り、モーダルなアレンジを施して演奏される「モーダルなハードバップ」演奏の数々。

モード・ジャズは、即興演奏の幅を拡げ、アドリブ・フレーズの類似化を避け、高度な演奏テクニックを要求する、とっても「ジャズ」らしい演奏スタイル。この難度の高いモード・ジャズを、物の見事に、何事も無いかの様にやってのける。バックのブレイキー〜ウォルトン〜メリットのリズム隊も、フロント3管のモーダルな演奏をガッチリとサポートしていて見事。

この盤については、モード・ジャズの名演を収めた、モード・ジャズの代表的名盤の1枚と言って良いだろう。音楽監督のショーターの手腕と、それを実現するブレイキーのリーダーシップの成せる技。ジャケットもブルーノートらしくて、良き時代のジャズをビンビンに感じさせてくれる。
 
 
 
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2022年1月 4日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・226

現在のNHKの朝ドラ「カムカムエヴリバディ」には、キーになる音楽として、ジャズが出てくる。ルイ・アームストロング(愛称:サッチモ)が演奏し、ボーカルを取る「On The Sunny Side Of The Street」。今、放送中の2代目主人公(女性)の名前が「るい」。ルイ・アームストロングのファーストネームが名前の由来。その主人公が、大阪に出てきてトランペッターに出会う。

そのトランペッターは「サッチモ」ライクなトランペットを吹く。大阪、そして「サッチモ」ライクなトランペット。このトランペッターのモデルは「南里文雄」では無いかと思い立った。南里文雄は大阪出身の伝説のジャズ・トランペッター。彼は1953年にルイ・アームストロングと共演、その折、サッチモ本人から「日本のサッチモ」とあだ名が付けられたほど。和ジャズ初期の伝説のトランペッターである。

南里文雄『栄光のトランペット』(写真左)。1971年の作品。ちなみにパーソネルは、南里文雄 (tp), 前田憲男 (p, arr), 横内章次 (g), 原田政長 (b), 石川晶 (ds), with 宮間利之とニューハード。リーダーのトランペッター、南里文雄がフロント1管のギター入りクインテットがメイン、日本を代表するビッグバンドのひとつ「宮間利之とニューハード」がバックを務める。

アレンジは、ジャズな音の使い手、前田憲男が担当。デキシーランド・ジャズが基調の音世界なのだが、古さ、レトロさを感じさせない、意外と今風のモダンな「ビッグバンド・アレンジ」には、ほとほと感心する。
 

Golden-trumpet

 
この盤を聴けば、南里文雄のトランペットの個性が良く判る。基本は「デキシーランド・ジャズ(ニューオーリンズ・ジャズ)」。この盤のバックにはビッグバンドが控えるが、確かにビッグバンドをバックにすると、更に「映える」トランペットである。バップな影は全く無い。冒頭の「Battle Hymn Of The Republic(リパブリック讚歌)」を聴けば、それがとても良く判る。

テクニック優秀、歌心もバッチリ、端正で流麗、ブラスの音の輝きがキラキラ眩しい、凄く素敵なトランペットである。しかも、実に良く「鳴る」。3曲目の「Stardust」などのバラード演奏は「素晴らしい」一言。思わず、どこで聴いていても、足を止めて、じっくり聴き入ってしまうくらいだ。

南里のトランペットは確かにバップでは無い。また、ジャズの奏法のトレンド(例えばモードとかフリーとか)からは超然としている、普遍的な「純ジャズ」のトランペットである。

ジャズ・トランペットの基本的な音がこの盤に詰まっている。ジャズ者の方々には一度はこの盤に耳を傾けて欲しいな、と思っている。全編に渡って、南里のトランペットを心ゆくまで楽しめる名盤だと思う。
 
 
 
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2022年1月 3日 (月曜日)

エスニック&ユートピアへ変化

明けましておめでとうごさいます。今年もヴァーチャル音楽喫茶『松和』の当ブログをよろしくお願いします。

毎年、年が明けると「エレクトリック・ジャズ」が聴きたくなる。恐らく、マイルス・デイヴィスの1975年伝説の来日公演の思い出がそうさせるのだろう。当時、マイルスの来日公演の収録音源がFMで流れていて、これが当時、「なんだこれ」とショックを受けたと当時に、とても気に入った出来事がそうさせるのだろう。よって今年も、年が明けると「エレ・ジャズ」。

丁度、昨年の暮れから、Weather Report(WR)の聴き直しをしている。WRと言えば、エレ・ジャズ系バンドの最高峰のひとつ。ナイス・タイミングである。

Weather Report『Mysterious Traveller』(写真)。1974年の作品。ちなみにパーソネルは、Josef Zawinul (key), Wayne Shorter (sax), Miroslav Vitouš (ac-b : track 2 only), Alphonso Johnson (b), Ishmael Wilburn (ds), Skip Hadden (ds : tracks 1 and 4 only), Dom Um Romão (perc, ds)。

前作『Sweetnighter』で、創立当時の共同リーダーの1人、ミロスラフ・ビトウスと音楽的志向の相違によって袂を分かって、ウェイン・ショーターとの双頭リーダーになったジョー・ザビヌル。WRの音楽的志向を「エスニック&ユートピア」に舵を切る。リズム&ビートは「ファンク」なんだが、メロディーにはエスニックの味付け。エスニック志向のエレ・ファンクと形容しても良いかもしれない。

その最初の成果がこの『Mysterious Traveller』。冒頭の「Nubian Sundance」を聴くと、その「エスニック志向のエレ・ファンク」という味付けが良く判る。マイルスでも無い、ハービーでも無い、チックでも無い、ザビヌルならではの「エレ・ファンク」。その一番最初のプロトタイプ的な音がこの盤に詰まっている。そういう意味で、この盤は「ザビヌル流エレ・ファンク」の最初の1枚と評価しても良いと思う。
 

Mysterious-traveller

 
WRの変化と言えば、この盤については、双頭リーダーの片割れ「ウェイン・ショーター」の影が薄くなってきている。冒頭の2曲、ショーターは全く目立たない。プライベートにいろいろあったようだが、当時のショーターはWRの活動には、さほど強い興味は無かった様だ。2曲目の「American Tango」の途中、ショーターがやっと出てくる有様。

ただ、6曲目の「Scarlet Woman」では、ショーターのソプラノ・サックスが大活躍。この1曲を聴けば、ショーターのサックスって、WRには必要不可欠だと思う。この迫力と説得力は生のサックスじゃないと、しかもショーター・クラスの一流サックス奏者では出せないもの。決して、シンセサイザーでは代替できない。

ザビヌルはそれを理解していた。よって、ザビヌルはショーターを追い出すことは無かった。この曲は明らかにショーターの「コズミック&ミステリアス」志向の産物だが、ザビヌルはそれを容認している。

しかし、この盤は明らかに「ザビヌルの単独志向」のアルバムである。そのザビヌルの志向である「エスニック志向のエレ・ファンク」を完全表現するまで、ザビヌルのシンセ・テクニックは追いついていないが、その志向を的確に表現しようとする意欲は強く伝わってくる。

新規参入のベーシストについても、複数参加のドラム&パーカッションについては、ゲスト・ジャズメンについても、固定化せず、まだまだ、「エスニック志向のエレ・ファンク」に端緒を付けたばかりのアルバムであることが良く判る。

WRのキャリアを見渡す中で、この盤をWRの傑作と評価する訳にはいかない。それでも、この盤は、「ザビヌル流エレ・ファンク」=「エスニック志向のエレ・ファンク」なWRを表現した最初の1枚であることで、特別な存在であることは確かである。 
 
 
 
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