ルイ・スミスの晩年の好盤です。
米国のジャズ・シーンの居心地が悪くなり、欧州へ移住した一流ジャズマンにリーダー作制作の機会を与え、数々の優秀盤を世に送り出したのが、スティープルチェイス・レーベル。そんな米国出身のジャズマンの中で「こんな人がスティープルチェイスにリーダー作を吹き込んでるんだ」とビックリする様な名前に出くわすことがある。
ルイ・スミス(Louis Smith)。1931年、テネシー州メンフィスの生まれ。ミシガン大学で勉強している間、大学に訪問してくる様々なジャズマンと共演を重ねたが、アトランタのブッカーT.ワシントン高校で音楽教育の仕事の傍らでの、パートタイムのジャズ・ミュージシャンの道を選択。しかしながら、ブルーノート・レーベルに『Here Comes Louis Smith』『Smithville』の2枚の好盤を残している。この2枚の優れたアルバムのお陰で、僕達は「ルイ・スミス」というトランペッターの名前を記憶しているのだ。
Louis Smith『The Bopsmith』(写真左)。2000年4月の録音。スティープルチェイスからのリリース。ちなみにパーソネルは、Louis Smith (tp), Jon Gordon (as), Michael Weiss (p), Jay Anderson (b), Joe Farnsworth (ds)。伝説の堅実誠実なトランペッター、ルイ・スミスのリーダー作。録音当時はリーダーのルイ・スミスは69歳。他のメンバーは、リーダーのルイ・スミスと親子ほど歳の違う30歳代〜40歳代前半。当時の中堅若手ジャズマンを従えたクインテット編成。
この盤の冒頭「Val's Blues」を聴けば、ルイ・スミスの堅実誠実なトランペットは、ブルーノートに録音した頃と全く変わってないなあ、と感慨深くなる。結構複雑なフレーズを事も無げに、流麗に堅実に吹き進めていく。とっても味のあるジャズ・トランペットで、ついつい聴き込んでしまうほど。トランペットの音のエッジは程良くラウンドしていて、とても聴き心地の良い音色である。ジャズ・トランペットの「お手本」の様な音はずっと聴いていても飽きない。
しかし、この盤でのルイ・スミス、とっても状態が良い。当時、69歳とは思えない、バイタルな吹きっぷりで、ユッタリしたミッドテンポの曲は、唄う様に説得力のあるフレーズを連発し、速いアップテンポの曲はバリバリと破綻無く、堅実なテクニックで速いフレーズを淀みなく吹き続けて行く。この盤、ルイ・スミスのトランペットを愛でる盤としては、1950年代のブルーノートの2作と比肩するレベルの好盤である。
ちなみに、ルイ・スミスは、1950年代にブルーノートに2作のリーダー作を残した後、1970年代に2枚、1990年代に6枚、2000年代に4枚、計12枚のリーダー作をスティープルチェイス・レーベルに残している。この事実を知った時にはちょっとビックリした。ブルーノートに残した2枚ばかりが「もてはやされている」が、スティープルチェイスのリーダー作についても、どれもがルイ・スミスのトランペットの個性が楽しめる、ハードバップな内容の好盤である。もっと聴かれても良いのではないか、と思う。
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