チャーラップの新作に感じ入る。
このピアニストの、このトリオについては、1998年以来、ずっと追いかけている。初めて、このチャーラップのトリオのアルバムを聴いたのは、ヴィーナス・レコードからリリースされた『'S Wonderful』(1998年12月の録音)だったかな。ジャケットは、ヴィーナスらしい「?」なものだったが、中身は一級品。ネオ・ハードバップな香りのする、アーティスティックなトリオ盤で、色んな意味で感じ入った思い出がある。
Bill Charlap Trio『Street of Dreams』(写真左)。2021年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Charlap (p), Peter Washington (b), Kenny Washington (ds)。1997年に結成、チャーラップの長年の「パーマネント・トリオ」による新作盤である。2000年に『Written in the Stars』をリリースして以降、定期的にブルーノートからリリースしているが、今回は、2003年の作品『Live at the Village Vanguard』以来、18年振りの、チャーラップ・トリオのブルーノートへの返り咲きになる。
ビル・チャーラップは、1966年、ニューヨーク生まれ。今や押しも押されぬ、ベテラン・ピアニストの一人。チャーラップのピアノは、一言で形容すると「耽美的でリリカルなバップ・ピアノ」。
総合力で勝負するピアニストっぽいが、ビル・エヴァンスを源とする「耽美的でリリカルなバップ・ピアノ」を踏襲しつつ、エヴァンスには無い「モダニズム」と歯切れの良い、少しエッジの立ったタッチが個性。「ながら」で聴き流すには、このチャーラップの個性が凄く心地良くになって、結局、じっくり聴き入ってしまう。
そんなピアノのチャーラップをリーダーとした「パーマネント・トリオ」。このトリオの演奏は、旧来の「ビ・バップ」のフォーマットの上に、最先端のジャズ・ピアノの表現法と、ジャズ・トリオのインタープレイの展開を実践している様な、旧来のフォーマットに則っているようで、実は新しい要素が散りばめている、という、意外と「小粋な展開を旨とする」先進的なピアノ・トリオだと解釈している。
確かに、このチャーラップ・トリオの演奏には、明らかに1940年代後半から50年代中盤にかけての「バップなピアノ・トリオ」のパフォーマンスとは違う、緩急、濃淡、強弱を様々に織り交ぜた、複雑な、色彩豊かな「バップ・ピアノ」が表現されている。
リズム&ビートを支える「ダブル・ワシントン」のリズム隊も基本は「バップなリズム&ビート」。しかし、緩急の付け方、音色の変化、グルーヴ感などは、モード・ジャズやスピリチュアル・ジャズなどの変遷を経験した、新しい感覚に溢れる「バップ」なリズム&ビートであることは確か。
この「パーマネント・トリオ」が結成されて23年。長年の経験を踏まえて「程良く熟成された」新しい感覚の、今の時代の「ネオ・ハードバップな」ピアノ・トリオの、素晴らしいパフォーマンスがこの新作に記録されている。
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