ストリーミング解禁の「恩恵盤」
ジャズにおいて、アルバムのネット経由のストリーミング聴きについては、かなり恩恵があるように思う。LP時代にリリースされたが、CD時代にリイシューされなかった音源や、一度CDでリリースされたがその後、廃盤状態になったままの音源が、一定数ある。
そんな廃盤状態の音源が、気が付けば、ストリーミング聴きの「サブスク・サイト」に、さり気なくアップされていたりする。今まで長らく廃盤状態だった音源が、ストリーミングで気が付いたら、すぐに聴ける。これが実に助かるのだ。
ECMレーベルがストリーミング解禁になって久しいが、ECMレーベルの音源がカタログ順にほぼ漏れなくリイシューされたのにはビックリした。当初、何らかの理由でストリーミング解禁されなかった音源も、現在、気が付けば、ほぼ漏れなくリイシューされている。アップル・ミュージックなどは、音質については「ハイレゾ」対応していて、録音の良いECMの音源が良い音で聴くことが出来るので、まったく有り難いことである
Jack Dejohnette's Directions『New Rags』(写真)。1977年5月、独LudwigsburgのTonstudioでの録音。ECM 1103番。ちなみにパーソネルは、Jack DeJohnette (ds, p), John Abercrombie (el-g, el-mandolin), Alex Foster (ts, ss), Mike Richmond (el-b, ec-b)。リーダーのポリリズミックな職人ドラマー、ジャック・デジョネットがピアノも兼ねた、カルテットな編成。
このアルバム、何を基準にLPで廃盤にしたのか、理由が判らないのだが、LPではリリースされたが、CDリイシューされなかった音源である。21世紀になって、ストリーミング配信されたのにはビックリ。なんせ40年振りくらいの「再会」である。
パーソネルを見渡すと、なんとECMらしい、渋い人選であることか。出てくる音は、やはりECMらしい「ニュー・ジャズ」な音か、と想像したら、なんと、硬派でストイックな、米国モード・ジャズの最先端の、限りなく自由度の高い、創造性豊かな音が出てくるのだから、またビックリ。ただ、音的には、音のエコー含めて、どこまでもECMで、この音源、ECMの音世界の中では、かなり異質な内容だと改めて思う。
キースの「アメリカン・カルテット」の音を想起させる様な内容なのだが、この盤では、ピアノレス・カルテットの演奏が、限りなく自由度が高くて凄まじい。フリー的な展開もところどころあるにはあるが、絶対にフリーには傾かない。あくまで、伝統の範囲内に留まった、限りなく自由度の高いモード・ジャズ・オンリーで疾走する。かなりハイレベルなメインストリーム・ジャズである。
ECMの中の「米国モード・ジャズ」の最先端の演奏。それでいて、音の質、音の雰囲気は「欧州ジャズ」。僕の中で約40年ほど、その存在すら忘れ去られていた盤ではあるが(ECMレーベルのカタログ本に辛うじて、その存在は記されていた)、その内容は、当時のメインストリーム・ジャズの一級品。秀作である。
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