デューク・エリントンのピアノ
パブロ・レーベル。「昔の名前で出ています」的だの、昔の終わったジャズマンを集めた「懐メロジャズ」だの、我が国ではあまり評判は良くなかった。が、アルバムをちゃんと聴けば判るが「そんなことは無い」。平均的に「内容の整ったメインストリームな純ジャズ」のオンパレードで、聴いていて楽しいジャズばかりである。
しかも、ハードバップ時代には無かった編成やメンバーのカップリングが多数あって、パブロ・レーベルの諸作については、1970年代の「ネオ・ハードバップ」的な優秀作の宝庫と言えるでは無いか、と思っているくらいだ。21世紀になった今、パブロ・レーベルについては再評価をすべきだろう。聴いて楽しい録音が多数、存在する。
Duke Ellington『Duke's Big Four』(写真左)。1973年1月8日の録音。パーソネルは、Duke Ellington (p), Joe Pass (g), Ray Brown (b), Louie Bellson (ds)。ビッグバンドの総帥レジェンド、デューク・エリントンがピアニストとしてリーダーを張り、ギター入りのカルテット編成での録音。ピアノのエリントン、ベースのブラウン、ギターのパス、ドラムのベルソン、いずれもレジェンド級のビッグネーム。
ビッグバンドの総帥かつ作曲家のエリントンのピアノは流麗でメロディアスなピアノを想起するのだが、どうして、そんな流麗なイメージとは正反対。硬質なタッチでアグレッシブ。フレーズも先進的で時に前衛的。あくまでコードがベースの旧来のスタイルだが、間を活かした、音を選んだ右手のシングル・トーンは典雅。左手のブロックコードが穏やかでは無い、硬質な打ち下ろす様な、少し不協和音な響きを宿したマイナーなブロックコード。
エリントンはジャズ界最大のレジェンドの1人。そんなエリントンがピアノを弾くのだ。それをサポートするベース、ギター、ドラムは、それはそれは神妙に慎重にサポートしている様が良く判る。ブラウンのベースは往年の骨太でソリッドで歌心溢れるベースだが、エリントンの邪魔は絶対にしない。エリントンのピアノのイメージと被ることは全く無い、パスのギターは力強く流麗。ベルソンは洒脱なドラミングでエリントンのピアノにピッタリ寄り添う。
滋味溢れる、他に無い、エリントン独特のジャズ・ピアノ演奏がこの盤に記録されている。ハードバップ期のファンクネスを漂わせた、躍動感溢れるインタープレイとは一線を画した、ファンクネスを奥にしまい込みつつ、コードの妙によって「黒い情念」を表現し、間を活かした演奏で、そのイメージを増幅するという、意外ととんでもないピアノ・トリオ+ギターの演奏がここにある。1970年代のパブロ・レーベルを侮ってはならない。
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