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2021年9月15日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・94

ジャズ盤、クラシック盤、ロック盤等々、どの音楽ジャンルの盤でも、最初に聴いて感じたイメージと、しばらく時間を経て聞き直した時のイメージが大きく変わることがある。そして、その場合、最初に聴いたイメージよりも、イメージが良くなるケースが多い。

最初に聴いた時「こりゃアカンなあ」と感じた悪いイメージは、その後、聴き直した時も強く残る。つまり「悪いイメージ」って、初めて聴いた時、直感的に強く感じて残るイメージなんだろう。

逆に聴き直した後、良くなるイメージは、初めて聴いた時、当方の「耳」が成熟していなくて、その盤の持つ「良さ」に気が付かなかった場合が多い。ということで、初めて聴いた時の「良好盤」は、ある程度の時間をおいて、積極的に聴き直すことにしている。

Tete Montoliu『Tete!』(写真左)。1974年5月28日の録音。SteeplechaseのSCS1029番。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert 'Tootie' Heath (ds)。この盤でのテテのパートナーは、これまた「超絶技巧」の骨太なレジェンド級ベーシストのペデルセン。そして「職人芸」玄人好みのドラマーのアルバート・ヒース。

この盤を聴き直して、この盤の持つ「本来の素晴らしさ」を改めて知った。というか、素晴らしさの「深度」が更に深まったと言って良いかと思う。こんなところは絶対に聴き逃していたなあ、とか、このポイントは聴き流してしまったなあ、と深く反省する「評価ポイント」が色々出てきたのだ。今回、聴き直して良かったなあ、としみじみ思ってしまった。

テテのピアノは硬質で骨太なタッチ。疾走感溢れる高速フレーズ。ダンディズム溢れるスイング感。圧倒的に優れたテクニック。そして、バラード演奏については透明感溢れる歌心。スペイン出身のピアニストなので、ファンクネスは皆無。切れ味の良い透明感とエッジのほど良く立った硬質なタッチ。こんなピアノは初めて聴いた。とことん欧州的なジャズ・ピアノである。
 

Tete_20210915202001

 
このテテのピアノで、この盤では「コルトレーンのシーツ・オブ・サウンド」をトリビュートしているみたいなのだ。それはテテのピアノの個性に加えて、テテのピアノのベースを支えるペデルセンの骨太&ハイ・テクニックなベースと、変幻自在、硬軟自在な柔軟性と適応力の高いヒースのドラミングに負うところが大きいのだが、とにかくトリオ一体になっての「シーツ・オブ・サウンド」は迫力満点。

冒頭の「Giant Steps」は、コルトレーン独特のテナー吹奏のテクニックである「シーツ・オブ・サウンド」を駆使した決定的名演なんだが、テテは超絶技巧なピアノで、この「シーツ・オブ・サウンド」な名曲を弾き切ってみせる。というか、コルトレーンのオリジナルよりも、豊かなバリエーションでの「シーツ・オブ・サウンド」で弾き回しているのには感動した。

3曲目の超スタンダード曲「Body and Soul」も高速「シーツ・オブ・サウンド」なフレーズの連続。それでいて、高速フレーズが実に「スインギー」。こんなに高速でスクエアにスインギーなアドリブ・フレーズを擁した「Body and Soul」は聴いた事が無い。実にユニーク、かつ圧巻である。

逆に、2曲目の「Theme for Ernie」はバラード曲。さぞかし、高速フレーズの得意なテテには苦手なジャンルでは無いか、と思うのだが、そんなことは全く無い。全くの「杞憂」である。テテの硬質で骨太なタッチ、ダンディズム溢れるスイング感をベースに、クールでドラマチックで切れ味の良いバラード演奏を披露してくれる。このテテのバラード演奏、本当に「聴きもの」である。

そして、5曲目の「I Remember Clifford」はアレンジの勝利。テテのピアノの個性を活かしたアレンジは絶品。どちらかと言えば、センチメンタルでスイートなバラード曲であるが、これをダンディズム溢れるスインギーで「シーツ・オブ・サウンド」なテクニックで斬新な解釈をしている。こんなにダンディズム溢れる切れ味の良い、それでいて仄かに温かみのある「I Remember Clifford」は聴いたことが無い。

このアルバムは「カタルーニャの秘めた激情」テテ・モントリューの傑作の一枚。今回、久し振りに聴き直してみて、この盤の持つ「本来の素晴らしさ」を改めて知った。謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」入りをさせていただきたい。
 
 
 
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