« 2021年7月 | トップページ | 2021年9月 »

2021年8月の記事

2021年8月31日 (火曜日)

スティープルチェイスのデックス

Steeplechase(スティープルチェイス)・レーベルのアルバムの聴き直しを再開である。スティープルチェイスは、マイルス・コレクターとして有名なデンマークのニルス・ウインターが、1972年立ち上げたジャズ・レーベル。1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗。

このレーベルは欧州のレーベルとしては、比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫。カタログを追ってみると、1960年代後半から欧州、特に、この北欧コペンハーゲン界隈に移住した米国ジャズマンの秀作が多い。

Dexter Gordon『The Apartment』(写真左)。1974年5月24日 & 1974年9月8日、デンマークはコペンハーゲンのRosenberg Studioでの録音。Steeplechaseレーベルの「SCS1025番」。

ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Kenny Drew (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert Heath (ds)。テナー・サックスのレジェンド、デクスター・ゴードン(愛称:デックス)が1管フロントの「ワンホーン・カルテット」編成。デンマーク出身のベースのペデルセン以外、デックス、ドリュー、ヒースの3人は、ハードバップ期に活躍した一流ジャズマンの「渡欧組」。
 

The-apartment

 
デックスは、1962年8月に『A Swingin'Affair』を録音後、渡欧。主にパリとコペンハーゲンに住み、14年間、欧州を活動拠点としていた。この『The Apartment』は、そんなデックスの欧州時代後半の録音になる。パーソネルにある、ピアノのケニー・ドリュー、ドラムのアルバート・ヒースも渡欧組。ベースのペデルセンは、スティープルチェイスの地元デンマーク出身のベース・レジェンド。

冒頭のタイトル曲から、デックスのテナーがガツンと出てくる。全編、往年の「こってこてハードバップな」演奏が展開される。デックスのアドリブが絶好調で、引用含めてご機嫌に吹き進めていく。あまりの躍動感にこの盤、最初聴いた時はライヴ音源かと思った。続いて、ドリューのピアノも絶好調。バリバリ、典雅でバップなピアノを弾きまくる。

ヒースのドラミングもスインギーで、演奏全体のリズム&ビートを牽引する。ペデルセンの鋼質ブンブンなスイング・ベースは、デックスのサックスの歌心の「底」をしっかりと支える。7曲中3曲がデックスの自作曲。残り4曲がスタンダード曲。とりわけ、このスタンダード曲の出来が良い。

もともとデックス自体が以前より過小評価されているのと、スティープルチェイス・レーベルの盤自体が、1970年代から1980年代にかけて入手し難かったこと、そして、一見するとブート盤の様なシンプル過ぎるジャケット、この3つの要素が絡み合って、これだけ内容のあるハードバップな快作でありながら、我が国では全くマイナーな存在に甘んじているのが残念。再評価すべきデックスの好盤である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月30日 (月曜日)

ルーさんの初オルガン・ジャズ

我が国では、僕がジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半、オルガン入りのジャズについては、あまり評判は良くなかった。ファンクネス濃厚で、ソウルフルでポップなジャズ、というイメージから「俗っぽい」ジャズである、というレッテルを貼られて、硬派なジャズ者の方々のみならず、評論家の方々を含めて、評価は芳しく無かったと記憶している。

オルガン・ジャズが復権してきたのは、1980年代後半、レア・グルーヴのムーヴメントがジャズに押し寄せ、ソウルフルでポップなジャズ、踊れるジャズとして再評価されて以降である。また、純ジャズ復古後、新伝承派を中心とした、純ジャズ偏重、ハードバップ偏重に対する反動から、ソウルフルでポップなオルガン・ジャズが再評価された経緯もある。

Lou Donaldson『Here 'Tis』(写真左)。1961年1月23日の録音。ブルーノートの4066番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Baby Face Willette (org), Grant Green (g), Dave Bailey (ds)。ビ・バップ以降、ブルーノートの看板アルト・サックス奏者として活躍してきたルー・ドナルドソン(ルーさん)の初のオルガン・ジャズである。
 

Here-tis

 
バックを固めるメンバーが良い。ファンクネス濃厚、硬派でプログレッシブなオルガンが個性のベビー・フェイス・ウィレット、パッキパキなシングルトーンが個性、ファンクネスだだ漏れギターのグラント・グリーン。地味だがスインギーでファンキーなドラマー、ディヴ・ベイリー。ここに、ルーさんの切れ味の良いファンキーで陽気なアルト・サックスがフロントを仕切る。

とってもソウルフルでポップでファンキーなオルガン・ジャズである。バックのリズム隊がむっちゃファンキーでグルーヴィーでソウルフルなので、ルーさんのアルト・サックスの本質である、とてもハッピーな吹きっぷりで、翳りや哀愁、モーダルで理知的な響きとは全く無縁な「明るくビ・バップ風のブリリアントで高速な吹き回し」がとっても引き立つのだ。

オルガン・ジャズ、ここに極まれり、という感じの優秀盤。前述の様に、我が国では以前はオルガン・ジャズは異端であり、敬遠されていたのだが、どうして、このオルガン・ジャズ盤を聴いて思うのだが、これって「ご機嫌なジャズ」ではないか。ファンキー、ポップ、そしてソウルフル。ジャズを楽しむオルガン・ジャズ。僕は好きですね〜。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月29日 (日曜日)

ゲイリー・バーツの異色盤です

ゲイリー・バーツ(Gary Bartz)は、スピリチャル・ジャズ系のアルト・サックス奏者。1970年にマイルス・バンドに抜擢されたことで、メジャーな存在になった。アフリカ回帰的なスピリチャル・ジャズがメインの音楽性を推し進め、1980年代後半以降のレア・グルーヴ・ムーブメントからヒップホップ、クラブジャズにおいて、バーツの作品がしばしばサンプリングされていて、バーツ再評価の動きが高まっている。

僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、ゲイリー・バーツはまだまだ尖っていて、バーツのアフロ回帰なスピリチュアル・ジャズは、アフリカン・ネイティヴな響きが心地良いながら、そのスピリチュアルなアルト・サックスは何となく「強面」で、すぐには手を出すことが出来なかった。バーツのスピリチュアルなジャズを抵抗なく聴き始めたのは、ここ20年位かな。

Gary Bartz『Love Affair』(写真)。1978年の作品。ゲイリー・バーツのソフト&メロウ・フュージョン期の一枚。ちなみにパーソネルはおおよそ以下の通り。

Gary Bartz (as, ss, cl, per, vo), Juewett Bostick, Wah Wah Watson, John Rowin (g), George Cables (key), Nate Morgan (syn), Welton Gite (b), Curtis Robertson (b), Tony Robertson, Howard King (ds), Bill Summers (perc, congas), Vince Charles (perc, timbale) Dorothy Ashby (harp), Beloyd Taylor, Patryce "Chocolate" Banks, Sybil Thomas (vo) 等々。
 

Love-affair-1

 
スピリチュアル・ジャズの闘士的アルト・サックス奏者が、ソフト&メロウなフュージョンに手を染めた訳だから、聴く前は半信半疑。聴いて思わず苦笑い。ヴォーカルをフィーチャーした、流麗でスピリチュアルな「フュージョン風ジャズ・ファンク」がてんこ盛り。硬派で尖ったスピリチュアルな要素はどっかへ行ってしまった(笑)。しかし、この音世界を「フュージョン・ジャズ」とするには、ちょっと乱暴かと思う。あくまで、フュージョン風のジャズ・ファンクである。

冒頭「Big Apple Love」は、重厚なホーンのグルーヴにゴスペルチックなコーラスが絡むソウルフルなジャズ・ファンク。4曲目の「At Last」は、チョッパー・ベースが黒く、ブラック・フィーリング効きまくり、ラストの「Giant Steps」は、コルトレーンの名曲だが、ここではブラジリアン・フュージョンなアレンジの「ソフト&メロウなフュージョン・ファンク」曲に変身していて、思わずビックリ。

2曲目では、我が国ではポールモーリア楽団で有名なイージーリスニング曲「エーゲ海の真珠」をカヴァーしていて、これはやり過ぎやろう、と思いきや、バーツの切れ味良く流麗なアルト・サックスを堪能できる、ソフト&メロウなフュージョン調の仕上がりで、意外と聴かせてくれる。

純粋に流麗でスピリチュアルな「ソフト&メロウなフュージョン・ファンク」盤として聴くと、なかなかの内容。バーツのアルト・サックスは、切れ味良く流麗。ファンクネスを湛えつつ、印象的でリリカルなフレーズを連発している。加えて、ドロシー・アシュビーのドリーミーなハープが要所要所で効いている。意外と出来映えの良いフュージョン・ファンク盤である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

 

 

2021年8月28日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・216

Arthur Blythe(アーサー・ブライス)。自分のジャズ盤のコレクションを確認していて、この人の名前を思い出した。黒人ロフト系のサックス奏者。1970年代〜1980年代に最も輝いたサックス奏者の1人。僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、1970年代後半、メジャーな存在となり、我が国でもジャズ雑誌中心に、ブライスのアルバムが紹介されていたので、ブライスの名前には馴染みがある。

1940年、米国LA生まれ、2017年に鬼籍に入っている。1970年代中期にNYに移住後、ジャック・ディジョネットのSpecial Editionのフロントとして世界的知名度を獲得。初リーダー作は、1977年、アバンギャルド・ジャズ専門レーベルから。以降、2003年まで、年1枚程度のペースでリーダー作をリリースしている。

Arthur Blythe『Lenox Avenue Breakdown』(写真左)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Arthur Blythe (as), James Newton (fl), Bob Stewart (tuba), James "Blood" Ulmer (g), Cecil McBee (b), Jack DeJohnette (ds), Guillermo Franco (perc)。フロント楽器は、ブライスのアルト・サックスをメインに、フルートとチューバが脇を固める。ギターに鬼才ジェームス・ブラッド・ウルマー、ベースにセシル・マクビー、ドラムにジャック・デジョネットの名前が確認できる。

このパーソネルを見ただけで、まず、旧来の純ジャズ系の内容では絶対無い、ということが判る。ギターにウルマーの存在が実に不穏で(笑)、ベース+ドラムのリズム隊はニュー・ジャズな8ビートを叩き出す。音的には、8ビートがメインの、黒人ロフト系の「フュージョン・ファンク」。今の耳で聴いても、ほとんど古さを感じない「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」である。
 

Lenox-avenue-breakdown1

 
これが、むっちゃ格好良い。まず、リーダーのブライスのアルト・サックスが弾けまくっている。8ビートに乗って、格好良いクールなフレーズを連発する。そして、ウルマーの妖しげなコード弾きがアバンギャルドな雰囲気を漂わせ、切れ味の良いコンテンポラリーなグルーヴ感を醸し出す。フルートのフランコはエモーショナルで飛翔感溢れる吹き回し、スチュワートのチューバは魅力的な低音フレーズを撒き散らす。

そして、何と言っても、セシル・マクビーのベース、ジャック・デジョネットのドラムによるニュー・ジャズな8ビートが素晴らしく格好良い。特に、デジョネットの叩き出す8ビートには惚れ惚れするほどだ。このリズム隊の8ビートがこの盤の演奏全体の「要」になっている。そして、時々、8ビートから4ビートへリズム・チェンジするのだが、これがまた格好良い。これだけ気持ち良いリズム・チェンジはそうそう無い。

タイトル曲「Lenox Avenue Breakdown」などは、適度な緊張感を伴ったロック系の8ビートなリフが特徴的で、マクビーとデジョネットの叩き出す8ビートなリズム&ビートがジャジーなので、演奏全体の雰囲気はジャズに留まっているが、ほとんど「ロック」と言っても良いユニークな内容が面白い。一方、ラストの「Odessa」は、フリー・ジャズの要素が濃いが、個々のソロは充実の内容。

ジャジーでコンテンポラリーなリズム&ビートと、それに乗った魅力的なアドリブ展開で、この盤は、とても素敵な「コンテンポラリーなジャズ・ファンク」満載。チューバの低音とギターの妖しげなコードがファンクネスに拍車をかける。ジャズ・ファンクが基調のエレクトリック・ジャズと評価しても良い内容。とにかく「コンテンポラリーな純ジャズ者」にとっては、とっても聴いて楽しい「ブライス盤」である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月27日 (金曜日)

バリバリ弾きまくるトリオ盤

パブロ・レーベルのアルバムを、カタログを追って聴き直している。パブロ・レーベルは、1973年、ノーマン・グランツによって設立されたジャズ・レーベルである。リリースするアルバムは全て「純ジャズ」。演奏するメンバーは、レジェンド級のジャズメンがメイン。従来のハードバップな演奏がメインで、当時は「古いジャズ」と揶揄され、パブロ・レーベルって、我が国ではあまり人気が無かった記憶がある。

Peterson, Pass, Pedersen『The Trio』(写真左)。1973年5月16-19日、米国シカゴの「ロンドン・ハウス」でのライヴ録音。パブロ・レーベルの栄えある第1弾(701番)。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Joe Pass (g), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。ドラムレス、代わりにギターが入った、オールドスタイルの「ピアノ・トリオ」編成での演奏になる。

レジェンド中のレジェンド、圧倒的テクニックとスイング感を誇る「鍵盤の皇帝」ピーターソンのピアノ、燻し銀ヴァーチュオーゾなパスのギター、そして、驚異的テクニックと骨太でソリッドな音色で圧倒するペデルセンのベース、このレジェンド級一流ジャズメン3人で固めたトリオ演奏。ドラムが無い分、3者3様のメロディアスなアドリブ・フレーズを聴き込むことが出来る。
 

The-trio-petersonpass-pedersen

 
冒頭の「Blues Etude」の演奏が始まると同時にビックリする。超高速フレーズの嵐。圧倒的テクニックを誇るピーターソンが、そのテクニックを最大レベルに上げて、超高速フレーズをバリバリに弾きまくる。ギターのパスは速弾きフレーズと高速カッティングで応戦、そして、一番ビックリするのはペデルセンのベース。超高速ピアノ、ギターを向こうに回して、超高速ウィーキング・ベースで対応する。

これって、1970年代における「ビ・バップ」な演奏である。1960年代後半、聴き手に迎合して「聴き易さ」という大衆性に重きを置いたが故に、純ジャズは聴き込む楽しみが半減した。ジャズマンの演奏テクニックや機微、つまり「芸術性」を楽しむ面が半減した訳だが、この盤では冒頭の1曲目でこのジャズの「芸術性」を楽しむ、ビ・バップな演奏が展開される。聴衆のそのテクニックを存分に楽しんでいる様子が良く判る。

三者三様の速弾きだけで無い、ゆったり寛ぐブルース演奏もあり、さすがハードバップ期の先頭集団を走ってきた強者達、じっくりと純ジャズな演奏も楽しませてくれる。縦横無尽、硬軟自在、緩急自在にスイングする様は見事。やっぱり純ジャズって良いなあ、という想いを思い出させてくれる。今の耳で聴くパブロ・レーベル、なかなかのものである。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月26日 (木曜日)

少しポップな漆黒ファンクネス

スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine)は、漆黒ファンキーなテナー・サックス奏者。夜のアーバンな雰囲気濃厚、こってこてファンキーなテナー・サックスが個性。どっぷりジャジーなテナー・サックスだが、ストレートな吹きっぷりは当時としては「新しい響き」。コルトレーンが絶対的存在の我が国では、このタレンタインですら「古いテナー」として、あまり人気が無かった様に思う。

Stanley Turrentine『Comin' Your Way』(写真左)。1961年1月20日の録音。ブルーノートの4065番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Tommy Turrentine (tp), Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds)。カタログ番号まで振られたのに、録音当時は「お蔵入り」。リリースされたのは1987年になってからである。

この盤、聴けば聴くほど、どうして録音当時「お蔵入り」になったか、理解に苦しむ。ブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンに直接訊いてみたいくらいだ。内容的には、ほど良くポップで、ほど良く軽快。演奏の雰囲気も幾分か明るく、聴いていて、何だか気持ちが明るくなる様な、ポジティヴな雰囲気のファンキー・ジャズである。
 

Comin-your-way

 
タレンタイン兄弟のフロント2管が好調。弟のスタンリー・タレンタインのテナー・サックスが実に良い音を出している。こってこてファンキーなテナー・サックスだが、意外と軽快な吹き回しで、そのフレーズにはポップな雰囲気がそこはかとなく漂う。兄のトミー・タレンタインのトランペットは溌剌としていてブリリアントな音色が素敵。テクニック的にはそこそこだが、味のあるフレーズを叩き出してくるところは見事。

そして、ホレス・パーランのピアノをメインとしたリズム・セクションが良い。スインギーでメロディアスではあるが、ハードバップ後期のモーダルな雰囲気が漂う、意外と先進的なリズム・セクションで、ややもすればポップに傾く、タレンタイン兄弟のフロント2管をしっかりと硬派でクールなファンキー・ジャズに留めている。

タレンタイン兄弟のフロント2管とこのパーランのリズム隊との相性が抜群で、聴き応え十分である。特に冒頭の「My Girl Is Just Enough Woman for Me」から「Then I'll Be Tired of You」、5曲目の「Someone to Watch Over Me」から「Stolen Sweets」などのジャズ・スタンダード曲がとても良い雰囲気で味わいがある。小粋なジャズとして、小粋なテナー・サックス盤として、お勧めの好盤である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月25日 (水曜日)

グラント・グリーンの初リーダー作

グラント・グリーン(Grant Green)。基本的にブルーノートお抱えのギタリストで、1970年代から80年代にかけて、彼のリーダー作が入手し難かったこともあって、我が国ではマイナーな存在であった。1970年代後半、僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、レコード屋やFM放送で、グラント・グリーンの名に触れることは全く無かった。その名を初めて知ったのは、ジャズ盤の紹介本を読んだ時だったなあ。それでも現物のLPを見ることは無かった。

でも、このギタリストの音と雰囲気が大好きなんだなあ。パッキパキ硬質なシングル・ノート奏法。シングル・ノートから滲み出るファンクネス。これが何とも、自分の心に吟線に触れるのだ。アドリブ・フレーズの弾き回しは「流麗で骨太でファンキー」。オルガンが入ると、そのブルージーさファンキーさが増幅される、ある種、不思議なシングル・ノートである。

Grant Green『Grant's First Stand』(写真左)。1961年1月28日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Baby Face Willette (org), Ben Dixon (ds)。グラント・グリーンの初リーダー作になる。初セッションは1960年11月であったがお蔵入りになっている(2001年に突如『First Session』としてリリースされた)。こちらはピアノ・トリオをバックにしたもの。当盤はオルガン+ドラムをバックにしたもの。
 

Grants-first-stand

 
グラント・グリーンのギターが持つ圧倒的な個性「こってこてなファンクネス」を引き立てるには、当盤の様なオルガン・トリオが正解だろう。ピアノ・トリオがバックでは上品過ぎる。そういう面では『First Session』をお蔵入りにしたのは正解と言えば正解。ブルノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼、恐るべしである。

この初リーダー作において、パッキパキ硬質なグリーンのシングル・ノート奏法は既に確立されている。ブルージーでファンキー漂う、シングル・トーンが基本のギター・フレーズはとても個性的。一聴すれば直ぐに「グラント・グリーン」と判るほどの判り易さ。グリーンのギターの持つ「こってこてなファンクネス」が、ファンキーなオルガンの伴奏で増幅されている。

初リーダー作なので、グラント・グリーンのギターがちょっと「神妙」になっているところが微笑ましい。グリーンのギターって意外とアグレッシヴ。しかし、負けずにウィレットのオルガンがアグレッシヴかつプログレッシヴで、全編に渡ってかなり硬派でアグレッシヴな、加えて、無骨で先進的な響きを宿しているところがこの盤の特徴。ソフト&メロウな俗っぽいファンキー・ジャズでは決して無い。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月24日 (火曜日)

エラとパスの小粋なデュオ盤

パブロ・レーベルは、元ヴァーヴのオーナー、ノーマン・グランツによって、1973年に設立された。クロスオーバー〜フュージョン・ジャズ流行の時代に、レジェンド級のジャズマンを集めて、純ジャズのアルバムをリリースし続けた、骨のあるレーベルである。僕がちょうどジャズを本格的に聴き始めた頃、純ジャズ系のアルバムが入手し易いレーベルの1つだった。

1970年代での評価については、「昔の名前で出ています」的だの、昔の終わったジャズマンを集めた「懐メロジャズ」だの、我が国ではあまり評判は良くなかった。が、アルバムをちゃんと聴けば判るが「そんなことは無い」。平均的に「内容の整ったメインストリームな純ジャズ」のオンパレードで、聴いていて楽しいジャズばかりである。

Ella Fitzgerald & Joe Pass『Take Love Easy』(写真)。1973年8月28日、米国西海岸、LAでの録音。Pablo 2310-700 Seriesの702番。パブロ・レコードのカタログの2番目。ちなみにパーソネルは、Ella Fitzgerald (vo), Joe Pass (g)。モダン・ジャズギターの達人ジョー・パスのみを伴奏に従えて、エラ・フィッツジェラルドが唄うスタイル。
 

Take-love-easy-1

 
ギターだけの伴奏で唄う。シンプルだが、歌唱、ギターともに、かなりの力量が無いと飽きが来てしまい、LPサイズの所要時間がもたない。が、そこはまずは、ギターの達人「ジョー・パス」。ソロでも聴かせるギターを弾くくらいにそのテクニックと歌心は素晴らしいものがあり、ギター1本ではあるが、パスのギター伴奏は安心して身を委ねられるレベルである。

この盤の録音時、エラは56歳。ヴォーカリストとして、油の乗りきったベテランの域に達して、歌唱における説得力が半端ない。特にこの盤、バラード曲中心の選曲なので、その説得力に拍車がかかる。そもそも、ギター1本の伴奏である。ばりばりスキャットは無いだろう。バラード曲をジャジーに小粋に、しっとりしっかり唄い上げていく。ついつい引き込まれていく自分が判る。

とにかく、エラの歌唱テクニックは素晴らしい。ギター1本の伴奏なので、アップテンポの曲は無いが、その分、バラード曲のジャジーな歌唱にグッとくる。エラは盛りが過ぎているのでイマイチとか、若い頃と比べて、やれ「キレが無い」だの、やれ「ダイナミックさが薄れた」だの、好き勝手な評論も見るには見るが気にすることは無い。優れた女性ジャズ・ボーカル盤として一聴に値する内容である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月23日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・5

僕なりの超名盤研究の5回目。40年以上、ジャズ盤を聴き続けてきて、今でも新盤は極力押さえて聴き続けている場合、こういう超名盤の類については、時間の関係上、なかなか聴き直すチャンスが無い。

この20年辺りはテーマを決めて、そのテーマに合致したジャズ盤を聴き直したり、リイシューされた初聴の盤や月毎にリリースされる新盤を聴いたりしている。超名盤を聴き直すまとまった時間がなかなか取れないのだ。よって、今回の「僕なりのジャズ超名盤研究」のシリーズって、超名盤を聴き直す「またとない機会」で、これはこれで実に楽しい時間を過ごさせて貰っている。

『Helen Merrill』(写真左)。別名『Helen Merrill With Clifford Brown』。1954年12月の録音。ヘレン・メリルの初リーダー盤。ちなみにパーソネルは、Helen Merrill (vo), Clifford Brown (tp), Danny Bank (b-cl, fl, bs), Jimmy Jones (p), Barry Galbraith (g), Milt Hinton, Oscar Pettiford (b), Osie Johnson, Bobby Donaldson (ds), Quincy Jones (arr, con)。

「ニューヨークの溜息」と謳われたヘレン・メリルの代表的名盤である。そして、早逝の天才トランペッター、クリフォード・ブラウンとの優れた共演でも有名。アレンジャーに、若手の優秀なアレンジャーとして活躍していたクインシー・ジョーンズを採用。

ヘレン・メリルは1930年生まれなので、この盤の録音時は24歳。クリフォード・ブラウンの起用も、クインシー・ジョーンズの起用も、ヘレンの意志だったというから凄い。
 

Helen_merrill

 
1950年代前半のジャズ・ヴォーカル盤としては、確かにアレンジが優れていて、とってもモダンなイメージがする。今の耳で聴いてもあまり古さを感じさせないアレンジは、さすが「Q(クインシー)」である。

この優れたモダンなアレンジに乗って、ヘレン・メリルの歌伴を担当するクリフォード・ブラウン(ブラウニー)のトランペットが凄い。ヘレンは肉声で唄い、クリフォードはトランペットで唄う。つとに有名なのは2曲目の「You'd Be So Nice to Come Home To(邦題:帰ってくれたら嬉しいわ)」のブラウニーだが、実は全曲全編に渡って、ブラウニーのトランペットが炸裂しまくっているから、これまた凄い。

しかも、今回、よく聴いてみると、ヘレン・メリルのヴォーカルを引き立て、ヘレン・メリルのヴォーカルに寄り添うべく、トランペットの音色を調節している。前奏・間奏時には、張りのある疾走感溢れるブリリアントな音色。ヘレン・メリルのヴォーカルに寄り添い、ユニゾン&ハーモニーを奏でる時は、柔らかで包み込む様なウォームな音色。ブラウニーのトランペットのテクニック、恐るべしである。

ヘレン・メリルのヴォーカルの素晴らしさは言うまでも無い。ニューヨークの溜息、ヘレンのボーカル全開。聴いていて爽やかで、聴いていてクール。判り易くて、聴き易いボーカル。「ニューヨークの溜息、日本の恋人」と形容されるのが、とても良く理解出来るヘレンのボーカルである。

凄く久し振りにこの超名盤を聴いたのだが、やっぱり「良いものは良い」。ヘレンの歌唱とクリフォードのトランペットとの「奇跡の邂逅」の記録である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月22日 (日曜日)

サドの最終リーダー作である。

Thad Jones(サド・ジョーンズ)のトランペット&コルネットはかなりの腕前である。サドのキャリアの途中、サド・ジョーンズ=メル・ルイス・オーケストラ(サド=メル・オケ)の活躍が目覚ましかったこともあって、サドのトランペッターとしてのキャリアにスポットライトが当たることがあまり無かったようだ。

もともと、サド・ジョーンズはカウント・ベイシー楽団で人気No.1のトランペッターとして1953年から活躍、1950年代後半には、ブルーノートに優れたリーダー作を残していて、トランペッターとしての力量は優れたものがあった。

サド=メル・オケにおける在籍期間が1965年から1978年だったので、その間、サド=メル・オケの共同リーダーとしての活動中は、トランペッターとしてのリーダー作が無かったので、仕方の無いところかもしれない。

Thad Jones『Three And One』(写真左)。1984年10月4日の録音。スティープルチェイス・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Thad Jones (cor), Ole Kock Hansen (p), Jesper Lundgaard (b), Ed Thigpen (ds)。リーダーのサド・ジョーンズのコルネットがフロント一管の「ワン・ホーン・カルテット」な編成である。

サドはサドメルのオーケストラを抜けた後、デンマークを拠点として活動しており、この盤は、デンマークの首都コペンハーゲンを拠点とするステープルチェイス・レーベルでの録音になる。
 

Three-and-one-1

 
溌剌と躍動感溢れるブリリアントなサドのコルネット。しっかり芯が入った、力感溢れる吹きっぷりだが、メロディアスで柔らかな音色には、思わず「聴き惚れる」。ピッチがしっかりと合っていて、繰り出すフレーズはどれもが美しい。

ピアノのハンセンとベースのルンドガードは、デンマーク出身の地元ジャズマンであるが、なかなか健闘している。ドラム担当は、1974年からコペンハーゲンに移住している、燻し銀ドラマー、エド・シグペン。このシグペンの小粋なドラミングがカルテットの演奏全体をしっかり引き締めている。

タイトル曲の「Three And One」は、ジョーンズ兄弟が揃って初めて吹き込んだアルバム『Keepin' Up With The Jones』に初収録された、サド作の佳曲。

ハンク、サド、エルヴィンの3人兄弟(Three)に、ベーシストのエディ・ジョーンズ、つまり別のジョーンズ(One)という、ジョーンズ3兄弟に捧げた、ジャズ・スタンダードとなったサドの代表曲のひとつで、この盤においては、力感溢れる聴き応えのある演奏になっていて、実に良い味を出している。

サドが亡くなったのは1986年。この盤が吹き込まれたのは1984年の10月。サドが亡くなる2年前、リーダー作としてはラスト・レコーディングとなってしまった。しかしながら、この盤ではリーダー作としてのラスト・レコーディングとは思えない、溌剌としたサドのコルネットが聴けるのが嬉しい。スティープルチェイス・レーベル、本当に良い盤を残してくれた。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月21日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・4

「僕なりの超名盤研究」の第4回目。この盤については、どのジャズ盤紹介本でも「ジャズの代表的な演奏トレンドであるハードバップの始まりを記録した盤」としている。いわゆる「ハード・バップ誕生の瞬間」を記録した歴史的名盤と評価されている。が、売り文句としては実にキャッチャーな表現だが、この盤が記録したライヴ・パフォーマンスを境目に、ハードバップが一気に展開されていった訳ではない。

Art Blakey『A Night at Birdland Vol.1&2』。1954年2月21日、NYのライブスポット、バードランドでのライヴ録音。邦題『バードランドの夜』。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Clifford Brown (tp), Lou Donaldson (as), Horace Silver (p), Curley Russell (b)。アナウンスは「Pee Wee Marquette」。バードランドの夜は、このピー・ウィー・マーケットの熱気溢れる紹介アナウンスから幕を開ける。臨場感抜群である。

さて、この『バードランドの夜』、この演奏がハードバップの萌芽とされる訳だが、聴いてみてどこがそうなんだか、特に、ジャズを聴き始めた頃、このライヴ盤を聴いても「さっぱり判らん」が正直なところ。

ところで「ハードバップ」とは何か、であるが、Wikipediaを紐解き、要約すると「アメリカ東海岸で、1950年代に始まり1960年代まで続いた演奏スタイル。一般的なジャズサウンドのイメージはこのスタイルと言える。アレンジなどにも工夫を凝らし、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現することができ、大衆性と芸術性の共存を可能とした演奏スタイル」とのこと。

これでもまだ「良く判らん」なので、他の演奏スタイルと比較してみる必要がある。ハードバップに至るまでのジャズの演奏形式の変化である。これをやらないと、この『バードランドの夜』を聴いても、何が「ハード・バップ誕生の瞬間」を記録した歴史的名盤なのか、さっぱり判らないままである。
 

A-night-at-birdland

 
ハードバップの前の流行の演奏スタイルは「ビ・バップ」。最初に決まったテーマ部分を演奏した後、コード進行に沿いつつ、自由な即興演奏を順番に行う形式。演奏テクニックとアドリブ・フレーズの優秀性に重きが置かれ、スインギーな側面やメロディーを楽しむ側面はそぎ落とされ、アクロバティックな即興演奏だけが着目される演奏形式となった。音楽としての「聴き手」の嗜好を無視した内容に陥り易く、ジャズの大衆性が阻害され易い演奏形式ともいえる。

で、比較である。まず、ビ・バップの演奏の雰囲気は、Dizzy Gillespie『Groovin' High』(2015年7月28日のブログ参照)などで感じることが出来る。次に、ビ・バップからハードバップの過渡期の雰囲気は、Charlie Parker『The Genius Of Charlie Parker, #3 - Now's The Time』(2021年4月8日のブログ参照)、そして、ハードバップ初期の雰囲気はこの『A Night at Birdland Vol.1&2』で感じることが出来る。

特に面白いのは、ビバップからハードバップの過渡期の雰囲気を記録してパーカー盤。ビバップの祖の一人、パーカーがメインとなっているリーダー作だが、内容的には、ハードバップの特色である「アレンジなどにも工夫を凝らし、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現する」部分の兆しがこの過渡期の盤に記録されている。確かにこのパーカー盤はビ・バップでは無い。

そして、今回の『バードランドの夜』。確かに、この盤の演奏は明らかに「アレンジなどにも工夫を凝らし、メロディアスで聴きやすいと同時に、演奏者の個性や情熱を表現する」部分が貫かれている。曲のコードをより細かく分けたり、テンポの速くして演奏をより複雑にしたり、演奏のニュアンス、バリエーション豊かにして、演奏の表現力を豊かにした、いわゆる「聴かせること」そして「アーティスティックなこと」を前面に押し出した演奏は聴き応え十分。

このライヴ盤には、ハードバップの要素がぎっしり詰め込まれている。しかも、このアルバムはスタジオ盤では無い、一発録りのライブ録音。つまり、1954年には、皆が皆では無いにしろ、このハードバップ的な演奏がライヴで、一発録りな雰囲気で行われていたのである。当時のジャズの演奏レベルの高さというものを改めて感じる。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月20日 (金曜日)

ヴィクター・フェルドマンの個性

ジャズのアルバム蒐集の中で「ジャケ買い」という言葉がある。アルバムの内容を全く知らない状態で、店頭などで見かけたジャケットの好印象だけでアルバムをゲットするという行為を指すのだが、ジャズのアルバムについては、この「ジャケ買い」が意外と良く当たる。ジャズ盤には「好盤には好ジャケット」という法則が存在する位だ。

しかし、当然、その逆も存在する訳で「こんなジャケットで内容が良い訳がない」と判断して、そのアルバムをジャケットのイメージだけで、敬遠する事だってある。いわゆる「逆ジャケ買い」である(笑)。ジャズ盤には、これはなあ、と呆れるイメージのジャケットもある訳で、こういう「逆ジャケ買い盤」は、ジャズ盤紹介本などで内容が良い事を確認していても、特にLP時代は、レコード屋のカウンターに持って行くのには、かなりの勇気が必要だった。

『The Arrival of Victor Feldman』(写真左)。1958年1月21 & 22日、LAでの録音。ちなみにパーソネルは、Victor Feldman (vib, p), Scott LaFaro (b), Stan Levey (ds)。ヴァイブとピアノの二刀流、ヴィクター・フェルドマンのトリオ盤である。ベースに伝説の早逝ベーシスト、スコット・ラファロの名前がある。ドラムは、西海岸ジャズの燻し銀ドラマー、スタン・レヴィーが担当している。

このジャケットを見れば、まず進んで購入する気にはならないだろう(笑)。この盤は、フェルドマンが英国から米国LAへ移住したタイミングで録音されたトリオ盤なので「ヴィクター・フェルドマンの到着」となっている。つまり、米国西海岸に来たぞ、という意味なんだが、それが、このお茶目なジャケットになるかなあ(笑)。とにかく、このジャケットは「キワモノ」。でも、内容的には、フェルドマンのピアノとヴァイブの個性がとても良く判る、充実したものになっている。
 

The-arrival-of-victor-feldman-1

 
ヴィクター・フェルドマンのピアノは、音数を選んだ、シンプルでスピード感が爽やかなフレーズが個性。言い換えると、レッド・ガーランドのピアノからファンクネスを半分減じた感じ。後にマイルスがガーランドの後任候補として目を付けたのも頷ける。ちなみに、マイルスの十八番チューンの「Seven Steps to Heaven」はフェルドマン作である。フェルドマンはLAでのスタジオワークを優先すべく、マイルスの誘いを断っている。その代わりにマイルスの下に参加したピアニストがハービー・ハンコック。

そんなフェルドマンのピアノを堪能出来る。改めて、聴き耳を立ててみると、フェルドマンのピアノの「爽やかなスピード感」が印象に残る。流麗という表現とは異なる、クールで爽やかな滑らかさは、フェルドマン独特の個性だろう。フェルドマンのヴァイブはピアノと同じイメージの「クールで爽やかな滑らかさ」が個性。ファンクネスが皆無のヴァイブは硬質な透明感だけが残って、まるで欧州ジャズの様な響き。これまた、ファルドマン独特の個性だろう。

この盤、スコット・ラファロのベースを聴くべき盤とする向きもあるが、確かに、この盤でのラファロのベースはハイテクニックで唄うが如くのベースは素晴らしい。しかし、トリオ演奏におけるインタープレイを前提に考えると、あまりに前面に出すぎて、バランスに欠ける。とにかく、俺は凄いんだ、という感じの自己顕示欲が滲み出るベースで、「トリオ演奏の中でのベース演奏」として聴くと、ちょっと前へ出過ぎかな、と思う。ラファロのベースだけを聴く、という向きには、確かに最適のアルバムの一枚ではある。

しかし、このジャケット、誰が考えたのだろう。ユーモアがあって面白い、という評価もあるが、今の審美眼で見直してみても、これはちょっと酷いなあ、と思ってしまうのだ(笑)。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月19日 (木曜日)

コッテコテにスムースなジャズ盤

1970年代後半から1980年代前半にかけて大流行したフュージョン・ジャズ。フュージョン・ジャズの音の大きな特徴である「ソフト&メロウで心地良い響き」をメインに、電気楽器中心のコンテンポラリーなジャズに仕立て上げたのが「スムース・ジャズ」。聴き心地の良いキャッチャーなフレーズとバカテクな演奏力が「命」の「スムース・ジャズ」である。

Dave Koz & Cory Wong『The Golden Hour』(写真左)。2021年6月のリリース。この新盤のキャッチ・コピーが「LA コンテンポラリー・ジャズ界の重鎮サックス奏者=デイヴ・コーズと、注目を集めるギタリストのコリー・ウォンがコラボ」。久々のコッテコテ「スムース・ジャズ」な盤である。

コリー・ウォンがプロデュースを担当していて、バックバンドもコリー・ウォンのバンドをメインにしているので、イメージ的には、コリー・ウォンのバンドにディヴ・コーズが客演したイメージかと思う。プリンスのチーフ・ホーン・アレンジャーであるマイケル・ネルソンによるホーン・アレンジを担当していて、コーズのサックスをしっかりとフューチャーしている。
 

The-golden-hour-1

 
全編に渡って、ロック・ビートに乗りつつ、ジャジーな雰囲気を醸し出すパフォーマンスが実に「スムース・ジャズ」らしい。このジャジーな雰囲気が「ソフト&メロウで心地良い響き」を演出していて、ロック・ビートで演奏全体の躍動感を醸し出している。出てくるフレーズもキャッチャーで心地良く、とても良く出来たコンテンポラリー・ジャズだな、という印象を持つ。

スムース・ジャズだからといって、ただ単純に「聴き心地の良さ」だけを追求しているのでは無いのが、この盤のニクいところ。アドリブ・フレーズは良く練られており、アレンジもとても良く考えられているなあ、という印象。演奏を聴いていて、印象に残るフレーズ、テクニック、アレンジが散りばめられていて、全編、飽きることが無い。

我が国では「キワモノ」扱いされている「スムース・ジャズ」であるが、どうして、フュージョン・ジャズの発展形として、十分に鑑賞に耐える「演奏のトレンドのひとつ」として、これはこれで「コンテンポラリーなジャズの一形態」であると思う。避けて通るには惜しい、充実した内容であると僕は思う。ジャケットはシンプル過ぎて、ちょっと「オヨヨ」ではあるけれど...(笑)。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月18日 (水曜日)

1970年代ECMの「隠れ名盤」

ECMレーベルの「ハウス・ジャズマン」達は、ECMレーベルの音のカラーにばっちりフィットしていて、ECMレーベルの音の統一感に大きく貢献している。総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャーのプロデュース力が強烈なのと、「ハウス・ジャズマン」達がもともと持っている「自然に発散する音のカラー」がECMレーベル向きなのと、その両方の相互作用の成せる技だろう。

Kenny Wheeler『Deer Wan』(写真)。1977年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Wheeler (tp, flh), Jan Garbarek (ts, ss), John Abercrombie (el-g, el_mandolin), Dave Holland (b), Jack DeJohnette (ds), Ralph Towner (12-string g (track 2))。カナダのトロント出身のフリューゲルホルン&トランペットの名手ケニー・ホイーラーの作品。

ECMレーベルのアルバムは、どれもが「ECMレーベルの音のカラー」が反映されているのだが、この盤は、それらに増して「ECMレーベルの音のカラー」が強烈に濃厚な内容。パーソネルを見渡すと、ギターにアバークロンビー、サックスにガルバレク、ベースにホランド、ドラムにデジョネット、2曲目のみだが12弦ギターのタウナー、という、当時のECMのお抱えジャズマンで占められている。
 

Deer-wan

 
1960年代後半からスタートしたECMレーベル。1970年代中盤にはレーベルのカラーが認知され、セールスも充実して、ECMがジャズ・レーベルとして基盤を確立。この盤が録音された1977年は、ECMレーベルが一番充実した時期。ここに、アイヒャーの強烈なプロデュースが入るのだから、そりゃ〜「ECMレーベルの音のカラー」が思いっ切り充満するよな〜。

ホイーラーの端正な浮遊感溢れるトランペットが幻想的。多重録音がその雰囲気を増幅する。そこに、これまたくすんだ浮遊感溢れるアバークロンビーのエレギが絡む。そこに、クールで硬質なガルバレクのサックスが切れ込む。緩急自在、硬軟自在なベース&ドラムのリズム隊は、ECM独特のニュー・ジャズなリズム&ビートを繰り出していく。

4ビートなど、スインギーなジャズとは全く異なる、ECMレーベルのニュー・ジャズな音世界ではあるが、その音世界の中で展開される即興演奏は、それはそれはアーティスティックで見事なもの。そういう意味でも、この盤にある演奏は立派な「ジャズ」である。この盤、我が国ではあまりそのタイトルが話題に上らないが、ECMレーベルにおける名盤中の名盤の一枚だと思う。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月17日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・3

「僕なりの超名盤研究」の第3回目。僕はジャズを聴き始めた頃から、アルト・サックスと言えば「アート・ペッパー(Art pepper)」がお気に入り。1925年、米国カリフォルニア出身、破滅型のジャズ・レジェンド。麻薬禍との葛藤の中、刑務所に出たり入ったり。そんな劇的な人生の中で、多くのジャズ名盤を残しつつ、1982年6月、56歳で鬼籍に入っている。

ペッパーのアルト・サックスは「力強くて流麗」。力感溢れる、しっかりとした吹きっぷりだが、出てくるアドリブ・フレーズは「流麗」。アルト・サックスがフルフルで良く鳴っている。ペッパーのアルト・サックスによる「力強くて流麗」なアドリブ・フレーズは、何時聴いても「惚れ惚れ」する。

1960年代後半、薬物中毒者のためのリハビリテーション施設シナノンに収監されるが、その前後で、ペッパーの演奏スタイルは180度変わるとされるが、僕はそうとは思わない。

シナノン収監前は、典型的な米国西海岸ジャズ、西海岸のハードバップなスタイル。シナノン収監後は、コルトレーンのフォロワーとして、フリーキー&スピリチュアルな吹奏が加わるが、どちらの演奏スタイルも根っ子は「力強くて流麗」なアルト・サックス。シナノン収監後は、演奏スタイルの幅が広がったと解釈すべきだろう。
 

Surf_ride

 
そんなペッパーのシナノン収監前の名盤が、Art Pepper『Surf Ride』(写真左)。1952年3月の録音。アート・ペッパーの初リーダー作である。ちなみにパーソネルは、Art Pepper (as), Hampton Hawes (p), Joe Mondragon (b), Larry Bunker (ds)。アート・ペッパーのアルトのワンホーン作である。

アルバムの内容は聴けば判る、典型的な米国西海岸ジャズ。ほど良いアレンジが施された「聴かせるジャズ」である。ペッパーの「力強くて流麗」なアルト・サックスが、この米国西海岸ジャズの特徴である「聴かせるジャズ」に拍車をかける。収録された全ての曲において、ペッパーのアルト・サックスの「力強くて流麗」な吹きっぷり、「力強くて流麗」なアドリブ・フレーズが印象に強く残る。

加えて、このアルバムの演奏を聴くと、米国西海岸ジャズの特徴と個性がとてもよく判る。良くアレンジされた構成。響きが心地良いユニゾン&ハーモニー。演奏の質は中音域を十分に活かして「軽やか」。アドリブ・フレーズは「小粋で洒脱」。ポップで聴き心地の良いアンサンブル。米国西海岸ジャズの好例としてもお勧め。

『Surf Ride』=「波乗り」=黄色ビキニのお嬢さん、的なイラスト・ジャケット。いや〜、飛び切り「アメリカン」である。初めて目にした時には「ドン引き」したなあ。が、このジャケットに臆すること無く、この盤はジャズ者万民の方々に聴いて欲しい超名盤である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月16日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・2

「僕なりの超名盤研究」の第2回目。今日は「Charlie Parker(チャーリー・パーカー)」。ビ・バップの祖の一人とされる。破滅型ジャズマンの典型的な例として、よくその名が挙げられる。が、パーカーの天才的パフォーマンスと破滅型の生き方とは全く因果関係が無い。純粋に、パーカーはジャズのアルト・サックス奏者として、その才能は突出していて、彼のアドリブ・パフォーマンスは他の追従を許さない。いわゆる「希有なジャズ演奏家」の一人である。

僕がジャズを聴き始めた頃、ジャズ入門書については、とにかく「パーカーを聴け、パウエルを聴け、コルトレーンを聴け」だった。特に、パーカーを聴かないと、パーカーを理解出来ないとジャズは理解出来ない、などという極論が横行していた時代で、ジャズを聴き始めた頃、とにかくパーカーを聴かないと、という強迫観念があった(笑)。

Charlie Parker『The Genius Of Charlie Parker, #3 - Now's The Time』(写真左)。1952年から53年にかけての録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Parker (as), Al Haig (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。チャーリー・パーカーのアルト・サックス1管がフロントの「ワン・ホーン・カルテット」編成。パーカー最晩年の録音で、この盤の録音の2年後、1955年に心不全でパーカーは逝去する。

僕はジャズ者初心者の頃、ジャズ入門書でお勧めされていたのが、ダイヤル・セッションやサヴォイ・セッションのコンプリート盤で、これにはアルバム収録に採用されたテイク以外に、別テイクや失敗テイクなどがごった煮で入っていて、それらを全て聴かないと、理解出来ないと駄目、なんていう評論が多かった。でも、ジャズ者初心者で、別テイクや失敗テイクを聴く意味など判る訳も無く、ほとんど修行僧の趣で、我慢して拝聴すること強いられていた。
 

Thegeniusofcharlieparker3

 
実は、この盤、僕がパーカーを初めて聴いたアルバムで、この盤で良かったなあ、と今でも思っている。ダイヤル・セッションやサヴォイ・セッションのコンプリート盤から入っていたら、パーカーの演奏に親しみを持って聴くことが出来る時期は、相当、後になっていたような気がする。また、パーカーが活躍した最盛期は1940年代後半。まだまだ録音技術は低く、音が良くない。音が良くない盤で、パーカーのパフォーマンスの素晴らしさを聴き取るのは、ジャズ者初心者の耳にはハードルが高かった。

そういう意味で、この『Now's The Time』というVerveレーベル盤は、1952年から53年の録音なので、まずまず音が良い。録音が良いので、この盤を聴き直して気付くのは、パーカーの吹くアルト・サックスって、とびきり楽器が凄く良く鳴っているということ。パーカーの演奏テクニックについては評価が高いのだが、テクニック以前に、パーカーの楽器の吹き方、鳴らし方が素晴らしい。このパーカーのアルト・サックスの吹き方、鳴らし方は、歴代のジャズマンの中で、今でも飛び抜けて素晴らしい。

この『Now's The Time』には、「Kim」「Cosmic Rays」「Chi Chi」の別テイクが収録されている。しかし、この別テイクの選び方が秀逸で、アレンジの違い、アドリブ展開の違い、吹き方や表現の違い、本テイクと別テイクを聴き比べることによって、そんな「ジャズの即興演奏の妙」が良く判るのだ。こういう形でのテイク違いの収録は、ジャズ者初心者にとってもその意味が良く判る。

録音の良さ、別テイクの収録の工夫、この盤は、その2点で僕にとっての「パーカーのイチ推し盤」となっている。1952年から53年という、ハードバップ初期に差し掛かる時期の「充実し成熟した演奏テクニック」を基にした流麗で熱い演奏で「ビ・バップ」を唄い上げていく。この盤を聴くことによって、何となく雰囲気で「ビ・バップ」が理解出来ると思う。初めはそれで良い。それから長年、ジャズを聴き続けて、ジャズ理論の勉強を進めるうちに理屈は後からついてくる。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月15日 (日曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・1

全3巻の3巻目が刊行されて、小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』が完結した。僕はスイング・ジャーナルに掲載されている時代から、小川隆夫さんのジャズ評論や文筆が大好きで、内容の重複が無い限り、ほぼ全部の著作物を所有している。特に、この『ジャズ超名盤研究』は読み応えのあるジャズ盤紹介本で、ジャズ歴45年の僕でも、この本で、いわゆる「超名盤」について、復習させてもらっているくらいである。

ということで、この小川隆夫さん著の『ジャズ超名盤研究』の超名盤を参考にさせていただきつつ、「僕なりのジャズ超名盤研究」をまとめてみようと思い立った。この歳になると、なかなか「超名盤」について聴き直す機会が無いだけに、楽しみながらの聴き直しになっている。

Billie Holiday『Twelve Of Her Greatest Interpretations - Strange Fruit』(写真)。1939年4月20日、1944年3月25日、4月1, 8日の録音。1959年のリリース。邦題『奇妙な果実』。伝説の女性ジャズ・ボーカリスト、ビリー・ホリデイの最高傑作にしてジャズヴォーカル屈指の名盤。僕がビリー・ホリディに関するアルバムの中で一番最初に入手した盤である。

実は、ジャズ者初心者の頃、ビリー・ホリディの歌唱について、全く響くところが無かった。ただ、彼女の唄う曲の中に「Strange Fruit(奇妙な果実)」があって、この曲の内容、この曲の持つ意味から、ジャズの本質の一部を感じ取る事が出来ると思ったからだ。
 

Strange-fruit

 
当時、僕は大学生で歴史を学んでいた。そして、自分の専門分野の中に米国南北戦争史があった。その延長線上に「ジャズ」あって、人種差別問題は僕の中で、ジャズとは切っても切れない関係にあった。

ビリー・ホリディの歌唱はジャズ・ボーカルの王道をいくものである。が、彼女の歌唱の良さが理解出来る様なるまでに10年程度を要した。今回、聴き直してみて、他のレジェンド級の女性ボーカリストと比較すると、癖が無く、意外とシンプルな歌唱なのに改めて気が付いた。感情をコントロールした、シンプルな唄いっぷりには凄みを感じる。情念がこもった歌唱とでも言ったら良いのか、説得力が半端ない。

古い録音なので音は良くない。この録音の悪さに慣れれば、ビリー・ホリディの歌唱の良さが心に響いてくる。ただ、ジャズ者初心者の頃は、この録音の悪さが気になって、この盤の持つ良さに気が付くことが難しい。ジャズ者初心者にして、この録音の悪さが心地良く感じれば問題ないんだけど。

ということで、この盤はジャズを聴き始めて、ジャズを聴くことが楽しくなって、ジャズの歴史なども学んでみたいと思う、ジャズ者中堅以降の方々に、改めて聴き直して貰いたい「超名盤」である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月14日 (土曜日)

優れた内容のフリー・ジャズ

フリー・ジャズというのは、無手勝流に、思うがままに演奏する、難解で耳障りなジャズという解釈があるが、それは「レベルの低い」フリー・ジャズだろう。

本来、フリー・ジャズは、従来のジャズの事前の決め事である「短い譜面」すら無い、必要最低限の決め事だけで(誰が先に演奏するかとか、基調となるコードとか)、即興演奏を展開するもの。メンバーそれぞれは、先行する楽器の即興演奏を聴いて、それに反応した即興演奏を返す。ユニゾン&ハーモニーをするのも、個々がソロを展開するのも、メンバーそれぞれの「あうんの呼吸」で対応する。

このフリー・ジャズというのは、ジャズの基本となる演奏知識、演奏内容、演奏技術に長けている必要があって、もともとフリー・ジャズというのは、優れたジャズマンだけが演奏出来るフォーマットである。そもそも、無手勝流に、思うがままに演奏するものでは無い。いわんや「難解で耳触り」なものでは決して無い。

ただ、ハードバップ期の4ビートなジャズだけが「ジャズ」だ、とするならば、このフリー・ジャズは、いかに高度な即興演奏であっても「ジャズ」では無いのだろうなあ。でも、優れた内容のフリー・ジャズも立派な「即興演奏を旨とするジャズ」である。
 

Trinity

 
佐藤允彦『Trinity』(写真)。Enjaレーベルの2008番。1971年11月3日、ドイツはミュンヘンの「Studio 70」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Masahiko Sato(佐藤允彦)(p), Peter Warren (b), Pierre Favre (ds, perc)。Enjaレーベルの総帥プロデューサーのホルスト・ウェーバーの招きでミュンヘンに渡った佐藤のライヴ・パフォーマンスである。

出だしから、切れ味の良い、間を活かしたフリーなジャズが展開される。それぞれの楽器はとても良く鳴っていて、耳にしっかりとした印象を残してくれる。3人の相性はとても良かったみたいで、佐藤のピアノがリードする旋律イメージを、ベースとドラム、それぞれが、的確に、時にはイメージを膨らませて応対する。限りなくフリーな演奏ではあるが、基本は「とても自由度の高いモーダルな演奏」。

フリー・ジャズの好例がこの盤に詰まっている。スタンダード曲中心の4ビートなジャズからすると難解には違いないが、クラシックのバルトーク辺りや、優れた内容の現代音楽をイメージすれば、決して難解な内容では無い。ジャズ者初心者の方々にはお勧めしないが、ジャズを聴くことが趣味となったジャズ者中堅の方々には一聴をお勧めしている。この優れた内容のフリー・ジャズには「良質な即興演奏の妙」がてんこ盛りである。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月13日 (金曜日)

デイヴ・ホランドのエレベが凄い

この新盤を聴いた時、「この人、幾つになったんだっけ」と思った。1946年10月、英国生まれなので今年で75歳になる。75歳と言えば、もはや「ジャズ・レジェンド」である。僕がジャズを聴き始めた1970年代後半には、ECMレーベルをメインに先鋭的なフリー・ジャズやコンテンポラリーな純ジャズを展開していた。なんだか、強面のベーシスト、というイメージが強かった。それは今でもその印象が強い。

Dave Holland『Another Land』。2019年9月10-11日、NYでの録音。つい先月のリリース。ちなみにパーソネルは、Dave Holland (b), Kevin Eubanks (g), Obed Calvaire (ds)。音が分厚い演奏であるが、なんとギター、ベース、ドラムのいわゆる「ギター・トリオ」である。リーダーのデイブ・ホランドは、アコースティック、エレクトリック、両方のベースをガンガンに弾きまくっている。

演奏は、全て非4ビートのいわゆる「コンテンポラリーな純ジャズ」。1970年代後半から1980年代前半の、ECMレーベルお得意の「ニュー・ジャズ」な雰囲気が満載。しっかりと切れ味の良いファンクネスが入っているところから、エレ・マイルスの延長線上にある「エレ・ジャズ・ファンク」な雰囲気も濃厚。ただ音作りはスマートでシンプルなので、ファンクネスが耳にもたれることは無い。
 

Another-land-1

 
さすが、リーダーのホランドのベースが凄い。アコースティック・ベースは、いつもの、ホランドならではの重力感と鋼性溢れる骨太なものだが、この盤では、とりわけ、エレクトリック・ベースの弾きっぷりが凄い。ソリッドで切れ味の良いエレクトリック・ベースは、その重力感がホランドならではのもの。他のエレベには、この丸く固まった様な鋼性溢れるエレベの重量感は無い。

ケヴィン・ユーバンクスのエレギも「ワン・アンド・オンリー」な弾きっぷりが素敵で、過去のジャズ・エレギ、例えば、マクラフリンやディメオラあたりを引用して良さそうなものだが、ユーバンクスはそれを絶対にやらない。それと、この新盤を聴いて思ったのは、ホランドのベースとの相性の良さ。ギター・トリオというシンプルな編成で、これだけの厚みをある音を出すのだから脱帽である。

ドラムのカルヴェールも、アイデア豊富でアグレッシブなドラミングが魅力的。ホランドのベースとユーバンクスのギターに押されていないところが立派。円熟の非4ビートのエレトリックな「コンテンポラリーな純ジャズ」。何となく1970年代後半から1980年代前半のニュー・ジャズの雰囲気が漂うが、決して音やビートは古くない。その辺りは、このギター・トリオは良く心得たもので、今の「聴く耳」を飽きさせないところはさすがである。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月12日 (木曜日)

1974年のトミフラのソロ盤です

ネット上の音楽のサブスク・サイト。月額の一定料金で、様々なアルバムを聴くことが出来るのは便利なんだが、以前にリリースされた既出のアルバムのジャケットが、オリジナルと全く違っていることが多くあって、これには困りもの。お目当てのジャズ盤を特定する有力情報の1つが「ジャケット」。これが、全く違うものになっていると、その「特定」に困ることがある。

Tommy Flanagan『Solo Piano』(写真左)。1974年2月25日、スイスのチューリッヒでの録音。「名盤請負人」の誉れ高い、トミー・フラナガン(愛称「トミフラ」)の貴重なピアノ・ソロ作品である。が、あれっ、と思う。1975年録音のパブロレーベルから発売された『Comeback』、1977年にデノンから発売された『Alone Too Long』が彼の最初のソロ作品と言われていたはず。

この「やっつけ感」満載のいい加減なジャケットが故、最初「パチモン盤」かと思って見過ごしていたのだが、この盤、実は再発で、最初、2005年にリリースされた時、音源に別なピアニストが収録されていたことが発覚、即座にカタログから外され、長期にわたり廃盤になっていたもの。今回、その別なピアニストの音源を削って再発したものらしい。何だか、素性が怪しげなトミフラのソロ・ピアノ盤ではあるが、聴いてみると、恐らく全てのソロ・パフォーマンスがトミフラのものであると思われる。
 

Solo-piano-tommy-flanagan
 

このソロ・ピアノのパフォーマンスについては、トミフラが、エラ・フィッツジェラルドの歌伴を勤めていた1974年にスイスのチューリッヒで録音されたものとのこと。先に書いたが、これまでは1975年録音の『Comeback』、1977年リリースの『Alone Too Long』が、トミフラの最初のソロ作品だったのだが、このソロ・ピアノ盤は、さらにその前の録音になる。が、まあ、そんな記録的な要素は、トミフラのピアノを愛でるのには、あまり重要なことでは無い。

僕が聴いた音源は、収録曲は全11曲、収録時間46分のソロ・パフォーマンスである。収録曲は有名スタンダード曲で占められ、トミフラのピアノの個性とソロ・パフォーマンスとしての「アレンジの妙」がしっかりと確認出来る優れた内容。トミフラのパップでダイナミックな弾きっぷりが心地良い。

一旦活動を休止していたトミフラのカムバック盤は、パブロからリリースされた『A Day in Tokyo』(1975年の録音)とされていたので、その盤より1年早い、トミフラのソロ・ピアノ盤。そういう意味で、トミフラのカムバックは1974年ということになるのか。いやはや、不思議なソロ・ピアノ盤がリイシューされたものだ。2021年になっても、まだこういう音源がリイシューされるのだから、ジャズって面白い音楽ジャンルだと思うのだ。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 本日更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月11日 (水曜日)

変わった素性のピアノ・ソロ盤

とても変わった素性のピアノ・ソロ盤もある。音を聴けば、明らかにキース・ジャレットなんだが、タッチが少し違う。ピアノのタッチが重き霧クラシック寄りなのだ。しっかり堅実、端正に鍵盤を叩き、押し込む。昔、社会人になりたての頃、「秘密の喫茶店」で、ママさんにブラインド・テストみたいに聴かされた盤なんだが、しばらく忘れていた。

Dennis Russell Davies『Keith Jarrett / Ritual』(写真)。1977年6月の録音。1982年、ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Dennis Russell Davies (p)。デニス・ラッセル・デイヴィスのソロ・ピアノ盤。

デニス・ラッセル・デイヴィスは米国ジュリアード音楽院出身のクラシックの指揮者。ピアニストでもある。本業は指揮者、ピアニストは副業の位置づけだが、クラシック・ピアニストとしても十分に認められているらしい。 1944年生まれなので、このソロ盤の録音時は、まだ33歳。若きクラシックの有望株である。

改めて、この盤、キース・ジャレット作曲のピアノ・ソロ曲を、デニス・ラッセル・デイヴィスがピアノで弾く、という、ちょっと変わったソロ・ピアノ盤である。くどいようだが、キースは作曲のみで、演奏はしていない。
 

Ritual-dennis-russell-davis

 
さすがに、キース・ジャレットの作曲なので、演奏のそこかしこに「キース節」が散りばめられている。演奏を聴いていると、演奏の構成自体は、キースのソロ・パフォーマンスと同様で、キースのソロ・ピアノの即興演奏をそのまま、楽譜に落とした様な趣である。しかし、しばらく聴いていて「これってキースやん」って判る位なので、キースの紡ぎ出すフレーズって、思いっ切り個性的なんだなあ、と改めて感心する。

デニス・ラッセル・デイヴィスのピアニストとしての個性はほぼ無い。キースと比較すると、キースより、ピアノ・タッチがしっかり堅実、端正に鍵盤を叩き、押し込んでいる。高音域の切れ味についてはキースの方が先鋭的。アブストラクトにフリーに即興演奏として自由度を追求することは無い。あくまで基本はクラシック・ピアノ。キースの譜面通りに弾き進めている様子が強く感じられる。

このピアノ・ソロ盤の中にあるのは、キース独特の手癖やフレーズ、音のカラーや重ね方で、そういう意味では、デニス・ラッセル・デイヴィスのクラシックのピアニストとしての技術は相当高いものが有るように思う。

しかし、ユニークなソロ・ピアノ盤である。ネット上でのアルバム評を見ていると、この盤をキースのソロ・ピアノ盤と勘違いしている向きもある。まあ、無理も無いですね。でも、確かに、このピアノ・ソロ盤、キースのソロ・パフォーマンスの代わりとしても楽しめる内容になっています。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 本日更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月10日 (火曜日)

ケニー・ワーナーのソロ・ピアノ

このところ、酷暑の日が続くわ、台風は来るわ、で、エアコンの効いた部屋の中で、大人しく、シンプルで聴き心地の良いソロ・ピアノ盤を好んで聴いている。ソロ・ピアノというのは、そのジャズ・ピアニストの個性と志向がとても良く判る。そのピアニストの持つテクニックのレベルも判るし、今までに体験してきた音楽のトレンドも良く判る。

ケニー・ワーナー(Kenny Wener)。1951年11月、米ブルックリン生まれのジャズ・ピアニスト&コンポーザー。高校在学中からマンハッタン音楽大学のコースに参加、クラシックへの思いを深める。その後、ジャズへ転向。1970年にバークレー音楽大学へ編入。以降、多数の一流ミュージシャンと共演。また、盟友ジョー・ロヴァーノとのアルバムでも好演が聴ける。現在、NY在住で活動中。

Kenny Werner『Solo In Stuttgart』(写真左)。1992年6月10日、独シュトゥットガルトのSDR(Süddeutscher Rundfunk)のスタジオホールでの録音。ケニー・ワーナーのソロ・ピアノ盤。ケニー・ワーナーがシュトゥットガルト公演に臨んだ1992年は、ソロ・ピアノのパフォーマンスを追求し始めた頃。恐らく、ワーナーの初ソロ・ピアノ盤だと思う。
 

Solo-in-stuttgart

 
収録曲は「Dolphin Dance」「Lorraine My Sweet」「Blue in Green」「All the Things You Are」「Anniversary Waltz」「In Your Own Sweet Way」と、「グレイト・アメリカン・ソングブック(アメリカン・スタンダーズ)」をベースにしたもの。ソロ・パフォーマンスと相まって、ワーナーのピアノの個性と志向がとても良く判る。

テクニックはとびきり優秀。高速パッセージも難なくこなす。破綻や揺らぎは全く無い。リズム&ビートは仄かにアーシーではあるが、ファンクネスは希薄。欧州ジャズ系のピアノの響きである。タッチがやや骨太ではあるが、耽美的でリリカルな表現も上々で、エレガンス漂う洗練されたもの。尖った繊細さは無い。アブストラクトな表現も控えめではあるが素性確かなもの。

我が国ではあまり馴染みの無いピアニストではあるが、このソロ盤を聴く限り、本場NYで評価が高く、多くのジャズマンからの共演オファーを受けているのも頷ける。特にアメリカン・スタンダーズ曲における、その親しみやすいメロディに乗せたクリエイティヴなパフォーマンスは素晴らしいの一言。このケニー・ワーナーというピアニスト、もっと他のリーダー作を聴いてみたくなった。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月 9日 (月曜日)

イブラヒムのピアノの近況。

僕の大好きなピアニストの1人。フォーキーでワールド・ミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノを全面的に押し出して、そのまんまのジャズ・ピアノをずっとイチ押しで弾き続けているピアニストが「Abdullah Ibrahim(アブドゥーラ・イブラヒム)」。

1934年10月、南アフリカ連邦のケープタウン生まれ。1965年に米国に渡り、1968年にはイスラム教に改宗。モンクやエリントンの影響を受けつつ、独特な音世界を確立。絵に描いた様な、フォーキーでワールドミュージック的な響きを持つ、アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノは聴いていて、ジャズの音の原風景を彷彿とさせてくれる。

Abdullah Ibrahim『Dream Time』(写真左)。2019年3月17日、ドイツのゼルフーベン「Hirzheim Concert Hall」でのライヴ録音。ENJAレコードからのリリース。本盤の録音時、85歳の大ベテラン、アブドゥーラ・イブラヒムのソロ・ピアノ。ソロ・ピアノなので、イブラヒムのピアノの近況が良く判る内容となっている。
 

Dream-time-1

 
長短含め全20曲。最初の6曲くらいは、耽美的でリリカルでクールなピアノ・ソロが続いて、ちょっと「あれっ」と思う。しかし、7曲目の「Capetown District Six」から、徐々に「アーシーでゴスペルチックなジャズ・ピアノ」が前面で出てくる。以前は重心が低く、アーシーな度合いが高かったが、この盤では、シュッとクールにスマートになって、「クールでアーシー、クールでゴスペルチック」な雰囲気が新しく感じる。

ブルースあり、エリントン・トリビュートあり、ボレロあり、バラードあり、とても多彩なソロ・ピアノ。イブラヒムのピアニストとしての力量と経験の豊富さがビンビンに伝わってくる。様々な雰囲気の曲と多彩な弾きっぷりで、長短含め全20曲、緩むことは全く無いし、飽きることは全く無い。非常に充実したピアノ・ソロである。これが、録音当時、85歳のパフォーマンスというのだから「恐れ入る」。

録音当時は85歳、今年で87歳。もはや「レジェンド」である。しかし、このソロ・ピアノを聴くと、とてもそんな高齢のパフォーマンスとは思えない。特に、前半6曲の新境地っぽい「耽美的でリリカルなピアノ」は、音に張りがあって、指捌きは的確。まだまだ第一線で活躍出来るな、と頼もしく思った。イブラヒムのピアノ、まだまだ衰えることは無い。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月 8日 (日曜日)

「あの人は今」的ジャズマンです

ジャズの世界にも「あの人は今」が存在する。ジャズ雑誌などで華々しく取り上げられ、評論家からちやほやされ、何枚かのリーダー作が売れた後、その名が忘れ去れて幾星霜。そういえば、あのジャズマン、何処へ行ったんだろう、と思い出す。そんな「あの人は今」的ジャズマンが幾人かいる。

Gary Thomas『Seventh Quadrant』(写真左)。1987年の作品。enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gary Thomas (ts, fl), Paul Bollenback (g, syn), Renee Rosnes (p), Anthony Cox (b), Jeff "Tain" Watts (ds)。フロント管はサックス&フルートのみ。ギター入りのクインテット編成。

リーダーのGary Thomas(ゲイリー・トーマス)は、1961年、米国メリーランド州ボルチモア出身のサックス&フルート奏者。今年で62歳のベテラン・ジャズマン。1986年末からマイルス・デイビスのグループに1987年3月まで在籍。その後、ジャック・ディジョネットのバンド、スペシャル・エディションのメンバーとして頭角を現す。M-BASE派(ブルックリン一派)人脈の一人として、1990年代に活躍したが、21世紀に入って、とんとその名を見ることは無くなった。

そんなトーマスの初リーダー作がこの『Seventh Quadrant』。パーソネルを見渡すと、M-BASE派に纏わる人材で固められている。ということは、演奏内容は明確に「M-BASE派の音」。トーマスは当初は新伝承派でしたが、スペシャル・エディションの参加などを経て、M-BASE派へと、音の志向が変化していったようだ。
 

Seventh-quadrant_1

 
1980年代半ば、純ジャズ復古以降、ウィントン・マルサリスが主導した「ハードバップの復古」である新伝承派。しかし、その新伝承派の音作りはその反動として「単に形式的に懐古趣味に陥っているだけなのでは?」というアンチ新伝承派のムーヴメントを生み出し、そのアンチ新伝承派を主導したのが「M-BASE派」。

この盤には、そんな「M-BASE派の音」が詰まっている。つまりは、M-BASE派の音を体感するには最適なアルバムと言える。「M-BASE派の音」とは変拍子の複雑なリズムを取り入れ、バップやモードというジャズの伝統的な語法を使用しないで演奏形式の革新を目指したもの。

ジャズを基調に,ラップやソウル,ファンク音楽やエスニック音楽など,その時代時代で隆盛を極めた音楽スタイルを取り入れたジャズといって良いかと思う。なんだか、エレ・マイルスに似ている。アンチ新伝承派なので、ジャズ・スタンダード曲の採用は一切無し。全て「M-BASE派の音」を基調としたオリジナル曲で占められているが、意外とこのオリジナル曲の出来がまずまず良いので、この盤、意外と聴き応えがある。

1990年度のスイングジャーナルジャズ・ディスク大賞の「金賞」に、4枚目のリーダー作『While the Gate Is Open』が選ばれたりして、当時、我が国のジャズ・シーンでは、一瞬、時代の寵児として扱われたが、今や完全に「あの人は今」的ジャズマン状態になってしまったようだ。ゲイリー・トーマスのリーダー作を何枚か聴く限り、「M-BASE派の音」って、意外とユニークで僕は好きだったんですが...。残念なことではあります。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月 7日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・216

コロナ・ワクチンの2回目の接種後、まずまずの副反応が出た。接種10時間後に発熱、37.8℃。解熱剤を飲むと平熱に下がるも、効力が切れるとまた発熱。これが翌日まで続く。翌朝、頭痛に悩まされる。嫌〜な感じの痛み。頭痛薬を2回連続で飲んで、やっと頭痛は治まった。で、今日は37.0℃程度の微熱はあるが、それ以外は平常に戻った。で、ブログの再開である。

Pharoah Sanders『Welcome to Love』(写真)。サブタイトルが「Pharoah Sanders Plays Beautiful Ballads」。1990年7月、フランスのイエールの「Studio Gimmick」での録音。ちなみにパーソネルは、Pharoah Sanders (ts, ss), William Henderson (p), Stafford James (b), Eccleston W. Wainwright Jr. (ds)。フリー・テナーの雄、ファラオ・サンダースのワン・ホーン・カルテットである。

コロナ・ワクチンの副反応のお陰で、床に入りながらジャズを聴く。床に入りながら聴いたジャズ盤の中で、これは、と感じ入った盤が、ジョン・コルトレーンのDNAを受け継ぐテナー・レジェンド、ファラオ・サンダースのバラード集。ファラオと言えば「フリー・ジャズ」となるが、この盤が録音されたのは1990年。ファラオのテナーは、硬派な純ジャズ、所謂「ネオ・ハードバップ」なテナーに変化している。

テナー・レジェンドのバラード集と言えば、コルトレーンの『Ballads』を想起するが、このファラオのバラード集は、コルトレーンのコピーでは無いし、コルトレーンのバラード演奏のフォロワーでも無い。
 

Welcome-to-love

 
伸び伸びして大らか、シュッとした温かみのあるテナーの音、ポジティヴに明朗に展開するアドリブ・パフォーマンス。コルトレーンのバラード集と被っている曲、「You Don't Know What Love Is」と「Say It」を聴き比べれば、ファラオのオリジナリティーが良く判る。

しかし、かつての前衛の奇才が浪々とバラードを吹くのに違和感を覚えて、プロデューサーは誰かな、と確認すると「原哲夫」の名前がある。後のヴィーナス・レコードの総帥プロデューサーである。なるほど、このバラード集の音は、確かに後のヴィーナス・レコードの音に繋がるものある。

かつての前衛の奇才に「バラード」を吹かせる。そして、それは絶対に上質のバラード集になる。この見事なオリジナリティー溢れるバラード演奏は、それを見抜いたプロデュースの賜である。

バックのリズム隊も大健闘している。特にピアノのウィリアム・ヘンダーソンのピアノは一聴に値する。明るくちょっと多弁であるが、印象的なフレーズを連発しながら、ファラオのテナーをソプラノをがっちりサポートする。

このファラオのバラード集、意外とマイナーな存在に甘んじているが、あらゆるジャズ者の皆さんに一度は聴いて頂きたい名盤であると思う。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月 4日 (水曜日)

コードからモードへの変化。

モダン・ジャズの発端が「ビ・バップ」、そして、それが進化した「ハードバップ」。これらは「コード」による演奏展開。アドリブ・フレーズを複雑化すればするほど「コード」は複雑化。複雑化の限界が来てマンネリに陥る。コードの複雑化に限界が来て、演奏の響きや雰囲気が皆同じに聴こえるようになる。

そこで、そのマンネリを打破すべく、マイルス・デイヴィスが西洋の古い教会音楽の音階を応用して作った演奏展開が「モード」。モード・ジャズは、それまでの「コード」中心の演奏展開とは全く逆の発想で、コード進行を徹底的に単純化(コードが2つとか3つ程度)、単純化された音階の中で自由度を高め、フレキシブルな変化を作り出す。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Meet You at the Jazz Corner of the World Vol.1 & 2』(写真)。ブルーノートの4054 & 4055番。1960年9月14日、NYのジャズクラブ「Birdland」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b), Pee Wee Marquette (announcer)。

そんな「コード」と「モード」の音の響きがとても良く判るメッセンジャーズのライヴ盤。パーソネルを見ると、テナー・サックスが、ベニー・ゴルソンからウェイン・ショーターに代わっている。
 

Meet-you-at-the-jazz-corner

 
その他のメンバーは、ファンキー・ジャズの名盤『Moanin'』と同じ。でも『Moanin'』と当ライヴ盤とでは、演奏展開、演奏の響きが全く異なるから面白い。

ゴルソンとショーター、両者ともメッセンジャーズの中での役割が「テナーと音楽監督の兼務」。音楽監督の演奏志向がガラッと変わり、その新しい演奏志向を担当のテナー・サックスで吹き上げていく。『Moanin'』と当ライヴ盤とを聴き比べると、「コード」による演奏展開と「モード」による演奏展開との、音の響きと雰囲気の違いが実に良く判る。

同時に演奏するジャズマン、特に旋律楽器において、「モード」に対する適用度合いに大きな差が出てくる。テナーのショーターは当たり前ながら、トランペットのモーガンも「モード」にしっかり適用してきているように聴こえる。

しかし、ティモンズのピアノは、何とか「モード」に適用しているが、気持ち良く弾いている訳ではなさそう。モードがベースのファンキー・ジャズをやっている時の躍動感が希薄になり、意外と窮屈そうなのだ。

ショーターが音楽監督を担当し、ジャズ・メッセンジャーズはモード演奏の先端を行くバンドに変化する。その変化によって、バンドのメンバー構成が大きく変化していく。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月 3日 (火曜日)

90年代のブレイのソロ・ピアノ

Paul Bley(ポール・ブレイ)。久しく、このピアニストの名前を忘れていた。基本は「余白」を活かしたリリカルで耽美的なピアノであるが、アドリブ部は突如フリーキーに展開し、アブストラクトにブレイクダウンする。この「落差」が堪らない。このダイナミックな展開が「即興演奏の魅力」であり、ジャズの「創造力の魅力」であると思うのだ。

Paul Bley『Sweet Time』(写真左)。1993年8月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p)。ポール・ブレイのソロ・ピアノ盤になる。ポール・ブレイのソロ・ピアノ盤と言えば『Open, to Love』(ECM・1972)が頭に浮かぶが、基本的な部分は変わっていないが、ECM盤に漂う「小難しさ」は無く、ブレイの個性がシンプルに判り易いソロ・ピアノになっている。

ポール・ブレイは、カナダ・モントリオール出身のピアニスト。1960年代はフリー・ジャズがメイン。高いテクニックで、フリーキーにアブストラクトに展開するパフォーマンスは圧巻。ではあるが、とにかく「難解」。フリー・ジャズの好きなジャズ者の方々には必須アイテムではあるが、通常のジャズ者の方々にはかなりの「重荷」になる音世界である。
 

Sweet-time-1

 
さて、このライブ盤『Sweet Time』であるが、ECM時代の「気難しい」ところは全く無く、どこか「スッキリ」していて、ブレイのピアノの特徴である「美しくリリカルな」ものと、その合間に「激しいアブストラクトなブレイクダウン」と「思索的で静的なフリー・ジャズ」の交錯がとても良く判る。1980年代くらいまでの「強い毒気や静的な熱気」は影を潜めてはいるが、「美しくリリカル、突然フリーキー」という唐突さ、不思議な雰囲気はしっかり維持されている。

優れたバラード演奏がてんこ盛りなのもこの盤の魅力で、冒頭の「Never Again」、3曲目「Turnham Bay」、5曲目「Lost Love」、8曲目の「Started」、続く9曲目の「As Beautiful As the Moon」など、クールな浮遊感を伴ったリリカルで耽美的な、そして、時々フリーキーなバラード演奏は筆舌に尽くしがたい。崩れそうで崩れないが、時々ブレイクダウンして唐突に疾走するブレイのバラード演奏。即興演奏の極みである。

ブレイのソロ・ピアノって、基本的な部分は、1972年の初ソロ・ピアノ盤『Open, to Love』と変わっていない。この『Open, to Love』から「気難しい」表現を差し引いて、リリカルで耽美的な表現を前面に押し出したものが、この『Sweet Time』になるのかな。フリーな表現も結構入るので、単なる「美しい」ピアノ・ソロ盤では無い。ジャズ者初心者の方は気をつけていただきたい。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月 2日 (月曜日)

ニューオリンズでの他流試合

1970年代、何故か、我が国では「キャノンボール兄弟」はウケが悪かった。兄弟が奏でる「ジャズ・ファンク」が、殊の外、我が国の硬派なジャズ者の方々のお気に召さなかったみたいで、兄のキャノンボールは「ファンクの商人」と揶揄され、弟のナットは「ファンクの商人の弟」と揶揄された。でも、僕は「キャノンボール兄弟」がお気に入りなんですけどね(笑)。

Nat Adderley『In the Bag』(写真左)。1962年5月19日、ニューオリンズでの録音。別タイトル『The Adderley Brothers in New Orleans』でリリースされたこともある。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Cannonball Adderley (as), Nat Perrilliat (ts), Ellis Marsalis (p), Sam Jones (b), James N. Black (ds)。

キャノンボール兄弟の「ニューオリンズ詣」である。パーソネルを見ると、ニューオリンズから、テナー・サックスのナット・ペリリアット、ドラムのジェームス・N・ブラック、そして、ピアノにエリス・マルサリス(ウィントン・マルサリスのお父さん)が参加している。NYからキャノンボール兄弟、そして、ベースのサム・ジョーンズ。フロント3管のセクステット編成である。
 

In-the-bag

 
面白いのは、この盤、わざわざニューオリンズまで出向いての録音なのに、LP時代に収録の7曲は「小粋なハードバップ」。ハードバップな演奏となれば、ニューオリンズから参加のメンバーは若くてちょっと弱い。逆に、キャノンボール兄弟の張りのあるパフォーマンスが際立っている。年齢的にも充実していた時期で、兄弟の吹き回しは見事。特に、ナットのコルネットが良い音している。

しかし、この内容ではわざわざニューオリンズまで出向いた意味が無いのだが、CDリイシュー時にボートラとして収録された2曲「The Popeye」や「The Gospel Truth」は、思い切りニューオリンズ・ディキシー風。あまりにあからさまにニューオリンズ風な演奏なので、LP時代には収録する場所が無かったのかな。

いずれにしろ、CDリイシュー時のボートラ収録で、ニューオリンズでの録音だったんやな、ということが腹落ちした次第。ただ、キャノンボール兄弟にとって、何か特別な意味を持つ盤かと言えば、そうでは無かった。この後、キャノンボール兄弟がニューオリンズ・ジャズに接近した風も無いし、逆に急速にファンキー・ジャズからジャズ・ファンクへ傾倒していく。今の耳から振り返ると、何とも不思議な位置づけの企画盤である。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2021年8月 1日 (日曜日)

ミンガス・バンドを聴き直す。

Charlis Mingus(チャールズ・ミンガス)の創り出す音が好きだ。もともとは骨太でソリッドなレジェンド級のベーシスト。加えて、コンポーザーでもあり、バンドのリーダーでもある。ミンガスの創り出す音は「ミンガス・ミュージック」と名付けられ、ハードバップが基調であるが、ビッグバンド志向の分厚いバンド・サウンドと自由度の高いアドリブ展開が特徴。

特に、ユニゾン&ハーモニーの音の重ね方とベース・ラインに独特のものがあって、どのアルバムもしばらく聴いていると「あ〜、これはミンガスやな」と判るくらいの強烈な個性である。ミンガスのベースの音は、これまた独特の響きがあって、演奏の中のベースの音を聴くだけで、「このベースってミンガスやな」と判るくらいである。

Charlis Mingus『Mingus In Europe, Vol.1』(写真)。1964年4月26日、西ドイツ(当時)でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Clifford Jordan (ts), Jaki Byard (p), Dannie Richmond (ds)。エリック・ドルフィーとクリフォード・ジョーダンが2管フロントのクインテット編成。
 

Mingus-in-europe-vol

 
リズム・セクションは、ミンガスのベースに、バイヤードのピアノ、リッチモンドのドラムで、このリズム・セクションをとってみても、強力かつ唯一無二。そこに、フロント2管、アルトの早逝の鬼才、ドルフィーに、骨太なモーダル・テナーのジョーダンが絡む。振り返って見れば、素晴らしくユニークで強力なクインテットだったことが良く判る。

この盤のライヴ演奏については「とにかく聴いて欲しい」の一言。ミンガス率いる強力リズム隊の強烈なリズム&ビートに乗って、鬼才ドルフィーのアルトが嘶き、フルートが空を舞い、バスクラがファンキーでアーバンな妖しい低音を振り撒く。ジョーダンのテナーが疾走し、モーダルなフレーズを叩き出す。とにかく、バンド全体の疾走感と自由度が半端ない。

ミンガス・バンドはどの時代のアルバムを聴いても、ミンガス・ミュージック独特の音が必ず存在し、ミンガス独特のベースラインが存在していて、その唯一無二な個性は填まったら「とことん癖になる」。特に、ミンガス・バンド在籍時のドルフィーはユニークで素晴らしいの一言。久し振りにミンガス・ミュージックの一端に触れた訳だが、久し振りに、とことん、ミンガス・ミュージックを聴き込みたいと思い始めた。
 
 
 
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》

 
 ★ AORの風に吹かれて        
【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から10年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

« 2021年7月 | トップページ | 2021年9月 »

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2022年7月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

カテゴリー