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2021年7月30日 (金曜日)

カルデラッツォの優れたトリオ作

1965年生まれで今年56歳。1980年代後半に彗星のごとく登場、はやベテランの域に達したジョーイ・カルデラッツォ。セカンド・ネームだけ見ると、イタリアン・ジャズ系のピアニストかと思うのだが、ジョーイ・カルデラッツォは、米国のニューヨーク州ニューロシェル生まれ。生粋の米国人である。

Joey Calderazzo『Going Home』(写真左)。2015年のリリース。ちなみにパーソネルは、Joey Calderazzo (p), Orlando le Fleming (b), Adam Cruz (ds), Branford Marsalis (ts, track2 only)。2曲目の「I never Knew」のみ、ブランフォード・マルサリスのテナー・サックスが入ってクインテット編成になるが、他は基本的にピアノ・トリオ。

カルデラッツォのピアノはどこか欧州の香りがする。言い換えると、ECMレーベルの香り。米国出身ながら、出てくる音にはファンクネスは希薄、タッチは明確でリリカル、フレーズは耽美的でモーダル。チック・コリアとキース・ジャレットとミシェル・ペトルチアーニを足して3で割った様な、いわゆるコンテンポラリーでスタイリッシュなフレーズが「ピアノの個性」。
 

Going-home-joey-calderazzo

 
この2015年作の『Going Home』には、そんなカルデラッツォのピアノの個性が満載。ファンクネスは希薄だが、モーダルでリリカルな弾き回し、どこかアーシーで印象的なフレーズを繰り出し、高速で耽美的なアドリブ展開。

4曲目のスタンダード曲「Stars Fell on Alabama(アラバマに陽が落ちて)」が印象的。ゆったりとしたテンポの中、モーダルで耽美的なアドリブ・フレーズが実に美しい。8曲目の「Mike’s Song」がちょっとユニーク。少し速いテンポの中で、ところどころ、仄かにアーシーでモーダルなメロディが紡ぎだされる。

ラストの「Going Home」は、カルデラッツォのソロ・ピアノ。フォーキーで美しい、郷愁感溢れるフレーズに、思わずセンチメンタルになる。このソロ・ピアノは絶品。カルデラッツォのピアノの本質を強く感じる。

アルバム・ジャケットがシンプル過ぎて平凡で、どこか「パチモン」っぽくて、ちょっと損をしているが、優秀作だと思います。
 
 
 
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