ストイックで真摯なマクリーン
ジャキー・マクリーン(Jackie McLean)は、進化に向かって努力するアルト・サックス奏者であった。ハードバップ初期に頭角を現し、ハードバップを代表するアルト・サックス奏者の1人になった。しかし、当時のジャズは急速に進化していた。マクリーンは、そのジャズの急速な進化に乗り遅れる事無く、積極的に進化に向かってチャレンジしていった「改革者志向」のジャズマンであった。
Jackie McLean『Capuchin Swing』(写真左)。1960年4月の録音。ブルーノートの4038番。 ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Blue Mitchell (tp), Walter Bishop, Jr. (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。リーダーのマクリーンのアルト・サックスとブルー・ミッチェルのトランペットの2管フロント。クインテット編成である。
この盤を聴くと面白いのは、演奏の響きの中に、ハードバップな音からモーダルな音にシフトする兆しが見え隠れするところ。いわゆる後の「新主流派」の音の雰囲気が、この盤のところどころに顔を覗かせている。ただし、この「兆し」は、マクリーンのアルト・サックスのパフォーマンスにのみ感じるもので、他のメンバーのパフォーマンスについては、基本的に「ハードバップ」の雰囲気を色濃く踏襲している。
マクリーンのアルト・サックスは、何時でも「真摯で実直」。遊びや破綻とは無縁の、ストイックなアルト・サックス。アドリブ・フレーズでの「他の名曲のフレーズの引用」などの遊びは全く無い。この盤では、コードをベースにしたハードバップのアドリブ展開の中で、如何に自由度高く吹くことが出来るか、に挑戦しているかのような、「思考している」アドリブ・フレーズが印象的。
ミッチェルのトランペットもファンキー・ジャズな吹き回しを封印し、ストイックなマクリーンのフレーズに追従する。面白いのはハッピー・スインガーのビショップJr.のピアノが、まるで「新主流派」の様な、ちょっとモーダルなフレーズを取り込んでいるところ。そう、この盤には、マクリーンの「新主流派」への進化「一歩手前」の、ストイックで真摯なハードバップな演奏が詰まっている。
クインテットのメンバー全員好調で、選曲についても、ジャズ・スタンダード曲は1曲のみと潔い。聴き手に迎合すること無く、ジャズの進化に積極的にチャレンジしていたマクリーンのパフォーマンスがこの盤に記録されている。我が国ではほとんど話題に上る事の無い盤だが、音的にもブルーノートらしい、ハードバップ者の方々には必聴の「隠れ好盤」です。
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