名盤請負人の凄まじい適応力
トミー・フラナガン(Tommy Flanagan、略して「トミフラ」)と言うピアニスト、バックに回っての流麗で機微を心得た弾き回しは「名盤請負人」と高く評価されている。恐らく、繊細できめ細やかな感性の持ち主なんだろうな、と思う。が、意外と職人肌で意外と「こだわる」タイプでもあるんだろうな、とこの盤を聴く度に思う。
Tommy Flanagan『Giant Steps』(写真左)。1982年2月の録音。」ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), George Mraz (b), Al Foster (ds)。トミフラお得意のピアノ・トリオ編成であるが、ベースのムラーツは相性抜群なので、トリオへの参入は理解出来るが、ドラムがアル・フォスターなのが面白い。
アル・フォスターは、エレクトリック期のマイルス・ディヴィスをリズム面で支えた名ドラマーで、ポリリズミックなファンク・ビートと、8〜16ビートのモーダルなドラミングに長けている。基本バップなピアニストであるトミフラが何故アル・フォスターをドラマーに招聘したのか。
実はこの盤、かのジョン・コルトレーンの歴史的名盤『Giant Steps』 から5曲、『Coltrane's Sound』から1曲、コルトレーン・サウンドの再演集なのだ。コルトレーンの歴史的名盤『Giant Steps』は、モーダルな「シーツ・オブ・サウンド」をベースにコルトレーン・サウンドが確立した歴史的名盤なのだが、Tommy Flanagan, Wynton Kelly, Cedar Walton の3人のピアニストを使い分けている。
が、いずれも、初見のコルトレーンの考えるモーダルな「シーツ・オブ・サウンド」に戸惑い、十分に理解出来ないまま、半信半疑なプレイに終始している。つまりは、考案者のコルトレーンだけがそれを理解していて(当たり前か)、コルトレーンのプレイだけが突出している内容になっている。
そんな中でも、僕はトミフラは大健闘していて、コルトレーンにしか理解出来ていない、モーダルな「シーツ・オブ・サウンド」に、初見で良く対応していると思う。しかし、1960年代後半から1970年代の評価は「トミフラですらもイマイチ」という無責任なもので、恐らく、トミフラ自身も忸怩たるものを感じていたと思う。
そんな状況の中での1982年、この再演盤である。見事にコルトレーン・サウンドを自家薬籠中の物とし、コルトレーン・サウンドのトミフラ解釈が見事である。この再演盤のトミフラのピアノには全く迷いも戸惑いもない。コルトレーンのフレーズをなぞることもない。トミフラの解釈で、コルトレーン・サウンドを展開している。
バックのリズム隊、ベースのムラーツ、ドラムのフォスターも最適なチョイスだった様で、トミフラ解釈のコルトレーン・サウンドにピッタリ適応している。恐らく、トミフラは大いに溜飲が下がったことだろう。トミフラのジャズ・ピアニストとしての適応力は並外れている。だからこそ、バックに回っての流麗で機微を心得た弾き回しは「名盤請負人」と高く評価されているのだ。
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