ジャズ喫茶で流したい・204
我が国のジャズ評論には「不思議」が沢山ある。とにかく「ジャズは進化するもの」という固定観念があるみたいで、ハードバップに留まって、ハードバップをそのまま、深く極めていくジャズマンは基本的に評価が低い。それから、コンガなどパーカッションに厳しい。「俗っぽい」というレッテルを貼られて評価は下がる。そして、意外と電気楽器を忌み嫌う。
同じ楽器、同じ雰囲気なのに、ジャズマンによって偏りがある。例えば、ルー・ドナルドソン(愛称「ルーさん」)のアルト・サックス。何故か「明るい吹きっぷりで五月蠅い」などという評価があったりする。意外と人気が低いのだ。
アルト・サックスって、基本キーが高いので「明るい音色」、特にパーカー派の吹きっぷりはビ・バップ基調なので「賑やか」。渡辺貞夫だって、フィル・ウッズだって、本家本元チャーリー・パーカーだってそうなのに、何故か「ルーさん」だけが人気が低い。
Lou Donaldson『LD+3』(写真左)。1959年2月18日の録音。ブルーノートの4012番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ブルーノートのお抱えピアノ・トリオ「スリー・サウンズ」をバックに、ルーさんのアルト・サックス1管フロントのカルテット編成。
この盤まで、ルーさんはバックのリズム・セクションは、ルーさんの仲良しジャズマンで固める傾向が強かった。ルーさんは気兼ねすることなく、リラックスして吹きまくることが出来るのだが、如何せん、名が通っていない「セッション・ジャズマン」達なので、リズム・セクションの演奏が「ちょっと弱くて単調」なのは否めない。この辺もルーさんの人気の低さの「原因の1つ」でもある、と推察している。
しかし、この盤はバックのリズム・セクションが充実しまくっている。当時、人気のブルーノートお抱えピアノ・トリオである。演奏能力は高く、芳しきファンクネスを振り撒きながら、当時、ハードバップの最先端の雰囲気をしっかり維持したピアノ・トリオ。そんなリズム・セクションをバックに、ルーさんがアルト・サックスを吹き上げていく。
何時になく、ルーさんのアルト・サックスが「よりモダン」に響く。恐らく、バックのピアノ・トリオ「スリー・サウンズ」の音に触発されたのであろう。しかし、この「よりモダン」なアルト・サックスを聴くにつけ、ルーさんの演奏家としての能力の高さを再認識する。「スリー・サウンズ」が仕掛けた「当時のハードバップの最先端の雰囲気」に、全く問題無く適応し、自家薬籠中のものとしている。
恐らく、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの深慮遠謀の賜だろう。仲良しジャズマンで固めたサウンドの「マンネリ」を、「スリー・サウンズ」を当てることで解消し、本来のルーさんのアルト・サックス奏者としての能力の高さを更に引き出している。この盤でのルーさんのアルト・サックスは「聴きもの」。ルーさんのアルト・サックスの再評価をお願いしたいくらいだ。
しかしながら、いやはや、アルフレッド・ライオン恐るべし、である。これぞプロデューサーの仕事。ほんと「良い仕事」してますなあ。脱帽である。
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