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2021年4月27日 (火曜日)

パウエルのプロ魂と優しさと。

バップ・ピアノの祖、バド・パウエル(Bud Powell)。ビ・バップの祖、チャーリー・パーカーについて「1950年代のパーカーは駄目」と評価されていたが、意外とそうではない。パウエルについても、ブルーノート・レーベルに残したリーダー作については「ピークを過ぎた演奏故、内容はイマイチ」とされている。が、どうして、今の耳で聴くと、なかなか味のあるリーダー作を残してくれている。

『The Scene Changes: The Amazing Bud Powell, Vol.5』(写真左)。ブルーノートの4009番。1958年12月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Bud Powell (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。パウエルお得意のピアノ・トリオ編成。ビ・バップでならした、パウエル馴染みのリズム隊を採用していない。

ハードバップ畑のファースト・コール・ベーシスト、ポール・チェンバースと、職人技ドラマーのアート・テイラーを当てているところが注目ポイント。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの深慮遠謀が見え隠れする。通常は、馴染みのリズム隊では無いので、へそを曲げて、やりにくそうにピアノを弾きそうなもんだが、パウエルは違った。

明らかに、ポール・チェンバースの先進的なウォーキング・ベースと、アート・テイラーの硬軟自在かつ変幻自在なドラミングに刺激を受けて、気合いを入れてピアノを弾いている様がアルバムから聴こえてくる。バックのリズム隊の供給するリズム&ビートにしっかりと乗って、ドライブ感溢れる、誠実なバップ・ピアノを聴かせてくれる。パウエルの「プロ魂」をビンビンに感じる。総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンとしては「してやったり」である。
 

The-scene-changes-the-amazing-bud-powell

 
冒頭の超有名な「Cleopatra's Dream(クレオパトラの夢)」は、いきなり前奏無しに、印象的でキャッチャーなテーマが入ってくる仕掛けと全編マイナー調で貫く潔さで「日本人受け」がとても良い。が、演奏の展開はシンプルで捻りは無い。人気の秘密は「曲の持つ旋律の良さ」だと思っている。パウエルはサラッと弾き倒して、シンプルに演奏を終える。

僕はそれより、2曲目以降のパウエルのパフォーマンスの方が聴き応えがあると思っている。2曲目の「Duid Deed」から、マイナー調のブルージーな曲が続くが、内容的にはストイックでアーティステックなフレーズと弾き回しが魅力。バリバリ弾き倒すパウエルはここにはいない。バップに流麗にダンディズム溢れるタッチで弾き込む。こんなパウエル、むっちゃ格好良いではないですか。

5曲目の「Borderick」などは、明るいゴスペルチックな旋律を持つ佳曲。冒頭の「Cleopatra's Dream」から、ずっとマイナー調の曲が続いてきたので、出だしの明るい音調のテーマを聴くだけで「おお〜っ」と思ってしまう。ゆったりとしたテンポで明るくハッピーに旋律を紡ぎ上げていくパウエルのピアノはとても優しい。7曲目のカリプソ調の「Comin' Up」のなかなか見事な出来で、思わずノリノリである。

この盤の収録曲は全てパウエルの作曲。コンポーザーとしての才にも長けていたパウエルの片鱗を感じることが出来る。ちなみにジャケットのパウエルの向かって右の子供はパウエルの実子である。優しいお父さんよろしく、レコーディングに連れてきたのだろうか。そう、この盤にはパウエルのプロ魂と優しさが溢れている。
 
 
 

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