ワールド・ミュージックとの融合
ジャズは懐が深い「融合」上手な音楽ジャンルである。1940年代後半から1950年代初頭のジャズの最大のトレンド「ビ・バップ」が純粋ジャズだった様な気がするが、希にラテン音楽との融合があったり、クラシックの引用があったり、「融合」の兆しは既にあった。
1950年代のハードバップでは、ラテン音楽の融合やクラシックの引用が「アレンジの常用手段」になり、1960年代前半にはジャズ界最大の「融合」、ボサノバとの「融合」があった。1960年代終盤から、ロックとの「融合」としてクロスオーバー・ジャズが出現し、そこに、R&BやAORの要素との「融合」が進み、フュージョン・ジャズが大流行した。
Richard Bona『Scenes from My Life』(写真左)。1998年11月〜1999年1月の録音。パーソネルについては、曲毎に様々な「最適な」ミュージシャンをチョイスしているので、ここでは割愛する。リーダーのリチャード・ボナ(Richard Bona)はベーシスト & ヴォーカリスト。ベーシストのリーダー作らしく、自らの志向する音世界をプロデュースするタイプ。
ボナはザビヌル・シンジケートなどで活躍していたカメルーン出身の天才ベーシスト。1967年10月28日生まれなので、今年で54歳。ジャズマンとして油の乗りきったベテラン中堅的存在である。
1995年にはジョー・ザヴィヌルと共演するようになり、恐らく、ボナの「ワールド・ミュージック志向」はこの時代に育まれたと推測している。ポスト・ジャコ・パストリアス的ベーシストの1人。
そんなボナのワールド・ミュージック志向ジャズの素敵な初リーダー作がこの『Scenes from My Life』。まず、ボナのベースに耳を奪われる。天才的なテクニックに裏付けされた深みのある、しなやかなベースライン。ジャコは「鋭角的」だったが、ボナはほど良く「丸み」がある。それでも明らかにジャコの影響が聴いて取れる。
様々な音の要素が「融合」している。演奏のベースは明らかにジャズだが、R&B的要素も見え隠れし、アフリカン・ネイティヴな音の響きもあれば、ジャマイカンな音の響きも顔を出す。ラテンな雰囲気も出てくれば、ボサノバ風のフレーズも漂う。フュージョン・ジャズ的な雰囲気もあるが、基本はメインストリームなエレ・ジャズ。
全曲ヴォーカル入りだが、全く気にならない。このヴォーカルも楽器の1つの様な、ワールド・ミュージック的な響きを湛えて、アルバム全体の雰囲気を補強する。このアルバム、ボナのセルフ・プロデュースなんだが、そのセンスの良いプロデュースが見事。ワールド・ミュージック志向のコンテンポラリーなエレ・ジャズとして優れた内容の好盤である。
《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
★ AORの風に吹かれて 【更新しました】 2021.03.06 更新。
★ まだまだロックキッズ 【更新しました】 2021.03.06 更新
・Yes Songs Side C & Side D
・Yes Songs Side E & Side F
★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.03.06 更新。
★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。
★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
東日本大震災から10年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
« ランディとマリエンサルの新盤 『Double Dealin'』 | トップページ | ピアノ・トリオの代表的名盤・90 »
« ランディとマリエンサルの新盤 『Double Dealin'』 | トップページ | ピアノ・トリオの代表的名盤・90 »
コメント