ECMレーベルの力業的な好盤
ECMレーベルには「あれ、この人、ECMでやるの」とビックリするジャズマンがいたりする。おおよそ、ECMレーベルの「音のカラー」に合わない雰囲気のジャズマンなんだが、これがECMレーベルに入ってリーダー作を作ると、あら不思議、ECMレーベルの「音のカラー」にドップリ染まった演奏を繰り広げられるから面白い。
Julian Priester & Marine Instrusion『Polarization』(写真左)。1977年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Julian Priester (tb, ARP String Ensemble), Ron Stallings (ts, ss), Ray Obiedo (g), Curtis Clark (p), Heshima Mark Williams (el-b), Augusta Lee Collins (ds)。トロンボーンのプリースターがリーダーのジャズ・ユニットのアルバム。
Julian Priester=ジュリアン・プリースターは、アンダーレイテッドで、マニアックな人だけが知っているトロンボーン奏者。ハービー・ハンコックのファンク・グループで注目を集め、以降はビッグバンドを中心に活動。80年代以降はデイブ・ホランドのグループで活躍しているとのこと。Sun RaやMax Roachとの共演なども知られる。1935年生まれなので、今年で86歳になる。
実はこのプリースター、ECMにもう一枚、リーダー作を残している。1974年の『Love, Love』(2018年2月19日のブログ参照)で、欧州独特の硬質で透明感のある、しなやかなファンク・ビートに乗りながらのエレクトリックなジャズで、明らかに「エレ・マイルス」の影響が感じられた。が、ECMでの次作の位置づけの当盤は雰囲気が全く違う。
どこまで静的で透明度の高い、リズム&ビートを極力抑えた、フリー&スピリチュアルなニュー・ジャズ。静的なジャズ・ファンクと形容すればよいのか、ECM独特のニュージャズな演奏の底に、ファンクネスが潜んでいる。リズム&ビートも静的なんだけど、どこかファンクしているから面白い。
ECMレーベル独特の雰囲気に思いっ切り合致した、深いエコーと幽玄な浮遊感を湛えた音世界。それまでのプリースターのプレイからすると、全く正反対のプレイ。それがしっかりと填まっているのだから、これはこれで凄い。プリースターの底なしの演奏力が凄い。
トロンボーンのふくよかでブリリアントな音が深いエコーの中で、濃い霧の様に浮遊する様は、フリー&スピリチュアルなニュー・ジャズとして「アリ」ですね。この盤、恐らく、当時はECMレーベルでしか制作できない盤だと思います。ECMレーベルの力業を垣間見る思いです。総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャー、恐るべしです。
加えて、ジャケット・デザインが秀逸。このアルバムの内容を見事に反映していて、いかにもECMらしいジャケットです。
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