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2021年1月 4日 (月曜日)

敏子=タバキンBBのデビュー盤

ジャズ盤をコレクションし、聴き進めて行く上で、ビッグバンドは結構、後回しになった。深い理由は無い。パッと思いついたバンド名が、デューク・エリントン楽団とカウント・ベイシー楽団の2つ。どちらもスイング時代から第一線で活躍する老舗ビッグバンドで、聴き進める上でなんだか敷居が高く感じて、ずっと敬遠した。後回しのそれが真相だろう。

それでも、ジャズを聴き始めた頃、結構、お気に入りになって聴き進めたビッグバンドがある。秋吉敏子=ルー・タバキン ビッグバンド(Toshiko Akiyoshi-Lew Tabackin Big Band、1973年 - 1982年)である。1973年、穐吉敏子(秋吉敏子)と夫ルー・タバキンによって、ロサンゼルスで結成されたビッグバンドである。

当時、日本人がリーダーのビッグバンドなんて、米国で認められる訳が無いと思っていた。ジャズは米国のものであり、とりわけビッグバンドは米国のもので他国のものは認めない。1970年代に入ってもそんな風潮が強かった。秋吉敏子=ルー・タバキンビッグバンドとて、例外では無かった。一部の評論家からは「ケチョンケチョン」で、心ない評論が後を絶たなかったことを覚えている。

Toshiko Akiyoshi-Lew Tabackin Big Band『Kogun(孤軍)』(写真)。1974年4月、ハリウッド、セイジ&サンド・スタジオでの録音。秋吉敏子=ルー・タバキン ビッグバンドのデビュー盤。この盤で、このビッグバンドを知った。当時、プロモーションも兼ねてだろう、NHK-FMで良く流れていた。

冒頭の「Elegy」を聴けば、このビッグバンドのコンセプトが良く判る。冒頭、秋吉敏子のビ・バップ・マナーのピアノが鳴る。そして、その後、完璧に統制のとれた、一糸乱れぬアンサンブルが疾走する。ファンクネスは控えめ、切れ味の良いビ・バップを聴く様な、疾走感溢れるビッグバンドのアンサンブル。ビ・バップの音の個性をビッグバンドに置き換えた様な演奏。
 
 
Kogun  
 
 
演奏の特徴のもう1つは「間」を活かした演奏である、ということ。「間」と「空間」を活かした演奏が、このビッグバンドのもう1つの個性。ハイ・テクニックなビッグバンドが故に出来る、ピタッとカミソリで切ったような音の「間」。そして、無を想起する「空間」。この特徴は、米国のビッグバンドには聴かれなかったもので、今でも耳に新しい響きを感じる。

そして、当時、賛否両論だった「日本人のアイデンティティ」。タイトル曲「Kogun(孤軍)」の冒頭に出てくる、「ヨ~、ポンッ」といった「能」の調べの引用。ラストの「Henpecked Old Man」に出てくる、例えば「八木節」の様な、日本の舞踏民謡に似たフレーズの引用。これを「どう聴くか」によって、この盤の評価は分かれていた様な思い出がある。俗っぽく、明らかに米国での「ウケ狙い」と聴くか、純粋に「融合」が個性のジャズの一フレーズと聴くか。

資料には「タイトル曲の「孤軍」は当時ルバング島で発見された小野田少尉をモチーフとしたもので、日本人である自分がアメリカという異国でジャズを創作して演奏するという苦闘をそこに重ねている」とある。そんな完全アウェー、「孤独」な環境の中で、自らの実力を認めさせるには、「日本人のアイデンティティ」の引用が必要だったのかも知れない。

そんな「日本人のアイデンティティ」の引用を全て差し引いても、このビッグバンドの音は素晴らしい。完璧に統制のとれた一糸乱れぬアンサンブルと、完全にコンロールされた途方も無いドライブ感、そして、疾走感。このビッグバンドには、他のビッグバンドに無い、特別な個性が溢れている。
 
 
 

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