ジャズ喫茶で流したい・195
欧州ジャズは面白い。米国ジャズに無い、というか、ほとんど正反対の響きと展開がある。欧州ジャズは国毎に個性がある。米国ジャズは「アフリカンアメリカン」の独特のリズムや調べが反映されているが、欧州ジャズは、その国の民謡や踊りの旋律、民族の持つ独特の調べ、それらがジャズのフレーズにリズムに反映される。
Dusko Goykovich『After Hours』(写真)。1971年11月9日、バルセロナでの録音。ちなみにパーソネルは、Dusko Goykovich (tp), Tete Montoliu (p), Rob Langereis (b), Joe Nay (ds)。バルカンのジャズの至宝、旧ユーゴスラビア、現在はボスニア・ヘルツェゴビナのヤイチェ出身のトランペッター、ダスコ・ゴイコヴィッチのリーダー作。
パーソネルの出身地を追ってみると面白い。ピアノのテテ・モントリューはスペインのカタロニア生まれの盲目のピアニスト。ベースのロブ・ランゲライスはオランダのアムステルダム出身、ドラムのジョー・ネイは、ドイツのベルリン出身。このトランペットのフロント一管のワンホーン・カルテットは、ボスニア・ヘルツェゴビナ+スペイン+オランダ+ドイツの「多国籍軍」である。
欧州ジャズは国毎に個性があるので、さぞかし「国毎の個性」のごった煮だと思いきや、さすがにリーダーの統制がしっかり効いた、バルカンの調べをメインにした、心地良い哀愁感漂う、規律の取れたジャズに仕上がっている。恐らく「哀愁感」については、欧州各国の共通の音の個性のようで、この「哀愁感」の一点で、このカルテットの演奏は確実に意思統一されている。
リーダーのゴイコヴィッチのトランペットは極上。テクニックは確か、フレーズは個性的で流麗、特に独特の旋律の展開と欧州を感じる独特のマイナー感は「バルカン」独特の調べ。これをジャズのフレーズに置き換えて、実に印象的なゴイコヴィッチならではのジャズに昇華している。このトランペットは米国には無い。欧州独特な、それも東欧独特な響きである。
僕はこの盤を20歳そこそこな頃、ジャズ喫茶で聴かせて貰った思い出がある。それまで米国ジャズ一辺倒、米国ジャズだけが「ジャズ」だと思っていた。が、この盤を聴かせて貰って見識を改めた、というか、見識が一気に広まった。ジャズは米国だけではない、欧州にもその拡がりがあるのだということを知った。そして、その「欧州ジャズ」は個性的でアーティステックなものだということも知った。
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